【課題】テント被いと比較して設備費が低コストのシート被いを採用し、かつ、頻繁な土壌撹拌と水分添加を必要としない、湿度管理による浄化有用好気性菌の活性環境を整備する土壌浄化装置を提供する。
【解決手段】油含有土壌Sを微生物により浄化する土壌浄化装置1であって、油含有土壌S全体を被覆するシート2と、油含有土壌の内部へ送気を行う送気手段であるコンプレッサ3と、油含有土壌S内部の空気を吸気する吸気手段であるバキューマ4と、バキューマ4によって排出された吸気の油臭を脱臭するための脱臭手段である脱臭装置5と、油含有土壌Sに必要な水分を供給する湿度管理手段7と、を備え、シート2は、遮水構造を有し、シート2によって油含有土壌Sを密閉する。
前記湿度管理手段は、水分供給装置と、外気中の湿度・温度を検出する外気用湿度・温度検出手段と、送気中の湿度・温度を検出する送気用湿度・温度検出手段と、吸気中の湿度・温度を検出する吸気用湿度・温度検出手段と、送気量および吸気量と、を調整する制御装置を備え、
前記水分供給装置は、超音波によって、微細なサイズの水滴を発生させる霧発生装置である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の土壌浄化装置。
【背景技術】
【0002】
バイオレメディエーションは、土壌中の有害物質を微生物により二酸化炭素や水等のような無害な物質に分解する技術であり、環境に優しく、洗浄法や加熱法等のような他の工法に比べて費用も安いこと等から油含有土壌の浄化工法として実用されている。油含有土壌のバイオレメディエーションには、油含有土壌を掘削して浄化するランドファーミング法、原位置で浄化するバイオミキシング、バイオスパージング、原位置循環法等が知られている。
【0003】
前記手法のうちランドファーミング法は、油含有土壌を掘削し、浄化作業ヤードに敷き広げ、バイオ製剤、栄養剤、水を添加し、重機等で酸素を取り込みながら撹拌し、微生物の働きによって油分を二酸化炭素と水の無害な物質へ分解して浄化する低コストでエネルギー消費と環境負荷が少ない工法である。
【0004】
ランドファーミング法では、重機等による撹拌の際に油含有土壌から、油臭が周辺に拡散するため、油含有土壌全体をシートもしくはテントで被う等の臭気拡散対策を行う必要がある。また、微生物の活性を確保するために、バイオ製剤、栄養塩を溶解した水溶液の追加添加と共に、土壌撹拌等の作業を行う必要がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
さらに、微生物の活性には、土壌中の過剰となった窒素や二酸化炭素等の混合気体(ガス)の排除と、土壌中への新鮮な空気(酸素)の取り込みと、土壌の冷却と、を行う必要がある。
なお、気温が高温となる時期、あるいは、年間平均気温が高い地域においては、土壌温度の上昇と、土壌含水率の低下が顕著であることから、微生物の活性が低下する。よって、さらに土壌撹拌と水分供給の頻度を多くする必要がある。
【0005】
前記油含有土壌全体をシートもしくはテント等で被う等の対策を行った場合、土壌撹拌と水分添加作業において、気温の上昇と直射日光による水分の低下が著しくなるため、頻繁な土壌撹拌と水分添加を要し、更には撹拌中に、シートを取り去らないといけないため、油臭の周辺拡散防止措置を追加する必要がある。
テントで被った場合には、シート被いと比較して気温の上昇と直射日光の影響は低いものの、撹拌用重機等の作業空間を確保するためにテントを大型化する必要が有り、テント内の温度管理と油臭回収を目的とする空調装置等を追加する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる課題に鑑み、テント被いと比較して設備費が低コストのシート被いを採用し、かつ、頻繁な土壌撹拌と水分供給を必要としない、湿度管理による浄化有用好気性菌の活性環境を整備する土壌浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の土壌浄化装置においては、油含有土壌を微生物により浄化する土壌浄化装置であって、
前記油含有土壌全体を被覆するシートと、
前記油含有土壌の内部へ空気を送気する送気手段と、
前記油含有土壌内部の混合気体を吸気する吸気手段と、
前記吸気手段によって排出された吸気の臭気を脱臭するための脱臭手段と、
前記油含有土壌に必要な水分を供給する湿度管理手段と、
を備え、
前記シートは、遮水シートを使用した遮水構造を有しており、前記シートによって前記油含有土壌を密閉するものである。
【0009】
また、本発明の土壌浄化装置においては、前記送気手段から送られる送気を供給する送気管は、前記油含有土壌の底部に配置され、
前記吸気手段によって吸入される吸気が排出される吸気管は、前記油含有土壌の上部に配置され、前記油含有土壌内の送気管及び吸気管は、可撓性を有し、微細な透過膜を有する微細孔管であることが望ましい。
【0010】
また、本発明の土壌浄化装置においては、前記湿度管理手段は、水分供給装置と、外気中の湿度・温度を検出する外気用湿度・温度検出手段と、送気中の湿度・温度を検出する送気用湿度・温度検出手段と、吸気中の湿度・温度を検出する吸気用湿度・温度検出手段と、送気量および吸気量と、を調整する制御装置を備え、
前記水分供給装置は、超音波によって、微細なサイズの水滴を発生させる霧発生装置であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の土壌浄化装置においては、前記霧発生装置は、水滴内に微細気泡を含有させる微細気泡発生装置をさらに備えることが望ましい。
【0012】
また、本発明の土壌浄化装置においては、前記吸気手段は、前記油含有土壌内部の空気を強制的に吸気するバキューマで構成され、前記バキューマの下流側には、前記脱臭手段が設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の土壌浄化装置によれば、遮水シートを使用した遮水構造を採用することによって油含有土壌を密閉し、かつ、湿度管理手段によって、油含有土壌内部を適度な湿度で保つことができるため、頻繁な土壌撹拌と水分供給を必要としない、湿度管理による浄化有用好気性細菌の活性環境を整備する土壌浄化装置を提供することができる。
また、送気する空気に霧を混入させることによって、土壌中の酸素濃度と湿度を保持しつつ、吸気によって、土壌内の過剰となった窒素・二酸化炭素のガスを排出し、浄化有用好気性細菌の活性環境を維持することができる。また、霧の水滴内に微細気泡を含有させることにより、浄化有用好気性細菌に酸素を効率よく供給することで、更に浄化有用好気性細菌の活性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る土壌浄化装置の第一実施形態を示すものである。以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、「油含有土壌」とは、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、切削油、作動油、圧延油、絶縁油、エンジンオイル、ギアオイル、グリース等のような石油または石油を原料とする有機物を含む土壌をいい、例えば、石油により汚染された海岸の砂および土壌、石油に汚染された工場やガソリンスタンドの跡地の土壌、石油に汚染された廃棄物最終処分場の土壌および油田等のような天然の状態で石油を含有する土壌を含むものである。また、「浄化」とは、残留油分、油臭および油膜の低減または除去を意味する。
【0016】
まず本発明の一実施形態にかかる土壌浄化装置の一例について
図1を用いて説明する。
図1は本実施の形態の土壌浄化装置の一例の構成図、
図2は
図1のI−I線断面図、である。
【0017】
土壌浄化装置1は、油を分解する能力を有する微生物を利用して油含有土壌Sを浄化する装置であり、油含有土壌S全体を被覆するシート2と、油含有土壌Sの内部へ送気を行う送気手段であるコンプレッサ3と、油含有土壌S内部の空気を吸気する吸気手段であるバキューマ4と、バキューマ4によって排出された吸気の油臭を脱臭するための脱臭手段である脱臭装置5と、油含有土壌Sに必要な水分を供給する湿度管理手段7と、を備えている。
【0018】
油含有土壌Sは、平面視において複数の盛土S1・S1・・に区切られている。一つの盛土S1は四角錘台状に形成されており、下部に向かうにつれて水平断面積が大きくなるように形成されている。盛土S1の幅は5m〜7m程度であり、前後方向の長さは10m〜15m程度である。本実施形態においては、盛土S1は左右方向に二列、前後方向に三列配置されている。
【0019】
それぞれの盛土S1は、シート2で全体を覆われている。シート2は、遮水シートを用いた遮水構造を有しており、複数の異なる素材を重ねた多層構造を有している。より詳しくは、シート2は、水分の透過を防ぐ遮水シートと、遮水シートの下部と上部に設けられたシートの損傷・劣化を防ぐ保護マットと、から構成される。なお、上面及び傾斜面の上部保護マットには、光を遮断する遮光マット或いは遮熱シートを適用する。
シート2の端部は、盛土S1全体を密閉するように底部・側面・上面を溶着しており、これにより、盛土S1内と外部との間における、通気、通水を遮断することができる。
また、シート2上面の任意の部分には、脱着可能な蓋部材2aが取り付けられており、シート2を除去しなくても盛土S1の浄化サンプルを容易に採取することが可能となる。
【0020】
盛土S1と盛土S1との間には、送吸気系11が設けられている。送吸気系11は、複数本の送気管12と吸気管13と、が盛土S1の外部に配置され、盛土S1の内部へ送気を行う送気手段であるコンプレッサ3と、盛土S1内部の空気を強制的に吸気する吸気手段であるバキューマ4と、から構成されている。
【0021】
送気管12および吸気管13は、盛土S1と盛土S1との間に配置された主送気管12Aおよび主吸気管13Aと、各盛土S1の内部に配置された盛土用送気管12Bおよび盛土用吸気管13Bと、により構成されている。主送気管12Aは、油含有土壌Sの盛土S1と盛土S1との幅方向の間隙に、盛土S1の長手方向と平行になるように配置されている。主吸気管13Aは、主送気管12Aと主送気管12Aとの間に盛土S1の長手方向と平行になるように配置されている。
【0022】
図2および
図3に示すように、主送気管12Aおよび主吸気管13Aは、パイプラック14に収納されていてもよい。
パイプラック14は段差を設けた台状の部材であり、例えば主送気管12Aと主吸気管13Aを一つずつ載置することができるように構成されている。またパイプラック14の両端には、コネクト部材14Aが設けられており、コネクト部材14Aによってパイプラック14同士をつなげることにより、容易に主送気管12Aおよび主吸気管13Aを配列することができる。
【0023】
盛土用送気管12Bは盛土S1の底面に配置されている。盛土用吸気管13Bは、盛土S1の表層に沿うように配置されている。盛土用送気管12B及び盛土用吸気管13Bは、複数設けられており、盛土S1の幅方向と平行して間隔をあけて配置されている。盛土用送気管12B及び盛土用吸気管13Bは、例えば、可撓性が有り、微細な土壌粒子を通さない、数百マイクロメートルの目合いを有するポリエチレン製メッシュシートを配置した管材を適用する。
【0024】
主送気管12Aには、コンプレッサ3が連結されている。コンプレッサ3は、油含有土壌S中の微生物に空気(酸素)を供給するための構成であり、エンジン駆動もしくは電動のコンプレッサにより構成されている。コンプレッサ3は、圧縮空気を発生し、油含有土壌Sに連続的または間欠的に空気を供給する。また、コンプレッサ3と主送気管12Aとの間には、送気用のチャンバ15が設けられている。これにより、油含有土壌S側に安定した圧の空気を供給することができるとともに、コンプレッサ3を保護することができる。チャンバ15の送気口は、バルブ(図示せず)を介して主送気管12Aに接続されている。主送気管12Aと盛土用送気管12Bとの間に、圧縮空気の供給量を調節するレギュレータを設けても良い。
【0025】
主吸気管13Aには、バキューマ4が連結されている。バキューマ4の下流側には、脱臭手段である脱臭装置5が設けられている。また、主吸気管13Aとバキューマ4の間に送気と吸気の平衡圧力を調整するレギュレータを設けても良い。
【0026】
脱臭装置5は、バキューマ4から送られた気体中の異臭物質を吸着することにより、異臭物質が外部に漏れないようにする装置である。本実施の形態においては、油含有土壌S中の油を微生物により分解したときに発生した異臭物質等を脱臭装置5により捕獲することができるので、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。ここでは、脱臭装置5が1台の場合を例示したが、複数個の脱臭装置5を直列に接続しても良い。これにより、脱臭装置5が1台の場合よりも脱臭装置5の吸着面積を増やせるので異臭物質の吸着性能を向上させることができる。脱臭装置5の吸着材には、例えば、活性炭が使用されている。ただし、吸着材は、活性炭に限定されるものではなく種々変更可能である。また、異臭物質の種類に応じて、異なる吸着材を持つ脱臭装置5を直列に接続してもよい。
【0027】
湿度管理手段7は、
図4に示すように、水分供給装置である霧発生装置20と、外気中の湿度・温度を検出する外気用湿度・温度検出手段21と、送気中の湿度・温度を検出する送気用湿度・温度検出手段22と、吸気中の湿度・温度を検出する吸気用湿度・温度検出手段23と、コンプレッサ3、バキューマ4、および霧発生装置20を制御するための制御装置8を備える。
図4に示すように、制御装置8には、外気用湿度・温度検出手段21、送気用湿度・温度検出手段22、吸気用湿度・温度検出手段23から検出された情報が入力され、制御装置8によって制御される。
【0028】
外気中の湿度・温度を検出する外気用湿度・温度検出手段21は制御装置8の近傍に設けられている。送気用湿度・温度検出手段22は、チャンバ15の排出口近傍に設けられている。また、送気中の湿度・温度を検出する送気用湿度・温度検出手段22は、主送気管12Aの下流端部近傍にも設けられ、主送気管12Aから盛土用送気管12Bに供給される直前の送気の温度および湿度を検出する。また、吸気中の湿度・温度を検出する吸気用湿度・温度検出手段23は、バキューマ4の吸入口近傍に設けられている。
【0029】
図5に示すように、霧発生装置20は、チャンバ15に接続されている。霧発生装置20は、直径10マイクロメートル程度の水滴を発生する装置である。霧発生装置20は、水槽19から供給された水を超音波によって微細なサイズの水滴を発生させる装置である。また、水槽19内には、水内に直径数十ナノメートルから数ナノメートルのサイズの気泡を混入するための微細気泡発生装置24が設けられている。
図4に示すように、微細気泡発生装置24は、制御装置8によって制御される。
【0030】
直径数十ナノメートルから数ナノメートルのサイズの微細気泡は、霧発生装置20において発生される直径数十マイクロメートル程度の水滴内に存在することが可能である。このため、霧状の水滴中にも高濃度の酸素を含ませることができ、浄化有用好気性細菌の活動を活発化させることができる。
【0031】
油含有土壌Sの盛土S1の最下層には、シート2が配置されている。シート2は、油含有土壌Sの盛土S1の最下層と、それより下の地面との間の透水を遮断する部材であり、例えばポリ塩化ビニル系の合成樹脂シートを一層と保護マットを上下に各一層を重ねた三層の遮水構造で形成されている。
【0032】
このように油含有土壌Sの盛土S1と、地面との間の透水を防止することにより、雨の浸透を防ぐだけではなく、湿度調整手段7によって供給された水分を地面に逃がすことなく、盛土S1内に保つことが可能となる。
【0033】
また、油含有土壌Sの周囲には、降雨を排出するための排水路32と、排水貯留槽(図示せず)とを備えている。
【0034】
次に、土壌浄化装置1の実施例手順について説明する。
まず、油含有土壌Sを掘削し、浄化前処理ヤードで栄養塩、バイオ製剤或いは浄化有用好気性細菌を混合・撹拌させる。この過程で、油含有土壌S中の水分が20%〜40%程度となるように調整するとともに一定量の空気(酸素)を含ませる。
【0035】
盛土S1を整形する浄化ヤードに底部用のシート2を盛土S1の下面と同面積以上となるように敷設する。
次に、シート2によって遮水された底面の上に盛土用送気管12Bを複数列敷設し、主送気管12Aと接続できる箇所に配置する。なお、盛土用送気管12Bは可撓性のある微細孔管で構成されている。このように構成することにより、盛土用送気管12Bは、盛土S1の底部に配置される。また、遮水用のシート2の損傷防止策に、敷鉄板を敷設することも有効である。
【0036】
次に、前処理を済ませた油含有土壌Sを用いて盛土S1を整形する。盛土S1は、断面視台形状となるように、言い換えれば水平断面視において、上面から下面に向かうにしたがって広がるように整形される。
次に、盛土用吸気管13Bを盛土S1の表面に沿って配置する。盛土用吸気管13Bは可撓性のある微細孔管で構成されているので、盛土S1の表面の形状に合わせて撓ませて配置することができる。このように構成することにより、盛土用吸気管13Bは、盛土S1の上部に配置される。
【0037】
次に、盛土S1の傾斜面及び上面と、盛土用送気管12Bおよび盛土用吸気管13Bを、シート2で被い、シート2の底部・側面・上面および各配管のための孔周辺を溶着することにより、盛土S1を密閉し、盛土S1と外部とを遮断する。これにより、水分や油臭等が盛土S1の表面から逃げること、および、降雨・風・日射等の外部からの影響を受けること、を防止することができる。
このように構成することにより、盛土S1内の水分および空気量を調節可能にすることができるのである。
【0038】
次に、送気及び吸気工程について説明する。
コンプレッサ3によって圧縮された空気は、チャンバ15内で調圧された後、主送気管12Aへと搬送される。また、霧発生装置20によって、前記調圧された空気内には霧状の水分が加えられる。霧が加えられた空気の当該チャンバ15内での湿度は盛土S1内の湿度が50%以上、80%以下となるように調整される。
【0039】
次に、主送気管12A内を通った空気は、各盛土用送気管12B内へと移送される。盛土用送気管12B内に移送された空気は、盛土用送気管12Bに設けられた微細孔から盛土S1内へと供給されることになる。この際、霧状になった水分が含まれていた場合には、盛土S1内の湿度が上昇する。このように構成することにより盛土S1内に水分が必要に応じて供給され、湿度を調節することができるのである。
【0040】
栄養塩、バイオ製剤或いは浄化有用好気性細菌が配合された盛土S1において、盛土用送気管12Bから水分と空気(酸素)を供給することにより、油含有土壌S中に配合された浄化有用好気性細菌を活性化し油分を分解浄化する。このため、従来の工法で行われていた、油含有土壌Sの重機撹拌作業を無くすることができる。また、同時に、重機作業による騒音の発生も無くすることができる。
【0041】
また、バキューマ4によって、油臭及び浄化有用好気性細菌の活性・分解によって生じる、盛土S1内の過剰となった窒素・二酸化炭素と、分解された油から発生する臭気(硫化物やメタンなどの炭化水素等)等の、混合気体が同時に排出される。
【0042】
当該混合気体は、バキューマ4によって、各盛土用吸気管13Bから主吸気管13Aへと移送される。主吸気管13Aに送られた混合気体は、バキューマ4によって下流側の脱臭装置5へと移送される。脱臭装置5においては、油臭、硫化物やメタンなどの炭化水素等が、脱臭装置5内に設けられた吸着材によって吸着され、臭いがほとんどなくなった気体が空気中へ排出されることとなる。
【0043】
このように構成することにより、盛土S1全体をシート2で被い、盛土S1内の浄化有用好気性細菌に水分と空気(酸素)を供給して活性化させ、油含有土壌S内に残留している油分を二酸化炭素と水の無害な物質へ分解して浄化することができるのである。
【0044】
次に、湿度管理手段7による盛土S1内に必要な水分を供給する湿度管理について詳しく述べる。
外気用湿度・温度検出手段21と、送気用湿度・温度検出手段22と、吸気用湿度・温度検出手段23と、から検出された、外気中の湿度・温度、送気中の湿度・温度、吸気中の湿度・温度に基づいて、盛土S1中の湿度が管理範囲となるように、霧の発生量、送気量および吸気量を制御するものである。より詳しくは、盛土S1内の湿度が50%以上であって、水蒸気の結露防止を図るために80%以下となるように、送気量および吸気量を制御するものである。
例えば、盛土S1内の湿度が50%を下回る場合には、制御装置8は、霧発生装置20を駆動させて、送気内の湿度を高める。また、盛土S1内の湿度が80%を上回る場合には、制御装置8は、霧発生装置20の駆動を停止し、送気量及び排気量を調整させて、過剰な水分を排出する。このように構成することにより、盛土S1内の湿度管理を行うことができ、浄化有用好気性細菌の活性環境を整備することができるのである。
また、送気及び吸気が盛土S1中に行き渡るよう送気及び吸気は所定の圧力以下で行われる。これにより、盛土S1中に特定の空気の通路が発生するのを防止することができる。
【0045】
また、必要に応じて、制御装置8は、微細気泡発生装置24を駆動することによって霧発生装置20から発生された霧の内部に、空気或いは酸素等を含ませることができる。これにより、浄化有用好気性細菌へ酸素を効率よく供給することができる。
【0046】
以上のように、油含有土壌Sを微生物により浄化する土壌浄化装置1であって、油含有土壌S全体を被覆するシート2と、油含有土壌Sの内部へ空気を送気する送気手段であるコンプレッサ3と、油含有土壌S内部の混合気体を吸気する吸気手段であるバキューマ4と、バキューマ4によって排出された吸気の臭気を脱臭するための脱臭手段である脱臭装置5と、油含有土壌に必要な水分を供給する湿度管理手段7と、を備え、シート2は、遮水シートを使用した遮水構造であり、シート2によって油含有土壌Sを密閉するものである。
このように構成することにより、湿度管理手段7によって、油含有土壌内部を適度な湿度で保つことができるため、頻繁なシートの開閉を必要としない。そして、湿度管理による浄化有用好気性細菌の活性環境を整備することができる。
【0047】
また、コンプレッサ3から送られる送気を供給する盛土用送気管12Bは、盛土S1の底部に配置され、バキューマ4によって吸入される盛土S1内のガスが排出される盛土用吸気管13Bは、盛土S1の上部に配置され、盛土S1内の盛土用送気管12B及び盛土用吸気管13Bは、可撓性を有し、微細な透過膜を有する微細孔管である。
このように構成することにより、盛土S1の底部に配置した盛土用送気管12Bから油含有土壌S中へ外気と霧を混合して供給することができ、土壌中の酸素濃度と湿度の管理が行いやすくなる。また、送気と同時に盛土S1の上部に配置した盛土用吸気管13Bから油含有土壌S内の混合気体を引き抜くことによって、過剰な窒素・二酸化炭素・臭気を排出することができる。
【0048】
また、湿度管理手段7は、水分供給装置である霧発生装置20と、外気中の湿度・温度を検出する外気用湿度・温度検出手段21と、送気中の湿度・温度を検出する送気用湿度・温度検出手段22と、吸気中の湿度・温度を検出する吸気用湿度・温度検出手段23と、送気量および吸気量と、を調整する制御装置8を備え、霧発生装置20は、超音波によって、微細なサイズの水滴を発生させるものである。
このように構成することにより、湿度管理による浄化有用好気性細菌の活性環境を整備することができる。
【0049】
また、霧発生装置20は、水滴内に微細気泡を含有させる微細気泡発生装置24をさらに備えるものである。
このように構成することにより、浄化有用好気性細菌に効率よく酸素を供給することができるため、浄化中の土壌攪拌を無くすることが可能となり、油臭の拡散を抑制することができる。
【0050】
また、バキューマ4の下流側には、脱臭手段である脱臭装置5が設けられるものである。
これにより、油含有土壌S中の油を微生物により分解したときに発生した異臭物質等を捕獲することができ、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。