【解決手段】互いに市松状に配置された第1の木製パネル6Aと、第2の木製パネル6Bと、第3の木製パネル6Cとを備える。さらに、第1の木製パネル6Aの左隅角部の一辺と、該左隅角部に対向配置される第2の木製パネル6Bの右隅角部の一辺とに跨がってピン止め固定される第1の金具10Lと、第1のパネルの右隅角部の一辺と、該右隅角部に対向配置される第3の木製パネル6Cの左隅角部の一辺とに跨がってピン止め固定される第2の金具10Rと、を備える。
前記第1の木製パネル、前記第2の木製パネル、及び前記第3の木製パネルは、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の木製パネル間の接合構造。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<接合構造の概略>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明に係る接合構造を適用した建物1の正面図、
図1(b)は本発明に係る接合構造の概念を説明する図である。
図1(a)に示す建物1は、土台(横架材)3と2階の床4との間に構築された壁5に特徴を有している。この壁5は、複数枚の木製パネル6を市松状に接合することにより美観を向上させ、且つ左右方向に隣り合う木製パネル6同士の間に開口部(空間)SPを形成して採光性を向上させている。
【0010】
図1(b)を参照し、壁5で採用した木製パネル6同士の接合構造について説明する。
この接合構造は、上辺又は下辺に左右2つの隅角部UL6A又はDL6A、UR6A又はDR6Aを有した第1の木製パネル6Aと、第1の木製パネル6Aの左下(又は左上)の隅角部DL6Aの一辺に対して、右上(又は右下)の隅角部UR6Bの一辺を対向させた状態で配置される第2の木製パネル6Bと、第1の木製パネル6Aの右下(又は右上)の隅角部DR6Aの一辺に対して、左上(又は左下)の隅角部UL6Cの一辺を対向させた状態で、第2の木製パネル6Bの横方向位置に配置される第3の木製パネル6Cと、第2の木製パネル6Bと第3の木製パネル6Cとの間に形成される開口部SPと、第1の木製パネル6Aの左下隅角部DL6Aの一辺(例えば下面)と該左下隅角部に対向配置される第2の木製パネル6Bの右上隅角部UR6Bの一辺(例えば上面)とに跨がり、ピン13(例えばドリフトピン)によってピン止め固定される第1の金具10Lと、第1の木製パネル6Aの右下隅角部DR6Aの一辺(例えば下面)と該右下隅角部に対向配置される第3の木製パネル6Cの左上隅角部UL6Cの一辺(例えば上面)とに跨がり、ピン13によってピン止め固定される第2の金具10Rと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
以上の構成を有した接続構造では、各木製パネル6A、6B、6Cの各隅角部DL6AとUR6B、DR6AとUL6C同士を接合して市松状に構成することにより美観を向上させても、各金具10L、10Rによって必要な接合強度が得られる。
また、各金具10L、10Rをピン13によってピン止め固定しているため、接合部分に対して過剰に大きな外力が加わったとしても、各木製パネル6A、6B、6Cの隅角部が破損する前にピン13が先行して屈曲することにより、隅角部DL6A、UR6B、DR6A、UL6C、及びその他の部位の破損を防止できる。さらに、各金具10L、10Rとピン13の組み合わせによって隅角部毎に接合強度を調整できる。
従って、複数枚の木製パネル6(6A乃至6C)を市松状に配置して接合用の金具10、ピン13(接合金物)で組み合わせることができ、その結果、採光性や美観を有しつつ、耐震性を備えた壁5(複数枚の木製パネル6を接合したユニット)を構成することができる。
【0012】
<建物1について>
図1に示す建物1は、所定の横方向間隔を隔てて配置された複数の基礎2の上に跨がって土台3を形成し、2階部分にはCLTによって構成した床4(以下、CLT床4という)を設け、土台3とCLT床4との間に壁5を設けている。この建物1では、壁5によって建物1に掛かる鉛直荷重、または水平荷重、もしくは両者を負担している。
建物1における一部の壁5は、CLTによって作製された四辺形の木製パネル6(CLTブロック)を市松状に3段積層することによって作製されており、複数枚の木製パネル6を市松状に接合することによって美観を向上させ、且つ同じ高さ位置に配置された木製パネル6同士を左右方向に離隔させることによって開口部SPを形成して採光性を向上させている。壁5において、出入口となる開口部SPには開閉扉7を設置し、他の開口部SPの一部には窓ガラス8を設置している。
この壁5は、鉛直荷重、または水平荷重、もしくは両者を負担しているため、木製パネル6同士の接合箇所には十分な強度が必要である。そこで、本実施形態では、一つの木製パネル6の隅角部と、この木製パネル6の斜め上方、或いは斜め下方に隣接配置された他の木製パネル6の隅角部とを、接合金具10(狭幅接合金具10A、広幅接合金具10B、
図4を参照)、およびピン13によって接合している。以下、接合構造について説明する。
【0013】
<接合構造について>
図2は第1実施形態の接合構造を説明する図であり、
図1で説明した壁5の一部分を示している。
図2に示す壁5は、木製パネル6を市松状に3段積層し、斜め上下位置関係で隣接して対向配置(接触、又は近接)された一方の木製パネル6の隅角部と他方の木製パネル6の隅角部とを接合金具10によって接合している。
図2に示す壁5に関し、便宜上、上段左側の木製パネル6のことを上段左パネル61、上段右側の木製パネル6のことを上段右パネル62、中段左側の木製パネル6のことを中段左パネル63、中段中央の木製パネル6のことを中段中パネル64、中段右側の木製パネル6のことを中段右パネル65、下段左側の木製パネル6のことを下段左パネル66、及び下段右側の木製パネル6のことを下段右パネル67という。
この壁5において、例えば、上段左パネル61の左下隅角部DL61と中段左パネル63の右上隅角部UR63とが接合金具10によって接合されている。同様に、上段左パネル61の右下隅角部DR61と中段中パネル64の左上隅角部UL64とが接合金具10によって接合されている。
【0014】
上段左パネル61は、正面視で横長長方形状をしており、CLT床4の下面左側に対して1個の壁床せん断金具21と2個の壁床引張引張金具22によって接合されている。壁床せん断金具21は、上段左パネル61の上面における左右中央に取り付けられており、壁床引張引張金具22は、上段左パネル61の上面における左側と右側のそれぞれに取り付けられる。
上段右パネル62は、CLT床4の下面右側に接合されており、左横に配置された上段左パネル61との間には開口部SPが形成されている。上段右パネル62は、正面視で横長長方形状をしており、本実施形態では上段左パネル61と同じ寸法である。上段右パネル62は、CLT床4に対して1個の壁床せん断金具21と2個の壁床引張引張金具22によって接合されている。壁床せん断金具21は、上段右パネル62の上面における左右中央に取り付けられ、壁床引張引張金具22は、上段右パネル62の上面における左側と右側のそれぞれに取り付けられる。
【0015】
中段左パネル63は、正面視で縦長長方形状をしており、上段左パネル61の左下方に配置されている。中段左パネル63の右上隅角部UR63の上面は、上段左パネル61の左下隅角部DL61の下面に対向しており、中段左パネル63の右上隅角部UR63と上段左パネル61の左下隅角部DL61とが接合金具10、及びピン13によって接合されている。
中段左パネル63の右下方には下段左パネル66が配置されており、中段左パネル63の右下隅角部DR63の下面は、下段左パネル66の左上隅角部UL66の上面に対向している。そして、中段左パネル63の右下隅角部DR63と下段左パネル66の左上隅角部UR66とが接合金具10、及びピン13によって接合されている。
【0016】
中段中パネル64は、正面視で横長長方形状をしており、本実施形態では上段左パネル61と同じ寸法である。中段中パネル64の左上方には上段左パネル61が、中段中パネル64の右上方には上段右パネル62が、中段中パネル64の左下方には下段左パネル66が、中段中パネル64の右下方には下段右パネル67が、それぞれ配置されている。そして、中段中パネル64の左上隅角部UL64と上段左パネル61の右下隅角部DR61、中段中パネル64の右上隅角部UR64と上段右パネル62の左下隅角部DL62、中段中パネル64の左下隅角部DL64と下段左パネル66の右上隅角部UR66、及び中段中パネル64の右下隅角部DR64と下段右パネル67の左上隅角部UL67が、それぞれ接合金具10、及びピン13によって接合されている。
中段右パネル65は、正面視で縦長長方形状をしており、本実施形態では中段左パネル63と同じ寸法である。中段右パネル65は、上段右パネル62の右下方に配置されており、左上隅角部UL65の上面は上段右パネル62の右下隅角部DR62の下面に対向している。中段右パネル65の左下方には下段右パネル67が配置されており、中段右パネル65の左下隅角部DL65の下面は下段右パネル67の右上隅角部UR67の上面に対向している。そして、中段右パネル65の左上隅角部UL65と上段右パネル62の右下隅角部DR62とが接合金具10、及びピン13によって接合され、中段右パネル65の左下隅角部DL65と下段右パネル67の右上隅角部UR67とが接合金具10、及びピン13によって接合されている。
【0017】
下段左パネル66は、正面視で横長長方形状をしており、本実施形態では上段左パネル61と同じ寸法である。前述したように、下段左パネル66の左上隅角部UL66は中段左パネル63の右下隅角部DR63に対して接合金具10、及びピン13によって接合され、下段左パネル66の右上隅角部UR66は中段中パネル64の左下隅角部DL64に対して接合金具10、及びピン13によって接合されている。
また、下段左パネル66は、土台3(
図1参照)に対して1個の壁基礎せん断金具23と2個の壁基礎引張金具24によって接合されている。壁基礎せん断金具23は、下段左パネル66の下面における左右中央に取り付けられ、壁基礎引張金具24は、下段左パネル66の下面における左側と右側のそれぞれに1個ずつ取り付けられている。
下段右パネル67は、正面視で横長長方形状をしており、本実施形態では上段左パネル61と同じ寸法である。前述したように、下段右パネル67の左上隅角部UL67は中段中パネル64の右下隅角部DR64に対して接合金具10、及びピン13によって接合され、下段右パネル67の右上隅角部UR67は中段右パネル65の左下隅角部DL65に対して接合金具10、及びピン13によって接合されている。下段右パネル67は、土台3に対して1個の壁基礎せん断金具23と2個の壁基礎引張金具24によって接合されている。壁基礎せん断金具23は、下段右パネル67下面の左右中央に取り付けられ、壁基礎引張金具24は、下段右パネル67の下面における左側と右側のそれぞれに1個ずつ取り付けられている。
【0018】
<木製パネル6について>
次に、木製パネル6について説明する。
図3は、木製パネル6の一例を示す図であり、具体的には中段中パネル64を説明する正面図、左側面図、及び平面図である。上述した各木製パネル6において、材質や板厚、隅角部に設けられた接合金具10の取り付け部は共通であるため、中段中パネル64を例に挙げて説明する。
中段中パネル64は、正面から見て横長長方形状をした木製のパネルであり、例えば幅W64が1400mm、高さH64が1000mm、厚さt64が150mmのCLTによって作製されている。中段中パネル64が備えた4つの隅角部(左上隅角部UL64、右上隅角部UR64、左下隅角部DL64、右下隅角部DR64)には、接合金具10の一部分が挿入され、且つ挿入された接合金具10をピン止め固定するための固定手段6aが設けられている。
この固定手段6aは、中段中パネル64の側端面であって厚さ方向の略中間位置に設けられた溝部6bと、中段中パネル64の厚さ方向を貫通する複数のピン挿入孔6cと、を有している。溝部6bは、例えば幅W6bが400mm、高さH6bが250mm、間隔s6bが8mm又は11mmであり、ピン挿入孔6cは、例えば直径12mm、幅方向ピッチpt1が50mm、高さ方向ピッチpt2が75mmであり、千鳥状に設けられている。
なお、木製パネル6の縦横サイズ(W64、H64)はこの例に限定されず、適宜変更することができる。また厚さ(t64)も適宜変更できる。例えば、厚さt64が90mm乃至210mmの範囲のCLTを使用することができる。また、固定手段6aは、4つの隅角部の全てに設けずに一部の隅角部に設けてもよい。
【0019】
<接合金具10について>
次に接合金具10について説明する。
図4(a)は狭幅接合金具10Aを説明する図、
図4(b)は広幅接合金具10Rを説明する図、
図5はピン13を説明する図である。後述する様に、狭幅接合金具10Aと広幅接合金具10Bとは、第1板状部10aと第2板状部10bの重なり部分である連結部10cの幅が異なっており、広幅接合金具10Bの方が狭幅接合金具10Aよりも連結部10cの幅が広くなっている。
【0020】
図4(a)に示す狭幅接合金具10Aは、一方の木製パネル6が備えた隅角部の溝部6b内に挿入される第1板状部10aと、他方の木製パネル6が備えた隅角部の溝部6b内に挿入される第2板状部10bと、第1板状部10aと第2板状部10bとを連結する連結部10cと、を有した板状部材であり、例えば厚さ9mmの金属板(鋼板)によって作製されている。狭幅接合金具10Aは、第1板状部10aと第2板状部10bとが、連結部10cを間に配して左右逆方向へ突出した略S字型、或いは略Z型を成している。
第1板状部10aは、各隅角部分を円弧状に丸めた横長の長方形状をしており、複数の小孔10dが形成されている。本実施形態の第1板状部10aは、例えば縦H10aが225mm、横W10aが340mmである。第1板状部10aの各小孔10dは円形であり、木製パネル6の隅角部(固定手段6a)に形成されたピン挿入孔6cと直径、及び配置が同じである。従って、第1板状部10aを木製パネル6の溝部6b内に挿入し、第1板状部10aの各小孔10dを各ピン挿入孔6cと位置を合わせた後、
図5に示すピン13(ドリフトピン)を各ピン挿入孔6c、及び各小孔10dに挿通することにより、第1板状部10aを木製パネル6の隅角部(溝部6b)に対してピン止め固定できる。本実施形態において、ピン13は、鋼製の円柱状部材であり、直径12mm、長さ135mmであるが、この構成に限定されない。
【0021】
第2板状部10bは、各隅角部分を円弧状に丸めた横長の長方形状をしており、複数の小孔10dが形成されている。本実施形態の第2板状部10bは第1板状部10aと同じ寸法に作製され、且つ各小孔10dの配列も第1板状部10aと同じである。従って、第2板状部10bもまた、第1板状部10aと同じ手順によって木製パネル6の隅角部(溝部6b)に対してピン止め固定できる。
連結部10cは、第1板状部10aと第2板状部10bとの間に位置し、第1板状部10a、及び第2板状部10bと連続した横長の領域である。本実施形態の連結部10cは、例えば縦H10cが60mm、横W10cが90mmである。従って、狭幅接合金具10Aにおいて、第1板状部10aと第2板状部10bとは左右方向に位置をずらして連結されており、左右方向の重なり部分が90mmである。
【0022】
図4(b)に示す広幅接合金具10Bは、基本的な構成が狭幅接合金具10Aと共通している。例えば、広幅接合金具10Bは、一方の木製パネル6が備えた隅角部の溝部6b内に挿入される第1板状部10aと、他方の木製パネル6が備えた隅角部の溝部6b内に挿入される第2板状部10bと、第1板状部10aと第2板状部10bとを連結する連結部10cと、を有した板状部材であり、例えば厚さ6mmの鋼板によって作製されている。
本実施形態の第2板状部10bは、例えば縦H10bが225mm、横W10aが375mmである。第2板状部10bの各小孔10dは、木製パネル6の隅角部に形成されたピン挿入孔6cと直径、及び配置が同じである。
第2板状部10bは、隅部分を円弧状に丸めた横長の長方形状をしており、複数の小孔10dが形成されている。本実施形態の第2板状部10bは第1板状部10aと同じ寸法に作製され、且つ各小孔10dの配列も第1板状部10aと同じである。従って、第2板状部10bもまた、第1板状部10aと同じ手順によって木製パネル6の隅角部にピン止め固定できる。
連結部10cは、第1板状部10aと第2板状部10bとの間に位置し、第1板状部10a、及び第2板状部10bと連続した横長の領域である。本実施形態の連結部10cは、例えば縦H10cが60mm、横W10cが240mmである。従って、広幅接合金具10Bにおいて、第1板状部10aと第2板状部10bとは左右方向に位置をずらして連結されており、240mmの範囲が左右方向に重なっている。従って、広幅接合金具10Bもまた、第1板状部10aと第2板状部10bとが略S字型、或いは略Z型を成している。
【0023】
各接合金具10A、10Bに関し、連結部10cの横幅W10cは、木製パネル6の大きさや必要な接合強度に応じて定めることができる。また、接合金具10は、狭幅接合金具10Aや広幅接合金具10Bとは異なる形状であってもよい。例えば、接合金具10は、上述の厚さに限定されない。さらに、接合金具10の材質は、鋼板以外の金属材料を用いてもよい。
【0024】
<接合構造のまとめ>
以上の構成を有する接合構造によれば、各木製パネル6を市松状に配置して隅角部同士を接合金具10によって組み合わせることにより、採光性や美観を有しつつ、耐震性を備えた壁5を構成できる。
また、各接合金具10をピン止めしているため、接合部分に対して過剰に大きな外力が加わったとしても、各木製パネル6の隅角部が破損する前にピン13を屈曲させることにより、各木製パネル6の隅角部の破損を有効に防止できる。
加えて、木製パネル6よりも高い強度のピン13を、各木製パネル6の厚さ方向に挿入しているため、各木製パネル6の接合部分において面外方向の過度な撓みを抑制することができ、接合部分は面外方向について一定の強度を有する。
さらに、接合金具10の材質や厚さ、連結部10cの形状(縦横の大きさ)、ピン13(ピン挿入孔6c、各板状部10a、10bの小孔10d)の太さ、ピン13の本数、及びピン13の配置を適宜定めることによって、木製パネル6同士の接合強度を調整することができる。
その結果、複数枚の木製パネル6の隅角部同士を接合して作製した壁5(構面)であっても、局所的に接合強度が低い脆弱部をなくすことができる。従って、木製パネル6の隅角部同士を接合した壁5であっても、全体を木製パネル6で作製した壁と同等の強度を得ることができる。
【0025】
<接合構造の強度試験>
次に、上述した接合構造の強度を確認するために行った強度試験について説明する。
強度試験は、
図6に示す第1の試験体100と、
図9に示す第2の試験体200のそれぞれに対して行った。後述するように、第1の試験体100は、2枚の小パネル110(110L,110R)と1枚の大パネル120とを
図4(a)で説明した狭幅接合金具10Aによって接合したものであり、第2の試験体200は、2枚の小パネル210(210L,210R)と1枚の大パネル220とを
図4(b)で説明した広幅接合金具10Bによって接合したものである。
【0026】
<第1の試験体100について>
図6は第1の試験体100を説明する図、
図7(a)は第1の試験体100に使用する小パネル110を説明する図、
図7(b)は第1の試験体100に使用する大パネル120を説明する図、
図8は第1の試験体100による荷重試験結果を示す図である。
図6に示す第1の試験体100は、1枚の大パネル120と、大パネル120の左側面下部に右側面上部が対向配置された左小パネル110Lと、大パネル120の右側面下部に左側面上部が対向配置された右小パネル110Rと、大パネル120と左小パネル110Lとをピン止め固定する左接合金具130と、大パネル120と右小パネル110Rとをピン止め固定する右接合金具140と、を備えている。
第1の試験体100における左接合金具130、及び右接合金具140の向きは、
図1(b)の接合構造における第1の金具10L、及び第2の金具10Rとは異なっている。具体的には、第1の試験体100において、左接合金具130、及び右接合金具140は、第1板状部10aと第2板状部10bとが上下方向にずれているのに対し、
図1(b)の接合構造において、第1の金具10L、及び第2の金具10Rは、第1板状部10aと第2板状部10bとが左右方向にずれている点が異なっている。
これは、強度試験で使用する載荷装置が上下方向に荷重を加える仕様になっており、せん断方向の強度を試験するためには、各接合金具130、140取り付け方向を変更する必要があったためである。
【0027】
図7(a)に示すように、小パネル110(左小パネル110L、右小パネル110R)は、幅W110が600mm、高さH110が800mm、厚さt110が150mmの縦長長方形をしたCLTによって作製されている。小パネル110の上右隅角部UR110には、狭幅接合金具10A(左接合金具130、右接合金具140)の一部分(第2板状部10b)が挿入され、且つ挿入された狭幅接合金具10Aをピン止め固定するための固定手段6aが設けられている。
この小パネル110は、左小パネル110Lと右小パネル110Rの何れにも使用できる。例えば、小パネル110を左小パネル110Lとして使用する時には
図7(a)の向きで使用すればよく、小パネル110を左小パネル110Lとして使用する時には、
図7(a)の向きから表と裏を反転させ、固定手段6aが小パネル110の上左隅角部に配置される向きで使用すればよい。
固定手段6aは、小パネル110の側端面であって厚さ方向の中間位置に設けられた溝部6bと、小パネル110の厚さ方向を貫通する複数のピン挿入孔6cと、を有している。溝部6bは、幅W6bが285mm、高さH6bが397.5mm、間隔t6bが11mmであり、ピン挿入孔6cは、直径12mm、幅方向ピッチ50mm、高さ方向ピッチ75mmであり、千鳥状に設けられている。
【0028】
図7(b)に示すように、大パネル120は、幅W120が1400mm、高さH120が800mm、厚さt120が150mmの横長長方形をしたCLTによって作製されている。大パネル120の下左隅角部DL120、及び下右隅角部DR120には、狭幅接合金具10A(左接合金具130、右接合金具140)の一部分(第1板状部10a)が挿入され、且つ挿入された狭幅接合金具10Aをピン止め固定するための固定手段6aが設けられている。
固定手段6aは、大パネル120の側端面であって厚さ方向の中間位置に設けられた溝部6bと、木製パネル6の厚さ方向を貫通する複数のピン挿入孔6cと、を有している。溝部6bは、幅W6bが285mm、高さH6bが397.5mm、厚さt6bが11mmであり、ピン挿入孔6cは、直径12mm、幅方向ピッチ50mm、高さ方向ピッチ75mmであり、千鳥状に設けられている。
【0029】
図6に示すように、第1の試験体100は、幅W100が2600mm、高さH100が1450mm、厚さt100が150mmである。
従って、大パネル120の左下側面と左小パネル110Lの右上側面とを上下方向に150mm重ねて対向配置し、左接合金具130(狭幅接合金具10A)とピン13とによって各パネル110、120をピン止め固定している。同様に、大パネル120の右下側面と右小パネル110Rの左上側面とを上下方向に150mm重ねて対向配置し、右接合金具140(狭幅接合金具10A)とピン13とによって各パネル110、120をピン止め固定している。
載荷装置を用いた強度試験では第1の試験体100を4個作製し、当該試験を4回行った。強度試験では、大パネル120の上片と下辺とを一対の金属プレート(図示せず)とボルトとによってクランプし、載荷装置のアクチュエータによって大パネル120に対して上向きの荷重(引張荷重)を加えた。引張荷重の単位時間あたりの変化量は、静的荷重と見なせる程度の小さなものとした。
【0030】
試験結果を
図8に示す。
図8の縦軸は引張荷重(kN)、横軸は第1の試験体100の変形量(mm)、言い換えれば大パネル120の各小パネル110L、110Rに対する相対変位量である。
図8において、バツ印を付した線は1個目の第1の試験体100の試験結果を示し、三角印を付した線は2個目の第1の試験体100の試験結果を示している。同様に、四角印を付した線は3個目の第1の試験体100の試験結果を示し、菱形印を付した線は4個目の第1の試験体100の試験結果を示している。
【0031】
各第1の試験体100において、引張荷重に対する変形量のバラツキは小さくほぼ同じである。このことから、接合部分の強度バラツキが生じやすい木製パネル6(CLT製のパネル)を用いても、接合部分の強度が揃えられることが判る。
【0032】
<第2の試験体200について>
図9は第2の試験体200を説明する図、
図10(a)は第2の試験体200に使用する小パネル210を説明する図、
図10(b)は第2の試験体200に使用する大パネル220を説明する図、
図11は第2の試験体200による荷重試験結果を示す図である。
図9に示す第2の試験体200もまた、第1の試験体100と同様に1枚の大パネル220と、左小パネル210Lと、右小パネル210Rと、左接合金具230と、右接合金具240と、を備えている。
第2の試験体200の第1の試験体100との違いは、左接合金具230、及び右接合金具240として、
図4(b)の広幅接合金具10Bを用いていること、第2の試験体200の高さH200が1300mmであること(大パネル220と各小パネル210とを上下方向に300mm重ねて対向配置していること)、
図10に示すように、固定手段6aの溝部6bが、幅285mm、高さ435mm、間隔9mmであることにある。第2の試験体200において、他の構成は第1の試験体100と同じであるため、説明は省略する。
【0033】
試験結果を
図11に示す。
図11の縦軸は引張荷重(kN)、横軸は第2の試験体200の変形量(相対変位量、mm)である。
図11において、バツ印を付した線は1個目の第2の試験体200の試験結果を示し、三角印を付した線は2個目の第2の試験体200の試験結果を示している。同様に、四角印を付した線は3個目の第2の試験体200の試験結果を示し、菱形印を付した線は4個目の第2の試験体200の試験結果を示している。
【0034】
図11の試験結果に示すように、各第2の試験体200において、引張荷重に対する変形量のバラツキは小さくほぼ同じである。このことから、接合部分の強度を調整できることが判る。
さらに、第2の試験体200の試験結果を第1の試験体100の試験結果と比較すると、引張荷重と変形量の関係はほぼ同様であることが判る。このことから、接合金具10の形状(連結部10cの幅や接合金具10の厚さ)を変更することにより、接合構造の強度を調整できることが判る。
【0035】
<壁5の強度試験>
次に、壁5(構面)の強度試験について説明する。前述の強度試験では、接合構造を対象にした局所的な強度を対象にしていたのに対し、この強度試験では壁5を対象にした全体的な強度を対象にしている。
この強度試験は、
図12に示す第3の試験体300、
図14に示す第4の試験体400、
図15に示す第5の試験体500、
図16に示す第6の試験体600のそれぞれに対して行った。
【0036】
図12に示す第3の試験体300は、2枚の上段パネル361、362と、3枚の中段パネル363乃至365と、2枚の下段パネル366、367とを
図4(a)で説明した狭幅接合金具10Aによって市松状に接合したものであり、
図14に示す第4の試験体400は、2枚の上段パネル461、462と、3枚の中段パネル463乃至465と、2枚の下段パネル466、467とを
図4(b)で説明した広幅接合金具10Bによって市松状に接合したものである。
図15に示す第5の試験体500は、3枚の上段パネル561乃至563と2枚の下段パネル564及び565とを狭幅接合金具10A、及び広幅接合金具10Bによって接合したものであり、
図16に示す第6の試験体600は従来の方法によって3枚の木製パネル661乃至663を接合したものである。
【0037】
<第3の試験体300について>
図12は第3の試験体300を説明する図、
図13は第3の試験体300を取り付けた載荷装置700を示す図、
図17は、第3の試験体300乃至第6の試験体600による荷重試験結果をまとめた図である。なお、
図17は、後述する第4の試験体400乃至第6の試験体600の説明でも参照する。
図12に示す第3の試験体300は、
図2で説明した壁5と同様に、木製パネル6を市松状に3段積層し、上側に位置する木製パネル6の隅角部の下辺と下側に位置する木製パネル6の隅角部の上片とを対向させて、両隅角部を接合金具10(狭幅接合金具10A)によって接合(ピン止め固定)している。
第3の試験体300に関し、便宜上、上段左側の木製パネル6のことを上段左パネル361といい、上段右側の木製パネル6のことを上段右パネル362といい、中段左側の木製パネル6のことを中段左パネル363といい、中段中央の木製パネル6のことを中段中パネル364といい、中段右側の木製パネル6のことを中段右パネル365といい、下段左側の木製パネル6のことを下段左パネル366といい、下段右側の木製パネル6のことを下段右パネル367という。
【0038】
上段左パネル361は、正面視で横長長方形状をしており、幅1400mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。上段左パネル361の下左隅角部、及び下右隅角部には、固定手段6a(溝部6b、ピン挿入孔6c、
図3参照)が設けられており、溝部6bには狭幅接合金具10Aの第1板状部10aが挿入され、ピン挿入孔6cにピン13(ドリフトピン)を挿入することにより、溝部6b内の第1板状部10aをピン止め固定する。溝部6bは、幅397.5mm、高さ285mm、厚さ11mmであり、ピン挿入孔6cは、直径12mm、幅方向ピッチ50mm、高さ方向ピッチ75mmであって千鳥状に設けられている。
上段左パネル361は、CLT床340の左下面に対して2個の壁床せん断金具321と4本の壁床引張引張金具322によって接合されている。壁床せん断金具321は、上段左パネル361の上面における左右中央側に取り付けられ、壁床引張引張金具322は、壁床せん断金具21よりも左側と右側のそれぞれに2本ずつ取り付けられている。
上段右パネル362は、上段左パネル361と同じ構造であり、寸法も同じであるため、説明は省略する。上段右パネル362はCLT床4の右下面に1個の壁床せん断金具21と4本の壁床引張引張金具322によって接合されており、上段右パネル362と上段左パネル361との間には開口部SPが形成されている。壁床せん断金具321は、上段右パネル362の上面における左右中央側に取り付けられ、壁床引張引張金具322は、壁床せん断金具321よりも左側と右側のそれぞれに2本ずつ取り付けられる。
【0039】
中段左パネル363は、正面視で縦長長方形状をしており、幅500mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。中段左パネル363の上部と下部のそれぞれには固定手段6aが設けられている。上部の固定手段6aの溝部6bには狭幅接合金具10Aの第2板状部10bが挿入され、下部の固定手段6aの溝部6bには狭幅接合金具10Aの第1板状部10aが挿入され、それぞれピン止め固定される。これらの固定手段6aは、上段左パネル361が備えた固定手段6aと同じ構成であるため、説明は省略する。
中段中パネル364は、正面視で横長長方形状をしており、幅1100mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。中段中パネル364の4つの隅角部のそれぞれには固定手段6aが設けられている。上部の2つの固定手段6aには狭幅接合金具10Aの第2板状部10bが挿入され、下部の2つの固定手段6aには狭幅接合金具10Aの第1板状部10aが挿入され、それぞれピン止め固定される。
中段右パネル365は、正面視で縦長長方形状をしており、本実施形態では中段左パネル363と同じものを表と裏とを反転させて使用している。このため、説明は省略する。
【0040】
下段左パネル366は、正面視で横長長方形状をしており、幅1400mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。下段左パネル366の上左隅角部、及び上右隅角部には固定手段6aが設けられており、溝部6bには狭幅接合金具10Aの第2板状部10bが挿入され、ピン挿入孔6cにはピン13が挿入される。固定手段6aは、上段左パネル361が備えた固定手段6aと同じ構成であるため、説明は省略する。
下段左パネル366は、土台330に対して1個の壁基礎せん断金具323と4本の壁基礎引張金具324とによって接合されている。下段左パネル366の下左隅部と下右隅部には、2本の壁基礎引張金具324を取り付けるための切り欠きが設けられている。
下段右パネル367は、下段左パネル366と同じものを用いている。このため、説明は省略する。下段右パネル367は、土台330に対して1個の壁基礎せん断金具323と4本の壁基礎引張金具324によって接合されている。
【0041】
図13に示すように、第3の試験体300を載荷試験装置700に取り付けて面内壁せん断試験を行った。面内壁せん断試験では正負交番繰り返し1回載荷とし、変位スケジュール(変形角=変形量/試験体高さ)を1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50、1/30、引き切りとした。
すなわち、面内壁せん断試験では、アクチュエータ710によって試験体の上部(CLT床340)を右方向へ引いた後、左方向へ押す操作を、変位スケジュールで指定した変形角毎に行った。例えば、第3の試験体300の変形角が1/450になるまでCLT床340を右方向へ引いた後、変形角が−1/450になるまでCLT床340を左方向へ押した。次に、変形角が1/300となるまでCLT床340を右方向へ引いた後、変形角が−1/300になるまでCLT床340を左方向へ押した。このような操作を、上述の変位スケジュールに従って行った。
【0042】
図17中の丸印を付した線分は、第3の試験体300による試験結果を示す。第3の試験体300では、右方向に400kN(+400kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が60mm(+60mm)になり、左方向に400kN(−400kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が60mm(−60mm)になった。
【0043】
<第4の試験体400について>
図14は第4の試験体400を説明する図である。
図14に示す第4の試験体400は第3の試験体300と基本的な構成が同じであり、上段左パネル461、上段右パネル462、中段左パネル463、中段中パネル464、中段右パネル465、下段左パネル466、及び下段右パネル467を備えている。
第4の試験体400は、第3の試験体300と比較して次の点が相違している。第1に、第4の試験体400では、対向する隅角部同士を広幅接合金具10Bによって接合している点、固定手段6aが備えた溝部6bの幅が435mm、高さが285mm、間隔が9mmである点、及び中段中パネル464の幅が1400mmである点が第3の試験体300と相違している。第4の試験体400における他の構成は、第3の試験体300と同じである。例えば、CLT床440、壁床せん断金具421、壁床引張引張金具422、土台430、壁基礎せん断金具423、及び壁基礎引張金具424は、それぞれ第3の試験体300におけるCLT床340、壁床せん断金具321、壁床引張引張金具322、土台330、壁基礎せん断金具323、及び壁基礎引張金具324に対応している。このため、説明は省略する。
第4の試験体400に対しても、第3の試験体300と同じ内容の面内壁せん断試験を行った。
図17中のバツ印を付した線分は、第4の試験体400による試験結果を示す。第4の試験体400では、右方向に480kN(+480kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が60mm(+60mm)になり、左方向に480kN(−480kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が60mm(−60mm)になった。
【0044】
<第5の試験体500について>
図17は第5の試験体500を説明する図である。
図17に示す第5の試験体500は、大きさが異なる複数種類の木製パネル6を用いることにより、隣り合うパネル同士の間に形成した各開口部SPの大きさを異ならせており、且つ
図4(a)に示す広幅接合金具10A、及び
図4(b)に示す広幅接合金具10Bの両方を用いて、各木製パネル6を接合している点が第3の試験体300、及び第4の試験体400と相違している。
第5の試験体500では、上段と下段のそれぞれに木製パネル6が3枚ずつ配置されており、一部の木製パネル6については隅角部同士が対向配置されて固定手段6a(溝部6b、ピン挿入孔6c)によって接合されている。
便宜上、以下の説明では、上段側に位置する3枚の木製パネル6を左端から右側に向けて上第1パネル561、上第2パネル562、及び上第3パネル563といい、下段側に位置する3枚の木製パネル6を左端から右側に向けて下第1パネル564、下第2パネル565、及び下第3パネル566という。
【0045】
上第1パネル561は、正面視で縦長長方形状をしており、幅500mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。上第1パネル561は、CLT床540の左下面に対して2本の壁床引張引張金具522によって接合されている。2本の壁床引張引張金具522は上第1パネル561の上面における左右中央と右側に取り付けられる。
上第1パネル561の下面には、固定手段6aが設けられており、溝部6bには広幅接合金具10Bの第1板状部10aが挿入され、挿入された第1板状部10aはピン止め固定されている。溝部6bは、幅397.5mm、高さ285mm、間隔9mmであり、ピン挿入孔6cは、直径12mm、幅方向ピッチ50mm、高さ方向ピッチ75mmであって千鳥状に設けられている。
【0046】
上第2パネル562は、正面視で横長長方形状をしており、幅1950mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。
上第2パネル562の下左隅角部DL562には固定手段6aが設けられており、溝部6bには広幅接合金具10Bの第1板状部10aが挿入され、挿入された第1板状部10aはピン止め固定されている。溝部6bは、上第1パネル561の下面に設けられた溝部6bと同じものであるため、説明は省略する。
上第2パネル562の下右隅角部DR562にも固定手段6aが設けられており、溝部6bには狭幅接合金具10Aの第1板状部10aが挿入され、挿入された第1板状部10aはピン止め固定されている。溝部6bは、幅435mm、高さ285mm、間隔11mmであり、ピン挿入孔6cは、直径12mm、幅方向ピッチ50mm、高さ方向ピッチ75mmであって千鳥状に設けられている。
上第2パネル562は、CLT床540の中央左側の下面に対して3個の壁床せん断金具521と4本の壁床引張引張金具522によって接合されている。壁床せん断金具521は、上第2パネル562の上面の左右中央側に取り付けられており、壁床引張引張金具522は、上第2パネル562の上面における壁床せん断金具521よりも左側と右側のそれぞれに2本ずつ取り付けられる。
【0047】
上第3パネル563は、正面視で縦長長方形状をしており、幅450mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。上第3パネル563は、CLT床4の右下面に対して2本の壁床引張引張金具522によって接合されている。壁床引張引張金具522は、上段右パネル564上面の左側と右側のそれぞれに取り付けられる。
【0048】
下第1パネル564は、正面視で縦長長方形状をしており、幅1500mm、高さ2000mm、厚さ150mmである。下第1パネル564の上左隅角部UL564、及び上右隅角部UR564には、それぞれ固定手段6aが設けられており、溝部6bには広幅接合金具10Bの第2板状部10bが挿入され、且つ挿入された第2板状部10bはピン止め固定されている。下第1パネル564は、土台530に対して1個の壁基礎せん断金具523と4本の壁基礎引張金具524によって接合されている。また、下第1パネル564の下左隅部と下右隅部には、2本の壁基礎引張金具524を取り付けるための切り欠きが設けられている。
【0049】
下第2パネル565は、正面視で横長長方形状をしており、幅1500mm、高さ1000mm、厚さ150mmである。下第2パネル565は、下第1パネル564と下第3パネル566との間に取付金具525を介して取り付けられている。取付金具525は、下第3パネル567の左側面と右側面とに設けられており、下第2パネル565を下第1パネル564と下第3パネル566のそれぞれに接合する。
下第3パネル566は、正面視で縦長長方形状をしており、幅1500mm、高さ2000mm、厚さ150mmである。下第3パネル566の上右隅角部は、上第3パネル563を接合している2本の壁床引張引張金具522が下方に延長されることによって接合されている。下第3パネル566の上左隅角部UL566には固定手段6aが設けられており、溝部6bには狭幅接合金具10Aの第2板状部10bが挿入され、且つ挿入された第2板状部10bはピン止め固定されている。この固定手段6aは、上第3パネル563の右下隅角部DR563に設けられた固定手段6aと同じ構成である。下第4パネル568は、土台530に対して1個の壁基礎せん断金具523と4本の壁基礎引張金具524によって接合されている。下第4パネルの下左隅部と下右隅部には、2本の壁基礎引張金具524を取り付けるための切り欠きが設けられている。
【0050】
第5の試験体500に対しても、第3の試験体300と同じ内容の面内壁せん断試験を行った。
図17中の三角印を付した線分は、第5の試験体500による試験結果を示す。第5の試験体500では、右方向に460kN(+460kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が40mm(+40mm)になり、左方向に460kN(−460kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が40mm(−40mm)になった。
【0051】
<第6の試験体600について>
図16は第6の試験体600を説明する図である。
図16に示す第6の試験体600は、左側と右側のそれぞれに大型の木製パネル6を左右方向に間隔を空けて配置し、両木製パネル6の上部同士を小型の木製パネル6で連結したものであり、いわゆる従来工法で作製した試験体である。便宜上、以下の説明では、第6の試験体600の左側に位置する大型の木製パネル6を左大パネル661といい、右側に位置する大型の木製パネル6を右大パネル662といい、中央上部に位置する小型の木製パネル6を中小パネル663という。
左大パネル661は、正面視で縦長長方形状をしており、幅1400mm、高さ3000mm、厚さ150mmである。左大パネル661は、CLT床640の左下面に対して2個の壁床せん断金具621と4本の壁床引張引張金具622によって接合されている。壁床せん断金具621は左大パネル661における上面の左右中央部に取り付けられており、壁床引張引張金具622は壁床せん断金具621よりも左側に2本、壁床せん断金具621よりも右側に2本取り付けられている。
左大パネル661は、土台630に対して1個の壁基礎せん断金具623と4本の壁基礎引張金具624によって接合されている。左大パネル661の下左隅部と下右隅部のそれぞれには、2本の壁基礎引張金具624を取り付けるための切り欠きが設けられている。
右大パネル662は、左大パネル661と同じく正面視で縦長長方形状をしている。本実施形態の右大パネル662は、左大パネル661と構成が同じであるため、説明を省略する。
中小パネル663は、左大パネル661と右大パネル662の間の上部に配置され、左大パネル661と右大パネル662のそれぞれに対して接合金具625によって接合されている。これにより、中小パネル663よりも下方には開口部SPが形成されている。
【0052】
第6の試験体600に対しても、第3の試験体300と同じ内容の面内壁せん断試験を行った。
図17中の四角印を付した線分は、第6の試験体600による試験結果を示す。第6の試験体600では、右方向に310kN(+310kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が100mm(+100mm)を超え、左方向に300kN(−300kN)の荷重をかけた時に右方向への変位が60mm(−60mm)になった。このように、従来工法で作製した第6の試験体600は、第3の試験体300乃至第5の試験体500と比較してパネル同士の接合強度が低くなっている。
【0053】
<試験結果について>
図17に示すように、第3の試験体300乃至第5の試験体500と第6の試験体600とが同じ変形量の時に、第3の試験体300乃至第5の試験体500の方が第6の試験体600よりも荷重が大きいことから、本発明に係る接合構造を適用した第3の試験体300乃至第5の試験体500は、従来工法で作製した第6の試験体600と比較して高い強度を有しているといえる。
また、大きさが異なる複数種類の木製パネル6を接合して大きさが異なる複数の開口部SPを形成し、且つ
図4(a)に示す狭幅接合金具10Aと
図4(b)に示す広幅接合金具10Bとを使用した第5の試験体500は、木製パネル6を市松状に接合した第3の試験体300、及び第4の試験体400と比較して、高い強度を有している。従って、本発明に係る接合構造を採ることにより、小孔10dの大きさや木製パネル6の大きさに自由度を持たせても壁5として十分な強度を得ることができる。
【0054】
<変形例について>
前述の各実施形態では、接合金具10(狭幅接合金具10A広幅接合金具10B)に関し、連結部10cを挟んで第1板状部10aと第2板状部10bとを左右方向に位置をずらしていたが、この構成に限定されない。
例えば、
図18に示す第1変形例の接合金具10Cのように、各接合金具10を、複数の小孔10dを形成した長方形や正方形の鋼板によって作製してもよいし、
図19に示す第2変形例の接合金具10Dのように、各接合金具10Dを六角形の鋼板によって作製してもよい。
【0055】
図20に示す第3変形例の接合金具10Eのように、上下方向に沿った円筒部10eと、円筒部10eの中間位置に軸中心と直交する方向に形成された略正方形状の横板部10fと、円筒部10eの側面に軸方向に沿って設けられた縦板部10gと、縦板部10gに設けられた長円状の開口10hとを備えた構成にしてもよい。
図21に示すように、この接合金具10Eもまた、一方の木製パネル6(上段左パネル61乃至下段右パネル67)の隅角部と他方の木製パネル6の隅角部との接合箇所に配置される。この接合金具10では、円筒部の内部にCLT床4と土台3との間に配置された通しボルト25が挿通される。
図22に示す第4変形例の接合金具10Fのように、縦長長方形状の鋼板によって作製され、互いに並行に配置された2枚の縦板部10iと、縦板部10iの長手方向の中間に、縦板部10iとは直交する方向に配置された長方形状の横板部10jと、縦板部10iに設けられた長円状の開口10kと、横板部10jの中心に設けられた開口10mと、を有する構成としてもよい。この接合金具10Fもまた、一方の木製パネル6の隅角部と他方の木製パネル6の隅角部との接合箇所に配置され、横板部10jの開口10mには通しボルト25(
図21参照)が挿通される。
【0056】
木製パネル6に関し、前述の実施形態ではCLTを長方形状に加工したものを例示したが、この構成に限定されない。例えば、
図23(a)に示す木製パネル6’のように、4つの隅角部を外側に向けて先尖状に張り出してもよい。
図23(b)に示すように、この木製パネル6を使用することにより、開口部を八角形状にすることができ、壁5のデザイン性を高めることができる。
なお、木製パネル6に関し、CLT以外の構造用木材を使用してもよい。
また、木製パネル6の接合に使用したピン13に関し、円柱形状以外の形状であってもよい。例えば、三角柱形状、四角柱形状、六角柱形状であってもよい。
【0057】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様に係る木製パネル6間の接合構造は、上辺又は下辺に左右2つの隅角部を有した第1の木製パネル6Aと、第1の木製パネル6Aの左隅角部の一辺に対して、右上、又は右下の隅角部の一辺を対向させた状態で配置される第2の木製パネル6Bと、第1の木製パネル6Aの右隅角部の一辺に対して、左上、又は左下の隅角部の一辺を対向させた状態で、第2の木製パネル6Bの横方向位置に配置される第3の木製パネル6Cと、第2の木製パネル6Bと第3の木製パネル6Cとの間に形成される空間(開口部SP)と、第1の木製パネル6Aの左隅角部の一辺と、該左隅角部に対向配置される第2の木製パネル6Bの右隅角部の一辺とに跨がってピン止め固定される第1の金具10L(接合金具10)と、第1のパネルの右隅角部の一辺と、該右隅角部に対向配置される第3の木製パネル6Cの左隅角部の一辺とに跨がってピン止め固定される第2の金具10R(接合金具10)と、を備えたことを特徴とする。
【0058】
本態様に係る接合構造によれば、各木製パネル6の隅角部同士を接合して美観を向上させても、各接合金具10によって必要な接合強度が得られる。また、各接合金具10をピン止め固定しているため、接合部分に対して過剰に大きな外力が加わったとしても、各木製パネル6の隅角部が破損する前にピン13を屈曲させることにより、隅角部の破損を防止できる。さらに、接合金具10とピン13の組み合わせによって隅角部毎に接合強度を調整できる。その結果、複数枚の木製パネル6を市松状に配置して隅角部同士を接合金具10によって組み合わせることにより、採光性や美観を有しつつ、耐震性を備えた壁5を構成できる。
【0059】
<第二の実施態様>
本態様に係る木製パネル6間の接合構造は、第1の木製パネル6A、第2の木製パネル6B、及び第3の木製パネル6Cが、CLTによって構成されていることを特徴とする。
本態様に係る接合構造によれば、強度の高い壁5を構築することができる。
【0060】
<第三の実施態様>
本態様に係る木製パネル6間の接合構造は、第1の金具10L、及び第2の金具10Rが、金属製のピン13が挿通される複数の小孔10dを形成した金属板(鋼板)によって構成され、各木製パネル6は、その側端面に形成されて金属板の一部分(第1板状部10a、第2板状部10b)が挿入される溝部6bと、各木製パネル6の厚さ方向を貫通するピン挿入孔6cと、を備えていることを特徴とする。
本態様に係る接合構造によれば、金具の厚さやピン13の太さによって接合箇所の強度を容易に調整できる。
【0061】
<第四の実施態様>
本態様に係る木製パネル6間の接合構造は、第1の金具10L、及び第2の金具10Rが、第1の木製パネル6Aが備えた溝部6bに挿入される第1板状部10aと、第2の木製パネル6B又は第3の木製パネル6Cが備えた溝部6bに挿入される第2板状部10bと、第1板状部10aと第2板状部10bとの間に位置し、第1板状部10aと第2板状部10bとを左右方向に位置をずらして連結する連結部10cと、を備えることを特徴とする。
本態様に係る接合構造によれば、第1板状部10aと第2板状部10bの左右方向へのずれ量に応じて接合箇所の強度を容易に調整できる。
【0062】
<第五の実施態様>
本態様に係る建物1の壁5(木製パネル耐震壁)は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の木製パネル6間の接合構造を備えたことを特徴とする。
本態様に係る壁5によれば、複数枚の木製パネル6によって採光性や美観を向上させることができる。
前記第1の木製パネル、前記第2の木製パネル、及び前記第3の木製パネルは、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)によって構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の木製パネル間の接合構造。
本発明の主な特徴は、上下階の床または横架材間に、CLT等の木製パネルを多段にわたり配置する耐震壁であり、その配置構成は、水平方向に隣接する木製パネル間に間隙を設けるとともに、鉛直方向の木製パネルは互い違いにその隅角部を木製パネルと重ねて接合金物と組み合わせることによって構成されるところにある。
第3の木製パネルと、前記第2の木製パネルと前記第3の木製パネルとの間に形成される空間と、前記第1の木製パネルの左隅角部の一辺と、該左隅角部に隣接配置される前記第2の木製パネルの右隅角部の一辺とに跨がってピン止め固定される
本発明によれば、複数枚の木製パネルを市松状など任意に配置し、接合金物と組み合わせることで美観性や採光性を有しつつ、耐震性を備えた木製パネル間の接合構造、及び木製パネル耐震壁を構成することができる。
本発明の主な特徴は、上下階の床または横架材間に、CLT等の木製パネルを多段にわたり配置する耐震壁であり、その配置構成は、水平方向に隣接する木製パネル間に間隙を設けるとともに、鉛直方向の木製パネルは互い違いにその隅角部を木製パネルと重ねて接合金物と組み合わせることによって構成されるところにある。