特開2021-6614(P2021-6614A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アースプロテクトの特許一覧 ▶ 宇部マテリアルズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021006614-土壌改質材及び土壌改質方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-6614(P2021-6614A)
(43)【公開日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】土壌改質材及び土壌改質方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/22 20060101AFI20201218BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20201218BHJP
【FI】
   C09K17/22 P
   C09K17/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-121276(P2019-121276)
(22)【出願日】2019年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】503237161
【氏名又は名称】株式会社アースプロテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友一
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】尾花 誠一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 涼太
【テーマコード(参考)】
4H026
【Fターム(参考)】
4H026CB08
4H026CC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改質主材の劣化を抑制して、品質を保持できる土壌改質材を提供する。
【解決手段】吸水性ポリマーと高分子凝集剤とゼオライトとを含有する土壌改質材であって、前記ゼオライトの配合量は、前記吸水性ポリマー100質量部に対して75質量部以上であることを特徴とする土壌改質材。前記ゼオライトの配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対して500質量部以下であることを特徴とする土壌改質材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマーと高分子凝集剤とゼオライトとを含有する土壌改質材であって、
前記ゼオライトの配合量は、前記吸水性ポリマー100質量部に対して75質量部以上であることを特徴とする土壌改質材。
【請求項2】
前記ゼオライトの配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対して500質量部以下であることを特徴とする請求項1記載の土壌改質材。
【請求項3】
前記ゼオライトは、粒径が1μm以上4mm未満の粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の土壌改質材。
【請求項4】
前記吸水性ポリマーは、アクリル系であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の土壌改質材。
【請求項5】
前記高分子凝集剤は、アニオン系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の土壌改質材。
【請求項6】
前記高分子凝集剤の配合量は、前記吸収性ポリマー100質量部に対して0.1〜40質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の土壌改質材。
【請求項7】
前記吸収性ポリマー100質量部に対して200〜1800質量部の分散材をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の土壌改質材。
【請求項8】
含水率が10〜90質量%の土壌100質量部に対し、請求項1〜7のいずれか1項に記載の土壌改質材1〜10質量部を混合する土壌改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改質材に関する。
【背景技術】
【0002】
湿潤した土壌、汚染土や残土等の土壌に改質材を添加することにより、粘り気のある土壌を改質して不純物の分離を行うなど、土壌の取り扱い性や作業性を高めることが行われている。一般的には、土壌改質材は、吸水して膨張する吸水性樹脂と、対象土壌の土粒子表面に作用して結合させる高分子化合物(高分子凝集剤)とを改質主材として含有する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2974215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、改質主材である吸水性樹脂及び高分子凝集剤は、空気中の水分により潮解又は凝固する傾向がある。改質主材の潮解や凝固は劣化を意味するので、土壌改質材としての効果が低減してしまう。
【0005】
したがって、本発明の目的は、改質主材の劣化を抑制して、品質を保持できる土壌改質材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以上の目的を達成するために、鋭意検討した結果、品質保持材として所定量のゼオライトを含有することによって、改質主材の劣化を抑制して土壌改質材の品質を保持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、吸水性ポリマーと高分子凝集剤とゼオライトとを含有する土壌改質材であって、前記ゼオライトの配合量は、前記吸水性ポリマー100質量部に対して75質量部以上であることを特徴とする土壌改質材に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、改質主材の劣化を抑制して、品質を保持できる土壌改質材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】材料の吸水性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の土壌改質材は、改質主材としての吸水性ポリマー及び高分子凝集剤と、品質保持材としてのゼオライトとを含有する。それぞれの成分について、以下に説明する。
【0011】
吸水性ポリマーは、水と接触することで吸水し、膨潤する性質を有する樹脂である。吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、及びアクリル系等の樹脂が挙げられるが、特にアクリル系が好ましい。吸水性ポリマーの具体例としては、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0012】
高分子凝集剤は、対象土壌の土粒子表面に作用して、土粒子同士を結合する化合物である。高分子凝集剤としては、有機高分子化合物が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド系化合物が挙げられる。対象土壌の帯電の状況に応じて、アニオン系又はノニオン系の高分子凝集剤を適宜選択することができる。
【0013】
高分子凝集剤は、粉末又は液体であることが好ましい。高分子凝集剤の配合量は、一般的には、吸水性ポリマー100質量部に対し、0.1〜40質量部程度である。高分子凝集剤の配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。この配合比であれば、対象土壌の脱水がよりいっそう促進される。
【0014】
改質主材としての吸水性ポリマー及び高分子凝集剤は、いずれも雰囲気中の水分により潮解又は凝固する傾向がある。本発明の土壌改質材においては、改質主材より吸水性が高い材料を、品質保持材として配合して優先的に吸水させる。これによって、吸水性ポリマー等の改質主材の劣化が抑制されることから、土壌改質材の品質を保持することが可能となった。
品質保持材としては、ゼオライトが用いられる。ゼオライトは特に限定されず、天然ゼオライト、合成ゼオライト、及び人工ゼオライトのいずれも使用することができる。
【0015】
ゼオライトの配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対し、75質量部以上に規定される。75質量部未満の場合には、改質主材の吸水を抑制することができない。ゼオライトが過剰に配合されても、効果が顕著に向上するわけではない。ゼオライトの配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対し、500質量部以下にとどめることが望まれる。ゼオライトの配合量は、吸水性ポリマー100質量部に対し、85〜400質量部が好ましく、100〜300質量部がより好ましい。
品質保持材としてのゼオライトの効果は、吸水性ポリマーや高分子凝集剤の種類や組み合わせによらず発揮される。
【0016】
ゼオライトは、粒径が小さすぎても、大きすぎても、吸水性能が低下するおそれがある。これらを考慮すると、ゼオライトは、平均粒径が1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。また、ゼオライトは、目開き4mmの篩を通過するものが好ましく、目開き2mmの篩を通過するものがより好ましく、0.4mmの篩を通過するものが更に好ましい。
【0017】
ゼオライトは、WmZnOn・sHO(WはNa、Ca、K、Ba又はSrで、ZはSi+Al(Si:Al>1)、sは一定しない。)で示されるアルミノケイ酸塩である。こうしたアルミノケイ酸塩には、天然のものと合成のものの両者があり、合成のものには人工のものがある。本発明においては、これらゼオライトはいずれも使用可能である。天然ゼオライト及び合成ゼオライトを例示すると、天然ゼオライトとしては、クリノプチロライト、モルデナイト、アナルサイム、シャバサイト、エリオナイト、ローモンタイト、フィリップサイト、フェリエライト、ワイラカイトなどがある。また、合成ゼオライトとしては、A(3A、4A、5A等)型ゼオライト、L型ゼオライト、フォージャサイト(X型ゼオライト、Y型ゼオライト)、オフレタイト、エリオナイト、モルデナイトなどがある。また人工ゼオライトは、フライアッシュ等のシリカ、アルミナ分を含む原料を苛性ソーダなどとともに高温、高圧で処理して生成される材である。
【0018】
本発明の土壌改質材は、吸水性ポリマーと高分子凝集剤とゼオライトとを所定の割合で配合し、一般的な縦型ミキサー、横型ミキサー等により均一に混合して作製することができる。必要に応じて、分散材を配合してもよい。分散材によって、吸水性ポリマー等の分散性が向上する。分散材としては、例えば炭酸カルシウム、石膏、ペーパースラッジ、ベントナイト、及び酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは一種類を単独で配合してもよいし、二種類以上を併用してもよい。分散材の配合量は、例えば、吸水性ポリマー100質量部に対して200〜1800質量部程度とすることができる。
【0019】
本発明の土壌改質材は、含水率が10〜90質量%の土壌に対して好適に用いることができる。本発明の土壌改質材は、こうした土壌100質量部に対して、1〜10質量部を添加し、一般的な重機、ミキサー等により混合することで土壌を減容化し、流動性を低減させることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0021】
<品質保持材の選定>
まず、以下のゼオライト、炭酸カルシウム、及び緑色凝灰岩を用意し、これらについて吸水性を比較した。
ゼオライト:ゼオライトB4、ジークライト(株)製
炭酸カルシウム:宇部マテリアルズ(株)製炭酸カルシウム
緑色凝灰岩:ヒナイグリーン、中野産業(株)製
いずれも、篩目75μmの篩下のものを用いた。
【0022】
試験にあたっては、所定の温度及び湿度に調整された室内に実験用透明加湿箱を設置して、箱内を加湿器により加湿した。加湿箱内に上記3種を10g収容し、一定時間経過後の質量を測定して、質量増加分から吸水率(%)を求めた。
ゼオライト及び炭酸カルシウムについては、室内の温度及び湿度は、それぞれ18.4℃及び40.0%とし、加湿箱内の温度及び湿度は、それぞれ20℃及び99%とした。緑色凝灰岩については、室内の温度及び湿度は、それぞれ18.8℃及び42.2%とし、加湿箱内の温度及び湿度は、それぞれ19.1℃及び99%とした。
得られた結果を、下記表1にまとめる。
【0023】
【表1】
【0024】
さらに、それぞれについての吸水率の時間変化を図1に示す。図1中、曲線aはゼオライトの結果であり、曲線bは炭酸カルシウムの結果であり、曲線cは緑色凝灰岩の結果である。
ゼオライトは、炭酸カルシウム及び緑色凝灰岩に比較して吸水性が優れることが、上記結果に示されている。このように、ゼオライトは優れた吸水性を有していることから、土壌改質材に配合された際には、吸水性ポリマーに優先して雰囲気中の水分を吸収する品質保持材として良好に作用し、土壌改質材の劣化を抑制することが推測される。一方、緑色凝灰岩は、ゼオライトより吸水性が劣っているので、ゼオライトに匹敵するような品質保持材としての作用は期待できない。
【0025】
そこで、以下においては、吸水性の最も高いゼオライトを品質保持材として用いて土壌改質材を調製し、その特性を調べる。
まず、土壌改質材の製造に用いる成分を以下に示す。
吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウム
高分子凝集剤:アニオン系高分子凝集剤、ハイモ(株)製
ゼオライト:天然ゼオライト、ジークライト(株)製
比較のために、炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ(株)製)を用いて、土壌改質材を調製する。
【0026】
<実施例1、比較例1〜4>
下記表2に示す処方で各成分を用いて、実施例1、比較例1〜4の土壌改質材を調製した。調製直後の実施例1、比較例1〜4の土壌改質材は、いずれも粉末状であった。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例1、比較例1〜4の土壌改質材における各成分のポリマーに対する比(質量比)は、下記表3に示すとおりである。
【0029】
【表3】
【0030】
上述したように作製された実施例1、比較例1〜4の土壌改質材について、品質保持試験を行った。
東京都23区内、夏季(7〜9月)の環境下で保存して、20日間、状態の変化を観察した。15日目においても粉末状を保っていれば、改質主材の劣化を抑制して、土壌改質材としての品質が十分に保持されたものと判断する。
【0031】
実施例1は、15日目までは粉末状であったが、16日目に多少の「だま」が確認された。
比較例1は、3日目に硬化した。このとき、粘性、潮解性は確認されなかった。
比較例2,3は、3日目に硬化した。このとき、潮解性はないものの若干の粘性が確認され、6日目には粘性が増加した。
比較例4は、3日目で若干しっとりし、6日目には、若干硬化して粘性が生じていた。12日目にはさらに硬化ぎみとなり、20日目には多くの「だま」が生じていた。
【0032】
ゼオライトが含有されない場合(比較例1〜4)には、改質主材は容易に吸水して硬化してしまい、吸水性ポリマーが含有されない場合(比較例1)には、特に著しいことが示されている。
ゼオライトの代わりに同量の炭酸カルシウムを配合しても、改質主材の劣化を抑制するという効果は得られないことが、実施例1と比較例4との比較からわかる。
炭酸カルシウムより吸水性の劣る緑色凝灰岩を用いた場合には、改質主材の劣化抑制能はさらに低下することが、この結果から推測される。
【0033】
<実施例2,3、比較例5〜7>
下記表4に示す処方で各成分を用いて、実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材を調製した。調製直後の実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材は、いずれも粉末状であった。
【0034】
【表4】
【0035】
実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材における各成分のポリマーに対する比(質量比)は、下記表5に示すとおりである。
【0036】
【表5】
【0037】
上述したように作製された実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材について、品質保持試験を行った。
東京都23区内、夏季(7〜9月)の環境下で保存して、20日間、状態の変化を観察した。15日目においても変化が確認されなければ、改質主材の劣化が抑制されて、土壌改質材としての品質を十分に保持できたものと判断する。
【0038】
実施例2,3は、17日目でも何ら変化はなかった。
比較例5は、5日目で若干湿気をもち始め、7日目にはスポンジ状になった。その後、8日目には固まりかけて、10日目にはスポンジ状に固まった。
比較例6は、5日目に「だま」が多少見られ、10日目には微粉末が「だま」になった。その後は、劣化の進行は確認されなかった。
比較例7は、7日目に「だま」が多少見られ、11日目には「だま」が増加した。その後は、劣化の進行は確認されなかった。
【0039】
吸水性ポリマー100質量部に対するゼオライトの配合量が89質量部の場合(実施例2)、及び107質量部の場合(実施例3)には、改質主材の劣化を十分に抑制できることが示された。一方、比較例5〜7の結果から、ゼオライトの配合量が吸水性ポリマー100質量部に対して71質量部以下の場合には、改質主材の劣化を抑制することはできないことがわかる。
ゼオライトの配合量が、吸水性ポリマー100質量部に対して75質量部以上であれば、改質主材の劣化を抑制して土壌改質材の品質を保持できることが確認された。
図1