特開2021-63076(P2021-63076A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-63076(P2021-63076A)
(43)【公開日】2021年4月22日
(54)【発明の名称】シワ改善用皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20210326BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210326BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20210326BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20210326BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20210326BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/67
   A61K8/42
   A61K8/49
   A61Q19/08
   A61P17/00
   A61K31/195
   A61K31/07
   A61K31/355
   A61K31/375
   A61K31/4166
   A61K31/455
   C12N15/09 ZZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【公開請求】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-176161(P2020-176161)
(22)【出願日】2020年10月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】高原 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 美和
(72)【発明者】
【氏名】大村 夏美
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC621
4C083AC641
4C083AC681
4C083AD621
4C083AD641
4C083AD651
4C083CC02
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086BA18
4C086BC19
4C086BC38
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA89
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206FA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA89
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ナイアシンアミドと、特定の成分を含有する高い老化防止効果を発揮するシワ改善用皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
トラネキサム酸、パルミチン酸レチノール、D−パントテニルアルコール、酢酸DL−α−トコフェロール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド及びアラントインから選択される1種又は2種以上と、ナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸、パルミチン酸レチノール、D−パントテニルアルコール、酢酸DL−α−トコフェロール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド及びアラントインから選択される1種又は2種以上と、ナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項2】
トラネキサム酸及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項3】
パルミチン酸レチノール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項4】
D−パントテニルアルコール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項5】
酢酸DL−α−トコフェロール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項6】
テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項7】
リン酸L−アスコルビルマグネシウム及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項8】
L−アスコルビン酸2−グルコシド及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【請求項9】
アラントイン及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ改善用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは加齢に伴い、シミ、しわ、たるみといった様々な老化現象があらわれる。これらの原因として、皮膚のバリア機能の低下、水分量の低下、ターンオーバーの乱れ、コラーゲン等の産生量の減少または分解や変質が知られている。これらを予防、改善するために、多種多様な提案がされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、いずれも十分満足できる効果は得られていなかった。
【0003】
ナイアシンアミドは水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つであり、ニコチン酸アミドとも呼ばれる。肌荒れ改善効果、美白効果、抗老化効果等が知られており、ナイアシンアミドを配合した化粧料等は多く上市されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4780817号公報
【特許文献2】特開2001−261568号公報
【特許文献3】特開2005−8571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナイアシンアミドと、特定の成分を含有する高い老化防止効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記シワ改善用皮膚外用剤を提供する。
(1)トラネキサム酸、パルミチン酸レチノール、D−パントテニルアルコール、酢酸DL−α−トコフェロール、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド及びアラントインから選択される1種又は2種以上と、ナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(2)トラネキサム酸及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(3)パルミチン酸レチノール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(4)D−パントテニルアルコール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(5)酢酸DL−α−トコフェロール及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(6)テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(7)リン酸L−アスコルビルマグネシウム及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(8)L−アスコルビン酸2−グルコシド及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
(9)アラントイン及びナイアシンアミドを含有するシワ改善用皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミドと、特定の成分を併用することにより高い老化防止効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
[ナイアシンアミド]
本発明で用いるナイアシンアミドは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つであり、ニコチン酸アミドとも呼ばれる。
【0010】
本発明で用いるナイアシンアミドは通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0011】
本発明におけるナイアシンアミドの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.001質量%〜20質量%、好ましくは0.01質量%〜15質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜10質量%である。
【0012】
[トラネキサム酸]
本発明で用いるトラネキサム酸は水溶性のt−シクロアミノ酸誘導体であり、通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0013】
本発明におけるトラネキサム酸の配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜3質量%がより好ましく、0.1質量%〜3質量%がさらに好ましい。
【0014】
[パルミチン酸レチノール]
本発明で用いるパルミチン酸レチノールはパルミチン酸とレチノール(ビタミンA)のエステルであり、通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0015】
本発明におけるパルミチン酸レチノールの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜3質量%がさらに好ましい。
【0016】
[D−パントテニルアルコール]
本発明で用いるD−パントテニルアルコールは、D−パントテン酸(ビタミンB5)の前駆体であり、通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0017】
本発明におけるD−パントテニルアルコールの皮膚外用剤への配合量は、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましく、0.3質量%〜1質量%が最も好ましい。
【0018】
[酢酸DL−α−トコフェロール]
本発明で用いる酢酸DL−α−トコフェロールは、酢酸とトコフェロール(ビタミンE)のエステルであり、通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0019】
本発明における酢酸DL−α−トコフェロールの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜5質量%が好ましく、0.001質量%〜3質量%がさらに好ましい。
【0020】
[テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル]
本発明で用いるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルは、イソパルミチン酸とアスコルビン酸(ビタミンC)のエステルであり、油溶性ビタミンC誘導体である。通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0021】
本発明におけるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.001質量%〜7質量%が好ましく、0.005質量%〜6質量%がさらに好ましい。
【0022】
[リン酸L−アスコルビルマグネシウム]
本発明で用いるリン酸L−アスコルビルマグネシウムは、アスコルビン酸(ビタミンC)にリン酸を付加したマグネシウム塩であり、水溶性ビタミンC誘導体である。通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0023】
本発明におけるリン酸L−アスコルビルマグネシウムの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.005質量%〜5質量%がさらに好ましい。
【0024】
[L−アスコルビン酸2−グルコシド]
本発明で用いるL−アスコルビン酸2−グルコシドは、L−アスコルビン酸(ビタミンC)にグルコースを縮合させたものであり、水溶性ビタミンC誘導体である。通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0025】
本発明におけるL−アスコルビン酸2−グルコシドの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.005質量%〜5質量%がさらに好ましい。
【0026】
[アラントイン]
本発明で用いるアラントインは、5種のヒト上科(学名:Hominoidea)を除く哺乳類の体内で機能しているプリン代謝経路の最終プリン代謝産物であり、グリオキシル酸のジウレイドである。通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0027】
本発明におけるアラントインの皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜1質量%が好ましく、洗い流すものには0.5質量%以下、洗い流さないものには0.3質量%以下がより好ましい。
【0028】
本発明に使用する皮膚外用剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明に使用する皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0030】
本発明に使用する皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0031】
本発明に使用する皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0033】
[ヒト皮膚線維芽細胞を用いた試験]
ヒト皮膚線維芽細胞を5×10細胞/ウェルの細胞密度にて6ウェルプレートに播種し、5v/v%のFBSを含有するDMEM培地にて一晩培養した。各成分を任意の濃度で溶解した0.5v/v%のFBSを含有するDMEM培地に交換し、37°C、5v/v%COインキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。内部標準としてGAPDHを使用した。mRNA発現量は、各成分無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。各作用は表4〜11に示した。
【0034】
使用したプライマー配列を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例は各成分の濃度が表2および表3に示す量になるように培地に溶解した。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、トラネキサム酸を併用した実施例1ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例2よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。
【0041】
【表5】
【0042】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、パルミチン酸レチノールを併用した実施例2ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例3よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。
【0043】
【表6】
【0044】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、D−パントテニルアルコールを併用した実施例3ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例4よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。
【0045】
【表7】
【0046】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、酢酸DL−α−トコフェロールを併用した実施例4ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例5よりも、肝細胞増殖関連遺伝子HGFの発現が相乗的に増加した。
【0047】
【表8】
【0048】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルを併用した実施例5ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例6よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。さらに、抗酸化関連遺伝子CATの発現が相乗的に増加した。
【0049】
【表9】
【0050】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、リン酸L−アスコルビルマグネシウムを併用した実施例6ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例7よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。さらに、抗酸化関連遺伝子CATの発現が相乗的に増加した。
【0051】
【表10】
【0052】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、L−アスコルビン酸2−グルコシドを併用した実施例7ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例8よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1及びメラニン合成関連遺伝子bFGF2の発現が相乗的に減少した。さらに、抗酸化関連遺伝子CATの発現が相乗的に増加した。
【0053】
【表11】
【0054】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、アラントインを併用した実施例8ではそれぞれ単独で用いた比較例1及び比較例9よりも、コラーゲン分解関連遺伝子MMP1の発現が相乗的に減少した。さらに、炎症性サイトカイン関連遺伝子IL1aの発現が相乗的に減少した。
【0055】
以上の結果より、本発明の皮膚外用剤はコラーゲン分解関連遺伝子、メラニン合成関連遺伝子及び炎症性サイトカイン関連遺伝子の発現を相乗的に減少させ、肝細胞増殖関連遺伝子及び抗酸化関連遺伝子の発現を相乗的に増加させることがわかる。したがって、本発明の皮膚外用剤は、シワ改善効果に加えて、抗酸化効果、美白効果、抗炎症効果を発揮し、高い抗老化防止効果を発揮する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]