(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-66944(P2021-66944A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】プラズマ回転電極法による粉末製造装置
(51)【国際特許分類】
B22F 9/10 20060101AFI20210402BHJP
H05H 1/32 20060101ALI20210402BHJP
B22F 9/30 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
B22F9/10
H05H1/32
B22F9/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-194847(P2019-194847)
(22)【出願日】2019年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】520027291
【氏名又は名称】株式会社東北PREP技術
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】王 新敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 司
(72)【発明者】
【氏名】李 世敏
【テーマコード(参考)】
2G084
4K017
【Fターム(参考)】
2G084AA15
2G084BB11
2G084BB31
2G084CC23
2G084CC34
2G084DD01
2G084FF02
2G084FF07
2G084GG06
4K017CA01
4K017ED08
4K017EF01
(57)【要約】
【課題】移行式のプラズマトーチを使用して、電極部材の回転速度を高めても破損するのを防ぐことができ、より細かい粒子から成る粉末を製造することができる、プラズマ回転電極法による粉末製造装置を提供する。
【解決手段】複数の回転ローラ13が、電極部材12の周囲に、外周面が電極部材12の外側面に接するよう配置されて電極部材12を支持すると共に、電極部材12が中心軸周りに回転するよう回転可能になっている。スピンドル15が、電極部材12と同軸の回転シャフト15aを有し、電極部材12の後端部に回転シャフト15aの先端部を接合可能である。回転駆動手段が、各回転ローラ13および回転シャフト15aを回転可能である。移動手段16が、スピンドル15を電極部材12の後端側から先端側に向かって移動可能である。移行式のプラズマトーチ17aが、電極部材12の先端部に向かってプラズマを照射可能になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製または合金製の細長い円柱状の電極部材を長さ方向に沿った中心軸周りに回転させ、回転する前記電極部材の先端にプラズマを照射することにより、金属製または合金製の粉末を製造するプラズマ回転電極法による粉末製造装置であって、
前記電極部材の周囲に、外周面が前記電極部材の外側面に接するよう配置されて前記電極部材を支持すると共に、前記電極部材が前記中心軸周りに回転するよう、前記中心軸に平行な回転軸を中心として回転可能に設けられた複数の回転ローラと、
前記電極部材と同軸で配置された導電性の回転シャフトを有し、前記回転シャフトが前記電極部材と共に前記中心軸周りに回転するよう、前記電極部材の後端部に前記回転シャフトの先端部を接合可能に設けられたスピンドルと、
前記電極部材を前記中心軸周りに回転させるよう、各回転ローラのうちの少なくともいずれか1つ、および/または、前記回転シャフトを回転可能に設けられた回転駆動手段と、
前記スピンドルを前記電極部材の後端側から先端側に向かって移動可能に設けられた移動手段と、
前記電極部材の先端部との間にアーク放電を発生させることにより、前記電極部材の先端部に向かってプラズマを照射可能に設けられた移行式のプラズマトーチとを、
有することを特徴とするプラズマ回転電極法による粉末製造装置。
【請求項2】
前記回転シャフトの先端部と前記電極部材の後端部とを、磁力で接合することを特徴とする請求項1記載のプラズマ回転電極法による粉末製造装置。
【請求項3】
前記回転シャフトの先端面および前記電極部材の後端面のいずれか一方に凹部を有し、他方に前記凹部に嵌合可能に設けられた凸部を有し、前記凹部に前記凸部を嵌合して前記回転シャフトの先端部と前記電極部材の後端部とを接合することを特徴とする請求項1記載のプラズマ回転電極法による粉末製造装置。
【請求項4】
前記電極部材の径と前記回転シャフトの径が同じであり、前記回転軸に沿って前記電極部材の外周面と前記回転シャフトの外周面とが段差無く連続していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ回転電極法による粉末製造装置。
【請求項5】
各回転ローラはそれぞれ、外形が一定の半径を有する円柱形状を成し、または、外形が所定の半径を有する円柱と、前記所定の半径よりも小さい半径を有する円柱とを、前記回転軸に沿って交互に連結した形状を成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ回転電極法による粉末製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ回転電極法による粉末製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、チャンバーと、長さ方向に沿った中心軸周りに回転可能に、先端部がチャンバーの内部に配置された金属製または合金製の細長い円柱状の電極部材と、その電極部材の先端に向かってプラズマを照射可能なプラズマ照射手段とを有し、ArやHeなどの雰囲気ガスを充填して密封されたチャンバーの内部で、電極部材を回転させながら、プラズマ照射手段でプラズマを照射することにより、電極部材の先端部を溶解し、その融液を電極部材の回転の遠心力によりチャンバーの内部で吹き飛ばして凝固させ、球状の金属製または合金製の粉末を製造するよう構成されている(例えば、非特許文献1乃至3参照)。
【0003】
プラズマ照射手段として、アーク放電を利用した移行式のプラズマトーチを使用した場合(例えば、非特許文献2参照)、電極部材側の電極として導電性ブラシが使用されている。このとき、回転する電極部材等と導電性ブラシとの電気的な接触を十分に確保するために、その接触面積を大きくすると共に、接触部での破損を防止する必要がある。このため、電極部材等として、例えば直径が50 mm以上の、大きい径を有するものが使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】筧幸次、横森玲、西牧智大、「プラズマ回転電極法を用いて作製した粉末焼結ニッケル超合金の組織と強度」、日本金属学会誌、2016年、第80巻、第8号、p.508-514
【非特許文献2】時実正治、磯西和夫、「プラズマ回転電極法によるTi合金粉末の製造」、資源処理技術、1990年、Vol.37、No.4、p.215-221
【非特許文献3】熊谷良平、「プラズマ回転電極法による金属球形粉末の作製」、まてりあ、1998年、第37巻、第6号、p.488-494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2に記載のような、移行式のプラズマトーチを使用した従来のプラズマ回転電極法による粉末製造装置では、大きい径を有する電極部材等を使用しているため、電極部材の回転速度を高めると、軸受等が破損しやすくなるという課題があった。このため、軸受等の破損を防ぐためには、電極部材の回転速度を抑える必要があり、例えば、直径が50 mm以上の電極部材等を使用する場合には、電極部材の回転速度を20000 rpmよりも遅くする必要がある。電極部材の回転速度を低下させると、製造される粉末が粗くなり、粗粒分が多くなってしまうという課題もあった。
【0006】
なお、プラズマ照射手段として、非移行式のプラズマトーチを使用した場合、電極部材等の径を小さくすることができるため、電極部材の回転速度を高めることができる。しかし、移行式の場合と比べてプラズマの集中性に劣るため、同一の条件下では、製造される粉末が粗くなり、粗粒分が多くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、移行式のプラズマトーチを使用して、電極部材の回転速度を高めても破損するのを防ぐことができ、より細かい粒子から成る粉末を製造することができる、プラズマ回転電極法による粉末製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、金属製または合金製の細長い円柱状の電極部材を長さ方向に沿った中心軸周りに回転させ、回転する前記電極部材の先端にプラズマを照射することにより、金属製または合金製の粉末を製造するプラズマ回転電極法による粉末製造装置であって、前記電極部材の周囲に、外周面が前記電極部材の外側面に接するよう配置されて前記電極部材を支持すると共に、前記電極部材が前記中心軸周りに回転するよう、前記中心軸に平行な回転軸を中心として回転可能に設けられた複数の回転ローラと、前記電極部材と同軸で配置された導電性の回転シャフトを有し、前記回転シャフトが前記電極部材と共に前記中心軸周りに回転するよう、前記電極部材の後端部に前記回転シャフトの先端部を接合可能に設けられたスピンドルと、前記電極部材を前記中心軸周りに回転させるよう、各回転ローラのうちの少なくともいずれか1つ、および/または、前記回転シャフトを回転可能に設けられた回転駆動手段と、前記スピンドルを前記電極部材の後端側から先端側に向かって移動可能に設けられた移動手段と、前記電極部材の先端部との間にアーク放電を発生させることにより、前記電極部材の先端部に向かってプラズマを照射可能に設けられた移行式のプラズマトーチとを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、回転駆動手段により電極部材を回転させたとき、回転する電極部材を複数の回転ローラにより安定して支持することができる。例えば、各回転ローラとして、細長く、電極部材よりも径が大きいものとすることにより、回転する電極部材をより安定して支持することができる。これにより、電極部材が不安定になって振動するのを防止することができ、電極部材の回転速度を高めても、電極部材を支持する各回転ローラ等が破損するのを防ぐことができる。このため、例えば、直径が50 mm以上の電極部材を使用しても、その回転速度を20000 rpm以上に高めることができ、細かい粒子から成る粉末を製造することができる。
【0010】
また、本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、移行式のプラズマトーチにより、電極部材の先端にプラズマを集中して照射することができるため、より細かい粒子から成る粉末を製造することができる。
【0011】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、電極部材と共に各回転ローラが回転するため、各回転ローラと電極部材との間の摩擦を小さくすることができる。また、各回転ローラと電極部材とが、電極部材の長さ方向に沿った線で接するため、移動手段によりスピンドルと共に電極部材を移動させたときの摩擦も小さくすることができる。
【0012】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、回転駆動手段により、各回転ローラのうちの少なくともいずれか1つ、または、回転シャフトを回転させてもよい。また、回転駆動手段により、各回転ローラのうちの少なくともいずれか1つ、および、回転シャフトの双方を回転させてもよい。この場合、各回転ローラによる回転数と回転シャフトによる回転数とを合わせることにより、スムーズに安定して電極部材を回転させることができる。また、各回転ローラと回転シャフトによる2つの回転駆動により、回転の駆動力を大きくすることができる。
【0013】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置で、各回転ローラは、電極部材を支持すると共に回転可能であれば、いくつであってもよい。各回転ローラは、例えば、2つから成り、間に電極部材を載せて支持するよう、互いに間隔を開けて配置されていてもよく、3つから成り、3方から電極部材を挟んで支持するよう配置されていてもよい。
【0014】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、回転シャフトと電極部材とが同軸でがたつかずに一体的に回転可能であれば、回転シャフトの先端部と電極部材の後端部とをどのように接合してもよく、例えば、磁力で接合してもよい。また、前記回転シャフトの先端面および前記電極部材の後端面のいずれか一方に凹部を有し、他方に前記凹部に嵌合可能に設けられた凸部を有し、前記凹部に前記凸部を嵌合して前記回転シャフトの先端部と前記電極部材の後端部とを接合してもよい。この場合、嵌合したときに、凹部と凸部とが接合面でぴったりと接触していることが好ましい。
【0015】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置は、前記電極部材の径と前記回転シャフトの径が同じであり、前記回転軸に沿って前記電極部材の外側面と前記回転シャフトの外側面とが段差無く連続していることが好ましい。この場合、粉末を連続的に製造するために移動手段で電極部材を先端側に移動させたとき、各回転ローラで回転する電極部材を支持した状態から、電極部材と共に回転シャフトが先端側に移動して、各回転ローラで回転する電極部材と回転シャフトとを支持した状態に、スムーズに移行することができる。このため、電極部材と回転シャフトとの境界が各回転ローラに差し掛かった時点で、粉末の製造を中断する必要がなく、効率良く粉末の製造を行うことができる。
【0016】
本発明に係るプラズマ回転電極法による粉末製造装置で、各回転ローラはそれぞれ、外形が一定の半径を有する円柱形状を成していてもよく、外形が所定の半径を有する円柱と、前記所定の半径よりも小さい半径を有する円柱とを、前記回転軸に沿って交互に連結した形状を成していてもよい。各回転ローラは、同じ形状であってもよいが、互いに異なる形状であってもよい。また、異なる半径を有する円柱を連結した形状の回転ローラの場合、その回転ローラと電極部材との接触部位を短くすることができるため、その回転ローラと電極部材との間の摩擦をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移行式のプラズマトーチを使用して、電極部材の回転速度を高めても破損するのを防ぐことができ、より細かい粒子から成る粉末を製造することができる、プラズマ回転電極法による粉末製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態のプラズマ回転電極法による粉末製造装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すプラズマ回転電極法による粉末製造装置の、電極部材と回転シャフトとを磁石を利用して接合する構成を示す(a)第1の変形例、(b)第2の変形例の、電極部材および回転シャフトの斜視図である。
【
図3】
図1に示すプラズマ回転電極法による粉末製造装置の、電極部材と回転シャフトとを凹部および凸部により接合する構成を示す(a)第1の変形例、(b)第2の変形例、(c)第3の変形例の、電極部材および回転シャフトの斜視図である。
【
図4】
図1に示すプラズマ回転電極法による粉末製造装置の、回転シャフトの外周面と電極部材の外側面との間に段差を有する変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図4は、本発明の実施の形態のプラズマ回転電極法による粉末製造装置を示している。
粉末製造装置10は、プラズマ回転電極法により金属製または合金製の粉末を製造するものであり、
図1に示すように、支持フレーム11と電極部材12と複数の回転ローラ13と回転モータ14とスピンドル15と移動手段16とプラズマ照射手段17とを有している。
【0020】
電極部材12は、金属製または合金製で、細長い円柱形状を成している。電極部材12は、例えば、直径が50 mm以上、長さが500 mm以上である。回転ローラ13は、3つから成り、それぞれ外形が、電極部材12よりも大きい径を有する細長い円柱状を成している。各回転ローラ13は、電極部材12に対して平行を成し、電極部材12を間に挟んで支持するよう、電極部材12の中心軸を中心として等角度間隔で電極部材12の周囲に配置されている。各回転ローラ13は、支持フレーム11に支持されており、外周面が電極部材12の外側面に接するよう配置されている。各回転ローラ13は、電極部材12の中心軸に平行な、それぞれの中心軸を中心として回転可能に設けられている。
【0021】
なお、各回転ローラ13は、電極部材12を支持すると共に回転可能であれば、いくつであってもよく、例えば、2つから成り、間に電極部材12を載せて支持するよう、互いに間隔を開けて配置されていてもよい。また、各回転ローラ13は、外形が円柱状であればいかなる形状を成していてもよく、例えば、外形が一定の半径を有する円柱形状を成していてもよい。また、外形が所定の半径を有する円柱と、その半径よりも小さい半径を有する円柱とを、回転軸に沿って交互に連結した形状を成していてもよい。各回転ローラ13は、同じ形状であってもよいが、互いに異なる形状であってもよい。
図1に示す具体的な一例では、電極部材12の下方に配置された2つの回転ローラ13は、外形が一定の半径を有する円柱形状を成し、電極部材12の上方に配置された1つの回転ローラ13は、半径の異なる円柱を交互に連結した形状を成している。
【0022】
回転モータ14は、1または複数の回転ローラ13を、その中心軸周りに回転させるよう、支持フレーム11に取り付けられている。回転モータ14は、回転ローラ13を回転させることにより、電極部材12をその中心軸周りに回転可能に構成されている。
【0023】
スピンドル15は、回転シャフト15aとシャフト用モータ15bとを有し、移動手段16により支持されている。回転シャフト15aは、導電性で、細長い円柱形状を成し、電極部材12の径と同じ大きさの径を有している。回転シャフト15aは、先端部が電極部材12の後端部と接合されて、電極部材12と同軸で配置されており、電極部材12と共にその中心軸周りに回転するよう設けられている。シャフト用モータ15bは、回転シャフト15aをその中心軸周りに回転させるよう設けられている。スピンドル15は、シャフト用モータ15bで回転シャフト15aを回転させることにより、電極部材12をその中心軸周りに回転可能に構成されている。なお、回転モータ14およびシャフト用モータ15bが、回転駆動手段に対応している。
【0024】
電極部材12と回転シャフト15aは、がたつくことなく同軸で一体的に回転可能であれば、どのように接合されていてもよい。例えば、
図2(a)に示すように、電極部材12の後端部および回転シャフト15aの先端部に、互いに引力を及ぼすよう磁石21が取り付けられ、磁力で接合されていてもよい。また、
図2(b)に示すように、電極部材12と回転シャフト15aとの接合部を覆うよう、それらの外周面に沿って、2つの半円環状の磁石22を磁力で取り付けることにより、接合されていてもよい。また、
図3(a)〜(c)に示すように、回転シャフト15aの先端面および電極部材12の後端面のいずれか一方に凹部23を有し、他方にその凹部23に嵌合可能に設けられた凸部24を有し、凹部23に凸部24を嵌合して互いに接合されていてもよい。凹部23および凸部24は、互いに嵌合可能であればいかなる形状であってもよく、特に接合部で隙間無くぴったりと嵌合可能であることが好ましい。なお、
図1に示す具体的な一例では、
図3(a)〜(c)に示すような構成により、回転シャフト15aの外周面と電極部材12の外側面とが段差無く連続するよう接合されている。
【0025】
図1に示すように、移動手段16は、移動用フレーム16aと移動用モータ16bとを有している。移動用フレーム16aは、回転シャフト15aを回転可能に支持すると共に、シャフト用モータ15bも支持している。移動用フレーム16aは、電極部材12の回転軸に沿って、電極部材12の後端側から先端側に向かって移動可能に支持フレーム11に設けられている。移動用モータ16bは、移動用フレーム16aを支持フレーム11に対して移動させるよう、支持フレーム11に設けられている。移動手段16は、移動用モータ16bで移動用フレーム16aを移動させることにより、回転シャフト15aと共に電極部材12を移動可能に構成されている。
【0026】
プラズマ照射手段17は、電極部材12の先端部に対向するよう配置された移行式のプラズマトーチ17aと、プラズマトーチ17aに電気的に接続された第1電極17bと、電極部材12に電気的に接続された第2電極17cと、第1電極17bと第2電極17cとの間に電圧を印加可能に設けられた電圧印加部17dとを有している。プラズマ照射手段17は、電圧印加部17dで第1電極17bと第2電極17cとの間に電圧を印加することにより、プラズマトーチ17aと電極部材12との間にアーク放電を発生させ、プラズマトーチ17aから電極部材12の先端部に向かってプラズマを照射するよう構成されている。
【0027】
なお、
図1に示す一例では、第2電極17cは、導電性ブラシから成り、回転する回転ローラ13の1つ、または回転シャフト15aに接触しており、その回転ローラ13または回転シャフト15aを介して、電極部材12に電気的に接続されている。
【0028】
次に、作用について説明する。
粉末製造装置10は、以下のようにして金属製または合金製の粉末を製造することができる。すなわち、粉末製造装置10は、まず、回転モータ14で各回転ローラ13を回転させると共に、シャフト用モータ15bで回転シャフト15aを回転させることにより、電極部材12をその中心軸周りに回転させる。次に、回転する電極部材12の先端部に向かって、プラズマトーチ17aからプラズマを照射する。これにより、電極部材12の先端部が溶解し、その融液が電極部材12の回転の遠心力により吹き飛ばされて冷却され、ほぼ球状の金属製または合金製の粉末となる。こうして、金属製または合金製の粉末を製造することができる。
【0029】
また、粉末製造装置10は、電極部材12の先端部の溶解に合わせて、移動手段16により電極部材12をプラズマトーチ17aに向かって移動させる。これにより、電極部材12の先端部を連続的に溶解させることができ、金属製または合金製の粉末を連続的に製造することができる。製造した粉末は、例えば、従来の工業用の用途の他に、積層造形法(3Dプリンタ)の原料粉末としても利用することができる。
【0030】
粉末製造装置10は、複数の回転ローラ13により電極部材12を回転させながら安定して支持することができる。このため、電極部材12が不安定になって振動するのを防止することができ、電極部材12の回転速度を高めても、電極部材12を支持する各回転ローラ13などが破損するのを防ぐことができる。例えば、直径が50 mm以上の電極部材12を使用したときでも、その回転速度を20000 rpm以上に高めることができ、細かい粒子から成る粉末を製造することができる。また、粉末製造装置10は、移行式のプラズマトーチ17aにより、電極部材12の先端にプラズマを集中して照射することができるため、より細かい粒子から成る粉末を製造することができる。
【0031】
粉末製造装置10は、電極部材12と共に各回転ローラ13が回転するため、各回転ローラ13と電極部材12との間の摩擦を小さくすることができる。また、異なる半径を有する円柱を連結した形状の回転ローラ13を利用することにより、その回転ローラ13と電極部材12との接触部位を短くすることができるため、その回転ローラ13と電極部材12との間の摩擦をより小さくすることができる。また、各回転ローラ13と電極部材12とが、電極部材12の長さ方向に沿った線で接するため、移動手段16によりスピンドル15と共に電極部材12を移動させたときの摩擦も小さくすることができる。
【0032】
粉末製造装置10は、電極部材12の外側面と回転シャフト15aの外側面とが段差無く連続しているため、粉末を連続的に製造するために移動手段16で電極部材12を先端側に移動させたとき、各回転ローラ13で回転する電極部材12を支持した状態から、各回転ローラ13で回転する電極部材12と回転シャフト15aとを支持した状態に、スムーズに移行することができる。このため、電極部材12と回転シャフト15aとの境界が各回転ローラ13に差し掛かった時点で、粉末の製造を中断する必要がなく、効率良く粉末の製造を行うことができる。
【0033】
また、粉末製造装置10は、各回転ローラ13だけでなく、スピンドル15によっても電極部材12を回転させており、各回転ローラ13による回転数とスピンドル15による回転数とを合わせることにより、スムーズに安定して電極部材12を回転させることができる。また、各回転ローラ13とスピンドル15による2つの回転駆動により、回転の駆動力を大きくすることができる。なお、粉末製造装置10は、各回転ローラ13およびスピンドル15のいずれか一方のみで、電極部材12を回転させてもよい。
【0034】
図4に示すように、粉末製造装置10は、
図2(a)または(b)に示すような構成により、回転シャフト15aの外周面と電極部材12の外側面との間に段差があってもよい。この場合、電極部材12と回転シャフト15aとの境界が各回転ローラ13に差し掛かった時点で、粉末の製造を中断しなければならないが、それまでは安定した状態で細かい粒子から成る粉末を製造することができる。また、
図4に示すように、粉末製造装置10は、
図1と比べて各回転ローラ13の長さをやや短くすることにより、中断するまでに利用できる電極部材12の長さを延ばすことができ、効率良く粉末の製造を行うことができる。各回転ローラ13の長さは、安定して回転できる長さであればよく、例えば、各回転ローラ13の直径の長さ程度まで短くしてもよい。また、
図4に示すように、粉末製造装置10は、スピンドル15のみで電極部材12を回転させるよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 (プラズマ回転電極法による)粉末製造装置
11 支持フレーム
12 電極部材
13 回転ローラ
14 回転モータ
15 スピンドル
15a 回転シャフト
15b シャフト用モータ
16 移動手段
16a 移動用フレーム
16b 移動用モータ
17 プラズマ照射手段
17a プラズマトーチ
17b 第1電極
17c 第2電極
17d 電圧印加部