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特開2021-58176調味料、食品、刺激成分による刺激の増加方法及び刺激成分による刺激の増加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-58176(P2021-58176A)
(43)【公開日】2021年4月15日
(54)【発明の名称】調味料、食品、刺激成分による刺激の増加方法及び刺激成分による刺激の増加剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20210319BHJP
【FI】
   A23L27/60 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-186281(P2019-186281)
(22)【出願日】2019年10月9日
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LE03
4B047LG10
4B047LG36
4B047LG43
4B047LG70
(57)【要約】
【課題】辛味等の刺激成分の摂取量を増加させることなく(同量の摂取で比較した場合に)、このような刺激成分によって得られる刺激を増加させることができる、新たな調味料及びそれを使用した食品を提供すること。
【解決手段】本発明の第一の態様の調味料は、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含み、油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、調味料である。また、本発明の第二の態様の調味料は、水と、油剤と、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子と、を含むO/Wエマルションから構成され、ベシクル又は前記重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで油剤粒子を形成し、油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、調味料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含み、
前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、
調味料。
【請求項2】
水と、油剤と、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子と、を含むO/Wエマルションから構成され、
前記ベシクル又は前記重縮合ポリマー粒子が、前記油剤を囲んで油剤粒子を形成し、
前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、
調味料。
【請求項3】
前記油剤粒子の平均粒径が、500nm以上300μm以下である、
請求項1又は2に記載の調味料。
【請求項4】
前記刺激成分は、カプサイシノイド類である、
請求項1〜3いずれか1項に記載の調味料。
【請求項5】
ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含み、
前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、食品。
【請求項6】
水と、油剤と、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子と、を含むO/Wエマルションから構成され、
前記ベシクル又は前記重縮合ポリマー粒子が、前記油剤を囲んで油剤粒子を形成し、
前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、
食品。
【請求項7】
痛覚を刺激し得る刺激成分を含む油剤を、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって囲む工程を含む、
刺激成分による刺激の増加方法。
【請求項8】
ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子を含み、
前記ベシクル、又は前記水酸基を有する重縮合ポリマー粒子で、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む油剤を囲むことにより、前記刺激成分により刺激を増加させるための、
刺激成分による刺激の増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料、食品及び刺激成分による刺激の増加方法に関し、特に、カプサイシンに代表される辛味等の刺激成分による刺激を増加させる調味料及びそれを用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
唐辛子に含まれるカプサイシン等、カプサイシノイド類は、舌・口腔のバニロイド受容体(カプサイシン受容体)によって痛覚に刺激を与えるものであり、ヒトは、この痛覚の刺激を「辛味」として知覚している。
【0003】
このような辛味の愛好者の中には、辛味を強く知覚すべく、多量にカプサイシノイド類を摂取する者も存在するが、一部の専門家によれば、カプサイシンを過剰に摂取することにより癌等の影響が起こることも懸念されている(例えば、M.K.Hwang,A.M.Bode,S.Byun,N.R.Song,H.J.Lee,K.W.Lee,and Z.Dong,Cancer Res.,70(17),6859−6869(2010)等参照)。
【0004】
また、通常、カプサイシノイド類は、水には難溶の油溶性成分であるため、ラー油や唐辛子オイル等、油分に溶解させて提供されることが多いが、近年の健康志向の高まりもあり、油分の摂取量を抑制したいという要望もある。
【0005】
このように、カプサイシノイド類等の刺激成分またはそれを溶解させるための油分の摂取量を抑制しながらも、十分な辛味を知覚できる調味料には一定の需要があった。
【0006】
ここで、例えば特許文献1には、カプサイシン等の辛味を知覚させる成分にトウガラシオレオレジンの留出物等を添加することにより、カプサイシン等に由来する辛味を増加できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−143308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1によれば、辛味を知覚させる成分の種類によっては、辛味が増加していないと判断している評価者も存在しており、また、痛覚への刺激を増加させるものではないことから、辛味の増加効果は十分ではなく、辛味の増加効果を高めるためにはなお改良の余地があった。
【0009】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、辛味等の刺激成分の摂取量を増加させることなく(同量の摂取で比較した場合に)、このような刺激成分によって得られる刺激を増加させることができる、新たな調味料及びそれを使用した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む油剤を、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって囲むことにより、油剤に含まれる刺激成分がより効率的にヒトの痛覚を刺激して辛味を増加させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1)ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含み、前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、調味料。
【0012】
(2)水と、油剤と、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子と、を含むO/Wエマルションから構成され、前記ベシクル又は前記重縮合ポリマー粒子が、前記油剤を囲んで油剤粒子を形成し、前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、調味料。
【0013】
(3)前記油剤粒子の平均粒径が、500nm以上300μm以下である、(1)又は(2)に記載の調味料。
【0014】
(4)前記刺激成分は、カプサイシノイド類である、(1)〜(3)いずれかに記載の調味料。
【0015】
(5)ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含み、前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、食品。
【0016】
(6)水と、油剤と、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子と、を含むO/Wエマルションから構成され、前記ベシクル又は前記重縮合ポリマー粒子が、前記油剤を囲んで油剤粒子を形成し、前記油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む、食品。
【0017】
(7)痛覚を刺激し得る刺激成分を含む油剤を、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって囲む工程を含む、刺激成分による刺激の増加方法。
【0018】
(8)ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子を含み、前記ベシクル、又は前記水酸基を有する重縮合ポリマー粒子で、痛覚を刺激し得る刺激成分を含む油剤を囲むことにより、前記刺激成分により刺激を増加させるための、刺激成分による刺激の増加剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、辛味等の刺激成分の摂取量を抑制しながらも(同量の摂取で比較した場合に)、このような刺激成分によって得られる刺激を増加させることができる、新たな調味料及びそれを使用した食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態について何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
≪調味料≫
本実施形態の調味料は、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される油剤粒子を含む。そして、このような調味料において、油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含むことを特徴としている。このような調味料によれば、辛味等の刺激成分の摂取量を抑制しながらも(同量の摂取で比較した場合に)、このような刺激成分によって得られる刺激を増加させることができる。
【0022】
上述したとおり、ヒトが刺激成分を知覚するのは、舌や口腔に存在するバニロイド受容体である。ここで、舌や口腔は、表面が親水性であることから、油剤に対する濡れ性が低い。したがって、通常の調味料では、油剤が舌や口腔に十分に拡散せず、したがって、油剤に含まれる刺激成分がバニロイド受容体に十分に接触することなく飲み込まれて人体に摂取される。
【0023】
これに対し、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって油剤を囲んで構成される油剤粒子は、その表面に親水性の高いベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が存在するため、舌や口腔に対する濡れ性が高く、したがって、油剤粒子が舌や口腔に十分に拡散して、油剤粒子に含まれる刺激成分がバニロイド受容体に多く接触し、痛覚をより強く刺激し、より強い刺激を知覚することができる。
【0024】
また、例えば坦々麺の多くは、ラー油がスープ表面に浮いていることが確認される。このようにラー油がスープを主として構成する水と分離していると、辛味が不均一になり、辛味を十分に味わうことができないことがある。
【0025】
これに対し、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって油剤を囲んで構成される油剤粒子は、その表面に親水性の高いベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が存在するため、油剤粒子として刺激成分が水(坦々麺の例で言えば、スープ)中に均一に分散し得るので、刺激成分に由来する刺激を均一に味わうことができる。
【0026】
また、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって油剤を囲んで構成される油剤粒子によれば、例えば香辛料等に由来して含まれる香味成分の香味を通常の香辛料に対して増加させることもできる。油剤中の香りは香味成分の蒸発量に依存し、その蒸発量は油の表面積に依存する。通常の調味料では、ラー油がスープ表面に浮いていることが確認されるように、油剤は油同士で集合するのに対し、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子によって油剤を囲んで構成される油剤粒子では、比表面積が大きく、その内部の香味成分の蒸発量が増加し、より強い香味を知覚することもできる。
【0027】
<油剤粒子>
油剤粒子は、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで構成される、油剤とベシクル又は重縮合ポリマー粒子とが複合された粒子である。すなわち、例えば特許3855203号に示される、いわゆる「三相乳化」された粒子であり、三相乳化による乳化物のO/W型エマルションの油相(O,内相)を構成する粒子である。
【0028】
このような油剤粒子は乾燥させることにより、粉末状として構成することができ、また、この粉末を水に添加することで、分散液やペーストとして構成することもできる。このような性状としては特に限定されない。
【0029】
具体的に、油剤粒子は、油相(内相)を、例えば特許3855203号に示される方法にしたがい、後述するベシクルや重縮合ポリマーを用いて乳化させて、油剤粒子の水分散液として得ることができる。
【0030】
油剤粒子の平均粒径としては、特に限定されないが、例えば300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。油剤粒子の平均粒径は300μm超であってもよいが、油剤粒子は小さいほど油滴の質量あたりの表面積が増加し、舌や口腔への接触できる刺激成分が増加し、辛味が増加する。一方、油剤粒子の平均粒径としては、例えば500nm以上であってよい。なお、本発明において「平均粒径」とは、水分散液(油剤粒子の場合には、O/W型エマルション)について粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求めた個数分布の値を3回測定して平均した値である。
【0031】
(油剤)
油剤は、痛覚を刺激し得る刺激成分を含み、上述した油剤粒子の構成成分である。
【0032】
刺激成分を含まない油剤(刺激成分の溶剤としての油剤)としては、特に限定されるものではないが、菜種油、ベニバナ油、大豆油、ヒマワリ油、コーン油、ごま油、米油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、マカダミア油、ペカン油、松の実油、ピスタチオ油、クルミ油、ココアバターアマニ油、グレープシードオイル、キヌア油、ツバキ油、カカオ脂、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂、これらの油脂の硬化油又はエステル交換油等が挙げられる。
【0033】
刺激成分としては、特に限定されるものではないが、カプサイシン、ジンゲロン、ジンゲロール、ショーガオール、ジンゲロン、ピペリン、オイゲノール、α−,β−サンショオール、スピラントール、アリルイソチオシアネート、パラヒドロキシベンジルイソチオネート、ジアリルジスルフィド、プロピルアリルジスルフィド、タデオナール等や、これらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
刺激成分を含む油剤としては、特に限定されるものではないが、ラー油、唐辛子オイル、ショウガオイル、ペッパーオイル、サンショウオイル、マスタードオイル、ガーリックオイル、ワサビオイル、ネギオイル、タマネギオイル等が挙げられる。
【0035】
(ベシクル、重縮合ポリマー粒子)
ベシクル、又は重縮合ポリマー粒子は、油相及び水相の界面、並びに機能性成分相及び水相の界面に介在し、ファンデルワールス力を介して乳化状態を構成することから、水相、油相及び機能性物質の化学組成や表面状態等にかかわらず、良好な乳化物を構成することができる。
【0036】
両親媒性物質としては、両親媒性物質としては、リン脂質である卵黄レシチン、大豆レシチン、菜種レシチン、また、これらから得られるリゾレシチンや分別レシチン等を採用してもよい。ただし、卵黄レシチン(及びそれを含む卵黄)は、アレルギー対応及び官能性の点で含まれないことが好ましい。
【0037】
両親媒性物質としては、脂肪酸エステルを用いてもよい。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンと炭素−炭素結合が飽和不飽和結合を問わず、直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸のエステルであり、具体的には、モノミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、モノパルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、トリパルミチン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジモノオレイン酸ポリグリセリル、トリモノオレイン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
【0039】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。
【0040】
一方、水酸基を有する重縮合ポリマーは、天然高分子、合成高分子又は半合成高分子のいずれであってもよく、乳化剤の用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、又はその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0041】
具体的に、重縮合ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦粉デンプン、米デンプン、ワキシー米デンプン、タピオカデンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、シロキクラゲ多糖体等の天然高分子、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等のエステル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体等が挙げられる。
【0042】
ベシクル、又は重縮合ポリマー粒子の総量(併用する場合には両者の総量)としては、特に限定されないが、調味料の総量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。一方で、ベシクル及び重縮合ポリマーの総量としては、調味料の総量に対し、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であってよい。
【0043】
ベシクル、又は重縮合ポリマー粒子の平均粒子径は、エマルション(油剤粒子が水に分散している状態)形成前では8nm〜800nm程度であるが、O/W型エマルション構造においては8nm〜500nm程度である。なお、重縮合ポリマー粒子及びベシクルは、一方のみが含まれても、双方が含まれてもよい。双方が含まれる場合には、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してよい。
【0044】
ベシクル、又は重縮合ポリマー粒子は、例えば特許3855203号に示される方法により得ることができる。
【0045】
<水>
必須の構成要素ではないが、本実施形態に係る調味料は、さらに水を含み、油剤粒子がその水に分散している。O/W型エマルションの状態として構成することもできる。このように、油剤粒子を水に分散して、分散液状とすることにより、当該調味料のハンドリング性を高めることができる。
【0046】
調味料がO/W型エマルションの状態である場合、水の含有量としては、特に限定されず、調味料に対し、例えば5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。また、水の含有量としては、例えば99.99質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましい。なお、調味料がO/W型エマルションの状態でない場合でも、液状にならない程度に水分を含有していてもよい。
【0047】
≪食品≫
以上のような調味料は、油剤粒子のみの形態で提供される場合であっても(O/W型エマルションでなくても)、O/W型エマルションの形態で提供される場合であっても、刺激成分を含む油剤を用いる調味料として知られるあらゆる油剤に適用でき、そして、そのようにして得られる調味料は、例えば、刺激成分を含む油剤を用いる調味料として知られる油剤と同様に、あらゆる食品に用いることができ、同様の使用方法で用いることができる。
【0048】
例えば、刺激成分を含む油剤として、ラー油を用いる場合について説明する。ラー油は、唐辛子等の香辛料をゴマ油等の植物油の中で加熱して、当該植物油中に、油溶性成分や香味を抽出したものである。上述したとおり、唐辛子に含まれる例えばカプサイシノイド類は、痛覚を刺激し得る刺激成分であり、油溶性成分であるから植物油に溶け込み、その植物油中に含まれる。そして、このような植物油を、油剤粒子とすることによって、上述したとおり、カプサイシノイド類に起因する痛覚への刺激、すなわち辛味を増加させることができる。
【0049】
このようなラー油を含む油剤粒子は、通常のラー油と同様に、例えば餃子のタレ、麻婆豆腐、鍋料理、担々麺等のラーメン類、蕎麦等あらゆる料理に用いることができる。そして、油剤粒子は、例えば餃子のタレでは醤油及び酢、また、麻婆豆腐、鍋料理、担々麺等のラーメン類及び蕎麦ではスープという水性成分に分散する。すなわち、調味料が、油剤粒子のみの形態で提供される場合であっても(O/W型エマルションでなくても)、O/W型エマルションの形態で提供される場合であっても、少なくともこの段階ではO/W型エマルションが形成され、均一に分散される。すなわち、タレの付け方やスープの掬い方によって辛さが大きく変化することがなく、均一に味わうこともできる。
【0050】
≪刺激成分による刺激の増加方法・増加剤≫
以上で述べたとおり、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子は、刺激成分による刺激を増加させるための増加剤であり、これを用いて油剤を囲むことによって、油剤粒子を形成して、刺激成分による刺激を増加させることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<乳化安定性の評価>
〔原料〕
・ラー油:激辛辣油商品名,ユウキ社製
・花椒油:四川花椒商品名,ユウキ社製
・マスタード油:マスタードオイル,インド産,HARMONY社輸入
・モノオレイン酸ペンタグリセリル:サンソフト(登録商標)A−171E,太陽化学社製
・モノミリスチン酸ペンタグリセリル:サンソフト(登録商標)A−141E,太陽化学社製
・ショ糖ステアリン酸エステル:リョートー(登録商標)シュガーエステル,三菱化学フーズ社製
・HMペクチン:AYD 5110 SB,ユニテックフーズ社製
・食酢:穀物酢,タマノイ酢社製
・醤油:こいくちしょうゆ,キッコーマン社製
【0053】
〔試料の調製〕
(実施例1〜4)
ビーカー中で水相を8000rpmで撹拌しながらベシクルの原料を滴下し、5分間撹拌して、ベシクルの分散液を得た。次いで、得られたベシクルの分散液に、油剤を滴下し、撹拌して実施例1〜4の試料をそれぞれ得た。各成分の量は下記表1に示す割合(質量%)となるように調整した。
【0054】
(実施例5)
ビーカー中で水相を8000rpmで撹拌しながらHMペクチンを添加し、5分間撹拌して、重縮合ポリマー粒子の分散液を得た。次いで得られた重縮合ポリマー粒子の分散液に、油剤を滴下し、撹拌して実施例5の試料を得た。各成分の量は下記表1に示す割合(質量%)となるように調整した。
【0055】
(比較例1〜5)
ビーカー中で水相を8000rpmで撹拌しながら油剤を滴下し、5分間撹拌して実施例5の試料を得た。各成分の量は下記表1に示す割合(質量%)となるように調整した。
【0056】
〔評価〕
実施例1〜5及び比較例1〜5のそれぞれの試料を調製後、3日間常温で静置した後、目視で乳化状態を確認した。その結果を下記表1に示す。なお、表1においては、3日間の静置後に乳化状態を有していたものを良好な状態として「○」、乳化状態を有していなかったものを良好でない状態として「×」と、それぞれ評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
<味覚の評価>
〔評価(1)〕
実施例1〜4及び比較例1〜4の試料について、10名のパネラーにより官能評価を行った。具体的には、各試料を一滴、口に含んで、「辛みの強さ」、「辛みの持続性」、「香りの強さ」、「油っぽさ」の4項目について5段階で評価した。各項目についての評価基準は、下記表2に示すものとした。
【0059】
なお、以下において10名のパネラーを、「パネラー1」〜「パネラー10」と呼び各個人を区別する。なお、このパネラーの番号はそれぞれの区別の便宜のみのために付したものである。
【0060】
【表2】
【0061】
下記表3〜10に、実施例1〜4及び比較例1〜4の試料のパネラーごとの評価結果を示す。また、表11に、「辛みの強さ」、「辛みの持続性」、「香りの強さ」及び「油っぽさ」の各項目について、5段階評価のうち各段階に評価したパネラー数を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
〔評価(2)〕
実施例5及び比較例5の試料について、4名のパネラーにより官能評価を行った。具体的には、各試料を一滴、口に含んで、「辛みの強さ」、「辛みの持続性」、「香りの強さ」、「油っぽさ」の4項目について5段階で評価した。各項目についての評価基準は、「評価1」と同様、上記表2に示すものとした。
【0072】
なお、以下において4名のパネラーを、「パネラー11」〜「パネラー14」と呼び各個人を区別する。なお、このパネラーの番号はそれぞれの区別の便宜のみのために付したものである。
【0073】
下記表12〜13に、実施例5及び比較例5の試料のパネラーごとの評価結果を示す。また、表14に、「辛みの強さ」、「辛みの持続性」、「香りの強さ」及び「油っぽさ」の各項目について、5段階評価のうち各段階に評価したパネラー数を示す。
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
【表14】
【0077】
以上の表から、ベシクル、又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が、油剤を囲んで油剤粒子を構成することにより、辛味の強さ及び持続性を高められることが確認された。また、香りの強さが増大し、油っぽさが減少することも分かった。