【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0021】
<品質保持材の選定>
まず、以下のゼオライト、炭酸カルシウム、及び緑色凝灰岩を用意し、これらについて吸水性を比較した。
ゼオライト:ゼオライトB4、ジークライト(株)製
炭酸カルシウム:宇部マテリアルズ(株)製炭酸カルシウム
緑色凝灰岩:ヒナイグリーン、中野産業(株)製
いずれも、篩目75μmの篩下のものを用いた。
【0022】
試験にあたっては、所定の温度及び湿度に調整された室内に実験用透明加湿箱を設置して、箱内を加湿器により加湿した。加湿箱内に上記3種を10g収容し、一定時間経過後の質量を測定して、質量増加分から吸水率(%)を求めた。
ゼオライト及び炭酸カルシウムについては、室内の温度及び湿度は、それぞれ18.4℃及び40.0%とし、加湿箱内の温度及び湿度は、それぞれ20℃及び99%とした。緑色凝灰岩については、室内の温度及び湿度は、それぞれ18.8℃及び42.2%とし、加湿箱内の温度及び湿度は、それぞれ19.1℃及び99%とした。
得られた結果を、下記表1にまとめる。
【0023】
【表1】
【0024】
さらに、それぞれについての吸水率の時間変化を
図1に示す。
図1中、曲線aはゼオライトの結果であり、曲線bは炭酸カルシウムの結果であり、曲線cは緑色凝灰岩の結果である。
ゼオライトは、炭酸カルシウム及び緑色凝灰岩に比較して吸水性が優れることが、上記結果に示されている。このように、ゼオライトは優れた吸水性を有していることから、土壌改質材に配合された際には、吸水性ポリマーに優先して雰囲気中の水分を吸収する品質保持材として良好に作用し、土壌改質材の劣化を抑制することが推測される。一方、緑色凝灰岩は、ゼオライトより吸水性が劣っているので、ゼオライトに匹敵するような品質保持材としての作用は期待できない。
【0025】
そこで、以下においては、吸水性の最も高いゼオライトを品質保持材として用いて土壌改質材を調製し、その特性を調べる。
まず、土壌改質材の製造に用いる成分を以下に示す。
吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウム
高分子凝集剤:アニオン系高分子凝集剤、ハイモ(株)製
ゼオライト:天然ゼオライト、ジークライト(株)製
比較のために、炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ(株)製)を用いて、土壌改質材を調製する。
【0026】
<実施例1、比較例1〜4>
下記表2に示す処方で各成分を用いて、実施例1、比較例1〜4の土壌改質材を調製した。調製直後の実施例1、比較例1〜4の土壌改質材は、いずれも粉末状であった。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例1、比較例1〜4の土壌改質材における各成分のポリマーに対する比(質量比)は、下記表3に示すとおりである。
【0029】
【表3】
【0030】
上述したように作製された実施例1、比較例1〜4の土壌改質材について、品質保持試験を行った。
東京都23区内、夏季(7〜9月)の環境下で保存して、20日間、状態の変化を観察した。15日目においても粉末状を保っていれば、改質主材の劣化を抑制して、土壌改質材としての品質が十分に保持されたものと判断する。
【0031】
実施例1は、15日目までは粉末状であったが、16日目に多少の「だま」が確認された。
比較例1は、3日目に硬化した。このとき、粘性、潮解性は確認されなかった。
比較例2,3は、3日目に硬化した。このとき、潮解性はないものの若干の粘性が確認され、6日目には粘性が増加した。
比較例4は、3日目で若干しっとりし、6日目には、若干硬化して粘性が生じていた。12日目にはさらに硬化ぎみとなり、20日目には多くの「だま」が生じていた。
【0032】
ゼオライトが含有されない場合(比較例1〜4)には、改質主材は容易に吸水して硬化してしまい、吸水性ポリマーが含有されない場合(比較例1)には、特に著しいことが示されている。
ゼオライトの代わりに同量の炭酸カルシウムを配合しても、改質主材の劣化を抑制するという効果は得られないことが、実施例1と比較例4との比較からわかる。
炭酸カルシウムより吸水性の劣る緑色凝灰岩を用いた場合には、改質主材の劣化抑制能はさらに低下することが、この結果から推測される。
【0033】
<実施例2,3、比較例5〜7>
下記表4に示す処方で各成分を用いて、実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材を調製した。調製直後の実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材は、いずれも粉末状であった。
【0034】
【表4】
【0035】
実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材における各成分のポリマーに対する比(質量比)は、下記表5に示すとおりである。
【0036】
【表5】
【0037】
上述したように作製された実施例2,3、比較例5〜7の土壌改質材について、品質保持試験を行った。
東京都23区内、夏季(7〜9月)の環境下で保存して、20日間、状態の変化を観察した。15日目においても変化が確認されなければ、改質主材の劣化が抑制されて、土壌改質材としての品質を十分に保持できたものと判断する。
【0038】
実施例2,3は、17日目でも何ら変化はなかった。
比較例5は、5日目で若干湿気をもち始め、7日目にはスポンジ状になった。その後、8日目には固まりかけて、10日目にはスポンジ状に固まった。
比較例6は、5日目に「だま」が多少見られ、10日目には微粉末が「だま」になった。その後は、劣化の進行は確認されなかった。
比較例7は、7日目に「だま」が多少見られ、11日目には「だま」が増加した。その後は、劣化の進行は確認されなかった。
【0039】
吸水性ポリマー100質量部に対するゼオライトの配合量が89質量部の場合(実施例2)、及び107質量部の場合(実施例3)には、改質主材の劣化を十分に抑制できることが示された。一方、比較例5〜7の結果から、ゼオライトの配合量が吸水性ポリマー100質量部に対して71質量部以下の場合には、改質主材の劣化を抑制することはできないことがわかる。
ゼオライトの配合量が、吸水性ポリマー100質量部に対して75質量部以上であれば、改質主材の劣化を抑制して土壌改質材の品質を保持できることが確認された。