【課題】冷凍焼菓子として冷凍あるいは低温下において食する際の噛み出しが十分に柔らかく、かつ生地から油分の染み出しが無く、生地における良好な作業適性を与える、冷凍焼菓子用油脂組成物の提供。
【解決手段】液体油及び極度硬化油を含み、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するオレイン酸の質量割合が50質量%以下である、冷凍焼菓子用油脂組成物。油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するリノール酸の質量割合が40質量%以上であることが好ましく、又、油脂組成物の−20℃におけるSFCが5〜50%であり、油脂組成物の20℃におけるSFCが3%以上であることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
クッキーサンドアイスを例とする、クッキー等の焼菓子とアイスクリームとを併せた冷菓製品がある。これらの冷菓製品は冷凍下保存されたものを食するため、通常の焼菓子とは異なる性状が望ましい。以下、冷凍下保存され、冷凍あるいは低温条件で食されるクッキー等の焼菓子を「冷凍焼菓子」と呼ぶ。冷凍焼菓子は、通常の室温で食するクッキー等の焼菓子に用いる油脂組成物をそのまま用いて製造すると冷凍による添加された油脂の硬化により、食感が硬くなりすぎてしまい、歯切れ、口どけ等も悪くなるという問題があった。そのため、軟らかい食感の冷凍焼菓子が求められている。
UUU型トリグリセリド(U:炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基)とSSS型トリグリセリド(S:炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基)と特定のSFCを有するエステル交換油脂とを含む油脂組成物を用いることにより、冷蔵・冷凍下において良好な歯切れとねちゃつかない口どけの良さを有する焼菓子が得られることが報告されている(特許文献1)。
また、生地における穀粉の量、−10℃及び20℃のSFCが特定範囲の油脂、糖類、水分を特定することにより、噛みだしの食感や口どけが改善された冷凍クッキーが得られることが報告されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、冷凍焼菓子には、冷凍下の噛み出しの食感が硬くなるという課題が従来からあったところ、特定の油脂組成を用いることにより噛み出しの食感をある程度改善できることが報告されているが、噛み出しの食感をさらに軟らかくすることでより好ましい食感の冷凍焼菓子とすることができる。発明者らが、冷凍下の噛み出しの食感を軟らかくするため、従来の油脂組成を用いて−20℃の結晶量(SFC)を下げようとすると、油脂組成物の全体の結晶量が低下するため、生地の作製を行う作業温度域の結晶量まで低下して、生地から油分が染み出て作業適性が悪くなるという問題が生じることがわかった。
よって、本発明の課題は、冷凍焼菓子として冷凍あるいは低温下において食する際の噛み出しが十分に軟らかく、かつ生地から油分の染み出しが少なく、生地における良好な作業適性を与える、冷凍焼菓子用油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題に対し、液体油脂に極度硬化油脂を添加し、さらにオレイン酸量を特定量にコントロールした油脂組成物を用いることにより、冷凍下の噛み出しの食感を十分に軟らかくすることができる一方で、生地からの油分の染み出しを抑制して作業適性も良好に維持できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)液体油及び極度硬化油を含み、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するオレイン酸の質量割合が50質量%以下である、冷凍焼菓子用油脂組成物。
(2)前記油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するリノール酸の質量割合が40質量%以上である、(1)記載の冷凍焼菓子用油脂組成物。
(3)前記油脂組成物の、−20℃におけるSFCが5〜50%である、(1)または(2)記載の冷凍焼菓子用油脂組成物。
(4)前記油脂組成物の、20℃におけるSFCが3%以上である、(1)〜(3)のいずれか一に記載の冷凍焼菓子用油脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか一に記載の油脂組成物を含む、冷凍焼菓子用生地。
(6)さらに吸油性物質を含む、(5)記載の冷凍焼菓子用生地。
(7)(5)または(6)記載の冷凍焼菓子用生地を焼成し、冷凍してなる冷凍焼菓子。
【発明の効果】
【0006】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物を用いることにより、冷凍あるいは低温下において食する際の噛み出しが十分に軟らかい冷凍焼菓子を提供することができ、かつ油分の染み出しが無く、良好な作業適性を有する冷凍焼菓子用の生地を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(A)冷凍焼菓子用油脂組成物
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物は、液体油及び極度硬化油を含み、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するオレイン酸の質量割合が50質量%以下である。
【0008】
本明細書において「冷凍焼菓子」とは、クッキーサンドアイスを例とする、クッキー等の焼菓子とアイスクリームとを併せた冷菓等に主に用いられる、冷凍保存後に冷凍あるいは低温下で食する焼菓子を意味する。より詳細には、小麦粉等の穀粉に、砂糖、卵等の焼菓子に用いられる副原料を加え、さらに本発明の油脂組成物を加えて製造した冷凍焼菓子用生地を焼成し、冷凍したものである。
すなわち、本発明における焼菓子は、小麦粉、及び食用油脂を原料とし、必要により糖類、食塩、澱粉、乳製品、卵製品、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成型機及びビスケットオーブンを使用して製造した食品をいう。焼菓子の例としては、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン、ショートブレッド等が挙げられる。
冷凍焼菓子の例としては、クッキーサンドアイス、クッキー練り込みアイス、クッキートッピングアイス等が挙げられる。
【0009】
本明細書において「冷凍焼菓子用油脂組成物」とは、上述の冷凍焼菓子の生地を製造するために用いられる油脂組成物である。
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物に含まれる液体油は、室温において液状の油脂である。液体油としては、例えば、コーン油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、落花生油、ひまわり油、パーム分別油低融点部、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックナタネ油、アマニ油、えごま油、菜種油、ハイエルシン菜種油、ハイオレイックサフラワー油、米油、ごま油又はこれらの混合油あるいはこれらの加工油脂などが挙げられる。ただし、本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するオレイン酸の質量割合が50質量%以下であることが必要であるため、液体油としてオレイン酸を多量に含む油脂のみを用いることは好ましくない。液体油として好ましくは、コーン油、大豆油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、アマニ油、えごま油、等が挙げられ、さらに好ましくはコーン油、大豆、サフラワー、綿実油、ひまわり油である。
【0010】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物は、液体油を、油脂組成物全質量に対し、70〜98質量%の範囲で含むことが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、85〜95質量%であることがさらに好ましく、88〜93質量%がよりさらに好ましい。
【0011】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物に含まれる極度硬化油脂は、原料油脂を極度硬化処理して得られた油脂である。極度硬化油脂の原料油脂としては、液体油あるいは固体脂であってもよい。好ましくは、ラウリン系油脂を除く原料油脂が望ましい。ラウリン系油脂の具体例は例えば、パーム核油及びヤシ油が挙げられる。より好ましくはパーム油、菜種油、ハイエルシン菜種油、大豆油、牛脂、豚脂、魚油が挙げられる。さらに好ましくはパーム油、菜種油、ハイエルシン菜種油、大豆油が挙げられる。極度硬化処理とは、完全に水素添加(極度硬化)する処理、すなわち、水素添加によって不飽和脂肪酸を完全に飽和化する処理である。水素添加の方法は当業者に公知の方法により適宜行うことができる。例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日 初版第1刷発行)に記載の方法に従い行うことができる。
【0012】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物は、極度硬化油脂を、油脂組成物全質量に対し、2〜30質量%の範囲で含むことが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましく、7〜12質量%であることがよりさらに好ましい。
【0013】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するオレイン酸の質量割合が50質量%以下である。かかる範囲であれば、冷凍あるいは低温下での焼菓子の噛み出しの食感が硬くなりすぎないからである。好ましくはオレイン酸の質量割合は、40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下である。また生地における油染みを防ぐ観点から好ましくは28質量%以下である。下限値は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するリノール酸の質量割合が40質量%以上であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、45〜53質量%であることがよりさらに好ましい。冷凍あるいは低温下での焼菓子の噛み出しの食感が硬くなりすぎないからである。
【0014】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の、−20℃におけるSFCは5〜50%であることが好ましく、10〜45%であることがより好ましく、15〜40%であることがよりさらに好ましく、18〜35%であることが最も好ましい。かかる範囲であれば冷凍あるいは低温下での焼菓子の噛み出しの食感が硬くなりすぎないからである。
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の、−10℃におけるSFCは8〜30%であることが好ましく、10〜25%であることがより好ましく、12〜19%であることがさらに好ましい。かかる範囲であれば冷凍あるいは低温下での焼菓子の噛み出しの食感が硬くなりすぎないからである。
【0015】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物の、20℃におけるSFCが2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、4%以上であることがさらに好ましい。また上限値は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、13%以下であることがよりさらに好ましい。かかる範囲であれば生地作成時に生地からの油分の染み出しが多すぎない、また冷凍あるいは低温下での焼菓子の食感が硬くなりすぎないからである。
【0016】
SFC(単位:%)は、基準油脂分析法(2.2.9−2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定することができる。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、−20℃まで冷却し一晩保持する。その後、各温度域で30分保持し、SFCを測定する。
【0017】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物はそのまま生地製造のための原料として用いてもよく、またこれを急冷捏和して、ショートニングとして用いてもよい。
【0018】
(B)冷凍焼菓子用生地
本発明の冷凍焼菓子用生地は、上述の本発明の油脂組成物を含む。
油脂組成物以外の材料としては、小麦粉等の穀粉、一般的な焼菓子用生地の副原料として用いられる、砂糖等の甘味料、卵類、乳等が挙げられる。またさらに後述する吸油性物質、他にはココア、フルーツ、ナッツ等の風味素材、食塩、香辛料、乳化剤、香料、着色料、膨張剤、酸化剤、酸化防止剤、増粘剤、酸味料、甘味料、pH調整剤、保存料などの添加剤を添加してもよい。
製造方法は一般的な焼菓子用生地の製造方法と同様である。例えば、ミキサーで油脂組成物とその他の材料とを適宜混合して生地を得ることができる。
本発明の冷凍焼菓子用生地の穀粉100質量部に対し、本発明の油脂組成物は25〜110質量部程度含まれることが好ましい。より好ましくは、本発明の油脂組成物は50〜110質量部であり、さらに好ましくは60〜90質量部である。
【0019】
本発明の冷凍焼菓子用生地を製造する際に、吸油性物質を添加してもよい。吸油性物質とは、油を吸着する性質を有しかつ食することが可能な物質であればよく、例えば、セルロース、デンプン類、シリカゲル類、サイクロデキストリン類などが挙げられる。
本発明の冷凍焼菓子用生地に吸油性物質を添加する場合には、油脂組成物100質量部に対して15〜47質量部程度の量で添加することが好ましく、25〜35質量部であることがより好ましい。
【0020】
(C)冷凍焼菓子
上述の冷凍焼菓子用生地を焼成し、冷凍することにより、本発明の冷凍焼菓子を得ることができる。なお、冷凍する前に、例えばアイスクリームなどと併せたり、成形するなど、製品として必要な処理や包装を行ってもよい。
冷凍焼菓子用生地の焼成は、通常の焼菓子の製造における条件を用いてもよく、適宜変えてもよい。
冷凍する温度は通常用いられる温度でよく、例えば−8〜−30℃程度である。
【実施例】
【0021】
〈各油脂の調整〉
以下の方法に従って、実施例1〜6及び比較例1〜2の油脂組成物を調製するために用いた各油脂を調製した。
油脂Aの調製(液体油)
・油脂A−1:コーン油100%の脱色、脱臭を行った。
・油脂A−2:大豆油100%の脱色、脱臭を行った。
・油脂A−3:菜種油100%の脱色、脱臭を行った。
油脂Bの調製(極度硬化油)
・油脂B−1:ハイエルシン菜種油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を行った。
・油脂B−2:パーム油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を行った。
【0022】
〈油脂組成物の調製〉
上記の通り調製した各油脂を表1−1及び1−2に示す割合(質量%)で配合し、実施例1〜6及び比較例1〜2の油脂組成物を得た。
【0023】
〈SFC(固体脂含量)の測定〉
実施例1〜6及び比較例1〜2の各油脂組成物の固体脂含量(SFC、単位は%)を、基準油脂分析法(2.2.9−2003、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定した。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、−20℃まで冷却し一晩保持した。その後、各温度域で30分保持し、SFCを測定した。20℃、−10℃、−20℃の結果を表1−1及び1−2に示す。
【0024】
〈脂肪酸組成〉
基準油脂試験分析法に記載の「脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に記載の方法に従って分析した。ガスクロマトグラフィー装置は、GC−2010型(島津製作所(株)製)、カラムは、SP−2560(SUPELCO社製)を用いた。
【0025】
〈ショートニングの製造方法〉
各油脂組成物を加熱溶解し、これを急冷捏和して、ショートニングを得た。
【0026】
〈冷凍クッキーの作製(フラワーバッター法)〉
実施例1〜6及び比較例1〜2の得られた油脂組成物を用いて、下記の配合1及び製法1によりクッキーを製造した。
(配合1)
薄力粉75.0質量部、強力粉25.0質量部、砂糖40.0質量部、全卵10質量部、実施例1〜8及び比較例1〜2の得られた油脂組成物のいずれか70.5質量部
(製法1)
縦型ミキサー(N−50、ホバートジャパン製)に実施例1〜8及び比較例1〜2の得られた油脂組成物のいずれか1種を投入し、低速で1分間攪拌混合をした。薄力粉・強力粉を投入し低速で3分間攪拌混合した後、混ぜ合わせた砂糖と全卵を投入し、低速で1分間攪拌混合しクッキー用生地を得た。得られた生地を絞り袋に入れ約7gずつ絞って成形し、上火180℃、下火150℃のオーブン(三幸機械社製)で11分焼成した。これを−20℃で保存し、冷凍クッキーとした。
【0027】
〈冷凍クッキーの作製(フラワーバッター法)吸油性物質添加〉
実施例1の得られた油脂組成物を用いて、下記の配合2及び製法2によりクッキーを製造した。
吸油性物質は旭化成(株)製のセルロース(品名:UF−F702)を使用した。
(配合2)
薄力粉75.0質量部、強力粉25.0質量部、砂糖40.0質量部、全卵10.0質量部、実施例1の得られた油脂組成物76.3質量部、セルロース12.0質量部
(製法2)
セルロースを使用した以外は上記製法1と同様に行った。
【0028】
〈冷凍クッキーの評価方法〉
生地の作業適性(焼成前生地の油染み量:
実施例・比較例で作製した焼成前のクッキー生地をろ紙に約10g乗せ20℃1時間静置させた。静置前後の重量差から以下の式でろ紙への吸油率(%)を求めた。この値を基に、作業適性を以下のような基準で評価した。
ろ紙への吸油率(%):静置前後のろ紙の質量差÷(クッキー生地質量×生地中油分(32質量%)×100)
【0029】
クッキー冷凍後硬度:
実施例・比較例で作製した冷凍クッキーを−20℃で1日保管後、レオメーター(島津製作所(株)製、型名:EZ−SX)を用いスピード゛:300mm/分で測定を行った。この値を基に、冷凍クッキーの噛み出しの軟らかさを以下のような基準で評価した。
【0030】
冷凍クッキーの噛み出しの軟らかさ(官能試験):
実施例・比較例で得られた冷凍クッキーを、−20℃で1日保存後、噛み出しの軟らかさを、熟練した5人のパネラーで評価した。その際の評価基準は以下の通りであった。表1−1及び1−2に記載した点数は5人の平均点であった。
【0031】
【表1-1】
【0032】
【表1-2】
【0033】
【表2】
(別紙参照)
【0034】
本発明の冷凍焼菓子用油脂組成物を用いて製造した焼菓子では、−20℃で保存した後の硬度がいずれも低く、噛み出しの官能評価でも高い評価であった(実施例7〜13)。また、低温における噛み出しが良好な一方で、生地製造時の油染みは少なく作業適性評価において優れていた(実施例7〜13)。一方、オレイン酸を50質量%を超える量で含む冷凍焼菓子用油脂組成物を用いて製造した焼菓子では、−20℃で保存した後の硬度が高く、噛み出しの官能評価も低かった(比較例1)。また、極度硬化油を全く含まず、液体油のみからなる油脂組成物を用いた場合には、生地製造時の油染みがあり作業適性が低かった(比較例2)。
理論にしばられるものではないが、オレイン酸は低温域で結晶量が比較的多いため、液油を主体としてオレイン酸量をなるべく少なくして低温域での結晶量を少なくすることにより、噛み出しを軟らかくすることができ、一方で極度硬化油を用いることにより、作業温度域における結晶量を確保して作業適性を持たせることができたものと思われる。ただし、低温域の結晶量と冷凍クッキーの硬度とは必ずしも相関関係にないことから、単に結晶量やSFCによる効果ではなく、例えば、生地混合時における油脂の広がり方によってグルテン形成に影響を及ぼし、噛み出しの硬さに影響を与えている可能性がある。