(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-67188(P2021-67188A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】エンジンへの水素ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/12 20060101AFI20210402BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
F02M25/12 B
F02D19/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-190907(P2019-190907)
(22)【出願日】2019年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】519375262
【氏名又は名称】株式会社HIT研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅則
(72)【発明者】
【氏名】謝花 義広
(72)【発明者】
【氏名】原田 努
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AB03
3G092AB09
3G092AB13
3G092AC10
3G092FB00
(57)【要約】
【課題】 水素ガスの爆発を考慮した安全性の高い燃焼システムを提供する。
【解決手段】
気液分離タンク17において水素爆発が発生する確率が最も高い。このため、気液分離タンク17に薄肉部25を形成し、水素爆発の際には前記薄肉部25で破損し爆発圧は破損した箇所から広がるようにして、水素爆発をコントロールする。薄肉部25(または脆弱部)を電気分解部12とは反対側に設けることで、電気分解器20、電源部21および指示・制御器22を保護できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの給気経路に水素ガスを供給する水素ガス供給装置において、この水素ガス供給装置は純水供給部、この純水供給部からの純水を電気分解する電気分解部、電気分解部で生成された水素ガスをエンジンの給気中に供給する水素ガス供給部を備え、水素ガス供給部には前記純水供給部からの純水を一旦貯留して電気分解部に送り出すとともに電気分解部からの水素ガスを分離する気液分離タンクが設けられ、この気液分離タンクには気液分離タンク内で水素爆発が生じた場合に、決められた方向に爆発圧を逃がすための薄肉部または脆弱部が形成されていることを特徴とするエンジンへの水素ガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンへの水素ガス供給装置において、前記電気分解部で生成された酸素ガスは、水素ガスとは別の経路でエンジンの給気経路に供給されることを特徴とするエンジンへの水素ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給気中に水素ガスを供給する装置に関し、特に水素爆発を考慮した安全性の高い水素ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガソリン、ディーゼル或いは重油などの高分子液体燃料を効率良くエンジンで燃焼させる方法として、給気中に微量(0.01〜0.1vol%)の水素を添加することが提案されている。
【0003】
この方法は、燃料が着火する際に給気中の水素ガスにも着火し、水素ガスの火炎伝播速度は高分子液体燃料よりも極めて速いため、水素ガスの燃焼によって高分子液体燃料と給気との混合が促進され、完全燃焼が促進されるというものである。特に、負荷変動の激しい燃焼システムに有効とされる。
【0004】
特許文献2には、水の電気分解システムにおいて、水素(酸素)チャンバーの上流において、気体の流れを調整するとともに漏れを検出して爆発性雰囲気の生成を避ける内容が記載されている。
【0005】
特許文献3には、原子力発電所における建屋での水素爆発を防止する手段として、建屋における水素濃度を水素検知器で検知した際に、不活性気体噴出装置により建屋内に不活性気体を噴出させ、建屋内に水素/空気/不活性気体の混合気体を充満せしめるとともに、混合気体における水素濃度を爆発限界以下の安全濃度に保持することが提案されている。
【0006】
特許文献4には、活性酸素による人体への悪影響を低減させる為の呼吸用ガスとして空気又は酸素に水素ガスを混合するシステムが提案され、特に万一の静電気爆発から使用者の肺機能を防護するためにフレームアレスター(逆火防止装置)を必要個所に設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6328186号公報
【特許文献2】特表2019−506537号公報
【特許文献3】特開2012−225823号公報
【特許文献4】特許第5612743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたシステムでは、水素供給源として電気分解装置にて水を電気分解して水素ガスを生成することが考えられる。しかしながら、生成した水素ガスによる爆発防止対策については何ら言及していない。
【0009】
特許文献2では、水素ガスの漏れを検出して爆発性雰囲気の生成を避けることが提案されている。漏れを検出するのは水素ガスを扱う以上、当然のことであり、漏れているのに検知できなかった場合の対策が重要である。
【0010】
特許文献3には、原子力発電所であるため建屋での水素爆発を防止することを目的とし、このために水素を検知した際に不活性気体を噴出するとしている。しかしながら、万一水素爆発した場合にはどのようにするかについての提案はされていない。
【0011】
特許文献4では、フレームアレスター(逆火防止装置)を用いて水素ガスに着火した場合の爆発を防ぐようにしているが、前記したように水素に着火した場合の火炎伝播速度は極めて速く、一般的な逆火防止装置では炎を遮断できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく本発明は、給気中に水素ガスを添加する燃焼システムにおいて水素ガスの漏れ防止及び検知機構を備えるのを前提とし、この前提の上に、万一水素爆発が起きる場合でも、当該水素爆発を制御するようにした。
【0013】
即ち、本発明に係る水素ガス供給装置は、純水供給部、この純水供給部からの純水を電気分解する電気分解部及び電気分解部で生成された水素ガスをエンジンの給気中に供給する水素ガス供給部を備え、前記水素ガス供給部には前記純水供給部からの純水を一旦貯留して電気分解部に送り出すとともに電気分解部からの水素ガスを分離する気液分離タンクが設けられ、この気液分離タンクには気液分離タンク内で水素爆発が生じた場合に、決められた方向に爆発圧を逃がすための薄肉部が形成された構成とした。
【0014】
前記電気分解部で生成された酸素ガスについては、水素ガスとは別の経路でエンジンの給気経路に供給することが考えられる。このようにすることで、燃焼効率が高くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水素ガス供給装置は、各種の水素爆発防止装置を備えた上で、万一水素爆発が起きてしまったとしても、水素爆発の際の圧の逃がし方向が決まっているため、周囲の機器に及ぼす影響を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る水素ガス供給装置を適用した燃焼システムの全体図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る水素ガス供給装置を舶用ディーゼルエンジンに適用した例を示し、舶用ディーゼルエンジン1は、過給機2及びに負荷変動があっても、エンジンの回転数を一定の範囲に保持するためのガバナー3を備える。
【0018】
ガバナー3からの信号を受けた制御装置4は水素発生装置5から過給機2(吸気路)に送り込む水素ガスの量をコントロールする。即ち、負荷が大きくなったことをガバナー3からの信号で感知し、負荷に応じた量の水素ガスを吸気路に送り込む。
【0019】
送り込まれた吸気は燃料と混合され、圧縮により着火点まで温度が上昇した時点で着火する。着火により先ず水素の火炎伝播速度が速いため、シリンダ内が撹拌され、燃料と吸気との混合が促進される。エンジンの回転は減速機6を介して出力軸(プロペラシャフト)7に伝達される。
【0020】
図2に示すように、水素発生装置5は純水供給部11、電気分解部12およびガス供給部13から構成される。純水供給部11は純水の貯留タンク14を備え、4種フィルタ15を介して外部から純水が貯留タンク14に送られる。
【0021】
貯留タンク14内の純水はポンプ16を介して一旦ガス供給部13の気液分離タンク17に送られ、この気液分離タンク17からポンプ18及びフィルタ19を介して電気分解器20に送られる。電気分解器20には電源部21から電力が供給され且つ指示・制御器22によってコントロールされる。
【0022】
電気分解器20において純水は、水素と酸素に電気分解され、水素ガスは前記気液分離タンク17に送られ、配管23を介して過給機2に送られ、また、酸素ガスは配管24を介して同様に気液分離タンク17に送られる。
【0023】
水素爆発が発生するには、水素ガスの濃度が4%以上であることが必要である。上記構成の水素発生装置5において、水素ガスの濃度が4%以上となるのは気液分離タンク17である。
【0024】
そこで、本発明にあっては水素爆発が発生するとした場合、気液分離タンク17で発生する確率が最も高いので、気液分離タンク17に
図3に示すように薄肉部25を形成し、水素爆発の際には前記薄肉部25で破損し爆発圧は破損した箇所から広がるようにして、水素爆発をコントロールするようにした。薄肉部25の代わりに脆弱部を設けることも考えられる。
【0025】
例えば薄肉部25(または脆弱部)を電気分解部12とは反対側に設けることで、電気分解器20、電源部21および指示・制御器22を保護できる。
【0026】
また、
図3に示すように、薄肉部25(または脆弱部)と対向する位置に爆発の際の圧力分散プレート26を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…舶用ディーゼルエンジン、2…過給機、3…ガバナー、4…制御装置、5…水素発生装置、6…減速機、7…出力軸(プロペラシャフト)、11…純水供給部、12…電気分解部、13…ガス供給部、14…貯留タンク、15…4種フィルタ、16…ポンプ、17…気液分離タンク、18…ポンプ、19…フィルタ、20…電気分解器、21…電源部、22…指示・制御器、23、24…配管、25…薄肉部、26…圧力分散プレート。