【解決手段】シリンダボア壁の保温具11は、1以上の固定部31A,31Bから外れた位置で正面側当て板27に設けられ、覆い部材26に向けて突出し、背面側押し付け部材25との間で覆い部材26を挟み込む1以上のビード51を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、保温用ゴム部材と金属基体部材との間に冷却水が侵入すると、保温用ゴム部材が金属基体部材から浮き上がることとなる。その結果、保温用ゴム部材が冷却水の水流とともに移動し、保温具から保温用ゴム部材が脱落してしまう可能性がある。
【0006】
従って、本発明の課題は、保温具から覆い部材が脱落することを防止したシリンダボア壁の保温具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)のシリンダボア壁の保温具は、冷却水が流れる溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うための覆い部材と、
該覆い部材の背面側に設けられ、該覆い部材を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部材と、
該覆い部材の接触面側に設けられ、開口を有し、該背面側押し付け部材との間に、該覆い部材の外縁部を挟み込むための正面側当て板と、
該背面側押し付け部材の背面側に設けられ、該壁面に向かって、該背面側押し付け部材が該覆い部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されている弾性部材付設部材と、
該弾性部材付設部材と、該背面側押し付け部材と、該覆い部材と、該正面側当て板と、を固定する1以上の固定部と、
該1以上の固定部から外れた位置で該正面側当て板に設けられ、該覆い部材に向けて突出し、該背面側押し付け部材との間で該覆い部材を挟み込む1以上のビードと、
を有する。
【0008】
また、本発明(2)のシリンダボア壁の保温具は、(1)記載のシリンダボア壁の保温具であって、該正面側当て板は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該1以上の固定部は、該一対の非湾曲辺に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺に対応する位置には設けられず、
該1以上のビードは、該一対の湾曲辺に沿って設けられる。
【0009】
また、本発明(3)のシリンダボア壁の保温具は、(1)記載のシリンダボア壁の保温具であって、
該1以上のビードは、複数であり、
該正面側当て板は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該1以上の固定部は、該一対の湾曲辺の所定の位置に設けられ、
該複数のビードは、該一対の湾曲辺に沿って該所定の位置を間に挟んだ両側に設けられる。
【0010】
また、本発明(4)のシリンダボア壁の保温具は、(1)〜(3)のいずれか1項記載のシリンダボア壁の保温具であって、該覆い部材は、該1以上の固定部から外れた位置で、角部を除去するように設けられた第1切欠部を有する。
【0011】
また、本発明(5)のシリンダボア壁の保温具は、(1)〜(4)のいずれか1項記載のシリンダボア壁の保温具であって、該1以上の固定部は、複数であり、該覆い部材は、該複数の固定部同士の間の位置に設けられた第2切欠部と、第2切欠部に隣接して設けられ該ビードと該背面側押し付け部材との間に挟まれて保持される保持部と、を有する。
【0012】
また、本発明(6)は、(1)〜(5)のいずれか1項記載のシリンダボア壁の保温具であって、
該1以上の固定部は、複数であり、
該正面側当て板は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺上の複数個所に設けられ、
該ビードは、該一対の非湾曲辺に沿って該複数の固定部同士の間に設けられる。
【0013】
また、本発明(7)のシリンダボア壁の保温具は、冷却水が流れる溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うための覆い部材と、
該覆い部材の背面側に設けられ、該覆い部材を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部材と、
該覆い部材の接触面側に設けられ、開口を有し該背面側押し付け部材との間に該覆い部材の外縁部を挟み込むための正面側当て板と、
該背面側押し付け部材の背面側に設けられ、該壁面に向かって、該背面側押し付け部材が該覆い部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されている弾性部材付設部材と、
該弾性部材付設部材と、該背面側押し付け部材と、該覆い部材と、該正面側当て板と、を固定する1以上の固定部と、
該固定部から外れた位置で該正面側当て板に設けられ、該背面側押し付け部材に向けて突出する1以上のビードと、
該覆い部材に設けられ、該1以上のビードが通される1以上の貫通孔と、
を有する。
【0014】
また、本発明(8)のシリンダボア壁の保温具は、冷却水が流れる溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うための覆い部材と、
該覆い部材の背面側に設けられ、該覆い部材を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部材と、
該覆い部材の接触面側に設けられ、開口を有し該背面側押し付け部材との間に、該覆い部材の外縁部を挟み込むための正面側当て板と、
該背面側押し付け部材の背面側に設けられ、該壁面に向かって、該背面側押し付け部材が該覆い部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されている弾性部材付設部材と、
該弾性部材付設部材と、該背面側押し付け部材と、該覆い部材と、該正面側当て板と、を固定する1以上の固定部と、
該固定部から外れた位置で該背面側押し付け部材に設けられ、該覆い部材に向けて突出し、該正面側当て板との間で該覆い部材を挟み込む1以上のビードと、
を有する。
【0015】
また、本発明(9)のシリンダボア壁の保温具は、(8)記載のシリンダボア壁の保温具であって、該背面側押し付け部材は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該1以上の固定部は、該一対の非湾曲辺に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺に対応する位置には設けられず、
該1以上のビードは、該一対の湾曲辺に沿って設けられる。
【0016】
また、本発明(10)のシリンダボア壁の保温具は、(8)記載のシリンダボア壁の保温具であって、
該1以上のビードは、複数であり、
該背面側押し付け部材は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該複数の固定部は、該一対の湾曲辺の所定の位置に設けられ、
該複数のビードは、該一対の湾曲辺に沿って該所定の位置を間に挟んだ両側に設けられる。
【0017】
また、本発明(11)のシリンダボア壁の保温具は、(8)〜(10)のいずれか1項記載のシリンダボア壁の保温具であって、
該1以上の固定部は、複数であり、
該正面側当て板は、一対の湾曲辺と、一対の非湾曲辺と、を有し、
該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺上の複数個所に設けられ、
該複数のビードは、該一対の非湾曲辺に沿って該複数の固定部同士の間に設けられる。
【0018】
また、本発明(12)のシリンダボア壁の保温具は、冷却水が流れる溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うための覆い部材と、
該覆い部材の背面側に設けられ、該覆い部材を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部材と、
該覆い部材の接触面側に設けられ、開口を有し該背面側押し付け部材との間に該覆い部材の外縁部を挟み込むための正面側当て板と、
該背面側押し付け部材の背面側に設けられ、該壁面に向かって、該背面側押し付け部材が該覆い部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されている弾性部材付設部材と、
該弾性部材付設部材と、該背面側押し付け部材と、該覆い部材と、該正面側当て板と、を固定する1以上の固定部と、
該固定部から外れた位置で該背面側押し付け部材に設けられ、該正面側当て板側に向けて突出する1以上のビードと、
該覆い部材に設けられ、該1以上のビードが通される複数の貫通孔と、
を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、覆い部材が固定部から脱落することを防止したシリンダボア壁の保温具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、冷却水が流れる溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うための覆い部材(ゴム部材)と、該覆い部材の背面側に設けられ、該覆い部材を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部材と、該覆い部材の接触面側に設けられ、開口を有し該背面側押し付け部材との間に該覆い部材の外縁部を挟み込むための正面側当て板と、該背面側押し付け部材の背面側に設けられ、該壁面に向かって、該背面側押し付け部材が該覆い部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されている弾性部材付設部材と、該弾性部材付設部材と、該背面側押し付け部材と、該覆い部材と、該正面側当て板と、を固定する1以上の固定部と、該1以上の固定部から外れた位置で該正面側当て板に設けられ、該覆い部材に向けて突出し、該背面側押し付け部材との間で該覆い部材を挟み込む1以上のビードと、を有する。
【0022】
覆い部材は、四角の平板状であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。覆い部材は、例えば
図6等の形状であってよい。覆い部材の形状及び厚みは、特に制限されず、適宜選択される。
【0023】
覆い部材は、弾性体で構成されることが好ましい。覆い部材の材質としては、例えば、ソリッドゴム、膨張ゴム、発泡ゴム、軟性ゴム等のゴム、シリコーン系ゲル状素材、セルロース系スポンジ等が挙げられる。シリンダボア壁の保温具を溝状冷却水流路内に設置するときに、覆い部材がシリンダボア壁に強く接触して、覆い部材が削られるのを防ぐことができる点で、シリンダボア壁の保温具の設置後に、溝状冷却水流路内で覆い部材を膨張させることができる膨張ゴムやセルロース系スポンジで構成されることが好ましい。膨張ゴムは、感熱膨張ゴム又は水膨潤性ゴムが好ましい。セルロース系スポンジは、冷却水を吸水することによって膨張することができる。なお、覆い部材の材質が、溝状冷却水流路内で膨張しない材質の場合は、付勢力は専ら弾性部により生じ、また、覆い部材の材質が、溝状冷却水流路内で膨張する材質の場合は、付勢力は弾性部と覆い部材の共同により生じる。
【0024】
ソリッドゴムの組成としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。ソリッドゴムには膨張性はほとんどない。覆い部材をソリッドゴムで構成する場合には、
図29のように、覆い部材の中央の突出部を正面側当て板の開口よりもシリンダボア壁側に向けて突出するように覆い部材を形成する。
【0025】
膨張ゴムとしては、感熱膨張ゴムが挙げられる。感熱膨張ゴムは、ベースフォーム材にベースフォーム材より融点が低い熱可塑性物質を含浸させ圧縮した複合体であり、常温では少なくともその表層部に存在する熱可塑性物質の硬化物により圧縮状態が保持され、且つ、加熱により熱可塑性物質の硬化物が軟化して圧縮状態が開放される材料である。感熱膨張ゴムとしては、例えば、特開2004−143262号公報に記載の感熱膨張ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が感熱膨張ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され、感熱膨張ゴムに熱が加えられることで、感熱膨張ゴムが膨張して、所定の形状に膨張変形する。
【0026】
感熱膨張ゴムに係るベースフォーム材としては、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種高分子材料が挙げられ、具体的には、天然ゴム、クロロプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、軟質ウレタン等の各種エラストマー、硬質ウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ガラス転移点、融点又は軟化温度のいずれかが120℃未満であるものが好ましい。感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニル共重合体、ナイロン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、熱可塑性ポリイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、低融点ガラスフリット、でんぷん、はんだ、ワックス等の各種熱可塑性化合物が挙げられる。
【0028】
また、膨張ゴムとしては、水膨潤性ゴムが挙げられる。水膨潤性ゴムは、ゴムに吸水性物質が添加された材料であり、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有するゴム材である。水膨潤性ゴムとしては、例えば、ポリアクリル酸中和物の架橋物、デンプンアクリル酸グラフト共重合体架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース塩、ポリビニルアルコール等の吸水性物質がゴムに添加されたゴム材が挙げられる。また、水膨潤性ゴムとしては、例えば、特開平9−208752号公報に記載されているケチミン化ポリアミド樹脂、グリシジルエーテル化物、吸水性樹脂及びゴムを含有する水膨潤性ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が水膨潤性ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され冷却水が流されて、水膨潤性ゴムが水を吸収することで、水膨潤性ゴムが膨張して所定の形状に膨張変形する。
【0029】
発泡ゴムは、多孔質のゴムである。発泡ゴムとしては、連続気泡構造を有するスポンジ状の発泡ゴム、独立気泡構造を有する発泡ゴム、半独立発泡ゴム等があげられる。発泡ゴムの材質としては、具体的には、例えば、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、ニトリルブタジエン共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。発泡ゴムの発泡率は、特に制限されず、適宜選択され、発泡率を調節することにより、ゴム部材の含水率を調節することができる。なお、発泡ゴムの発泡率とは、((発泡前密度−発泡後密度)/発泡前密度)×100で表される発泡前後の密度割合を指す。
【0030】
覆い部材の材質が水膨潤性ゴム、発泡ゴムのように、含水することができる材料の場合、本発明のシリンダボア壁の保温具が、溝状冷却水流路内に設置され、溝状冷却水流路に冷却水が流されたときに、覆い部材が含水する。溝状冷却水流路に冷却水が流されたときに、ゴム部材の含水率を、どのような範囲とするかは、内燃機関の運転条件等により、適宜選択される。なお、含水率とは、(冷却水重量/(充填剤重量+冷却水重量))×100で表される重量含水率を指す。
【0031】
背面側押し付け部材は、四角の平板状であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。背面側押し付け部材は、複数の板を連結して円弧状をなすように形成されてもよい。背面側押し付け部材は、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。背面側押し付け部材は、例えば
図5、
図6等の形状であってよい。シリンダボア壁の保温具から、背面側押し付け部材が省略されていてもよい。
【0032】
正面側当て板は、方形枠状の平板であってよく、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。正面側当て板は、複数の平板を互いに回動可能に連結して円弧状に湾曲可能に形成されてもよい。正面側当て板は、金属板、例えばステンレス鋼板によって形成されてもよい。正面側当て板は、例えば
図5、
図6等の形状であってよい。正面側当て板は、開口を有している。
【0033】
弾性部材付設部材は、枠形状をなした枠部を有してもよい。弾性部材付設部材は、ボア壁の形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。弾性部材付設部材は、複数の板を連結して円弧状をなすように形成されてもよい。弾性部材付設部材は、枠部から下側に突出して設けられる脚部を有してもよい。弾性部材付設部材は、枠部から上側に突出して設けられ浮き上がりを防止するストッパ部を有してもよい。弾性部材付設部材は、例えば
図6、
図23等の形状であってよい。
【0034】
1以上の固定部は、正面側当て板の一対の非湾曲辺に対応して設けられた複数の第1固定部であってよい。固定部は、1個でもよいし、複数設けられてもよい。固定部は、正面側当て板の一対の湾曲辺に対応して設けられた複数の第2固定部であってもよい。固定部は、保温具の外周部(外縁付近)に設けられていてもよい。固定部は、例えば、
図5、
図9、
図11、
図15、
図17、
図19、
図21、
図26、
図27の配置をとってもよい。固定部は、カシメ加工されたカシメ加工部、ねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0035】
1以上のビードは、正面側当て板に設けられ背面側押し付け部材に向けて突出してもよいし、背面側押し付け部材に設けられ正面側当て板に向けて突出してもよい。ビードは、1個でもよいし、複数設けられてもよい。ビードの配置は、種々の配置を取ることができる。例えば、ビードが
図5、
図9、
図11、
図15、
図22のように冷却水の流れ方向に沿って直列的に配置してもよいし、一つの細長いビードが
図17、
図26のように冷却水の流れ方向に沿って配置してもよい。複数のビードは、
図19、
図27のように枠状ないし額縁状に配置されてもよい。
【0036】
覆い部材は、1以上の貫通孔を有してもよく、これらの1以上の貫通孔の内側に1以上のビードが通されてもよい。貫通孔は、1個でもよいし、複数設けられてもよい。貫通孔の配置は、
図12のような配置を取ることができる。覆い部材は、角部を除去するように設けられた第1切欠部を有してもよい。覆い部材は、該複数の固定部同士の間の位置に設けられた第2切欠部を有してもよい。
[第1実施形態]
【0037】
図1〜
図4に、シリンダボア壁の保温具11が設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック12を示す。シリンダブロック12は、ピストンが上下するための複数のボア13と、冷却水を流すための溝状冷却水流路14と、シリンダボア壁15と、を有する。シリンダボア壁15は、各ボア13と溝状冷却水流路14とを区切っている。また、シリンダブロック12は、溝状冷却水流路14へ冷却水を供給するための冷却水供給口16と、冷却水を溝状冷却水流路14から排出するための冷却水排出口17と、を有する。冷却水供給口16は、複数のボア13からなるボア列18の一方の端部付近に設けられる。冷却水排出口17は、ボア列18の一方の端部とは反対側の他方の端部付近に設けられる。シリンダブロック12に含まれるボア13の数は任意である。
【0038】
溝状冷却水流路14には、冷却水供給口16から冷却水排出口17に向けて冷却水が所定の流量で流される。冷却水は、LLC等、一般的なエンジン用冷却水で構成される。
【0039】
このシリンダブロック12には、2つ以上のボア13が直列に並ぶように形成されている。そのため、ボア13には、ボア列18の端部に設けられる端ボア13Aと、2つのボア13に挟まれている中間ボア13Bとがある(なお、シリンダブロック12のボア13の数が2つの場合は、端ボア13Aのみである。)。
【0040】
直列に並んだボア13のうち、端ボア13Aは両端のボアであり、また、中間ボア13Bは、一端の端ボア13Aと他端の端ボア13Aの間にあるボアである。端ボア13Aと中間ボア13Bの間の壁、中間ボア13Bと中間ボア13Bの間の壁及び中間ボア13Bと端ボア13Aの間の壁(ボア間壁21)は、2つのボア13に挟まれる部分である。このため、ボア間壁21は、2つのシリンダボア13から熱が伝わるため、他の壁に比べ壁温が高くなる。そのため、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面22では、ボア間壁21の近傍が、温度が最も高くなるので、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面22のうち、各ボア13のシリンダボア壁15の境界及びその近傍の温度が最も高くなる。
本発明では、溝状冷却水流路14の壁面のうち、シリンダボア13側の壁面を、溝状冷却水流路14のボア側の壁面22と記載し、溝状冷却水流路14の壁面のうち、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面を対壁23と記載する。
【0041】
図4に示すように、シリンダボア壁15は、端ボア13Aに対応する第1ボア壁15Aと、中間ボア13Bに対応するとともに第1ボア壁15Aよりも長さ(周長)が短い第2ボア壁15Bと、を含む。
【0042】
図1に示すように、シリンダボア壁の保温具11は、冷却水供給口16の近傍に設けられることが好ましい。シリンダボア壁の保温具11は、冷却水供給口16に対向する位置に設けられる。この配置をとることによって、シリンダボア壁の保温具11は、第1ボア壁15Aの一部に密着して第1ボア壁15Aの一部を保温し、冷却水供給口16の近傍にある第1ボア壁15Aの過冷却を防ぐことができる。このため、冷却水供給口16の近傍にあるシリンダボア壁15の温度を他のシリンダボア壁15の温度と同等にして、車両の燃費向上に寄与できる。
【0043】
なお、シリンダボア壁の保温具11の配置は一例である。シリンダボア壁の保温具11は、その他の実施上の要請に応じて、例えば、端ボア13Aの第1ボア壁15Aの上記一部とは異なる他の部分に密着する位置に設けられても良いし、中間ボア13Bの第2ボア壁15Bに密着する位置に設けられていても良いし、それら以外の位置に設けられても当然によい。
【0044】
図5、
図6に示すように、シリンダボア壁の保温具11は、後方より順番に、上から見た時に円弧状をなした弾性部材付設部材24と、上から見た時に円弧状をなした背面側押し付け部材25と、四角い平板状をなした覆い部材26と、上から見た時に円弧状をなした正面側当て板27と、を有する。弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27は、順番に重ね合わされている。弾性部材付設部材24には、複数の弾性部材28が付設されている。
【0045】
保温具11は、固定部材31を有する。固定部材31は、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定する。固定部材31は、一例として弾性部材付設部材24と一体的に設けられているが、弾性部材付設部材24とは分離して設けられてもよい。
【0046】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aと、正面側当て板27の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の第2固定部31Bと、を有する。複数の第1固定部31Aおよび複数の第2固定部31Bは、いずれも保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0047】
第1固定部31Aは、縦方向(冷却水の流れ方向と直交する方向)に延びる板金として形成され、保温具11の縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。第1固定部31Aの一つは、保温具11の左側端部に設けられ、第1固定部31Aの他の一つは、保温具11の右側端部に設けられる。
【0048】
第2固定部31Bは、所定幅で横方向に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の第2固定部31Bは、正面側当て板27の湾曲辺42の左側端部から湾曲辺42の全長の1/3の長さ分移動した位置と、正面側当て板27の湾曲辺42の右側端部から湾曲辺42の全長の1/3の長さ分移動した位置と、の2か所(上側の第2固定部31Bと下側の第2固定部31Bとを合算すると計4か所)に設けられる。
【0049】
第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工(折り曲げ加工)されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、挟み込み部を形成している。第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持できる。第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。
【0050】
固定部材31は、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0051】
図6に示すように、弾性部材付設部材24は、略方形の平板をシリンダボア壁15に沿って湾曲するように折り曲げて形成されている。弾性部材付設部材24は、金属板、例えばステンレス鋼板によって形成される。弾性部材付設部材24は、枠形状をなした枠部43と、枠部43の内側に設けられた窓部43Aと、枠部43から下側に突出して設けられる脚部44と、枠部43から上側に突出して設けられる浮き上がり防止用のストッパ部45と、を有する。脚部44は、例えば、「L」字状に折り曲げられてもよく、溝状冷却水流路14の底部に当接して保温具11全体を支持することができる。ストッパ部45は、例えば、逆「L」字状に折り曲げられてもよく、シリンダヘッド側に当接して、保温具11が溝状冷却水流路14から浮き上がってしまうことを防止する。
【0052】
上記したように、弾性部材付設部材24は、複数の弾性部材28が設けられる。各弾性部材28は、細長い金属板バネで構成される。各弾性部材28は、溝状冷却水流路14のシリンダボア壁15の壁面22とは反対側の対壁23のある方向(正面側当て板27から遠ざかる方向)に向かって、枠部43から斜め上方向に突出している。弾性部材28は、枠部43と一体的に設けられ枠部43から突出した軸部28Aと、軸部28Aの先端部に設けられる当接部28Bと、を有する。当接部28Bは、軸部28Aに対して折れ曲がるように配置されており、シリンダボア13側の壁面22とは反対側の対壁23に当接できる。
【0053】
図6に示すように、背面側押し付け部材25は、方形の平板をシリンダボア壁15に沿って湾曲するように折り曲げて形成されている。背面側押し付け部材25は、金属板、例えばステンレス鋼板によって形成される。背面側押し付け部材25は、シリンダボア壁の保温具11から省略されていてもよい。
【0054】
図5、
図6に示すように、覆い部材26は、方形の平板状で、且つシリンダボア壁15に沿って湾曲するように成形されている。覆い部材26は、温度上昇によって膨張する性質のあるゴム材料、すなわち感熱膨張ゴムで形成されることが好ましい。したがって、覆い部材26は、内燃機関の運転時に膨張して、シリンダボア壁15に直接接触して、シリンダボア壁15の保温箇所を隙間なく覆うことができる。これによって、覆い部材26は、シリンダボア壁15(第2ボア壁15B)を保温することができる。
【0055】
覆い部材26の材質としては、耐LLC性(不凍冷却水への耐性)や耐熱性を考慮して、例えば、ソリッドゴム、膨張ゴム、発泡ゴム、軟性ゴム等のゴム、シリコーン系ゲル状素材等が挙げられる。覆い部材26の材質としては、膨張ゴムを用いることが好ましく、感熱膨張ゴムを用いることがより好ましい。
【0056】
図5、
図6に示すように、正面側当て板27は、方形枠状の平板をシリンダボア壁15に沿って湾曲するように折り曲げて形成されている。正面側当て板27は、矩形状の開口46を有する。正面側当て板27は、金属板、例えばステンレス鋼板によって形成される。正面側当て板27は、縦方向に延びる一対の非湾曲辺41と、横方向に延びる一対の湾曲辺42と、を有する。さらに、正面側当て板27は、一対の非湾曲辺41に対応して縦方向に延びる一対の縦枠部27Aと、一対の湾曲辺42に対応して横方向に延びる一対の横枠部27Bと、を有する。左側の一つの縦枠部27Aは、左側の一つの第1固定部31Aによって挟まれて保持されている。右側の一つの縦枠部27Aは、右側の一つの第1固定部31Aによって挟まれて保持されている。
【0057】
正面側当て板27の横枠部27Bは、複数のビード51を有する。複数のビード51は、第2固定部31Bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数のビード51は、第2固定部31B同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0058】
各ビード51は、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。ビード51は、覆い部材26(背面側押し付け部材25)に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B内で、直列的に設けられている。
【0059】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。覆い部材26は、冷却水の温度上昇に伴い膨張して、
図8に示すようにシリンダボア壁15(第1ボア壁15A)に密着してこれの表面を隙間なく覆うことができる。本実施形態では、第2固定部31Bを間に挟んだ両側にビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、ビード51が設けられる位置で背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0060】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、冷却水が流れる溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22に接触し、該溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22を覆うための覆い部材26と、該覆い部材26の背面側に設けられ、該覆い部材26を背面側から該溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22に向かって押し付けるための背面側押し付け部材25と、該覆い部材26の接触面側に設けられ、開口46を有し、該背面側押し付け部材25との間に、該覆い部材26の外縁部を挟み込むための正面側当て板27と、該背面側押し付け部材25の背面側に設けられ、該壁面22に向かって、該背面側押し付け部材25が該覆い部材26を押し付けるように付勢する弾性部材28が付設されている弾性部材付設部材24と、該弾性部材付設部材24と、該背面側押し付け部材25と、該覆い部材26と、該正面側当て板27と、を固定する1以上の固定部と、該1以上の固定部から外れた位置で該正面側当て板27に設けられ、該覆い部材26に向けて突出し、該背面側押し付け部材25との間で該覆い部材26を挟み込む1以上のビード51と、を有する。
【0061】
この構成によれば、固定部から外れた位置に1以上のビード51が設けられるために、ビード51の位置で覆い部材26を圧縮する圧力を高くすることができる。このため、ビード51が設けられる位置で背面側押し付け部材25に対する覆い部材26の密着性が良好になり、背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に隙間を生じることが防止される。したがって、溝状冷却水流路14内の冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入することが防止される。これによって背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26が保温具11から脱落してしまう事態を生じることを防止できる。
【0062】
また、ビード51を設けることによって、背面側押し付け部材25と正面側当て板27との間に覆い部材26を保持する保持力が増大するために、冷却水の水流によって覆い部材26にちぎれを生じたり、保温具11から覆い部材26が脱落してしまったりすることを防止できる。
【0063】
該正面側当て板27は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該1以上の固定部は、該一対の湾曲辺42の所定の位置に設けられ、該複数のビード51は、該一対の湾曲辺42に沿って該所定の位置を間に挟んだ両側に設けられる。この構成によれば、固定部を間に挟んだ両側にビード51が設けられるために、固定部がない部分において、背面側押し付け部材25に対する覆い部材26の密着性を向上できる。これによって、溝状冷却水流路14内の冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入することが防止される。また、背面側押し付け部材25と正面側当て板27との間で覆い部材26を保持する保持力を増強できる。このため、冷却水の水流によって覆い部材26にちぎれを生じたり、保温具11から覆い部材26が脱落してしまったりすることを防止できる。
【0064】
以下の第2〜第7実施形態は、主として上記第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[第2実施形態]
【0065】
図9、
図10を参照して、第2実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0066】
図9、
図10に示すように、覆い部材26は、略方形の平板状で、且つシリンダボア壁15に沿って湾曲するように成形されている。シリンダボア13のシリンダボア壁15に直接接触して、シリンダボア壁15の保温箇所を覆い、各シリンダボア13のシリンダボア壁15を保温するための部材である。
【0067】
図10に示すように、覆い部材26は、四角の角に対応する位置に設けられる第1切欠部52と、第2固定部31B同士の間の位置に設けられる第2切欠部53と、を有する。第1切欠部52は、複数の固定部から外れた位置で、角部を除去するように設けられている。第1切欠部52は、第2固定部31Bよりも外側(冷却水の流れ方向に関して端部側)に位置する。第1切欠部52は、ビード51に対応して設けられ、覆い部材26がビード51を避けるように設けられている。
【0068】
第2切欠部53は、第2固定部31Bに対応する箇所よりも覆い部材26の中心側に後退して設けられる。しかしながら、第2切欠部53は、ビード51を避けるように設けられていない。このため、覆い部材26は、第2切欠部53に隣接した位置に、ビード51と重なり合う保持部54を有する。したがって、この位置では、保持部54は、覆い部材26の外縁を構成している。この位置では、保持部54よりも外側に覆い部材26が配置されない。覆い部材26の保持部54は、ビード51と背面側押し付け部材25との間に挟まれて保持される。
【0069】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。本実施形態では、冷却水の流速の影響が大きい角部の位置に第1切欠部52が設けられる。このため、この位置に覆い部材26が配置されることがなく、この位置で覆い部材26にちぎれや破損を生じることが防止される。また、第1切欠部52の外側には、第1切欠部52を保護するようにビード51が配置される。このため、この位置で覆い部材26にちぎれや破損を生じることがさらに防止される。第2切欠部53に隣接した保持部54は、ビード51と背面側押し付け部材25との間に挟まれて保持される。このため、保持部54が設けられた位置において、覆い部材26と背面側押し付け部材25との間の密着性を向上できる。これによって、第2切欠部53の付近において、覆い部材26と背面側押し付け部材25との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。これによって、シリンダボア壁の保温具11から覆い部材26が脱落してしまう不具合を防止できる。
【0070】
第2実施形態によれば、以下のことがいえる。該覆い部材26は、該固定部から外れた位置で、角部を除去するように設けられた第1切欠部52を有する。この構成によれば、冷却水の流れの影響でちぎれを生じやすい角部の位置に切欠部を設けているため、覆い部材26にちぎれ等の不具合を生じることを防止できる。
【0071】
該覆い部材26は、該複数の固定部同士の間の位置に設けられた第2切欠部53と、第2切欠部53に隣接して設けられ該ビード51と該背面側押し付け部材25との間に挟まれて保持される保持部54と、を有する。この構成によれば、保持部54の外側には、覆い部材26が配置されない。このため、冷却水の流れの影響で保持部54の周辺で覆い部材26にちぎれを生じてしまうことを防止できる。また、保持部54は、ビード51と背面側押し付け部材25との間に挟まれて保持されるために、この位置で背面側押し付け部材25と覆い部材26との間の密着性が向上する。このため、背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に冷却水が侵入してしまうことを防止できる。これによって、背面側押し付け部材25から覆い部材26が浮き上がってしまうことが防止され、保温具11から覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
[第3実施形態]
【0072】
図11から
図14を参照して、第3実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0073】
図11〜
図13に示すように、覆い部材26は、複数のビード51に対応するように設けられる複数の貫通孔55を有する。複数の貫通孔55は、正面側当て板27の一対の湾曲辺42に沿って、細長い長穴状に形成される。したがって、本実施形態では、複数のビード51は、複数の貫通孔55の内側に差し込まれる。覆い部材26に設けられる複数の貫通孔55は、例えば、長円形の金型等によって厚み方向に覆い部材26を打ち抜くことで形成できる。
【0074】
図14に示すように、本実施形態のビード51の高さhは、覆い部材26の厚さtと略同等である。本実施形態では
図13、
図14に示すように、背面側押し付け部材25を省略してもよい。この場合、弾性部材付設部材24には、窓部43Aが設けられない。
【0075】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。本実施形態では、貫通孔55の内側にビード51が通される。このため、覆い部材26にちぎれを生じない限り、保温具11から覆い部材26が脱落することがない。したがって、本実施形態では、覆い部材26の位置が安定し、保温具11に対して覆い部材26が移動してしまうという不具合を生じることがない。
【0076】
第3実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、該覆い部材26に設けられ、該複数のビード51が通される複数の貫通孔55を有する。この構成によれば、覆い部材26が保温具11から脱落してしまう不具合を極力防止できる。
[第4実施形態]
【0077】
図15、
図16を参照して、第4実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0078】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aと、正面側当て板27の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の第2固定部31Bと、を有する。複数の第1固定部31Aおよび複数の第2固定部31Bは、いずれも保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0079】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成され、保温具11の縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。第1固定部31Aの一つは、保温具11の左側端部に設けられ、第1固定部31Aの他の一つは、保温具の右側端部に設けられる。
【0080】
第2固定部31Bは、所定幅で横方向に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の第2固定部31Bは、正面側当て板27の湾曲辺42の中間部に対応する位置の上下の2か所に設けられる。
【0081】
第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工(折り曲げ加工)されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0082】
正面側当て板27の横枠部27Bは、複数のビード51を有する。複数のビード51は、第2固定部31Bを間に挟んだ両側に設けられている。各ビード51は、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。ビード51は、覆い部材26に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B内で、直列的に設けられている。
【0083】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。第2固定部31Bを間に挟んだ両側にビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、覆い部材26が背面側押し付け部材25から浮き上がって覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、第1実施形態等に比して、第2固定部31Bの数が低減されている。このため、第2固定部31Bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な工数が低減される。
【0084】
第4実施形態によれば、以下のことがいえる。該正面側当て板27は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の湾曲辺42の所定の位置に設けられ、該複数のビード51は、該一対の湾曲辺42に沿って該所定の位置を間に挟んだ両側に設けられる。
【0085】
この構成によれば、湾曲辺42に沿ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を防止できる。また、固定部の代わりにビード51を配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温具11の組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[第5実施形態]
【0086】
図17、
図18を参照して、第5実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0087】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aを有する。本実施形態の固定部材31には、横方向に延びる第2固定部31Bは含まれていない。複数の第1固定部31Aは、保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0088】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成され、保温具11の縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。第1固定部31Aの一つは、保温具11の左側端部に設けられ、第1固定部の他の一つは、保温具11の右側端部に設けられる。
【0089】
第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0090】
正面側当て板27の横枠部27Bは、複数のビード51を有する。複数のビード51は、正面側当て板27の横方向(冷却水の流れ方向)の略全幅に亘って設けられている。各ビード51は、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。ビード51は、覆い部材26に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0091】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。正面側当て板27の横方向の略全幅に亘ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を防止できる。また、本実施形態では、第2固定部31Bが省略されている。このため、第2固定部31Bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0092】
第5実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、該正面側当て板27は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺42に対応する位置には設けられず、該複数のビード51は、該一対の湾曲辺42に沿って設けられる。
【0093】
この構成によれば、湾曲辺42に沿ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26が脱落してしまう不具合を防止できる。また、固定部の代わりにビード51を配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温具11の組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[第6実施形態]
【0094】
図19、
図20を参照して、第6実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0095】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aを有する。本実施形態の固定部材31には、横方向に延びる第2固定部31Bは含まれていない。複数の第1固定部31Aは、いずれも保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0096】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成される。第1固定部31Aは、保温具11の左側端部に一対に設けられるとともに、保温具11の右側端部にも一対に設けられる(すなわち、第1固定部31Aは、保温具11の四か所の角部に設けられる。)。左側端部に設けられた一対の第1固定部31Aは、正面側当て板27の縦方向における両端部に設けられる。右側端部に設けられた一対の第1固定部31Aは、正面側当て板27の縦方向における両端部に設けられる。
【0097】
第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0098】
正面側当て板27の縦枠部27Aおよび横枠部27Bは、複数のビード51を有する。複数のビード51のうちの2つは、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って、正面側当て板27の横方向(冷却水の流れ方向)の略全幅に亘って設けられている。横方向に延びるビード51の一つは、上側の横枠部27Bに設けられ、横方向に延びるビード51の他の一つは、下側の横枠部27Bに設けられる。
【0099】
複数のビード51のうちの他の2つは、正面側当て板27の非湾曲辺41に沿って、正面側当て板27の縦方向(冷却水の流れと直交する方向)の略全幅に亘って設けられている。縦方向に延びるビード51の一つは、左側の縦枠部27Aに設けられ、縦方向に延びるビード51の他の一つは、右側の縦枠部27Aに設けられる。縦枠部27Aに設けられるビード51は、第1固定部31A同士の間に設けられている。
【0100】
ビード51は、覆い部材26に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B又は縦枠部27A内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0101】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。第1固定部31A同士の間にビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。また、湾曲辺42に沿って横方向に延びるビード51が一対に設けられる。これらによって、ビード51が設けられる位置で背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。これらによって、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を防止できる。また、本実施形態では、第2固定部31Bが省略されている。このため、第2固定部31Bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0102】
第6実施形態によれば、以下のことがいえる。該正面側当て板27は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41上の複数個所に設けられ、該ビード51は、該一対の非湾曲辺41に沿って該複数の固定部同士の間に設けられる。
【0103】
この構成によれば、非湾曲辺41に沿ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、覆い部材26が背面側押し付け部材25から浮き上がって覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
[第7実施形態]
【0104】
図21、
図22を参照して、第7実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0105】
図21、
図22に示すように、固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aと、正面側当て板27の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の第2固定部31Bと、を有する。複数の第1固定部31Aおよび複数の第2固定部31Bは、いずれも保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0106】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成され、保温具11の縦方向に連続的に設けられている。第1固定部31Aは、保温具11の縦方向の略中間部に設けられている。第1固定部31Aは、正面側当て板27の縦方向の長さの2/3以上を保持している。第1固定部31Aの一つは、保温具11の左側端部に設けられ、第1固定部31Aの他の一つは、保温具11の右側端部に設けられる。
【0107】
第2固定部31Bは、所定幅で横方向に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の第2固定部31Bは、正面側当て板27の湾曲辺42上の所定の位置に離散的に設けられる。
【0108】
第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aおよび第2固定部31Bと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aおよび第2固定部31Bは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0109】
図22に示すように、背面側押し付け部材25は、正面側当て板27の横枠部27Bに対応する位置に複数のビード51を有する。複数のビード51は、第2固定部31Bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数のビード51は、第2固定部31B同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0110】
各ビード51は、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。
図23、
図24に示すように、ビード51は、正面側当て板27に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27Bに対応する位置で、直列的に設けられている。
【0111】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。第2固定部31B同士の間に、ビード51が設けられるために、この位置から背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0112】
第7実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、冷却水が流れる溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22に接触し、該溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22を覆うための覆い部材26と、上から見たときに円弧形状を有し、該覆い部材26の背面側に設けられ、該覆い部材26を背面側から該溝状冷却水流路14のシリンダボア13側の壁面22に向かって押し付けるための背面側押し付け部材25と、該覆い部材26の接触面側に設けられ、上から見たときに円弧形状を有し、且つ、正面側から見たときに矩形状の開口46を有し、該背面側押し付け部材25との間に、該覆い部材26の外縁部を挟み込むための正面側当て板27と、上から見たときに円弧形状を有し、該背面側押し付け部材25の背面側に設けられ、該壁面22に向かって、該背面側押し付け部材25が該覆い部材26を押し付けるように付勢する弾性部材28が付設されている弾性部材付設部材24と、該弾性部材付設部材24と、該背面側押し付け部材25と、該覆い部材26と、該正面側当て板27と、を固定する複数の固定部と、該固定部から外れた位置で該背面側押し付け部材25に設けられ、該覆い部材26に向けて突出し、該正面側当て板27との間で該覆い部材26を挟み込む複数のビード51と、を有する。
【0113】
この構成によれば、固定部から外れた位置に複数のビード51が設けられるために、ビード51の位置で覆い部材26を圧縮する圧力を高くすることができる。このため、ビード51が設けられる位置で背面側押し付け部材25に対する覆い部材26の密着性が良好になり、背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に隙間を生じることが防止される。このため、背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に溝状冷却水流路14内の冷却水が侵入することが防止される。これによって背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26が保温具11から脱落してしまう事態を防止できる。また、背面側押し付け部材25と正面側当て板27との間で覆い部材26を保持する保持力が増大するために、冷却水の水流によって覆い部材26にちぎれを生じたり、保温具11から覆い部材26が脱落してしまったりすることを防止できる。さらに、固定部の代わりにビード51を多数配置することで、固定部の総数を低減できることができ、これによって保温具11の組み立て時に固定部の固定に要する工数を削減できる。このため、保温具11の組み立て作業の効率化を図ることができる。
【0114】
以下の第8、第9実施形態は、主として上記第7実施形態と異なる部分を説明し、第7実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[第8実施形態]
【0115】
図25を参照して、第8実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0116】
背面側押し付け部材25は、正面側当て板27の横枠部27Bに対応する位置に複数のビード51を有する。複数のビード51の配置は、第7実施形態の
図22と同様である。複数のビード51は、第2固定部31Bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数のビード51は、第2固定部31B同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0117】
覆い部材26は、複数のビード51に対応するように設けられる複数の貫通孔55を有する。複数の貫通孔55は、正面側当て板27の一対の湾曲辺42に沿って、細長い長穴状に形成される。したがって、本実施形態では、複数のビード51は、複数の貫通孔55の内側に差し込まれる。覆い部材26に設けられる複数の貫通孔55は、例えば、長円形の金型によって厚み方向に覆い部材26を打ち抜くことで形成できる。
【0118】
図25に示すように、本実施形態のビード51の高さhは、覆い部材26の厚さtと略同等である。
【0119】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。本実施形態では、複数の貫通孔55の内側に複数のビード51が通される。このため、覆い部材にちぎれを生じない限り、保温具から覆い部材が脱落することがない。したがって、本実施形態では、覆い部材の位置が安定し、背面側押し付け部材25に対して覆い部材26が移動してしまうという不具合を生じることがない。
【0120】
第8実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、該覆い部材26に設けられ、該複数のビード51が通される複数の貫通孔55を有する。この構成によれば、覆い部材26が背面側押し付け部材25と正面側当て板27との間から脱落してしまう不具合を生じる危険性を極力防止できる。
[第9実施形態]
【0121】
図26を参照して、第9実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
図26では、覆い部材26の図示を省略している。
【0122】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aを有する。本実施形態の固定部材31には、横方向に延びる第2固定部31Bは含まれていない。複数の第1固定部31Aは、保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0123】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成され、保温具11の縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。第1固定部31Aの一つは、保温具11の左側端部に設けられ、第1固定部31Aの他の一つは、保温具11の右側端部に設けられる。
【0124】
第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0125】
背面側押し付け部材25は、正面側当て板27の横枠部27Bに対応する位置に複数のビード51を有する。複数のビード51は、背面側押し付け部材25の横方向(冷却水の流れ方向)の略全幅に亘って設けられている。ビード51は、覆い部材26に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0126】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。本実施形態では、背面側押し付け部材25の横方向の略全幅に亘ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、覆い部材26が背面側押し付け部材25から浮き上がって覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、第2固定部31Bが省略されている。このため、第2固定部31Bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0127】
第9実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、該背面側押し付け部材25は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺42に対応する位置には設けられず、該複数のビード51は、該一対の湾曲辺42に沿って設けられる。この構成によれば、湾曲辺42に沿ってビード51が設けられるために、ビード51の位置で覆い部材26が圧縮される圧力が向上する。このため、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、固定部の代わりにビード51を配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温具11の組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[第10実施形態]
【0128】
図27を参照して、第10実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
図27では、覆い部材26の図示を省略している。
【0129】
固定部材31は、正面側当て板27の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の第1固定部31Aを有する。本実施形態の固定部材31には、横方向に延びる第2固定部31Bは含まれていない。複数の第1固定部31Aは、保温具11の外周部(外縁付近)に設けられている。
【0130】
第1固定部31Aは、縦方向に延びる板金として形成される。第1固定部31Aは、保温具11の左側端部に一対に設けられるとともに、保温具11の右側端部にも一対に設けられる。左側端部に設けられた一対の第1固定部31Aは、正面側当て板27の縦方向における両端部に設けられる。右側端部に設けられた一対の第1固定部31Aは、正面側当て板27の縦方向における両端部に設けられる。
【0131】
第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、第1固定部31Aは、挟み込み部を形成しており、第1固定部31Aと弾性部材付設部材24との間に、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を挟み込んでこれらを保持する。第1固定部31Aは、弾性部材付設部材24、背面側押し付け部材25、覆い部材26、および正面側当て板27を互いに固定している。第1固定部31Aは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0132】
背面側押し付け部材25は、正面側当て板27の縦枠部27Aおよび横枠部27Bに対応する位置に、複数のビード51を有する。複数のビード51のうちの2つは、正面側当て板27の湾曲辺42に沿って、背面側押し付け部材25の横方向(冷却水の流れ方向)の略全幅に亘って設けられている。横方向に延びるビード51の一つは、上側の横枠部27Bに対応するように設けられ、横方向に延びるビード51の他の一つは、下側の横枠部27Bに対応するように設けられる。
【0133】
複数のビード51のうちの他の2つは、正面側当て板27の非湾曲辺41に沿って、背面側押し付け部材25の縦方向(冷却水の流れと直交する方向)の略全幅に亘って設けられている。縦方向に延びるビード51の一つは、左側の縦枠部27Aに対応するように設けられ、縦方向に延びるビード51の他の一つは、右側の縦枠部27Aに対応するように設けられる。縦枠部27Aに対応する位置に設けられるビード51は、第1固定部31A同士の間に設けられている。
【0134】
ビード51は、覆い部材26に向かって凸になるように突出して設けられる。複数のビード51は、横枠部27B又は縦枠部27Aに対応する位置で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0135】
本実施形態のシリンダボア壁の保温具11の作用について説明する。第1固定部31A同士の間にビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。また、湾曲辺42に沿って横方向に延びるビード51が一対に設けられる。これらによって、ビード51が設けられる位置で背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材25から浮き上がった覆い部材26がシリンダボア壁の保温具11から脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、第2固定部31Bが省略されている。このため、第2固定部31Bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0136】
第10実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温具11は、該正面側当て板27は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41上の複数個所に設けられ、該複数のビード51は、該一対の非湾曲辺41に沿って該複数の固定部同士の間に設けられる。
【0137】
この構成によれば、非湾曲辺41に沿ってビード51が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材25と覆い部材26との間に侵入してしまうことが防止される。これによって、覆い部材26が背面側押し付け部材25から浮き上がって覆い部材26が脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
[第11実施形態]
【0138】
図28、
図29を参照して、第11実施形態のシリンダボア壁の保温具11について説明する。
【0139】
覆い部材26は、方形の平板状で、且つシリンダボア壁15の外周部の曲面に沿って湾曲するように成形されている。覆い部材26は、ソリッドゴムで形成されることが好ましい。ソリッドゴムは、膨張性がほとんどない。このため、覆い部材26は、予め、開口46からシリンダボア壁15に向けて突出するような形状に形成される。すなわち、覆い部材26は、開口46からシリンダボア壁15に向けて突出した突出部を有している。
【0140】
本実施形態によっても、第1実施形態と略同様の作用効果を奏することができる。
【0141】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、上記実施形態同士を適宜に組み合わせて発明を実現することも当然にできる。