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  • 特開2021059903-舗装路面の表面研削装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-59903(P2021-59903A)
(43)【公開日】2021年4月15日
(54)【発明の名称】舗装路面の表面研削装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/12 20060101AFI20210319BHJP
【FI】
   E01C23/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-184674(P2019-184674)
(22)【出願日】2019年10月7日
(71)【出願人】
【識別番号】592061854
【氏名又は名称】ヒートロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆雄
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053AA22
2D053AA41
2D053BA01
2D053DA03
2D053DA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粉塵を効率よく集塵でき、周囲環境を汚染することがない防塵カバーを備えた舗装路面の表面研削装置を提供する。
【解決手段】舗装路面の表面研削装置1を、舗装路面12を走行する車両と、円柱状の研削体2と、防塵カバー3とから構成する。研削体2は中心軸が水平に設けられ、回転して円柱の円周面で舗装路面12の表面を研削すると粉塵が前方に送り出される。防塵カバー3は、研削体2の円周面の略上半分を覆う半円筒状のカバー本体部7を備え、さらに研削体2の後方と前方の両側部における舗装路面12との隙間をシールする、後方ゴムシート8と前方ゴムシート9と一対の側方ゴムシートを備える。防塵カバー3には、研削体2の前方寄りに吸引ダクト11を設ける。カバー本体部7には研削体2を下方まで覆う延長部を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装路面を走行する車両と、その中心軸が水平になるように前記車両に設けられている円柱状の研削体と、前記研削体を覆うように設けられている防塵カバーとからなる舗装路面の表面研削装置であって、
前記研削体は、回転して前記円柱の円周面によって舗装路面の表面を研削し、粉塵を前記研削体の前方に送り出すようになっており、
防塵カバーは、前記研削体の前記円周面と所定の隙間を空けて前記円周面の略上半分を覆っている半円筒状のカバー本体部と、前記研削体の後方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする後方ゴムシートと、前記研削体の前方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする前方ゴムシートと、前記研削体の両側方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする一対の側方ゴムシートとを備え、
前記防塵カバーには前記研削体の前方寄りにおいて粉塵を吸引する吸引ダクトが形成されており、
前記カバー本体部は、その前方において前記半円筒を円周方向に延長した延長部が形成され、該延長部は前記円柱の中心軸から見たとき前記円柱の最下部に対して少なくとも80度の角度に対応する高さまで前記研削体を覆っていると共にその背面側が前記吸引ダクトの一部を構成していることを特徴とする舗装路面の表面研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面研削装置において、前記防塵カバーには、前記研削体の後方側に前記研削体の横幅と略等しい幅のスリット状の開口部が空けられていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面研削装置において、前記防塵カバーには、前記前方ゴムシートと平行にかつ前記前方ゴムシートの内側に前記前方ゴムシートと同幅で弾性を備えた金属板が設けられ、前記前方ゴムシートの先端部近傍が前記金属板の先端部によって押さえられていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路面の補修等に使用され、舗装路面の表面を研削する舗装路面の表面研削装置に関するものであり、研削により発生する粉塵の飛散を防止する防塵カバーに特徴を有する舗装路面の表面研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト合材によって舗装された舗装路面は、道路の耐久性を高めると共に快適な走行性を提供している。しかしながら、舗装路面は長期間の利用によって表面が劣化したり摩耗する。あるいは轍が形成されて平面度が低下する。従って舗装路面は適宜補修する必要がある。舗装路面が劣化したり摩耗した場合は、舗装路面の表面を浅く削り取って劣化したアスファルト合材を除去する。次いで、その上に新しいアスファルト合材によって再舗装する。舗装路面の一部の平面度を回復する比較的簡易な補修をする場合には、凸状に隆起した部分だけを平面状に削り取り、凹状になっている部分に新しいアスファルト合材で埋めるようにすればよい。ところで舗装路面そのものではないが、舗装路面の表面に所定の塗料により描かれている道路標識、横断歩道、センターライン等も車両の通行によって摩耗する。また歩道の表面に貼られている点字ブロックも歩行者によって摩耗する。このような塗料や点字ブロックも摩耗すると本来の目的を果たせなくなるので補修する必要があり、広義にはこれらも舗装路面の補修ということができる。塗料や点字ブロックを補修するときには、これらを削り取って、その後塗料により道路標識、センターライン等を描き直したり、あるいは新しい点字ブロックを貼り直す。
【0003】
舗装路面の表面を削り取る装置は色々あり、例えばその表面に多数のカッタビットが設けられた回転ドラムを備えた路面切削装置が周知である。このような路面切削装置によって舗装路面の表面を削り取ると、多数のカッタビットによって舗装路面の表面が衝撃的に破砕されるので、舗装路面を傷めてしまう。また舗装路面の表面には筋状の多数のひっかき傷が形成される。そうするとまた再舗装によりこの上に新しいアスファルト合材を設けても、新しいアスファルト合材が古いアスファルト合材から分離し易いという問題もある。さらには、このような路面切削装置は道路標識、センターライン等の塗料を除去したり、点字ブロックを削り取るような用途には向かない。塗料や点字ブロックが除去されるだけでなく、舗装路面の表面に傷を付けてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−21351号公報
【特許文献2】特開2015−214810号公報
【0005】
このように舗装路面を痛めたり表面を傷つけてしまう路面切削装置に対して、舗装路面を研磨するようにしてその表面だけを滑らかに削り取る装置も周知である。このような装置は舗装路面の表面を研削するので表面研削装置ということができ、本出願人によって特許文献1、2において提案されている。特許文献1、2に記載の表面研削装置は、回転する円柱状の研削体を備え、研削体は円柱面がグラインダー状を呈している。従ってこのような研削体を回転させて舗装路面に押し当てると舗装路面の表面が研磨されて、得られる表面は滑らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の路面研削装置によっても、あるいは特許文献2に記載の路面研削装置によっても、研削体によって舗装路面をその表面だけ滑らかに削り取ることができるので、この上に新しいアスファルト合材を舗装すると接合強度が高く古いアスファルト合材と新しいアスファルト合材とが分離しにくい。また舗装路面の表面に描かれた道路標識、横断歩道、センターライン等について補修するとき、あるいは点字ブロックについて補修するとき、舗装路面への影響を最小限にして道路標識等の塗料あるいは点字ブロックを除去することができ優れている。従って研削体そのものについては問題がない。しかしながら他の部分において改善の余地が認められる。具体的には研削体を覆っている防塵カバーについて改善の余地が見受けられる。研削体によって舗装路面の表面を研削するとき、アスファルト合材の粉塵が周囲に飛散しないように研削体には防塵カバーが設けられこの防塵カバーには吸引口が設けられている。従って、この吸引口に所定の吸引装置を接続して吸引すれば、粉塵は吸引されて適切に集塵できるはずである。しかしながら実際には、強力な吸引装置によって吸引しても舗装路面上に大量の粉塵が残ってしまう。つまり適切に集塵できない。舗装路面の表面を研削するために研削体を例えば3000rpm等の高速で回転させる必要があるが、このように高速で回転する研削体の周囲には空気の流れが発生する。この風速は吸引装置の吸引による風速に比して大きいので、適切に集塵できていない可能性がある。仮に大型の吸引装置を採用して吸引による風速を大きくすれば集塵の効率は高まるかも知れないが、コストが大きくなるという問題がある。また研削体の周囲の空気の流れは複雑で、流れの方向が乱れているので、大型の吸引装置を採用しても十分に集塵できない可能性もある。
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決した、舗装路面の表面研削装置を提供することを目的としている。具体的には、比較的小型の吸引装置によって吸引するようにしても、回転体である研削体が研削した舗装路面の粉塵を効率よく集塵することができ、周囲環境を汚染することがない防塵カバーを備えた舗装路面の表面研削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、舗装路面の表面研削装置を、舗装路面を走行する車両と、円柱状の研削体と、防塵カバーとから構成する。研削体は中心軸が水平に設けられ、回転して円柱の円周面で舗装路面の表面を研削すると粉塵が前方に送り出されるようになっている。防塵カバーは、研削体の円周面の略上半分を覆う半円筒状のカバー本体部と、研削体の後方と前方と両側部とにおいてそれぞれ舗装路面との隙間をシールする、後方ゴムシートと前方ゴムシートと一対の側方ゴムシートとを備えている。カバー本体部は、その前方において半円筒を円周方向に延長した延長部を形成し、円柱の中心軸から見たとき円柱の最下部に対して少なくとも80度の角度に対応する高さまで研削体を覆うようにする。そして、防塵カバーには、研削体の前方寄りに吸引ダクトを設け、延長部の背面側が吸引ダクトの一部を構成するようにする。
【0009】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、舗装路面を走行する車両と、その中心軸が水平になるように前記車両に設けられている円柱状の研削体と、前記研削体を覆うように設けられている防塵カバーとからなる舗装路面の表面研削装置であって、前記研削体は、回転して前記円柱の円周面によって舗装路面の表面を研削し、粉塵を前記研削体の前方に送り出すようになっており、防塵カバーは、前記研削体の前記円周面と所定の隙間を空けて前記円周面の略上半分を覆っている半円筒状のカバー本体部と、前記研削体の後方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする後方ゴムシートと、前記研削体の前方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする前方ゴムシートと、前記研削体の両側方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする一対の側方ゴムシートとを備え、前記防塵カバーには前記研削体の前方寄りにおいて粉塵を吸引する吸引ダクトが形成されており、前記カバー本体部は、その前方において前記半円筒を円周方向に延長した延長部が形成され、該延長部は前記円柱の中心軸から見たとき前記円柱の最下部に対して少なくとも80度の角度に対応する高さまで前記研削体を覆っていると共にその背面側が前記吸引ダクトの一部を構成していることを特徴とする舗装路面の表面研削装置として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面研削装置において、前記防塵カバーには、前記研削体の後方側に前記研削体の横幅と略等しい幅のスリット状の開口部が空けられていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の表面研削装置において、前記防塵カバーには、前記前方ゴムシートと平行にかつ前記前方ゴムシートの内側に前記前方ゴムシートと同幅で弾性を備えた金属板が設けられ、前記前方ゴムシートの先端部近傍が前記金属板の先端部によって押さえられていることを特徴とする舗装路面の表面研削装置として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、舗装路面を走行する車両と、その中心軸が水平になるように車両に設けられている円柱状の研削体と、研削体を覆うように設けられている防塵カバーとからなる舗装路面の表面研削装置を対象としている。そして研削体は、回転して円柱の円周面によって舗装路面の表面を研削し、粉塵を研削体の前方に送り出すようになっている。従って、車両を前方に走行させながら舗装路面を研削するときは、粉塵は前方つまり進行方向に掃き出され、車両を後方に走行させながら舗装路面を研削するときは、粉塵は前方に、つまり進行方向の逆側に掃き出されることになる。本発明によると、防塵カバーは、研削体の円周面と所定の隙間を空けて円周面の略上半分を覆っている半円筒状のカバー本体部と、研削体の後方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする後方ゴムシートと、研削体の前方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする前方ゴムシートと、研削体の両側方において舗装路面と接して舗装路面との隙間をシールする一対の側方ゴムシートとを備えている。そして防塵カバーには、防塵カバーには前記研削体の前方寄りにおいて粉塵を吸引する吸引ダクトが形成されている。本発明によるとカバー本体部は、その前方において半円筒を円周方向に延長した延長部が形成され、該延長部は円柱の中心軸から見たとき円柱の最下部に対して少なくとも80度の角度に対応する高さまで研削体を覆っていると共にその背面側が吸引ダクトの一部を構成している。このように構成されているので、回転する研削体によって舗装路面が研削されて粉塵が発生するとき、粉塵を含んだ空気は大部分がカバー本体部の延長部の背面側を通って吸引ダクトに吸引されることになる。研削体とカバー本体部との間には所定の隙間があるので、空気の一部は研削体の回転に巻き込まれて研削体とカバー本体部との隙間に入り込むが、延長部が研削体を広く覆っているので、巻き込まれる空気は少ない。つまり巻き込まれる粉塵はわずかになる。つまり回転する研削体に巻き込まれて滞留する粉塵はほとんどなく、大部分の粉塵は吸引ダストから効率よく吸引されることになる。舗装路面の粉塵を効率よく集塵することができ、周囲環境を汚染さないで済む。他の発明によると、防塵カバーには、研削体の後方側に研削体の横幅と略等しい幅のスリット状の開口部が空けられている。従って研削体を回転して舗装路面の表面を研削し、そして吸引ダクトから吸引すると、開口部から外部の空気が防塵カバー内に入る。防塵カバー内に入った空気は研削体の回転に引きつられて研削体の下方に入り込み、研削体によって研削された粉塵と共に研削体の前方に吹き出す。このとき粉塵は前方に掃き出される。粉塵を含んだ空気の大半は吸引ダクトに吸引されるが、一部は研削体との回転に沿って研削体とカバー本体部の隙間を流れて研削体の後方に回り込む。このように後方に回り込んだ空気は、開口部から防塵カバー内に入る空気と合流して、再び研削体の下方に入り込む。以下同様にして粉塵を含んだ空気は大半が吸引ダクトに吸引されつつ、一部が循環するようになる。このように空気の流れが形成されるので、研削体によって研削された粉塵は効率よく集塵されることになる。他の発明によると、防塵カバーには、前方ゴムシートと平行にかつ前方ゴムシートの内側に前方ゴムシートと同幅で弾性を備えた金属板が設けられ、前方ゴムシートの先端部近傍が金属板の先端部によって押さえられている。このように構成されているので、2点の優れた効果が得られる。第1の効果は車両を前進させながら舗装路面の表面を研削するとき、舗装路面との隙をシールする前方ゴムシートはその先端部が研削体の方向に湾曲することになるが、このとき前方ゴムシートの先端が研削体に巻き込まれるのを防止する効果である。金属板によってゴムシートの先端部近傍が押さえられるからである。第2の効果は、前方ゴムシートの先端部が舗装路面に接触しない場合であっても、金属板の先端が舗装路面に接触して密閉度が維持される効果である。これによって粉塵が防塵カバーの外部に漏れるのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置を構成する研削体と防塵カバーとを示す図で、その(A)は研削体と防塵カバーとを前方から見た斜視図、その(B)は研削体と防塵カバーとを後方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置の一部を示す図で、その(A)は舗装路面の表面の研削を実施していないときの、その(B)は研削を実施しているときの、それぞれ表面研削装置の一部を示す側面断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る研削体を示す図で、その(A)は研削体を構成するブレードの斜視図、その(B)は研削体の側面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る研削体を示す図で、その(A)は研削体を構成する研削円盤の斜視図、その(B)は研削体を構成するスペーサの斜視図、その(C)は、研削体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る舗装路面の表面研削装置1は、舗装路面を走行する車両と、車両に設けられている研削体2と、研削体2を覆っている防塵カバー3とから構成されている。図1の(A)、(B)には研削体2と防塵カバー3の一部のみが示されており、図2の(A)、(B)には、研削体2と防塵カバー3と車両の一部である筐体4と、後で説明する高さ調節用車輪5とが示されている。車両にはこの高さ調節用車輪5とは別に、図に示されていないが走行用の車輪が設けられ、所定の速度で走行するようになっている。本明細書においては便宜上、図2の(A)、(B)において右方を前方、左方を後方として説明する。舗装路面を研削するとき、車両は概ね前方に進行させるようにするが、逆方向に走行させながら研削することもできるようになっている。
【0013】
本実施の形態に係る研削体2については後で詳しく構造について説明するが、本発明における特徴的な部材は防塵カバー3であり、本発明を実施する上で研削体2の構造については限定していない。つまり研削体2は円柱状を呈しており、円柱の中心軸が水平に設けられて研削体2が回転するようになっており、円柱の側面つまり円周面によって舗装路面の表面を研削するようになっていれば本発明を実施することができる。
【0014】
本実施の形態に係る防塵カバー3は、図2の(A)に示されているように、車両の一部を構成している筐体4に設けられ、複数の部材から構成されている。すなわち、防塵カバー3は、円筒を略半分に切断した半円筒状を呈するカバー本体部7、研削体2の後方に設けられている後方ゴムシート8、研削体3の前方に設けられている前方ゴムシート9、図1の(A)、(B)に示されているように研削体3の両側方に設けられている一対の側方ゴムシート10、10、カバー本体部7に接続されている吸引ダクト11、等から概略構成され、これらが筐体4に固定されている。
【0015】
カバー本体部7は円筒の半径が研削体2の円柱の半径よりわずかに大きくなっており、研削体2の円周面の略上半分を所定の隙間を空けて覆っている。従って、研削体2が回転して空気が研削体2の円周面に沿って流れるとき、この隙間を流れることになる。さらにこのカバー本体部7は、本発明に特有の構造を備えている。すなわちカバー本体部7は半円筒状を呈しているが、その前方においてこの半円筒を円周方向に延長した延長部7aが形成されている。延長部7aは研削体2の円柱の円周面の比較的下方まで覆っている。具体的には、本実施の形態においては、研削体2の円柱の中心軸から見たとき円柱の最下部と延長部7aの先端部分との角度θは、60〜85度、より好ましくは65度〜83度になっている。つまり、延長部7aは、研削体2の円柱について、その最下部に対して少なくとも85度の角度に対応する高さまで研削体を覆っていることになる。この角度θは、切削体2によって実際に舗装路面を切削するとき、表面研削装置1が前方に傾けられることになるので約2〜5度小さくなるが、これは後で説明する。なお、この延長部7aの裏面側は、後で説明する吸引ダクト11の一部を構成している。
【0016】
後方ゴムシート8、前方ゴムシート9、一対の側方ゴムシート10、10は、いずれも所定厚さで弾性を備えたゴムシートからなる。次に説明するように後方ゴムシート8と前方ゴムシート9にはそれぞれ取り付け方や他の部材が併用されている点に特徴があるが、いずれのゴムシート8、9、10、10もその一部が筐体4に直接的にあるいは間接的に固定され、先端部が湾曲した状態で舗装路面12に接している。つまり舗装路面12との間に隙間が形成されないようにシールしている。これらによって防塵カバー4内が概ね密閉され、研削体2によって削られた舗装路面からの粉塵が周囲に飛散しないようになっている。
【0017】
本実施の形態において後方ゴムシート8は、図1の(A)に示されているように、所定のスペーサ13、13を介して筐体4に設けられている。従って、図2の(A)に示されているように、筐体4と後方ゴムシート8との間には開口部14が形成されている。この開口部14は研削体2の横幅とその幅が略等しいスリット状を呈しており、後で説明する吸引ダクト11から空気を吸引して防塵カバー3内を負圧にすると、外部の空気が開口部14から防塵カバー3内に供給されるようになっている。
【0018】
本実施の形態において前方ゴムシート9は前記したように筐体4の前方に設けられているが、直接筐体4に固定されてはいない。前方ゴムシート9は、高さ調節用車輪5の部材にその一部が固定されている。本実施の形態に係る表面研削装置1においては、高さ調節用車輪5は、図2の(A)に示されているように、その高さを調整できるようになっている。高さ調節用車輪5の高さを調整することによって、研削体2によって研削する舗装路面12の研削深さを調整できるようになっている。高さ調整用車輪5は筐体4にスライド可能に設けられているので、前方ゴムシート9は、間接的に筐体4に設けられていると言える。本実施の形態においては、この前方ゴムシート9の内側に金属板15がカバー本体部7に設けられている。金属板15は弾性変形によりわずかに湾曲するようになっており、その先端部が前方ゴムシート9の先端部近傍を押さえている。前方ゴムシート9は舗装路面12に押しつけられるときその湾曲方向は研削体2に近づく方向になる。前方ゴムシート9は、高さ調整用車輪5を上下させるとき、この車輪5と一体的に上下することになるが、最下方に位置するときには、その先端部が研削体2に近づき巻き込まれる虞がある。しかしながら前方ゴムシート9の先端部近傍が金属板15によって押さえられているので、その先端が研削体2に接触することはない。一方、高さ調整用車輪5を上に移動させて前方ゴムシート9が最上方に位置するときには、前方ゴムシート9の先端部と舗装路面12の密着度が小さくなる場合がある。このような場合には、金属板15の先端部が舗装路面12の表面に接触することになるので、防塵カバー3内の密閉度が維持される。
【0019】
吸引ダクト11は、研削体2の前方寄りに設けられ、カバー本体部7に連続して形成されている。前記したように、カバー本体部7の延長部7aは、その背面側が吸引ダクト11の一部を構成している。吸引ダクト11は、図1の(A)、(B)に示されているように、上方に向かって空間が狭くなるように形成され、上端において所定径の円筒部17になっている。この円筒部17に、図に示されていないが所定のホースを介して吸引装置を接続するようになっている。従って吸引装置を駆動すると、防塵カバー3内の空気と共に粉塵が吸引ダクト11で集塵されて効率よく排出されることになる。
【0020】
前記したように研削体2は円柱状に形成されていれば、どのように構成されていても本発明を実施できるが、本実施の形態に係る研削体2を説明する。本実施の形態に係る研削体2は、正八角柱状を呈する回転軸18とブレード21、21、…とから構成されている。図3の(A)にはブレード21の斜視図が、図3の(B)には回転軸18と複数枚のブレード21、21、…とからなる研削体2が示されている。ブレード21は、図3の(A)に示されているように、所定板厚の鋼板からなる略長方形状を呈するプレート23と、このプレート23の長方形の両方の短辺に設けられている研削片24、24、…とから構成されている。プレート23には、その中心に回転軸18が挿通される正八角形の軸穴26が明けられている。
【0021】
研削片24、24、…はダイヤモンド粒子を練り込んだ焼結材から、焼結によって形成されており、直方体を湾曲させた形状を呈している。このような湾曲の形状は、軸穴26を中心とした円の円弧になっている。これによって研削片24、24、…の外側の面は、軸穴26を中心軸とする円柱の側面つまり円柱面の一部を構成することになる。この外側の面が、舗装路面の表面に面状に当接して舗装路面を研削する研削部になっている。このような研削片24、24、…は、その幅あるいは厚さがプレート23の板厚よりも大きい。つまり研削部は広い。これによって、ブレード23、23、…が重ね合わされて形成された研削体2を回転すると、隣り合う研削片24、24、…の描く軌跡が所定幅で重なり合う。つまり研削片24、24、…によって所定の重ね代だけ重複するので、舗装路面を研削するとき、研削される面が滑らかになることが保証される。なお、本実施の形態においては1枚のブレード21に設けられている研削片24、24、…は一方の短辺に2個、他方の短辺に2個の計4個になっているが、これらはその個数については制限はない。このような研削片24、24、…はプレート23に対して溶接されているが、プレート23の接続部分には切欠28、28、…が形成されて応力集中が防止されており、溶接部が破断しにくくなっている。
【0022】
本実施の形態に係る研削体2は、図3の(B)に示されている回転軸18に、複数枚のブレード21、21、21、…が順次、回転方向に45度ずつずれるようにして挿通され組み立てられている。本実施の形態に係る研削体7はこのように構成されているので、研削体2の内部に隙間が多くなっており、軽量になっている。隙間が多いので研削体2が防塵カバー3内で回転するとき、粉塵を含んだ空気は研削体2の内部を通って流れることになる。また熱がこもり難く高温になり難いという優れた効果も備えている。
【0023】
本実施の形態に係る表面研削装置1によって、舗装路面12の表面を研削する方法を説明する。表面研削装置1において、図2の(B)に示されているように、研削体2を回転する。研削体2の回転方向は、研削体2によって研削された舗装路面12の粉塵が、研削体2の前方に掃き出される方向になっている。高さ調節用車輪5の高さを調整する。高さ調節用車輪5の高さを調整すると、研削体2によって舗装路面12を削る深さを調整できる。高さ調節用車輪5を筐体4に対して相対的に上に移動させると、研削体2の円周面が舗装路面12に強く接触して研削体2により研削が開始される。このとき、表面研削装置1は前方に2〜5度傾くことになる。例えば5度傾くと、研削体2の円柱の中心から見て、円柱の最下点とカバー本体部7の延長部7aの先端とのなす角度θ’は、図2の(A)における角度θより5度だけ小さくなる。従って、このとき角度θ’は55〜80度、もしくは60度〜78度になる。つまり、延長部7aは円柱の中心軸から見たとき円柱の最下部に対して少なくとも80度の角度に対応する高さまで研削体2を覆うことになる。
【0024】
表面研削装置1では、研削体2を回転するのと同時に、図に示されていない吸引装置を駆動して吸引を開始する。そうすると防塵カバー3内の空気は負圧になる。防塵カバー3は、後方ゴムシート8、前方ゴムシート9、側方ゴムシート10、10により密閉されているので、外部の空気は専ら開口部14から防塵カバー3内に吹き込む。このとき空気は、研削体2の横幅に対して均一に吹き込む。吹き込まれた空気は研削体2の回転に引き寄せられて研削体2と舗装路面12の間に入り込む。また本実施の形態に係る研削体2は内部に隙間が形成されているので、空気の一部は研削体2の内部を通る。これらの空気の流れによって研削体2により研削された粉塵は前方に掃き出されると共に金属板15にぶつかって上方に吹き上げられる。粉塵は、大部分が金属板15にぶつかって跳ね返り、カバー本体部7の延長部7aの背面側にさらにぶつかる。これによって粉塵の大部分が吸引ダクト11内に導かれることになる。このような粉塵は空気と共に吸引ダクト11から集塵されて外部に排出される。ただし、一部の空気は研削体2の回転によって巻き込まれ、半円筒状のカバー本体部7と研削体2の間の隙間を流れ、開口部14から吹き込まれる外部からの空気と合流する。以下同様にして、防塵カバー3内の空気が流れる。表面研削装置1をゆっくりと前方に走行させると、粉塵を適切に集塵しながら、舗装路面12の表面を研削することができる。
【0025】
本実施の形態に係る表面研削装置1は色々な変形が可能である。例えば研削体2を変形することができる。図4の(A)〜(C)には変形した第2の実施の形態に係る研削体2’が示されているが、研削体2’は回転軸18’と研削円盤31と、同様に円盤状を呈するスペーサ32とから構成されている。研削円盤31は所定厚さの金属板から大径の円盤状に形成され、円周面において円周方向に均等になるように複数個の切り欠き34、34、…が形成されている。これらの切り欠き34、34、…によって舗装路面の表面を研削できるようになっている。スペーサ32は、所定厚さの金属板からなり、小径の円盤状になっている。研削円盤31にもスペーサ32にも、回転軸18’が挿通される軸穴26’があけられており、図4の(A)、(B)においては円形に形成されているように示されているが、軸穴26’の形状は回転軸18’の形状に応じて形成されている。すなわち回転軸18’が正八角柱状に形成されている場合には、軸穴26’は前実施の形態に係る研削体2のブレード21と同様に正八角形にすればよい。あるいは、回転軸18’がキー溝付きに形成されていれば、軸穴26’はキー溝加工されている。このような研削円盤31、31、…とスペーサ32、32、…とが図4の(C)に示されているように、交互に回転軸18’に挿入されている。これによって内部に隙間が形成された研削体2’が構成される。
【0026】
本実施の形態の説明では、アスファルト合材からなる舗装路面を切削するように説明したが、コンクリート、モルタル等からなる舗装路面であっても当然に切削できる。
【符号の説明】
【0027】
1 表面研削装置 2 研削体
3 防塵カバー 4 筐体
5 前輪 7 カバー本体部
7a 延長部 8 後方ゴムシート
9 前方ゴムシート 10 側方ゴムシート
11 吸引ダクト 12 舗装路面
13 スペーサ 14 開口部
15 金属板 17 円筒部
18 回転軸 21 ブレード
23 プレート 24 切削片
26 軸穴
図1
図2
図3
図4