【解決手段】空気供給源から供給された圧縮空気を下部電極7から該下部電極7に載置された母材40に向けて噴出する下部空気噴出路28と、該下部空気噴出路28の圧力を検知する圧力センサ29とを備える。下部電極7は、上部軸心部に形成したガイド孔41にガイドピン8を挿通して出没可能に設け、ガイドピン8は先端部に円錐状のガイド8aとその下方に円柱状の主体部8bとを備え、円柱状主体部8bの径を母材40に形成した正規孔の径に対応させ、円柱状主体部8bの外周面と下部電極7のガイド孔41との間に空気の流通可能な隙間44を形成する。
空気供給源から供給された圧縮空気を下部電極から該下部電極に載置された母材に向けて噴出する下部空気噴出路と、該下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを備えてなることを特徴とする抵抗溶接機。
下部電極は、上部軸心部に形成したガイド孔にガイドピンを挿通して出没可能に設け、ガイドピンは先端部に円錐状のガイドとその下方に円柱状の主体部とを備え、ガイドピンの円柱状の主体部の径を母材に形成した正規孔の径に対応させ、ガイドピンの円柱状主体部の外周面と下部電極のガイド孔との間に空気の流通可能な隙間を形成してなる請求項1に記載の抵抗溶接機。
母材に載置されたワークに上部電極を当接させて該ワークの高さを計測する高さ計測部と、空気供給源から供給された圧縮空気を前記上部電極の軸心部から前記ワークに向けて噴出する上部空気噴出路と、前記上部空気噴出路及び下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを設け、前記高さ計測部及び圧力センサのデータを入力して前記電極への通電の「要・否」を判定する判定部を設けた請求項1又は2に記載の抵抗溶接機。
【背景技術】
【0002】
下面に溶着用の突起を有するワーク、例えばナットを母材に溶着する際は、該ナットを、その突起が母材に当接するように上下の向きを決めて母材に載置する必要がある。近年では、省力化を図ったり生産性を高めるために、ワークをパーツフィーダで母材に供給するようにしている。該パーツフィーダはワークの向きが正常となるように配慮されているものの、何らかの原因で上下の向きが反転されて母材に載置されることがある。
ところで、従来の抵抗溶接機として特許文献1があった。即ち、母材に載置されたワークに上部電極を当接させて該ワークの高さを計測する高さ計測部と、空気供給源から供給された圧縮空気を前記上部電極の軸心部から前記ワークに向けて噴出する空気噴出路と、該空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを設け、前記高さ計測部及び圧力センサのデータを入力して前記電極への通電の「要・否」を判定する判定部を設け、判定部で「要」と判定された際にのみ電極に通電するものである。
【0003】
前記従来のものは、母材に載置されたワークの高さが異なっていたり、反転載置あるいは位置ずれした際に、該ワークの溶着を阻止することができる。
ところで、母材にはワークを溶着すべき正規孔、該正規孔より径の小さい小径孔、正規孔より径の大きい大径孔が開けられているが、前記従来の抵抗溶接機では、小径孔は検知できても大径孔は検知できないものであった。このため、別途対策を講ずる必要があった。例えば、孔違いにガイドピンが入らないようにポカ除け等を付けたり、孔違いを覆って正規孔だけが見えるようにして、対策しているのが現状である。特に、正規孔より径の大きい大径孔の検知を簡単にできるようにしたものはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、母材に形成された正規孔とこれより径の大きい大径孔とを識別できるようにした抵抗溶接機、また、母材に形成された孔径の異なる孔の中から正規孔と異常孔を識別して正規孔にのみワークを溶着することができるようにした抵抗溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る抵抗溶接機は、空気供給源から供給された圧縮空気を下部電極から該下部電極に載置された母材に向けて噴出する下部空気噴出路と、該下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを備えてなる構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、下部電極は、上部軸心部に形成したガイド孔にガイドピンを挿通して出没可能に設け、ガイドピンは先端部に円錐状のガイドとその下方に円柱状の主体部とを備え、ガイドピンの円柱状の主体部の径を母材に形成した正規孔の径に対応させ、ガイドピンの円柱状主体部の外周面と下部電極のガイド孔との間に空気の流通可能な隙間を形成してなるものである。
請求項3に係る発明は、母材に載置されたワークに上部電極を当接させて該ワークの高さを計測する高さ計測部と、空気供給源から供給された圧縮空気を前記上部電極の軸心部から前記ワークに向けて噴出する上部空気噴出路と、前記上部空気噴出路及び下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを設け、前記高さ計測部及び圧力センサのデータを入力して前記電極への通電の「要・否」を判定する判定部を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、空気供給源から供給された圧縮空気を下部電極から該下部電極に載置された母材に向けて噴出する下部空気噴出路と、該下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを備えてなるので、ワークが母材の正規孔の位置に載置されると、下部電極から母材に向けて噴出する下部空気噴出路内圧力が上昇して圧力センサの値が規定値となる。一方、ワークが母材の大径孔の位置に載置されると、下部空気噴出路の空気が大径孔部から外部に漏洩するため、圧力センサの値が規定値より低くなる。これにより、正規孔と大径孔とを識別することができる。
請求項2に係る発明によれば、下部電極は、上部軸心部に形成したガイド孔にガイドピンを挿通して出没可能に設け、ガイドピンは先端部に円錐状のガイドとその下方に円柱状の主体部とを備え、ガイドピンの円柱状の主体部の径を母材に形成した正規孔の径に対応させ、ガイドピンの円柱状主体部の外周面と下部電極のガイド孔との間に空気の流通可能な隙間を形成してなるので、ワークが母材の正規孔の位置に載置されると、ガイドピンの円柱状主体部が母材の正規孔を塞いで、下部空気噴出路の空気が外部に漏洩し難くなり、圧力が上昇して圧力センサの値が規定値となる。一方、ワークが母材の大径孔の位置に載置されると、ガイドピンの円柱状主体部と母材の大径孔との隙間から外部に空気が漏洩して、圧力センサの値が規定値より低くなる。
請求項3に係る発明によれば、母材に載置されたワークに上部電極を当接させて該ワークの高さを計測する高さ計測部と、空気供給源から供給された圧縮空気を前記上部電極の軸心部から前記ワークに向けて噴出する上部空気噴出路と、前記上部空気噴出路及び下部空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを設け、前記高さ計測部及び圧力センサのデータを入力して前記電極への通電の「要・否」を判定する判定部を設けたので、規定のワークが正規の向きで母材に載置されると、上部電極がワークに当接した際における高さ計測部の計測値が基準値となる。また、規定のワークが母材の正規孔の位置に載置されると、上部電極の軸心部から噴出される空気の出口部がワークによって閉塞され、下部電極から母材に向けて噴出される空気の出口部が母材の正規孔部によって閉塞されて、上部空気噴出路内及び下部空気噴出路内の圧力が上昇して圧力センサの値が規定の圧力となる。これにより、判定部で電極への通電「要」と判定され、上下電極への通電が開始され、前記ワークは母材に溶着される。
一方、正規品とは高さの異なるワークが母材に載置されると、上部電極がワークに当接した際における高さ計測部の計測値が基準値と異なり、また、母材に載置されたワークが上下反転していたり、載置位置がずれていたり、母材の小径孔の位置にワークが載置されたりしていると、上部電極とワークとの間に間隙が発生し、上部電極の軸心部から噴出される空気が前記間隙から外部に漏洩し、母材の大径孔の位置にワークが載置されると、下部電極から母材に向けて噴出される空気が母材の大径孔部から外部に漏洩して、圧力センサの値が規定値より低くなる。これらの場合は、判定部で電極への通電「否」と判定され、上下電極への通電が阻止されて前記ワークは母材に溶着されなくなる。
このように、母材に形成された孔径の異なる孔の中から正規孔と異常孔(大径孔、小径孔)とを識別して正規孔の位置のみにワークを溶着ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1〜
図3において、1は抵抗溶接機(スポット溶接機)であり、機台2に上部アーム3と下部アーム4とを上下に離間させて正面方向(
図2において右方)に突出固定し、下部アーム4の先端部に下部クランプ5を介して棒状の下部電極ホルダ6を挟持固定し、該下部電極ホルダ6の上部に下部電極7を取り付ける。該下部電極7の上部軸心部に、
図3に示すように、先端が円錐状の頂部8aを有するガイドピン8を出没可能に取り付けるとともに、該ガイドピン8をバネ9により上方に向けて突出付勢する。
【0010】
前記上部アーム3の先端部にシリンダ10を下方に向けて取付けるとともに、そのロッド11を上部アーム3から下方に突出させ、該ロッド11の下端部に支持具12を介して上部クランプ13を固定し、該上部クランプ13に棒状の上部電極ホルダ15を上下に向けて固定し、該上部電極ホルダ15の下端部に上部電極30を前記下部電極7と対向させて固定する。
【0011】
前記上部電極ホルダ15は、
図3に示すように、軸心部に上部通し孔16aが貫通形成され、上部に配管ナット17が着脱可能に螺合され、下部に上部電極30が着脱可能に連結される。前記配管ナット17の軸心部に、前記上部通し孔16aの中心部を貫通する冷却水の流入管18を垂下固定し、該流入管18の上端部を前記配管ナット17の側部に取り付けた冷却水の流入ニップル19に連通させる。前記配管ナット17の下部軸心部に前記流入管18よりも大径、かつホルダ15の上部通し孔16aに連通する戻り水路21を形成し、該戻り水路21を前記配管ナット17の側部に取り付けた冷却水の流出ニップル20に連通させる。
【0012】
前記配管ナット17の上部に、軸心部に空気の流通路24が形成された連結ナット23を着脱可能に螺合させ、該連結ナット23の下部軸心部に、前記流入管18の中心部を貫通する上部空気噴出管25を垂下固定する。前記連結ナット23の上部に空気供給管26を接続する。該空気供給管26は、エアコンプレッサーに接続される一次供給管26aに減圧式の電磁弁27を介して二次供給管26bを接続し、該二次供給管26bを前記連結ナット23に接続する。前記電磁弁27は、一次供給管26a側の圧力を検出の範囲に減圧して二次供給管26bに供給されるようになっており、二次供給管26bには、圧力センサ29が取り付けられている。二次供給管26bには、分岐管37を介して上部空気供給管25と下部電極7へ空気を供給する下部空気噴出路28とに分岐してある。なお、下部電極7への空気の供給を別のルートで設け、圧力センサも別途設けるようにしてもよい。
【0013】
前述した上部電極30は、
図3に示すように、上部電極ホルダ15の下部にソケット31を着脱可能にテーパー嵌合させ、該ソケット31の下部に中継ホルダ32を着脱可能にテーパー嵌合させ、該中継ホルダ32の下部に電極チップ33を着脱可能に螺合させてなる。電極チップ33の下部は円筒状にして下面中心部に凹部34を有する。該凹部34は下部電極7に設けたガイドピン8の円錐状の頂部8aが嵌合するようになっている。
【0014】
前記ソケット31の軸心部に、前記配管ナット17の上部通し孔16aと連通する下部通し孔16bを形成し、中継ホルダ32の上部軸心部に前記下部通し孔16bの下端が開口する密閉された反転空間部35を形成する。また、前記中継ホルダ32の下部外周に筒状の検知筒36を下方に向けて突出固定する。該検知筒36は、前記電極チップ33の外周を所定の間隙を保持して包囲し、その下端は電極チップ33よりも若干下方に突出させる。
【0015】
前述した流入管18は、前記上下部の通し孔16a,16bを通過し、その下端を前記反転空間部35に対面させる。これにより、流入ニップル19から流入した冷却水が上部空気噴出管25と導入管18との間を流通し、反転空間部35で上方に反転されて流入管18の外側の通し孔16a,16bを流通し、流出ニップル20から外部の冷却水タンクに向かって流れ、上部電極30を冷却することになる。
【0016】
前記上部空気噴出管25は、前記導入管18の中心部、及び電極チップ33の中心部を通過し、その下端を電極チップ33の凹部34に開口させる。これにより、二次供給管26bから供給される圧縮空気を前記凹部34内に噴出させる。
図3において、Wは母材40に溶着されるワークであり、本例ではナットとする。
【0017】
前記ナットは、
図9(A)、(B)に示すように、溶着用の突起L1が主体の各角部の下面から下方に向かって突出するナットW1,溶着用の突起L2が主体の各角部の下部から外側方かつ下方に向かって突出するナットW2があり、また、該ナットW1、W2のねじ孔の種類は、M5,M6,M8,M10,M12,その他多種多様なものがあり、高さもねじ孔の種類によって異なっている。
【0018】
図10に示すように、母材40には、ワークWを溶着すべき正規孔48の他に、その目的に応じて正規孔48より径の大きい大径孔90、径の小さい小径孔91が開けられている。これらの孔の内、正規孔48の位置にのみワークWを溶着しなければならない。
【0019】
下部電極7はガイドピン8を案内する下部駒チップ38と該下部駒チップ38を保持する下部ホルダ39とを有する。下部駒チップ38には軸心部にガイドピン8を挿通するガイド孔41が形成され、下部ホルダ39の軸心部の中空穴42にはガイドピン8を上方に向けて付勢する圧縮バネ(弾性体)9を設けてあり、下部電極7は上部軸心部に形成したガイド孔41にガイドピン8を挿通して出没可能に設けてある。
中空穴42にはニップル43を介して下部空気噴出路28を連通させる。中空穴42とガイド孔41とを連通させるとともにガイドピン8(円柱状主体部8bの外周面)とガイド孔41との間に空気が流通可能な隙間44を形成してある。
ガイドピン8は先端部に円錐状のガイド(頂部)8aとその下方に円柱状の主体部8bとを備え、下端部に主体部8bより大径のフランジ部8cを形成してある。このフランジ部8cがガイド孔41の下端部を拡径した規制壁部47に当接してガイドピン8がこれ以上上方に突出しないように規制する。
ガイドピン8の円柱状の主体部8bの径を母材40に形成した正規孔48の径に対応させてあり、ガイドピン8の主体部8bの外周面と正規孔48との間の隙間を小さくして、該隙間から空気が流通し難いようにしてあり、下部空気噴出路28に圧力がかかるようにしてある。
【0020】
なお、規制壁部47には、中空穴42と隙間44との間をつなぐ溝47aを形成して、ガイドピン8が上方に付勢されてガイドピン8のフランジ部8cが規制壁部47に当接しても、中空穴42と隙間44との間に空気が流通可能にしてある。図では、規制壁部47に溝47aを形成したものを示したが、ガイドピン8のフランジ部に中空穴42と隙間44との間をつなぐ溝を形成するようにしてもよい。
【0021】
下部駒チップ38は下部ホルダ39にねじ嵌合して保持されており、下部駒チップ38、ガイドピン8、バネ9などを交換できるようにしてある。
寸法の一例を示せば、母材40の正規孔の径が7.2mm、ガイドピン8の主体部8bの径が7.15mm、ガイド孔41の径が7.5mm程度である。これらの寸法は一例であって、限定されるものではない。各図においては、分かり易くするため、隙間44の間隔を大きく描画してある。
なお、ガイドピン8(8b)のがたつきを小さくしつつ空気の流通を確保するため、下部駒チップ38のガイド孔41の径を小さくしてがたつきを小さくしつつ、ガイド孔部に空気の流通する溝部(例えば、
図13に示すような縦溝41a、その他らせん状の溝などその形状は問わない)を形成して空気の流通を確保するようにしてもよい。
【0022】
このような下部電極7において、
図3、
図4に示すように、ワークWが母材40の正規孔48の位置に載置されると、下部電極7から噴出される空気の出口部が母材40の正規孔48とガイドピン8の主体部8bとによって閉塞され、圧力が上昇して圧力センサ29の値が規定の圧力となる。一方、
図5に示すように、ワークWが母材40の大径孔90の位置に載置されると、下部電極7から母材40に向けて噴出される空気がガイドピン8の円柱状主体部8bと母材40の大径孔90との隙間から外部に漏洩して、圧力センサ29の値が規定値より低くなる。これにより、母材に形成された正規孔と大径孔とを識別できることとなる。
【0023】
前記機台2に抵抗溶接機1の本体制御盤45を取付け、また、上部アーム3に通電制御装置50を取付ける。前記本体制御盤45はシリンダ10の駆動、上下部電極30,7への通電等を行う主制御部、及び所定の操作ボタン等を有する。この本体制御盤45には床部に配置されるフットスイッチ46(
図2)が接続され、該フットスイッチ46を踏むことによって前記抵抗溶接機1を作動させ、各電極30,7間に配置した母材40とワーク(被固着物)Wとの溶着作業が簡便に行えるようになっている。なお、抵抗溶接機1を自動運転する場合は前記フットスイッチ46を省略する。
【0024】
前記通電制御装置50は、
図2に示すように、箱形のケース51内に制御基板52、ワークの高さを計測するエンコーダ(高さ計測部)53を設ける。エンコーダ53は、制御基板52に接続されてその回転軸を水平に配置し、該回転軸に固定したピニオンギア54を上下方向に延びるラックギア55に噛み合わせ、該ラックギア55の下部をケース51から下方に突出させ、ブラケット56を介して前述した支持具12にボルト締め固定する。これにより、上部電極30がシリンダ10によって上下動されると、これと同期して前記ラックギア55が上下動してエンコーダ53が回転され、該エンコーダ53の回転量が制御基板52に出力されるようになっている。
【0025】
前記通電制御装置50に中継ボックス61を接続し、該中継ボックス61に前述した電磁弁27の駆動回路、及び圧力センサ29の信号回路を接続し、該中継ボックス61にキーボードを有する入力装置(パソコン)62を接続する。該入力装置62は、キーボードを操作することによって、母材40に固着するワークWの種類、固着順番、電磁弁27の動作、圧力センサ29の圧力値等を設定し、中継ボックス61を介して通電制御装置50(制御基板52)に記憶させたり、後述するロボット65の動作を設定したりする。
【0026】
前記母材40のワーク固定位置への移動は、ロボット65によって行われる。該ロボット65は、
図1に示すように、ベース66に起立固定した支柱67に水平軸を中心として上下に回動する二つの第1、第2アーム68,69を連結し、第2アーム69の先端部に上下軸心を中心として回動する第3アーム70を連結し、該第3アーム70に母材40を受けるワーク受け71を取付け、支持台66側に取付けたロボット制御部72からの指令で前記各第1〜第3アーム68〜70を駆動制御し、ワーク受け71に支持された母材40を順次各ワークWの固定位置(電極位置)に移動させるようになっている。なお、前記ワークWの固定位置には、所定のワークWがパーツフィーダのシューター73によって供給され、母材40上で上部電極30と対面するようになっている。
【0027】
図11は前記通電制御装置50のブロック図を示す。
図11において、80は設定部であり、エンコーダ53の初期値や計測制度を設定したり、入力装置(パソコン)62を操作して母材40に固着する各ワークWの順番及び高さ、電磁弁27の開閉時期、圧力センサ29による作動値等を設定し、該設定されたデータは記憶部81で記憶される。
【0028】
高さ計測部82は、シリンダ10によって上部電極30およびラックギア55が下動し、上部電極30が母材40に載置されたワークWに当接してシリンダ10の負荷が所定値になった際に、ラックギア55によるエンコーダ53の回転量から、前記ワークWの高さを計測する。圧力検出部83は圧力センサ29によって上部空気噴出管25内及び下部空気噴出路28内の圧力を検出する。84は判定部であり、高さ計測部82及び圧力検出部83のデータと記憶部81のデータとを比較し、正常の場合は通電「要」の判定をして通電部85で上下部電極30,7に通電し、異常の場合は通電「否」の判定をして通電禁止部86で前記上下部電極30,7への通電を禁止し、報知部87で異常の表示あるいは警報機を作動させる。
【0029】
図12は通電制御装置50の動作を示すフローチャートである。
図12において、S1〜S15は各ステップを示す。スタートのスイッチが押される(S1)と、ロボット65が作動して母材40のワーク固着部を下部電極7上に位置決めし、シューター73から所定のワークW2を前記母材40のワーク固着部に供給(S2)する。
【0030】
次いで、本体スイッチがオン(S3)されてシリンダ10が伸長作動し、上部電極30が降下(S4)し、これに伴ってブラケット56を介してラックギア55が降下し、ピニオンギア54を介してエンコーダ18が回転(S5)される。前記上部電極30がワークW2に当接(S6)すると、電磁弁27が開作動され(S7)、二次供給管26bから上部空気噴出管25に圧縮空気が供給され、上部電極30の軸心部から前記ワークW(W2)に向けて噴出する。また、分岐管37を介して下部空気噴出路28に圧縮空気が供給され、下部電極7から母材40に向けて噴出する。
このように、上部空気噴出管25(下部空気噴出路)への圧縮空気の供給開始を、上部電極30がワークWに当接する時期とすることにより、ワークWが上部電極30によって加圧保持されていない不安定な時期に、該ワークWが空気噴出路から噴出する空気流によって位置ずれしなくなる。このため、ワークWを母材40に高精度に溶着することができる。
【0031】
前記上部電極30がワークWに当接すると、高さ計測部82でエンコーダ18の回転量から、前記ワークWの高さ(厚さ)が計測され、判定部84でワークWの高さが正常か否かを判定(S8)する。また、圧力検出部83で圧力センサ29の信号を入力し、判定部84で上部空気噴出管25内及び下部空気噴出路28内の空気圧力が正常か否かを判定(S9)する。
【0032】
この場合、前記上部空気噴出管25内の空気圧力は、
図3に示すように、ワークWが正規の向きで母材40に載置されると、上部電極30の電極チップ33がワークWに当接した際には、高さ計測部82の計測値が基準値(正常)になるとともに、前記電極チップ33の軸心部から噴出される空気の出口部がワークWと下部電極7のガイドピン8(頂部8a)とによって閉塞され、上部空気噴出管25内の圧力が上昇して圧力センサ29の値が規定の圧力(正常)となる。また、下部空気噴出路28内の空気圧力は、
図3、
図4に示すように、ワークWが正規の向きで母材40の正規孔の位置に載置されると、下部電極7から噴出される空気の出口部が母材40の正規孔とガイドピン8の主体部8bとによって閉塞され、圧力が上昇して圧力センサ29の値が規定の圧力(正常)となる。これにより、判定部84で電極への通電「要」と判定される。
【0033】
しかしながら、前記正規品とは高さの異なるワークWが母材40に載置されると、高さ計測部82の計測値が基準値と異なり、判定部84で電極への通電「否」と判定される。
また、
図7に示すように、正規品のワークWが上下反転して母材40に載置された際には、ワークWの突起L1が電極チップ33に当接して電極チップ33とワークWとの間に間隙(ア)が発生する。また、
図8に示すように、正規品よりも大径のワークW3が母材40に載置されたり、あるいは正規品のワークWの載置位置が側方にずれた際には、検知体36がワークW3、W1の外周部に衝突し、高さ計測部82の計測値が規定値とは異なるとともに、ワークW3、W1と下部電極7のガイド8との間に間隙(イ)が発生して上部電極30の電極チップ33の軸心部から噴出する空気が前記間隙(ア、イ)から外部に漏洩して圧力センサ29の値が規定値よりも低くなり、判定部84で電極への通電「否」と判定される。
図5に示すように、ワークWが母材40の大径孔90の位置に載置されると、下部電極7から母材40に向けて噴出される空気がガイドピン8の円柱状主体部8bと母材40の大径孔90との隙間から外部に漏洩して、圧力センサ29の値が規定値より低くなる。また、
図6に示すように、ワークWが母材40の小径孔91の位置に載置されると、ワークWとガイドピン8(頂部8a)との間に間隙(ウ)が発生し、上部電極30の軸心部から噴出される空気が前記間隙(ウ)から外部に漏洩して圧力センサ29の値が規定値よりも低くなる。これら、圧力センサ29の値が規定値よりも低くなると、判定部84で電極への通電「否」と判定される。
【0034】
前記S8,S9で正常と判定された場合は、S10に進行し、通電部85で上下部電極30,7に所定の電流を流し(S10)、前記ワークWを母材40に溶着し、前記S8,S9で異常と判定された場合は、S14に進行し、通電禁止部86で前記上下部電極30,7への通電が禁止され、報知部87で異常の表示あるいは警報機が作動する(S15)。
【0035】
S10でワークWの溶着が完了すると、上部電極30を上昇(S11)させ、S12に進行して作業完了の有無を判断し、作業未完の場合はS2に進行し、作業完了の場合はS13に進行して制御プログラムを終了する。