特開2021-66999(P2021-66999A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2021-66999プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-66999(P2021-66999A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20210402BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20210402BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   E01D22/00 Z
   E01D19/12
   E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-190353(P2019-190353)
(22)【出願日】2019年10月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592173124
【氏名又は名称】日本ファブテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和志
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 将士
(72)【発明者】
【氏名】大久保 宣人
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG55
2D059GG61
(57)【要約】
【課題】工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【解決手段】左右方向に分割された一方の既設の第1合成床版1A側を床版取替え領域とするとともに、他方の既設の第2合成床版1B側を床版取替え不可領域とする工程と、一方の既設の第1合成床版1Aを取り外した箇所に新たな第1合成床版1Aを新設する工程と、新設した一方の第2合成床版1B側を床版取替え不可領域とするとともに、他方の既設の第1合成床版1A側を床版取替え領域とする工程と、他方の既設の第2合成床版1Bを取り外した箇所に新たな第2合成床版1Bを新設する工程と、新設した第2合成床版1B同士の間の継手部2を施工する工程と、新設した他方の第2合成床版1B側を床版取替え不可領域とする工程と、を有する床版取替え方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延在方向に直交する左右方向に分割されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士を前記左右方向に接合するプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造であって、
前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版は、該プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合端面から突出した張出し片を有する底鋼板と、コンクリートと、が一体成形して構成され、
前記左右方向に隣り合う前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間に継手部が設けられ、
前記継手部は、
前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記接合端面から突出し、突出した先端に機械式定着部を有する継手鉄筋と、
前記機械式定着部を埋設し、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記接合端面同士の間の間詰め領域に充填される間詰めコンクリートと、
両端に拡径部を有し、前記間詰め領域において前記継手鉄筋と軸方向を平行にして配置された接合鉄筋と、
前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版における前記底鋼板の張出し片同士を接続する添接板と、
を備えていることを特徴とするプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造。
【請求項2】
前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合端面から段状に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を用いた床版取替え方法であって、
左右方向に分割された一方の既設床版側を床版取替え領域とするとともに、他方の既設床版側を床版取替え不可領域とする工程と、
前記一方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、
新設した前記一方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とするとともに、前記他方の既設床版側を床版取替え領域とする工程と、
前記他方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、
前記新設したプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間の前記継手部を施工する工程と、
新設した前記他方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とする工程と、
を有することを特徴とする床版取替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路橋や鉄道橋の床版における床版取替工事では、例えば特許文献1に示されるように、取り替えを行う床版全面を撤去し、新たな床版を設置する全断面床版取替工法による工事が一般的に知られている。このような床版としては、例えば鋼板とコンクリートを一体形成してなる合成床版(鋼コンクリート合成床版)等のプレキャストコンクリート部材(PCa部材)がある。この場合には、全面通行止めが必要となる。
【0003】
ところが、重交通路線において床版の取替え工事を実施する場合には、周辺道路が渋滞するなど交通事情が悪化するため、全面通行止めが困難となることが想定される。そこで、全面通行止めではなく、半分を通行止めにする工法が行われるようになっている。
このようなPCa床版による半断面床版取替工法の施工としては、例えば特許文献2に示されるような主桁のウェブ部分から切断する工法や、特許文献3に示されるような一次施工部と二次施工部の床版をポストテンション用PC緊張材で緊張する工法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−264040号公報
【特許文献2】特開2007−239365号公報
【特許文献3】特開2015−151768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2、3に示すような従来の半断面床版取替え工法では、以下のような問題があった。
すなわち、従来の半断面床版取替え工法では、床版だけでなく主桁のウェブ部分から切断する必要がある。また、この工法では、半断面ずつ床版を取り替えた後に、それぞれの床版にわたってプレストレスコンクリート緊張材を挿通し、ポストテンションを導入する必要があった。
そのため、従来の半断面床版取替え工法の場合には、全断面床版取替え工法に比べて、全面通行止めは回避されるものの、工期や工事費が増大するという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造は、延在方向に直交する左右方向に分割されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士を前記左右方向に接合するプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造であって、前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版は、該プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合端面から突出した張出し片を有する底鋼板と、コンクリートと、が一体成形して構成され、前記左右方向に隣り合う前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間に継手部が設けられ、前記継手部は、前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記接合端面から突出し、突出した先端に機械式定着部を有する継手鉄筋と、前記機械式定着部を埋設し、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版の前記接合端面同士の間の間詰め領域に充填される間詰めコンクリートと、両端に拡径部を有し、前記間詰め領域において前記継手鉄筋と軸方向を平行にして配置された接合鉄筋と、前記隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版における前記底鋼板の張出し片同士を接続する添接板と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る床版取替え方法は、上述したプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造を用いた床版取替え方法であって、左右方向に分割された一方の既設床版側を床版取替え領域とするとともに、他方の既設床版側を床版取替え不可領域とする工程と、前記一方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、新設した前記一方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とするとともに、前記他方の既設床版側を床版取替え領域とする工程と、前記他方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を新設する工程と、前記新設したプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間の前記継手部を施工する工程と、新設した前記他方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側を床版取替え不可領域とする工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、左右方向に分割されたプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士が継手部によって接合されるため、例えば道路で使用されるプレキャスト鋼コンクリート合成床版が左右方向の中央で二分割されている場合において床版の取り替え工事を行う際に、分割された一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。そして、一方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。続いて、新たに設置した一方のプレキャスト鋼コンクリート合成床版側の道路を通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。そして、他方の既設床版を取り外した箇所に新たなプレキャスト鋼コンクリート合成床版を設置する。その後、新設したプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間の継手部を施工して床版取り替え工事が完了となる。
【0010】
このように、プレキャスト鋼コンクリート合成床版を用いて半断面床版取替え工法を行うことができるので、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
また、本発明では、従来のように床版同士を緊張材によって緊張する構成ではないので、簡単な施工となり、プレキャスト鋼コンクリート合成床版を取り外す工事の際にも継手部の間詰めコンクリートを解体し、接合鉄筋と添接板を撤去することにより、左右方向に隣り合うプレキャスト鋼コンクリート合成床版同士が分割された状態となるので、容易に取り外すことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、プレキャスト鋼コンクリート合成床版同士の間における間詰め領域において継手鉄筋と軸方向を平行にして接合鉄筋を配置する重ね継手による圧縮鉄筋の接合と、添接板によって接合するプレキャスト鋼コンクリート合成床版の底鋼板の張出し片同士の接合と、からなる接合構造を継手部にもたせることができる。そのため、継手部には、プレキャスト鋼コンクリート合成床版と同等以上の性能をもたせることができる。
【0012】
しかも、継手部において重ね継手の構造とすることで、プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合端面から突出する継手鉄筋の長さを短くすることができる。この場合には、従来のように鉄筋継手同士の干渉を防ぐために左右方向に位置をずらして配置する必要がないことから、接合端面同士の間の間隔、すなわち間詰め領域の間隔を小さくすることができる。そのため、間詰め領域に充填される間詰めコンクリートの充填量を減らすことが可能となり、コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係るプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造は、前記プレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合端面から段状に突出する突出部が設けられていることが好ましい。
【0014】
この場合には、間詰め領域にプレキャスト鋼コンクリート合成床版の突出部が張り出した状態となるので、間詰め領域に充填される間詰めコンクリート量を減らすことができ、コンクリート充填にかかる作業時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法によれば、工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による合成床版の構造を示す図であって、道路橋を橋軸方向から見た図である。
図2】(a)は図1に示す合成床版を上方から見た平面図であって、継手部の間詰コンクリートを省略した図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。
図3】合成床版の接合構造を示す上方から見た要部平面図である。
図4】(a)は図3に示すB−B線断面図、(b)は図3に示すC−C線断面図である。
図5図3に示すD−D線断面図である。
図6】合成床版の接合手順で隣り合う合成床版同士を位置決めした状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
図7】合成床版の接合手順で間詰め領域において間詰コンクリートを充填した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
図8】第2実施形態による合成床版の接合前の状態を示す図であって、(a)は合成床版を上方から見た平面図で継手部の間詰コンクリートを省略した図、(b)は(a)に示すE−E線縦断面図である。
図9】第3実施形態による合成床版の接合状態を示す図であって、(a)は合成床版を上方から見た平面図で、継手部の間詰コンクリートを省略した図、(b)は(a)に示すF−F線縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法について、図面に基づいて説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版(以下の説明では、単に「合成床版1(1A、1B)」という)は、道路橋Tのプレキャスト合成床版に適用されている。
【0019】
ここで、図1において、紙面に直交する方向で道路橋Tの延在方向を橋軸方向X1とし、紙面で左右方向(橋軸方向X1に直交する方向)で道路橋Tを横断する方向を左右方向X2として以下説明する。
また、合成床版1において、後述する継手鉄筋10(図3参照)が延在する方向を材軸方向という。合成床版1は、材軸方向を左右方向X2に向けた状態で設置されている。
【0020】
本実施形態の道路橋Tは、左右方向X2の中央を挟んだ両側に2列の合成床版1A、1Bが図2(a)、(b)に示すような道路橋Tの複数のH形鋼からなる主桁11上に固定された状態で設けられている。合成床版1は、製作工場や製作ヤード等の設置現場から離れた場所で製作され、設置現場に搬送されて予め施工されている主桁11上に設置される。
【0021】
これら左右方向X2に配置される合成床版1A、1B同士は、継手部2を介して接合されている。つまり、本実施形態による左右方向X2に配置される合成床版1A、1B同士の接合方向は左右方向X2となる。なお、橋軸方向X1に隣り合う合成床版1A、1B同士の接合構造も左右方向X2の継手部2と同様の構成の継手構造により接合されるが、ここでは詳しい説明を省略する。
【0022】
継手部2は、左右方向X2に隣り合う合成床版1A、1Bの接合端面1a、1a同士を施工現場において接合するための継手構造である。継手部2は、一部分が合成床版1A、1Bの一部を構成し、他の部分が現場で行われる継手施工時に施工される。
【0023】
図3図4(a)、(b)、及び図5に示すように、合成床版1(1A、1B)は、鋼鈑からなる底鋼板12と、底鋼板12の上面に設けられるコンクリート部13と、接合端面1aから突出して合成床版1のコンクリート部13に埋設された配筋15及び継手鉄筋10と、を備えている。
具体的に合成床版1は、予め上述した製作工場等において、底鋼板12を型枠の一部として枠状の型枠を形成し、その枠状の型枠内に配筋15及び継手鉄筋10を配置した後、型枠内にコンクリート13Aを充填して底鋼板12とコンクリート13Aを一体成形して構成されている。
【0024】
底鋼板12は、合成床版1A、1Bのコンクリート部13の底面に位置し、接合端面1aから突出させた状態で設けられている。底鋼板12には、主桁11に載置される部分で下方に突出する凸面部12bが形成されている。
底鋼板12における接合端面1aより突出する部分(張出し片12a)には、後述する高力ボルト24が挿通される不図示のボルト孔が形成されている。張出し片12aの接合端面1aからの張出し長は、左右方向X2に隣接する合成床版1A、1Bのそれぞれの張出し片12aの先端12c、12c同士を突き合わせた状態で継手部2における所定の継手領域(間詰め領域20)が確保できる長さに設定されている。
【0025】
合成床版1A、1Bのコンクリート13Aに埋設される配筋15は、長さ方向を上面視で材軸方向に直交する方向に向けた状態で材軸方向に沿って所定間隔をあけて複数本が配列されている。
【0026】
継手鉄筋10は、長さ方向を材軸方向に向けた状態で上面視で材軸方向に直交する方向に沿って所定間隔をあけて複数本が配列されている。継手鉄筋10は、圧縮鉄筋として機能し、接合端面1aから突出した突出部分の先端に径方向に拡大された機械式定着部10aが形成されている。左右方向X2に隣り合う合成床版1A、1Bの機械式定着部10a同士は、同軸線上でわずかな隙間をあけて向き合うように配置される。
【0027】
次に、左右方向X2に隣り合う合成床版1A、1B同士を接合するための継手部2の構成について具体的に説明する。
図2(a)、(b)に示すように、継手部2は、隣り合う合成床版1A、1Bで互いに向き合う接合端面1a、1a同士の間に所定の間隔をあけた間詰め領域20に位置している。
継手部2は、図3及び図4(a)、(b)に示すように、機械式定着部10aを有する継手鉄筋10と、底鋼板12の張出し片12aと、機械式定着部10aを埋設するように間詰め領域20に充填される間詰めコンクリート21と、両端に拡径部3aを有し、間詰め領域20において軸方向を継手鉄筋10の軸方向(すなわち左右方向X2)と平行に配置される接合鉄筋3と、対向して配置される張出し片12a、12a同士を接続する添接板4と、継手鉄筋10の上下に配置される補強鉄筋5と、を備えている。
【0028】
接合鉄筋3は、軸方向を左右方向X2に向けて継手鉄筋10に沿うように配置されている。接合鉄筋3も、継手鉄筋10とともに圧縮鉄筋として機能する。すなわち、継手鉄筋10と接合鉄筋3とによってダブル重ね継手となっている。接合鉄筋3の長さ寸法は、接合端面1a、1a同士の離間寸法よりも短い長さ寸法であり、両端部に継手鉄筋10の機械式定着部10aと同形状の拡径部3aを有している。継手鉄筋10と接合鉄筋3とは間詰め領域20において同じ高さに設けられ、間詰め領域20の高さ寸法も小さく抑えた構成となっている。
なお、接合鉄筋3の長さ寸法は、基本定着長とするが、間詰めコンクリート21の性能によっては例えば5d(dは、接合鉄筋3の鉄筋直径)まで短くすることができる。
【0029】
添接板4は、複数のボルト穴が形成された長尺板状の鋼板である。添接板4は、長さ方向を橋軸方向X1に向けて底鋼板12の張出し片12a、12a同士を上方から架け渡すように重ね合わせて配置され、高力ボルト24、ナット22、ワッシャ23を用いて張出し片12a、12aに接合されている。高力ボルト24は添接板4の上方から前記ボルト穴に挿入され張出し片12aの下方よりワッシャ23を介してナット22で締め付けられている。
【0030】
本実施形態では、コンクリート部13の底面に底鋼板12を設けた合成床版1において、間詰め領域20で底鋼板12の張出し片12aと添接板4を高力ボルト24で接合することで、合成床版1A、1B同士を強固に、かつ簡単に固定することができる。また、上述したように、継手鉄筋10と接合鉄筋3とによってダブル重ね継手となるので、添接板4を所定の位置に配置した後に接合鉄筋3を配置できることから、添接板4による底鋼板12の接合が容易に行うことが可能な構造となっている。
【0031】
補強鉄筋5は、継手鉄筋10及び接合鉄筋3を上下から挟み込むように配置される。本実施形態では、継手鉄筋10及び接合鉄筋3の上側と下側のそれぞれにおいて、継手鉄筋10及び接合鉄筋3に交差する橋軸方向X1に沿って延在し、左右方向X2に複数(4本)が配列されている。
補強鉄筋5は、継手鉄筋10及び接合鉄筋3に対して交差する方向に延在しているので、機械式定着部10aや拡径部3aに係止して継手鉄筋10や接合鉄筋3の軸方向(左右方向X2)の移動を規制することができる。すなわち、補強鉄筋5を設けることで、継手鉄筋10や接合鉄筋3が軸方向に移動することによる抜け出しや曲げを拘束することができる。
【0032】
間詰めコンクリート21としては、合成床版1A、1Bと同等以上の圧縮強度を有するコンクリート又はモルタルが使用される。そのため、継手部2の損傷を防ぐことができる構造となっている。
【0033】
本実施形態では、機械式定着部10aを有する継手鉄筋10及び拡径部3aを有する接合鉄筋3として、機械式定着部10a及び拡径部3aがT型に形成されたTヘッド工法鉄筋(登録商標、清水建設社製)を用いている。なお、このTヘッド工法鉄筋に限定されることはなく、機械式定着部10a及び拡径部3aとして他の鉄筋を採用することも可能である。
【0034】
次に、上述した合成床版1A、1Bの床版取替え方法について具体的に説明する。
合成床版1A、1Bの床版取替え方法は、図2(a)、(b)に示すように、左右方向X2の一方の既設床版側の道路を通行止めとし、他方の既設床版側の道路のみを通行させる片側通行とする。そして、一方の既設床版を主桁11から取り外した後、その主桁11上に新たな第1合成床版1Aを設置する。
【0035】
続いて、設置した一方の第1合成床版1Aを通行させ、他方の既設床版側の道路を通行止めとして片側通行とする。そして、他方の既設床版を主桁11から取り外した後、その主桁11上に新たな第2合成床版1Bを設置する。その後、新設した第1合成床版1Aと第2合成床版1Bとの間の継手部2を施工する。継手部2の施工は、その中央部分の施工領域が確保できれば道路を全面通行としてもよいし、第1合成床版1Aのみの片側通行として施工してもよい。
【0036】
次に、主桁11上に新たな合成床版1A、1Bを設置する施工方法について、さらに具体的に説明する。
先ず、図6(a)、(b)に示すように、予め工場において底鋼板12とコンクリート部13とが継手鉄筋10及び配筋15(図3参照)を埋設した状態で一体成形されている合成床版1A、1Bを、双方の間に間詰め領域20を確保した状態で所定位置に配置する。
【0037】
具体的には、一方の第1合成床版1A(紙面左側)を先行して主桁11の所定位置に位置決めする。次に、他方の第2合成床版1Bを第1合成床版1Aに対して所定間隔をあけた状態で主桁11上に配置し、その第2合成床版1Bを第1合成床版1Aに向けて左右方向X2に移動させて所定位置に位置決めする。このときの第1合成床版1Aと第2合成床版1Bとは、それぞれの底鋼板12の張出し片12aの先端12c同士が突き当たった状態で、所定の間詰め領域20を確保した状態で位置決めされる。なお、合成床版1A、1Bを位置決めする際には、第1合成床版1Aに対して第2合成床版1Bを真上から吊り降ろすことで位置決めするようにしてもよい。
【0038】
次に、図6(a)、(b)に示すように、間詰め領域20において、隣り合う合成床版1A、1Bの底鋼板12の張出し片12a、12aの上側に添接板4を配置するとともに、図4(a)、(b)に示すように、ナット22、ワッシャ23、高力ボルト24を用いて接合する。
【0039】
その後、図2(a)、(b)に示すように、間詰め領域20において、接合鉄筋3を継手鉄筋10に沿わせるように配置し、これら継手鉄筋10及び接合鉄筋3の上下に図4(a)、(b)に示すように補強鉄筋5を配置する。
なお、継手鉄筋10の下側に配置される補強鉄筋5は合成床版1A、1Bを所定位置に位置決めする際に、継手鉄筋10と底鋼板12との間に仮置きしておくことで、下側の補強鉄筋5の施工を効率よく行うことができる。
【0040】
その後、図7(a)、(b)に示すように、間詰め領域20に間詰めコンクリート21を充填して硬化させることで継手部2の施工が完了となる。
【0041】
次に、主桁11から合成床版1A、1Bを取り外す施工方法につて説明する。
主桁11から合成床版1A、1Bを取り外す際には、間詰め領域20の間詰めコンクリート21を解体し、その間詰め領域20内に配置される接合鉄筋3や補強鉄筋5と取り出す。さらに、添接板4を切断等により底鋼板12の張出し片12aから取り外す。これにより、第1合成床版1Aと第2合成床版1Bとが分離した状態となり、各合成床版1A、1Bは主桁11に載置のみされた状態であるので、各合成床版1A、1Bを吊り上げることにより主桁11から離脱させることができる。
【0042】
次に、上述したプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、図1に示すように、左右方向X2に分割された合成床版1A、1B同士が継手部2によって接合されるため、本実施形態のように道路で使用される合成床版1A、1Bが左右方向X2の中央で二分割されている場合において床版の取り替え工事を行う際に、分割された一方の既設の第1合成床版1A側の道路を通行止めとし、他方の既設の第2合成床版1B側の道路のみを通行させる片側通行とする。そして、一方の既設の第1合成床版1Aを取り外した箇所に新たな第1合成床版1Aを設置する。続いて、新たに設置した一方の第1合成床版1A側の道路を通行させ、他方の既設の合成床版1B側の道路を通行止めとして片側通行とする。そして、他方の既設の第2合成床版1Bを取り外した箇所に新たな第2合成床版1Bを設置する。その後、新設した合成床版1A、1B同士の間の継手部2を施工して床版取り替え工事が完了となる。
【0043】
このように、合成床版1A、1Bを用いて半断面床版取替え工法を行うことができるので、全断面床版取替え工法の場合に比べて全面通行止めにする必要がなくなり、工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0044】
また、図4(a)、(b)に示すように、本実施形態では、従来のように床版同士を緊張材によって緊張する構成ではないので、簡単な施工となり、合成床版1A、1Bを取り外す工事の際にも継手部2の間詰めコンクリート21を解体し、接合鉄筋3と添接板4を撤去することにより、左右方向X2に隣り合う合成床版1A、1B同士が分割された状態となるので、容易に取り外すことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、隣り合う合成床版1A、1B同士の間における間詰め領域20において継手鉄筋10と軸方向を平行にして接合鉄筋3を配置する重ね継手による圧縮鉄筋の接合と、添接板4によって接合する合成床版1A、1Bの底鋼板12の張出し片12a、12a同士の接合と、からなる接合構造を継手部2にもたせることができる。そのため、継手部2には、合成床版1と同等以上の性能をもたせることができる。
【0046】
しかも、本実施形態では、継手部2において重ね継手の構造とすることで、合成床版1の接合端面1aから突出する継手鉄筋10の長さを短くすることができる。この場合には、従来のように鉄筋継手同士の干渉を防ぐために左右方向X2に位置をずらして配置する必要がないことから、接合端面1a、1a同士の間の間隔、すなわち間詰め領域20の間隔を小さくすることができる。そのため、間詰め領域20に充填される間詰めコンクリート21の充填量を減らすことが可能となり、コストの低減を図ることができる。
【0047】
上述のように本実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法では、工期を短縮できるとともに工事費を低減した効率よく床版の取替え工事を行うことができる。
【0048】
次に、他の実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0049】
(第2実施形態)
図8(a)、(b)に示すように、第2実施形態によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版(合成床版1)は、隣り合う合成床版1A、1Bのうち一方(ここでは第1合成床版1A)の接合端面1aから段状に突出する突出部16が設けられた構成となっている。
突出部16は、コンクリート部13のうち継手鉄筋10よりも底鋼板12側の部分が橋軸方向X1の全体にわたって突出している。突出部16の突出長は、底鋼板12の張出し片12aの突出長より短くなるように設定されている。
【0050】
このように第2実施形態では、間詰め領域20に第1合成床版1Aの突出部16が張り出した状態となるので、間詰め領域20に充填される間詰めコンクリート量を減らすことができ、コンクリート充填にかかる作業時間の短縮を図ることができる。
【0051】
なお、第2実施形態では、第1合成床版1Aのみに突出部16を設けた構成としているが、第2合成床版1Bのみに突出部16が設けられたものであってもよいし、第1合成床版1Aと第2合成床版1Bの両方に突出部16が設けられたものであってもかまわない。
【0052】
(第3実施形態)
図9(a)、(b)に示すように、第3実施形態による合成床版1(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)の継手部2Aは、接合鉄筋3が橋軸方向X1で継手鉄筋10同士の中間に配置されたあき重ね継手が構成されている。接合鉄筋3は、接合端面1a、1a同士の間隔よりも短い長さ寸法であり、両端部に継手鉄筋10の機械式定着部10aと同形状の拡径部3aを有している。継手鉄筋10と接合鉄筋3は、間詰め領域20において同じ高さの位置に設けられている。
【0053】
以上、本発明によるプレキャスト鋼コンクリート合成床版の接合構造、及び床版取替え方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、本実施形態では、継手部2において継手鉄筋10及び接合鉄筋3の上側および下側のうち少なくとも一方に補強鉄筋5を備えた構成としているが、補強鉄筋5を設けることに限定されることはなく、省略することも可能であるし、配置する本数も適宜変更することが可能である。
【0055】
また、本実施形態では、継手鉄筋10及び接合鉄筋3の鉄筋として、それぞれ機械式定着部10a、拡径部3aがT型に形成されたTヘッド工法鉄筋(登録商標、清水建設社製)を用いているが、他形状の鉄筋を採用することも可能である。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 合成床版(プレキャスト鋼コンクリート合成床版)
1A 第1合成床版
1B 第2合成床版
1a 接合端面
2、2A 継手部
3 接合鉄筋
3a 拡径部
4 添接板
5 補強鉄筋
10 継手鉄筋
10a 機械式定着部
12 底鋼板
12a 張出し片
13 コンクリート部
15 配筋
16 突出部
20 間詰め領域
21 間詰めコンクリート
24 高力ボルト
T 道路橋
X1 橋軸方向
X2 左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9