特開2021-55971(P2021-55971A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55971(P2021-55971A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20210312BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20210312BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20210312BHJP
   F23R 3/32 20060101ALI20210312BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
   F02C7/232 B
   F23R3/30
   F23R3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-181123(P2019-181123)
(22)【出願日】2019年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 智広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】穐山 恭大
(57)【要約】
【課題】希薄燃焼方式のガスタービン燃焼器において燃焼振動の発生を抑制して構造信頼性を向上させる。
【解決手段】燃焼室を形成する筒状のライナと、前記ライナの入口に配置され、前記燃焼室に圧縮空気を導く複数の空気孔を備えた空気孔プレート、及び前記空気孔プレートを挟んで前記燃焼室と反対側に配置され、それぞれ対応する空気孔に向かって燃料を噴射する複数の燃料ノズルを備えたバーナとを備え、前記空気孔と前記燃料ノズルが同心円状の複数の環状列を構成しているガスタービン燃焼器において、前記複数の燃料ノズルの燃料流路にそれぞれオリフィスを設けると共に前記複数の燃料ノズルを複数のノズル群に区分し、前記オリフィスの軸方向位置を前記ノズル群毎に変える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を形成する筒状のライナと、
前記ライナの入口に配置され、前記燃焼室に圧縮空気を導く複数の空気孔を備えた空気孔プレート、及び前記空気孔プレートを挟んで前記燃焼室と反対側に配置され、それぞれ対応する空気孔に向かって燃料を噴射する複数の燃料ノズルを備えたバーナとを備え、
前記空気孔と前記燃料ノズルが同心円状の複数の環状列を構成しているガスタービン燃焼器において、
前記複数の燃料ノズルがそれぞれ燃料流路にオリフィスを備えていると共に複数のノズル群に区分され、
前記オリフィスの軸方向位置が前記ノズル群毎に異なっているガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1のガスタービン燃焼器において、前記ノズル群が前記環状列で区分され、同一の環状列に属する燃料ノズルのオリフィスの軸方向位置が統一されているガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1のガスタービン燃焼器において、
対応する環状列に属する複数の燃料ノズルに燃料を分配して供給する複数の燃料キャビティを備えており、
前記環状列が周方向に複数の領域に区分され、前記ノズル群が前記領域で区分されており、同一の環状列にオリフィスの軸方向位置が異なる燃料ノズルが混在しているガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1のガスタービン燃焼器において、最内周の環状列に属するオリフィスの開口径が、最外周の環状列に属するオリフィスの開口径に比べて大きいガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1のガスタービン燃焼器において、前記バーナを複数含んで構成されているガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントでは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO)の排出量を削減するために発電効率の向上が求められている。ガスタービン発電プラントの発電効率の向上には、ガスタービン燃焼器で生成される燃焼ガスの高温化が有効である。しかし、燃焼ガスの高温化には、環境汚染物質である窒素酸化物(NOx)の排出量抑制の技術課題が伴う。
【0003】
ガスタービン燃焼器の燃焼方式は、一般に拡散燃焼方式と予混合燃焼方式に大別される。
【0004】
拡散燃焼方式は、燃料を燃焼室に直接噴射して燃焼室内で燃料と空気を混合する方式であり、燃焼室の上流への火炎の逆流や燃料供給流路内での自着火が発生し難く燃焼安定性に優れている。反面、燃料の完全燃焼に必要な空気の割合(量論混合比)に混合された領域で火炎が形成され、火炎が局所的に高温になる。局所高温領域ではNOxが多く発生するため、水や蒸気、窒素等の不活性媒体を噴射してNOx排出量を削減する必要がある。その結果、不活性媒体を供給する補機の動力が必要となり発電効率が低下する。
【0005】
他方の予混合燃焼方式は、燃料と空気を予め混合して燃焼室に供給する方式であり、燃料を希薄に燃焼させることができるためNOx排出量が少ない。反面、燃焼ガスを高温化するに当たり、燃焼用空気温度を上げかつ予混合器内における燃料濃度を高めると、燃焼室の上流に火炎が逆流するリスクが増加する。そのため燃焼器の構造物の焼損が懸念される。
【0006】
そこで、燃料の分散性を高めて局所的な高温火炎の形成を防止することで、NOx排出量の低減と火炎の逆流の防止を図った希薄燃焼方式の燃焼器が知られている(特許文献1等)。同方式の燃焼器では、例えば複数の空気孔を持つ空気孔プレートと複数の燃料ノズルとを備え、各燃料ノズルから対応する空気孔に向かって燃料を噴射し、燃料流とこれを包囲する空気流とからなる同軸噴流を燃焼室に供給する。この種の燃焼器において、燃料流量の制御や偏差低減のために燃料ノズルにおける燃料流路の途中にオリフィスを設置した構成もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−148734号公報
【特許文献2】特開2016−035336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のような希薄燃焼方式の燃焼器では、燃焼振動の抑制が課題となる。燃焼振動とは、燃焼室内で火炎による発熱と圧力とが変動を強め合うことで発生する一種の共鳴現象である。この燃焼振動が発生すると特定の周波数で振幅の大きな圧力振動が生じることがあり、ガスタービン構造物に亀裂や破損が発生し構造信頼性が低下する懸念がある。
【0009】
本発明の目的は、燃焼振動の発生を抑制して構造信頼性を向上させることができる希薄燃焼方式のガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、燃焼室を形成する筒状のライナと、前記ライナの入口に配置され、前記燃焼室に圧縮空気を導く複数の空気孔を備えた空気孔プレート、及び前記空気孔プレートを挟んで前記燃焼室と反対側に配置され、それぞれ対応する空気孔に向かって燃料を噴射する複数の燃料ノズルを備えたバーナとを備え、前記空気孔と前記燃料ノズルが同心円状の複数の環状列を構成しているガスタービン燃焼器において、前記複数の燃料ノズルがそれぞれ燃料流路にオリフィスを備えていると共に複数のノズル群に区分され、前記オリフィスの軸方向位置が前記ノズル群毎に異なっているガスタービン燃焼器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、希薄燃焼方式のガスタービン燃焼器において燃焼振動の発生を抑制して構造信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略構成図
図2】本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナの要部構成を表す図であってバーナの中心軸を含む断面図
図3】本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図
図4】従来のバーナの構造図
図5】燃焼振動の発生メカニズムの説明図
図6】従来のバーナの燃焼室内の圧力変動分布及び燃料流量変動分布を表す図
図7】第1実施形態のバーナの燃焼室内の圧力変動分布及び燃料流量変動分布を表す図
図8】本発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナの要部構成を表す図であってバーナの中心軸を含む断面図
図9】本発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図
図10】本発明の第3実施形態に係るガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略構成図
図11】本発明の第3実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1実施形態)
−ガスタービンプラント−
図1は本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略構成図である。図2は本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナの要部構成を表す図であってバーナの中心軸を含む断面図である。図3は本発明の第1実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図である。
【0015】
ガスタービンプラント1は、空気圧縮機2、ガスタービン燃焼器(以下、燃焼器と略称する)3、タービン4、発電機6を含んで構成されている。空気圧縮機2は空気A1を吸入して圧縮し、圧縮空気A2を燃焼器3に供給する。燃焼器3は圧縮空気A2とガス燃料Fを混合し燃焼させて燃焼ガスG1を生成する。タービン4は燃焼器3で発生した燃焼ガスG1により駆動され、タービン4を駆動した燃焼ガスG1は排気ガスG2として放出される。発電機6はタービン4の回転動力により駆動されて発電する。なお、ガスタービンは起動開始時のみ起動用モータ7により駆動される。
【0016】
−ガスタービン燃焼器−
燃焼器3は、ガスタービンのケーシング(不図示)に取り付けられており、ライナ(内筒)12、フロースリーブ(外筒)10、バーナ8及び燃料系統200を含んで構成されている。ライナ12は円筒状の部材であり、内部に燃焼室5を形成する。フロースリーブ10はライナ12よりも内径が大きくライナ12の外周を包囲する円筒状の部材であり、ライナ12との間に円筒状の空気流路9を形成する。フロースリーブ10におけるタービン4と反対側(図1中の左側)の端部はエンドカバー13で塞がれている。フロースリーブ10によってライナ12の外周に形成された空気流路9をタービン4から離れる方向に空気圧縮機2からの圧縮空気A2が流通し、空気流路9を流れる圧縮空気A2によってライナ12の外周面が対流冷却される。加えて、ライナ12の壁面には多数の孔が形成されており、空気流路9を流れる圧縮空気A2の一部A3がそれら孔を通って燃焼室5に流入し、ライナ12の内周面をフィルム冷却する。そして、空気流路9を通過してバーナ8に到達した圧縮空気A2が、燃料系統200からバーナ8に供給されるガス燃料Fと共に燃焼室5に噴出して燃焼する。燃焼室5では圧縮空気A2とガス燃料Fとの混合気が燃焼して燃焼ガスG1が生成され、燃焼器尾筒(不図示)を介してタービン4に供給される。
【0017】
図1に示すように、バーナ8はライナ12の入口(タービン4と反対側の端部開口)に1つだけ配置されており、空気孔プレート20、燃料ノズル21−23及び燃料分配器(燃料ヘッダ)24を備えている。
【0018】
空気孔プレート20はライナ12と同軸の円形のプレートであり、ライナ12の入口(タービン4と反対側の端部開口)に配置されている。この空気孔プレート20には燃焼室5に圧縮空気A2を導く複数の空気孔51−53が備っている。複数の空気孔51−53はライナ12の中心軸Oを中心とする同心円状の複数の環状列を構成している。1列目(最内周)の環状列に属するのが空気孔51、2列目の環状列に属するのが空気孔52、3列目(最外周)の環状列に属するのが空気孔53である。本実施形態では空気孔51−53に旋回角が付けられており、各孔の出口が入口に対して周方向の一方側にずれている。
【0019】
燃料ノズル21−23は燃料分配器24に支持されて、空気孔プレート20を挟んで燃焼室5と反対側に配置されている。燃料ノズル21−23は空気孔51−53に数や位置が対応しており(1つの空気孔に1つの燃料ノズルが対応しており)、空気孔51−53と共にライナ12の中心軸Oを中心とする同心円状の複数の環状列を構成している。1列目(最内周)の環状列に属するのが燃料ノズル21、2列目の環状列に属するのが燃料ノズル22、3列目(最外周)の環状列に属するのが燃料ノズル23である。燃料ノズル21−23は対応する空気孔の入口に噴射口を向けており、それぞれ対応する空気孔に向かってガス燃料Fを噴射する。このように多数の燃料ノズルから対応する空気孔に向けて燃料を噴射することで、燃料流の周囲が空気流で覆われた燃料と空気の同軸噴流が各空気孔から燃焼室5に分散して噴射される。
【0020】
なお、環状列の円周の違いから、外側の環状列ほど燃料ノズル及び空気孔の数が多い。つまり、1列目(最内周)の燃料ノズル21及び空気孔51の数(図3の例では各6個)は、2列目の燃料ノズル22及び空気孔52の数(図3の例では各12個)よりも少ない。2列目の燃料ノズル22及び空気孔52の数は3列目(最外周)の燃料ノズル23及び空気孔53の数(図3の例では各18個)よりも少ない。
【0021】
燃料分配器24は燃料ノズル21−23に燃料を分配して供給する部材であり、複数の燃料キャビティ25,26を内部に含んで構成されている。燃料キャビティ25,26は、対応する環状列に属する複数の燃料ノズルにガス燃料Fを分配して供給する役割を果たす空間である。燃料キャビティ25はライナ12の中心軸O上に円柱状に形成され、燃料キャビティ26は燃料キャビティ25の外周を囲うようにして円筒状に形成されている。本実施形態では各燃料ノズル21が燃料キャビティ25に接続し、各燃料ノズル22,23が燃料キャビティ26に接続している。燃料キャビティ25にガス燃料Fが供給されると、最内周の環状列に配置された各燃料ノズル21にガス燃料Fが分配されて噴出し、各空気孔51から燃焼室5に圧縮空気A2と共にガス燃料Fが噴出する。燃料キャビティ26にガス燃料Fが供給されると、2列目及び3列目の環状列に配置された各燃料ノズル22,23にガス燃料Fが分配されて噴出し、空気孔52,53から燃焼室5に圧縮空気A2と共にガス燃料Fが噴出する。
【0022】
ここで、本実施形態においては、複数の燃料ノズル21−23のそれぞれが燃料流路にオリフィス71−73を備えている。燃料ノズルには1本につきオリフィスが1つだけ備わっている。燃料ノズル21−23(全燃料ノズル)は複数のノズル群に区分され、オリフィスの軸方向位置がノズル群毎に異なっている。本実施形態では環状列でノズル群が区分してあり、最内周の燃料ノズル21の列が第1のノズル群、2列目の燃料ノズル22の列が第2のノズル群、最外周の燃料ノズル23の列が第3のノズル群である。そして、オリフィス71は各燃料ノズル21に、オリフィス72は各燃料ノズル22に、オリフィス73は各燃料ノズル23に設けられている。なお、図3においてハッチングなしで表した空気孔(本例では空気孔51)がオリフィス71に対応している。右上がりのハッチングで区別した空気孔(本例では空気孔52)がオリフィス72に対応しており、右下がりのハッチングで区別した空気孔(本例では空気孔53)がオリフィス73に対応している。
【0023】
オリフィス71−73は軸方向位置がそれぞれ相違している。オリフィス72の出口から燃料ノズル22の出口(噴射口)までの距離L2は、オリフィス71の出口から燃料ノズル21の出口までの距離L1よりも長い。オリフィス73から燃料ノズル23の出口までの距離L3は距離L2よりも更に長い(L1<L2<L3)。燃料ノズル21−23の出口の軸方向位置は同一であり、燃焼室5から近い順にオリフィス71,72,73が配置されている。本実施形態では、オリフィス71は燃料ノズル21の軸方向の中央かそれよりも燃焼室5に近い位置に、オリフィス73は燃料ノズル23の入口部に、オリフィス72はオリフィス71,73の中間の軸方向位置に、それぞれ位置している。但し、燃焼室5からの近さの順は変更可能であり、例えばオリフィス73,72,71の順に燃焼室5から近い構成としても良いし、オリフィス73,71,72の順に燃焼室5から近い構成としても良い。
【0024】
上記の通り、本実施形態では同一の環状列に属する燃料ノズルのオリフィスの軸方向位置が統一されており、オリフィスの位置が同じ全ての燃料ノズルに同一の燃料キャビティから燃料が供給されるようになっている。全ての燃料ノズル21には同位置にオリフィス71が備わっており、これら燃料ノズル21には同一の燃料キャビティ25から燃料が供給される。また、全ての燃料ノズル22には同位置にオリフィス72が備わっており、同一の燃料キャビティ26から燃料が供給される。全ての燃料ノズル23には同位置にオリフィス73が備わっていて燃料キャビティ26から燃料が供給される。
【0025】
また、本実施形態では、最内周の環状列に属するオリフィス71の開口径が、最外周の環状列に属するオリフィス73の開口径に比べて大きくしてある。2列目の環状列に属するオリフィス72の開口径は、オリフィス71の開口径以上でオリフィス73の開口径以下の範囲で設定することができるが、本実施形態ではオリフィス73の開口径に合わせてある。なお、燃料ノズル21−23の出口(噴射口)の開口径はオリフィス71−73の開口径よりも大きく、オリフィス71−73で絞られた燃料流を更に絞って圧力損失が増加しないようにしてある。
【0026】
燃料系統200は、燃料供給源56、主流配管57、分岐配管58,59、燃料遮断弁60、燃料流量調整弁61,62を含んで構成されている。燃料供給源56からは主流配管57が延び、この主流配管57は2つの分岐配管58,59に分岐している。分岐配管58は燃料キャビティ25に、分岐配管59は燃料キャビティ26に接続している。燃料遮断弁60は主流配管57に、燃料流量調整弁61は分岐配管58に、燃料流量調整弁62は分岐配管59にそれぞれ設けられている。燃料遮断弁60を開けることで分岐配管58,59にガス燃料Fが供給され、燃料遮断弁60を閉じることで分岐配管58,59へのガス燃料Fの供給が遮断される。燃料流量調整弁61,62は分岐配管58,59を流れる燃料の流量を開度に応じて調整する役割を果たし、全閉状態とすることで分岐配管58,59の燃料の流れを遮断することもできる。例えば燃料遮断弁60を開放し、燃料流量調整弁61の開度を全閉から上げていくことで燃料キャビティ25への燃料の供給流量が増加し、燃料ノズル21からの燃料噴射量、ひいては空気孔51から噴出する同軸噴流の燃空比が増加していく。同様に燃料流量調整弁62の開度を全閉から上げていくことで燃料キャビティ26への燃料の供給流量が増加し、燃料ノズル22,23からの燃料噴射量、ひいては空気孔52,53から噴出する同軸噴流の燃空比が増加していく。
【0027】
なお、燃料供給源56から供給されるガス燃料Fは、標準的なガスタービン燃料である天然ガスの他、石油ガス、或いはコークス炉ガスや製油所オフガス、石炭ガス等といった水素や一酸化炭素を含んだガスを使用することができる。
【0028】
−燃焼振動の発生原理−
従来のバーナ構造を図4に示す。同図には、比較のために本実施形態と同様に3列の同心円状の環状列に空気孔及び燃料ノズルを複数配置したバーナを例示しており、3列の全ての燃料ノズルに軸方向位置が同一のオリフィスZが一様に設置されている。
【0029】
図5は燃焼振動の発生メカニズムの説明図である。同図(a)−(f)のグラフは、バーナの燃料ノズル先端の出口近傍(図4の領域E)やバーナ下流の燃焼室内(図4の領域C)における圧力、燃料の供給差圧、燃料流量、発熱の時間変化を表している。近年、燃焼室内の圧力変動と火炎による発熱変動の干渉によって、以下の(a)−(f)のようなメカニズムで燃焼振動が引き起こされることが分かった。(a)−(f)の説明は図5(a)−(f)の説明に相当する。
(a)燃焼室内におけるバーナ下流の領域(領域C)の圧力Pcの変動(変動周期をTとする)が発生する。
(b)(a)と同様に燃料ノズル先端の出口近傍(領域E)の圧力Peが圧力Pcと同位相で変動する。
(c)燃料分配器内(図4の領域S)の燃料の圧力Psは一定であるため、燃料の供給差圧(Ps−Pe)が圧力Pc,Peと逆位相で変動する。
(d)燃料ノズルから領域Eに噴出した燃料の流量が燃料の供給差圧(Ps−Pe)と同位相で変動し、領域Eにおける燃空比(空気に対する燃料の流量比)も同位相で変動する。
(e)領域Eの燃料流量変動に対して、領域Eから領域Cへの燃料の移流時間τconv分の位相遅れで領域Cの燃料流量が変動し、領域Cにおける燃空比も同位相で変動する。
(f)領域Cにおいて燃料と空気の混合気が燃焼して発熱し、燃空比と同位相で火炎による発熱が変動する。
【0030】
以上の(a)−(f)の一連の変動が発生し、領域Cにおいて圧力変動(図5(a))と発熱変動(図5(f))が同位相となって強め合い、その結果として燃焼振動が発生する。
【0031】
図6は従来のバーナの燃焼室内の圧力変動分布及び燃料流量変動分布を表す図である。同図には、圧力変動分布について、軸方向に変動する振幅の最大/最小(変動振幅の山/谷)を濃淡で表してある。また、燃料流量変動分布について、軸方向に変動する振幅の最大/最小(変動振幅の山/谷)を正弦波で表してある。燃焼室内の圧力変動分布について、同位相の点を通る面はバーナ面(空気孔プレート)に対して平行となる。そして、従来のバーナにおいては、3列の全ての燃料ノズルのオリフィスZが同じ軸方向位置に設置されているため、燃料ノズルから噴出する燃料の流量変動分布についても、同位相の点を通る面がバーナ面に対して平行になってしまう。その結果、燃焼室において圧力変動と燃料流量変動が位相の一致により強め合う領域が広くなり、3列の空気孔の下流領域全体に燃焼振動が発生し易くなる。
【0032】
−効果−
(1)本実施形態によれば、ノズル群毎にオリフィスの軸方向位置が異なっていることで部分負荷条件においても燃焼振動の発生を抑制できる。原理を以下に説明する。
【0033】
図7は第1実施形態のバーナの燃焼室内の圧力変動分布及び燃料流量変動分布を表す図である。同図においても図6と同様に圧力変動分布及び燃料流量変動分布の変動振幅の山/谷をそれぞれ濃淡及び正弦波で示してある。燃焼室内の圧力変動分布については、本実施形態においても従来のバーナと同じく同位相の点を通る面がバーナ面に対して平行になる。それに対し、本実施形態ではノズル群毎にオリフィスの軸方向位置が変えてあるため、燃料ノズル21−23から噴出する燃料の流量変動分布については、同位相の点を通る面がバーナ面に対して傾斜する。その結果、圧力変動と燃料流量変動の位相が一致する領域が局所的になり、空気孔51−53の下流域全体で燃焼振動が発生するようなことがなくなる。これにより燃焼振動の発生を抑制することができ、希薄燃焼方式のガスタービン燃焼器において構造信頼性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、多数の燃料ノズル21−23から分散してガス燃料Fの燃料流を噴射し、各燃料流を個別に対応する空気孔51−53に通すことで、各燃料流を圧縮空気A2で包囲された同軸噴流として燃焼室5に噴出されることができる。これにより燃料の分散性が高められてNOx排出量を低減することができる。
【0035】
(2)本実施形態に係るガスタービンの運転を開始する場合、1列目(最内周)の燃料ノズル21にガス燃料Fを供給して着火した後、部分負荷条件で2,3列目の燃料ノズル22,23にもガス燃料Fを供給して定格負荷条件まで負荷を上昇させる。このように運転される燃焼器では、環状列毎に燃料ノズルの長さや出口(噴射口)の開口径等の仕様が決定されることが多い。そのため、オリフィスの仕様も環状列毎に仕様を決める、つまり同一仕様のノズルには同一のオリフィスを同位置に設けることで、製作する燃料ノズルの種類を抑えることができ、燃料ノズルの製作コスト低減に貢献できる。
【0036】
その観点において、本実施形態では同一の環状列に属する燃料ノズルのオリフィスの軸方向位置が統一してあるので、燃料ノズルの製作コスト、ひいてはバーナ8、燃焼器3、ガスタービンプラントの製作コストが抑えられる。
【0037】
(3)本実施形態では、最内周の環状列に属する燃料ノズル21に設けたオリフィス71の開口径が、最外周の環状列に属する燃料ノズル23に設けたオリフィス73の開口径に比べて大きい。このように燃料ノズルの本数が少ない内周側の環状列ほどオリフィスの開口径を大きくすることで、燃料の供給差圧の過度な増加を抑えることができる。
【0038】
但し、前述した本質的効果(1)を得る限りにおいてはオリフィスの開口径に差を付ける必要は必ずしもなく、オリフィス71−73の開口径を統一した構成とすることができる。
【0039】
(第2実施形態)
−構成−
図8は本発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナの要部構成を表す図であってバーナの中心軸を含む断面図である。図9は本発明の第2実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図である。これら図8及び図9は第1実施形態の図2及び図3に対応している。
【0040】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、環状列が周方向に複数の領域X1−X3に区分されており、ノズル群がこれら領域X1−X3で区分され、同一の環状列にオリフィスの軸方向位置が異なる燃料ノズルが混在している点である。領域X1に属するオリフィス71−73はノズル出口から距離L4の同一の軸方向位置にあり、領域X2に属するオリフィス71−73はノズル出口から距離L5(>L4)の同一の軸方向位置にある。図8では図示されていないが、領域X3に属するオリフィス71−73はノズル出口から距離L6(>L5)の同一の軸方向位置にある。図9においてハッチングなしで表した領域X1の空気孔51−53が距離L4の位置にあるオリフィス71−73に対応している。右上がりのハッチングで区別した領域X2の空気孔51−53が距離L5の位置にあるオリフィス71−73に、右下がりのハッチングで区別した領域X3の空気孔51−53が距離L6の位置にあるオリフィス71−73に対応している。このように、1列目(最内周)の環状列には、オリフィス71の軸方向位置が異なる燃料ノズル21が混在している。同じく2列目の環状列にはオリフィス72の軸方向位置が異なる燃料ノズル22が混在しており、3列目(最外周)の環状列にはオリフィス73の軸方向位置が異なる燃料ノズル23が混在している。
【0041】
燃料ノズル21−23及び空気孔51−53の構成や燃料ノズル1本につきオリフィスが1つだけ備わっている点、内周のオリフィス71の開口径が大きくなっている点を含め、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0042】
−効果−
本実施形態においては、第1実施形態と同様の効果(1)及び(3)に加え、以下の効果が得られる。本実施形態に係るガスタービンの運転を開始する場合、1列目(最内周)の燃料ノズル21にガス燃料Fを供給して着火した後、部分負荷条件で2,3列目の燃料ノズル22,23にもガス燃料Fを供給して定格負荷条件まで負荷を上昇させる。この間、1列目の燃料ノズル21のみを使用した状態でも、オリフィス71の軸方向位置が異なる燃料ノズル21が混在しており、それら燃料ノズル21から噴出する燃料の流量変動について同位相の点を通る面がバーナ面に対して傾斜する。これにより、ガスタービンの起動過程の各段階において、圧力変動と燃料流量変動の位相が一致する領域の形成を抑制して燃焼振動の発生を抑制することができる。
【0043】
(第3実施形態)
−構成−
図10は本発明の第3実施形態に係るガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略構成図、図11は本実施形態に係るガスタービン燃焼器に備えられたバーナを燃焼室から見た図である。本実施形態が第1実施形態及び第2実施形態と相違する点は、バーナを複数含んで構成されたマルチバーナである点である。本実施形態に係る燃焼器3は、パイロットバーナ31と複数(本例では6つ)のメインバーナ32を備えており、中央に配置した1つのパイロットバーナ31の周囲を複数のメインバーナ32が囲うようにして配置されている。パイロットバーナ31及び個々のメインバーナ32には、第1実施形態又は第2実施形態のバーナ8を適用することができる。例えばパイロットバーナ31及びメインバーナ32の全てに第1実施形態のバーナ8を適用することもできるし、パイロットバーナ31及びメインバーナ32の全てに第2実施形態のバーナ8を適用することもできる。第1実施形態のバーナ8と第2実施形態のバーナ8を適宜混在させることもできる。空気孔プレート20についてはパイロットバーナ31と複数のメインバーナ32とで共用する(1枚の空気孔プレート20に各バーナの空気孔51−53を形成する)ことができる。
【0044】
燃料系統200については、パイロットバーナ31及びメインバーナ32の総数(本例では7)と同数組の分岐配管58,59が主流配管57から分岐し、対応するバーナの燃料キャビティ25,26に接続している。メインバーナ32については、少なくとも2つのバーナで燃料系統(分岐配管59及び燃料流量調整弁62)を共用する構成としても良い。第1実施形態及び第2実施形態と同様、主流配管57及び分岐配管58,59には、それぞれ燃料遮断弁60、燃料流量調整弁61,62が設けられている。
【0045】
その他の点について、本実施形態は第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0046】
−効果−
第1実施形態又は第2実施形態のバーナ構成をパイロットバーナ31及びメインバーナ32に適用してマルチバーナを構成することにより、大容量のガスタービンを対象としても第1実施形態、第2実施形態又は双方の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
3…ガスタービン燃焼器、5…燃焼室、8…バーナ、12…ライナ、20…空気孔プレート、21−23…燃料ノズル、25,26…燃料キャビティ、31…パイロットバーナ(バーナ)、32…メインバーナ(バーナ)、51−53…空気孔、71−73…オリフィス、A2…圧縮空気、X1−X3…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11