【解決手段】互いに平行に部材厚み方向に離間し、対向して配置される一対のプレキャストコンクリートパネル部材を有し、当該一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に経時性硬化材料を充填して構成される壁体構造であって、前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間を互いに直接的に連結する手段を備えず、前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材には、高さ方向に延伸する複数の主鉄筋と、前記主鉄筋に直交し内部において長手方向に延伸する複数の配力鉄筋と、前記主鉄筋又は前記配力鉄筋を取り込むように固定される複数のループ状筋と、が設けられ、前記ループ状筋は前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に向かって突出して設けられる。
互いに平行に部材厚み方向に離間し、対向して配置される一対のプレキャストコンクリートパネル部材を有し、当該一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に経時性硬化材料を充填して構成される壁体構造であって、
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間を互いに直接的に連結する手段を備えず、
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材には、当該プレキャストコンクリートパネル部材の内部において高さ方向に延伸する複数の主鉄筋と、前記主鉄筋に直交し当該プレキャストコンクリートパネル部材の内部において長手方向に延伸する複数の配力鉄筋と、前記主鉄筋又は前記配力鉄筋を取り込むように固定される複数のループ状筋と、が設けられ、
前記ループ状筋は前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に向かって突出して設けられることを特徴とする、壁体構造。
前記補助鉄筋は、前記ループ状筋を構成する略環状又は環状の鉄筋が構成する平面内を通過するように、当該ループ状筋に沿って設けられることを特徴とする、請求項7に記載の壁体構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の壁構造においては、2枚の対向するプレキャストコンクリートパネル(第1のパネル、第2のパネル)を連結部材により連結させて壁構造を構築している。特許文献1の構築技術では、プレキャスト部材の数量を削減し、構築時の労力や工期を削減させることができる一方で、連結部材として鋼板や拡径部分のある鉄筋などを用いており、プレキャスト部材同士の連結効率には更なる向上の余地がある。即ち、2枚のプレキャストコンクリートパネルは共にプレキャスト部材であり、その内部構造(鉄筋構造等)はなるべく煩雑化したくないが、特許文献1のような連結部材を用いると、部材内部の配筋構成が煩雑化する恐れがあるため、より鉄筋量が少なく、構造が平易な配筋構成のプレキャスト部材が望まれているのが実情である。加えて、特許文献1に記載されたような、連結部材による機械的な連結方法では、施工性が悪く、高い精度が求められるため製造コストの増大が懸念される。特に、カルバート構造物を構成する壁構造を構築する場合、対向する2枚のパネル間の空間は、施工時に閉塞された状態であることが多く、当該空間内における鉄筋の構成はなるべく平易にすることが望まれる。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の壁面ブロックにおいては、第1壁面パネルと第2壁面パネルを直接的に連結させる結合部材が、壁面の上下2ヶ所に間隔をおいて設けられている。しかしながら、特許文献2のように結合部材を設けた技術では、部材構成の煩雑化や、部材重量の増加が懸念され、より部材構成や鉄筋の配筋構成が平易な技術が望まれる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、プレキャスト部材を用い、現場での施工性を向上させ、省人化や省力化を図ることが可能な構成の壁体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、互いに平行に部材厚み方向に離間し、対向して配置される一対のプレキャストコンクリートパネル部材を有し、当該一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に経時性硬化材料を充填して構成される壁体構造であって、前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間を互いに直接的に連結する手段を備えず、前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材には、当該プレキャストコンクリートパネル部材の内部において高さ方向に延伸する複数の主鉄筋と、前記主鉄筋に直交し当該プレキャストコンクリートパネル部材の内部において長手方向に延伸する複数の配力鉄筋と、前記主鉄筋又は前記配力鉄筋を取り込むように固定される複数のループ状筋と、が設けられ、前記ループ状筋は前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間に向かって突出して設けられることを特徴とする、壁体構造が提供される。
【0010】
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間において、一方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、他方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、は、前記ループ状筋の構成する平面に対し直交する方向において交互に設けられても良い。
【0011】
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間において、一方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、他方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、は、壁体厚み方向に所定の長さ重なるように設けられても良い。
【0012】
前記ループ状筋は略環状又は環状に構成される鉄筋であり、当該ループ状筋は、略環状又は環状の鉄筋が構成する平面が壁体長手方向に直交するように設けられても良い。
【0013】
前記ループ状筋は略環状又は環状に構成される鉄筋であり、当該ループ状筋は、略環状又は環状の鉄筋が構成する平面が壁体長手方向と平行になるように設けられても良い。
【0014】
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間において、一方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、他方のプレキャストコンクリートパネル部材から突出する前記ループ状筋と、は、隣接するループ状筋の少なくとも一部が壁体長手方向において近接配置されても良い。
【0015】
前記一対のプレキャストコンクリートパネル部材間の空間において、前記ループ状筋を構成する略環状又は環状の鉄筋が構成する平面に直交するように、直線状の補助鉄筋が設けられても良い。
【0016】
前記補助鉄筋は、前記ループ状筋を構成する略環状又は環状の鉄筋が構成する平面内を通過するように、当該ループ状筋に沿って設けられても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プレキャスト部材を用い、現場での施工性を向上させ、省人化や省力化を図ることが可能な構成の壁体構造が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書においては、カルバート構造物1の構造やその側壁(コンクリート壁)に注視して図示し、当該カルバート構造物1が設置される地盤等については、説明や図示の簡略化のために省略する場合がある。また、説明のために部材内部の鉄筋構造等を図示している場合がある。
【0020】
(本発明の実施の形態に係るカルバート構造物の構成)
図1は本発明の実施の形態に係るカルバート構造物1の概略説明図である。また、
図2はカルバート構造物1の概略正面図である。
図1、2に示したカルバート構造物1は、図示しない幹線道路や鉄道用に設けられるトンネル等の坑口に設置される矩形カルバート状の中空構造物(いわゆるボックスカルバート)であり、その内部には、例えば自動車や鉄道車両等が通過するための経路(図示せず)が敷設される。以下では、カルバート構造物1の内部空間が延伸する方向を長手方向とし、カルバート構造物1の敷設面に平行且つ上記長手方向に直交する方向を壁体厚み方向(即ち、カルバート構造物幅方向)とし、カルバート構造物1が敷設された状態の鉛直方向を高さ方向として説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係るカルバート構造物1は、地盤に敷設される床板3と、床板3の上面両端において地盤に対し鉛直方向に構築される一対の壁体構造である側壁5(5a、5b)と、天井面である頂版10からなる。なお、対向する一対の側壁5(5a、5b)は、後述するように複数のパネル部材等から構成され、その詳細な構成については図面を参照して後述する。
【0022】
ここで、床板3や頂版10は、公知の現場打ち工法によって構築されても良く、あるいは、プレキャストにより構築しても良い。一方で、側壁5(5a、5b)は、側壁厚み方向において対向する一対(2枚)のパネル部材を立設させ、これら対向するパネル間の空間にコンクリート等の経時性硬化材料を打設することで構成される。以下では、この側壁5(5a、5b)の構成について説明する。
【0023】
(側壁の構成)
図3は、側壁5の概略説明図であり、対向する一対の側壁5a、5bのうちの一方(ここでは5bとする)を上面から見た概略平面断面図(
図2におけるA−A断面図)である。また、
図4は当該側壁5bを斜め上方から見た概略俯瞰図であり、側壁5bの一部を図示したものである。また、
図5は当該側壁5bの概略正面断面図である。なお、
図3〜
図5において、各図に共通する構成要素については同一の符号を付して図示しているが、一部構成要素については煩雑化を避けるため図示しない場合がある。また、
図3〜5に示した鉄筋の構成は一例であり、これらの配置や本数等は任意に設計可能である。
【0024】
図3〜
図5に示すように、側壁5bは互いに平行であり、部材の厚み方向に離間・対向して配置される2枚のプレキャストコンクリートパネル部材20、21を有している。以下、これらを第1パネル部材20、第2パネル部材21とも記載する。側壁5bの構築時には、図示のように、第1パネル部材20と第2パネル部材21との間の空間25に例えばコンクリート、モルタル、グラウト等の経時性硬化材料Uが打設される。
【0025】
また、プレキャスト部材である第1パネル部材20及び第2パネル部材21の内部には、当該パネル部材20、21の上下方向(高さ方向)に延伸する複数の主鉄筋30と、主鉄筋30に直交し当該パネル部材20、21の長手方向に延伸する複数の配力鉄筋35が設けられている。また、第1パネル部材20及び第2パネル部材21には、その内部において上記主鉄筋30又は配力鉄筋35に巻き付くように固定され、一部が空間25に向けて突出する複数のループ状筋40が設けられている。
【0026】
ループ状筋40は、上記主鉄筋30又は配力鉄筋35を取り込むように略環状あるいは環状に構成される鉄筋であり、空間25方向に突出したその先端形状は例えば円弧状に形成される。本実施の形態に係る構成では、略環状あるいは環状の鉄筋で構成される平面が、側壁5bの長手方向に対し直交するようにループ状筋40が設けられる。また、ループ状筋40は、複数の主鉄筋30又は配力鉄筋35を取り込むような構成であり、例えば、隣接する2本の主鉄筋30を取り込むように設けられても良く、あるいは、隣接する2本の配力鉄筋35を取り込むように設けられても良い。
【0027】
また、ループ状筋40は、対向する第1パネル部材20と第2パネル部材21の両方に設けられ、本明細書では、第1パネル部材20から突出するものをループ状筋40a、第2パネル部材21から突出するものをループ状筋40bとする。これらループ状筋40a、40bは、
図3に示すように、空間25内において、側壁5bの長手方向に交互に配置される。
【0028】
また、カルバート構造物1の長手方向におけるループ状筋40a、40bの離間距離は任意に設計され、ループ状筋40a、40bの空間25における突出長さも任意に設計される。例えば、
図3に示すように、側壁5bの平面図において所定の長さL1だけ離間するようにループ状筋40a、40bが設けられても良く、また、例えば
図4、
図5に示すように、ループ状筋40aとループ状筋40bは、側壁5bの正面図において所定の長さL2だけ重なるような突出長さに設計されても良い。ここで、ループ状筋(40a、40b)同士の正面視での重なり長さL2は、第1パネル部材20と第2パネル部材21との離間距離に応じて定めれば良く、当該離間距離が大きい場合には、側壁5bの厚み方向中央部のせん断負荷が大きいため、上記長さL2をループ状筋径の2倍以上とすることが好ましい。即ち、上記長さL2の下限値が例えばループ状筋径の2倍以上であっても良く、上限値が第1パネル部材20と第2パネル部材21の離間距離であっても良い。
【0029】
なお、
図3、
図5に示すように、側壁5bの構築時に、空間25に現場打ちによって経時性硬化材料Uを打設する際に、ループ状筋40の直交する方向に延伸する、直線状の補助鉄筋42(
図4には図示せず)を設けても良い。この補助鉄筋42を設ける位置は任意であるが、側壁5やカルバート構造物1の耐力向上といった観点から、図示のようにループ状筋40aと40bが重なる領域に複数本設けられることが好ましい。また、より好ましくは、補助鉄筋42を並列的に並ぶループ状筋40に沿って設けられることが望ましい。
【0030】
以上、
図3〜
図5を参照して側壁5bを構成する第1パネル部材20及び第2パネル部材21や、そこから突出するループ状筋40の構成について説明したが、このような構成は側壁5aについても同様に適用される。カルバート構造物1の設置時には、このような側壁5(5a、5b)を、プレキャスト部材である第1パネル部材20及び第2パネル部材21を用い、かつ、経時性硬化材料Uを現場打ちすることで構築し、
図1、
図2に示すように床板3及び頂板10を設けることで最終的な構造物を設置している。
【0031】
(作用効果)
以上、
図1〜
図5を参照して説明したように構成される側壁5ならびに当該側壁5を備えたカルバート構造物1では、側壁5を構成する第1パネル部材20及び第2パネル部材21をプレキャスト部材とし、これら第1パネル部材20及び第2パネル部材21から空間25に対して突出するループ状筋40を設けた構成としている。このような構成によれば、側壁5構築時に第1パネル部材20と第2パネル部材21を機械的に接続しておらず、直接的な連結手段を設けていない。このため、現場での施工性が向上し、省人化、省力化や工期短縮を図ることが可能となる。
【0032】
また、従来のカルバート構造物1の側壁構造では、直筋(直線状の鉄筋)を連結部材として用いたいわゆる重ね継手構造などを用いてパネル同士を連結させるといった構成を採っていた(例えば特許文献1参照)。これに対し、本実施の形態に係るループ状筋40を用いた構成では、ループ状筋40は直筋に比べ面内方向に対する撓みや変形に強いといった特性があるため、構造物の耐力向上が実現される。更には、1本の直筋は自重による撓みや変形等が起こりやすく、接触時の変形に対する抵抗性も低いため、当該直筋の固定には慎重な取り扱いを求められることが多い。これに対し、ループ状筋40は上記の通り撓みや変形に強いため、施工時の位置固定がしやすいといった特徴があり、施工時の精度向上が実現される。
【0033】
また、本実施の形態に係るループ状筋40を用いた側壁構成によれば、ループ形状の鉄筋に囲まれた領域内におけるコアコンクリートの圧縮ストラットによる抵抗が付加されるため、対向する1対のパネル(第1パネル部材20、第2パネル部材21)の高い一体性が保持される。
【0034】
また、
図4、
図5に図示したように、ループ状筋40の形状(略環状)は壁体厚み方向と高さ方向に加え、斜め方向に延伸する鉄筋を有するような形状であり、ジベル筋とせん断補強筋を兼ねるような鉄筋構造であるため、それぞれの方向ごとに鉄筋を設ける構造に比べ、鉄筋量の削減が図られ、コストの低減が実現される。
【0035】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0036】
上記実施の形態においては、
図3〜
図5を参照して側壁5を構成する第1パネル部材20及び第2パネル部材21に設けられる種々の鉄筋構造について説明したが、上記形態は一例であり、特に鉄筋の形状や配筋構成はこれに限られるものではない。そこで、以下では本発明の変形例について図面を参照して説明する。なお、以下では、上記実施の形態と同様、側壁5bを例に挙げて図示・説明するが、当然、側壁5aについても同様の構成を有する。
【0037】
(本発明の第1の変形例)
図6は本発明の第1の変形例に係る側壁5bの概略説明図であり、(a)は概略平面断面図、(b)は概略正面断面図である。なお、
図6では、上記実施の形態において
図1〜
図5を参照して説明した各部材等と共通の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する場合がある。
【0038】
上記実施の形態においては、略環状あるいは環状の鉄筋で構成される平面が、側壁5bの長手方向に対し直交するようにループ状筋40が設けられるものとして説明したが、
図6に示す本変形例のように、略環状あるいは環状の鉄筋で構成される平面が、側壁5bの長手方向に平行となるようにループ状筋40が設けられても良い。
【0039】
図6に示すように、本変形例に係るループ状筋40は、側壁5bの平面視において略環状あるいは環状となるように構成される。この場合、上記実施の形態で説明した補助鉄筋42の構成も異なり、主鉄筋30と平行となるような補助鉄筋42aが設けられても良い。また、本変形例において、壁体長手方向に隣接するループ状筋40a(あるいは40b)同士の離間距離L3は任意に設計可能である。
【0040】
本発明の第1の変形例によれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、ループ状筋40が地盤と平行になるような平面を形成するような構成となっているため、横揺れに対する構造物の耐力向上が図られる。
【0041】
(本発明の第2の変形例)
また、
図7は本発明の第2の変形例に係る側壁5bの概略説明図であり、(a)は概略平面断面図、(b)は概略正面断面図である。なお、
図7では、上記実施の形態において
図1〜
図5を参照して説明した各部材等と共通の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する場合がある。
【0042】
上記実施の形態においては、ループ状筋40aとループ状筋40bが、所定の長さL2だけ重なるような突出長さに設計された構成を図示し説明した(
図3〜
図5参照)が、本発明の構成はこれに限られるものではない。即ち、
図7に示す本変形例のように、第1パネル部材20から突出するループ状筋40aと、第2パネル部材21から突出するループ状筋40bとが、互いに重ならないような突出長さに構成されても良い。
【0043】
図7に示すように、本変形例に係るループ状筋40a、40bは空間25における突出長さが上記実施の形態に比べ短く構成されており、対向するループ状筋40aとループ状筋40bとが重ならないように構成される。第1パネル部材20と第2パネル部材21との離間距離が小さい場合には、コストや施工性改善を重視し、対向するループ状筋40aとループ状筋40bとが重ならないように構成することが有効である。このような構成によれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、より鉄筋の配筋構成を平易となり施工性の向上が図られる。
【0044】
(本変形例の第3の変形例)
また、
図8は本発明の第3の変形例に係る側壁5bの概略説明図であり、(a)は概略平面断面図、(b)は概略正面断面図である。なお、
図8では、上記実施の形態において
図1〜
図5を参照して説明した各部材等と共通の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する場合がある。
【0045】
上記実施の形態においては、複数のループ状筋40(40a、40b)は、空間25における突出長さがすべて同じ長さである場合を図示し説明した(
図3〜
図5参照)が、本発明の構成はこれに限られるものではない。即ち、
図8に示す本変形例のように、第1パネル部材20から突出するループ状筋40aと、第2パネル部材21から突出するループ状筋40bとが重なるような突出長さのものと、重ならない突出長さのものと、が混在するような構成でも良い。また、各ループ状筋40の突出長さは、側壁5bの長手方向と高さ方向の両方に関し任意であり、ランダムに突出長さの異なるループ状筋40が設けられても良い。
【0046】
このような構成によれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、複数のループ状筋40が、突出長さの異なる構成となっているため、ループ状筋40が一列に揃っている場合に比べて応力が集中しにくい。即ち、側壁5bの一部に応力が集中すると、ひび割れ等の原因となるため、ループ状筋40の突出長さをランダムとすることで応力を分散させることができ、ひび割れ等を防止することができる。
【0047】
(本発明の第4の変形例)
また、
図9は本発明の第4の変形例に係る側壁5bの概略説明図であり、(a)は概略平面断面図、(b)は概略正面断面図である。なお、
図9では、上記実施の形態において
図1〜
図5を参照して説明した各部材等と共通の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する場合がある。
【0048】
上記実施の形態においては、複数のループ状筋40(40a、40b)は互いに所定の距離(例えば離間距離L1)だけ離間して設けられるものとして図示し説明したが、本発明の構成はこれに限られるものではない。即ち、複数のループ状筋40の少なくとも一部において、隣接するループ状筋40同士が近接するように設けられても良い。例えば、
図9に示すように、対向する2本のループ状筋40a、40bが近接配置され、それら2本でいわゆるループ継手構造を構成しても良い。
【0049】
ループ継手構造とは、
図9のように、空間25に対向する2本のループ状筋40a、40bが近接配置され、その状態で例えばコンクリート等の経時性硬化材料Uが打設されることで、2本のループ状筋40aと40bが連結された場合と同等の接合強度を有する構造である。ここで、ループ継手構造を構成する近接配置とは、隣接するループ状筋40同士の距離を、最小離間距離として略密着距離、最大離間距離として正面視での重なり長さL2の2割以下、又は、150mm以下とすることが好ましい。
【0050】
このような構成によれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、対向するループ状筋40aと40bとの間の接合強度が高まる。これにより、第1パネル部材20と第2パネル部材21との接合強度も高まることになり、結果として側壁5b全体の構造物としての耐力向上が実現される。
【0051】
(本発明の第5の変形例)
上記実施の形態において、ループ状筋40(40a、40b)は略環状あるいは環状の鉄筋で構成される旨、説明しており、その形状は任意に設計可能である。
図10は本発明の第5の変形例に係る概略説明図であり、ループ状筋40の種々の形状を示した概略図である。なお、ここではループ状筋40の形状に注視し拡大して図示説明するため、側壁5やパネル部材20、21といった他の部材についてはその一部のみを図示し、必要に応じて図示を省略する場合がある。
【0052】
図10(a)に示すように、ループ状筋40は隣接する2本の配力鉄筋35を取り込むように環状に形成され、当該配力鉄筋35に隣接し直交するように主鉄筋30が位置するような配置構成でも良い。また、
図10(b)に示すように、ループ状筋40が隣接する2本の配力鉄筋35を取り込むように略環状に形成され、その略環状の一部が欠落したように構成されても良い。この時、図示のように、略環状の欠落部分において、鉄筋端部45がパネル部材側方(空間25側)に突出するような構成でも良い。
【0053】
また、ループ状筋40は必ずしもパネル部材20に対し直交するように突出する必要はなく、例えば、
図10(c)に示すように、ループ状筋40がパネル部材20に対し、側壁正面視、あるいは平面視で所定の角度だけ傾斜して突出するような構成でも良い。このような構成によれば、斜めに配筋されたループ状筋40の鉄筋がいわゆるせん断補強筋として機能するため側壁5のせん断力に対する抵抗力が向上する。
【0054】
以上、本発明に係る第1〜第5の変形例について図面を参照して説明したが、本発明に係る鉄筋の構成や数は図示のものに限定されない。特に、主鉄筋30、配力鉄筋35、補助鉄筋42といった鉄筋について図面等では簡略化して図示しているが、その配置や本数は任意に設計可能である。また、上記実施の形態ならびに第1〜第5の変形例に係る構成のループ状筋40を組み合わせて用いても良い。例えば、ループ状筋40の構成する平面が、上記実施の形態で説明した壁体長手方向に直交するように設けられる構成と、上記第1の変形例で説明した壁体長手方向に平行に設けられる構成と、を交互に組み合わせるといったことも考えられる。