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特開2021-6505石英ガラス製品及び石英ガラス光学部材の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-6505(P2021-6505A)
(43)【公開日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】石英ガラス製品及び石英ガラス光学部材の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20201218BHJP
【FI】
   C03B37/012 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2020-163325(P2020-163325)
(22)【出願日】2020年9月29日
(62)【分割の表示】特願2017-508059(P2017-508059)の分割
【原出願日】2014年8月13日
(71)【出願人】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージズ リヴォン ファッタル
(72)【発明者】
【氏名】チウリン マ
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021BA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高価な石英ガラスの浪費を避けるため、光学部材の形成の際、石英ガラスの同軸構造または光学プリフォーム全体の延伸を可能にする、石英ガラス光学部材の製造方法の提供。
【解決手段】本方法は、コアロッドガラス及びクラッドガラスからなるシリンダー状の石英ガラス本体22を提供することを含む。該石英ガラス本体は第1の外径を有する角切断された第1の端22aを有する。本方法はさらに、第1の端24a及び、該第1の外径の50%〜110%である第2の外径を有する対向する角切断された第2の端24bを有するガラスの取っ手24を提供することと、該ガラスの取っ手の角切断された端を該石英ガラス本体のものに取り付けることと、該ガラスの取っ手を使用して該石英ガラス本体を延伸炉に誘導することと、を含む。該シリンダー状の石英ガラス本体及び該ガラスの取っ手の界面34近傍のクラッド対コア比の歪みは5%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス光学部材の製造方法であって、
コアロッドガラス及び前記コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなるシリンダー状の石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された第1の端、対向する第2の端、及び前記対向する第1の端と第2の端との間に延在する縦軸を有する、前記シリンダー状の石英ガラス本体を提供することと、
第1の端及び第2の外径を有する対向する角切断された第2の端を有するガラスの取っ手であって、前記第2の外径が、前記第1の外径の50%〜110%である、前記ガラスの取っ手を提供することと、
前記ガラスの取っ手の前記角切断された第2の端を前記石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に取り付けて界面を画成することと、
前記ガラスの取っ手を使用して前記石英ガラス本体を延伸炉に誘導し、前記石英ガラス本体の前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスを加熱し、石英ガラス光学部材を製造することと、を含み、前記界面近傍のクラッド対コア比の歪みが5%未満である、前記方法。
【請求項2】
前記ガラスの取っ手の組成物が、前記シリンダー状の石英ガラス本体の組成物と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスの取っ手の組成物が、前記石英ガラス本体の組成物と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスの取っ手が、中実ロッドまたは中空シリンダー状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラスの取っ手が、角切断された端を有する光ファイバープリフォームであり、前記シリンダー状の石英ガラス本体が、既延伸光ファイバープリフォームの残部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラスの取っ手が、スクラップ光ファイバープリフォーム状である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリンダー状の石英ガラス本体が光ファイバープリフォームである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シリンダー状の石英ガラス本体が、オーバークラッドシリンダーに囲まれたコアロッドの同軸アセンブリであり、前記コアロッド及び前記オーバークラッドシリンダーが、前記延伸炉で加熱される前は互いに離れた状態に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラスの取っ手が、オーバークラッドシリンダーに囲まれたコアロッドの同軸アセンブリであり、前記コアロッド及び前記オーバークラッドシリンダーが、前記延伸炉で加熱される前は互いに離れた状態に保持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリンダー状の石英ガラス本体及び前記ガラスの取っ手の前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスが前記延伸炉で軟化され、前記軟化されたクラッドガラスが、前記軟化されたコアロッドガラス上で構造崩壊しかつ前記軟化されたコアロッドガラスと融合して光ファイバープリフォームを形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラスの取っ手の前記角切断された第2の端が、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に溶接される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶接が、水素溶接、プロパン溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、及びレーザ溶接からなる群から選択される工程を用いて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記第2の端の外径が、前記角切断された第1の端の前記第1の外径より大きく、前記方法がさらに、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記第1の端に熱源を適用してテーパーのついた角切断された端を形成することを含み、前記ガラスの取っ手の前記第2の外径が、前記テーパーのついた端の外径の50%〜前記第1の外径の110%である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
光ファイバープリフォームの形成方法であって、
加熱ゾーンを有する炉に、第1の端及び対向する第2の端を有する石英ガラス本体を通すことと、
前記加熱ゾーン内で、前記石英ガラス本体の前記第1の端と前記第2の端との間に少なくとも1つのネックダウン領域を形成することと、;
前記少なくとも1つのネックダウン領域の最も狭い部分で前記石英ガラス本体を切断して第1の光ファイバープリフォーム及び第2の光ファイバープリフォームを形成することと、を含み、前記第1及び第2の光ファイバープリフォームの各々が、テーパーのついた角切断された第1の端及び対向する第2の端を有する、前記方法。
【請求項15】
複数の間隙を介したネックダウン領域が前記石英ガラス本体の前記第1の端と第2の端との間に形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各光ファイバープリフォームの前記角切断された第1の端が、円錐テーパーとして構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
光ファイバーの延伸方法であって、
請求項14に記載の方法に従って、コアロッドガラス及び前記コアロッドガラスを囲むクラッドガラスを含む第1の光ファイバープリフォームを形成することと、
ガラスの取っ手の角切断された端を前記第1の光ファイバープリフォームの前記テーパーのついた角切断された第1の端に取り付けて界面を画成することであって、前記ガラスの取っ手の前記角切断された端の外径が、前記第1の光ファイバープリフォームの前記テーパーのついた角切断された第1の端の外径の50%〜前記光ファイバープリフォームの前記第2の端の外径の110%である、前記画成することと、
前記ガラスの取っ手を使用して前記第1の光ファイバープリフォームを、垂直に配置された延伸炉に下向きに誘導し、前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスを加熱して光ファイバーを延伸することと、を含み、前記界面近傍のクラッド対コア比の歪みが5%未満である、前記方法。
【請求項18】
前記ガラスの取っ手の前記角切断された端が、前記第1の光ファイバープリフォームの前記テーパーのついた角切断された第1の端に溶接される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
石英ガラス光学部材の製造システムであって、
コアロッドガラス及び前記コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなる石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された第1の端、対向する第2の端、及び前記対向する第1の端と第2の端との間に延在する縦軸を有する、前記石英ガラス本体と、
第1の端及び第2の外径を有する対向する角切断された第2の端を有するガラスの取っ手と、を備え、前記ガラスの取っ手の前記角切断された第2の端が、前記石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に取り付けられて界面を画成し、前記第2の外径が前記第1の外径の50%〜110%であり、その結果、前記界面近傍の前記コアガラス及び前記クラッドガラスを加熱して石英ガラス光学部材を製造する際、前記界面近傍のクラッド対コア比の歪みが5%未満である、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスの光学部材、とりわけ、導波路または光ファイバー用途の光学部材を、導波路の歪みを低減し、かつその熱的工程における該石英ガラス全体の温度及び粘度分布を確実に均一にしながら製造するためのシステム及び製造方法に関する。かかる熱的工程としては、限定されないが、プリフォームまたはファイバーの延伸(drawing、stretching)、圧縮、構造崩壊、またはオーバークラッドが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
石英ガラス光学部材の例としては、例えば、中実または中空シリンダー、光ファイバー用プリフォーム、または光ファイバーが挙げられる。かかる光学部材は、通常、石英ガラスのオーバークラッドシリンダーの穴の内部に挿入された石英ガラスのコアロッドの同軸構造を用いて形成される。その下端から開始され、該同軸構造は、垂直に配置された延伸炉の加熱ゾーンに供給され、そこでゾーンの方向に加熱され、該中実もしくは中空シリンダー、光ファイバープリフォーム、または光ファイバーに引き延ばされる。代替として、該出発本体は光ファイバープリフォームでよく、これはその後複数の小さいサイズのプリフォームまたは光ファイバーに延伸される。
【0003】
かかる延伸方法は、通常、該構造またはプリフォームを該延伸炉に誘導するため、該同軸構造またはプリフォームの上端に取り付けられるガラスの取っ手を必要とする。従来の延伸工程において、コストを削減するため、該ガラスの取っ手の関連で様々な措置が講じられてきた。例えば、該ガラスの取っ手は、通常、延伸される該石英ガラス本体(すなわち、該同軸構造または光ファイバープリフォーム)の外径より外径が小さい中実または中空シリンダー状である。また、該ガラスの取っ手を形成するのに使用されるガラスの種類は、延伸される該石英ガラス本体のそれよりも品質が劣るものであってもよい。すなわち、該ガラスの取っ手を作製するために使用されるガラスは、通常、最終的な導波路または光ファイバー製品の部分を形成するためには使用されず、それ故、より多くの不純物及び/または汚染物質を含有し、該同軸構造または光ファイバープリフォームのガラスとは異なる熱的特性を有するより安価な材料で作製することができる。
【0004】
しかしながら、かかるコスト削減措置は欠点を有する。特に、該ガラスの取っ手が該同軸構造または光ファイバープリフォームに溶接されて、該溶接された構造が延伸される際、該構造/プリフォームの取っ手端での該ガラスは、許容される光ファイバーに延伸することができない。具体的には、該取っ手近傍の該ガラスから延伸される光ファイバーは、通常、不十分な導波路特性、例えば、該延伸ファイバーに許容できないカットオフ波長、モードフィールド径、零分散波長、該コアと該クラッドガラスとの間の半径方向のずれによるコアの偏心度の増加、不均一な外径または形状等をもたらしうる不適切なまたは歪んだクラッド対コア比を有する。
【0005】
また、従来の延伸システム及び方法には制御の問題もよく見られ、延伸をいつ終了するかを正確に決定して、歪んだ、または「悪い」端のガラスを延伸することを避けなければならない。いわゆる「端効果(end effect)」は、該ガラスの取っ手近傍の該同軸構造/光ファイバープリフォームの特定の長さの範囲内で生じる。この長さは、該ガラス部材と該延伸炉のと間の放射熱交換または伝達の所望の効率に起因して、該延伸炉の該加熱ゾーンの長さ(例えば、通常10〜20cm)に相当することが多く、通常は、延伸される該ガラス部材の直径と同様である。ゆえに、延伸は通常、該同軸構造/光ファイバープリフォームの該ガラスのすべてが延伸される前に、この長さに達すると終了される。該取っ手に取り付けられた該同軸構造/光ファイバープリフォームの端の未延伸ガラスは、廃棄しなければならず、無駄なガラスの量は、通常、延伸される該ガラス部材の直径とともに増加する。
【0006】
従って、高価な石英ガラスの浪費を避けるため、光学部材の形成の際、石英ガラスの同軸構造または光学プリフォーム全体の延伸を可能にする改良法を提供することが有益であろう。
【0007】
本発明は、これまで知られていなかった、我々による上述した端効果の根本原因の発見に基づく。具体的には、これら端効果が、該同軸構造/光ファイバープリフォームの後端(すなわち、該取っ手に取り付けられた端)における該ガラスが延伸工程中に歪む結果によるものであることを見出した。さらに、ファイバーのコアを含むガラスの加熱された内部及び中心部は、ガラス本体内の温度及び粘度分布が半径方向に不均一であるため、加熱された外側のクラッドガラスとは異なる速度で軸方向下向きに(例えば、重力によって、または、外部から加えられた延伸もしくは保持力によって)流れるため、これらの歪みが主に該端ガラスで生じることを発見した。より具体的には、該同軸構造/光ファイバープリフォームの該取っ手端が該延伸炉の加熱ゾーンに近づくにつれ、外側のクラッドガラスが内側のコアガラスより高温に加熱され、結果として、相対的により熱い外側のクラッドガラスが該内側のコアガラスより速く軸方向下向きに流れることを見出した。結果として、該外側のクラッドガラスは該内側のコアガラスよりさらに垂れ下がり、それにより、該取っ手端での該ガラスのクラッド対コア比を歪め、それから延伸される当該光学部材の導波路特性を損なう。さらに、該取っ手端近くのガラスのかかる軸流の差は、(例えば、該延伸炉内の該ガラス本体に生じる方位角非対称な温度分布により)しばしば方位角非対称であり、これは次に、該ファイバーコアの偏心度の顕著な増加をもたらしうる。
【0008】
さらに、該同軸構造/光ファイバープリフォームの該取っ手及び該取り付け後端は通常、異なる外径を有するため、該コア及びクラッドガラスの軸流の差が主に生じ、それにより、該取っ手端で半径方向の幾何学的不連続がもたらされることを見出した。この半径方向の不連続は、該ガラスの取っ手及び該同軸構造/光ファイバープリフォームの界面近傍で生じる放射熱負荷、並びに該界面近傍の該コア及びクラッドガラスに対して、半径方向に不均一な温度及び粘度分布をもたらす。
【0009】
また、他の要因、例えば、該ガラスの取っ手及び同軸構造/光ファイバープリフォームの幾何学的形状及び熱的特性の差が、該端ガラスの半径方向に不均一な温度及び粘度分布をもたらしうることも見出した。該不均一な温度分布により、該コア及びクラッドガラスが異なる速度で下向きに流れ、それにより、有用な導波路または光ファイバー用途に必要な該コアとクラッドガラスの相対的比率(一般にクラッド対コア比と呼ばれる)が歪められ、損なわれる。
【0010】
本発明の1つの実施形態は、石英ガラス光学部材の製造方法に関する。本方法は、コアロッドガラス及び該コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなるシリンダー状の石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された(square cut)第1の端、対向する第2の端、及び該対向する第1の端と第2の端との間に延出する縦軸を有する、シリンダー状の石英ガラス本体を提供することと、第1の端及び対向する第2の外径を有する角切断された第2の端を有するガラスの取っ手であって、該第2の外径が、該第1の外径の50%〜110%であるガラスの取っ手を提供することと、該ガラスの取っ手の該角切断された第2の端を該石英ガラス本体の該角切断された第1の端に取り付けて界面を画成することと、該ガラスの取っ手を使用して該石英ガラス本体を延伸炉に誘導し、該石英ガラス本体の該コアガラス及び該クラッドガラスを加熱して、石英ガラス光学部材を製造することと、を含み、該界面近傍のクラッド対コア比の歪みは5%未満である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、光ファイバープリフォームの形成方法に関する。本方法は、加熱ゾーンを有する炉に、第1の端及び対向する第2の端を有する石英ガラス本体を通すことと、該加熱ゾーン内で、該石英ガラス本体の該第1の端と第2の端との間に少なくとも1つのネックダウン領域を形成することと、該少なくとも1つのネックダウン領域の最も狭い部分で該石英ガラス本体を切断して第1の光ファイバープリフォーム及び第2の光ファイバープリフォームを形成することと、を含む。該第1及び第2の光ファイバープリフォームの各々は、テーパーのついた角切断された第1の端及び対向する第2の端を有する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、石英ガラス光学部材の製造システムに関する。本システムは、コアロッドガラス及び該コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなる石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された第1の端、対向する第2の端、及び該対向する第1の端と第2の端との間に延在する縦軸を有する石英ガラス本体と、第1の端及び対向する第2の外径を有する角切断された第2の端を有するガラスの取っ手と、を含む。該ガラスの取っ手の該角切断された第2の端は、該石英ガラス本体の該角切断された第1の端に取り付けられて界面を画成し、該第2の外径は該第1の外径の50%〜110%であり、その結果、該界面近傍の該コアガラス及び該クラッドガラスを加熱して石英ガラス光学部材を製造する際、該界面近傍のクラッド対コア比の歪みは5%未満である。
【0013】
上述の発明の概要、及び以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されよう。例示の目的のため、好ましい実施形態をこれら図面に示す。しかしながら、当該装置及び方法は、示される正確な構造及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の1つの実施形態による光学部材の製造システムの部分断面図である。
図2A】本発明の実施形態による光学部材の製造に使用される石英ガラス本体の斜視側面図である。
図2B図2Aに示す石英ガラス本体の断面図である。
図3A】本発明の実施形態による光学部材の製造に使用されるガラスの取っ手の斜視側面図である。
図3B図3Aに示すガラスの取っ手の断面図である。
図4】本発明の実施形態による光学部材に延伸されうる石英ガラス本体の製造システムの部分断面図である。
図5】本発明の別の実施形態による光学部材に延伸されうる石英ガラス本体の製造システムの断面図である。
図6図4〜5のシステムによって製造される石英ガラス本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、光ファイバープリフォームまたは光ファイバーの製造システム及び製造方法に関する。当業者には、以下に記載のシステム及び方法から製造されるプリフォームが、光ファイバープリフォームまたは光ファイバーの製造以外の様々な他の目的に利用されてもよいことが理解されよう。より具体的には、本発明は、延伸工程中、ガラス内での導波路の歪みを低減または防止しながら光ファイバープリフォームまたは光ファイバーを延伸する方法に関する。本発明はまた、該プリフォームから延伸される光ファイバーのコアの偏心度及びクラッド径の均一性の改良ももたらす。
【0016】
図1を参照すると、光ファイバープリフォームまたは光ファイバーの製造システム10が示されている。システム10は、上部開口端14、対向する下部開口端16、及び上端14と下端16との間の加熱ゾーン18を備える、垂直に配置された延伸塔12を具備する。加熱ゾーン18は、発熱体20(図1参照)によって、好ましくは500℃〜2,300℃、より好ましくは1,000℃〜2,300℃、最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度に加熱されうる。より具体的には、発熱体20は、環状配置のものが好ましい。発熱体20は、好ましくは延伸塔12の内部または周囲に配置され、延伸塔12の加熱ゾーン18を形成する。
【0017】
石英ガラス本体22は、ガラスの取っ手24によって延伸塔12に誘導され、光ファイバープリフォームまたは光ファイバーを製造する。図2A〜2Bを参照すると、ガラス本体22は、シリンダー状または管状形状のものである。ガラス本体22は、第1の、すなわち上端22aから、対向する第2の、すなわち下端22bに延在する長さLを有する。縦軸Xは、対向する第1の端22aと第2の端22bとの間に延在する。第1の端22aは、角切断された端(square cut end)であることが好ましい。すなわち、第1の端22aは平滑末端化平面であり、そのため、第1の端22aの面26がガラス本体22の縦軸Xに垂直に延在する。より具体的には、端面26は、ガラス本体22の縦軸Xに対して90°±5°で延在することが好ましい。ガラス本体22の第1の端22a及び第2の端22bは両方とも角切断された端であることがより好ましい。
【0018】
石英ガラス本体22は、好ましくは、導波性光ファイバーコアを含むコアまたはコアロッドガラス30、及びコアロッドガラス30を囲むクラッドガラス32からなる。より具体的には、コアロッドガラス30は、石英ガラス本体22の幾何学的中心に形成され、その長さLに沿って延在することが好ましい。クラッドガラス32は、石英ガラス本体22の長さLに沿ってコアロッドガラス30を半径方向に囲むようにコアロッドガラス30の上に形成されるのが好ましい。
【0019】
クラッドガラス32は、純粋な石英ガラスであっても、異なる屈折率や組成物を有するドープされた石英ガラスであってもよい。しかしながら、クラッドガラス32は純粋な石英ガラスであることが好ましい。コアロッドガラス30は大部分が、該導波性コアでの、またはその周辺での単段または半径方向の複素屈折率プロファイルを有する純粋な石英ガラスであることが好ましい。
【0020】
図1を参照すると、ガラス本体22は、延伸塔12を通り、そこで加熱され、軟化され、引き延ばされて光学部材、例えば、光ファイバープリフォーム28または光ファイバー28’を形成する。より具体的には、ガラス本体22の下端22bは、延伸の開始時、延伸塔12の上部開口端22に安定した様式で配置されるのが好ましく、ガラス本体22はその後延伸塔12を通って下向きに前進する。延伸塔12において、ガラス本体22は、ゾーン方向様式で加熱ゾーン18において加熱される。プリフォーム28またはファイバー28’は、該延伸中の溶融変形、及び任意に重力または外部から加えられる牽引もしくは圧縮力による伸張/伸長によって、下部開口端16から連続して延伸される。
【0021】
該製造方法を目的として、より具体的にはガラス本体22に延伸塔12を通過させて前進させることを目的として、本体22の下端22bが先端となり、上端22aが後端となる。また、当業者には、任意の従来の垂直に配置された延伸装置は、発熱体を備えていれば、該光ファイバープリフォームまたは光ファイバーの形成に使用することができることが理解されよう。
【0022】
1つの実施形態では、ガラス本体22は、2つの別々のガラス部材の同軸アセンブリである。より具体的には、コアロッドガラス30は、中実でシリンダー状のコアロッド状であり、クラッドガラス32は、コアロッド30を囲む中空オーバークラッドシリンダー状である(すなわち、ロッドインシリンダーアセンブリ)。該同軸アセンブリでは、コアロッド30及びオーバークラッドシリンダー32は該炉での延伸の前は互いに融合されていない。
【0023】
1つの実施形態では、少なくとも1つの覆い(図示せず)がコアロッドガラス30とクラッドガラス32との間の間隙に設けられている。該覆いは、好ましくはフッ素ドープガラス製、より好ましくは、フッ素ドープ石英ガラス製である。しかしながら、該覆いは石英ガラス製である必要はなく、異なる組成物のガラス製であってもよいことが理解されよう。
【0024】
ガラス本体22の本実施形態の該同軸アセンブリが延伸塔12の上部開口端14から下部開口端16に向かって前進するにつれ、コアロッド30及びオーバークラッドシリンダー32は、これら2つのガラス部材を軟化させ、かつ互いに融合させるのに十分な所定の温度に加熱され、単体のガラス本体を形成する。より具体的には、ツーピースのガラス本体22の一連の部分が加熱ゾーン18に近づきそこで加熱されると、オーバークラッドガラスシリンダー32及びコアロッド30は軟化し、軟化したオーバークラッドガラスシリンダー32がコアロッド30上で構造崩壊し、コアロッド30と融合する。少なくとも1つ、より好ましくは複数のプリフォーム28または光ファイバー28’は、その後、得られた単体のガラス本体から延伸されうる。
【0025】
好ましくは、ガラス本体22の本実施形態の該同軸構造は、500℃〜2,300℃、より好ましくは1,000℃〜2,300℃、最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度に加熱される。より好ましくは、コアロッド30上でのオーバークラッドシリンダー32の軟化及び構造崩壊は、1,000℃〜2,200℃、より好ましくは1,300℃〜2,000℃、最も好ましくは1,600℃〜1,800℃の温度で起こる。軟化して構造崩壊したオーバークラッドシリンダー32と軟化したコアロッド30との融合は、好ましくは1,000℃〜2,200℃、より好ましくは1,300℃〜2,200℃、最も好ましくは1,600℃〜2,200℃の温度で起こる。しかしながら、当業者には、他の要因、例えば、ガラス材料の組成物、延伸速度、及びスループットもまた、オーバークラッドシリンダー32がコアロッド30上で構造崩壊し、コアロッド30と融合する温度に影響することが理解されよう。
【0026】
別の実施形態では、ガラス本体22は、ワンピースの単体中実石英ガラスシリンダー状であり、より好ましくは、光ファイバープリフォーム状である。すなわち、1つの実施形態において、コアロッドガラス30及びクラッドガラス32は、すでに互いに融合され、単体の光ファイバープリフォームに延伸されている。ガラス本体22の本実施形態の光ファイバープリフォームは、延伸塔12を通って複数の小さいサイズのプリフォーム28を製造する、相対的に大径の母プリフォームでよい。代替として、ガラス本体22の本実施形態の光ファイバープリフォームは、光ファイバー28’に直接延伸されるように寸法決めされてよい。
【0027】
図1及び3A〜3Bを参照すると、ガラスの取っ手24は、好ましくはガラス本体22を延伸塔12に誘導するために利用される。具体的には、ガラスの取っ手24は、第1の後端24a及び対向する第2の先端24bを有する。第2の端24bは、好ましくは角切断された端である。より好ましくは、ガラスの取っ手24の第1の端24a及び第2の端24bの両方が角切断された端である。ガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bは、好ましくは、ガラス本体22の角切断された第1の端、すなわち上端22aに固着される。より好ましくは、ガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bは、ガラス本体22の第1の端22aの少なくともクラッドガラス32に溶接される。代替として、ガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bは、第1の端22aでガラス本体22の全面26に溶接されてもよい。溶接された端22a及び24bはそれぞれ角切断されているため、それぞれの端面26、42は、界面34で互いに同一平面となる。
【0028】
例示の目的で、取っ手という用語が以下で使用されるものの、任意の適切な記述用語、例えば、蓋、カバープラグ、カラー、エンドキャップ等が、該取っ手様部材を特定する目的で使用されうることが、当業者に理解されよう。
【0029】
1つの実施形態では、ガラスの取っ手24は、好ましくは、その長さに沿って延在する均一な外径OD24を有する中実または中空シリンダー状である。シリンダー状のガラス本体22もまた、その全長Lに沿って均一な直径OD22を有するのが好ましい。1つの実施形態では、図3A〜3Bに示すように、ガラスの取っ手24の外径OD24は、ガラス本体22の外径OD22の好ましくは50%〜110%、より好ましくは60%〜110%である。より具体的には、ガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bの外径OD24は、ガラス本体22の角切断された第1の端22aの外径OD22の50%〜110%、及びより好ましくは60%〜110%である。より好ましくは、ガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bの外径OD24は、ガラス本体22の角切断された第1の端22aの外径OD22に等しい。
【0030】
別の実施形態では、ガラスの取っ手24の外径OD24は、ガラス本体22の最初の外径OD22より小さい。かかる実施形態では、ガラス本体22の角切断された第1の端22a(すなわち、ガラスの取っ手24が取り付けられる端)は、好ましくはガラスの取っ手24の外径OD24により良く適合するようにテーパーがつけられており、それにより、テーパーガラス本体22’が形成される(図4〜6参照)。それ故に、テーパーのついた角切断された端22a’の外径OD22a’は、第2の端22b’の外径OD22’より小さい。より具体的には、図6に示すように、テーパーガラス本体22’において、角切断された第1の端22a’は、ガラスの取っ手24の外径OD24が、好ましくはテーパーのついた角切断された端22a’の外径OD22a’の50%〜ガラス本体22’の第2の端22b’の外径OD22’の110%であるように、テーパーがつけられることが好ましい。より好ましくは、ガラスの取っ手24の外径OD24は、好ましくはテーパーのついた角切断された端22a’の外径OD22a’の60%〜ガラス本体22’の第2の端22b’の外径OD22’の110%である。最も好ましくは、ガラスの取っ手24の外径OD24は、テーパーのついた角切断された端22a’の外径OD22a’に等しい。ガラス本体22’の角切断された第1の端22a’は、円錐テーパーとして構成されるものの、任意のテーパー形状が許容されうることが理解されることが好ましい。
【0031】
かかるテーパーガラス本体22’は、任意の既知の方法またはまだ発展していない新たな方法で形成されうるが、これはその方法が当該導波路のクラッド対コア比を維持する場合に限る。例えば、テーパーのついた角切断された端22a’は、端22a’が外径OD22a’までテーパーされるまで熱源を第1の端22a’に適用することによって形成されてもよい。かかる熱源の例としては、限定されないが、酸素水素トーチ、プロパントーチ、プラズマトーチ等が挙げられる。
【0032】
1つの実施形態では、図4に示すように、テーパーガラス本体22’は、ガラス本体22を延伸炉12に通して本体22の間隙を介した部分を加熱すると同時に本体22を伸張または伸長させることによって形成される。その結果、各々が2つの対向する円錐テーパー部を有する砂時計様の形を備えた間隙を介したネックダウンまたはテーパー領域44が、ガラス本体22の長さLに沿って形成される。各ネックダウン領域44の最も狭い部分44aの外径OD44aは概して、相対的に小さい取っ手24の外径OD24に等しい。ガラス本体22は、各ネックダウン領域44の最も狭い部分44aで切断されてよく、それにより、各々が外径OD22a’を有する角切断された第1の端22a’を備えた複数のテーパーガラス本体22’が形成される。
【0033】
別の例として、図5に示すように、テーパーガラス本体22’は、2つのガラス本体22を互いに溶接し、その後、付着した本体22を、その一部はヒーター54を備えた炉52内でその少なくとも一か所を加熱しつつ、同時に互いに引き離す(すなわち、付着した本体22を引き延ばす)ことによって形成してもよい。結果として、上述のネックダウン領域44と同様の形状の中間ネックダウンまたはテーパー領域50が形成される。次いで、付着したガラス本体22は、ネックダウン領域50の最も狭い部分50aで切断されてよく、それにより、各々がガラスの取っ手24の角切断された第2の端24bの外径OD24に概して等しい外径OD22a’を有する角切断された第1の端22a’を備えたテーパーガラス本体22’の対が形成される。付着した本体22の複数の間隙を介した部分を加熱して、複数の間隙を介したネックダウン領域50及び複数のテーパーガラス本体22’を形成することができることが理解されよう。
【0034】
異なる2種のガラス本体22、22’について、本明細書では、単に「ガラス本体22」に言及することにより併せて説明する。従って、以下の説明は、均一な直径OD22のガラス本体22及びテーパーのついた端22a’を有するガラス本体22’の両方に適用されることが理解されよう。
【0035】
該付着した角切断された端22a、24bの外径OD22a及びOD24bが概して等しいため、取っ手24及びガラス本体22の界面34は、概して均一な半径方向の形状を有する。より具体的には、取っ手/本体界面34は、半径方向に途切れのない均一な外径を有し、その結果、ガラスの取っ手24がガラス本体22を延伸塔12に誘導するとき、界面34近傍または界面34において不均一な放射熱の散乱及び吸収に起因する熱的摂動が最小となり、その結果、界面34またはその近傍において、半径方向の温度及び粘度分布が均一となる。好ましくは、界面34近傍で生じる不均一な放射熱負荷により、半径方向の温度差が200℃未満になり、より好ましくは100℃未満、最も好ましくは50℃未満になる。
【0036】
その結果として、界面34近傍の半径方向の温度分布が均一となり、その結果、延伸取っ手端(すなわち、界面34)の近傍のコアロッドガラス30及びクラッドガラス32が同じ速度で同じ温度に加熱され、加熱されたガラス30、32が概して等しい粘度、ひいては概して等しい軸方向の流速を有する。すなわち、取っ手/本体界面34近傍の加熱されたコアロッドガラス30及び加熱されたクラッドガラス32は、概して等しい速度で縦軸L22に沿って下向きに流れるため、界面34近傍の該ガラスは歪まない。その結果、コアロッド及びクラッドガラス30、32は互いに対して半径方向に整列された状態を保持し、外側のクラッドガラス32は、均一な外径または形状を有し、最終的な導波路または光ファイバー製品に必要なクラッド対コア比が維持される。より具体的には、界面34近傍のクラッド対コア比の歪みは、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満である。
【0037】
界面34近傍の半径方向の温度差が200℃未満、より好ましくは100℃未満、最も好ましくは50℃未満であり、その結果界面34近傍で半径方向の温度及び粘度分布が均一である限り、付着した角切断された端22a、24bの外径OD22aとOD24bとの間にわずかなずれが生じてもよいことが理解されよう。界面34近傍のガラスでの温度分布の任意の半径方向の不均一性が上述した通りに限定される限り、該延伸取っ手端(すなわち、界面34)の近傍の加熱されたコアロッド及びクラッドガラス30、32の軸方向の流速の間にわずかなずれが生じてもよいことが理解されよう。より具体的には、界面34近傍のクラッド対コア比の任意の変化または歪みが、最適な導波路または光ファイバー性能のため、5%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満である限り、これら軸方向の流速は互いにわずかにずれてもよい。
【0038】
1つの実施形態では、ガラスの取っ手24は、ガラス本体22のクラッドガラス32と同じ種類のガラス製である。1つの実施形態では、ガラスの取っ手24は、ガラス本体22のコアロッド及びクラッドガラス30、32と同じ種類のコアロッド及びクラッドガラスを有する光ファイバープリフォームである。
【0039】
1つの実施形態では、ガラスの取っ手24は、未延伸(すなわち、新しいまたは未使用の)光ファイバープリフォームであり、ガラス本体22は、既延伸プリフォームの残部(すなわち、プリフォームの残り)である。より具体的には、該プリフォームの残り(すなわち、ガラス本体22)は、光ファイバープリフォームの一部を延伸し、かつ該プリフォームのテーパー部または先端部を未延伸のままにすることによって形成されてもよく、それによって、未延伸の角切断されたプリフォーム(すなわち、ガラスの取っ手24)に溶接された際に後続のファイバーの延伸を容易に開始することができる。延伸プリフォームのテーパーまたは先端残部は、光ファイバープリフォームの残りであり、これは、取っ手24として機能する未使用または新しいプリフォームの角切断された第2の端24bに溶接されるガラス本体22として機能しうる。
【0040】
別の実施形態では、ガラスの取っ手24は、スクラッププリフォームであり、これは、その導波路性能または光ファイバー特性が、導波路または光ファイバー製品を許容されるものとするには不十分であると(「姉妹」材料の先の試験で)示されたプリフォームである。
【0041】
別の実施形態では、ガラスの取っ手24は、ガラス本体22とは異なる種類のガラス製であり、より好ましくは、ガラスの取っ手24は、より低コストの低品質ガラス(例えば、通常導波路または光ファイバー製品に使用される、より高コストの合成シリカガラス本体22より多くの不純物、汚染物質等を有する天然石英ガラス)製である。
【0042】
かかる実施形態では、ガラスの取っ手24及びガラス本体22が異なる組成物を有していても、界面34の半径方向形状が均一であるため、該ガラス内の本体/取っ手界面34での歪みの発生は最小限〜ゼロである。すなわち、取っ手24及び本体22の異なるガラスが異なる粘度、熱伝導性、熱伝達係数等を有していても、ガラスの取っ手24の外径OD24が好ましくはガラス本体22の外径OD22の50%〜110%であるため、界面34近傍の熱的摂動が生じない、または最小限しか生じない。従って、半径方向に均一な温度分布が維持され、界面34近傍のコアロッドガラス30及びクラッドガラス32は半径方向に均一な軸流を有する。ガラス本体22は、界面34まで延伸されて許容される導波路または光ファイバー製品を形成することができる。すなわち、得られる導波路または光ファイバー製品の端(すなわち、取っ手24に付着したガラス本体22の端22aから延伸される部分)は、光導波路またはファイバー部材に必要な許容範囲内のものであるクラッド対コア比、モードフィールド径、コアの偏心度、幾何学的比率及び対称性、カットオフ波長、零分散波長等を有する。
【0043】
本発明は、光学部材の延伸からの歩止りを増加させる。該光学部材の延伸歩止りは、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、最も好ましくは95%超である。また、従来の延伸工程と比較して、格下げ及びスクラップ率は有意に低減される。格下げ率は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%、最も好ましくは5%未満である。スクラップ率は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%、最も好ましくは1%未満である。
【0044】
次に本発明を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1
第1のシリンダーアセンブリ及び第2のシリンダーアセンブリを互いに溶接した。これら第1及び第2のシリンダーアセンブリは互いに同一であった。各アセンブリは、乾燥(<1ppm OH)合成シリカ製のオーバークラッドシリンダー内に挿入されたコアロッドによって形成した。各アセンブリは、外径200mm及び内径43〜46mmを有していた。互いに溶接されたこれらの端は角切断された端であった。この溶接されたシリンダー/コアロッドアセンブリを、最大2200℃の温度で延伸した。得られたシリンダー溶接部(すなわち、第1及び第2のシリンダーアセンブリ間の界面)近傍の光学プリフォーム及びファイバーは、設計クラッド対コア比3.2からのずれが1%未満であり、目標カットオフ波長からのずれも1%未満であった。かかる結果は、相対的な軸方向のガラスの流れに対する径方向の均一性が1%よりも良いことを示す。
【0046】
実施例2
外径200mm及び内径126mmの天然石英カラー状のガラスの取っ手を、外径200mm及び内径46mmのシリンダーアセンブリの上端に溶接した。このシリンダーアセンブリは、乾燥(<1ppm OH)合成シリカ製オーバークラッドシリンダー内に挿入されたコアロッドによって形成した。これらの溶接された端はともに角切断された端であった。このガラスの取っ手を利用して、このシリンダーアセンブリを炉に通し、最大2200℃の温度で光ファイバープリフォームを延伸した。このガラスの取っ手とシリンダーアセンブリとの間の界面近傍のガラスを含む最終的な光ファイバープリフォームでは、設計クラッド対コア比3.2からのずれが1%未満であり、ファイバーコアの偏心度に不具合がなかったことが示された。かかる結果は、相対的な軸方向のガラスの流れに対する半径方向の均一性が1%よりも良いことを示す。
【0047】
当業者には、上述の実施形態に対して、その広範な発明の概念から逸脱することなく変更がなされうることが理解されよう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、変更を添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に包含することを意図するものであることが理解される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020年9月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス光学部材の製造方法であって、
コアロッドガラス及び前記コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなるシリンダー状の石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された第1の端、対向する第2の端、及び前記対向する第1の端と第2の端との間に延在する縦軸を有する、前記シリンダー状の石英ガラス本体を提供することと、
第1の端及び第2の外径を有する対向する角切断された第2の端を有し、中空シリンダー状である1つのガラスの取っ手であって、前記第2の外径が、前記第1の外径の50%〜110%である、前記1つのガラスの取っ手を提供することと、
前記1つのガラスの取っ手の前記角切断された第2の端を前記石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に取り付けて界面を画成することと、
前記1つのガラスの取っ手を使用して前記石英ガラス本体を延伸炉に誘導し、前記石英ガラス本体の前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスを加熱し、石英ガラス光学部材を製造することと、を含み、前記界面近傍のクラッド対コア比の歪みが5%未満であり
前記シリンダー状の石英ガラス本体が、オーバークラッドシリンダーに囲まれたコアロッドの同軸アセンブリであり、前記コアロッド及び前記オーバークラッドシリンダーが、前記延伸炉で加熱される前は互いに融合されておらず、
前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスが前記延伸炉で軟化され、前記軟化されたクラッドガラスが、前記軟化されたコアロッドガラス上で構造崩壊しかつ前記軟化されたコアロッドガラスと融合して光ファイバープリフォームを形成する、前記方法。
【請求項2】
前記1つのガラスの取っ手の組成物が、前記シリンダー状の石英ガラス本体のクラッドガラスの組成物と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つのガラスの取っ手の組成物が、前記石英ガラス本体の組成物と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つのガラスの取っ手の前記角切断された第2の端が、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に溶接される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶接が、水素溶接、プロパン溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、及びレーザ溶接からなる群から選択される工程を用いて行われる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記第2の端の外径が、前記角切断された第1の端の前記第1の外径より大きく、前記方法がさらに、前記シリンダー状の石英ガラス本体の前記第1の端に熱源を適用してテーパーのついた角切断された端を形成することを含み、前記1つのガラスの取っ手の前記第2の外径が、前記テーパーのついた端の外径の50%〜前記第1の外径の110%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
石英ガラス光学部材の製造システムであって、
コアロッドガラス及び前記コアロッドガラスを囲むクラッドガラスからなる石英ガラス本体であって、第1の外径を有する角切断された第1の端、対向する第2の端、及び前記対向する第1の端と第2の端との間に延在する縦軸を有する、前記石英ガラス本体と、
第1の端及び第2の外径を有する対向する角切断された第2の端を有し、光ファイバープリフォーム状であるガラスの取っ手と、を備え、前記ガラスの取っ手の前記角切断された第2の端が、前記石英ガラス本体の前記角切断された第1の端に取り付けられて界面を画成し、前記第2の外径が前記第1の外径の50%〜110%であり、その結果、前記界面近傍の前記コアガラス及び前記クラッドガラスを加熱して石英ガラス光学部材を製造する際、前記界面近傍のクラッド対コア比の歪みが5%未満であり、
前記石英ガラス本体が、オーバークラッドシリンダーに囲まれたコアロッドの同軸アセンブリであり、前記コアロッドガラス及び前記クラッドガラスが、前記延伸炉で加熱される前は互いに融合されていない、前記システム。
【外国語明細書】