ある局面に従う航空機に搭載されたカメラにより撮影された画像データをもとに被点検物について巡視点検するための巡視点検システムであって、画像データから被点検物に異常が生じた可能性のある異常箇所を特定する異常箇所検出部と、画像データ内の異常箇所検出部で特定された異常箇所の異常画素が第1の所定数以上であるか否かを判断し、異常箇所が第1の所定数以上である場合には、異常状態と判別する異常判別部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に従う巡視点検について説明する図である。
【0022】
図1に示されるように、巡視点検システム1は、例えば発電所や変電所から送電するための送電設備(送電線、鉄塔)200について、通常時あるいは事故発生時において航空機、例えばヘリコプター100を利用して、巡視点検するためのシステムである。
【0023】
なお、本例においては、ヘリコプター100を利用する場合について説明するが、特に有人飛行体に限られず無人飛行体(UAV(Unmanned aerial vehicle))を用いることも可能である。
【0024】
巡視点検システム1は、ヘリコプター100に搭載されたカメラにより撮影された画像データをもとに、送電設備200に含まれる複数の異なる被点検物(例えば、架空地線、送電線等)に生じた異常箇所を検出する。
【0025】
実施形態1に従う巡視点検システム1は、例えば情報処理装置を用いて構成される。なお、ネットワークを介して複数の装置として実現することも可能である。例えば、クラウドコンピューティングにより実現されるものとし、ネットワーク(インターネット)を介して接続された1台のサーバ、あるいは複数のサーバが協働して動作することで実現されても良い。
【0026】
図2は、実施形態1に従う巡視点検システム1の構成を説明する図である。
図2を参照して、巡視点検システム1は、プロセッサ2と、メモリ4と、記憶装置6と、入出力I/F8と、表示装置10と、入力装置12と、通信装置14とを含む。
【0027】
各部は互いに内部バスで接続されており、相互にデータの授受が可能に設けられている。
【0028】
プロセッサ2は、メモリ4に記憶された基本プログラム(OS)やアプリケーションプログラムを実行して、各種の機能を実現する。例えば、プロセッサ2は、巡視点検制御プログラムを実行することでヘリコプター100に搭載されたカメラにより撮影された画像をもとに、送電施設の被点検物に生じた異常箇所を検出し、その検出結果をもとに巡視点検結果を出力する処理を実行する。
【0029】
メモリ4は、プロセッサ2により実行されるプログラムや一時的なデータ等を記憶する。
【0030】
記憶装置6は、各種のプログラムや各種データが記憶される。記憶装置6に記憶されるデータには、ヘリコプター100から受信される取得データ(画像データ、位置データ)、画像データから被点検物に生じた異常箇所を検出するための画像処理に用いる学習モデルデータ、異常箇所の画像データ等を含む。
【0031】
入出力I/F8は、外部機器とデータを送受信するためのインタフェースである。入出力I/F8は、例えば可搬型のメモリ媒体を介してデータを入出力することができる。
【0032】
表示装置10は、LCD(Liquid Crystal Display)などであり、プロセッサ2の処理に応じた画面を表示させる。
【0033】
入力装置12は、キーボードやポインティングデバイスなどであり、作業者等により操作される。
【0034】
通信装置14は、無線通信あるいは有線通信を制御するもので、ヘリコプター100との間、あるいは無線公衆網に収容された基地局との間の無線通信あるいは有線通信を制御する。通信装置14は、ネットワークを通じた外部装置、例えば他の情報処理装置等との通信を制御する。ネットワークは、無線あるいは有線によるWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等を含む。
【0035】
巡視点検システム1は、ヘリコプター100に搭載されたカメラにより撮影された画像データをもとにした被点検物に生じた異常箇所の検出、異常箇所の画像の確認処理などが実行される。
【0036】
ヘリコプター100は、GNSS(Global Navigation Satellite System))を利用して生成される位置データ等、例えばGPS(Global Positioning System)衛星から受信されるGPS信号から生成する位置データ等を記憶しながら巡視点検対象とする送電設備200を撮影して画像データを記憶する。
【0037】
なお、巡視点検システム1は、ヘリコプター100に搭載されたカメラにより撮影された画像データを通信装置14を用いてリアルタイムに受信して、被点検物に生じた異常箇所を検出することも可能であるが、カメラにより撮影された画像データをディスク等の情報記憶媒体に一旦記録後、当該データを記憶装置6に格納した後に被点検物に生じた異常箇所を検出するようにしてもよい。
【0038】
なお、本例においては、巡視点検システム1は、ヘリコプター100の外部に設けられた構成について説明するが、ヘリコプター100内に搭載していてもよい。
【0039】
図3は、実施形態1に従う巡視点検システム1において、プロセッサ2により巡視点検制御プログラムを実行することにより実現される機能構成を示すブロック図である。
【0040】
図3に示されるように、プロセッサ2は、巡視点検制御プログラムに基づいて、例えば学習モデル記憶部20と、異常箇所検出部22と、取得データ記憶部24と、異常判定部26と、確認データ記憶部28との機能を実現する。
【0041】
学習モデル記憶部20は、巡視点検システム1で用いる学習モデルを記憶する。学習モデルは、ヘリコプター100に搭載されたカメラによって取得された画像データから電線領域と異常箇所とを画像中から検出するためのもので、被点検物に生じる異常状態の特徴を表す。被点検物に生じた異常としては、例えば送電線の場合にはアーク痕がある。
【0042】
図4は、実施形態1に従う学習モデルを説明する図である。
図4に示されるように、実際に生じた異常箇所の画像データとともに、当該画像データに関する情報を付加したラベル画像データを組み合わせて学習済みモデルとして記憶する。
【0043】
具体的には、背景画像(ラベル「0」)と、電線画像(ラベル「1」)と、異常画像(ラベル「2」)とに分類されたラベル画像データを記憶する。なお、本例においては3つに分類されたラベル画像データを記憶する場合について説明するが、電線画像(ラベル「1」)と、異常画像(ラベル「2」)とに分類されたラベル画像データを記憶するようにしても良い。
【0044】
巡視点検システム1は、学習モデル記憶部20に記憶された学習モデルを用いて画像データから異常箇所を探索することで、確実に被点検物に生じた異常箇所を検出できるようにすることができる。
【0045】
なお、実際に生じた異常箇所の画像データだけでなく、被点検物に生じる異常/劣化の状態を表す擬似的な画像(類似画像)をニューラルネットワークを活用したディープラーニング(深層学習)の技術を利用して学習済みモデルを生成するようにしてもよい。ディープラーニング(深層学習)の技術を利用して、異常箇所の画像(異常画像)と異常箇所の周辺にある正常画像の組み合わせと、正常画像と異常画像とを組み合わせる比を変更しながら類似画像を生成することで、大量の類似画像に基づいた学習モデルを学習(生成)することも可能である。
【0046】
取得データ記憶部24は、ヘリコプター100から取得された取得データを記憶する。取得データには、例えば、被点検物を撮影した動画像データ(静止画像データでも良い)、画像撮影時のヘリコプター100の位置を示す位置データ(緯度、経度、高度)等が含まれる。
【0047】
異常箇所検出部22は、取得データ記憶部24に記憶された取得データから、学習モデル記憶部20に記憶された学習モデル(被点検物の異常箇所の特徴)をもとにした画像処理により電線領域および異常箇所を検出する。具体的には、異常箇所検出部22は、取得された画像データに関して学習モデルを用いて、当該画像データに対応する
図4で説明したラベル画像データを生成する。例えば取得された画像データのうち背景として判断された画素はラベル「0」に設定する。また、取得された画像データのうち電線として判断された画素はラベル「1」に設定する。取得された画像データのうち異常として判断された画素はラベル「2」に設定する。ラベル画像データにラベル「2」が含まれている場合に当該取得された画像データは異常候補画像と判断される。異常箇所検出部22は、取得データ記憶部24に記憶された画像データとともに、生成したラベル画像データを異常候補画像データとして異常判定部26に出力する。
【0048】
異常判定部26は、異常箇所検出部22で検出された異常の候補画像(異常候補画像とも称する)について実際に異常が有るか否かを判定する。
【0049】
確認データ記憶部28は、異常判定部26で異常候補画像が異常であることが確認された異常画像データ、検出位置、検出日時などを示す各データを確認データとして記憶する。これにより簡易に異常箇所を確認することが可能である。
【0050】
図5は、実施形態1に従う異常判定部26における異常候補画像データの異常判定処理について説明する図である。
【0051】
本例においては、異常判定部26は、異常候補画像データに含まれるラベル画像データに基づいて異常が有るか否かを判定する。
【0052】
図5(A)に示されるように、異常候補画像データ(ラベル画像データ)に関して、異常箇所の候補画素(ラベル「2」)の個数が第1の所定数以上である場合には、当該異常候補画像データは異常と判定する。傷や経年劣化に従って多数の異常と判定される画素が多い画像の場合には異常有りと判断する。
【0053】
図5(B)に示されるように、異常候補画像データ(ラベル画像データ)に関して、異常箇所の候補画素(ラベル「2」)の個数が第1の所定数以上で無い場合であっても、集合群の異常箇所の候補画素(ラベル「2」)が第2の所定数以上である場合には、当該異常候補画像データは異常と判定する。アーク痕のような局所的に集合群の異常と判定される画素がある画像の場合には異常有りと判断する。
【0054】
図5(C)に示されるように、異常候補画像データ(ラベル画像データ)に関して、異常箇所の候補画素(ラベル「2」)の個数が第1の所定数以上で無く、かつ集合群の異常箇所の候補画素(ラベル「2」)の個数が第2の所定数以上でない場合であっても、電線の外周領域に隣接する異常箇所の候補画素(ラベル「2」)が有る場合には、異常と判定する。素線切れのような外周領域に異常と判定される画素がある画像の場合には異常有りと判断する。
【0055】
図5(D)に示されるように、異常候補画像データ(ラベル画像データ)に関して、異常箇所の候補画素が複数ある場合であっても第1の所定数未満であり、かつ集合群の異常箇所の候補画素が第2の所定数未満である場合には、当該異常候補画像データは異常でないと判定する。異常と判定される画素がある場合であってもその個数が少ない場合には異常無しと判断する。
【0056】
図5(E)に示されるように、異常候補画像データ(ラベル画像データ)に関して、異常箇所の候補画像が電線の外周領域の外にある場合には、当該異常候補画像データは異常ではないと判定する。電線の外周領域の外であるためノイズの可能性が高いため異常と判定される画素がある場合であっても異常無しと判断する。
【0057】
図6は、実施形態1に従う巡視点検システム1における異常判定処理のフローについて説明する図である。
【0058】
図6を参照して、巡視点検システム1は、画像データを取得する(ステップS2)。
具体的には、ヘリコプター100に搭載されたカメラによって撮像された画像データが記憶装置6に格納される。取得データ記憶部24は、ヘリコプター100から取得された取得データを記憶する。異常箇所検出部22は、取得データ記憶部24に記憶された画像データを取得する。
【0059】
次に、巡視点検システム1は、電線領域と異常箇所とを検出する(ステップS4)。異常箇所検出部22は、取得データ記憶部24に記憶された画像データと、学習モデル記憶部20に格納されている学習モデルとに基づいて異常箇所を検出する。異常箇所検出部22は、学習モデルを用いてラベル画像データを生成し、取得データ記憶部24に記憶された画像データに関して異常箇所が有ると判定された場合には異常候補画像データとして異常判定部26に出力する。
【0060】
次に、巡視点検システム1は、異常を判定する(ステップS6)。異常判定部26は、異常候補画像について実際に異常で有るか否かを判定する。異常判定処理の詳細については後述する。
【0061】
そして、処理を終了する(エンド)。
図7は、実施形態1に従う異常判定部26の異常判定処理のサブルーチンフローを説明する図である。
【0062】
図7に示されるように、巡視点検システム1は、異常画素が第1の所定数以上であるか否かを判定する(ステップS10)。異常判定部26は、取得した異常候補画像データに含まれる異常箇所と判定された異常画素が第1の所定数以上であるか否かを判定する。本例においては、異常判定部26は、ラベル画像データに含まれるラベル「2」の個数をカウントして、当該カウントした個数が第1の所定数以上であるか否かを判定する。第1の所定数は任意の数に設定することが可能である。
【0063】
ステップS10において、巡視点検システム1は、異常画素が第1の所定数以上であると判定した場合(ステップS10においてYES)には、異常有りと判定する(ステップS18)。異常判定部26は、ラベル画像データに含まれるラベル「2」の個数が第1の所定数以上であると判定した場合には、
図5(A)で説明したように傷や経年劣化に従って異常の可能性が高い画像データを異常有りと判定する。
【0064】
そして、処理を終了する(リターン)。
次に、巡視点検システム1は、異常画素が第1の所定数以上で無いと判定した場合(ステップS10においてNO)には、集合群の異常画素が第2の所定数以上であるか否かを判定する(ステップS12)。異常判定部26は、取得した異常候補画像データに含まれる異常箇所と判定された異常画素が第1の所定数以上で無い場合には、集合群の異常画素が第2の所定数以上であるか否かを判定する。本例においては、異常判定部26は、ラベル画像データに含まれる互いに隣接するラベル「2」の個数をカウントして、当該カウントした個数が第2の所定数以上であるか否かを判定する。第2の所定数は任意の数に設定することが可能である。
【0065】
ステップS12において、巡視点検システム1は、集合群の異常画素が第2の所定数以上有ると判定した場合(ステップS12においてYES)には、異常有りと判定する(ステップS18)。異常判定部26は、ラベル画像データに含まれる互いに隣接するラベル「2」の個数が第2の所定数以上であると判定した場合には、
図5(B)で説明したようにアーク痕のような異常の可能性が高い画像データを異常有りと判定する。
【0066】
そして、処理を終了する(リターン)。
次に、巡視点検システム1は、集合群の異常画素が第2の所定数以上で無いと判定した場合(ステップS12においてNO)には、電線の外周領域に隣接する異常画素が有るか否かを判定する(ステップS14)。異常判定部26は、取得した異常候補画像データに含まれる異常箇所と判定された異常画素が第1の所定数以上で無く、集合群の異常画素が第2の所定数以上で無い場合には、電線の外周領域に隣接する異常画素があるか否かを判定する。本例においては、異常判定部26は、ラベル画像データに含まれるラベル「1」に基づいて電線の外周領域を特定する。異常判定部26は、特定された電線の外周領域に隣接するラベル「2」の異常画素があるか否かを判定する。
【0067】
ステップS14において、巡視点検システム1は、電線の外周領域に隣接する異常画素が有ると判定した場合(ステップS14においてYES)には、異常有りと判定する(ステップS18)。異常判定部26は、特定された電線の外周領域に隣接するラベル「2」の異常画素がある場合には、
図5(C)で説明したような素線切れのような異常の可能性が高い画像データを異常有りと判定する。
【0068】
そして、処理を終了する(リターン)。
一方、ステップS14において、巡視点検システム1は、電線の外周領域に隣接する異常画素が無いと判定した場合(ステップS14においてNO)には、異常無しと判定する(ステップS16)。異常判定部26は、
図5(D)あるいは
図5(E)で説明したようにノイズのような異常の可能性が低い画像データを異常無しと判定する。
【0069】
そして、処理を終了する(リターン)。
なお、ステップS10,S12,S14の判定処理を実行する場合について説明したが、これに限られずいずれか1つとしても良いし、任意の組み合わせで2つの判定処理を実行することも可能である。
【0070】
実施形態1に従う巡視点検システム1は、上記に従って被点検物(例えば、架空地線、送電線等)に生じた異常箇所を画像処理によって簡易な方式で検出することが可能である。また、実施形態1に従う巡視点検システム1は、被点検物(例えば、架空地線、送電線等)の傷や経年劣化による異常のみならず、アーク痕や素線切れ等の異常に対しても精度の高い異常検出が可能である。
【0071】
(実施形態2)
上記の実施形態1においては、画像データの異常の判定方式について説明した。一方で、ヘリコプター100に搭載されたカメラで取得した画像データに関して撮影対象の被点検物(例えば、架空地線、送電線等)が正常に撮影されていない可能性もある。
【0072】
図8は、実施形態2に従う巡視点検システム1において、プロセッサ2により巡視点検制御プログラムを実行することにより実現される機能構成を示すブロック図である。
【0073】
図8に示されるように、
図3で説明した構成と比較して、データ検証部29をさらに備えた点が異なる。その他の構成については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0074】
データ検証部29は、取得データ記憶部24に格納されている取得された画像データが正常な画像データか否かを検証する。すなわち、被点検物が正常に撮影されているか否かを検証する。本例においては、被点検物が正常に撮影されていないと判断された場合には当該被点検物を再撮影する。本例においては、被点検物の一例として電線を撮影する場合について説明する。
【0075】
図9は、実施形態2に従うデータ検証部29の構成について説明する図である。
図9に示されるようにデータ検証部29は、特定部30と、良否判定部32と、設定部34と、編集部36とを含む。
【0076】
特定部30は、画像データから被点検物である電線を特定する。
良否判定部32は、画像データの被点検物である電線の撮影状態の良否を判定する。
【0077】
設定部34は、良否判定部32の判定結果に基づいて撮影状態が良い画像データを良好画像データとして、撮影状態が良くない画像データを不良画像データとして記憶装置6に記録する。
【0078】
編集部36は、記憶装置6に記録された不良画像データを良好な再撮影画像データに変更する。
【0079】
図10は、実施形態2に従う良否判定部32における画像データの良否判定処理について説明する図である。
【0080】
良否判定部26は、画像データに基づいて撮影状態が不良か否かを判定する。
図10(A)に示されるように、被点検物である電線の一部が欠落しているような画像データの場合には撮影状態が不良であり、不良画像データと判定する。具体的には、画像データに含まれる被点検物の電線幅が所定値以下の箇所がある場合には不良画像データと判定する。
【0081】
図10(B)に示されるように、被点検物である電線の一部が欠落していない画像であっても被点検物の大きさが小さい場合には撮影状態が不良であり、不良画像データと判定する。具体的には、画像データに含まれる被点検物の電線幅が所定値以下の箇所がある場合には不良画像データと判定する。
【0082】
図10(C)に示されるように、画像データに含まれる被点検物である電線幅が所定値を超える場合であっても外周領域が欠落しているような画像データの場合には撮影状態が不良であり、不良画像データと判定する。具体的には、画像データに含まれる被点検物の電線の外周領域が存在するか否かを判定し、存在しない場合には不良画像データと判定する。例えば、画像データの電線を構成する画素の上下方向に電線以外の画素が存在するか否かにより外周領域が存在するか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
図11は、実施形態2に従う巡視点検システム1におけるデータ検証処理のフローについて説明する図である。
【0084】
図11を参照して、巡視点検システム1は、画像データを取得する(ステップS20)。
【0085】
具体的には、ヘリコプター100に搭載されたカメラによって撮像された画像データが記憶装置6に格納される。取得データ記憶部24は、ヘリコプター100から取得された取得データを記憶する。特定部30は、取得データ記憶部24に記憶された画像データを取得する。
【0086】
次に、巡視点検システム1は、電線領域を特定する(ステップS22)。特定部30は、取得データ記憶部24に記憶された画像データから被点検物である電線領域を特定する。
【0087】
具体的には、上記で説明したように、学習モデル記憶部20に記憶された学習モデルをもとにした画像処理により電線領域を特定する。あるいは、特定部30は、形状により電線領域を特定してもよいし、画像データに含まれる色データに基づいて電線領域を特定しても良い。
【0088】
次に、巡視点検システム1は、撮影状態の良否を判定する(ステップS24)。良否判定部32は、画像データの特定された電線領域に基づいて撮影状態の良否を判定する。撮影状態の良否判定処理の詳細については後述する。
【0089】
図12は、実施形態2に従う良否判定部32の良否判定処理のサブルーチンフローを説明する図である。
【0090】
図12に示されるように、巡視点検システム1は、電線幅を算出する(ステップS30)。良否判定部32は、特定した電線領域の電線幅を算出する。例えば、画像データの特定された電線領域の画素数(画素(ラベル「1」)の個数)により電線幅を算出するようにしても良い。電線幅は、電線領域の長さ方向に直交する方向の距離である。
【0091】
次に、巡視点検システム1は、電線幅が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS32)。良否判定部32は、電線幅が所定値以下であるか否かを判定する。具体的には、良否判定部32は、画像データの特定された電線領域の長さ方向に直交する方向の画素数が所定個数以下であるか否かを判定するようしてもよい。
【0092】
ステップS32において、巡視点検システム1は、電線幅が所定値以下であると判定した場合(ステップS32においてYES)には、撮影状態は不良であると判定する(ステップS38)。良否判定部32は、電線幅が所定値以下であると判定した場合には、
図10(A)、(B)で説明したように撮影状態は不良であり、不良画像データと判定する。
【0093】
そして、処理を終了する(リターン)。
一方、巡視点検システム1は、電線幅が所定値以下で無いと判定した場合(ステップS32においてNO)には、画像データの特定された電線領域の外周領域が有るか否かを判定する(ステップS34)。良否判定部32は、取得した画像データに含まれる電線領域の外周領域があるか否かを判定する。例えば、取得した画像データに含まれる電線領域を構成する画素の上下方向に電線領域以外の画素が存在するか否かにより外周領域が存在するか否かを判定するようにしてもよい。なお、少なくとも1つの画素が存在していれば電線領域の外周領域が存在すると判定しても良いし、マージンを設けて複数の画素が存在していれば電線領域の外周領域が存在すると判定するようにしても良い。
【0094】
ステップS34において、巡視点検システム1は、特定された電線領域の外周領域がないと判定した場合(ステップS34においてNO)には、撮影状態は不良であると判定する(ステップS38)。良否判定部32は、特定された電線領域の外周領域が無いと判定した場合には、
図10(C)で説明したように、撮影状態は不良であり、不良画像データと判定する。
【0095】
そして、処理を終了する(リターン)。
一方、ステップS34において、巡視点検システム1は、特定された電線領域の外周領域があると判定した場合(ステップS34においてYES)には、撮影状態は良好であると判定する(ステップS36)。
【0096】
そして、処理を終了する(リターン)。
再び
図11を参照して、巡視点検システム1は、判定結果を撮像された画像データに設定する(ステップS26)。
【0097】
具体的には、設定部34は、良否判定部32の良否判定の結果を画像データに設定する。例えば、設定部34は、記憶装置6に格納されている複数の画像データに対して良好あるいは不良画像データとしてそれぞれ判定結果を関連付けて設定する。
【0098】
そして、処理を終了する(エンド)。
本例においては、被点検物が正常に撮影されていないと判断された場合には当該被点検物を再撮影する。この場合、再撮影画像データについても
図11で説明した処理が実行される。設定部34は、良否判定部32の良否判定の結果を再撮影画像データに設定する。設定部34は、記憶装置6に格納されている複数の再撮影画像データに対して良好あるいは不良画像データとしてそれぞれ判定結果を関連付けて設定する。
【0099】
図13は、実施形態2に従う編集部36の編集処理について説明するフロー図である。
図13に示されるように、巡視点検システム1は、記憶装置6に格納されている不良画像データを取得する(ステップS40)。編集部36は、取得データ記憶部24に記憶されている不良に設定された不良画像データを取得する。
【0100】
次に、巡視点検システム1は、対応する再撮影画像データを特定する(ステップS42)。具体的には、編集部36は、不良画像データに関連付けられている位置情報に基づいて同一の位置情報に対応する再撮影画像データを特定する。位置情報は、特定された電線領域に関する位置情報でも良いし、カメラが設けられているヘリコプター100の位置情報を用いることも可能である。
【0101】
次に、巡視点検システム1は、記憶装置6に格納されている画像データを編集する(ステップS44)。編集部36は、当該撮影状態が不良に設定された画像データの位置データを取得して、当該位置データに対応する再撮影画像データを特定して、入れ替える。
【0102】
次に、巡視点検システム1は、全ての不良に設定された画像データをチェックしたか否かを判断する(ステップS46)。
【0103】
ステップS46において、巡視点検システム1は、全ての不良に設定された画像データをチェックしていないと判断した場合(ステップS46においてNO)には、ステップS40に戻り、他の不良に設定された画像データを取得して上記の処理を繰り返す。
【0104】
一方、ステップS46において、巡視点検システム1は、全ての不良に設定された画像データをチェックしたと判断した場合(ステップS46においてYES)には、処理を終了する(エンド)。
【0105】
図14は、実施形態2に従う編集部36の編集処理について説明する図である。
図14に示されているように、例えば動画像データの一部の画像データにおいて撮影状態が不良であるとして不良画像データとして設定された場合が示されている。
【0106】
編集部36は、当該撮影状態が不良に設定された不良画像データの位置データを取得して、当該位置データに対応する再撮影画像データを特定する。本例においては、位置データPEにおける再撮影画像データが不良画像データと対応している場合が示されている。
【0107】
そして、編集部36は、再撮影画像データを不良画像データと入れ替えて編集する。
これにより、不良画像データを再撮影画像データに入れ替えて適切な画像データを取得することが可能である。なお、再撮影画像データは、良好な画像データとして設定されているものとする。なお、再撮影画像データの入れ替えに関して、不良画像データと判定された位置データPEと同一の位置に対応する再撮影画像データだけでなく、その前後の位置関係に対応する撮影状態が良好と判定された複数の再撮影画像データを入れ替えるようにしてもよい。
【0108】
実施形態2に従う巡視点検システム1は、被点検物に生じた異常箇所の検出処理の前に被点検物を撮影した画像データが正常か否かを判定する。
【0109】
そして、不良な画像データである場合には、再撮影により取得した再撮影画像データを用いて不良画像データと入れ替えて適切な画像データのセットを作成することが可能である。
【0110】
例えば、距離の長い被点検物(例えば、架空地線、送電線等)を撮影する場合には、環境要因によって一部撮影が適切でなくなる可能性もある。当該方式により、不良と判定された不良画像データを良好な再撮影画像データに入れ替えることが可能であり、精度の高い巡視点検が可能である。
【0111】
なお、上記の各実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CDROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。また、記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であっても良い。
【0112】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が上記実施形態を実現するための各処理の一部を実行しても良い。
【0113】
さらに、各実施形態における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0114】
また、記憶媒体は1つに限らず、複数の媒体から上記の各実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成は何れの構成であっても良い。
【0115】
なお、各実施形態におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上記の各実施形態における各処理を実行するものであって、パーソナルコンピュータ等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であっても良い。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。