【実施例】
【0134】
以下の実施例は、本発明において特徴付けられる方法および組成物を製造および使用する方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために提示されるものであり、本発明者らが発明とみなすものの範囲を制限することは意図されない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするために努力がなされてきたが、いくらかの
実験誤差および偏差が考慮されなければならない。他に示されない限り、部数は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0135】
実施例1:慢性肥厚性好酸球性副鼻腔炎を有する喘息患者を含む、持続性の中程度から重度の好酸球性喘息を有する患者における皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の臨床試験
A.研究目的および概要
無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群研究を、吸入コルチコステロイド(ICS)および長時間作用性ベータ2アゴニスト(LABA)治療により部分的に管理された/管理されなかった持続性の中程度から重度の好酸球性喘息を有する患者に、300mgのデュピルマブ(「mAb1」)またはプラセボのいずれかを12週間、週に1回皮下投与して行った。デュピルマブは配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域を有する抗IL−4R抗体である。特定の例示的な実施形態において、デュピルマブは、配列番号9の重鎖配列および配列番号10の軽鎖配列を含む。デュピルマブは米国特許第7,608,693号に記載されている。
【0136】
研究の主目的は、持続性の中程度から重度の好酸球性喘息を有する患者において、喘息増悪の発生率の低下に対する、プラセボと比較した12週間の週に1回皮下投与されたmAb1の効果を調べることであった。この研究の二次目的は、持続性の中程度から重度の好酸球性喘息を有する患者において12週間の週に1回皮下投与されたmAb1の安全性および許容性を評価すること、ならびに持続性の中程度から重度の好酸球性喘息を有する患者において12週間の週に1回の皮下投薬後のmAb1血清濃度を評価することであった。
【0137】
スクリーニングの前に、患者は少なくとも1ヶ月間、ICS/LABA組合せ治療(「バックグラウンド治療」とも呼ばれる)の以下の用量および処方のいずれかの安定用量を継続中である必要があった:
フルチカゾン/サルメテロール組合せ治療
− Advair(登録商標)Diskus−ドライパウダー吸入器(DPI):250/50μg BIDもしくは500/50μg BID;もしくは
− Advair(登録商標)HFA−定量吸入器(MDI):230/42μg BIDもしくは460/42μg BID;または
ブデソニド/ホルモテロール組合せ治療(Symbicort(登録商標)160/9μg BIDまたは320/9μg BID);または
モメタゾン/ホルモテロール組合せ治療(Dulera(登録商標)200/10μg BIDまたは400/10μg BID)。
【0138】
ブデソニド/ホルモテロールまたはモメタゾン/ホルモテロールを継続中であった患者を、無作為化時(1日目)に等価用量のフルチカゾン/サルメテロールに切り替えて、フルチカゾン/サルメテロールを継続中であった患者はバックグラウンド治療と同じままであった。
【0139】
組み入れ基準および除外基準(以下を参照のこと)を満たした患者を、以下の処置の1つに無作為に選んだ:mAb1 300mgを12週間、週に1回皮下投与;またはプラセボを12週間、週に1回皮下投与した。
【0140】
この研究は2週間のスクリーニング期間、無作為化後の4週間のバックグラウンド治療安定期および8週間のバックグラウンド治療休薬期を含む12週間の処置期間、続いて8週間の処置後経過観察期間を含んでいた。
【0141】
バックグラウンド治療(ICS/LABA)休薬のためのアルゴリズム:
患者は、300mg mAb1(またはプラセボ)の付加型治療または処置を開始した後4週間、BID フルチカゾン/サルメテロールバックグラウンド治療を継続したままであった。無作為化の4週後に、患者を、BID フルチカゾン/サルメテロール組合せ治療から等価ICS用量のフルチカゾン単独療法(250ugもしくは500μg BIDのFLOVENT(登録商標)Diskus−DPI製剤;または220μgもしくは440μg BIDのFLOVENT(登録商標)HFA−MDI製剤のいずれかを含む)に切り替えた。LABA成分(すなわち、サルメテロール)を中断した。その後の来診時に、患者が喘息増悪(以下に定義される通り)についての基準をいずれも満たしていなかった場合には、6週目に開始して、フルチカゾン用量を約50%低下させた。喘息増悪が発生しなかった場合には、ICS休薬を表1に記載されるスケジュールに従って進めた。
【0142】
【表1】
【0143】
治験薬での12週間の処置が完了すると(または早期中断の後)、患者を、最終安全性評価の前にさらに8週間の試験外薬物療法のために症状を管理するために、フルチカゾン/サルメテロール、ブデソニド/ホルモテロールまたはモメタゾン/ホルモテロール(研究登録時の用量)および必要に応じてアルブテロールまたはレブアルブテロールの元の用量に設定した。
【0144】
研究プロトコールの概略は
図1に与えられる。
【0145】
成人患者は以下の基準に基づいて研究に含められた:(1)喘息管理に関する国際指針(Global Initiative for Asthma)(GINA)2009ガイドラインに基づいて少なくとも12ヶ月以上の持続性喘息の医師の診断、その気道炎症は好酸球性である可能性がある;ならびに(2)その喘息が、以下の基準に従って吸入
コルチコステロイド/長時間作用性ベータ−アゴニスト組合せ治療で部分的に管理されるかまたは管理されない:(i)スクリーニング前の少なくとも1ヶ月間、フルチカゾン/サルメテロール組合せ治療(DPI製剤:250/50μg BIDもしくは500/50μg BIDまたはMDI製剤:230/42μg BIDもしくは460/42μg
BID)、またはブデソニド/ホルモテロール組合せ治療(160/9μg BIDまたは320/9μg BID)、またはモメタゾン/ホルモテロール組合せ治療(200/10μg BIDまたは400/10μg BID)のいずれかの安定用量;(ii)スクリーニング期の間、血中好酸球≧300細胞/μlまたは痰中好酸球≧3%;(iii)スクリーニング時に1.5以上かつ3.0以下のJuniper喘息管理調査票(5質問版、ACQ)スコア;(iv)スクリーニング期の間(最大3回の試行)および最初の用量の前日の無作為化時に(最大3回の試行)FEV1 50%以上で正常と予測される;(v)スクリーニングの前2年以内に、喘息悪化のために1回もしくはそれ以上の全身(経口および/または非経口)ステロイドバーストでの処置、または喘息悪化のために入院もしくは救急治療来診のいずれか;ならびに(vi)スクリーニングの12ヶ月以内に、基準−スクリーニング期の間のアルブテロール200μg〜400μg(2〜4回の吸入)の後FEV1において少なくとも12%および200mL(最大3回の試行)を満たす可逆性の文書化された履歴、またはスクリーニングの前12ヶ月以内にポジティブメタコリン負荷(PD20 メタコリン8mg以下)の文書化された履歴。吸入コルチコステロイドおよび長時間作用性ベータアゴニスト(ADVAIR(登録商標)、SYMBICORT(登録商標)またはDULERA(登録商標))での中程度から高用量の組合せ治療で部分的に管理されるかまたは管理されず、スクリーニング期の間に1マイクロリットルあたり300個に等しいかもしくはそれ以上の細胞の血中好酸球、または3%に等しいかもしくはそれ以上の痰中好酸球を有する中程度から重度の喘息を有する患者は、研究に含められた。
【0146】
全ての組み入れ基準を満たす患者を、以下の除外基準についてスクリーニングした:(1)18歳未満または65歳より上の患者;(2)未知の疾患を示唆し、さらなる評価を必要とする臨床的に関連のある異常な臨床検査値;(3)慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺機能試験を害する他の肺疾患;(4)何らかの理由のためにベータアドレナリン受容体遮断薬を必要とする患者;(5)現喫煙者またはスクリーニング前6ヶ月以内に禁煙;(6)年に10箱より多い過去の喫煙歴;(7)スクリーニング前2ヶ月間に喘息増悪に起因する入院または救急治療来診;(8)研究期間内にアレルゲン免疫療法を開始する予定;(9)抗体の5半減期未満であるが30日以上の、スクリーニング前の期間、または抗体の半減期が知られていない場合は、少なくとも6ヶ月間である、スクリーニング前の期間内に、別の試験抗体への曝露;(10)現在の試験への以前の登録;(11)患者が治験責任医師、患者の家族、または試験所での従業員であった;(12)既知または疑われる非遵守、アルコールまたは薬物乱用;(13)試験の手順に従うことができない(例えば、言語の問題または心理学的障害に起因する);(14)睡眠パターンの逆転(例えば、夜間労働者);(15)QTc間隔を延長させることが知られている薬物での処置;(16)ICS(例えば、活動性または非活動性肺結核)またはLABA(例えば、糖尿病、心血管疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症など)の使用が禁忌となっている付随する重症疾患;(17)スクリーニング前2ヶ月以内、またはスクリーニング前6ヶ月以内の3過程より多い注射用糖質コルチコステロイドまたは経口全身糖質コルチコステロイドの使用;(18)単独、または非ステロイド系コントローラーと組み合わせた(フルチカゾン/サルメテロール組合せ治療、ブデソニド/ホルモテロール組合せ治療またはモメタゾン/ホルモテロール組合せ治療以外)、いずれかでの可変用量のICSでの前処置;(19)禁止された併用薬物(以下に列挙される)を投与されている患者;(20)ドキシサイクリンまたは関連化合物に対する既知のアレルギー;(21)妊娠または試験の過程で妊娠する意向、母乳栄養、または避妊の有効方法を使用しようとしないこと;ならびに(22)寄生虫感染の最近の病歴またはスクリーニング前6ヶ月
以内の寄生虫流行地への旅行。
【0147】
研究の最初の4週間、患者はバックグラウンド喘息治療の一定用量を維持し、その後、バックグラウンド治療の用量を徐々に低下させる。最初に、バックグラウンド治療の長時間作用性ベータアゴニスト成分を4週目に休薬し、次いで吸入コルチコステロイド用量を12週まで2週間ごとに半分に減らした。患者は、研究の終わりまで、または喘息増悪もしくはいずれかの他の理由に起因して休薬するまで、研究処置を継続した。
【0148】
B.研究処置
治験医薬品:デュピルマブまたは合致するプラセボ。製剤:SC注射用の滅菌デュピルマブ150mg/mL溶液を5mLガラスバイアルで提供した。各バイアルは2mLの引きぬき可能体積を含んでいた。滅菌プラセボを、完全に同じように合致するガラス製の5mLバイアルで提供した。投与経路:皮下(SC)注射。用量レジメン:D1にデュピルマブ600mg SC(負荷用量)、その後15週間にわたって毎週300mg SC注射。D1にプラセボSC負荷用量、その後15週間にわたって毎週SC注射。
【0149】
非治験医薬品(適用可能な場合):製剤:フランカルボン酸モメタゾン(NASONEX(登録商標))50マイクログラム/鼻内噴霧作動がボトルに含まれ、そのボトルは製剤18g(作動140回)を含んだ。投与経路:鼻内噴霧。用量レジメン:スクリーニング来診(V1)後、全ての患者は、フランカルボン酸モメタゾン(NASONEX(登録商標))50μg/鼻内噴霧作動の2回の作動(50μg/作動)を鼻孔の各々に1日2回(合計1日用量400μg)または1日1回(合計1日量200μg)、処置後観察期間終了まで受けた。
【0150】
以下の併用薬物療法は研究期間の間は許可されなかった:プロトコールに従って投与されるフルチカゾン/サルメテロール組合せ治療またはフルチカゾン(またはスクリーニング期間の間のブデソニド/ホルモテロールもしくはモメタゾン/ホルモテロール)以外のいずれかの他の吸入ステロイド;全身または眼ステロイド;プロトコールに従って投与されるフルチカゾン/サルメテロール組合せ治療のサルメテロール成分以外のLABA;上に示されるもの以外のいずれかの他のICS/LABA組合せ製品;いずれかの吸入抗コリン剤(例えば、イプラトロピウム臭化物またはチオトロピウム);メチルキサンチン(テオフィリン、アミノフィリン);クロモン;抗IgE治療;リポキシゲナーゼ阻害剤;およびロイコトリエン受容体アンタゴニストまたはロイコトリエン合成阻害剤。
【0151】
C.処置の効能
この研究の主要評価項目は、以下のいずれかにより定義される喘息の増悪の発生であった:(1)連続した2日間、朝の最大呼気流量(PEF)におけるベースラインからの30%もしくはそれ以上の低下;または(2)連続した2日間、24時間で(ベースラインと比較して)アルブテロールもしくはレブアルブテロールの6回またはそれ以上のさらなる発作治療薬パフ;または(3)(a)全身(経口および/または非経口)ステロイド処置、もしくは(b)研究からの中断前に受けていた最後の用量のICSの4倍以上の増加、もしくは(c)入院を必要とする、治験責任医師により決定された喘息の悪化。
【0152】
研究の副次的評価項目は、以下のパラメーターのベースラインからの平均変化を含んでいた:上気道症状を評価するために、ベースラインおよび処置終点(12週目)に評価された、(1)来診時ごとに測定されたリットルでの1秒間努力呼気容量(FEV1);(2)毎日測定されたリットル/分での朝および夜の最大呼気流量(AM PEFおよびPM PEF);(3)吸入/日での毎日のアルブテロール/レブアルブテロールの使用;(4)来診時ごとの5項目喘息管理調査票(ACQ5)スコア;ならびに(5)毎日測定された夜間覚醒(一晩あたりの回数)、ならびに(6)22項目副鼻腔評価試験(SNO
T−22)。副次的評価項目はまた、連続した2日間、24時間で(ベースラインと比較して)アルブテロールまたはレブアルブテロールの6回以上のさらなる発作治療薬パフと共に、連続した2日間、朝のPEFにおけるベースラインからの30%またはそれ以上の低下により定義される複合喘息事象を有する患者の比率を含んでいた。PEF、ACQ5、喘息症状スコア、夜間覚醒、および発作治療薬治療使用を電子日記で得た。0〜10の範囲に及ぶ平均の毎日の夜間覚醒を前の7日間から平均した。朝および夜の喘息症状スコアは、5段階のリッカート尺度で評価された非検証の患者が報告した結果からなり、より高いスコアはより悪い結果を示す(表2)。患者はPEFを測定する前に1日2回、全体症状スコアを記録した。データは特定された時点の前7日間の平均として記載した。
【0153】
【表2】
【0154】
D.有害事象モニタリング
有害事象および重篤な有害事象をモニタリングすることにより、安全性を研究全体を通じて評価した。
【0155】
有害事象(AE)は、医薬品を投与された対象または臨床検討対象におけるいずれかの有害な医療上の出来事である。したがってAEは、医薬(治験)品と関連するとみなされているか否かにかかわらず、医薬品の使用と時間的に関連があるいずれかの好ましくない意図せぬ兆候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患であり得る。AEはまた:研究薬の使用と時間的に関連がある、既存の状態のいずれかの悪化(すなわち、頻度および/または強度のいずれかの臨床的に有意な変化);試験責任者により臨床的に有意とみなされた異常な検査所見;およびいずれかの有害な医療上の出来事を含む。
【0156】
重篤な有害事象(SAE)は、いずれかの用量で死亡を生じるか;生命を脅かすか;入院もしくは現在の入院の延長を必要とするか;持続性もしくは重要な能力障害/無能力を生じ;先天性の異常/先天性欠損であるか;または重大な医療事象である、いずれかの有害な医療上の出来事である。
【0157】
E.統計的方法
喘息増悪を経験した患者の比率の一次分析のために、ロジスティック回帰モデルを使用して、SAR群をプラセボと比較した。このモデルは、処置および層別因子の項(先行するICS/LABA組合せ治療用量)を含んでいた。一次分析を修正包括解析(modified intent−to−treat)(mITT)集団に基づいて行い、これは少なくとも1回の用量のmAb1を投与された全ての無作為化された患者を含んでいた。層別カイ二乗検定もまた、一次分析を裏付けるために使用した。
【0158】
SNOT−22を除いて二次効能評価項目について、ベースラインからの変化を、反復測定(MMRM)アプローチを用いて混合効果モデルを使用して分析した。モデルは、応答変数として12週までのベースライン値からの変化、および処置についての因子(母数効果)、層別因子、来診、来診と処置との相互作用、ベースライン値および来診とベースラインとの相互作用を含んでいた。12週目のベースラインからの変化についての処置比較に対する統計的推定は混合効果モデルから誘導された。SNOT−22のベースラインからの変化を、共分散分析を使用した分析(ANCOVA)を使用して、欠測データを補完する(impute)ために処置の終わりの測定値を用いて分析した。薬力学的効果を、事後の方法でMMRMモデルを使用して評価した。1つの主要評価項目および分析しかなかったので、多重度について調整は行わなかった。AE、検査パラメーター、バイタルサイン、ECG、臨床検査所見および身体検査を含む安全性変数を、記述統計学を使用してまとめた。
【0159】
人口統計および臨床特徴を、記述的特徴を使用してまとめた。二次変数および薬力学的変数のプロットを、標準誤差と共に経時的にベースラインからの平均変化として示す。MMRM分析からの処置効果の比較は、12週目のベースラインからの最小二乗平均変化(95%信頼区間[CI])に基づく。
【0160】
F.結果
研究の処置段階を完了したか、または中断した全104人の無作為化した患者(491人からスクリーニングされた)で観察された結果を以下にまとめる。全ての無作為化した患者を、研究処置に曝露し、mITT集団に含めた。ベースライン特徴は群間で同様であった。人口統計および臨床特徴も2つの群間で同様であった(表3)。上に示したように、患者を週に1回の300mg皮下mAb1またはプラセボのいずれかで処置した。研究処置期間を、それぞれmAb1およびプラセボ患者の86.5%および67.3%が完了した。中止の最も一般的な原因は効能の欠如であり、これはmAb1(1.9%)よりもプラセボ(21.2%)でより頻繁であった。
【0161】
【表3】
【0162】
(i)主要効能評価項目
プラセボおよびmAb1処置群における喘息増悪の発生率を表4に示す。
【0163】
【表4】
【0164】
処置期間の間に合計26人の喘息増悪があり、喘息増悪のために入院した患者はいなかった。プラセボ群では23人の患者(44.2%)が喘息増悪を経験したが、一方でmAb1処置群では3人の患者(5.8%)しか喘息増悪を経験しなかった。オッズ比は0.077(p<0.0001)であり、相対的リスク低下は約87%であった。
【0165】
全身性コルチコステロイド、または事象の前に摂取された用量の4倍もしくはそれ以上の吸入コルチコステロイドのいずれかでの処置の形態での即時介入の必要性により実証されるように、本研究の間に経験された26の喘息増悪のうち、9人は重度とみなされた。重度喘息増悪の発生率の概要を表5に示す。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示されるように、8人の重度の喘息増悪がプラセボ群において観察され、1人の重度の喘息増悪のみがmAb1処置群において観察された。プラセボ群における残りの15人およびmAb1群における2人の喘息増悪は、減少した朝のPEFおよび/または増加したアルブテロール/レブアルブテロール使用に基づいて増悪のプロトコール定義を満たす。積極的処置群内で、ベースラインに対する持続した改善が、ステロイド休薬にもかかわらず、全てのパラメーターについて研究の過程の間に観察された。
【0168】
【表6】
【0169】
mAb1では、プラセボと比較して増悪までの時間はより長く、増悪の危険性は低下した(ハザード比0,10;95%CI 0.03、0.34;P<0.001)。カプラン・マイヤープロットによる喘息増悪までの時間の分析は、mAb1での処置の効果が、患者がステロイド休薬に起因する増悪を発生する、より高いリスクにある8週間後を含めて、長い期間持続するということを明らかにした。
【0170】
プラセボ群から1人の患者のみが複合喘息事象を有していた。複合喘息事象は、連続した2日間24時間で(ベースラインと比較して)、アルブテロールまたはレブアルブテロールの6回以上のさらなる発作治療薬パフと共に、連続した2日間、朝のPEFにおけるベースラインからの30%またはそれ以上の低下として定義される。
【0171】
(ii)他の効能評価項目
肺機能パラメーター(FEV1、AM PEFおよびPM PEF)、喘息症状ベースの評価項目(ACQスコア、夜間覚醒)、およびアルブテロール使用を、各患者について各来診時に評価した。さらに、SNOT−22スコアをベースラインおよび処置の終わりに評価した。全てのパラメーターについて、ベースラインおよび12週(LOCF)の平均値を、処置群間の平均差異と共に(SNOT−22についてのANOVAモデル)表7にまとめる。表7において、「プラセボに対する差異」と標示される列は、プラセボ処置群におけるそのパラメーターについて観察された変化と比較して、パラメーターの値において観察された変化を考慮した、ベースラインからのプラセボ補正値を示す。
【0172】
【表7】
【0173】
mAb1での処置は、1週目にFEV1におけるベースラインからの有意な変化を生じ、これはLABAおよびICS休薬にもかかわらず12週目まで維持され、LABA休薬と同時に5週目にFEV1がわずかに減少した。同様の改善が朝のPEFにおいて観察されたが、夜のPEFではより小さいものであった。FEV1における12週目までのベースラインからの最小二乗(LS)平均変化はプラセボについて−0.22Lであり、mAb1群について0.05Lであった(p=0.0009)。
【0174】
ACQ5スコアは1週目に両方の処置群で改善された。しかしながら、ACQ5は1週目と4週目との間にmAb1でさらに改善したが、プラセボ効果は安定化し、12週まで差異を維持した。
【0175】
朝の症状スコアは、ベースラインから12週までプラセボで増加した。mAb1では、12週までベースラインより低いままである初期減少があった。同様のパターン(より大きな変動)が夜の喘息症状スコアで観察された。
【0176】
夜間覚醒は、プラセボ群から6週目まで安定しており、その後6週から12週まで増加した。対照的に、夜間覚醒はmAb1群において1週目までに減少し、12週までベースラインに対して改善したままであった。
【0177】
アルブテロール/レブアルブテロール使用の変化は他の二次評価項目と同様であった:プラセボで初期減少の後、ベースラインに戻った。mAb1では、初期減少は時間とともに維持されていた。
【0178】
SNOT−22値の間にベースラインにおいて有意でない差異があり、平均プラセボスコアは26.24であり、平均mAb1スコアは39.02であった。12週目に、LS平均変化はプラセボ群について0.23ポイントのわずかな増加であり、mAb1群について8.26ポイントの平均減少(改善)であった。これは、mAb1群についての8.49ポイントの改善の大きさに相当した(p=0.0027)。
【0179】
【表8】
【0180】
【表9】
【0181】
全ての二次評価項目について、夜のPEFおよび夜間覚醒を除いて、12週の測定値はmAb1処置で有利であり、有意であった(表7および8)。mAb1での有意な改善は、上気道疾患に関連する3つのSNOT−22項目についても観察された(表9)。
【0182】
(iii)安全性
mAb1は一般的に安全であり、良好な耐容性を示した。処置により発現した有害事象
(TEAE)が、40人(76.9%)のプラセボにより処置した患者および42人(80.8%)のmAb1により処置した患者によって同様に報告された(表10)。TEAEは非特異的であり、一般的には軽度から中程度の強度であり、大部分は研究の終わりまでに回復した。以下のTEAEの増加した報告がプラセボと比較してmAb1について観察された:注射部位反応が15人(28.8%)のmAb1患者および5人(9.6%)のプラセボ患者によって報告された;鼻咽頭炎が7人(13.5%)のmAb1患者および2人(3.8%)のプラセボ患者によって報告された;頭痛が6人(11.5%)のmAb1患者および3人(5.85)のプラセボ患者によって報告され、悪心が4人(7.7%)のmAb1患者および1人(1.9%)のプラセボ患者によって報告された。
【0183】
【表10】
【0184】
研究期間の間に死亡は報告されなかった。報告された4つの治療下で発現した重篤な有害事象(SAE):1人のmAb1患者が双極性障害を経験し、3人のプラセボ患者が肺炎を伴う喘息、左気胸症を伴う銃創および右足首骨折のSAEを経験した。これらのSAEのいずれもmAb1に関連するとはみなされず、新しい足首骨折以外は全て研究の終わりまでに回復した。死亡はなかった。
【0185】
合計で6人の患者がTEAEのために研究を中止した:mAb1群の3人の患者(双極性障害、喘鳴を伴う喘息および血管浮腫)およびプラセボ群の3人の患者(上気道感染、乾癬および喘息)。血管浮腫のTEAEは42歳のアフリカ系アメリカ人女性において、9回目の研究処置投薬後に、注射部位でおよび注射部位から離れて観察されたそう痒性の一般的な発疹として発生した。これは1週間持続し、研究処置中止、ならびにプレドニゾンおよびジフェンヒドラミン処置後に解消した。これは処置に関連するとみなされた。こ
のAEは初回および6回目の研究処置投薬後の注射部位におけるより軽度な発疹の後であった。
【0186】
いずれかの処置群において3人以上の患者で発生した最も一般的なAEの中で(表10)、注射部位反応、鼻咽頭炎、悪心および頭痛がプラセボよりもmAb1でより頻繁に発生した。バイタルサイン、身体検査、臨床検査またはECG所見における臨床的に重大な変化はいずれかの群でも報告されなかった。
【0187】
G.結論
肺機能および他の喘息管理パラメーターについて有意な改善が観察された。バックグラウンド治療休薬にもかかわらず、効能が早期に、持続して観察された。好酸球増加症を有する持続性の中程度から重度の喘息患者における喘息増悪の発生率の主要評価項目における約87%の相対的減少(p<0.0001)が、プラセボ(44.2%)と比較して、週に1回の300mgのmAb1での12週間の処置後に観察された(5.8%)。表7に示されるように、プラセボと比較して処置での臨床上意味のある統計的に有意な(多重度調整無し)改善が、肺機能パラメーター(FEV1、PEF AM)、喘息症状スコア(ACQ)およびアルブテロール使用において観察された。有益な傾向がPEF PM(p=0.0567)および夜間覚醒(p=0.0518)について観察された。統計的に有意な(多重度調整なし)改善がSNOT−22スコアについても観察された。積極的処置群内で、ベースラインに対する持続した改善が、LABAおよびICSの休薬にもかかわらず、全てのパラメーターについての研究の過程の間に観察された。mAb1は一般的に安全であり、良好な耐容性を示した。
【0188】
実施例2:バイオマーカー研究
バイオマーカー分析を、mAb1の臨床試験に参加した対象(上記の実施例1を参照のこと)から得たサンプルで行った。特に、胸腺および活性化ケモカイン(TARC;CCL17)、免疫グロブリンE(IgE)、エオタキシン−3、ペリオスチン、癌胎児抗原(CEA)、YKL−40および血中好酸球のようなTH2炎症に関連する血清/血漿バイオマーカーを、ベースラインおよび研究処置の開始後の異なる時点での患者由来のサンプルにおいて測定した。これらのバイオマーカーのベースラインレベルを、処置応答についての潜在的な予測値について評価した。さらに、呼気NO濃度(FeNO)ならびに誘発痰中好酸球および好中球を、気管支炎症のバイオマーカーとして測定した。呼気一酸化窒素評価を肺活量測定の前および少なくとも1時間の絶食後にNIOX機器(Aerocrine AB、Solna、Sweden)を使用して行った。バイオマーカーを、混合モデルを使用して分析し、モデルから誘導された最小二乗平均を以下に報告する。
【0189】
喘息対象(N=104)に、mAb1(300mg)またはプラセボのいずれかを、研究の1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71および78日目(すなわち、12回の週ごとの投薬)に皮下投与した(上記の実施例1を参照のこと)。バイオマーカー分析のためのサンプルを抗体により処置した対象およびプラセボにより処置した対象から0、1、4、8および12週に採取した。抗原特異的IgEをPhadiatop(登録商標)試験を使用して検出した。
【0190】
TARC、エオタキシン−3およびIgEはプラセボに応答して変化しないままであった。対照的に、TARC(平均%変化 +0.3%に対して−22.7%;p=0.0003)およびエオタキシン−3(平均%変化 12.69%に対して−39.62%;p<0.0001)の急速な低下が、mAb1で処置された患者において1週間以内に観察され、12週まで持続した:TARC:+7.6%プラセボに対して−26.0%(p=0.0005);エオタキシン−3:+5.13%プラセボに対して−45.67%(p<0.0001)。
【0191】
TARCレベルは、300mgで皮下投与されたmAb1への曝露後1週間以内に反応した。TARCレベルは、ICS休薬にかかわらず、mAb1により処置した対象におけるベースラインレベルの約50%で一定になった。このデータは、TARC発現が、FEV1変化(これはICS休薬と並行して低下した[4週後])よりも直接的にIL−4Rシグナル伝達と関係していること、およびIL−4R遮断が、例えば、IFNγ投与で観察されたように、TH1特徴へのシフトを誘発する。特に、長期の処置を必要とし、TH1型免疫疾患のリスクがある患者において、TARC(および例えばCXCL10)を使用してmAb1用量を滴定することが可能であるかもしれない。
【0192】
総血清IgEもまたmAb1処置後に減少した。総血清IgE応答はより不均一であり、TARC応答と比較して遅れた。平均(SD)ベースラインIgEレベルは、プラセボ群(n=52)について694.68IU/L(1837.82)、mAb1群(n=52)について657.66(1482.25)であったが、一方中央値はプラセボ群について169.95であり、mAb1群について206.15であった。この不均一性にもかかわらず、プラセボと比較してmAb1曝露患者におけるIgE減少の傾向が観察されたが4週目にしか始まらなかった。血清IgEは、プラセボと比較してmAb1群において有意に減少し(平均%変化、+13.5%に対して10.1%;p=0.0325)、これは4週目に始まって12週まで減少し続けた(平均%変化、mAb1について−36.8%対プラセボについて−5.5%;p<0.0001)。
【0193】
FeNO、TARC、エオタキシン−3、およびIgEについての12週目のベースラインおよびプラセボからの変化は、全てmAb1に有利であった(全てP<0.001)(表11)。ベースラインからの差異も処置間の差異もYKL−40またはCEAで観察されなかった。
【0194】
【表11】
【0195】
ペリオスチンレベルの一時的な減少があり、続いてLABA/ICS休薬に伴う増加があった。mAb1の投与は増加を遅らせたが、ベースラインを上回る増加を防止しなかった。CEAおよびYKL−40で一貫した処置効果は観察されなかった。血中好酸球の数は6週まで変化しないままであったが、その後8週および12週に増加した。末梢血好酸球数は、処置全体を通してプラセボでは変化しなかった。処置間の差異は有意ではなく、mAb1で処置された数名の患者においてのみ、より大きな血中好酸球上昇により境界増加が促進された。患者の大部分ではほとんど増加が観察されないか、または全く観察されなかった。
【0196】
【表12】
【0197】
3人のmAb1患者しか研究の間に喘息増悪を経験しなかったので、ベースラインバイオマーカーレベルと喘息増悪との間の関連性に関して結論は出されなかった。
【0198】
mAb1処置はまた、4週目のFeNOのベースラインからの有意な減少とも関連付けられ、ICS休薬にもかかわらず、FeNoは12週までベースラインを下回ったままであった(12週目の平均%変化:プラセボについての35.0に対してmAb1について−28.7;p<0.0001)。対照的に、プラセボFeNo値は8週目まで安定したままであり、その後ICS休薬と一致して12週目に増加した。
【0199】
1秒間努力呼気容量(FEV
1)の改善は、12週目にFeNO減少(r=−0.408、p=0.009)と有意に相関していた。同様に、AM−PEFおよびPM−PEFの改善はFeNO低下と相関していた。FeNOとの他の相関は有意ではなかった。表13を参照されたい。
【0200】
【表13】
【0201】
12週目のベースライン好酸球対FEV1におけるベースラインからの変化の散布図分析は、研究集団におけるFEV1の12週目のベースラインからの変化により測定して、ベースライン好酸球と処置効果との関連性を示していないようであった(ベースライン好酸球≧0.3ギガ/L)。ベースライン好酸球は減少したACQおよび減少したアルブテロール/レブアルブテロール使用と相関していた。ベースラインでのペリオスチンおよびYKL−40は減少したACQと相関があった。
【0202】
12週目のベースラインからのFEV1変化は、ICSの休薬(4週目に開始)により悪化した。同様の分析は、研究集団において(ベースライン好酸球≧0.3ギガ/L)、ベースラインTARCまたはIgEと12週目のFEV1のベースラインからの変化との間の関連性を示唆しなかった。
【0203】
要約
これらの結果は、mAb1が、成人喘息患者において、Th2炎症(TARC、エオタキシン−3およびIgE)および気管支炎症(FeNO)に関連する血清バイオマーカーを有意に減少させたということを示す。FeNO低下とFEV
1改善との間の相関は、IL−4/IL−13媒介性抗炎症活性と中程度から重度の管理されていない喘息における肺機能の改善との間の関係を示唆する。
【0204】
実施例3.両側性鼻茸および副鼻腔炎の慢性症状を有する患者における皮下投与した抗IL−4R抗体(mAb1)の臨床試験
A.研究目的および概要
実施例1に記載されるSNOT−22試験に対するmAb1の陽性効果は、抗IL−4R抗体もまた、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎を処置するのに有効であり得ることを示唆した。さらに、鼻ポリープは最も一般的には好酸球性/TH2により駆動され、mAb1はTh2炎症に関連するバイオマーカーを顕著に低下させた(実施例2を参照のこと)。したがって、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎に対するmAb1の治療効果を試験するために臨床試験を設計した。
【0205】
無作為化、二重盲検、第2相、プラセボ対照の2つの治療群の研究を、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎(両側性鼻茸および副鼻腔炎の慢性症状)を有する患者において16週にわたって1週間に1回(QW)、皮下(SC)に投与したmAb1を評価するために実施した。
【0206】
主要効能評価は、MMRM分析を使用する、包括解析(ITT)集団の16週における両側性内視鏡的鼻ポリープスコア(NPS)のベースラインからの変化であった。主な副次的効能分析は、SNOT−22スコア、嗅覚の喪失(毎日のAM/PM毎日評価)、嗅覚検査(UPSIT)、対象によって評価される鼻炎の症状(毎日のAM/PM評価)、Lund−Mackay副鼻腔CTスキャンスコア(中心読み取り)、鼻最大吸気流量(毎日のAM/PM評価)および応答者分析(ベースラインと比較して16週における全NPSの1または2ポイント改善と定義した)を含んだ。
【0207】
mAb1をフランカルボン酸モメタゾンの鼻内噴霧(MFNS)(1日2回、鼻孔ごとに2回の作動のNASONEX(登録商標)50マイクログラム/作動)と同時に投与した。喘息、アスピリン/非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)過敏症および以前の手術とのNPの高い併存罹患率が存在したので、患者は下記の除外基準のいずれかを提示しない限り、研究への登録が許可された。患者60人を1群あたり患者30人の2つの処置群に無作為化した。併存する喘息を有する患者少なくとも30人がこの研究に確実に含まれるようにするために、喘息を有さない患者約30人を無作為化するときに併存する喘息を有さないNP患者の動員をやめた。最終的に、研究に参加した喘息を有する患者35人、および参加した喘息を有さない患者25人が存在した。患者および治験責任医師の両者を割り当てた処置群に対して盲目にした。
【0208】
研究は3つの期間から構成した:1)MFNSでの4週のスクリーニング実施期間(来診1);(2)16週の無作為化mAb1またはプラセボ処置期間(来診2〜18);ならびに(3)薬物動態、免疫原性、安全性および効能をアッセイするための16週の処置後期間(来診19〜22)。研究の全期間は最大36週であった。
【0209】
主要評価項目は両側性NPSにおいて16週でベースラインから変化した。
【0210】
多くの副次的効能評価項目を測定してmAb1の効能をより包括的に評価した。研究は、SNOT−22スコア、嗅覚の喪失(毎日のAM/PM毎日評価)、嗅覚検査(UPSIT)、対象によって評価される鼻炎の症状(毎日のAM/PM評価)、Lund−Ma
ckay副鼻腔CTスキャンスコア(中心読み取り)、鼻最大吸気流量(毎日のAM/PM評価)および応答者分析(ベースラインと比較して16週における全NPSの1または2ポイント改善と定義した)の改善を調べた。
【0211】
試験的サブグループ分析およびバイオマーカーと一緒に、これらの評価項目は、鼻ポリープスコアを低下させ、NPおよびそのサブセットにおける症状を改善するmAb1の治療的価値に対する情報を与えた。効果の持続性もまた、4ヶ月の処置後評価期間を通して調べた。
【0212】
300mg QW用量レジメンは、見かけの標的媒介性クリアランスレベル(10〜15mg/L)を満たした。このレジメンは試験されており、喘息およびアトピー性皮膚炎においてmAb1を用いて実施した概念研究の2つの以前の証拠において統計的に有意であり、臨床的に関連する反応を提供した(例えば、上記の実施例1、USSN61/805797およびUSSN61/816191を参照のこと)。最初の用量は、より迅速に安定状態濃度を達成するために600mgの負荷用量を利用した。この負荷用量範囲は、日本人の健常な対象において行った以前の研究において実証された最高の負荷用量(600mg)の許容される安全性プロファイルによって裏付けられた。
【0213】
さらに、600mgの負荷用量後のCmaxが約70mg/Lであり、300mgのQWの定常状態Ctroughが約150mg/Lであり、提案された投薬レジメン(すなわち、600mgの負荷用量、続いて300mgのQW)後のCmaxが12mg/kg
IV用量(421mg/L)の平均Cmax未満であることを考慮して、良好な耐容性を示す健常な対象において試験した最高の単回用量は、この用量レジメンが許容される安全性プロファイルを有するはずであるというさらなる信頼性を提供した。
【0214】
患者の組み入れ基準には、(i)スクリーニングの少なくとも8週前の間の両側性鼻茸の医師による内視鏡診断(すなわち、以前の鼻腔内コルチコステロイド(INCS)処置の完了にもかかわらず、各鼻孔について少なくとも2のスコアで、両方の鼻孔について最小の両側性鼻ポリープスコア5から最大スコア8)、ならびに(ii)スクリーニング前に以下の症状:鼻遮断/閉塞/詰まりまたは鼻汁(前/後鼻漏);顔面痛/圧迫感;および嗅覚の低下または喪失のうちの少なくとも2つが存在している副鼻腔炎の慢性症状が含まれる。
【0215】
これらの基準を満たしている患者を以下の除外基準についてスクリーニングした:18歳未満または65歳超の年齢;研究において患者を無作為化することができなかった何らかの技術的/管理上の理由;mAb1のいずれかの臨床試験の以前の参加;7未満のSNOT22スコア;任意の他の試験研究中の薬物またはスクリーニングの前2ヶ月以内もしくは5半減期のどちらか長い方でこの研究について禁止されている治療を受けていること;スクリーニングの前2ヶ月もしくは1ヶ月以内に経口コルチコステロイド(OCS)または鼻腔内コルチコステロイド滴剤を受けていること、または別の状態について研究期間の間、OCSを受けることが計画されている;mABまたは免疫抑制療法による処置;来診1の130日以内の抗免疫グロブリンE(IgE)治療(例えば、オマリズマブ)による処置;来診1の前30日以上の間連続処置を継続しなかった患者についてのロイコトリエンアンタゴニスト/修飾因子による処置;来診1の前3ヶ月以内のアレルゲン免疫療法の開始またはスクリーニング期間もしくは無作為化処置期間の間に治療を開始する計画;スクリーニング前6ヶ月以内の任意の鼻手術または過去に5回より多い副鼻腔手術を受け、そのうち最大2回は鼻の側壁構造を変化させる手術であった;または患者が主要効能評価項目について評価できなくなる状態/合併疾患(例えば、後鼻孔鼻茸;少なくとも1つの鼻孔を閉塞する鼻中隔偏位;スクリーニング時またはスクリーニングの2週間前の急性副鼻腔炎、鼻の感染症または上気道感染;継続中の薬物性鼻炎;チャーグ・ストラウス症
候群、ヤング症候群、カルタゲナー症候群または繊毛ジスキネジー症候群、嚢胞性線維症;アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の兆候またはCTスキャンによる示唆)。以下の場合、併存する喘息を有する患者は除外した:患者が60%未満の努力呼気肺活量(FEV1)を有する;喘息の処置のために全身(経口および/または非経口)ステロイド処置もしくは入院(24時間超)を必要とする憎悪が、スクリーニングの前3ヶ月以内に発生した;または患者は1000μgより多い用量のフルチカゾンもしくは等量の吸入コルチコステロイドを受けていた。他の除外基準には、寿命が短い(6ヶ月未満)と予測される患者;研究において禁止されている併用処置を受けている患者;妊娠しているもしくは研究の間に妊娠する意向のある女性または授乳中の女性が含まれる。他の除外基準には、同時に起こる重度の疾患(例えば、活動性および非活動性肺結核、糖尿病など);診断された活動性寄生虫感染;寄生虫感染の疑いがあるまたは高いリスク;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の病歴または来診1時の陽性HICスクリーニング;急性または慢性感染の証拠;感染が治癒したかにかかわらず、侵襲性日和見感染(例えば、結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の病歴を含む、既知または疑いのある免疫抑制;来診1の前12週間以内の生ワクチン接種または研究の間にワクチン接種を計画している;活動性自己免疫疾患を有する患者または自己免疫疾患(例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、炎症性腸疾患、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、尋常性乾癬、関節リウマチ)のための免疫抑制療法を使用している患者;来診1時の陽性または不確定B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)またはC型肝炎抗体を有する患者;および肝臓損傷関連基準(例えば、内在する肝胆汁性疾患またはALT>3ULN)を有する患者が含まれる。
【0216】
B.研究処置
治験薬:様々な濃度の滅菌mAb1を5mLガラスバイアルで提供した。各バイアルは2mLの引きぬき可能体積を含んでいた:150mg/mL溶液(300mg用量/2mL)。滅菌プラセボを、完全に同じように合致するガラス製の5mLバイアルで提供し、各バイアルは2mLの送達可能体積を含んでいた。
【0217】
mAb1を7±2日(QW)ごとに投与した。mAb1の投薬は5日以上間隔をあけて過剰投薬を回避した。来診2(V2)時に、2回の注射を実施した。V2後、mAb1の1回の注射を、無作為化した処置期間を通じて治験部位において週に1回実施した。臨床処置および血液採取後にmAb1を投与した。各々の投与後、局所部位注射または過敏性反応のあらゆる兆候または症状について患者を少なくとも1時間モニターした。同じ部位が2回/週連続して注射されないように、皮下注射部位を腹部の4分の1(へそおよび腰を回避する)または大腿上部の間で交互にした。
【0218】
研究の間、毎日、対象は電子日記を使用してフランカルボン酸モメタゾン(MFNS)の毎日の使用を記録した。MFNS(NASONEX(登録商標))50マイクログラム/鼻内噴霧の作動がボトルに含まれ、そのボトルは18g(140回の作動)の製剤を含んだ。
【0219】
スクリーニング期間:スクリーニング前で、来診1(V1)の2ヶ月以上前に対象は安定用量の鼻腔内コルチコステロイド(INCS)を継続した。患者がV1時でスクリーニング来診前にMFNS以外の代替のINCS製剤を使用した場合、患者はMFNSに切り替えた。V1後、全ての患者は、4週間の導入期間に入り、BID INCSを寛容できない場合を除いて(その場合、患者は低用量(QD)レジメンのままであった)、MFNS:1日2回(BID)鼻孔の各々に2回の作動(50μg/作動)(合計1日用量400μg)を受けた。この研究に受け入れられるためには、患者は、スクリーニング前に以下の症状:鼻遮断/閉塞/詰まりまたは鼻汁(前/後鼻漏);+/−顔面痛/圧迫感また
は+/−嗅覚の低下もしくは喪失のうちの少なくとも2つが存在した。
【0220】
処置期間:処置期間は表14の研究フローチャートに示すように進めた。
【0221】
【表14】
【0222】
【表15】
【0223】
【表16】
【0224】
処置期間の間、患者はフランカルボン酸モメタゾンの安定な投薬を継続した:各々の鼻孔のBIDまたはQDにおいてMFNSの2回の作動(患者が高用量を許容できない場合)。来診2において、患者は、喘息を有する患者におけるSNOT−22試験、VASおよびQoL調査票(SF−36、EQ−5D、鼻ポリープに関連する資料を使用する調査票)、嗅覚検査およびACQ−5を受けた。
【0225】
来診2における臨床検査室検査は、血液学、薬物動態、抗薬物抗体、血清および血漿中のバイオマーカー、アレルゲン特異的IgEパネルサンプリングに制限した。血液サンプルをmAb1の投与前に得た。バイオマーカーについての鼻汁サンプリング。特定のインフォームドコンセントフォームに署名したこれらの患者については、(無作為化した処置期間の間、治験薬の投与前に)DNAおよびRNAサンプリングのために血液サンプルを採取した。
【0226】
有害事象(AE)と疑われたために一時的な処置の中断が治験責任医師によって考慮された。治験責任医師が、自身の最善の医学的判断に従ってmAb1が関連事象発生の原因になる可能性が低いと考えた時点で、研究の選択基準をなお満たしていた場合には、mAb1による処置の再開を綿密で適切な臨床/およびまたは検査室モニタリング下で行った。
【0227】
AEは、医薬品が投与され、この処置との因果関係を必ずしも有さなくてもよい患者または臨床試験患者におけるいずれかの有害な医療上の出来事であった。
【0228】
重篤な有害事象(SAE)は、あらゆる投薬量において、死に至った、または生命を脅かした(「重篤」の定義における「生命を脅かす」という用語は、患者が事象の時に死のリスクがある事象を指し;より重篤であった場合に死を引き起こす可能性があると仮定される事象を指すものではない);治療のための入院または入院加療期間の延長を必要とした、永続的または重大な障害/機能不能に陥ったあらゆる好ましくない医療上の出来事であるか、または先天的異常/出生異常であるか、医療上重大な事象であった。医学的および科学的判断は、すぐに生命を脅かすものではなく、死ぬことにも入院することにもならないが、患者を危険にさらす可能性がある、または上記の定義に記載の他の結果のうちの1つを防止するために介入(すなわち、特定の手段または矯正処置)を必要とする可能性がある重要な医学的事象などの他の状況で緊急報告が適切であるかどうかを判断する際に行った(医学的に重要な事象の以下のリストは、どの状態を医学的に重要な事象とみなされなければならないのかを決定するためのガイドラインとして役立つことを意図したものである)。リストは包括的であることを意図しなかった:緊急治療室または自宅における集中処置:アレルギー性気管支痙攣、アナフィラキシー、血液疾患(すなわち、無果粒球症、再生不良性貧血、骨髄形成不全、骨髄異形成、汎血球減少症など)、痙攣(発作、てんかん、てんかんの発作、非存在など)、薬物依存または薬物乱用の発症;ALT>3×ULN+総ビリルビン>2×ULNまたは無症候群ALT増加>10×ULN;自殺未遂または自殺傾向の任意の事象の示唆;失神、意識消失(血液サンプリングの結果として文書化されている場合を除く);水疱性皮膚発疹;研究の間に診断されたまたは研究の間に悪化した癌;慢性神経変性疾患(新たに診断された)または研究の間に悪化した(特にこれらの疾患の研究薬の効果を評価する研究において治験責任医師によって異常/重大と判断された場合のみ)。
【0229】
処置後期間:無作為化した処置期間の完了時(またはmAb1の早期中断後)に、患者は、無作為化した処置期間にわたって維持されるMFNSの安定な投薬による処置を継続したか、または医学的判断に基づいて処置を改変した。
【0230】
以下の併用処置は、スクリーニング期間および無作為化した処置期間の間、許可されなかった:鼻用生理食塩水を除く疾患の症状を妨げる鼻腔内医薬(抗ヒスタミン剤、鼻用アトロピン、臭化イプラトロピウム、鼻用クロモリン)の使用;INCS滴剤;全身性コルチコステロイド;以前の内視鏡検査を除く充血除去剤(局所または全身);全身抗生物質の長期間の使用(2週間またはそれ以上);リポキシゲナーゼ阻害剤;限定されないが、メトトレキサート、シクロスポリン、ミコフェノール酸、タクロリムス(tacrilomus)、金、ペニシラミン、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、シクロホスファミドを含む任意の免疫抑制処置;抗免疫グロブリンE(IgE)治療(オマリズマブ);およびアスピリンに対して過敏症を有する患者におけるアスピリンまたはNSAID。
【0231】
以下の併用処置を許容した:スクリーニングの間および全研究にわたるMFNS;鼻用生理食塩水;局所充血除去剤(例えば、膨張を低下させ、内視鏡のための通路を広げるための塩酸オキシメタゾリン)、および局所麻酔剤(例えば、リドカインを内視鏡検査前に
許容した);抗生物質の短期間(2週間未満)の使用;ならびに喘息を有する患者に対するSABA、LABAおよびメチルキサンチン(例えば、テオフィリン、アミノフィリン)。以下の吸入コルチコステロイドが、1000μg以下のフルチカゾン(または等しい用量の別の吸入CS;表16を参照のこと)を安定な用量で継続している患者に許容され、来診1の前30日以上安定な用量を継続していた患者のみについて許容された:ロイコトリエンアンタゴニスト/修飾剤が研究の間、来診1の前30日以上連続処置を継続している患者のみに許容された;合成抗ヒスタミン;およびアレルゲン免疫療法の開始(来診1の前3ヶ月以上の間、所定のアレルゲン免疫療法が許容された)。
【0232】
C.処置の効能
この研究の主要評価項目は両側性内視鏡的鼻ポリープスコアにおける16週でのベースラインからの変化である(表15を参照のこと)。
【0233】
【表17】
【0234】
鼻内視鏡検査を、計画した来診の終わりに実施し、充血除去剤と組み合わせた麻酔薬の局所投与に先行した。標準的なビデオシーケンスをダウンロードしたか、または中心化リーダーに送信した。画像データについての独立した医師のレビュアーによる中心化画像データ評価およびスコアリングを全ての内視鏡検査について実施した。V2における適格性を確認するために、V1中心読み取りのみをサイトに利用可能にした。中心読み取りの最終結果を研究の後に利用可能にした。
【0235】
主要評価項目の分析について、V2の中心読み取りを処置終了時(EOT)読み取りとの比較のために使用した。サイトは、画像データを中心リーダーに送信する前に画像データヘッダーから対象を識別する情報を除去した。
【0236】
研究の副次的評価項目は、患者が報告した症状(SNOT−22を含む);対象により評価される鼻詰まり/閉塞、前部鼻漏(鼻水)、後部鼻漏(後鼻漏)および嗅覚の喪失、(毎日のAMおよびPMの電子日記)月平均;夜間覚醒の回数;視覚的アナログスケール(VAS)を使用した患者に関連した鼻副鼻腔炎症状の重症度;喘息サブグループにおける5項目喘息管理調査票(ACQ−5);鼻最大吸気流量(NPIF);嗅覚検査(UPSIT);併存する喘息を有する患者におけるNPS;CTスキャン評価;肺活量測定(全体および喘息を有するサブグループ);NPSにおける最初の反応までの時間(1ポイント以上の改善);研究処置中断までの時間;およびOCSまたは鼻手術の必要性に起因する処置中断の発生における16週でのベースラインからの変化を含んだ。
【0237】
生活の質(QoL)評価項目は、36項目略式健康調査(SF36);欧州の生活の質のスケール(EQ−5D);および鼻ポリープに関連する資料を使用する調査票における16週でのベースラインからの変化を含んだ。
【0238】
疾患に特有の効能測定には:コンピューター断層撮影(CT)が含まれる。洞のCTはV2の前でEOT時に実施された。上顎洞のLund−Mackayスコアおよび3D容積測定の両方について、中心化画像データ評価のために同じ取得(シーケンス)を使用し、画像データについて独立した医師のレビュアーによってスコア付けした。V2の中心読み取りをEOTとの比較のために使用した。中心読み取りの最終結果は研究の後に利用可能にした。
【0239】
上顎洞の三次元容積測定について、V2前の中心読み取りをEOT読み取りとの比較のために使用した。サイトは画像データを中心リーダーに送信する前に画像データヘッダーから対象を識別する情報を除去した。BLからEOTの混濁の%変化を算出した。
【0240】
スクリーニング(来診1)時に、患者は朝(AM)および夜(PM)のNPIFを記録するためにNPIF測定を出した。患者は毎日の電子日記において以下の変化を記録するように指導された:MFNSを受ける前に発生(6amから10amの間)後15分以内に実施したAMのNPIF;およびMFNSを受ける前に夜(6pmから10pmの間)に実施したPMのNPIF。
【0241】
患者によって3回のNPIFの試みが実施された;3回全ての値が患者によって電子日記に記録され、最も高い値を評価のために使用した。AMのNPIFのベースラインは治験薬の最初の投薬前の28日の間に記録した平均AM測定であり、PMのNPIFのベースラインは治験薬の最初の投薬前の28日の間に記録した平均PM測定であった。
【0242】
疾患に特有の毎日の症状を評価するために、患者は:0〜3の分類したスケール(ここで、0=症状なし、1=軽度の症状、2=中程度の症状および3=重度の症状)を使用し、詰まりおよび/または閉塞、前部鼻漏(鼻水)、後部鼻漏(後鼻漏)ならびに嗅覚の喪失の症状を含めた、朝および夜の個々の鼻副鼻腔炎症状の質問に答えるために電子日記を使用した。夜間覚醒の回数もまた、記録した。
【0243】
同じ安全性評価を全ての治療群にわたって適用した。SAEおよび特に注目すべき有害事象(AESI)を含む有害事象を毎回の来診時に収集した。
【0244】
投薬前血液サンプルを、表14に指定した血清機能mAb1および抗mAb1抗体を決定するために採取した。
【0245】
別の薬理遺伝学インフォームドコンセントを必要としたDNAおよびRNAの予備分析のために任意選択のサンプリング。
【0246】
薬物動態。血清中の機能的mAb1および抗mAb1抗体をELISAによりアッセイした。来診2(1日)における血清中の投薬前機能的mAb1の濃度、2週、4週、8週、12週、16週におけるmAb1トラフ濃度、ならびに20週、24週、28週および32週における追跡血清mAb1を提供した。来診2(1日)、2週、4週、8週、12週、16週および32週における抗mAb1抗体状態(陰性または力価値)も提供した。研究の来診の終わりに1000以上のADA力価を有する患者を、ADA力価のさらなる評価のために約6ヶ月後に戻すように計画した。さらなる追跡を、抗体力価および臨床所見の全体の評価に基づいて考慮した。
【0247】
薬力学。特定のタンパク質の分泌は、少なくとも部分的にTh2サイトカインに依存し、洞組織を含む気道粘膜の慢性炎症に関連するので、特定のバイオマーカーの発現をアッセイしてmAb1の治療効果をモニターした。これらのバイオマーカーをまた、毒性を予
測する際、および/または薬物反応の時間経過を記録する際にそれらの値について評価した。ベースラインとして使用した値は1日目(投薬前評価)に収集したものである。
【0248】
両側の鼻腔内に鼻用綿棒を5分間挿入することによって鼻汁を得た。鼻茸に関連するさらなるバイオマーカーおよびmAb1処置に対する反応の可能な分析のために鼻汁を保存した。
【0249】
選択した臨床部位において、特定のインフォームドコンセントを用いて、鼻ポリープ組織を場合により生検によって得た。ベースライン生検を研究のV2時に得た。無作為化後、鼻ポリープ組織の別の生検を処置来診の終わり(16週)に得た。
【0250】
生検鼻ポリープ組織を、炎症および疾患プロセスまたは反応の様々なバイオマーカーについて評価した。例えば、RNAを抽出し、発現プロファイリング(例えば、マイクロアレイ、トランスクリプトームシークエンシングまたは定量的RT−PCRなど)のために使用した。
【0251】
DNAおよびRNAサンプルを使用して、遺伝子とmAb1による処置に対する反応との間の起こり得る関係およびmAb1に対する起こり得る副作用を決定した。
【0252】
二成分事象を有する患者の割合の分析。二成分事象を有する患者の割合を評価した:16週におけるNPSの1ポイント以上の改善(低下)(中心で読み取った);16週におけるベースラインからのCT混濁の10%もしくはそれ以上の改善;経口CSもしくは手術に起因する降下;または8週後のINCSの増加を、反応変数および処置群、プールした国/領域および共変量として研究前の層別因子として、それぞれ、上記の反応と共にロジスティックモデルを使用して分析した。
【0253】
時間−事象変化の分析。時間−事象(例えば、NPSの1ポイント以上の改善(低下)を伴う最初の反応、研究処置中断など)を、従属変数として時間−事象および処置、プールした国/領域、共変量として研究の前の喘息併存症と共にCox回帰モデルを使用して分析した。カプラン・マイヤー法を使用して、4、8、12および16週において各処置群に特有の事象を有する患者の割合を導いた。処置期間の間の分析のために、患者が処置中断/完了前に事象を有さない場合、患者は、処置期間の終わり(最後の投薬の日+7日)まで事象がないとみなされた。
【0254】
連続変数についてのベースラインからの変化の分析。併存する喘息を有する患者についてのNPS;Lund Mackayスコア;SNOT−22;対象により評価される詰まりおよび/または閉塞スコア;NPIF;併存する喘息を有する患者におけるACQ−5;QoL測定(SF36、EQ−5D)およびVASにおける16週でのベースラインからの変化を主要評価項目と同じMMRMを使用して分析した。患者の数、平均、標準誤差およびLS平均を含む記述統計を提供した。さらに、LS平均、対応する95%Clおよびp値の差異をプラセボに対する各用量の比較のために提供した。
【0255】
特徴が定義されたサブセットのベースラインバイオマーカーにおける効能の分析。処置反応を予測するためのそれらの潜在的な値についてのベースラインバイオマーカーを検査するために、NPSの変化の分析もまた、以下のサブセットおよび各投薬群による全ITT集団および選択したプールした投薬群について実施した。
【0256】
サブグループ分析。サブグループレベルにわたる処置効果の一貫性を評価し、処置反応を予測するためのそれらの潜在的値についてのベースラインバイオマーカーを検査するために、予備的なサブグループ分析を、年齢群、性別、領域、人種、INCS用量レベル、
ベースラインNPS、ベースラインCTスキャンスコア、喘息併存症および研究前に選択したバイオマーカーに対してNPSにおけるベースラインからの変化について行った。
【0257】
抗mAb1抗体結果(陰性または抗体力価)の項目を、患者、時点および処置群によって表した。ADA力価レベルをカテゴリーに分類した:低、中および高。低レベルのADA力価を1000未満の力価と定義し;中レベルのADA力価を1000から10,000の間の力価と定義し;高レベルのADA力価を10,000超の力価と定義した。
【0258】
抗mAb1抗体アッセイ結果をカテゴリー別に記載した。TEAE期間の間にいずれかの陽性ADAアッセイ反応を有した患者;およびTEAE期間の間に処置により誘導された陽性ADAアッセイ反応を有した患者について、以下の要旨を提供した。TEAE期間の間に処置により誘導された陽性ADAアッセイ反応を有した患者を、一過性陽性反応を有した患者および持続性陽性反応を有した患者とさらに記載した。TEAE期間の間、いずれかの陽性ADAアッセイ反応を有する患者を、ADAアッセイにおいて陽性である少なくとも1つのサンプルを有するものと定義した。
【0259】
処置により誘導された陽性ADAアッセイ反応を:ベースラインにおいて陽性アッセイ反応を有さないが、TEAE期間の間、陽性アッセイ反応を有する患者またはベースラインにおいて陽性ADAアッセイ反応を有し、また、TEAE期間の間、力価が少なくとも4倍増加した患者と定義した。
【0260】
持続性陽性反応は、患者由来の少なくとも2つの連続したベースライン後サンプルがADAアッセイにおいて陽性であったか、または採取した最後のベースライン後サンプルがADAアッセイにおいて陽性であった、処置により誘導された陽性ADAアッセイ反応であった。一過性陽性反応は、持続性とみなされないいずれかの処置により誘導された陽性ADAアッセイ反応と定義された。
【0261】
【表18】
【0262】
統計分析
事前に設定した一次分析を16週間の処置期間の終了時に行った。効能の分析は、研究処置を受けたことのいかんを問わず、無作為化された全ての患者と事前に定義した、包括解析(ITT)集団を使用して行った。安全性の分析は、投与した処置の量を問わず、研究対象薬物に曝露される全ての無作為化された患者と事前に定義した、安全性集団を使用して行った。
【0263】
介入期間にわたっての内視鏡的NPSの変化である主要効能変数を、反復測定による混合効果モデル(MMRM)アプローチを使用して分析した。このモデルは、16週までのベースライン値からの変化を応答変数として含み、層別変数のために組み込んだ因子を含み、ならびに処置、来診、来診と処置との相互作用、ベースラインNPS値、および来診とベースラインとの相互作用を共変量として含んだ。16週におけるNPSのベースラインからの変化についての処置比較に対する統計的推定をこのモデルから導出した。CTスキャンデータを除いて、全ての連続する副次的評価項目について、同様の分析アプローチを利用した。
【0264】
CTスキャンデータをベースラインと16週の両方で収集した。Lund−Mackay全スコア(左副鼻腔と右副鼻腔の合計)のベースラインから16週への変化を、ANCOVAモデルを使用して分析した。このモデルの因子は、処置、層別因子、およびベースライン値を共変量として含んだ。鼻ポリープ疾患に対するデュピルマブの処置効果をさらに評価するために、処置および層別変数に関する項を含むロジスティック回帰分析を使用して、応答者分析を行った。応答についての2つのカテゴリーを事前に定義した;16週においてベースラインに対して1.0単位以上または2.0単位以上のNPSの低下。
【0265】
人口統計、ベースライン特徴、および安全性変数(有害事象、バイタルサイン、身体検査、臨床検査およびECG所見を含む)に、記述統計学を使用した。二次変数および薬力学的変数のプロットを、標準誤差と共に経時的にベースラインからの平均変化またはパーセント変化として示した。MMRM分析からの処置効果の比較は、ベースラインから16週までの最小二乗平均変化(95%信頼区間[CI]およびP値)に基づいた。
【0266】
D.データ
人口統計学およびベースライン臨床特徴は、2つ群間で同様であった(表51)。16週間の処置期間を、それぞれ、プラセボ患者30人のうちの23人、およびデュピルマブ患者30人のうちの28人が完了した。プラセボ群において、患者7人のうち5人は、1つまたはそれ以上の有害事象のため、および7人のうち2人は、効能の欠如のため、研究を早期に中止した。デュピルマブ群において、患者30人のうち2人は、両方の有害事象のため処置期間を完了しなかった。
【0267】
主要評価項目。一次分析は、デュピルマブ処置群をプラセボ群と比較した。主要効能評価は、反復測定による混合効果モデル(MMRM)分析を使用する、ITT集団の両側性内視鏡的NPSの16週におけるベースラインからの変化であった。
【0268】
16週におけるベースラインからの最小二乗(LS)平均(SE)変化は、プラセボ群では−0.30(0.34)、デュピルマブ群では−1.85(0.30)であり、その結果、LS平均差は−1.55(95%CI、−2.43〜−0.67、p=0.0009)となり、デュピルマブに有利であった(表17、表52および
図2A)。事前に設定した応答者分析は、NPSの1ポイント(NPS1スコア)以上の変化が、デュピルマブを受けた患者の70%に対してプラセボを受けた患者の20%において観察され、オッズ比(OR)が9.5(95%CI、2.8〜31.8、p=0.0003)であることを
示した。プラセボを受けた患者の10%およびデュピルマブを受けた患者の53.3%において2ポイント(NPS2スコア)以上の変化が観察され、OR=10.6(2.6〜43.6、p=0.001)を得た(表19)。NPSの変化は、患者がMFNSのみを受けた16週間の経過観察期間の終了時に持続していた(表53)。
【0269】
【表19】
【0270】
両側性NPSに対するデュピルマブの効果は、4週(LS平均差−1.03;95%CI[−1.58、−1.03];p=0.004)から16週まで観察された。しかし、12週において、NPSの差に関して統計的有意性は実証されなかった(LS平均[SE]−0.30[0.34];−1.08[0.33]プラセボ対デュピルマブ;p=0.1011)(
図2)。
【0271】
両側性NPSの16週におけるベースラインからの平均変化を次のサブグループによって評価した:性別、人種、年齢、体重、以前の鼻ポリープ手術、ベースラインNPS、併存する喘息および地域(ヨーロッパおよび米国)(表18)。併存する喘息を有さない患者のサブグループを除いて、大部分のサブグループ分析にわたってデュピルマブに有利な一般範囲1でのNPSの平均減少が実証された。
【0272】
併存する喘息を有する患者に関して、16週におけるNPSの平均(SD)差は、プラセボおよびデュピルマブ処置群について、それぞれ、0.27(0.88)対−2.40(2.03)であった(表18および
図3)。併存する喘息を有さない患者に関して、NPSの平均(SD)差は、プラセボおよびデュピルマブ処置群について、それぞれ、−1.25(1.49)対−1.36(1.28)であった(表18および
図4)。
【0273】
ベースライン体重90kg未満90kg以上は、デュピルマブの処置の恩恵に影響しなかった(表18)。
【0274】
【表20】
【0275】
【表21】
【0276】
【表22】
【0277】
【表23】
【0278】
鼻ポリープ疾患に対するデュピルマブの処置効果をさらに評価するために、応答者分析を行った。応答についての2つのカテゴリーを事前に定義した;16週におけるベースラインから1.0(NPS1応答)以上のNPS低下および16週におけるベースラインからの2.0(NPS2応答)以上のNPS低下。
【0279】
【表24】
【0280】
併存する喘息を有する患者に関して、応答者分析結果は、プラセボ(10.5%)と比較して、デュピルマブ処置群での16週における統計的に有意なNPS1応答(75%)、p=0.0009、を実証した。NPS2応答もプラセボ(0)と比較してデュピルマ
ブ(56.3%)に数値的に有利であった(表20)。
【0281】
【表25】
【0282】
併存する喘息を有さない患者に関して、応答者分析は、NPS1およびNPS2応答両方(それぞれ、64.3%および50%)について同様に数値的にデュピルマブに有利であったが、プラセボ群は、それぞれ、応答者率36.4%および27.3%を示し(表21)、それ故、NPS1およびNPS2応答者の2つの処置群間の数値の差は、併存する喘息を有する患者と比較して、併存する喘息を有さない患者におけるほうが小さかった。
【0283】
【表26】
【0284】
副鼻腔評価試験(SNOT−22)
SNOT−22は、研究中、患者によって生活の質に対する鼻副鼻腔炎の影響を評価するために使用された。スコアが高いほど悪い疾患を示し;全最大スコアは110であった。結果は、16週においてデュピルマブに有利な有意差を実証した;16週におけるベースラインからのLS平均(SE)変化は、プラセボ群では−9.17(2.96)およびデュピルマブ群では−27.28(2.71)であり、その結果、LS平均差は−18.11(95%CI、−25.62〜−10.60、p<0.0001)となった(表22)。SNOT−22スコアに対するデュピルマブの効果は、4週から16週まで観察された(
図5)。
【0285】
【表27】
【0286】
患者によって報告されたさらなる結果は、患者が、鼻副鼻腔炎症状の重症度を等級付けするために使用した視覚的アナログスケール(1〜10cm)、毎日(AM/PM)の嗅覚の喪失の評点(0〜3ポイントスケール)、嗅覚検査(UPSIT)、および典型的な鼻炎症状の評点(鼻閉塞/詰まり、鼻水および後部鼻漏)(0〜3ポイントスケール)を含んだ。
【0287】
鼻副鼻腔炎症状の重症度についての視覚的アナログスケール(VAS)の結果は、16週における統計的有意性を実証した;16週におけるベースラインからのLS平均(SE)変化は、プラセボ群では−2.19(0.65)およびデュピルマブ群では−4.32(0.55)であり、その結果、LS平均差は−2.13(95%CI、−3.68〜−0.58、p=0.0082)となった(表23)。VASスコアに対するデュピルマブの効果は、4週から16週まで観察された(
図6)。
【0288】
【表28】
【0289】
嗅覚の喪失について患者によって報告された評価(毎日のAM/PM電子日記記録、およびペンシルベニア大学嗅覚識別検査(UPSIT)を使用する嗅覚検査スコア)の結果は、16週においてデュピルマブに有利な統計的有意性を実証した(表24〜26)。デュピルマブ処置治療群では、患者によって報告されたこれらの結果についてのこの研究各々の最も初期の評価時点で、より良好な嗅覚能力が実証された(
図7〜9)。朝の前部鼻漏、主観的嗅覚、夜の症状および夜間覚醒の副次的評価項目についても有意な改善が観察された(表54)。症状ベースの評価項目の変化は、16週間の経過観察期間の終了時に持続していた(表53)。
【0290】
【表29】
【0291】
【表30】
【0292】
【表31】
【0293】
鼻炎の典型的な症状(鼻閉塞/詰まり、鼻水および後部鼻漏)は患者によって毎日(AM/PM電子記録)評価された。結果は、全てのこれらの評価にわたって16週においてデュピルマブに有利な統計的有意性を実証した(表27〜32)。デュピルマブ処置治療群では患者によって報告されたこれらの結果の各々について4週から16週まで鼻副鼻腔炎症状の改善が観察された(
図10〜15)。
【0294】
【表32】
【0295】
【表33】
【0296】
【表34】
【0297】
【表35】
【0298】
【表36】
【0299】
【表37】
【0300】
鼻最大吸気流量(NPIF)をNPIFメーターで評価して、鼻腔経由の強制AM/PM吸気および呼気に対する鼻茸疾患の影響を評価した(L/分)。正常NPIFの流速は約140L/分以上であったが、非常に限定された流量は110〜120L/分の範囲であった。AM/PM NPIFの流速の結果は、16週におけるデュピルマブに有利な統計的有意性(それぞれ、p=0.0073およびp=0.0064)を実証した(表33および表34)。AM/PM NPIFに対するデュピルマブの効果は、4週から16週まで観察された(
図16および
図17)。AM NPIFの変化は、16週間の経過観察期間の終了時に持続していた(表53)。
【0301】
【表38】
【0302】
【表39】
【0303】
副鼻腔のCTスキャンを使用して、鼻茸および関連する副鼻腔の炎症を評価した。Lund−Mackay全スコアは、0〜2のスケール(0=完全透過性および2=完全不透過性;0〜24ポイント範囲)を使用して各々の副鼻腔の開存性を評価するものである。CTの結果は、16週においてデュピルマブに有利な統計的有意差を実証した;16週におけるベースラインからのLS平均(SE)変化は、プラセボ群では−0.23(0.95)およびデュピルマブ群では−9.07(0.81)であり、その結果、LS平均差は−8.84(95%CI、−11.07〜−6.61、p<0.0001)となった(表24)。
【0304】
【表40】
【0305】
薬力学的測定値は、血清総免疫グロブリンE(IgE)、胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、血漿エオタキシン−3、ならびに血中好酸球を含んだ。安全性および許容性評価は、有害事象(AE)および重篤なAE(SAE)の発生率、ならびにバイタルサイン、身体検査、臨床検査室評価および12誘導心電図(ECG)所見に基づいた。
【0306】
血清総IgE、TARCおよびエオタキシン−3のレベル(
図23A〜23D)は、デュピルマブとモメタゾンを受けた患者では減少したが、プラセボとモメタゾンを受けた患者では変化がなかった。観察されたIgE低下は、16週間の処置期間にわたって進行したが、TARCおよびエオタキシン−3レベルは、2週までに有意に減少し、処置期間を通して低下したままであった。平均末梢血好酸球レベルは、プラセボとデュピルマブの両方に関して処置期間を通して変化がなかった(
図23D)。
【0307】
ベースラインでの血清総IgEは、研究集団では、全般的に正常であったか、やや上昇した(平均、デュピルマブ群について140IU/mL対プラセボ群について195IU/mL)。総IgEは、デュピルマブでの処置中に漸進的に減少した(16週におけるベースラインからの平均パーセント変化:−48.0%デュピルマブ対+7.6%プラセボ)(
図18)。
【0308】
プラセボおよびデュピルマブについてのベースライン平均(SD)胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)レベルは、それぞれ、449.31(376.77)pg/mLおよび469.65(298)pg/mLであった。デュピルマブ処置中、血清TAR
C濃度は、4週までに減少し、16週まで抑制されたままであった(4週でのベースラインからの平均パーセント変化:−26.5%デュピルマブ対+5.0プラセボ、および16週では:−23.0%デュピルマブ対−2.5%プラセボ)(
図19)。
【0309】
鼻汁(生理食塩水溶出物)中のTh2バイオマーカーは、デュピルマブ(DPL)処置後、プラセボ(PBO)処置後に対して有意(または境界が有意に)に低く、次の通りであった(ベースラインからの平均%変化):8週(−32.4 DPL対+74.4 PBO p=0.017)から16週(−38.5 DPL対+183.0 PBO p=0.040)までのエオタキシン−3、12週(−2.5 DPL対+102.6 PBO p=0.055)および16週(+7.2 DPL対+120.2 PBO p=0.072)におけるECP、ならびに8週(−15.7 DPL対+60.1 PBO p=0.043)から16週(−15.9 DPL対+43.8 PBO p=0.025)までの総IgE(それぞれ、
図24A、24Cおよび24D)。平均血清ECPは、平均NS ECPとは異なり、デュピルマブ処置中に減少を示さなかった。デュピルマブ後、血中好酸球数(Eos)の一時的な増加(ベースラインからの平均パーセント変化)(W4:+49 DPL対+0.2 PBO)があり、この増加は処置中に解消された(W16:−5.8 DPL対+3.8 PBO)(
図23D)。16週における鼻汁バイオマーカーのベースラインからの平均絶対変化を下の表56に示す。
【0310】
試験評価項目を表52にまとめた。
【0311】
AE報告の評価、身体検査所見、ECGおよび臨床試験結果によって、安全性を評価した。
【0312】
プラセボ群での患者30人のうちの25人と比較して、デュピルマブ処置群では患者30人のうち29人が治療下で発生した有害事象(TETA)を報告し、デュピルマブ患者2人およびプラセボ患者4人がそれぞれ重篤なTEAEを報告した。処置期間中に死亡した患者はいなかった。デュピルマブ群の患者1人およびプラセボ群の患者5人は、TEAEのため処置を中止した(表36)。
【0313】
【表41】
【0314】
罹患頻度が最も高かった器官別大分類(SOC)は:感染症および寄生虫症(プラセボでは56.7%およびデュピルマブでは70.0%);一般・全身障害および投与部位の状態(プラセボでは6.7%およびデュピルマブでは43.3%);呼吸器、胸郭および縦隔障害(プラセボでは33.3%およびデュピルマブでは43.3%);神経系障害(プラセボでは20.0%およびデュピルマブでは36.7%);胃腸障害(プラセボおよびデュピルマブでは各々20.0%);ならびに骨格筋系および結合組織障害(プラセボでは3.3%およびデュピルマブでは26.7%)であった(表37)。
【0315】
【表42】
【0316】
【表43】
【0317】
【表44】
【0318】
【表45】
【0319】
報告頻度が最も高かったTEAEは、上咽頭炎(プラセボでは10(33.3%)およびデュピルマブでは11(36.7%))および頭痛(プラセボでは5(16.7%)およびデュピルマブでは6(20.0%))であり、これらは両方とも2処置群間でバランスがとれていたが、注射部位反応は、圧倒的にデュピルマブ群に関して報告された(プラセボ群では2(6.7%)およびデュピルマブ群では12(40.0%))。加えて、患者2人が、各々、注射および穿刺部位痛をそれぞれ報告した(全体として6.7%)。同様にプラセボ群でよりデュピルマブでのほうが高いパーセンテージで報告された、他の報告頻度が高かったTEAEは、中咽頭痛(プラセボ群では2(6.7%)およびデュピルマブ群では7(23.3%))、鼻血(プラセボ群では2(6.7%)およびデュピルマブ群では6(20.0%))、および上気道感染症および背部痛(両方とも、プラセボ群では0およびデュピルマブ群では3(10.0%))であった。プラセボ群の患者によってまたは全体として患者2もしくは3人によって、より高頻度に報告された事象が、ほんの少数あった。TEAEの大部分は、プラセボ群でもデュピルマブ群でもたった1人の患者によってしか報告されなかった。
【0320】
プラセボ群の患者4人およびデュピルマブ群の患者2人は重篤なTEAEを報告した。TEAEのパターンはなかった。処置期間中に死亡した患者はいなかった。患者1人は、大動脈の動脈瘤破裂(非TEAE)のためスクリーニング中に死亡したが、研究対象薬物を受けていなかった(表38)。
【0321】
【表46】
【0322】
【表47】
【0323】
患者合計6人(プラセボ群の5人およびデュピルマブ群の1人)がTEAEのために研究を中止した。プラセボ患者2人によって報告された喘息を除いて、他の全ての語は、1回しか報告されなかった(表39)。
【0324】
【表48】
【0325】
【表49】
【0326】
特に注目すべき有害事象(AESI)は、次のように定義した:ALT増加;緊急処置を必要とするアナフィラキシー反応および急性アレルギー反応;24時間より長く続く重度の注射部位反応;寄生虫感染症を含む重症感染症;妊娠;および過量投薬(表40)。
【0327】
【表50】
【0328】
臨床的に有意である可能性がある異常の基準を満たした臨床検査値が、ほんの少数あった。2処置群間でのバランスはとれていたが、より多数の患者が好塩基球および好酸球数の上昇について記録した(表41〜46)。
【0329】
【表51】
【0330】
【表52】
【0331】
【表53】
【0332】
【表54】
【0333】
【表55】
【0334】
【表56】
【0335】
バイタルサイン、ECGおよび医師の所見のいずれに関しても、処置群間に臨床的に意義のある差はなかった(表47、表48および
図20)。
【0336】
【表57】
【0337】
【表58】
【0338】
【表59】
【0339】
ベースラインで抗薬物抗体(ADA)結果を入手できた患者に関して、プラセボおよびデュピルマブ処置群のそれぞれ7/28人および7/30人は、既存のADA力価を有した。デュピルマブ群の患者1人を除いて、既存ADA力価は、処置期間中に増加されなかった(表49)。
【0340】
【表60】
【0341】
研究処置期間中、プラセボを用いた患者3人、およびデュピルマブを用いた患者2人は、それぞれ、陽性の治療下で発生したADA力価を有した。デュピルマブで処置した患者1人は、一時的にADA陽性であり、8週間後、陰性ADA力価を有した。プラセボ患者は、30〜60の範囲の低い力価を有したのに対して、デュピルマブで処置した患者の力価は、480から1920に及んだ(表50)。
【0342】
【表61】
【0343】
【表62】
【0344】
この研究は中間解析期で進行中であったのでADA反応に関して明確な結論を出すことができなかった。ADA反応の最終評価は、この研究の終わりに行うことになる。
【0345】
D.結果の概要
ベースライン特徴は、群間で同様であった。NPSの最小二乗(LS)平均変化は、プラセボ/モメタゾン群で−0.30であり、デュピルマブ/モメタゾン群で−1.85であった(LS平均差(95%CI)−1.55;p=0.0009)。デュピルマブに有利な有意な変化は、Lund−Mackay CTスコア(差−8.84;p<0.0001)、罹病した上顎洞容積のパーセント(差−32.24;p<0.0001)、SNOT−22(差−18.1;p<0.0001)、嗅覚、および他の全ての副次的評価項目についても観察された。喘息を有する患者(n=16)に関して、デュピルマブは、予測FEV1%を向上させ(7.2%増加、p=0.04)、喘息管理を改善した(ACQ5の1.1単位低下;p<0.0001)。注射部位反応、頭痛および上咽頭炎は、デュピルマブに関して報告頻度が最も高かった有害事象であった。
【0346】
鼻内コルチコステロイドが効かない患者に関して、デュピルマブの追加は、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎(CSwNP)の内視鏡検査評価項目、X線検査評価項目および臨床評価項目を改善した上に、併存する喘息を有する患者の肺機能および疾患管理も改善した。
【0347】
デュピルマブは、鼻茸と副鼻腔炎の慢性症状とを有する患者に関する概念実証に肯定的な結果をもたらした。CSwNPに関しては、NASONEX(登録商標)に加えたときにプラセボに対してデュピルマブ300mg QWの強い効能が観察された。迅速で臨床的に有意な鼻茸サイズ縮小が観察された。CTスキャンによる副鼻腔炎の測定値、鼻の空気流量、および患者によって報告された症状の一貫した改善が観察された。
【0348】
報告頻度が最も高かったTEAEは、上咽頭炎、頭痛および注射部位反応であり、注射部位反応は、デュピルマブ処置群でのほうが報告頻度が高かった。プラセボ群と比較してデュピルマブ処置群でのほうが同様に報告頻度が高かった、報告頻度が高かった他のTEAEは、中咽頭痛、鼻血、上気道感染症および背部痛であった。他の臨床的に意義のある安全性所見も、処置群間の安全性パラメーターの差もなかった。
【0349】
治療下で発生した抗薬物抗体反応の低い発生率がデュピルマブおよびプラセボ両方の処置群で観察された。この研究は中間解析期で進行中であったのでADA反応に関して明確な結論を出さなかった。ADA反応の最終評価は、この研究の終わりに行うことになる。
【0350】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な改変が上記説明および添付の図面から当業者には明らかとなる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0351】
【表63】
【0352】
【表64】
【0353】
【表65】
【0354】
【表66】
【0355】
併存する喘息を有するおよび有さない患者における評価項目。
併存する喘息を有する患者のサブセットにおいて、デュピルマブでの処置は、肺機能(
図22A)および喘息管理(
図22B)の改善に関連しており、FEV1(%)の処置群間LS平均差は7.2%(95%CI、0.4〜13.9、p=0.04)であり、ACQ−5の減少は、プラセボ群では0.3(0.3)単位およびデュピルマブ群では1.4(0.4)単位であり、結果としてACQスコアのLS平均差は−1.1単位(95%CI、−1.5〜−0.6、p<0.0001)になった。加えて、このサブグループにおいて、ベースラインから16週の間の両側性内視鏡的鼻ポリープスコアの平均変化は、プラセボ群では0.3(0.9)およびデュピルマブ群では−2.4(2.0)であり、その結果、LS平均差は、デュピルマブに有利な−2.3(95%CI、−3.4〜−1.2、p=0.0002)になった。喘息を有する患者は、デュピルマブ/MFNSを用いてUPSIT、SNOT−22、および詰まりの症状の改善も経験した(表55)。
【0356】
NPSの1ポイント以上の変化がデュピルマブを受けた患者の75%に対してプラセボを受けた患者の10.5%において観察され、オッズ比(OR)は26.1(95%CI、3.8〜179.3、p=0.0009)であった。2ポイント以上の変化はプラセボを受けたいずれの患者においても観察されず、デュピルマブを受けた患者の56.3%に
おいて観察された。
【0357】
喘息を有さない患者におけるデュピルマブ/MFNSの効果の分析は、内視鏡的NPSに関してプラセボに対するデュピルマブの有意な効果を明示しなかった。しかし、UPSIT、SNOT−22、詰まりの症状、および他の臨床およびX線検査評価項目に対するデュピルマブの効果がこのサブグループにおいて観察された(表55)。
【0358】
【表67】
【0359】
【表68】
【0360】
安全性
有害事象は、プラセボ群の患者30人のうちの25人、およびデュピルマブ群の30人のうちの29人によって報告された(表37)。注射部位反応(ISR)、頭痛、および上咽頭炎は、全研究集団にわたって最も高頻度の有害事象であり、ISRは、デュピルマブ処置に関してより高頻度に見られた。これらの事象は、一般に、非特異的であり、軽度から中等度の強度であった。
【0361】
患者6人は、重篤な有害事象を有した:プラセボ群の4人(子宮がん、一過性脳虚血発作、喘息および鼻ポリープ)およびデュピルマブの2人(患者1人の帯状疱疹、ならびに他の患者の不整脈および上肢痛/しびれ);治験責任医師によって研究対象薬物に関係するとみなされた重篤な有害事象はなかった。デュピルマブ群の患者1人も経験した(便秘)が、プラセボ群の患者5人は、研究対象薬物の中止に至る有害事象(中耳炎、気管支炎、過敏症、頭痛、高血圧、喘息および腹部痛)を経験した。バイタルサインまたは身体検査、臨床検査室検査もしくはECGに関する所見の臨床的に有意な変化は、どちらの群でも報告されなかった。
【0362】
積極的処置期間中の死亡はなく;研究処置に無作為化する前のスクリーニング期間中に大動脈瘤破裂で死亡した患者が1人いた。
【0363】
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を有する患者へのデュピルマブの投与によって、内視鏡検査、臨床、X線検査および薬力学的評価項目の迅速で有意な改善が観察された。これは、この疾患の発病および臨床症状に関するIL−4およびIL−13の重要な役割を示す。CSwNPに関する結果に対するデュピルマブの有意な効能が、共存する喘息を有する患者のサブセットに限定した分析でも観察され;これらの患者は、肺機能および喘息管理の改善(重要な喘息の結果)をさらに経験した。これらのデータは、IL−4およびIL−13媒介シグナル伝達経路の減弱が、複数の併発Th−2媒介疾患を有する患者において広範な治療効果を有することができることを示す。
【0364】
他のアプローチと比較して、デュピルマブ処置は、長い期間にわたって、全身性グルココルチコイドで観察された臨床的改善を超える持続的臨床的改善をもたらした。さらに、この試験では、デュピルマブまたはプラセボをCSwNPおよび喘息の現行標準治療に加えた
3。現行の標準治療に加えたとき、デュピルマブ処置は、複数の臨床的に関連のあるCSwNPおよび喘息パラメーターの広範で有意な改善に関連した。
【0365】
血清IgE、エオタキシン−3およびTARCを含むTh2炎症のバイオマーカーのレベルはデュピルマブを用いると減少し、これは、臨床的改善と相関し、これらの経路の多くで薬物の生物学的活性を確認した。この試験において、喘息の診断も報告したCSwNPを有した患者は、概して、肺機能障害、最適以下の疾患管理を示し、成人発症性のものである疾患を有した。CSwNPと喘息の両方を有する患者で観察された臨床的利点は、患者の少なくとも1つのサブセットにおいて、Th2関連炎症経路の共通のセットが喘息とCSwNP間で共有されるようであることを例証し、これらの経路を標的にすることによって両方の疾患の臨床的改善に至ることができることを実証した。
【0366】
要約すると、この実施例は、鼻内コルチコステロイドが効かないCSwNPを有する患者において、デュピルマブでの処置が疾患の内視鏡検査、X線検査および臨床測定値の改善に関連したことを明らかにする。デュピルマブの効能は、併存する喘息を有する患者において増大され、これらの患者は、肺機能および疾患管理の同時改善も経験した。さらなる研究を行って、複数の併発アトピー性疾患を有する患者においてIL−4およびIL−13を標的にすることの影響を完全に解明することにする。