【解決手段】異常検出システム10及び異常検出方法では、外部からピストン50のストロークを入力し、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果に基づきピストン50の移動時間を算出し、ピストン50の動作回数及びストロークを用いてピストン50の総移動距離を算出し、移動時間とピストン50の動作回数又は総移動距離とに基づきアクチュエータ14の異常を検出する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る異常検出システム及び異常検出方法について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
[1.本実施形態の構成]
<1.1 異常検出システム10の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係る異常検出システム10は、4方向5ポートの複動式電磁弁である方向切替弁12、流体圧シリンダ等のアクチュエータ14、アクチュエータ14の一端部16に配設された第1センサ18(第1のセンサ)、アクチュエータ14の他端部20に配設された第2センサ22(第2のセンサ)、異常検出装置24、及び、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置26(他の装置)を備える。
【0016】
なお、異常検出システム10は、図示しない設備に組み込まれ、該設備を停止させることなく、設備の稼働中に、アクチュエータ14の劣化又は故障等の異常を自動的に検出可能な異常検知機能を備えたシステムである。また、本実施形態において、アクチュエータ14の一端部16は、
図1中、流体圧シリンダの左側(ヘッド側)の端部であり、他端部20は、流体圧シリンダの右側(ロッド側)の端部である。
【0017】
異常検出装置24は、設備に配設されたアクチュエータ14の近傍に設けられ、外部から各種の情報を入力可能な操作入力部28(外部入力部)と、通信部30とを有する。操作入力部28は、キーボード、テンキー、タッチパネル等、設備の担当者が各種の情報を入力操作可能な操作デバイスである。制御装置26は、異常検出装置24及びアクチュエータ14よりも離れた場所に設置された、異常検出装置24に対する上位装置であって、通信部32を有する。異常検出装置24の通信部30と制御装置26の通信部32とは、フィールドバス等によりシリアル接続されている。従って、2つの通信部30、32は、シリアル通信により、各種の信号又は情報の送受信を行う。また、制御装置26の通信部32は、ネットワーク34を介して、遠隔地にある上位装置としての複数のPC36(他の装置、外部装置)と接続可能である。
【0018】
制御装置26は、通信部32を介して、方向切替弁12のソレノイド12a、12bに制御信号(制御指令)を供給する。方向切替弁12は、ソレノイド12a、12bに供給される制御信号によって、流体圧源38から供給される圧力流体をアクチュエータ14の一端部16又は他端部20に選択的に出力する。すなわち、ソレノイド12aに制御信号が供給された場合、方向切替弁12は、
図1に図示した2つのブロックのうち、上側のブロックの状態となる。また、ソレノイド12bに制御信号が供給された場合、方向切替弁12は、下側のブロックの状態となる。方向切替弁12とアクチュエータ14の一端部16側のポート40との間には、第1配管42(第1の配管)が接続され、方向切替弁12とアクチュエータ14の他端部20側のポート44との間には、第2配管46(第2の配管)が接続されている。
【0019】
アクチュエータ14は、方向切替弁12からの圧力流体の供給に基づき、ピストンロッド48に連結されたピストン50(可動部)が
図1の左右方向(変位方向、ストローク方向)に変位する流体圧シリンダである。ピストンロッド48は、ピストン50から
図1の右方向に延び、アクチュエータ14の他端部20を貫通して外部に突出している。
【0020】
ここで、ソレノイド12aへの制御信号の供給によって該ソレノイド12aが励磁され、方向切替弁12が上側のブロックの状態になった場合、流体圧源38から方向切替弁12、第1配管42及びポート40を介して一端部16に圧力流体が供給されると共に、他端部20からポート44、第2配管46及び方向切替弁12を介して該他端部20内の圧力流体が外部に排出される。これにより、ピストン50及びピストンロッド48は、アクチュエータ14の一端部16から他端部20に向かって、
図1の右方向へ一体的に変位する。
【0021】
また、ソレノイド12bへの制御信号の供給によって該ソレノイド12bが励磁され、方向切替弁12の状態が下側のブロックの状態になった場合、流体圧源38から方向切替弁12、第2配管46及びポート40を介して他端部20に圧力流体が供給されると共に、一端部16からポート40、第1配管42及び方向切替弁12を介して該一端部16内の圧力流体が外部に排出される。これにより、ピストン50及びピストンロッド48は、他端部20から一端部16に向かって、
図1の左方向に一体的に変位する。
【0022】
従って、制御装置26から通信部30を介して各ソレノイド12a、12bに交互に制御信号を供給すると、一端部16と他端部20との間で、ピストン50及びピストンロッド48を
図1の左右方向に往復移動させることができる。そのため、本実施形態において、ストロークとは、アクチュエータ14の一端部16から他端部20まで、又は、他端部20から一端部16までのピストン50の移動距離をいう。なお、一端部16又は他端部20からの圧力流体の排出経路の先には、サイレンサ52が配設されている。
【0023】
アクチュエータ14の一端部16側には、第1センサ18が配設され、他端部20側には、第2センサ22が配設されている。第1センサ18及び第2センサ22は、リミットスイッチ又は磁気式スイッチであり、ピストン50が第1センサ18及び第2センサ22に対向する位置に変位したときに、該ピストン50を検知し、その検知結果を検知信号として異常検出装置24に出力する。また、ピストン50の変位によって、該ピストン50と第1センサ18及び第2センサ22とが対向しなくなったとき、第1センサ18及び第2センサ22は、検知信号の出力を停止する。
【0024】
異常検出装置24は、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果や、外部から操作入力部28を介して入力された情報に基づいて、アクチュエータ14の異常、方向切替弁12の異常、及び、第1配管42又は第2配管46の異常の有無を検出する。異常検出装置24は、異常の発生を示す検出結果等を、通信部30から制御装置26の通信部32にシリアル通信により送信する。そのため、異常検出装置24は、設備の稼働時には、アクチュエータ14等の異常の検出処理を連続的に行うことが可能である。
【0025】
<1.2 異常検出装置24の内部構成>
図2に示すように、異常検出装置24は、操作入力部28、入力部54、出力部56、時計部58、演算処理部60、通信部30、出力処理部62、出力部64、及び、記憶部66を有する。演算処理部60は、マイクロコンピュータ等のプロセッサであり、記憶部66に記憶されたプログラムを動作することにより、タイムスタンプ処理部60a、動き出し時間算出部60b(動き出し時間検出部)、移動時間算出部60c、動作回数カウント部60d、移動距離算出部60e、統計演算処理部60f、及び、異常検出部60gの機能を実現する。
【0026】
操作入力部28には、設備の担当者の操作によって、ピストン50のストローク、ピストン50の移動時間の時間閾値、ピストン50の動作回数の上限値(回数上限値)、ピストン50の総移動距離の距離閾値、ピストン50の動き出し時間の上限値(時間上限値)が入力される。
【0027】
ここで、ピストン50の移動時間とは、ピストン50が一端部16から他端部20まで、又は、他端部20から一端部16まで移動するのに要する時間をいう。時間閾値とは、ピストン50の移動時間の許容範囲の上限値である。
【0028】
ピストン50の動作回数とは、アクチュエータ14の一端部16と他端部20との間でのピストン50の往復回数、又は、一端部16から他端部20まで、及び、他端部20から一端部16までピストン50が移動した回数(往復回数の2倍の回数)をいう。回数上限値とは、ピストン50の動作回数の許容範囲の上限値をいう。なお、回数上限値は、流体圧シリンダの種類(機種)や、方向切替弁12の種類(機種)又はシール方法に応じて、適宜変更してもよい。
【0029】
ピストン50の総移動距離とは、ピストン50の動作回数に応じたピストン50の総走行距離であって、動作回数とストロークとの積である(動作回数×ストローク=総移動距離)。距離閾値とは、総移動距離の許容範囲の上限値である。
【0030】
動き出し時間とは、ピストン50の1回の動作において、ソレノイド12a、12bに対して制御信号の供給を開始した時点から、第1センサ18及び第2センサ22のうち、一方のセンサがピストン50を検知できなくなった時点までの時間をいう。時間上限値とは、動き出し時間の許容範囲の上限値である。
【0031】
なお、上述した閾値及び上限値は、異常検出システム10の製造メーカが推奨するアクチュエータ14、方向切替弁12、第1配管42及び第2配管46等の公称寿命又は保証寿命に応じた値である。
【0032】
入力部54は、第1センサ18又は第2センサ22から検知信号が入力されたとき(検知信号の信号レベルがローレベルからハイレベルに切り替わったとき)、検知信号の立ち上がりエッジを検出し、検出結果(検知結果)を演算処理部60に出力する。また、入力部54は、第1センサ18又は第2センサ22からの検知信号の入力が停止したとき(検知信号の信号レベルがハイレベルからローレベルに切り替わったとき)、検知信号の立ち下がりエッジを検出し、検出結果(検知結果)を演算処理部60に出力する。
【0033】
出力部56は、制御装置26から通信部30を介して供給された制御信号を、方向切替弁12のソレノイド12a、12bに出力する。時計部58は、計時機能を有するタイマである。
【0034】
演算処理部60のタイムスタンプ処理部60aは、入力部54から第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果が入力された際に、少なくとも各検知結果に現在時刻の時刻情報を付与するタイムスタンプ処理を行う。
【0035】
動き出し時間算出部60bは、ピストン50の1回の動作毎に、方向切替弁12のソレノイド12a、12bへの制御信号の供給開始時点から、第1センサ18及び第2センサ22のうち、一方のセンサがピストン50を検知できなくなった時点までの時間を、動き出し時間として算出(検出)する。
【0036】
移動時間算出部60cは、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果に基づいて、ピストン50の移動時間を算出する。この場合、ピストン50の1回の動作において、制御信号の供給開始時点から、第1センサ18及び第2センサ22のうち、他方のセンサがピストン50を検知する時点までの時間を、移動時間として算出する。
【0037】
動作回数カウント部60dは、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果に基づいて、ピストン50の動作回数をカウントする。この場合、ピストン50の1回の動作において、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとが入力部54から演算処理部60に入力された際に、動作回数カウント部60dは、ピストン50の1回分の動作としてカウントする。
【0038】
移動距離算出部60eは、ピストン50の動作回数とストロークとを乗算することで、ピストン50の総移動距離を算出する。
【0039】
統計演算処理部60fは、動き出し時間、移動時間、動作回数及び総移動距離等に対して、平均値、分散及び標準偏差等の統計値を算出する統計演算処理を行う。この場合、例えば、特許文献1での統計演算処理手法を用いて、統計演算処理を行えばよい。
【0040】
異常検出部60gは、動き出し時間、移動時間、動作回数又は総移動距離や、統計演算処理の結果等に基づいて、アクチュエータ14、方向切替弁12、及び、第1配管42又は第2配管46の異常の有無を検出する。異常の有無の検出手法は、後述する。
【0041】
記憶部66は、タイムスタンプ処理後の第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果や、演算処理部60での各種の演算処理の結果が記憶される。従って、記憶部66には、各検知結果及び各演算処理結果が時刻情報に紐づけられて記憶される。
【0042】
出力処理部62は、タイムスタンプ処理後の第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果や、演算処理部60での各種の演算処理の結果を、出力部56を介して外部に報知する際に、該出力部56の出力形態に応じた処理を行う。例えば、出力部56がディスプレイ等の表示部である場合には、出力処理部62は、各検知結果や各演算処理結果をディスプレイに表示するための表示処理を行う。
【0043】
通信部30は、制御装置26の通信部32から供給される制御信号を出力部56及び演算処理部60に出力する。また、通信部30は、タイムスタンプ処理後の第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果や、演算処理部60での各種の演算処理の結果を、制御装置26の通信部32に送信する。
【0044】
[2.本実施形態の動作]
以上のように構成される本実施形態に係る異常検出システム10の動作(異常検出方法)について、
図3及び
図4のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、制御装置26(
図1参照)からソレノイド12aへの制御信号の供給が開始されることで、アクチュエータ14が駆動し、最初に、アクチュエータ14の一端部16から他端部20にピストン50が変位する場合について説明する。なお、制御装置26は、2つのソレノイド12a、12bに対して交互に制御信号を供給する。
【0045】
先ず、
図3のステップS1(第1のステップ)において、設備の担当者は、操作入力部28(
図1及び
図2参照)を操作し、ピストン50のストローク、時間閾値、回数上限値、距離閾値及び時間上限値を入力する。入力された各設定値は、記憶部66に記憶される。
【0046】
ステップS2において、制御装置26は、通信部32を介して、異常検出装置24の通信部30への制御信号の供給を開始する。異常検出装置24の通信部30は、供給された制御信号を出力部56及び演算処理部60に出力する。これにより、演算処理部60は、制御信号の供給が開始されたことを認識することができる。また、出力部56は、方向切替弁12のソレノイド12aに制御信号を供給する。
【0047】
ステップS3において、ソレノイド12aへの制御信号の供給によって該ソレノイド12aが励磁されると、流体圧源38から方向切替弁12、第1配管42及びポート40を介してアクチュエータ14の一端部16に圧力流体が供給されると共に、他端部20からポート44、第2配管46及び方向切替弁12を介して他端部20内の圧力流体が外部に排出される。この結果、ピストン50及びピストンロッド48は、アクチュエータ14の一端部16から他端部20に向かって変位する。
【0048】
このように、ピストン50の他端部20側への変位により、次のステップS4(第2のステップ)において、第1センサ18は、ピストン50を検知できなくなる。また、第2センサ22は、ピストン50が他端部20に変位することで、ピストン50を検知することができる。第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果は、入力部54に入力される。入力部54は、第1センサ18からの検知信号の立ち下がりエッジを検出し、その検出結果(検知結果)を演算処理部60に出力する。また、入力部54は、第2センサ22からの検知信号の立ち上がりエッジを検出し、検出結果(検知結果)を演算処理部60に出力する。
【0049】
ステップS5において、演算処理部60のタイムスタンプ処理部60aは、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果、すなわち、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに対して、現在時刻の時刻情報を付与するタイムスタンプ処理を実行する。タイムスタンプ処理部60aは、時刻情報に紐づけた第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果(立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの情報)を記憶部66に記憶する。
【0050】
ステップS6において、動き出し時間算出部60bは、ソレノイド12aへの制御信号の供給開始時点から、第1センサ18がピストン50を検知できなくなった時点までの時間を、動き出し時間として算出し、算出した動き出し時間を記憶部66に記憶する。
【0051】
ステップS7(第3のステップ)において、移動時間算出部60cは、動き出し時間及び立ち上がりエッジに基づき、ソレノイド12aへの制御信号の供給開始時点から、第2センサ22がピストン50を検知した時点までの時間を、移動時間として算出し、算出した移動時間を記憶部66に記憶する。
【0052】
ステップS8において、動作回数カウント部60dは、立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジに基づき、ピストン50が1回動作したことをカウントし、カウントした動作回数を記憶部66に記憶する。
【0053】
ステップS9(第4のステップ)において、移動距離算出部60eは、動作回数カウント部60dがカウントした動作回数と、記憶部66に記憶されているストロークとを乗算することで、ピストン50の総移動距離を算出し、算出した総移動距離を記憶部66に記憶する。
【0054】
ステップS10において、統計演算処理部60fは、動き出し時間、移動時間、動作回数及び総移動距離について、平均値、分散及び標準偏差等の統計値を算出する。
【0055】
従って、ステップS5〜S10の処理によって、記憶部66には、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果、動き出し時間、移動時間、動作回数、総移動距離、及び、統計値が、時刻情報と紐づけられて記憶される。
【0056】
そして、
図4のステップS11〜S17(第5のステップ)において、異常検出部60g(
図2参照)は、上記の各算出結果、及び、記憶部66に予め設定した設定値に基づき、アクチュエータ14(
図1参照)、方向切替弁12、及び、第1配管42又は第2配管46の異常の有無を検出する。
【0057】
すなわち、ステップS11において、異常検出部60gは、ピストン50の移動時間が延びる傾向にあるか否か、すなわち、移動時間が時間閾値以上であるか否かを判定する。
【0058】
移動時間が時間閾値以上である場合(ステップS11:YES)、次のステップS12において、異常検出部60gは、ピストン50の総移動距離が短いか、すなわち、動作回数が回数上限値未満であるか、又は、総移動距離が距離閾値未満であるかを判定する。
【0059】
動作回数が回数上限値未満、又は、総移動距離が距離閾値未満である場合(ステップS12:YES)、次のステップS13において、異常判定部は、ステップS11、S12でいずれも肯定的な判定結果が得られたので、方向切替弁12に故障等の異常が発生していると判定する。
【0060】
また、動作回数が回数上限値以上、且つ、総移動距離が距離閾値以上である場合(ステップS12:NO)、異常判定部は、ステップS14において、アクチュエータ14に故障等の異常が発生していると判定する。
【0061】
さらに、ステップS11において、移動時間が時間閾値未満である場合(ステップS11:NO)、異常検出部60gは、ステップS15において、ピストン50の動き出し時間に異常があるか、すなわち、動き出し時間が時間上限値以上であるか否かを判定する。
【0062】
動き出し時間が時間上限値以上である場合(ステップS15:YES)、異常検出部60gは、ステップS16において、第1配管42又は第2配管46に故障等の異常が発生していると判定する。
【0063】
動き出し時間が時間上限値未満である場合(ステップS15:NO)、異常検出部60gは、ステップS17において、アクチュエータ14、方向切替弁12、及び、第1配管42又は第2配管46に、故障等の異常が発生していない、すなわち、正常であると判定する。
【0064】
この結果、ステップS18において、異常検出部60gは、ステップS13、S14、S16、S17のいずれかの異常の有無の判定結果を記憶部66に記憶する。
【0065】
ステップS19において、出力処理部62は、記憶部66に記憶された時刻情報、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果、演算処理部60での各演算処理結果、異常検出部60gでの判定結果について、出力部64の出力形態に応じた処理を行う。これにより、出力部64は、出力処理部62で処理された各結果を外部に報知することができる。例えば、出力部64が表示部であれば、表示部の画面上に、時刻情報、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果、演算処理部60での各演算処理結果、異常検出部60gでの判定結果等が表示される。また、通信部30は、上記の時刻情報及び各結果を、シリアル通信により、制御装置26の通信部32に送信する。制御装置26の通信部32は、受信した情報を、ネットワーク34を介して、遠隔地のPC36に送信する。
【0066】
ステップS20において、演算処理部60は、ステップS4〜S19の処理を繰り返し実行するか否かを判定する。前述のように、制御装置26は、2つのソレノイド12a、12bに対して制御信号を交互に供給する。そのため、ステップS20で肯定的な判定結果となった場合、ステップS4に戻り、ステップS4〜S19の処理を繰り返し実行することで、他端部20から一端部16にピストン50を変位させる際の異常の検出処理を実行することができる。このように、本実施形態では、ステップS4〜S19の処理を繰り返す実行することで、ピストン50が変位方向に沿って往復移動中(アクチュエータ14の駆動中)であっても、アクチュエータ14、方向切替弁12、及び、第1配管42又は第2配管46の異常の有無を検出することができる。
【0067】
なお、ステップS13、S14、S16の判定結果によって異常が検出され、該異常に対処するため、アクチュエータ14の駆動を停止する場合(ステップS20:NO)、制御装置26からの制御信号の供給を停止する。また、定期的なメンテナンス等で、アクチュエータ14の駆動を停止させる場合でも(ステップS20:NO)、制御装置26からの制御信号の供給を停止する。
【0068】
[3.変形例]
上記の説明では、異常検出装置24内に操作入力部28及び出力部64を設ける場合を説明した。本実施形態では、異常検出装置24の外部に操作入力部28及び出力部64を外付けの形態で設けてもよい。
【0069】
また、上記の説明では、制御装置26とPC36とがネットワーク34を介して接続される場合を説明した。本実施形態では、制御装置26とPC36とが互いに通信接続が可能であれば、どのような接続形態であってもよい。
【0070】
さらに、上記の説明では、記憶部66に記憶された各種の情報を通信部30から制御装置26及びPC36に送信する場合を説明した。本実施形態では、時刻情報と紐づけて各種の情報が記憶部66に記憶されるので、USB等の持ち運び可能な記憶部66(記憶装置)に各種の情報を記憶し、後日、該記憶装置を異常検出装置24から取り外し、制御装置26又はPC36に接続することで、制御装置26又はPC36が各種の情報を取得することも可能である。
【0071】
[4.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る異常検出システム10及び異常検出方法は、アクチュエータ14の一端部16と他端部20との間を変位するピストン50(可動部)の移動時間に基づいて、アクチュエータ14の異常を検出する。
【0072】
異常検出システム10は、一端部16に変位したピストン50を検知する第1センサ18(第1のセンサ)と、他端部20に変位したピストン50を検知する第2センサ22(第2のセンサ)と、ピストン50のストロークを入力する操作入力部28(外部入力部)と、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果に基づいて移動時間を算出する移動時間算出部60cと、ピストン50の動作回数及びストロークに基づいてピストン50の総移動距離を算出する移動距離算出部60eと、移動時間と動作回数又は総移動距離とに基づいて、少なくともアクチュエータ14の異常を検出する異常検出部60gとを備える。
【0073】
また、異常検出方法は、操作入力部28によって、ピストン50のストロークを入力するステップS1(第1のステップ)と、第1センサ18によって、一端部16に変位したピストン50を検知し、第2センサ22によって、他端部20に変位したピストン50を検知するステップS4(第2のステップ)と、移動時間算出部60cによって、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果に基づき移動時間を算出するステップS7(第3のステップ)と、移動距離算出部60eによって、ピストン50の動作回数及びストロークに基づきピストン50の総移動距離を算出するステップS9(第4のステップ)と、異常検出部60gによって、移動時間と動作回数又は総移動距離とに基づき、少なくともアクチュエータ14の異常を検出するステップS11〜S17(第5のステップ)とを備える。
【0074】
このように、外部からピストン50のストロークを予め入力し、入力されたストロークと、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果と、ピストン50の動作回数とに基づき、アクチュエータ14の異常を検出する。これにより、装置内に格納された統計データを用いてアクチュエータの異常を検出する特許文献1の技術と比較して、アクチュエータ14の異常を、簡単、低コスト、正確、且つ、速やかに検出することが可能となる。
【0075】
また、異常検出システム10では、少なくともアクチュエータ14の異常を簡便且つ正確に検出することができるので、設備のメンテナンスを定期的(計画的)に行う場合に、メンテナンス性を向上させることができる。
【0076】
さらに、異常検出システム10では、操作入力部28を介してピストン50のストロークを入力するので、アクチュエータ14の交換までの安全率を考慮して、ストロークを設定することも可能となる。
【0077】
ここで、異常検出システム10は、外部からの制御信号の供給に基づいて、圧力流体を一端部16又は他端部20に選択的に供給する方向切替弁12をさらに備える。ピストン50は、一端部16又は他端部20への圧力流体の選択的な供給によって一端部16と他端部20との間を変位する。操作入力部28は、ストロークと、移動時間の時間閾値と、動作回数の回数上限値又は総移動距離の距離閾値とを入力する。移動距離算出部60eは、動作回数とストロークとを乗算することで総移動距離を算出する。
【0078】
そして、異常検出部60gは、移動時間が時間閾値以上であり、且つ、動作回数が回数上限値未満、又は、総移動距離が距離閾値未満である場合、方向切替弁12の異常を検出する。また、異常検出部60gは、移動時間が時間閾値以上であり、且つ、動作回数が回数上限値以上、又は、総移動距離が距離閾値以上である場合、アクチュエータ14の異常を検出する。
【0079】
このように、移動時間と総移動距離との2つのパラメータから、故障等の異常の要因を容易且つ正確に絞り込むことができるので、異常を効率よく検出することができる。
【0080】
また、異常検出システム10は、方向切替弁12から一端部16に圧力流体を供給する第1配管42(第1の配管)と、方向切替弁12から他端部20に圧力流体を供給する第2配管46(第2の配管)と、ピストン50の1回の動作毎に、方向切替弁12への制御信号の供給開始時点から、第1センサ18及び第2センサ22のうち、一方のセンサがピストン50を検知できなくなった時点までの時間をピストン50の動き出し時間として検出する動き出し時間算出部60b(動き出し時間検出部)とをさらに備える。
【0081】
この場合、操作入力部28は、動き出し時間の時間上限値を入力し、異常検出部60gは、動き出し時間が時間上限値以上である場合、第1配管42又は第2配管46の異常を検出する。
【0082】
これにより、第1配管42又は第2配管46の異常を簡単且つ効率よく検出することができる。また、異常の要因がアクチュエータ14、方向切替弁12、第1配管42又は第2配管46のいずれであるのかを特定することができるので、異常の要因となったデバイスに対して的確且つ迅速な対応を取ることが可能となる。
【0083】
また、異常検出システム10は、操作入力部28、移動時間算出部60c、移動距離算出部60e及び異常検出部60gと、第1センサ18及び第2センサ22の各検知結果が入力される際に、少なくとも各検知結果に現在時刻の時刻情報を付与するタイムスタンプ処理部60aとを有する異常検出装置24をさらに備える。
【0084】
このように、タイムスタンプの概念を利用することで、アクチュエータ14から離れた遠隔地でも、異常の有無を管理することが可能となる。
【0085】
この場合、異常検出装置24は、制御装置26(他の装置)との間で通信を行う通信部30をさらに有する。通信部30は、時刻情報が付与された各検知結果及び異常検出部60gの検出結果を制御装置26に送信する。
【0086】
これにより、アクチュエータ14から離れた場所にある制御装置26で異常の有無を容易に管理することができる。また、制御装置26から異常検出装置24に、異常の発生に対する的確な対応を指示することも可能となる。
【0087】
ここで、通信部30との間でシリアル通信を行う制御装置26と、制御装置26との間でネットワーク34を介して接続されたPC36(外部装置)とが、異常検出装置24に対する他の装置である。この場合、制御装置26は、シリアル通信により、通信部30を介して方向切替弁12に制御信号を供給し、一方で、通信部30から時刻情報、各検知結果及び検出結果を受信し、さらに、ネットワーク34を介して、PC36に時刻情報、各検知結果及び検出結果を送信する。
【0088】
この場合でも、遠隔地のPC36で異常の有無を容易に管理することができる。また、PC36が複数のアクチュエータ14及び異常検出装置24を集中管理している場合、該PC36から異常を検出した異常検出装置24に対して、異常の発生に対する的確な対応を個別に指示することも可能となる。
【0089】
また、異常検出装置24は、少なくとも異常検出部60gの検出結果を外部に出力する出力部64をさらに有する。これにより、設備の担当者等に異常の有無を報知することができる。
【0090】
この場合、出力部64が検出結果を表示する表示部であれば、異常の有無が表示部の画面上に表示されるので、担当者等に対する報知を一層容易に行うことができる。
【0091】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。