【課題】特定の構造を持ったイエロー染料または特定の構造を持ったマゼンタ染料を用いた感熱転写シートにおいて、地汚れを発生することなく、高い光学濃度、高い耐光性を実現する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、基材上に形成された色材層に、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)〜(4)で表される化合物とを含有させることで、地汚れを発生することなく、高い光学濃度、高い耐光性を有する感熱転写記録用シートが得られることを見出した。
【0015】
【化5】
[式(1)中、
R
11及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アラルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
12、R
14〜R
18は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。]
【0016】
【化6】
[式(2)中、
R
21及びR
22は、アルキル基を表し、
Aは、−SO
2N(R
23)R
24、−CON(R
23)R
24または−COOR
23を表し、
R
23及びR
24は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。]
【0017】
【化7】
[式(3)中、
R
31及びR
32は、それぞれ独立して、アルキル基を表し、
R
33は、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、
R
34は、アルキル基またはアリール基を表す。]
【0018】
【化8】
[式(4)中、
R
41及びR
42は、アルキル基を表し、
R
43は、水素原子、アルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
44は、アルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
45は、水素原子、アルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基または−N(−R
46)R
47を表し、
R
46及びR
47は、以下の(i)または(ii)の規定を満たす。
(i)R
46及びR
47は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。
(ii)R
46とR
47とが互いに結合して環を形成し、R
46及びR
47は環を形成するために必要な原子団を表す。]
【0019】
尚、式(2)〜(4)で表される染料と式(1)で表される紫外線吸収剤とを組み合わせて用いた場合に、特異的に顕著な効果が得られるものである。
【0020】
一般的に紫外線吸収剤は保護層に含有され、紫外線をカットするためにだけ使用される。しかし本発明では、紫外線吸収剤を色材層に含有させることによって紫外線吸収剤が単に紫外線をカットするだけでなく、染料と相互作用することによって前記効果が得られていると推測される。そして、無作為に選んだ染料と紫外線吸収剤とでは前記効果は確認されなかったが、特定の構造を有する染料と紫外線吸収剤とを用いることで、前記効果が確認された。
【0021】
<紫外線吸収剤>
まず、式(1)で表される紫外線吸収剤について説明する。
【0022】
【化9】
[式(1)中、
R
11及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アラルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
12、R
14〜R
18は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。]
【0023】
式(1)中、R
11及びR
13におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル、2−エチルヘキシル基。
式(1)中、R
11及びR
13におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜4個の1級〜3級のアルキレン基を有するものが挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。ベンジル基、フェネチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基。
【0024】
式(1)中、R
11及びR
13におけるアリ−ル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基が挙げられる。置換基を有するアリール基における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、メトキシ基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、具体的には、以下のものが挙げられる。2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、3−メトキシフェニル基。
【0025】
式(1)中、R
12、R
14〜R
18におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル、2−エチルヘキシル基。
【0026】
式(1)で表される構造を有する紫外線吸収剤の化合物は、従来公知の方法を参考にして合成することが可能である。または市販の材料を用いることが可能である。
式(1)で表される化合物の好ましい例として、化合物(1−1)〜(1−8)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0028】
上記式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、また、用途に応じて、2種以上を併用してもよい。
また、式(1)で表される構造を有する化合物(紫外線吸収剤)の含有量は、式(2)〜(4)で表される化合物(染料)の含有量に対して、質量基準において、
紫外線吸収剤の含有量/染料の含有量=1〜2
の関係を満たすことが好ましい。
【0029】
<イエロー染料>
続いて、式(2)で表されるイエロー染料について説明する。
【化11】
[式(2)中、
R
21及びR
22は、アルキル基を表し、
Aは、−SO
2N(R
23)R
24、−CON(R
23)R
24または−COOR
23を表し、
R
23及びR
24は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。]
【0030】
式(2)中、R
21及びR
22におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基。特に、2−エチルヘキシル基の如き分岐状のアルキル基を用いる場合、高彩度、広色域再現性を有し、かつ耐光性が向上するため好ましい。
【0031】
式(2)中、R
23及びR
24におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル、2−エチルヘキシル基。
【0032】
式(2)で表される構造を有するイエロー染料の化合物は、公知の方法を参考にして合成することが可能である。または市販の材料を用いることが可能である。また、式(2)の化合物には、シス−トランス構造異性体があるが、かかるシス−トランス構造異性体も式(2)の化合物に含まれる。
該化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(2)で表される化合物の好ましい例として、化合物(2−1)〜(2−45)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0036】
続いて、式(3)で表されるイエロー染料について説明する。
【0038】
[式(3)中、
R
31及びR
32は、それぞれ独立して、アルキル基を表し、
R
33は、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、
R
34は、アルキル基またはアリール基を表す。]
式(3)中、R
31〜R
34が示すことのできるアルキル基は、特に限定されるものではない。このアルキル基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。
【0039】
式(3)中、R
33及びR
34が示すことのできるアリール基は、特に限定されるものではない。このアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基(2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基)が挙げられる。
R
33が示すことのできるアルコキシ基は、特に限定されるものではない。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基が挙げられる。該化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
式(3)で表される構造を有するイエロー染料の化合物は、公知の方法を参考にして合成することが可能である。または市販の材料を用いることが可能である。
式(3)で表される化合物の具体例として、以下に化合物(3−1)〜(3−5)を示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0042】
<マゼンタ染料>
続いて、式(4)で表されるマゼンタ染料について説明する。
【0044】
[式(4)中、
R
41及びR
42は、アルキル基を表し、
R
43は、水素原子、アルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
44は、アルキル基、無置換のアリール基または置換基を有するアリール基を表し、
R
45は、水素原子、アルキル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基または−N(−R
46)R
47を表し、
R
46及びR
47は、以下の(i)または(ii)の規定を満たす。
(i)R
46及びR
47は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。
(ii)R
46とR
47とが互いに結合して環を形成し、R
46とR
47は環を形成するために必要な原子団を表す。]
【0045】
式(4)中、R
41及びR
42におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基。
【0046】
式(4)中、R
43におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル、2−エチルヘキシル基。
【0047】
式(4)中、R
43におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基が挙げられる。置換基を有するアリール基における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、メトキシ基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、具体的には、以下のものが挙げられる。2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、3−メトキシフェニル基。
【0048】
式(4)中、R
44におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、2−メチルブチル基、2,3,3−トリメチルブチル基が挙げられる。
式(4)中、R
44におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基が挙げられる。置換基を有するアリール基における置換基としては、例えば、メチル基、メトキシ基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、具体的には、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基が挙げられる。
【0049】
式(4)中、R
45におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基が挙げられる。
式(4)中、R
45におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、無置換のフェニル基、置換基を有するフェニル基が挙げられる。
【0050】
式(4)中、R
45が−N(−R
46)R
47である場合、R
46及びR
47におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1〜20個の1級〜3級のアルキル基が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2−エチルプロピル、2−エチルヘキシル基。
【0051】
式(4)中、R
45が−N(−R
46)R
47である場合、R
46及びR
47におけるアシル基としては、特に限定されるものではない。例えば、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基が挙げられる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基が挙げられる。また、アシル基が−C(=O)−A(Aは、ヘテロ環を表す。)であってもよい。具体的には、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基が挙げられる。
【0052】
式(4)中、R
45が−N(−R
46)R
47である場合、R
46及びR
47が互いに結合して形成する環としては、特に限定されるものではないが、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環が挙げられる。
特に、R
46、R
47のどちらか少なくとも一方が、アルキル基である場合、耐光性が優れるために好ましい。
【0053】
該化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(4)で表される構造を有するマゼンタ染料の化合物は、WO92/19684号公報に記載されている公知の方法を参考にして合成することが可能である。または市販の材料を用いることが可能である。また、式(4)の化合物には、シス−トランス構造異性体があるが、かかるシス−トランス構造異性体も式(4)の化合物に含まれる。
式(4)で表される化合物の好ましい例として、化合物(4−1)〜(4−48)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0057】
<感熱転写記録用シート>
次に、本発明に係る感熱転写記録用シートについて説明する。
本発明に係る感熱転写記録用シートは、基材と、該基材上に膜形成してなる色材層とを有する。該色材層には、式(2)もしくは式(3)で表されるイエロー染料または式(4)で表されるマゼンタ染料、さらに式(1)で表される紫外線吸収剤が含有される。
【0058】
感熱転写記録法においては、感熱転写記録用シートの色材層と色材受容層を表面に設けた受像シートとを重ね合わせた状態で、感熱転写記録用シートをサーマルヘッド等の加熱手段を用いて加熱する。このようにすることにより、感熱転写記録用シートの色材層中の色材を受像シートの色材受容層に転写させ、画像形成が行われる。
上記色材層は、基本的に、本発明に係るインクを基材シートに塗布、乾燥して形成されるものである。以下に、さらに詳しく説明する。
【0059】
まず、染料、紫外線吸収剤、結着樹脂、必要に応じて界面活性剤及びワックスを、媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。続いて、分散機を用いて機械的剪断力を加えることにより、上記組成物を安定に溶解または微粒子状に分散させて、インクを調製する。該インクを、基材であるベースフィルムに塗布、乾燥することにより、色材層を形成する。さらに、必要に応じて、後述の転写性保護層、耐熱滑性層等を形成することにより、本発明の感熱転写記録用シートが得られる。なお、本発明の感熱転写記録用シートは、上記製造方法で作製された感熱転写記録用シートに限定されるものではない。
【0060】
[染料]
式(2)もしくは式(3)で表される化合物(イエロー染料)、式(4)で表される化合物(マゼンタ染料)の含有量は、色材層に含まれる結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下であることが好ましい。また、分散液中における色材の分散性の観点から、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。なお、染料を2種以上混合して用いる場合、その総量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0061】
[紫外線吸収剤]
式(1)で表される化合物(紫外線吸収剤)の含有量は、色材層に含まれる結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上150質量部以下であることが好ましい。分散液中における紫外線吸収剤の分散性の観点から、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。なお、紫外線吸収剤を2種以上混合して用いる場合、その総量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0062】
[結着樹脂]
結着樹脂としては、特に限定されるものではないが、有機溶剤可溶性の下記の樹脂であることが好ましい。セルロース樹脂、ポリアクリル酸樹脂、澱粉樹脂、及び、エポキシ樹脂等の水溶性樹脂;ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂、及び、フェノキシ樹脂等。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[界面活性剤]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド加熱時(印画時)に十分な滑性を持たせるために、界面活性剤を添加してもよい。
【0064】
[ワックス]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド非加熱時に十分な滑性を持たせるために、ワックスを添加してもよい。添加することができるワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の感熱転写記録用シートには、上記添加物以外にも、必要に応じて、防腐剤、酸化防止剤、帯電防止剤、粘度調整剤等を添加してもよい。
【0065】
[媒体]
色材層を形成する際に、分散体の調製に用いる媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水または有機溶剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としては、以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン。上記有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
[基材]
次いで、感熱転写記録用シートを構成する基材について説明する。基材は、上記色材層を支持するものであり、ある程度の耐熱性と強度を有するフィルムであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、以下のものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリスチレンフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、セルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等。これらの中でも、機械的強度、耐溶剤性及び経済性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0067】
上記基材の厚さは、0.5μm以上50μm以下であり、転写性の観点から、3μm以上10μm以下であることが好ましい。
基材上に、色材層を形成するために染料インキを塗布する場合、塗工液の濡れ性、接着性等が不足しやすい。そのため、基材の、上記色材層を形成する面(形成面)には、必要に応じて、接着処理を行うことが好ましい。色材層の形成面は、基材の一方の面でも、両面でもよい。接着処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、オゾン処理、コロナ放電処理、紫外線処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、化学薬品処理等を挙げることができる。また、これらの処理を複数組み合わせて行ってもよい。
【0068】
上記基材の接着処理として、基材上に接着層を塗工してもよい。接着層としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の有機材料の微粒子や、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機材料の微粒子等。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中、「部」とあるのは、特に断りのない限り、「質量部」を表す。
【0070】
[実施例1]
[インクの作製]
メチルエチルケトン115部/トルエン115部の混合溶液にポリビニルブチラール樹脂(デンカ3000−K;電気化学工業(株)製)10部を少しずつ添加して溶解させた。ここに、化合物(2−3)7部、化合物(1−1)7部を添加して溶解させることで、インクを製造した。
【0071】
[感熱転写記録用シートおよび画像サンプルの作製]
このインクを厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー(登録商標);東レ(株)製)に乾燥後の厚みが1μmになるように塗布し、乾燥して、感熱転写記録用シートを作製した。
こうして形成した感熱転写記録用シートを、Selphy改造機(キヤノン(株)製)を用いて印画紙に転写して、画像サンプルを作製した。
【0072】
[OD評価]
作製した各画像サンプルについて、分光濃度計(蛍光分光濃度計FD−7、コニカミノルタジャパン(株)製)を用いて、光学濃度(OD)を測定した。
【0073】
[地汚れ評価]
作製した各画像サンプルについて、非画像部のODから印画紙のODを引いた値が0.1を超えるものを「NG」、超えないものを「OK」とした。
【0074】
[耐光性評価]
上記画像サンプルをキセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、(株)東洋精機製作所製)に投入し、(照度:340nmで0.28W/m
2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%)の条件下、70時間曝露した。初期の光学濃度をOD
0とし、70時間曝露後の光学濃度をOD
5としたとき、O.D.残存率を以下のように定義した。
O.D.残存率=(OD
5/OD
0)
なお、O.D.残存率が1を超えたものは≒1.00と表記した。
【0075】
[実施例2〜14]
実施例1において、染料として用いた化合物(2−3)および添加剤として用いた化合物(1−1)を、それぞれ表1に示す化合物に変更し、かつ添加剤/染料の割合を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。染料の量は常に7部とし、添加剤の量を変化させた。例えば、実施例10の場合は、化合物(4−6)7部、化合物(1−1)14部となる。また、調製したインクを用いて感熱転写記録用シートを作成し、実施例と同様の評価を行った。
【0076】
[比較例1〜34]
実施例1において、染料として用いた化合物(2−3)および添加剤として用いた化合物(1−1)を、それぞれ表1に示す化合物に変更し、かつ添加剤/染料の割合を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。尚、染料の量は常に7部とし、添加剤の量を変化させた。例えば、比較例1の場合は、比較化合物C1を7部のみとなる。また、調製したインクを用いて感熱転写記録用シートを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0077】
【化21】
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、実施例での組み合わせにおいては、地汚れを発生することなく、非常に高い光学濃度、高い耐光性(OD残存率)を有し、染料単独の場合の評価より上回ることが分かった。さらに実施例の組み合わせにおいては、ODが2以上、O.D.残存率が0.90以上と極めて高いことが分かった。
【0080】
また例えば実施例4と比較例7との対比から、「染料 化合物(2−21)」と「添加剤 化合物(1−3)」との組み合わせによって、「染料 化合物(2−21)」のみの場合と比較して、ODおよびOD残存率(耐光性)が共に向上したことが分かる。
しかし、比較例2と比較例1との対比からは、「染料 比較化合物C1」と「添加剤 化合物(1−3)」との組み合わせによって、「染料 比較化合物C1」のみの場合と比較して、ODおよび耐光性が共に低下したことが分かる。
つまり、同じ紫外線吸収剤(化合物(1−3))であっても適切な染料に添加しなければODおよび耐光性を向上させることができないことが分かった。
【0081】
前記のように、実施例4と比較例7との対比から、「染料 化合物(2−21)」と「添加剤 化合物(1−3)」との組み合わせによって、「染料 化合物(2−21)」のみの場合と比較して、ODおよび耐光性が共に向上したことが分かる。
しかし、同じ「染料 化合物(2−21)」であっても適切な紫外線吸収剤を用いなければ地汚れが発生したり(比較例10)、ODが低下したり(比較例11〜12)、OD残存率(耐光性)が低下したりする(比較例12〜13)ことが分かった。
【0082】
前記のように、実施例4では「添加剤 化合物(1−3)」によって、「染料 化合物(2−21)」のみの比較例7と比較して、ODおよび耐光性が共に向上した。
しかし、比較例22では「添加剤 化合物(1−3)」によって、「染料 比較化合物Y2」のみの比較例21と比較して、ODは向上したが、OD残存率(耐光性)が低下した。
実施例4及び比較例7で使用された化合物(2−21)と、比較例22及び比較例21で使用された比較化合物Y2とは、同じピリドン骨格を持った染料である。
つまり、実施例4と比較例7、比較例22と比較例21を対比することにより、同じピリドン骨格を持った染料に対して同じ紫外線吸収剤(化合物(1−3))を用いてもODおよびOD残存率(耐光性)を共に向上させることができないことが分かった。
すなわち、特定の構造を有する染料と特定の構造を有する紫外線吸収剤とを組み合わせることが必要であることが分かった。