【解決手段】車両の前部構造は、車両前端部に車両後方へ凹む凹設部6が形成され、凹設部6には、フロントグリル3および当該フロントグリル3の車幅方向両側のフロントランプ4が車幅方向に並んで配設された構造である。凹設部6には、フロントグリル3の前面およびフロントランプ4の前面によって車幅方向に連続する風路31が形成されている。フロントランプ4は、主光源部4aを備える。凹設部6には、風路31における上下方向の幅を狭くする風路絞り部材5が、主光源部4aよりも車幅方向内側から車幅方向内方に延びるように配設されている。
車両前端部に車両後方へ凹む凹設部が形成され、前記凹設部には、フロントグリルおよび当該フロントグリルの車幅方向両側のフロントランプが車幅方向に並んで配設された車両の前部構造であって、
前記凹設部には、前記フロントグリルの前面および前記フロントランプの前面によって車幅方向に連続する風路が形成され、
前記フロントランプは、主光源部を備え、
前記凹設部には、前記風路における上下方向の幅を狭くする風路絞り部材が、前記主光源部よりも車幅方向内側から車幅方向内方に延びるように配設されている、
車両の前部構造。
平面視において、前記風路絞り部材の車幅方向内側端部の前端と前記凹設部の車両前方を向く底面との車両前後方向の距離よりも、前記風路絞り部材の車幅方向外側端部の前端と前記底面との車両前後方向の距離が短くなるように設定されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
前記風路絞り部材の車幅方向内側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離は、前記風路絞り部材の車幅方向外側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離よりも短くなるように設定されている、
請求項6に記載の車両の前部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように筒状の導風路を有する整流部を介してフロントグリルからフロントランプの前面へ風を送る構造では、筒状の導風路を風が通過するときに抵抗が大きく、また導風路の流路面積が制限されているので、フロントランプの前方を車幅方向に流れる風の風速を上げることが難しい。そのため、フロントランプ前面における雪等の付着物の付着を抑制することが難しい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、フロントランプ前面における雪等の付着物の付着を抑制することが可能な車両の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の車両の前部構造は、車両前端部に車両後方へ凹む凹設部が形成され、前記凹設部には、フロントグリルおよび当該フロントグリルの車幅方向両側のフロントランプが車幅方向に並んで配設された車両の前部構造であって、前記凹設部には、前記フロントグリルの前面および前記フロントランプの前面によって車幅方向に連続する風路が形成され、前記フロントランプは、主光源部を備え、前記凹設部には、前記風路における上下方向の幅を狭くする風路絞り部材が、前記主光源部よりも車幅方向内側から車幅方向内方に延びるように配設されている、ことを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、フロントグリルの前面およびフロントランプの前面によって車幅方向に連続する風路が形成されている。この風路を通して、車両走行中においてフロントグリルの前面からフロントランプの前面への連続的な風の流れを生成することが可能である。そして、凹設部において、風路絞り部材がフロントランプの主光源部よりも車幅方向内側から車幅方向内方に延びるように配設されている、風路絞り部材は、風路における上下方向の幅を狭くすることにより、風路におけるフロントランプの主光源部の上流側において風速を向上させることが可能である。これにより、速度が増した風をフロントランプの主光源部の前面に沿って流すことが可能になり、フロントランプ前面における雪等の付着物の付着を抑制することが可能になる。
【0009】
上記の車両の前部構造において、前記フロントランプは、前記主光源部よりも車幅方向内側において上下方向に凹んだ上下方向凹設部を有しており、前記風路絞り部材の少なくとも一部は、車両前面視において、前記上下方向凹設部に隣接して配設されているのが好ましい。
【0010】
かかる構成では、凹設部内部における風路絞り部材およびフロントランプの占める面積を減少することが可能になり、風路絞り部材およびフロントランプを凹設部の内部にコンパクトに配置することが可能になる。
【0011】
上記の車両の前部構造において、前記風路絞り部材は、前記主光源部の車幅方向内側の端部から前記フロントグリルに重複する位置まで延びているのが好ましい。
【0012】
かかる構成では、前記風路絞り部材によって前記風路の幅が絞られて風を加速させる領域を車幅方向に長く形成することが可能である。しかも、当該領域で加速した風の速度を主光源部の近傍まで維持することが可能であり、主光源部への付着物の付着をより抑制することが可能である。
【0013】
上記の車両の前部構造において、前記風路および前記風路絞り部材のそれぞれの上下方向の幅は、車幅外方に向かうにつれて拡大するように設定されているのが好ましい。
【0014】
かかる構成では、風路の上下方向の幅が車幅外方に向かうにつれて拡大するように設定されているので、風路の車幅内方の部分の幅を狭くして風速を高くするとともにフロントライトの主光源部近傍では風路の幅を拡大して主光源部全体に沿って風を流すことが可能である。さらに、風路絞り部材の上下方向の幅が車幅外方に向かうにつれて拡大するように設定されているので、風路内部を通る風が主光源部の上流側で減速することを抑制することが可能である。
【0015】
上記の車両の前部構造において、平面視において、前記風路絞り部材の車幅方向内側端部の前端と前記凹設部の車両前方を向く底面との車両前後方向の距離よりも、前記風路絞り部材の車幅方向外側端部の前端と前記底面との車両前後方向の距離が短くなるように設定されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成では、風路絞り部材によって形成される風路の車両前後方向の深さが車幅方向内側では深く、車幅方向外側では浅くなるので、主光源部では風路の深さは浅くなる。そのため、主光源部付近では雪等の付着物が風路内部で堆積しにくくなり、主光源部への付着物の付着をさらに抑制することが可能である。
【0017】
上記の車両の前部構造において、前記車両前端部における前記凹設部よりも上方の部分を構成する上部構成部材と、前記上部構成部材の後端から当該上部構成部材に連続して車両後方に延びるボンネットと、前記ボンネットの車両後方側で、かつ、車幅方向両側に位置する車体側部と、前記車体側部との間に隙間を形成するようにフロントドアに取り付けられたドアミラーとをさらに備え、前記凹設部は、前記上部構成部材の前端の直下に設けられ、前記風路絞り部材は、前記風路における上方側の端部に配設されているのが好ましい。
【0018】
車両走行中において、車両前端部における凹設部の上方の上部構成部材からボンネットの上面を通して車両後方へ向かう風は、ドアミラーと車体側部との間に形成される隙間を流れることにより、笛吹音(すなわち、高音の風騒音)が発生する原因となる。そこで、上記の構成では、笛吹音の抑制のために、凹設部は、上部構成部材の直下に設けられ、風路絞り部材は、風路における上方側の端部に配設されている。この構成では、上部構成部材からボンネットの上面を通ってドアミラーと車体側部との隙間へ向かう風は、上部構成部材の前端の付近で風路絞り部材によって流れが乱され、当該風の速度が低下する。その結果、ドアミラーと車体側部との隙間を流れる風によって発生する笛吹音の発生を抑制することが可能である。
【0019】
上記の車両の前部構造において、前記風路絞り部材の車幅方向内側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離は、前記風路絞り部材の車幅方向外側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離よりも短くなるように設定されているのが好ましい。
【0020】
風路絞り部材は、車幅方向内側の部分の方が外側の部分と比較して車両後方へ向かう風を乱す寄与度が高い。この点に着目して、上記の構成では、前記風路絞り部材の車幅方向内側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離は、前記風路絞り部材の車幅方向外側端部の前端と前記上部構成部材の前端との車両前後方向の距離よりも短くなるように設定されている。これにより、車両後方へ向かう風を乱す寄与度が高い風路絞り部材の車幅方向内側の部分による当該風を乱す量を増加して、笛吹音の発生をより抑制することが可能である。
【0021】
上記の車両の前部構造において、前記風路絞り部材の前面は、車両前後方向において、前記上部構成部材の前端と前記凹設部の車両前方を向く底面との間に位置するように配置されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成では、前記風路絞り部材の前面は、車両前後方向において、前記上部構成部材の前端と前記凹設部の車両前方を向く底面との間に位置するように配置されていることにより、風路絞り部材によって、2つの機能、すなわち、風路における上下方向の幅を狭くして風速を向上させてフロントランプの主光源部における付着物の付着を抑制する機能と、車両後方に流れる風を乱してドアミラーと車体側部との隙間における笛吹音の発生を抑制する機能の両方を確実に達成することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の車両の前部構造によれば、フロントランプ前面における雪等の付着物の付着を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0026】
図1〜6に示されるように、本発明の実施形態にかかる車両の前部構造は、自動車(ガソリン自動車および電気自動車など)などの車両において、車体1の車両前端部に配置されたフロントフェイシャ2を構成する互いに上下方向Zに離間するアッパーフェイシャ2aおよびバンパーフェイシャ2bと、当該アッパーフェイシャ2aおよびバンパーフェイシャ2bの間に配置されたフロントグリル3と、フロントグリル3における車幅方向Yの両側に配置された一対のフロントランプ4および一対の風路絞り部材5と、車体1の前側上面を構成するボンネット7と、車体1の両側面前側の一対のフロントフェンダ8を備えている。
【0027】
車両前端部におけるアッパーフェイシャ2aおよびバンパーフェイシャ2bの間には、車両後方X2へ凹む凹設部6(凹部)が形成されている。凹設部6は、車両前方X1に開放された凹部であり、アッパーフェイシャ2aの前端の直下に設けられている。
【0028】
凹設部6には、フロントグリル3および当該フロントグリル3の車幅方向Yの両側の一対のフロントランプ4が配設されている。これにより、凹設部6には、フロントグリル3の前面3aおよびフロントランプ4の前面4eによって車幅方向Yに連続する風路31(
図1〜4、
図6参照)が形成されている。
【0029】
凹設部6には、風路31における上下方向Zの幅を狭くすることが可能な上下方向Zの幅を有する風路絞り部材5が、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側Y1から車幅内方Y1に延びるように配設されている。
【0030】
本実施形態では、風路絞り部材5は、後述する笛吹音の発生抑制などを考慮して風路31における上方側の端部に配設されているが、下方側の端部に配設されていてもよい。
【0031】
なお、風路絞り部材5は、フロントランプ4の車両前方X1かつ上側において車両前端部を装飾する加飾部材として機能することが可能である。風路絞り部材5としては、例えば、シグネチャーウイングなどの装飾用部材(ガーニッシュ)などを用いてもよい。
【0032】
フロントグリル3の形状については、本発明ではとくに限定されないが、例えば、フロントグリル3の前面が車両前後方向Xに起伏を有する凹凸形状を有していれば、フロントグリル3の剛性を向上することが可能である。
【0033】
また、フロントグリル3の大きさ(面積)は、ガソリン自動車の場合はエンジンルーム内への十分な吸気の確保のために大きくする必要があるが、電気自動車の場合には空調機器等の冷却用空気の導入だけでよいのであまり大きくする必要がなく、装飾性など他の要求を考慮して適宜大きさを決定される。
【0034】
アッパーフェイシャ2aは、車両前端部における凹設部6よりも上方の部分を構成する上部構成部材であり、
図5および
図11に示されるように、アウタ部2a1とその内側のインナ部2a2とを有する2層構造からなる。
【0035】
ボンネット7は、アッパーフェイシャ2aの後端2dから当該アッパーフェイシャ2aに連続して車両後方X2に延びる。また、ボンネット7の車幅方向Yの両側の下方には、フロントフェンダ8が配置されている。
【0036】
ボンネット7の車両後方側X2で、かつ、車幅方向Y両側には、フロントピラー32aやサイドウインド32bなどの車体側部32を構成する部材が配置されている。
【0037】
上記の車体側部32の下方には、フロントドア35が配置されている。フロントドア35には、ドアミラー36が車体側部32との間に隙間33を形成するように(すなわち、車体側部32から車幅方向Yの外側に離間するように)取り付けられている。
【0038】
また、本実施形態では、
図1および
図3に示されるように、風路絞り部材5の車幅内方Y1において、上部構成部材であるアッパーフェイシャ2aの後端2dからボンネット7を通して車体側部32のフロントピラー32aの付け根までの間にわたって車両前後方向Xに延びる連続的な稜線部(突条)34が延びている。
【0039】
フロントランプ4は、車両前端部における車幅方向Yの側端付近に位置する主光源部(アウタレンズ本体部)4aと、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側に位置するアウタレンズ延設部4bとを有する。主光源部4aには、ヘッドライトなどのメインの照明部が収容され、アウタレンズ延設部4bには、例えば、方向指示用のランプまたはLEDなどのサブの照明部が収容されている。
【0040】
フロントランプ4(具体的には、アウタレンズ延設部4b)の前面4eは、
図6に示されるように、フロントグリル3の前面と同一平面上に位置する(いわゆる面一になる)ように配置されている。
【0041】
図3〜4に示されるように、フロントランプ4は、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側Y1において上下方向Zに凹んだ上下方向凹設部4fを有している。上下方向凹設部4fは、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側に位置するアウタレンズ延設部4bの上端部を下方に凹ませることにより形成されている。
【0042】
風路絞り部材5の少なくとも一部(本実施形態では、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5a)は、車両前面視において、上下方向凹設部4fに隣接して配設(すなわち、外側端部5aが上下方向凹設部4fと上下方向に重なり合うように配設)されるように配置されている。
【0043】
図4に示されるように、風路絞り部材5は、主光源部4aの車幅方向Yの内側Y1の端部4gからフロントグリル3に重複する位置まで(すなわち、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aから内側端部5bまで)延びるように設けられている。
【0044】
また、風路31および風路絞り部材5のそれぞれの上下方向Zの幅は、車幅外方Y2に向かうにつれて拡大するように設定されている。具体的には、風路31の幅は、風路絞り部材5が配置されている範囲を見れば、車幅方向Yの内側端部5bの位置では上下方向Zの幅W1であり、車幅外方Y2へ向かうにつれて拡大して、主光源部4aの直前では幅W2まで拡大している。一方、風路絞り部材5の幅は、車幅方向Yの内側端部5bの位置では上下方向Zの幅W3であり、車幅外方Y2へ向かうにつれて拡大して、外側端部5aの位置では幅W4まで拡大している。
【0045】
図6に示されるように、平面視において、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側端部5bの前端と凹設部6の車両前方X1を向く底面(具体的には、フロントグリル3の前面3a)との車両前後方向Xの距離S1よりも、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aの前端と凹設部6の車両前方X1を向く底面(具体的には、フロントランプ4の前面4e)との車両前後方向Xの距離S2が短くなるように設定されている。
【0046】
また、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側端部5bの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S3は、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S4よりも短くなるように設定されている。
【0047】
図5〜6に示されるように、風路絞り部材5の前面24は、車両前後方向Xにおいて、アッパーフェイシャ2aの前端2eと凹設部6の車両前方X1を向く底面(
図5のフロントランプ4の前面4eまたは
図6のフロントグリル3の前面3a)との間に位置するように配置されている。
【0048】
風路絞り部材5は、後述する上方固定部15(
図5および
図7参照)により、凹設部6の内部の上壁から吊り下げられた状態で取り付けられている。これにより、風路絞り部材5は、車両前端部におけるフロントランプ4よりも上方の部分に固定されている。本実施形態では、
図5および
図11に示されるように、風路絞り部材5の上方固定部15がアッパーフェイシャ2aのインナ部2a2に振動溶着などによる接合部22によって固定されている。
【0049】
なお、風路絞り部材5は、車両前端部におけるフロントランプ4よりも上方の部分に固定されていればよく、アッパーフェイシャ2aに取り付けられるだけでなく、アッパーフェイシャ2a以外の車体1の任意の場所に取り付けられていればよい。
【0050】
本実施形態では、
図5〜6、
図9〜11に示されるように、風路絞り部材5の下側後端部には、車両衝突時に風路絞り部材5とフロントランプ4との接触を避けるために、車両前後方向Xにおいて、フロントランプ4の前面4eと所定の離間距離δ1(
図11参照)以上に離間させた離間凹部16が形成されている。
【0051】
この離間距離δ1は、車両の前方X1または前方上側から衝突荷重を受けた時(例えば、米国の自動車安全試験における車両斜め上方からの軽衝突による衝突試験)に風路絞り部材5がフロントランプ4に当接しないような距離に設定される。
【0052】
離間凹部16は、少なくとも車両前後方向Xにおいて、フロントランプ4の前面4eと所定距離以上に離間させることが可能な凹部であればよく、車両前後方向Xおよび上下方向Zの両方に離間する凹部であってもよい。
【0053】
離間凹部16は、
図6に示されるように、フロントランプ4の車幅方向Y内側の端部4cと車幅方向Yに重複している。言い換えれば、フロントランプ4の内側端部4cは、車幅方向Yにおいて、離間凹部16が存在する範囲内に位置している。
【0054】
また、本実施形態では、離間凹部16において、フロントランプ4の前面4eと更に離間させるように当該離間凹部16を部分的に前方X1(すなわち、
図6の車両前後方向Xの前方X1)に拡大した前方拡大部18(言い換えれば、第2の離間凹部)が形成されている。
【0055】
前方拡大部18は、フロントランプ4に接触しやすい箇所(本実施形態では、フロントランプ4の車幅方向Y内側端部4cに前方の位置)を必要に応じて部分的に前方X1に拡大して形成されている。
【0056】
図5および
図11に示されるように、フロントランプ4の前面4eの上端4dと風路絞り部材5の下端5cとが上下方向Zに重複している。
【0057】
また、
図11に示されるように、風路絞り部材5は、離間凹部16の上方において車両後方X2側に延びる後方延設部21を有する。本実施形態の後方延設部21は、風路絞り部材5の装飾部13の挿入板部13cと取付部14の取付板部14dとが連結された連結部19によって構成されている。なお、連結部19とは別部材によって、後方延設部21を別途形成してもよい。
【0058】
図5および
図11に示されるように、風路絞り部材5の上方固定部15は、車両前端部における車両のボンネット7よりも車両前方X1側に配置された前方側部分であるアッパーフェイシャ2aのインナ部2a2に固定されている。このインナ部2a2は、車両の前方X1または車両前方X1かつ上側からの衝突時(
図11の衝突荷重F参照)に屈曲点17となって塑性変形するように構成されている。したがって、アッパーフェイシャ2aの少なくともインナ部2a2は塑性変形可能な材料(例えば、ガラス繊維入りの樹脂など)で形成される。
【0059】
なお、風路絞り部材5の上方固定部15が、フロントランプ4の前面4eよりも車両後方X2側でアッパーフェイシャ2aのインナ部2a2に固定された場合、車両前方X1または車両前方上側から衝突荷重を受けた時に風路絞り部材5の上方固定部15が突っ張ってしまい、上方固定部15が破損し易いため、上方固定部15は、破損回避のためにフロントランプ4の前面4eよりも車両前方X1側に配置されるのが好ましい。
【0060】
風路絞り部材5は、
図6〜10に示されるように、全体的には、略L字状を有する部材であり、具体的には、車幅方向Yに延びる車幅方向部11と、当該車幅方向部11の車幅方向Yの内側端部から車両後方X2に延設された後方延設部12とを有する。
【0061】
本実施形態における後方延設部12は、
図6に示されるように、車幅方向部11の車幅方向Yの内側端部におけるフロントグリル3と車幅方向Yで重複する位置において、フロントグリル3に向かって上記の内側端部から車両後方X2に延設されている。このように、後方延設部12は、フロントグリル3の近傍まで延びており、車両衝突時には、後方延設部12がフロントグリル3に接触することにより、上記の離間凹部16とともにフロントランプ4との接触回避の効果を奏することが可能である。
【0062】
また、
図6に示されるように、後方延設部12(具体的には、後方延設部12の後端)とフロントグリル3(具体的には、フロントグリル3の前面)との距離D1は、フロントランプ4における車幅方向Yの内側Y1の端部4c(具体的には、端部cの前端)と風路絞り部材5(具体的には、車幅方向部11の後面)との距離D2よりも短くなるように設定されている。
【0063】
しかも、
図6に示されるように、風路絞り部材5の車両前後方向Xにおける前面24は、フロントグリル3の前面との車両前後方向Xの離間距離D3が車幅方向Yの内側Y1へ向かうほど大きくなるように配設されている。
【0064】
図6〜7に示されるように、後方延設部12は、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側Y1の端部に形成されている。しかも、後方延設部12は、車幅方向Yの内側Y1の端部において、上下方向Zに延びる側面12aを有する。
【0065】
本実施形態の風路絞り部材5は、具体的には、
図7〜10に示されるように、2つの部品によって構成され、すなわち、車両外部から視認される装飾部13と、当該装飾部13の車両後方X2側に配置され、車両前端部に取り付け可能な取付部14とから構成されている。これら装飾部13および取付部14は、いずれも略L字形状を有している。すなわち、装飾部13および取付部14は、
図8に示されるように、それぞれ車幅方向部13a、14a、および後方延設部13b、14bを有する。装飾部13および取付部14が互いに組み合わせることによって上記のように略L字状の(すなわち、車幅方向部11および後方延設部12を有する)風路絞り部材5を構成する。
【0066】
なお、風路絞り部材5は、少なくとも風路31を絞る機能を有していればよいので、とくに装飾部13および取付部14に分けない一体構造でもよく、メッキや塗装などの美的処理もとくに施さなくてもよい。
【0067】
図8に示されるように、装飾部13の車幅方向部13aの車両後方X2側に突出するように複数の挿入板部13cが互いに車幅方向Yに離間して設けられている。一方、取付部14の車幅方向部14aには、これら挿入板部13cに対応する位置に複数のスリット14cが形成されている。
【0068】
図8〜9に示されるように、複数の挿入板部13cがそれらに対応するスリット14cに挿入される。中央の挿入板部13cは、取付部14の車両後方側の取付板部14dに重ね合わせられた状態で振動溶着などによる接合部20によって連結される。これら挿入板部13cおよび取付板部14dによって、装飾部13と取付部14とを連結する連結部19が形成される。
【0069】
図9〜10に示されるように、この連結部19は、上記の前方拡大部18を補強するために、前方拡大部18の上方に位置するように形成されている。
【0070】
本実施形態では、上記の上方固定部15は、取付部14の車幅方向部14aおよび後方延設部14bのそれぞれの上面に互いに離間して複数個所設けられている。
【0071】
図9に示される後方延設部14bの上面には、さらに、車両前端部に支持される支持部として、上方固定部15との間に車両後方X2側に突出する後方凸設固定部23が設けられている。この後方凸設固定部23に形成された係合孔23aには、
図12に示されるように、車両前端部を構成するフロントフェイシャ2に設けられた車両前方X1に突出する係合突起2cが係合することにより、風路絞り部材5を強固に支持することが可能である。
【0072】
装飾部13は、車両外部に露出する部材であり、高い剛性を有する材料、例えばABS樹脂などからなる。また、装飾部13は、装飾性の向上や色彩や模様の多様性などの点において、塗装に適した材料で形成するのが好ましい。
【0073】
一方、取付部14は、低剛性の材料、例えばポリプロピレン(PP)などの樹脂からなる。これにより、風路絞り部材5の後方延設部12が合成樹脂などからなるフロントグリル3などに接触したときにフロントグリル3の損傷を抑制または防止することが可能である。
【0074】
装飾部13は、車両後方X2に開放された空間を有する断面形状、例えば、コの字状またはヘの字状(すなわち、略U字状またはV字状)の断面形状を有する。
【0075】
風路絞り部材5の装飾部13と取付部14とが車両前後方向Xで重なり合って合体することにより、二重断面を形成することによって、当該風路絞り部材5の強度を向上することが可能である。
【0076】
すなわち、本実施形態の風路絞り部材5は、
図6〜10に示されるように、高剛性部材である装飾部13と、当該装飾部13(高剛性部材)よりも剛性が低い低剛性部材である取付部14とによって構成されている。後方延設部12における少なくともフロントグリル3に対向する部分は、低剛性部材である取付部14の後方延設部12によって形成されている。
【0077】
また、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側Y1の端部は、後方延設部12の側面12aで構成されている。側面12aの少なくとも一部は、装飾部13における車両後方X2に連続して延びる後方延設部13b(
図8参照)よって構成されている。そのため、車両前端部を車幅方向Yの中央付近から車幅方向Yの外側Y2へ見た場合でも、後方延設部12の側面12aを構成する装飾部13の後方延設部13bが見えることによって、風路絞り部材5の意匠性を向上することが可能である。
【0078】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両の前部構造は、車両前端部に車両後方X2へ凹む凹設部6が形成され、凹設部6には、フロントグリル3および当該フロントグリル3の車幅方向Y両側のフロントランプ4が車幅方向Yに並んで配設された構造である。凹設部6には、フロントグリル3の前面およびフロントランプ4の前面によって車幅方向Yに連続する風路31(
図1〜4、
図6参照)が形成される。フロントランプ4は、主光源部4aを備える。凹設部6には、風路31における上下方向Zの幅を狭くすることが可能な上下方向Zの幅を有する風路絞り部材5が、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側Y1から車幅内方Y1に延びるように配設されている。
【0079】
この構成では、フロントグリル3の前面およびフロントランプ4の前面によって車幅方向Yに連続する風路31が形成されている。この風路31を通して、車両走行中においてフロントグリル3の前面からフロントランプ4の前面への連続的な風A1(
図1〜4参照)の流れを生成することが可能である。そして、凹設部6において、風路絞り部材5がフロントランプ4の主光源部4aよりも車幅方向Yの内側Y1から車幅内方Y1に延びるように配設されている、この風路絞り部材5は、その上下方向Zの幅によって、風路31における上下方向Zの幅を狭くすることにより、風路31におけるフロントランプ4の主光源部4aの上流側において風A1の速度を向上させることが可能である。これにより、速度が増した風A1をフロントランプ4の主光源部4aの前面4e1(
図6参照)に沿って流すことが可能になり、フロントランプ4の前面4eにおける雪等の付着物(例えば、雪、泥、砂など)の付着を抑制することが可能になる。
【0080】
上記の実施形態では、凹設部6をフロントグリル3まで連通させ、風路31の上下方向Zの幅を絞ることで風路31における風A1の速度を向上させることが可能である。これにより、凹設部6において付着物が付着や堆積しにくくなる。
【0081】
(2)
本実施形態の車両の前部構造では、
図3〜4に示されるように、フロントランプ4は、主光源部4aよりも車幅方向Yの内側Y1において上下方向Zに凹んだ上下方向凹設部4fを有している。風路絞り部材5の少なくとも一部(本実施形態では、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5a)は、車両前面視において、上下方向凹設部4fに隣接して配設されるように配置されている。
【0082】
この構成では、凹設部6内部における風路絞り部材5およびフロントランプ4の占める面積を減少することが可能になり、風路絞り部材5およびフロントランプ4を凹設部6の内部にコンパクトに配置することが可能になる。
【0083】
(3)
本実施形態の車両の前部構造では、
図4に示されるように、風路絞り部材5は、主光源部4aの車幅方向Yの内側Y1の端部4gからフロントグリル3に重複する位置まで(すなわち、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aから内側端部5bまで)延びるように設けられている。
【0084】
この構成では、風路絞り部材5によって風路31の上下方向Zの幅が絞られて風A1を加速させる領域(すなわち、風路31における風路絞り部材5が配置された区間)を車幅方向Yに長く形成することが可能である。しかも、当該領域で加速した風A1の速度を主光源部4aの近傍まで維持することが可能であり、主光源部4aへの付着物の付着をより抑制することが可能である。
【0085】
(4)
本実施形態の車両の前部構造では、
図4に示されるように、風路31および風路絞り部材5のそれぞれの上下方向Zの幅は、車幅外方Y2に向かうにつれて拡大するように設定されている。すなわち、風路31の上下方向Zの幅が車幅外方に向かうにつれて幅W1からW2へ拡大するように設定されているので、風路31の車幅内方Y1の部分の幅を狭くして風A1の速度を高くするとともにフロントライトの主光源部4a近傍では風路31の幅を拡大して主光源部4a全体に沿って風A1を流すことが可能である。さらに、風路絞り部材5の上下方向Zの幅が車幅外方Y2に向かうにつれて幅W3からW4へ拡大するように設定されているので、風路31内部を通る風A1が主光源部4aの上流側で減速することを抑制することが可能である。
【0086】
(5)
本実施形態の車両の前部構造では、
図6に示されるように、平面視において、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側端部5bの前端と凹設部6の車両前方を向く底面(具体的には、フロントグリル3の前面3a)との車両前後方向Xの距離S1よりも、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aの前端と凹設部6の車両前方X1を向く底面(具体的には、フロントランプ4の前面4e)との車両前後方向Xの距離S2が短くなるように設定されている。
【0087】
この構成では、風路絞り部材5によって形成される風路31の車両前後方向Xの深さが車幅方向Yの内側Y1では深く(すなわち、距離S1に等しい深さを得られ)、車幅方向Yの外側Y2では浅くなる(すなわち、距離S1より小さい距離S2に等しい深さになる)ので、主光源部4aでは風路31の深さは浅くなる。そのため、主光源部4a付近では雪等の付着物が風路31内部で堆積しにくくなり、主光源部4aへの付着物の付着をさらに抑制することが可能である。
【0088】
(6)
本実施形態の車両の前部構造では、
図4に示されるように、フロントランプ4のうち主光源部4aは、他の部分(アウタレンズ延設部4bなど)と比較して上下方向Zに幅が拡大して大きくなっている。本実施形態では、風路絞り部材5との対面部(すなわち、フロントフェイシャ2のうち下側のバンパーフェイシャ2bの上端2f)は、車幅方向Yで主光源部4aとの重複位置の部分2f1において、上下方向Zに拡大形成されている。これにより、風路31を主光源部4aの直前で上下方向Zに拡大するので、風路31で加速した風を主光源部4a全体に沿って流して雪などの付着物の付着を防止することかが可能である。
【0089】
(7)
本実施形態の車両の前部構造では、
図1および
図3に示されるように、凹設部6のうち、フロントグリル3が配置されている車幅方向Yにおける中央側の部分では、風路絞り部材5が配置されている車幅方向Yにおける両側の風路31の部分よりも上下方向に幅が広くなるように形成されている。これにより、車両走行中では、フロントグリル3が配置されている車幅方向Yにおける中央側の部分で空気を多く取り込んで、当該空気を風路絞り部材5が配置されている車幅方向Yにおける両側の風路31の部分へ流すことにより、風路絞り部材5によって上下方向Zの幅が狭くなった風路31において加速された車幅外方Y2の風A1を生成することが可能になる。
【0090】
(8)
本実施形態の車両の前部構造は、
図1〜6に示されるように、本実施形態の車両の前部構造では、車両前端部における凹設部6よりも上方の部分を構成する上部構成部材であるアッパーフェイシャ2aと、アッパーフェイシャ2aの後端2dから当該アッパーフェイシャ2aに連続して車両後方X2に延びるボンネット7と、ボンネット7の車両後方側X2で、かつ、車幅方向Y両側に位置する車体側部32(例えば、フロントピラー32aやサイドウインド32bなど)と、車体側部32との間に隙間33を形成するようにフロントドア35に取り付けられたドアミラー36とをさらに備えている。凹設部6は、アッパーフェイシャ2aの前端の直下に設けられている。風路絞り部材5は、風路31における上方側の端部に配設されている。
【0091】
車両走行中において、車両前端部における凹設部6の上方の上部構成部材であるアッパーフェイシャ2aからボンネット7の上面を通して車両後方へ向かう風A2は、ドアミラー36と車体側部32(例えば、フロントピラー32aやサイドウインド32bなど)との間に形成される隙間33を流れることにより、笛吹音(すなわち、高音の風騒音)が発生する原因となる。そこで、上記の構成では、笛吹音の抑制のために、凹設部6は、アッパーフェイシャ2aの直下に設けられ、風路絞り部材5は、風路31における上方側の端部に配設されている。この構成では、アッパーフェイシャ2aからボンネット7の上面を通ってドアミラー36と車体側部32との隙間33へ向かう風A2は、アッパーフェイシャ2aの前端の付近で風路絞り部材5によって流れが乱され、当該風A2の速度が低下する。その結果、ドアミラー36と車体側部32との隙間33を流れる風によって発生する笛吹音の発生を抑制することが可能である。
【0092】
(9)
本実施形態の車両の前部構造では、
図6に示されるように、風路絞り部材5の車幅方向Yの内側端部5bの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S3は、風路絞り部材5の車幅方向Yの外側端部5aの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S4よりも短くなるように設定されている。
【0093】
風路絞り部材5は、車幅方向Yの内側Y1の部分の方が外側の部分と比較して車両後方へ向かう風A2を乱す寄与度が高い。この点に着目して、上記の構成では、風路絞り部材5の車幅方向内側端部5bの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S3は、風路絞り部材5の車幅方向Y外側端部5aの前端とアッパーフェイシャ2aの前端2eとの車両前後方向Xの距離S4よりも短くなるように設定されている。これにより、車両後方X2へ向かう風A2(
図1および
図3参照)を乱す寄与度が高い風路絞り部材5の車幅方向Yの内側Y1の部分による当該風A2を乱す量を増加して、笛吹音の発生をより抑制することが可能である。
【0094】
(10)
本実施形態の車両の前部構造では、
図5〜6に示されるように、風路絞り部材5の前面24は、車両前後方向Xにおいて、アッパーフェイシャ2aの前端2eと凹設部6の車両前方X1を向く底面(
図5のフロントランプ4の前面4eまたは
図6のフロントグリル3の前面3a)との間に位置するように配置されている。
【0095】
この構成では、 風路絞り部材5の前面24は、車両前後方向Xにおいて、アッパーフェイシャ2aの前端2eと凹設部6の車両前方を向く底面(
図5のフロントランプ4の前面4eまたは
図6のフロントグリル3の前面3a)との間に位置するように配置されていることにより、風路絞り部材5によって、2つの機能、すなわち、風路31における上下方向Zの幅を狭くして風路31を通る車両外方Y2へ向かう風A1の速度を向上させてフロントランプ4の主光源部4aにおける付着物を抑制する機能と、車両後方X2に流れる風A2を乱してドアミラー36と車体側部32との隙間33における笛吹音の発生を抑制する機能の両方を確実に達成することが可能である。
【0096】
(11)
本実施形態の車両の前部構造では、また、本実施形態では、
図1および
図3に示されるように、風路絞り部材5の車幅内方Y1において、上部構成部材であるアッパーフェイシャ2aの後端2dからボンネット7を通して車体側部32のフロントピラー32aの付け根までの間にわたって車両前後方向Xに延びる連続的な稜線部(突条)34が延びている。この稜線部34によって、アッパーフェイシャ2aからフロントピラー32aの付け根にある上記の隙間33へ向けて車両後方X2に流れる風A2を乱すことが可能であり、笛吹音の発生をさらに抑制することが可能である。