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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-6362(P2021-6362A)
(43)【公開日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】画像記録装置及び画像記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20201218BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20201218BHJP
【FI】
   B41J2/21
   B41J2/01 501
   B41J2/01 401
   B41J2/01 303
   B41J2/01 305
   B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-120443(P2019-120443)
(22)【出願日】2019年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕充
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文孝
(72)【発明者】
【氏名】梶原 祐人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA11
2C056EC11
2C056EC28
2C056EC37
2C056EC71
2C056EC74
2C056EE10
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】 染料の凝集性が異なる複数のカラーインクを用いてメタリックカラー画像を記録する場合に、染料の凝集性の低いカラーインクの発色が低下してしまうという課題がある。
【解決手段】 メタリックインクを付与した後に、染料凝集性の高いカラーインクを付与し、そのあとに染料凝集性の低いカラーインクを付与することで、染料凝集性の低いカラーインクの発色を向上させる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料を凝集させるための染料定着材を含有する受容層を有する被記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
金属粒子を含有するメタリックインクを付与するための複数のノズルが並ぶメタリックノズル列と、染料の色材を含有する第1のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第1のカラーノズル列と、染料の色材を含有し且つ被記録媒体に含有される染料定着材に対する反応性が第1のカラーインクよりも低い第2のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第2のカラーノズル列とを有し、前記搬送方向と交差する走査方向に相対移動する記録走査において被記録媒体にインクを付与する記録ヘッドと、
メタリックインク、第1のカラーインク及び第2のカラーインクを重ねて付与することにより形成されるメタリックカラー画像を含む画像データに基づき、被記録媒体上への前記記録ヘッド及び前記搬送手段を用いた画像の記録動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して、メタリックインクのみを付与する第1の記録走査を実行し、前記第1の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第1のカラーインクを付与する第2の記録走査を実行し、前記第2の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第2のカラーインクを付与する第3の記録走査を実行するように、前記記録動作を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記第3の記録走査において前記第1のカラーインクは付与されないことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記第2の記録走査において前記第2のカラーインクは付与されないことを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対する前記記録ヘッドの最後の記録走査では、前記第2のカラーインクのみが付与されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して、前記第1の記録走査と前記第2の記録走査の間に、いずれのインクも付与されない記録走査を実行するように、前記記録動作を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記メタリックノズル列において前記第1の記録走査においてメタリックインクを付与する複数のノズルは、前記第1のカラーノズル列において前記第2の記録走査において第1のカラーインクを付与する複数のノズルよりも前記搬送方向において上流側に位置し、
第1のノズルは、前記第1のカラーノズル列において前記第2の記録走査において第1のカラーインクを付与する複数のノズルの中で前記搬送方向において最も下流側に位置するノズルであり、
第2のノズルは、前記第2のカラーノズル列において前記第3の記録走査において第2のカラーインクを付与する複数のノズルの中で前記搬送方向において最も下流側に位置するノズルであり、
前記搬送方向において、前記第1のノズルは前記第2のノズルよりも上流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
第3のノズルは、前記第2のカラーノズル列において前記第3の記録走査において第2のカラーインクを付与する複数のノズルの中で前記搬送方向において最も上流側に位置し、
前記搬送方向において、前記第1のノズルは前記第3のノズルよりも上流側に位置することを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記メタリックノズル列と、前記第1のカラーノズル列と、前記第2のカラーノズル列は、前記走査方向に沿って配置され、
前記第1の記録走査においてメタリックインクを付与するノズルは前記メタリックノズル列の複数のノズルの一部であり、
前記第2の記録走査において第1のカラーインクを付与するノズルは前記第1のカラーノズル列の複数のノズルの一部であり、
前記第3の記録走査において第2のカラーインクを付与するノズルは前記第2のカラーノズル列の複数のノズルの一部であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して付与すべき第1のカラーインクの全量のうち1/2以上が、前記第2の記録走査において付与されることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項10】
メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して付与すべき第2のカラーインクの全量のうち1/2以上が、前記第3の記録走査において付与されることを特徴とする請求項1または9に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2の記録走査の前に、複数回の前記第1の記録走査を実行することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第3の記録走査の前に、複数回の前記第2の記録走査を実行することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項13】
前記制御手段は、複数回の前記第3の記録走査を実行することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項14】
前記制御手段は、連続する2回の記録走査の間に、被記録媒体を前記搬送方向に搬送することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項15】
前記メタリックノズル列と、前記第1のカラーノズル列と、前記第2のカラーノズル列は、前記搬送方向において重複せずに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項16】
第1のカラーインクはイエローインクもしくはシアンインクであり、第2のカラーインクはマゼンタインクであることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項17】
メタリックインクが含有する金属粒子は銀粒子であることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項18】
染料を凝集させるための染料定着材を含有する受容層を有する被記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
金属粒子を含有するメタリックインクを付与するための複数のノズルが並ぶメタリックノズル列と、染料の色材を含有する第1のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第1のカラーノズル列と、染料の色材を含有し且つ被記録媒体に含有される染料定着材に対する反応性が第1のカラーインクよりも低い第2のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第2のカラーノズル列とを有し、前記搬送方向と交差する走査方向に相対移動する記録走査において被記録媒体にインクを付与する記録ヘッドと、
を有する記録装置において、メタリックインク、第1のカラーインク及び第2のカラーインクを重ねて付与することにより形成されるメタリックカラー画像を含む画像データに基づき、被記録媒体上に画像を記録するための画像記録方法であって、
メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して、メタリックインクのみを付与する第1の記録走査を実行し、前記第1の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第1のカラーインクを付与する第2の記録走査を実行し、前記第2の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第2のカラーインクを付与する第3の記録走査を実行することを特徴とする画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体上にメタリックカラー画像を記録するための画像記録装置及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粒子を含有するメタリックインクを用いて被記録媒体上に金属光沢を有する画像を記録する画像記録装置が知られている。さらに、色材を含有するカラーインクをメタリックインクに組み合わせて用いることにより、メタリックカラー画像を記録する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、金属成分を含む特殊光沢インクと色材を含むカラーインクを用いてメタリックカラー画像を記録するシリアル型のインクジェット記録装置が開示されている。特許文献1によれば、特殊光沢インクとカラーインクでノズル列の使用領域を副走査方向にずらすことにより、被記録媒体の単位領域に対し特殊光沢インクとカラーインクを付与するタイミングを異ならせ、金属光沢を帯びたメタリックカラーを表現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−52228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討により、色材として染料を含むカラーインクを用いてメタリックカラー画像を記録する際に、カラーインクの発色性が低下するケースがあることがわかった。特に、染料の凝集性が異なる複数のカラーインクを用いる場合に、カラーインクを付与するタイミングによっては所望のメタリックカラーの発色が得られない場合があった。
【0006】
このような課題に対し、本発明は、金属光沢を発現する機能を有するメタリックインクと、色材として染料を含むカラーインクを用いた記録装置において、ユーザの所望のメタリックカラーを表現した記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、染料を凝集させるための染料定着材を含有する受容層を有する被記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、金属粒子を含有するメタリックインクを付与するための複数のノズルが並ぶメタリックノズル列と、染料の色材を含有する第1のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第1のカラーノズル列と、染料の色材を含有し且つ被記録媒体に含有される染料定着材に対する反応性が第1のカラーインクよりも低い第2のカラーインクを付与するための複数のノズルが並ぶ第2のカラーノズル列とを有し、前記搬送方向と交差する走査方向に相対移動する記録走査において被記録媒体にインクを付与する記録ヘッドと、メタリックインク、第1のカラーインク及び第2のカラーインクを重ねて付与することにより形成されるメタリックカラー画像を含む画像データに基づき、被記録媒体への前記記録ヘッド及び前記搬送手段を用いた画像の記録動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、メタリックカラー画像が形成される被記録媒体上の領域に対して、メタリックインクのみを付与する第1の記録走査を実行し、前記第1の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第1のカラーインクを付与する第2の記録走査を実行し、前記第2の記録走査よりも後にメタリックインクを付与せずに第2のカラーインクを付与する第3の記録走査を実行するように、前記記録動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染料の凝集性が異なる複数のカラーインクを用いた場合に、好ましいメタリックカラー画像を表現した記録物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インクジェット記録装置の構成を説明するための図
図2】制御構成を示すブロック図
図3】記録ヘッドを説明するための図
図4】メタリックカラー画像データの一例
図5】画像処理を説明するためのフローチャート
図6】銀インクのドット形成と膜形成を示す図
図7】メタリック層と着色層の形成を示す図
図8】メタリック層と着色層の形成を示す図
図9】メタリック層と着色層の形成を示す図
図10】メタリック層と着色層の形成を示す図
図11】メタリック層と着色層の形成を示す図
図12】記録ヘッドのノズルを示す模式図
図13】記録ヘッドの使用ノズル位置を示す図
図14】記録動作を示す図
図15】パスマスクを示す模式図
図16】記録ヘッドの使用ノズル領域と記録動作を示す図
図17】パスマスクを示す模式図
図18】フルマルチ型の記録ヘッドを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
本実施形態では、メタリックインクとカラーインクを重ねて付与することによりメタリックカラーの光沢を有するメタリックカラー部を含む画像を記録するための画像記録装置について説明する。
【0012】
<画像記録装置の説明>
図1は、本実施形態に適用可能なインクジェット記録装置10(以下、単に記録装置ともいう)の構成を説明するための図である。4列のノズル列を備えた記録ヘッド5と光学センサ7が搭載されたキャリッジ1は、キャリッジモータの駆動力がベルト6を介して伝達されることによって、図のX方向に往復方向へ複数回走査(移動)する。キャリッジ1と被記録媒体2との相対移動において、記録ヘッド5からインクが吐出されることにより、プラテン4上に支持された被記録媒体2に画像が記録される。1回の記録走査が終了すると、被記録媒体2は、1走査分の記録幅に対応した距離を、図中、X方向と交差するY方向に搬送される。このような記録走査と搬送動作を複数回交互に繰り返すことにより、被記録媒体2に画像が記録される。
【0013】
光学センサ7は、キャリッジ1とともに移動しながら検出動作を行い、プラテン4の上に被記録媒体2が存在するか否かが判断される。キャリッジ1が走査可能な領域であってプラテン4から外れた位置に、記録ヘッド5のメンテナンス処理を行うための回復手段3が配置されている。
【0014】
<制御部の説明>
図2は、本実施形態のインクジェット記録システムの制御構成を示すブロック図である。本実施形態のインクジェット記録システムは、画像供給装置30、画像処理装置20およびインクジェット記録装置10によって構成される。
【0015】
画像供給装置30から供給された画像データは、画像処理装置20において所定の画像処理が施された後、インクジェット記録装置10に送られ、インクを用いて記録される。記録装置10において、記録装置主制御部101は、CPU、ROM、RAMなどによって構成される記録制御部であり、インクジェット記録装置10全体を制御する。後述する図10のフローチャートは、記録装置主制御部101のCPUによって実行される。記録バッファ102は、記録ヘッド5に転送される前の画像データを、ラスタデータとして格納する。記録ヘッド5は、インクを滴として吐出可能な複数の記録ノズルを有するインクジェット方式の記録ヘッドであり、記録バッファ102に格納された画像データに従って、各記録ノズルからインク滴が吐出される。本実施形態の記録ヘッド5には、シアン色材を含むシアンインク、マゼンタ色材を含むマゼンタインク、イエロー色材を含むイエローインクの3色のカラーインクを吐出するための3列のカラーノズル列が設けられている。また、金属粒子を含むメタリックインクを吐出するためのメタリックノズル列が設けられている。各ノズル列に配列するノズルは、被記録媒体の搬送方向に並んでいる。
【0016】
給排紙モータ制御部104は、被記録媒体の搬送や給排紙を制御する。記録装置インタフェイス(I/F)105は、画像処理装置20との間でデータ信号の授受を行う。I/F信号線114は、両者を接続する。I/F信号線114の種類としては、例えば、セントロニクス社の仕様のものを適用することができる。データバッファ106は、画像処理装置20から受信した画像データを一時的に格納しておく。システムバス107は、記録装置10の各機能を接続する。操作部115は、ユーザが操作を行うための操作部であり、例えば、記録装置10の電源ON/OFF、記録の中断などの指示を受け付けるタッチパネルや操作ボタンなどである。
【0017】
一方、画像処理装置主制御部108は、画像処理装置20における画像の作成や、画像データの制御を主に司り、CPU、ROM、RAM等から構成されている。画像処理装置インタフェイス(I/F)109は、記録装置10との間でデータ信号を授受する。表示部110は、ユーザに対し様々な情報を表示し、例えば印刷前の画像配置を示すプレビューなどを表示することが出来る。操作部111は、ユーザが操作を行うための操作部であり、例えばキーボードやマウスを適用することが出来る。システムバス112は、画像処理装置主制御部108と各機能とを結ぶ。外部接続I/F113は、画像供給装置30との間でデータ信号を授受する。
【0018】
<記録ヘッド>
図3は、記録ヘッド5を吐出口面側から見た図である。記録ヘッド5には、カラーインクを吐出するための3列のカラーノズル列301、302、303と、メタリックインクを吐出するための1列のメタリックノズル列304がX方向に並列に配置されている。ノズル列301〜304のそれぞれには、インク滴を吐出するための吐出口(ノズル)が1200dpiのピッチで図のY方向に配列されている。各吐出口には、インク滴を吐出するための記録素子が設けられている。本図では、例として16個並んでいる。カラーノズル列301は、シアン(C)のインク滴を吐出するシアンノズル列、カラーノズル列302は、マゼンタ(M)のインク滴を吐出するマゼンタノズル列、カラーノズル列303は、イエロー(Y)のインク滴を吐出するイエローノズル列である。メタリックノズル列304は、メタリック(Me)のインク滴を吐出するためのノズル列である。尚、本実施形態では、吐出口が配列された方向を被記録媒体2が搬送される方向と同じY方向としたが、記録ヘッド5の走査の方向と交差する方向であれば、必ずしも同じ方向でなくてもよい。
【0019】
<記録データ>
図4は、画像処理装置20が画像供給装置30から受信する画像データの一例である。本実施形態では、1つの画像につき、3色のカラーインクを用いて記録するためのカラー画像データと、メタリックインクを用いて記録するためのメタリック画像データの2つの画像データを受信する。カラー画像データは、sRGB等の規格化された色空間を表現するための、R(レッド)、G(グリーン)およびB(ブルー)が各8bitの3次元のカラー画像である。一方、メタリック画像データは、メタリックインクの光沢の程度を示す8bitの1次元のグレー画像である。カラー画像データの画像サイズとメタリック画像データの画像サイズは同じであり、両方の画像データにおいて画像が存在する領域が、記録時にメタリックカラー部として表現される領域である。本実施形態では、1枚の被記録媒体に対して複数の画像を割り付けて記録するため、各画像について2つの画像データを受信する。
【0020】
<記録データ生成処理の説明>
図5は、画像処理装置主制御部108において行われる画像処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、画像処理装置主制御部108に備えられたCPUにより、ROMに記憶されたプログラムに従って実行される。
【0021】
まず、ステップS500において、画像供給装置30から注目画素のカラー画像データとメタリック画像データが入力される。ステップS501では、画像処理装置主制御部108により色補正が実行される。カラー画像データは、記録装置固有の色空間に対応するRGB12bitの輝度データに変換される。信号値を変換する方法は、予めROM等に格納されたルックアップテーブル(LUT)を参照する等の公知の方法を採用することが出来る。一方、メタリック画像データは8bitの1次元のグレー画像であり、メタリックインクの付与量に対応する。このため、色補正は行われない。ステップS502において、画像処理装置主制御部108により、変換後のRGBデータが、記録装置のインク色である、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)それぞれの16bit階調データ(濃度データ)に分解される。この段階で、16bitの1次元のグレー画像が3チャンネル分(3色分)生成される。インク色分解処理においても、色補正処理と同様、予めROM等に格納されたルックアップテーブル(LUT)を参照する等、公知の方法を用いることが出来る。ここでも、メタリック画像データは、Me(メタリック)インクに対応した8bitのグレー画像であるため、処理は行われない。
【0022】
ステップS503において、画像処理装置主制御部108により、インク色のそれぞれに対応する階調データに対し所定の量子化処理が行われ、数ビットの量子化データに変換される。例えば、3値に量子化される場合、階調データは、レベル0〜レベル2の2bitデータに変換される。続くステップS504において、画像処理装置主制御部108によりインデックス展開処理が行われる。具体的には、個々の画素に記録するドットの数と位置を定めた複数のドット配置パターンの中から、ステップS503において得られたレベルに対応づけて1つのドット配置パターンが選出される。このとき、ドット配置パターンは、個々の画素に相当する領域に記録するドットの数をレベル値によって異ならせる形態であっても良く、ドットの大きさをレベル値に応じて異ならせる形態であっても良い。そして、ステップS505において、ステップS504においてインデックス展開された出力データが出力され、本フローが終了する。
【0023】
尚、図5の各ステップで示したそれぞれの工程は、本実施形態のインクジェット記録システムにおいて、画像処理装置20と記録装置10のいずれで実行されてもよい。例えば、量子化処理までを画像処理装置20にて行われる場合は、量子化済みのデータが記録装置10に転送され、記録装置主制御部101によりデータバッファ106に格納されたインデックスパターンを用いてインデックス展開が行われ、記録動作が制御される。また、記録装置10の性能によっては、多値のカラー画像データとメタリック画像データを直接受け取り、全ての工程を実行することも可能である。
【0024】
<インク構成>
次に、本実施形態で用いられる、金属粒子を含有したメタリックインクを構成する各成分について説明する。
【0025】
<金属粒子含有インク>
<金属粒子>
インク中の金属粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
金属粒子の具体例としては、特に限定はされないが、金、銀、銅、白金、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、錫等の粒子を挙げることができる。これらの金属粒子は、単体または合金でもよく、組み合わせて使用することも可能である。また、金属粒子は、金属粒子の保存安定性と、形成される画像の光沢性の観点から、金、銀、銅粒子を用いることが好ましく、銀粒子であることが特に好ましい。銀粒子は、形成される画像の高い光沢性と無彩色性のため、有色インクとの組み合わせにより幅広いメタリックカラーを表現することが可能である点で特に優れる。前述のように、本実施形態では、金属粒子含有インクとして銀粒子を含有するメタリックインクを用いる。
【0027】
<銀粒子>
本実施形態に用いられる銀粒子は銀を主成分とする粒子であって、銀粒子における銀の純度は50質量%以上であればよい。例えば、副成分として、他の金属、酸素、硫黄、炭素等を含んでもよく、合金であってもよい。
【0028】
銀粒子は、製造方法は特に限定されないが、銀粒子の粒径制御および分散安定性を考慮すると、水溶性銀塩から還元反応を利用した種種の合成方法により製造した銀粒子であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に用いられる銀粒子の平均粒子径は、インクの保存安定性と銀粒子により形成される画像の光沢性の観点から、1nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
【0030】
尚、具体的な平均粒子径の測定方法としては、レーザー光の散乱を利用した、FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析)、ナノトラックUPA150EX(日機装社製、体積平均粒径の50%の積算値を採用)等を使用して測定できる。
【0031】
本実施形態においては、インク中の銀粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。含有量が2.0質量%未満である場合、画像の金属光沢性が低下する場合がある。また、含有量が15.0質量%を上回る場合、インクあふれを起こしやすく印字ヨレが発生する場合がある。
【0032】
<分散剤>
銀粒子の分散方式は特に限定されない。例えば、界面活性剤により分散させた銀粒子、分散樹脂により分散させた樹脂分散銀粒子、などを用いることができる。勿論、分散方式の異なる金属粒子を組み合わせて使用することも可能である。
【0033】
界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
【0034】
アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0035】
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0036】
両イオン性活性剤としては、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。
【0037】
分散樹脂は、水溶性もしくは水分散性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができるが、中でも特に、分散樹脂の重量平均分子量が1,000以上100,000以下、更には3,000以上50,000以下のものが好ましい。
【0038】
分散樹脂は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー。尚、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いてもよい。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。
【0039】
本実施形態においては、前記水性インクに前記銀粒子を分散させるための分散剤が含まれ、前記分散剤の含有量(質量%)が、前記銀粒子の含有量(質量%)に対して、質量比率で0.02倍以上3.00倍以下であることが好ましい。
【0040】
前記質量比率が0.02倍未満である場合、銀粒子が分散不安定となり、前記ヘッドの発熱部に付着する銀粒子の比率が高まることでより異常発泡を起こしやすく、インクあふれによる印字ヨレが発生する場合がある。また、前記質量比率が3.00倍を上回る場合、画像形成する際に分散剤が銀粒子の融着を阻害し、画像の金属光沢性が低下する場合がある。
【0041】
<界面活性剤>
本実施形態に用いられる銀粒子含有インクは、よりバランスのよい吐出安定性を得るために、インク中に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、上述のアニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。
【0042】
中でもノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。ノニオン界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン系界面活性剤のHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、10以上である。こうして併用される界面活性剤の含有量は、好ましくはインク中に0.1質量%以上である。また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0043】
<水性媒体>
本実施形態に用いられる銀粒子含有インクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として10質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下とする。また、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50質量%以上88質量%以下とすることが好ましい。
【0044】
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、等のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の平均分子量200、300、400、600、及び1,000等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類。
【0045】
また、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
【0046】
<その他の成分>
本実施形態に用いられる銀粒子含有インクは、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、添加樹脂及び蒸発促進剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
【0047】
本実施形態のメタリックカラー画像は、銀粒子により形成された無彩色の金属光沢層の上に色材による着色層が形成され、カラーインクに由来する着色効果によって色味のついた光沢画像として得られる。この場合、光源から着色層に入射した光が金属光沢層で反射し、再び着色層を通ってきた光がメタリックカラーとして認識される。すなわち、金属光沢層の反射率と、着色層の発色性が、メタリックカラーの発色性を支配する要因となることから、着色層には発色性とともに透明性が求められる。本実施形態では、着色層として発色性と透明性に優れた色材として染料が含まれる染料含有インクを用いる構成について説明する。
【0048】
<染料含有インク>
<染料>
本実施形態において、染料含有インクは、被記録媒体に先行して付与された銀粒子含有インクによって形成された銀層上に付与される。そして、銀層上で染料含有インク中の染料が凝集して銀層上に残ることで、所望の色彩を呈するメタリックカラー画像が得られる。カラーインクの色材として染料を用いることで、透明性のあるメタリックカラー画像を得ることができる。
【0049】
ここで、本発明者らの検討により、染料含有インク中の染料の種類により、メタリックカラー画像としての着色効果が異なることを見出した。具体的には、銀層上に残り易く、メタリックカラー画像としての着色効果の発現が強い染料と、その一部が銀層の下に浸透してしまい、メタリックカラー画像としての着色効果の発現が弱い染料がある。本発明者らは、この染料の種類の違いに関して、以下の様に推測した。染料は、その構造の違いにより、凝集し易さが異なる。凝集しやすい染料は、会合して分子集合体を形成する。例えば、分子の会合が双極子―双極子相互作用によるものであるとすると、電気陰性度の異なる複数の分子が結合している場合に、これらの原子間に電子の偏り(分極)が生じ、その分極により分子同士が静電的に引き寄せられる。一概には言えないが、カルボニル基や複素芳香環のような非共有電子対を有する化合物や、複数の非共役電子対を有するとともに、それらが共役している化合物は、会合しやすい傾向にある。例えば、複素芳香環は窒素原子や硫黄原子が非共有電子対を有するため、ベンゼン環に比べて電気陰性度が高く、電荷に偏りが生じている。複数の非共有電子対が共役している場合は、それらの非共有電子対が共役を介して移動することで分極が生ずると考えられる。
【0050】
このように、凝集性が高い染料を含有するインクが銀層上に付与された場合、染料が銀層上で凝集し、着色層として銀層上に残ることで、メタリックカラー画像における色味が強く発色される。例えば、シアン染料の凝集性が高い場合、シアンのメタリック画像は、着色層に残るシアン染料が多いため、シアン色が強く発現する。一方、凝集性が低い染料を含有するインクが銀層に付与された場合、インクに含まれる水性媒体や水とともに、染料が銀層にある細孔から一部浸透してしまう。このため、銀層上に残る着色層としての染料が少なくなり、メタリックカラー画像における色味が弱く発色される。例えば、マゼンタ染料の凝集性が低い場合、マゼンタのメタリック画像は、着色層に残るマゼンタ染料が少ないため、マゼンタ色が弱く発現し、銀層そのものの色に近くなる。
【0051】
このような染料の凝集性の指標は、小角X線散乱法を用いて表すことができ、以下の二つの方法について説明する。
【0052】
第一の方法は、散乱角プロファイルのピークトップから得られた2θの値から、Braggの式に基づいて、下記式(1)により粒子間の距離d値を求める。
【0053】
2dsinθ=nλ 式(1)
(式(1)において、λはX線の波長、dは粒子間の距離、θは散乱角である。)
また、ここで算出されるd値は一定間隔で配列している粒子の中心から中心までの距離と考えられている。本方法で測定されるd値は、分子集合体の大きさを示す指標と考えられ、d値が大きいほど、染料分子が形成する分子集合体の大きさが大きくなっているものと考えられる。
【0054】
第二の方法は、上記散乱角プロファイルのピーク強度を求める方法である。散乱角プロファイルのピーク形状については、分子集合体の分散距離の分布を示している。上述のように、この分散距離が分子集合体の大きさの指標であることを考えると、かかる散乱角プロファイルは溶液中での分子集合体の大きさの分布を示していると考えることができる。散乱角プロファイルのピーク強度を溶液中の分子集合体とすれば、分子集合体の頻度が高い、つまりピーク強度が大きいほど、凝集性が高いと考えられる。
【0055】
尚、小角X線散乱によって上記の値を測定する場合は、溶液中の分子密度を一定にする必要がある。例えば、染料濃度を一定にした染料の5質量%水溶液に対して小角X線散乱の測定を行う。装置や測定条件などによりピーク強度が異なることから、ピーク強度の指標として、基準とする染料を設定してもよい。例えば、C.I.ダイレクトイエロー132を基準にする。C.I.ダイレクトイエロー132は染料含有インク中での会合性が不十分である。C.I.ダイレクトイエロー132と比較して、十分なピーク強度をも場合に、染料含有インク中での会合性が高く、凝集性が高いと判断できる。
【0056】
前述したように、本実施形態では色材を含むカラーインクとして染料シアンインク、染料マゼンタインク、染料イエローインクを用い、その凝集性は、高い順からシアンインク、イエローインク、マゼンタインクである。尚、これらのインクにおいて、凝集性以外の物性値、特に粘土、表面張力、紙面に対する浸透性等は略等しく調整されている。
【0057】
<水性媒体・その他成分>
水性媒体及びその他の成分については、銀粒子含有インクと同様の成分を用いることができる。
【0058】
次に、水性インクである銀粒子含有インクと染料含有インクの物性について説明する。
【0059】
<インクの物性>
本実施形態の水性インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下である。粘度が5.0mPa・sを超えると、連続印字においてノズル孔へのインク供給が不十分となる場合があり、安定的な吐出が行えない場合がある。より好ましくは3.0mPa・s以下である。
【0060】
本実施形態は、次の組み合わせによって初めて生じる課題に対して好適に作用するものである。銀粒子を上記のような低粘度領域で使用する際に生じる銀粒子の加速的な沈降と、本実施形態の構成で用いられる記録装置を用いた際に生じるノズル孔付近での加熱と蓄熱による加速的な蒸発と、の組み合わせである。
【0061】
また、本実施形態の水性インクの25℃における静的表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下、さらには20mN/m以上60mN/m以下、特には30mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。本実施形態に用いられるインクは、その表面張力を上記した範囲内とすることで、インクジェット方式に適用した際に吐出口近傍の濡れによる吐出ヨレ(インクの着弾点のズレ)などの発生を有効に抑制することが可能となる。インクの表面張力の調整は、インク中における界面活性剤などの含有量を適宜決定することで行うことができる。本実施形態に用いられるインクは、インクジェット記録装置に適用する際に良好な吐出特性が得られるよう、所望のpHに調整することが好ましい。
【0062】
<被記録媒体>
本実施形態において用いる被記録媒体は、基材と、少なくとも1層のインク受容層とを有し、インクジェット記録方式用の被記録媒体であることが好ましい。以下、被記録媒体を構成する各成分について説明する。
【0063】
<基材>
基材としては、基紙のみから構成されるものや、基紙と樹脂層を有するもの、即ち、基紙が樹脂で被覆されているものが挙げられる。本実施形態においては、基紙と樹脂層を有する基材を用いることが好ましい。その場合、樹脂層は、基紙の片面のみに設けられていてもよいが、両面に設けられていることが好ましい。
【0064】
<基紙>
基紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じてポリプロピレンなどの合成パルプや、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維を加えて抄紙される。木材パルプとしては広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)が挙げられる。さらに広葉樹溶解パルプ(LDP)、針葉樹溶解パルプ(NDP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)なども挙げられる。これらは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。木材パルプの中でも短繊維成分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPを用いることが好ましい。パルプとしては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましい。紙基材中には、サイズ剤、白色顔料、紙力増強剤、蛍光増白剤、水分保持剤、分散剤、柔軟化剤などを適宜添加してもよい。
【0065】
<樹脂層>
基紙が樹脂で被覆されている場合は、樹脂層は基紙の表面の一部を被覆するように設けられていればよいが、樹脂層の被覆率(樹脂層で被覆された基紙の表面の面積/基紙の表面の全面積)が70%以上であることが好ましい。90%以上であることがより好ましく、更には、100%であること、即ち、基紙の表面の全面が樹脂層で被覆されていることが特に好ましい。
【0066】
樹脂層に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。本実施形態において、ポリオレフィン樹脂とは、モノマーとしてオレフィンを用いた重合体を意味する。具体的には、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどの単重合体や共重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。
【0067】
本実施形態において、樹脂層は、不透明度や白色度や色相を調整するために、白色顔料や蛍光増白剤や群青などを含有してもよい。中でも、不透明度を向上することができるため、白色顔料を含有することが好ましい。白色顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンが挙げられる。樹脂層中の、白色顔料の含有量は、樹脂の含有量に対して、25質量%以下であることが好ましい。25質量%より大きいと、白色顔料の分散安定性が十分に得られない場合がある。
【0068】
<インク受容層>
本実施形態において、インク受容層は単層でもよいし、2層以上の複層でもよい。また、インク受容層は、上記基材の片面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。本実施形態のインク受容層は染料定着剤を含有している。以下、インク受容層に含有することができる材料及び染料定着剤について説明する。
【0069】
<無機粒子>
本実施形態において、インク受容層は無機粒子を含有することが好ましい。無機粒子の平均一次粒子径は、50nm以下が好ましい。更には、1nm以上30nm以下がより好ましく、3nm以上10nm以下が特に好ましい。無機粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡によって観察したときの無機粒子の一次粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径の数平均粒子径である。このとき、少なくとも100点以上で測定を行う。
【0070】
本実施形態において、無機粒子は、分散剤によって分散されている状態で、インク受容層用の塗工液に用いられることが好ましい。分散状態での無機粒子の平均二次粒子径は、0.1nm以上500nm以下が好ましく、更には、1.0nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上250nm以下が特に好ましい。尚、分散状態での無機粒子の平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0071】
本実施形態において、インク受容層中に占める、無機粒子の含有量(質量%)は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、更には、70質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。
【0072】
本実施形態において、インク受容層を形成する際に塗布する無機粒子の塗布量(g/m)は、8g/m以上45g/m以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、好ましいインク受容層の膜厚となりやすい。
【0073】
本実施形態に用いる無機粒子としては、例えば、アルミナ水和物、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタン、ゼオライト、カオリン、タルク、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの無機粒子は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。上記無機粒子の中でも、インクの吸収性が高い多孔質構造を形成することができるアルミナ水和物、アルミナ、シリカを用いることが好ましい。
【0074】
インク受容層に用いるアルミナ水和物は、
一般式(X):Al3−n(OH)2n・mH
(一般式(X)中、nは0、1、2、又は3であり、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下である。ただし、mとnは同時に0にはならない。)
により表されるものを好適に用いることができる。尚、mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でなくてもよい。また、アルミナ水和物を加熱するとmは0となり得る。
【0075】
本実施形態において、アルミナ水和物は、公知の方法で製造することができる。具体的には、アルミニウムアルコキシドを加水分解する方法、アルミン酸ナトリウムを加水分解する方法、アルミン酸ナトリウムの水溶液に、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムの水溶液を加えて中和する方法などが挙げられる。
【0076】
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、ギブサイト型、ベーマイト型が知られている。尚、アルミナ水和物の結晶構造は、X線回折法によって分析することができる。本実施形態においては、これらの中でも、ベーマイト型のアルミナ水和物又は非晶質のアルミナ水和物が好ましい。具体例としては、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報などに記載されたアルミナ水和物である。市販品としてはDisperal HP14、HP18(以上、サソール製)などを挙げることができる。これらのアルミナ水和物は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0077】
また、本実施形態において、アルミナ水和物のBET法で求められる比表面積が100m/g以上200m/g以下であることが好ましく、125m/g以上175m/g以下であることがより好ましい。ここでBET法とは、試料表面に大きさの分かっている分子やイオンを吸着させて、その吸着量から、試料の比表面積を測定する方法である。本実施形態においては、試料に吸着させる気体として、窒素ガスを用いる。
【0078】
インク受容層に用いるアルミナとしては、気相法アルミナが好ましい。気相法アルミナとしては、γ−アルミナ、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナなどを挙げることができる。これらの中でも、画像の光学濃度やインク吸収性の観点から、γ−アルミナを用いることが好ましい。気相法アルミナの具体例としては、AEROXIDE;Alu C、Alu130、Alu65(以上、EVONIK製)などを挙げることができる。
【0079】
本実施形態において、気相法アルミナのBET法で求められる比表面積が50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましい。また、150m/g以下が好ましく、120m/g以下がより好ましい。
【0080】
また、気相法アルミナの平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、11nm以上がより好ましい。5nm以上であると、インク吸収性を保持しやすい。また、30nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。30nm以下であると、銀インクがインク受容層の表面に定着し、高い金属光沢を得やすい。
【0081】
本実施形態に用いるアルミナ水和物及びアルミナは、水分散液としてインク受容層用塗工液に混合することが好ましく、その分散剤として酸を使用することが好ましい。酸としては、
一般式(Y):R−SO
(一般式(Y)中、Rは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルケニル基の何れかを表す。Rは、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアシル基で置換されていてもよい。)
で表されるスルホン酸を用いることが、画像の滲みを抑制する効果が得られるため好ましい。本実施形態においては、上記酸の含有量は、アルミナ水和物及びアルミナの合計の含有量に対して、1.0質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以上1.6質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
インク受容層に用いるシリカは、その製法により湿式法と乾式法(気相法)に大別される。湿式法としては、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が知られている。一方、乾式法(気相法)としては、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)や、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が知られている。本実施形態においては、乾式法(気相法)により得られるシリカ(以下、「気相法シリカ」ともいう)を用いることが好ましい。これは、気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性が特に高く、また、屈折率が低いので、インク受容層に透明性を付与でき、良好な発色性が得られるためである。具体的に、気相法シリカとしては、アエロジル(日本アエロジル製)、レオロシールQSタイプ(トクヤマ製)などが挙げられる。
【0083】
本実施形態において、気相法シリカのBET法による比表面積は50m/g以上400m/g以下であることが好ましく、200m/g以上350m/g以下であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態において、気相法シリカは、分散剤によって分散されている状態で、インク受容層用の塗工液に用いられることが好ましい。分散状態での気相法シリカの粒子径は、50nm以上300nm以下であることがより好ましい。尚、分散状態での気相法シリカの粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0085】
本実施形態において、アルミナ水和物、アルミナ、シリカは混合して使用してもよい。具体的には、アルミナ水和物、アルミナ、シリカから選択される少なくとも2種を、粉体状態で混合、分散して分散液とする方法が挙げられる。本実施形態においては、無機粒子として、アルミナ水和物及び気相法アルミナを共に用いることが好ましい。
【0086】
<バインダー>
本実施形態において、インク受容層はバインダーを含有することが好ましい。本実施形態において、バインダーとは、無機粒子を結着し、被膜を形成することができる材料を意味する。
【0087】
本実施形態においては、インク吸収性の観点から、インク受容層中の、バインダーの含有量が、無機粒子の含有量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、インク受容層の結着性の観点から、上記比率は、5.0質量%以上が好ましく、8.0質量%以上がより好ましい。
【0088】
バインダーとしては例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、及びポリビニルアルコール、並びに、それらの誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体などのアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス;上記の重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;カチオン基を用いて上記重合体をカチオン化したもの;カチオン性界面活性剤を用いて上記重合体の表面をカチオン化したもの;カチオン性ポリビニルアルコール下で上記重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの;カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの;メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂などの水性バインダー;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂が挙げられる。これらのバインダーは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0089】
上記したバインダーの中でも、ポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体を用いることが好ましい。ポリビニルアルコール誘導体としては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基または第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールが好ましい。
【0090】
インク受容層用塗工液を調製する際は、ポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体を水溶液として使用することが好ましい。その際、水溶液中のポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール誘導体の固形分の含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0091】
<架橋剤>
本実施形態において、インク受容層は更に架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、アルデヒド系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、ジルコニウム系化合物、アミド系化合物、アルミニウム系化合物、ホウ酸、及びホウ酸塩などが挙げられる。これらの架橋剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。特にバインダーとしてポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体を用いる場合は、上記した架橋剤の中でも、ホウ酸やホウ酸塩を用いることが好ましい。
【0092】
ホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、ジホウ酸などが挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩が好ましい。例えば、ホウ酸のナトリウム塩やカリウム塩などのホウ酸のアルカリ金属塩;ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩などのホウ酸のアルカリ土類金属塩;ホウ酸のアンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、オルトホウ酸を用いることが、塗工液の経時安定性とクラックの発生を抑制する効果の観点から好ましい。
【0093】
架橋剤の使用量は、製造条件などに応じて適宜調整することができる。本実施形態においては、インク受容層中の、架橋剤の含有量が、バインダーの含有量に対して、1.0質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0094】
更に、バインダーがポリビニルアルコールであり、架橋剤がホウ酸及びホウ酸塩から選択される少なくとも1種である場合には、インク受容層中の、ポリビニルアルコールの含有量に対する、ホウ酸及びホウ酸塩の合計の含有量が、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0095】
<染料定着剤>
本実施形態のインク受容層は、染料定着剤を含有する。本実施形態における染料定着剤とは、染料を含有する水性染料含有インクを凝集することができる材料を意味する。染料定着剤としては、例えば1〜4級アミン又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー(重合体)、ポリ塩化アルミニウム、ジルコニウム化合物などが挙げられる。1〜4級アミンの代表的なものを列挙すれば、1級アミンはメチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、アリルアミンなど、2級アミンはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジアリルアミン、ジシアンジアミド、ジメチレントリアミン、ジエチレントリアミンなど、3級アミンはトリメチルアミン、トリエチルアミンなど、4級アミンはジアリルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの1〜4級アミンの誘導体等を単量体とするポリマーは、1種の単量体の重合体でもよく、複数種の単量体の共重合体でもよい。1〜4級アミンの誘導体等を単量体とするポリマーは、遊離型であってもよいし、塩型であってもよい。塩型の場合、塩の種類については特に制限はなく、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩が挙げられる。また、塩型の場合は、完全な塩の形であってもよいし、部分塩の形であってもよい。ジルコニウム化合物の代表的なものを列挙すれば、塩酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0096】
これらの染料定着剤はいずれもカチオン性であり、染料の末端基のアニオンと反応し、染料が凝集することで、強い染料定着作用を持つ。これらの染料定着剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、染料定着力が強い、1〜4級アミンの誘導体等を単量体とするポリマーの塩型、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。
【0097】
本実施形態では、銀膜上での染料定着度を高くする観点から、染料定着剤の水性染料インクを凝集する力(以下、染料定着力と称す)は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。60%以上であると、染料が染料定着剤と凝集しやすく、染料が銀膜上に留まりやすくなることからより鮮やかな任意の色調の金属光沢を得られる。
【0098】
尚、染料定着力は以下のように算出される。まず、濃度を1%に調整した染料定着剤1.36mL中に染料を含んだ水性インク0.64mLを滴化した混合液を作製し、撹拌する。その後、混合液を0.2μmのフィルターでろ過して凝集物を除去したのち、水で1000倍に希釈した混合液を得る。得られた混合液を分光光度計U−3900/3900H(日立製作所社製)を用いて分光スペクトルを測定する。銀インクの分光スペクトルの波長420nmにおける吸光度をKa、得られた混合液の分光スペクトルの波長420nmにおける吸光度をKbとすると、染料定着力は(式1)で表される。
【0099】
染料定着力=(Ka−Kb)/Ka×100・・・(式1)
本実施形態における染料定着力は上述の方法を用いたが、次の例でもよい。例えば濁度計を用いた濁度値の変化割合から算出する方法や、ヘーズメーターを用いたヘーズ値の変化割合から算出する方法などが挙げられ、水性染料インクが凝集した割合を算出できればどのような方法であっても良く、特に限定されない。
【0100】
本実施形態においては、インク受容層中の染料定着剤の含有量が、0.2g/m以上5.0g/m以下が好ましい。0.5g/m以上3.0g/m以下がより好ましい。0.2g/m以上であることで、染料が銀膜上に留まりやすく、鮮やかな任意の色調の金属光沢が得られやすい。5.0g/m以下であることで、銀インクで金属光沢を印字しない領域の染料の画質の劣化やインク吸収性の低下が起こりにくい。染料定着剤の含有量は、様々な分析手法を用いて計測できれば特に限定されないが、染料定着剤に含まれる無機物や有機物を分析すればよい。例えば、ICP質量分析法、ICP発光分光分析法、グロー放電質量分析法、原子吸光分析法、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法などが挙げられる。
【0101】
本実施形態では、染料定着剤はインク受容層に含有していれば特に限定されないが、インク受容層を2層以上設ける場合においては、最表層を形成する受容層において上記範囲であることが好ましい。また、染料定着剤を含有していないインク受容層を形成させた後、別途染料定着剤を含んだ溶液を塗工し、染料定着剤の含有量が上記範囲であるインク受容層を形成してもよい。
【0102】
<その他の添加剤>
本実施形態において、インク受容層は、これまで述べてきたもの以外のその他の添加剤を含有してもよい。具体的には、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料などが挙げられる。
【0103】
<下塗り層>
本実施形態においては、基材とインク受容層との密着性を向上する目的で、基材とインク受容層との間に、下塗り層を設けてもよい。下塗り層は、水溶性ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどを含有することが好ましい。下塗り層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下が好ましい。
【0104】
<バックコート層>
本実施形態においては、基材のインク受容層が設けられる面とは反対側の面に、ハンドリング性、搬送適性、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過性を向上する目的でバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、白色顔料やバインダーなどを含有することが好ましい。バックコート層の膜厚は、乾燥塗工量が、1g/m以上25g/m以下となるようにすることが好ましい。
【0105】
<銀インクの融着>
次に、本実施形態において用いられるメタリックインクの被記録媒体上でのドット形成状態、及び、メタリックインク中の金属粒子が膜を形成する過程について説明する。以下では、メタリックインクとして、金属粒子としてナノオーダーサイズの粒径の銀粒子を溶剤内に分散された状態で含有する銀ナノインク(以下、「銀インク」とも表記する)を例に説明する。
【0106】
図6は、複数の銀インク滴が被記録媒体に付与される際のドット形成と膜形成を示す模式図であり、被記録媒体2の断面方向から見た図である。第1インク滴が付与された後、続けて第2インク滴が付与されたときの状態について説明する。図6(a)は、被記録媒体2に着弾する直前の第1インク滴201と、第1インク滴201が吐出されてから一定時間遅れて吐出された第2インク滴202を示す。それぞれのインク滴は、銀粒子203と溶剤204を含有する。インク滴に含まれる銀粒子は、溶剤内にナノオーダーサイズの銀粒子として分散された状態であり、局在表面プラズモン共鳴により無彩色な銀色の光沢は発現されておらず、他の色を呈する。
【0107】
次に、図6(b)に示すように、第1インク滴201が第2インク滴202よりも先に被記録媒体2に着弾する。先に着弾した第1インク滴201は、溶剤204が被記録媒体内に浸透、または、インク滴表面から蒸発し、溶剤が減少する。これに伴い、銀粒子203同士が接触することで、銀粒子の粒子径の増大や形状変化が進む。その結果、図6(c)に示すように、被記録媒体の表面近辺に、銀粒子が密に集まってなる銀粒子膜が形成され、局在表面プラズモン共鳴が減少し、無彩色な銀色の光沢が発現する。また、先行して着弾した第1インク滴201の銀粒子膜化が進行している間に、第1インク滴201と近接して後続の第2インク滴202が着弾する。第2インク滴202においても同様に、溶剤の浸透または蒸発に伴い、銀粒子膜が形成される。その際、図6(d)に示すように、銀粒子膜の形成途中のこれらのインク滴が接触すると、インク滴同士が結合して銀粒子膜205が形成される。
【0108】
<メタリックカラー画像形成>
次に、本実施形態の特徴構成である、メタリックカラー画像を形成するメカニズムについて説明する。ここでは、染料定着材を含有する受容層を有する被記録媒体上に、メタリックインクを用いたメタリック層を形成し、メタリック層上にカラーインクを用いた着色層を形成する。
【0109】
まず、染料定着剤を含有する被記録媒体上に、記録ヘッド5からメタリックインクが付与される。被記録媒体の受容層に含有される染料定着剤は、メタリックインクの水分によって再溶解し、時間の経過に伴ってメタリックインク内に拡散する。メタリックインクの水性媒体が乾燥する前に、染料定着剤がメタリックインク内の銀粒子と接触することにより、表面または内部に染料定着剤が存在するメタリック層が形成される。
【0110】
次に、形成されたメタリック層上に染料含有インクが付与される。すると、メタリック層の表面または内部に存在する染料定着剤が、染料含有インク中の水分によって再溶解し、染料含有インク内に入り込む。そして、染料定着材と、染料含有インク中の染料とがメタリック層上で反応し、凝集する。これにより、メタリック層上に着色層が形成される。
【0111】
このように、メタリック層上に染料含有インクが付与されることで着色層が形成され、銀色以外の金属光沢を呈するメタリックカラー画像が表現される。尚、銀色以外の金属光沢のみを呈したい場合には、メタリック層が形成された領域と同じ領域に着色層を形成すればよい。また、銀色の金属光沢を呈するメタリック画像を表現するためには、メタリック層のみを形成すればよい。着色層は、任意の色調の金属光沢を呈すれば特に限定されないが、1種の染料色素からなるインク組成物であってもよく、2種以上の染料色素からなるインク組成物であってもよい。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等のカラーのインクを複数色用いて混色させてもよい。また、ブラック(Bk)インクを加えてもよい。
【0112】
しかしながら、本発明者らの検討により、メタリック層上に複数種類のインクを混色させて着色層を形成する場合、所望の色調の金属光沢が得られない場合があることがわかった。複数種類のインクの組み合わせにおいて、一方のインクの色材はメタリック層上に多く残るが、他方のインクの色材はメタリック層下に浸透してしまった場合、浸透した色材の色味が発色に寄与しなくなってしまう。例えば、本発明者らの検討では、インクカートリッジBC−341カラー(キヤノン製)の染料マゼンタインクと染料イエローインクの組み合わせで赤色の金属光沢を表現する際に、染料マゼンタインクによる発色が低下してしまった。この場合の染料マゼンタインクと染料イエローインクの2種類のインクを付与する場合の画像形成メカニズムについて、図7および図8を用いて説明する。尚、インクカートリッジBC−341カラー(キヤノン製)で用いられる染料含有インクにおいて、CMYの3色で比較すると、凝集性が最も高いのはシアンインクであり、次がイエローインクであり、凝集性が最も低いのはマゼンタインクである。尚、カラーインクにおける染料の凝集性の高さの関係は、染料定着材との反応性の高さの関係と同じである。すなわち、相対的に凝集性の高いインクは染料定着材との反応性が高く、相対的に凝集性の低いインクは染料定着材との反応性が低いと言える。
【0113】
図7は、被記録媒体上に銀インクと単一色の水性インクが付与された場合に、メタリック層と着色層が形成される様子を説明するための模式図である。図7(a)は、染料定着材701を含有する受容層を有する被記録媒体705に、銀粒子703を含有するメタリックインク702が着弾した様子を示している。図7(b)及び(c)は、図7(a)に示したメタリックインク702が着弾した状態から、時間の経過とともにメタリック層が形成される様子を示している。
【0114】
図7(b)では、被記録媒体705の表層にメタリックインクの溶剤704が残っている。そして、被記録媒体705が含有する染料定着材701は、メタリックインクに入り込んでいるが、メタリックインク層(銀層)の表層までは到達していない。
【0115】
図7(c)では、図7(b)から時間が経過して溶剤704が減少し、被記録媒体705の表層にはほとんど残っていない。メタリックインクに含まれる水分は、被記録媒体705への吸収速度が溶剤704よりも速い。本図では、水と溶剤がメタリック層の空隙から抜け、被記録媒体705の内部に浸透している。一方、メタリックインクの水分によって再溶解した染料定着材701は、十分な量がメタリック層の表層まで到達している。
【0116】
図7(d)は、染料定着材701が表層に到達したメタリック層の上に、染料含有インク706が着弾した様子を示している。ここでは、染料含有インク706はマゼンタインクであるとする。前述したように、凝集性の低いマゼンタインクが着弾した場合であっても、メタリック層の表層に到達している染料定着材によって、メタリック層上でマゼンタの色材が凝集する。
【0117】
図7(e)では、メタリック層の上に凝集した染料マゼンタの着色層が形成された様子を示している。このとき、メタリック層の空隙をメタリックインクの溶剤704が埋めているため、染料含有インクがメタリック層内部へ浸透する速度は遅い。これにより、染料マゼンタの色調を呈する金属光沢を有するメタリックカラー画像を得ることができる。同様に、染料シアンインクもしくは染料イエローインクを用いた場合にも、メタリック層上に着色層が形成され、染料シアンもしくは染料イエローの色調を呈する金属光沢を有するメタリックカラー画像を得ることができる。
【0118】
図8は、被記録媒体上に銀インクと複数種類の染料インクが付与された場合に、メタリック層と着色層が形成される様子を説明するための模式図である。ここでは、染料含有インクとして、凝集性が比較的高い染料イエローインクと凝集性が比較的低い染料マゼンタインクを用い、略等量ずつ付与される階調の例で説明する。
【0119】
図8(a)は、図7(a)〜(c)と同様に、着弾したメタリックインクによってメタリック層が形成され、メタリック層の表層に染料定着材801が到達した状態を示している。
【0120】
図8(b)は、表層に染料定着材801が存在したメタリック層上に、染料マゼンタインク806及び染料イエローインク807が付与された直後の状態を示している。相対的に凝集性の高いイエローインクと相対的に凝集性の低いマゼンタインクがメタリック層上に付与された場合、その凝集性の差によって、比較的早い段階で染料イエローがメタリック層上で凝集し始める。次に、メタリック層の表層に到達している染料定着材のうち、染料イエローの凝集に使用されなかった染料定着材によって、染料マゼンタの凝集が進む。そして、凝集できなかった染料マゼンタは、インク中に含まれる水性媒体や水とともにメタリック層下に浸透する。
【0121】
図8(c)は、メタリック層上に残った染料イエローと染料マゼンタの状態を示す図である。メタリック層上に凝集できる染料の総量は変わらないが、凝集する速度が異なる染料が混在することにより、凝集性の低い染料が凝集する量は相対的に少なくなる。本図の例において、付与されたイエローインクとマゼンタインクは略等量であったが、メタリック層上には、相対的に凝集性が高い染料イエローの残る量が多く、相対的に凝集性が低い染料マゼンタの残る量が少なくなる。このため、略等量ずつ付与された場合であっても、より黄色みが強く、視覚的にはオレンジ色に近い赤色のメタリックカラーが発現する。
【0122】
次に、図9を用いて、相対的に凝集性の高いイエローインクが付与された後に、相対的に凝集性の低いマゼンタインクを付与する場合について説明する。2つのインクの付与順を変更することにより、メタリック層の下への浸透を抑制する。本図の場合においても、イエローインクとマゼンタインクの付与量は略等量である。
【0123】
図9(a)は、図8(a)と同様に、メタリックインクが付与された後の状態を示しており、染料定着材901がメタリック層の表層に存在する。図9(b)は、メタリック層上にイエローインクが付与された直後の状態を示している。付与されたイエローインク中の染料イエローは、メタリック層に存在する染料定着材により凝集を始め、メタリック層上に染料イエローが定着していく。
【0124】
図9(c)は、メタリック層の表層に染料イエローが凝集し、定着が進んでいる間に、マゼンタインクが付与された状態を示している。メタリック層の表層では、染料イエローの凝集が進み、その大部分が定着しているが、後から付与されたマゼンタインクによってその一部が再溶解する。再溶解した部分では、染料定着材の一部が染料イエローと染料マゼンタのいずれかと反応し、再度凝集が進む。前述したように2つのインクの凝集しやすさに差があるため、染料イエローの方がより多く再凝集し、凝集できない染料マゼンタは、インク中に含まれる溶剤や水とともにメタリック層下に浸透する。一方で、染料イエローが凝集し定着した中で、後に付与されたマゼンタインクによって再溶解されなかった部分では、メタリック層の空隙が定着した染料イエローで埋まった状態であると推定される。また、完全に蒸発していないインクの溶剤も、メタリック層の空隙を埋める働きをしていると推定される。従って、メタリック層上で凝集が進み定着した染料イエローで目止めされた状態となり、その上に付与された染料マゼンタは、メタリック層下への浸透が阻害される。その結果、図9(d)では、メタリック層上に染料イエローと同量もしくは同量以上の染料マゼンタが残る。
【0125】
以上説明したように、凝集性の異なる複数インクを用いて被記録媒体上にメタリックカラー画像を形成させる為には、各インクの凝集性に応じて付与タイミングを制御することが有効である。そしてそのために、相対的に凝集性が低いインクを、相対的に凝集性が高いインクよりも後に付与する。これにより、相対的に凝集性が低いインクの色材が内部に浸透してしまうことを抑制し、所望の発色のメタリックカラー画像を得ることができる。
【0126】
尚、上記例では、イエローインクとマゼンタインクの付与量が略等量である階調について説明したが、イエローインクとマゼンタインクの付与量については、これに限られるものではない。イエローインクとマゼンタインクのいずれか一方の付与量が多い階調においても、色材の凝集性に応じた付与タイミングを制御することが好ましい。
【0127】
次に、図10を用いて、イエローインクの付与量がマゼンタインクの付与量よりも多い階調において、イエローインクを付与した後にマゼンタインクを付与する場合について説明する。図10(a)〜(d)は、図9(a)〜図9(d)と同様の状態を示しており、本例では、イエローインクの付与量がマゼンタインクの付与量よりも多いという点で異なる。メタリック層上で先に付与された染料イエローの凝集が進み、定着した染料イエローで目止めされた状態となる。その上に付与された染料マゼンタは、メタリック層下への浸透が阻害される。本図の例では、付与されるイエローインクの量が多く、染料イエローによる目止めの効果が高くなるため、染料マゼンタが表層に残る確率が高くなる。
【0128】
次に、図11を用いて、図9と同様にイエローインクが付与された後にマゼンタインクが付与される構成で、イエローインクの付与量がマゼンタインクの付与量よりも少ない場合について説明する。図11(a)〜(d)は、図9(a)〜(d)と同様の状態を示しており、本例では、イエローインクの付与量がマゼンタインクの付与量よりも少ない。メタリック層上で先に付与されたイエローインクの凝集が進み、定着した染料イエローで目止めされた状態となる。その上からマゼンタインクが付与され、一部が再溶解する。付与されたイエローインクの量が少ないため、再溶解した部分で再度凝集が進むと、染料マゼンタが表層に残ることになる。
【0129】
次に、インクの凝集性に応じて付与のタイミングを制御する方法について具体的に説明する。
【0130】
<記録動作の説明>
図12(a)は、記録ヘッド5に設けられたノズル列(記録素子列)の配置と、実際にインクを吐出するノズルを示す模式図である。前述したように、メタリックカラー画像を表現するためには、メタリックインクを付与した後にカラーインクを付与する必要があり、さらに、一定値以上の付与時間差を設ける必要がある。本図では、説明の容易さを考慮し、各インク色がそれぞれ1回の走査で画像を記録する方法を例に説明する。
【0131】
画像を記録する際には、記録ヘッド5を主走査方向(図のX方向)に走査させながらインクを吐出する。1回の記録走査が行われると、被記録媒体を副走査方向(図のY方向)に搬送する。このような記録ヘッド5による記録走査と被記録媒体の搬送とを繰り返すことにより、被記録媒体上に段階的に画像が形成される。
【0132】
その上で、前述したようなメタリックインクとカラーインクの付与時間差を設ける。図のように、メタリックインクを付与するためのノズルがY方向に配列するメタリックノズル列1004において、実際にインクを吐出するノズル(以下、使用ノズルと称する)を、黒く塗られた先端ノズルの4ノズルとする。同様に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のカラーインクの各ノズル列1001、1002、1003において、実際にカラーインクを吐出する使用ノズルを、それぞれ斜線で塗られた4ノズルとする。ここで、M(マゼンタ)インクの使用ノズルは、Y方向において最も下流側に位置する4ノズルである。そして、C(シアン)、Y(イエロー)の使用ノズルは、マゼンタインクの使用ノズルよりもY方向上流側に位置するノズルであって、メタリックインクの使用ノズルよりもY方向下流側に位置する4ノズルである。ここでは、M(マゼンタ)の使用ノズルが、C(シアン)、Y(イエロー)の使用ノズルとは重ならないように設定されている。尚、被記録媒体を1回の搬送動作で搬送する量を4ノズル分に相当する長さとすることで、先にメタリックインクを付与し、後にカラーインクを付与することが可能である。さらに、上記のような構成により、カラーインクのインク色間での付与タイミングをずらすことが可能である。
【0133】
図12において、被記録媒体1005内の黒く塗られた領域は、メタリックインクが付与された領域を示している。同様に、被記録媒体1005内の斜線で塗られた領域は、メタリックインクが付与された後にシアンインク及びイエローインクが付与された領域を示している。同様に、被記録媒体1005内のドット模様で塗られた領域は、メタリックインクが付与された後にシアンインク及びイエローインクが付与され、その後にマゼンタインクが付与された領域を示している。図中Y方向の最も上流側から、メタリックインクの使用ノズル、次にシアン及びイエローインクの使用ノズルを設定し、最も下流側にマゼンタインクの使用ノズルを設定する。これにより、メタリックインク、シアン及びイエロー、マゼンタの順で、タイミングをずらしてインクが付与される。
【0134】
また本実施形態では、記録ヘッドにおいて、Y方向におけるメタリックインクの使用ノズルの範囲とカラーインクの使用ノズルの範囲が重複しないだけでなく、メタリックインクとカラーインクのいずれも吐出しないノズルの領域が設定される。以下、この領域をブランクノズル領域と呼ぶ。いずれのインクも吐出しないブランクノズル領域を設けることにより、メタリックインクが付与されてからカラーインクが付与されるまでの間に十分な時間差を設けることができる。図12の例では、メタリックインクが付与されてからシアンインク及びイエローインクが付与されるまでに、インクが付与されない記録走査が2回行われる。すなわち、メタリックインクとカラーインクの間に2走査分の時間差が設けられている。この時間差により、メタリックインクに十分な乾燥時間を与え、被記録媒体に含有される染料定着材が、形成されたメタリック層の表層に現れる。この結果、被記録媒体上にメタリックインクの層とカラーインクの層を作り出すことができ、より光沢性と彩度の高いメタリックカラー画像を表現することができる。
【0135】
図12(b)は、メタリックカラー画像を記録するための記録動作を示す模式図である。ここでは、赤色のメタリックカラー画像を記録する例で説明する。記録ヘッド5を1回走査させ、被記録媒体をY方向に4ノズル分に相当する搬送量で送り、これを繰り返すことによって被記録媒体上にメタリックカラー画像が記録される。
【0136】
尚、本実施形態ではシアン、マゼンタ、イエローの3色のカラーインクを用いたが、メタリックインクと各カラーインクとの間に必要な時間差はそれぞれ異なる場合が多い。このため、最も長い時間差が必要な色のインクに合わせて時間差を設定することが望ましい。例えば、染料のマゼンタインクは凝集が起こりにくいため、メタリックインク層の上にマゼンタインクが残りにくい。この場合は、マゼンタインクに合わせた時間差になるように使用ノズルの数を設定することで、あらゆるカラーインクとメタリックインクとの組み合わせにおいても、所望の発色のメタリックカラー画像が表現できる。
【0137】
尚、使用するノズルの数と搬送量は上記例に限ったものではない。例えば、メタリックインクが速乾性のもので時間差を短くできる場合には、それぞれの使用ノズルを増やすことも可能である。例えば、メタリックインクの使用ノズル数を上流側の6ノズル、カラーインクの使用ノズルを下流側の6ノズルに設定し、被記録媒体の搬送量を6ノズル分に相当する長さとする。これにより、生産性を向上させることができる。また、メタリックインクの乾燥時間をより長く設定する必要がある場合には、メタリックインクの使用ノズルを上流側の3ノズルに設定し、カラーインクの使用ノズルを下流側の3ノズルに設定する。その場合、被記録媒体の搬送量を3ノズル分に相当する長さとすることで、付与時間差を十分に取ることができる。
【0138】
他にも、メタリックインクの使用ノズルを上流側3ノズルに設定し、カラーインクの使用ノズルを下流側の6ノズルに設定し、被記録媒体の搬送量を3ノズル分に相当する長さとする。このような構成により、カラーインクを付与するための走査の回数を増やすことができ、より多くのカラーインクを付与することが可能となる。
【0139】
また、上記例では、イエローインクの使用ノズルとマゼンタインクの使用ノズルは、Y方向において範囲が重ならないように設定されているが、インク色間のノズル設定方法はこれに限られるものではない。イエローインクの使用ノズルとマゼンタインクの使用ノズルの一部が重複するように設定してもよく、イエローインクの使用ノズルに対してマゼンタインクの使用ノズルがより下流側に設定されていればよい。イエローインクが付与される記録走査よりも後にマゼンタインクが付与される記録走査があれば、マゼンタインクが表層上に残る確率を高くすることができる。このとき、カラーインクの記録走査の回数を2回以上にする必要があり、2回以上の記録走査でインクを付与する、所謂マルチパス記録を行う。これにより、例えば、イエローインクのみを付与する走査、イエローインクとマゼンタインクの双方を付与する走査、マゼンタインクのみ付与する走査という付与順とすることができる。
【0140】
尚、記録ヘッド5を走査させる幅は、X方向における被記録媒体の最大幅であってもよく、画像データの幅と等しくなるように短くしてもよい。また、1枚の被記録媒体内に複数の画像が含まれ、領域によって画像幅が異なる場合には、領域に応じてメタリックインクとカラーインクとの付与時間差も短く変化してしまう。この場合には、光沢性と彩度の良いメタリックカラー画像が表現できなくなってしまうため、走査間のヘッド休止や走査速度の低下等、付与時間差を調整することが好ましい。
【0141】
また、各カラーインクの使用ノズル位置に伴うインクの付与順制御についても、上記例に限られるものではない。図13(a)は、凝集性の高い順、すなわち本例では、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクの順に付与されるように使用ノズルを設定している。このとき、Y方向において各インクの使用ノズルの範囲は重複しない。図13(b)は、Y方向において各インクの使用ノズルの範囲が重複して設定されている。
【0142】
図14は、図13(b)で示した使用ノズルの設定を用いてメタリックカラー画像を記録する記録動作を示す模式図であり、図15は、各インクが各走査で使用するパスマスクを示す図である。本例においては、被記録媒体の1回の搬送は2ノズル分に相当する長さである。従って、図13(b)で示した使用ノズルの設定により、メタリックインクが付与されてからカラーインクが付与されるまでに記録ヘッド5の3回の走査分の十分な時間差が設けられる。さらに、シアンインク、イエローインクとマゼンタインクの付与時間差が記録ヘッドの1走査分の時間となり、最後の記録走査では相対的に凝集性の低いマゼンタインクのみが付与される。これにより、メタリックインクと各カラーインクは2回の記録走査で画像を形成する2パス記録が行われる。カラーインクを複数回の記録走査で付与することにより、搬送量誤差や各ノズルの吐出特性による画質低下を抑制するための、所謂マルチパス効果を得ることができる。
【0143】
図15(a)〜(d)は、それぞれメタリックインク、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクに用いられるパスマスクである。黒い画素がインクの付与を許容する記録許容画素であり、白い画素がインクの付与を許容しない非記録許容画素である。各走査(パス)において、インクを付与する比率は、いずれも1パス目が50%、2パス目が50%である。1パス目と2パス目は、吐出ノズルが重複することなく補完関係にある。
【0144】
上記構成により、メタリックカラー画像の記録において、相対的に凝集性の低いインクに寄与する色味の発色低下を抑制し、ユーザの所望の色味のメタリックカラー画像を得ることができる。
【0145】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、カラーインクの使用ノズルの設定が、全色ともY方向に重複して設定されている。また、各カラーインクは3回の記録走査で画像を形成する3パス記録を実行するが、その際にインク毎の各記録走査における付与比率を異ならせる。尚、記録装置及びインクについては第1の実施形態と同様である。
【0146】
図16は、本実施形態における記録ヘッド5の使用ノズル領域と、メタリックカラー画像の記録動作を示す模式図である。メタリックインクは上流側の4ノズル、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクのカラーインクはいずれも下流側の6ノズルに設定されている。被記録媒体の1回の搬送量は2ノズル分である。これにより、メタリックインクは2回の走査で、カラーインクは3回の走査で画像を形成するマルチパス記録が行われる。尚、メタリックインクについては、図15(a)に示したパスマスクを使用する。
【0147】
図17(a)及び(b)は、本実施形態においてカラーインクに用いるパスマスクを示す模式図である。前述のように、各走査におけるインクの付与比率は、インク色毎に異なるように設定されている。図17(a)及び(b)のいずれにおいても、シアンインクは、1パス目の付与比率が66.6%、2パス目の付与比率が16.7%、3パス目の付与比率が16.7%である。同様に、イエローインクは、1パス目の付与比率が16.7%、2パス目の付与比率が66.6%、3パス目の付与比率が16.7%である。同様に、マゼンタインクは、1パス目の付与比率が16.7%、2パス目の付与比率が16.7%、3パス目の付与比率が66.6%である。それぞれのマスクにおいて、各走査においてインクが吐出されるノズルは重複することなく補完関係にある。尚、図17(a)は、パスマスクにおいて、インクの付与(記録)を許容する記録許容画素と許容しない非記録許容画素の配置がインク色毎に異なる形態である。インク色毎に異なる配置のパスマスクを使うことにより、ロバスト等の位置ずれに対する画質低下を抑制することができる。一方、図17(b)は、記録許容画素と非記録許容画素の配置が同じで、付与比率が高いパスがインク色毎に異なる形態である。同じ配置のマスクの組み合わせで、使用されるパスをずらすことにより、同一画素に対して複数色のインクが同じパスで重複して付与されることがないという効果がある。
【0148】
尚、図16に示したように、メタリックインクとカラーインクの間に6ノズル分のブランクノズル領域が設けられている。走査間の1回の搬送量が2ノズル分に相当するため、メタリックインクとカラーインクの間には、3走査分の付与時間差が設けられている。この付与時間差により、メタリックインクの層が形成され、被記録媒体上の染料定着材がメタリック層の表層に現れる。また、カラーインクについては、各色3回の走査でインクが付与されるが、3回の走査のうち多量のインクを付与する走査が異なる。本例では、シアンインクが1パス目で多く付与され、イエローインクが2パス目で多く付与され、マゼンタインクが3パス目で多く付与されるように付与比率が設定されている。最後の走査である3パス目に、相対的に凝集性の低いマゼンタインクが多量に付与されることにより、マゼンタインクにおけるメタリックカラー画像の発色低下を抑制することが可能となる。
【0149】
尚、本実施形態のように、イエローインクとマゼンタインクとは同じ走査で付与されてもよいが、マゼンタインクが付与される前にイエローインクの大半が付与されていることが好ましい。例えば、付与されるイエローインクの全量のうち1/2以上の量が、マゼンタインクの大半が付与される前(本実施形態では2パス目)で付与されれば、イエローインクによる目止めの効果が高い。尚、複数回の走査で1/2以上の量のイエローインクを付与してもよい。また、付与されるマゼンタインクの全量のうち1/2以上の量が、イエローインクの大半が付与された後(本実施形態では3パス目)で付与されれば、マゼンタインクの発色低下を抑制する効果が高い。尚、複数回の走査で1/2以上の量のマゼンタインクを付与してもよい。
【0150】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図18は、本実施形態の記録ヘッドを用いた記録動作を示した模式図である。記録ヘッド103には、ノズル配列方向に沿ってメタリックインクを付与するためのノズル、シアンインクを付与するためのノズル、イエローインクを付与するためのノズル、マゼンタインクを付与するためのノズルが重複して配列されている。そして、ノズル配列方向と交差する搬送方向に搬送される被記録媒体に対して画像が記録される、いわゆるフルマルチタイプの記録方式である。メタリックインクのノズル列とシアンインクのノズル列との距離は、カラーインクの各ノズル列間の距離よりも長い。このメタリックインクのノズル列とシアンインクのノズル列の距離により、メタリックインクとカラーインクとの付与時間差が設けられている。さらに、カラーインクについては、凝集性の高い順、すなわちシアンインク、イエローインク、マゼンタインクの順に付与される。これにより、マゼンタインクが最後に付与されるため、色材が被記録媒体内部に浸透することによる発色低下を抑制することができる。
【0151】
(その他の実施形態)
尚、カラーインクの使用ノズルをY方向において重複させるように設定し、さらに各パスの比率も異ならせるよう設定することも可能である。また、カラーインクとしてC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色を用いたが、他にもK(ブラック)、Gy(グレー)、Lc(ライトシアン)、Lm(ライトマゼンタ)を用いてもよい。更に特色としてR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等のインクを用いても良い。これらの場合でも、染料定着材との反応性が低いインクは、染料定着材との反応性が高いインクよりも後に付与するようにタイミングすることで、発色低下を抑制することができる。
【0152】
また、上記実施形態ではメタリックインクを用いたが、下地として付与され、その層を形成するために十分な乾燥時間を必要とするインクであれば、メタリックインク以外のインクを用いてもよい。例えば色のついた被記録媒体や透過性の高い被記録媒体に対してカラーインクを吐出させたい場合に、W(ホワイト)インクを下地として先に付与し、時間差を設けた上でカラーインクを付与する際に上記実施形態の方法を適用することも可能である。
【0153】
また、カラー画像データを2値データに処理した後に、パスマスクを用いて間引くことによりインクを付与する付与比率を制御する形態について説明したが、付与比率の制御は、他の方法であってもよい。元画像をパスごとの比率で分割して多値データに変換し、さらに量子化により2値データに処理する構成であってもよい。
【0154】
また、上記実施形態では、図3に示すように、各ノズル列がY方向において重複するように、且つ、X方向に沿って並ぶ記録ヘッドにおいて、ノズルの使用範囲を制限する方法について説明したがこの形態に限られない。例えば、ノズル列がY方向において重複しないように配置された記録ヘッドを用いてもよい。この場合には、Y方向上流側から、メタリックインクのノズル列、イエローインクのノズル列、マゼンタインクのノズル列の順に配置されていればよい。イエローインクが付与された後にマゼンタインクが付与されることになるため、マゼンタインクの発色低下を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 キャリッジ
2 被記録媒体
5 記録ヘッド
10 記録装置
20 画像処理装置
101 記録装置主制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
図12
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図16
図17
図18