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特開2021-67491液体試料の処理方法および液体試料の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-67491(P2021-67491A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】液体試料の処理方法および液体試料の処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20210402BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20210402BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20210402BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALN20210402BHJP
【FI】
   G01N1/10 B
   G01N1/04 M
   G01N1/04 H
   C12M3/06
   C12Q1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-191185(P2019-191185)
(22)【出願日】2019年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 祐士
【テーマコード(参考)】
2G052
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AA36
2G052BA22
2G052CA11
2G052EA03
2G052EA11
2G052JA04
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QS10
4B063QS39
(57)【要約】
【課題】簡便に血球を除去することが可能な液体試料の処理方法を提供する。
【解決手段】血球を含む液体試料から血球を除去するための液体試料の処理方法であって、液体試料を濾過することで、測定対象物を血球に対して先行させるステップと、測定対象物を血球に対して先行させた状態で液体試料を濾過することで、血球を除去するステップとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血球と前記血球よりも小さい測定対象物を含む液体試料に対して、前記測定対象物に対する濾過抵抗が、前記血球に対する濾過抵抗よりも小さい第1フィルタを用いた第1濾過を行い、これにより前記血球に対して前記測定対象物を先行させるステップと、
前記第1フィルタに前記血球が残った状態で、前記測定対象物を含む濾液に対して第2フィルタを用いた第2濾過を行って前記測定対象物をサイズ選択的に透過させ、これにより前記液体試料から前記血球が除去された濾液を得るステップとを備える、液体試料の処理方法。
【請求項2】
前記先行させるステップにおいては、前記液体試料が深層濾過される、請求項1に記載の液体試料の処理方法。
【請求項3】
前記濾液を得るステップにおいては、前記測定対象物を含む濾液が表面濾過される、請求項1または請求項2に記載の液体試料の処理方法。
【請求項4】
前記濾液を得るステップで得られた濾液から、前記測定対象物を濾別するステップをさらに備える、請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理方法。
【請求項5】
前記測定対象物は、微生物である、請求項1〜請求項4のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理方法。
【請求項6】
前記先行させるステップおよび前記濾液を得るステップは、前記第1濾過の一次側からの加圧プロセスおよび前記第2濾過の二次側からの減圧プロセスのうちの少なくとも一方を含む、請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理方法。
【請求項7】
血球を含む液体試料を受ける容器と、
前記容器内に配置され、前記血球および前記血球よりも小さい測定対象物を透過可能であって、前記測定対象物を前記血球よりも先に透過させる性質を有する第1フィルタと、
前記容器内において前記第1フィルタの下流側に配置され、前記血球をサイズ選択的に捕捉し且つ前記測定対象物をサイズ選択的に透過させることが可能な第2フィルタとを備える、液体試料の処理装置。
【請求項8】
前記第1フィルタは、前記第2フィルタの上流側に重ねて配置される、請求項7に記載の液体試料の処理装置。
【請求項9】
前記第1フィルタは、前記血球を一時的に捕捉する機構を有する、請求項7または請求項8に記載の液体試料の処理装置。
【請求項10】
前記第1フィルタは、デプスフィルタである、請求項9に記載の液体試料の処理装置。
【請求項11】
前記デプスフィルタは、ガラス繊維フィルタである、請求項10に記載の液体試料の処理装置。
【請求項12】
前記第2フィルタは、前記血球よりも小さく前記測定対象物よりも大きい径の孔を有する、請求項7〜請求項11のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理装置。
【請求項13】
前記第2フィルタは、メンブレンフィルタである、請求項7〜請求項12のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理装置。
【請求項14】
前記第2フィルタは、2μm以上6μm以下のフィルタ径を有する、請求項7〜請求項13のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理装置。
【請求項15】
前記容器内において前記第2フィルタの下流側に配置され、前記測定対象物をサイズ選択的に捕捉する性質を有する第3フィルタをさらに備える、請求項7〜請求項14のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理装置。
【請求項16】
前記容器は、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタが配置された第1濾過器と、前記第1濾過器の下流側に設けられた前記第3フィルタが配置された第2濾過器とを含む、請求項15に記載の液体試料の処理装置。
【請求項17】
前記測定対象物は、微生物である、請求項7〜請求項16に記載のうちいずれか1項に記載の液体試料の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料の処理方法および液体試料の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料を分析するにあたり、測定の障害となる血球成分を除去し、測定対象物として菌などの微生物および核酸などを精製する方法が知られている。たとえば、非特許文献1は、培養後の血液から細菌を精製する方法として、段階的に遠心分離と濾過を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Martin Christner, Holger Rohde, Manuel Wolters, Ingo Sobottka, Karl Wegscheider, and Martin Aepfelbacher1, "JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY", 48 (5), 1584-1591 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示の方法では、段階的な操作が必要であり、多くの時間と手間がかかる。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その1つの目的は、血球を含む液体試料から簡便に血球を除去することが可能な液体試料の処理方法および液体試料の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の液体試料の処理方法は、血球と血球よりも小さい測定対象物を含む液体試料に対して、測定対象物に対する濾過抵抗が、血球に対する濾過抵抗よりも小さい第1フィルタを用いた第1濾過を行い、これにより血球に対して測定対象物を先行させるステップと、第1フィルタに血球が残った状態で、測定対象物を含む濾液に対して第2フィルタを用いた第2濾過を行って測定対象物をサイズ選択的に透過させ、これにより液体試料から血球が除去された濾液を得るステップとを含む。
【0007】
本開示の液体試料の処理装置は、血球を含む液体試料を受ける容器と、容器内に配置され、血球および血球よりも小さい測定対象物を透過可能であって、測定対象物を血球よりも先に透過させる性質を有する第1フィルタと、容器内において第1フィルタの下流側に配置され、血球をサイズ選択的に捕捉し且つ測定対象物をサイズ選択的に透過させることが可能な第2フィルタとを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記の液体試料の処理方法および液体試料の処理装置においては、簡便な方法で血球を除去した濾液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2】実施形態1にかかる処理装置の構成を模式的に示す図である。
図3】実施形態1にかかる処理装置内の第1フィルタおよび第2フィルタで液体試料を濾過した際の血球および測定対象物の移動を模式的に示した図である。
図4】実施形態2にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。
図5】実施形態3にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
本開示にかかる液体試料の処理装置は、血球を含む血液等の液体試料を処理するための装置であって、たとえば、血液中の血球よりも小さいサイズの物質(測定対象物)を測定する際の前処理工程に利用される。また、本開示にかかる液体試料の処理装置は、全量濾過方式で血液などの血球成分を含む液体試料を濾過するための装置である。また、本開示にかかる液体試料の処理装置は、測定対象の物質を得ることを目的としているという性質上、ディスポーザブルであることが好ましい。なお、測定対象物は、血球(特に、赤血球)よりも小さいものであればよく、たとえば、微生物、核酸、および、血漿中のタンパク質を含む。微生物は、たとえば、細菌および真菌などの菌、ウィルス、ならびにカビなどを含む。なお、以下では、液体試料の処理装置を単に処理装置ともいう。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1にかかる液体試料の処理装置は、血球を除去する機能を有する血球除去装置であって、液体試料から測定対象物を回収するための回収装置に組み込まれて利用される。
【0013】
<回収装置の構成>
図1は、実施形態1にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。図1を参照して、回収装置1は、処理装置100と、吸引ボックス200と、吸引ボックス200内に設置された回収容器220とを備える。
【0014】
処理装置100は、濾過器である。処理装置100の出口側(二次側)は、吸引ボックス200に接続されている。吸引ボックス200は、図示していないものの、チューブを介して真空ポンプに接続されている。
【0015】
真空ポンプを駆動して、吸引ボックス200内を減圧する。処理装置100に全血などの液体試料がセットされている場合、吸引ボックス200内を減圧すると、処理装置100内の液体試料は吸引濾過される。濾液は、回収容器220内に回収される。
【0016】
回収容器220内に回収された濾液は、測定対象物に応じて任意に選択された測定装置にセットされる。なお、回収容器220内に回収された濾液は、さらに別の前処理工程を経て、測定装置にセットされてもよい。
【0017】
<処理装置の構成>
図2は、実施形態1にかかる処理装置の構成を模式的に示す図である。図2を参照して、処理装置100は、容器120と、第1フィルタ140と、第2フィルタ160とを含む。容器120は、液体試料を収容する内部空間22と、底面に設けられた排出口24とを備える。
【0018】
第1フィルタ140および第2フィルタ160は、容器120内であって、容器120の底部に設けられている。第2フィルタ160は、第1フィルタ140の下流側(排出口24側)に設けられている。第1フィルタ140は第2フィルタ160の上(上流側)に重ねて配置されている。そのため、排出口24から吸引されると、第1フィルタ140は、第2フィルタ160に密着する。
【0019】
第1フィルタ140は、血球および血球よりも小さい成分を透過可能に構成されている。血球および血球よりも小さい測定対象物を含む全血などの液体試料を第1フィルタ140で濾過した場合、測定対象物は血球よりも先に透過する。なお、測定対象物のうちの少なくとも一部が血球よりも先に第1フィルタ140を透過すればよく、血球の一部が測定対象物の一部よりも先に第1フィルタ140を透過してもよい。
【0020】
第1フィルタ140は、血球および血球よりも小さい成分を透過可能に構成されており、かつ、測定対象物を血球よりも先に透過させる性質を有するものであればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。
【0021】
第1フィルタ140は、血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉する機構を有する。血球を一時的に捕捉する機構を有するフィルタとしては、具体的には、図2に示すような、深層濾過用のフィルタなどが挙げられる。第1フィルタ140は、血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉しつつも、血球に対して推進力をかけ続けた場合に、当該経路を血球が抜けて、血球が第1フィルタ140を透過する程度の径の経路を有する。
【0022】
血球の成分は、主に、白血球と赤血球とから構成されている。白血球は、粒子径が10〜15μm程度と、比較的大きい粒子である。赤血球は、粒子径が7〜8μm程度である。血液中において、白血球および赤血球のうち、赤血球の数が最も多い。そのため、第1フィルタ140の経路は、好ましくは、白血球、および赤血球のうち、少なくとも赤血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉しつつ、透過させることのできる程度の径を有していることが好ましい。具体的には、第1フィルタ140は、少なくとも、7μmより大きい径の経路を有している。また、他の観点から、第1フィルタ140は、粒子保持能が2.7μmである。
【0023】
なお、第1フィルタ140は、血液中に含まれる粒子径が2μm程度の血小板を三次元的に、かつ一時的に捕捉できるような大きさの孔を有していてもよい。
【0024】
深層濾過用のフィルタは、たとえば、繊維状の素材を押し固めて作られるデプスフィルタ、または多孔質構造を有する多孔質膜である。
【0025】
第1フィルタ140の材質は、ガラス、樹脂、金属、セラミックス等のいかなる材料により構成されていてもよい。血球が吸着し、吸着した血球により経路が塞がれてしまうことを考慮すると、第1フィルタ140の材質は、血球を吸着したとしても脱着するものである。たとえば、第1フィルタ140は、ガラス繊維フィルタ、またはセルロースフィルタである。
【0026】
第2フィルタ160は、血球をサイズ選択的に捕捉し、かつ、測定対象物をサイズ選択的に透過させる。具体的には、第2フィルタ160は、血球よりも小さく、測定対象物よりも大きい径の孔を有する。たとえば、第2フィルタ160のフィルタ径は、血球のうち、少なくとも赤血球の大きさ以上の成分を除去することが可能な大きさの径であって、たとえば、2μm以上6μm以下である。なお、「血球をサイズ選択的に捕捉し、かつ、測定対象物をサイズ選択的に透過させる」とは、血球が濾材の孔に捕捉されるのに対して、測定対象物は濾材の孔に捕捉されることなく透過することを意味する。なお、測定対象物が慣性力により直進し、濾材に衝突して一時的に捕捉されてもよい。
【0027】
第2フィルタ160は、血球を除去できればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。なお、第2フィルタ160として表面濾過用のメンブレンフィルタを採用すると、深層濾過用のフィルタを用いる場合に比べて血球を確実に除去することができ、濾液に血球が混入する可能性を下げることができる。
【0028】
第2フィルタ160の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホン、セルロース混合エステル、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0029】
<処理方法>
図3を参照して、処理装置を利用した液体試料の処理方法について説明する。図3は、実施形態1にかかる処理装置内の第1フィルタおよび第2フィルタで液体試料を濾過した際の血球および測定対象物の移動を模式的に示した図である。
【0030】
図3においては、血球320および測定対象物である微生物340を含む液体試料300を濾過したものとして説明する。微生物340の大きさは、血球320よりも小さい。微生物が菌である場合、微生物340の大きさは1μm程度である。
【0031】
血球320および微生物340を含む液体試料300は、たとえば、患者から採取した血液を培養した後の試料である。一般的に、患者からは血液培養用に10ml〜30ml程度の血液が採取される。培養した後の10ml〜30ml程度の血液は、測定対象物を高濃度かつ高純度で回収するため、好ましくは、希釈されることなく回収装置1を用いて処理される。
【0032】
図3中の黒丸は、血球320を示す。図3中の白丸は、微生物340を、図3中の斜線は血漿(液体成分)を示す。図3中、一部、符号を省略している。図3中のグラフは、膜(第1フィルタ140および第2フィルタ160)の厚み方向の濃度分布の一例を示す。実線で示したグラフは、血球の濃度分布を示す。破線で示したグラフは、微生物の濃度分布を示す。
【0033】
図3中の(1)は、濾過前のタイミングの状態を示す。図3中の(2)および(3)は、濾過途中のタイミングの状態を示す。図3中の(4)は、濾過後の状態を示す。すなわち、液体試料300を処理装置100によって濾過した場合、処理装置100内の状態は、図3中の(1)〜(4)の順で経時的に変化することとなる。
【0034】
図3中の(1)に示すように、濾過前において、血球320および微生物340は、いずれも、液体試料300中に分散している。
【0035】
吸引されて濾過が始まると、液体試料300は、まず、第1フィルタ140を透過する。このとき、血球320は、第1フィルタ140の経路内で濾材に衝突して一時的に捕捉される。これに対して、血球320よりも小さい微生物340は、血球320に比べて第1フィルタ140の経路内で一時的に捕捉されにくい。そのため、第1フィルタ140を用いた第1濾過において、微生物340にかかる濾過抵抗は、血球320にかかる濾過抵抗よりも小さくなる。すなわち、第1フィルタ140の微生物340に対する濾過抵抗は、血球320に対する濾過抵抗よりも小さい。その結果、図3中の(2)および(3)に示すように、時間が経過するごとに、液体試料300中で血球320と微生物340とが徐々に分離し、液体試料300の移動方向に対して血球320よりも微生物340が先行することとなる。
【0036】
図3中の(3)に示すように、第1フィルタ140と第2フィルタ160とが重ねて配置されており、液体試料300を第1フィルタ140で濾過することで液体試料300の移動方向に対して血球320よりも微生物340が先行することになるため、微生物340が血球320よりも先に第2フィルタ160に到達する。
【0037】
そして、液体試料300の移動方向に対して血球320よりも微生物340の方が先行しており、第1フィルタ140に血球320が残った状態で液体試料300を第2フィルタ160を用いた第2濾過を行い、微生物340をサイズ選択的に透過させることで、図3中の(4)に示すように、微生物340を残しつつ血球320が除去された濾液を得られる。
【0038】
以上のように、実施形態1にかかる処理装置100を利用して液体試料300を濾過することで、微生物340に対する濾過抵抗が、血球320に対する濾過抵抗よりも小さい第1フィルタ140を用いた第1濾過を液体試料300に対して行い、これにより血球320に対して微生物340を先行させるステップ(S100)と、第1フィルタ140に血球320が残った状態で第2フィルタ160を用いた第2濾過を行って微生物340をサイズ選択的に透過させ、これにより液体試料300から血球320が除去された濾液を得るステップ(S200)とを含む液体試料の処理方法が実現される。
【0039】
第1フィルタ140が、デプスフィルタ等の深層濾過用のフィルタである場合、第1濾過においては深層濾過がされる。また、第2フィルタ160がメンブレンフィルタ等の表面濾過用のフィルタである場合、第2濾過においては表面濾過がされる。
【0040】
第1フィルタ140を設けることなく、第2フィルタ160で血液のような液体試料を濾過した場合、微生物340が第2フィルタ160を透過する前に、第2フィルタ160上に血球320が堆積して目詰まりを起こしてしまう。そのため、第2フィルタ160だけで血液のような液体試料を濾過した場合、微生物340の回収効率は高くない。
【0041】
実施形態1においては、第1フィルタ140で液体試料300を濾過することで液体試料300の移動方向に対して血球320よりも微生物340の方が先行した状態を作りだす。液体試料300の移動方向に対して血球320よりも微生物340の方が先行した状態で液体試料300を第2フィルタ160で濾過することで、第2フィルタ160上に血球320が堆積して目詰まりが起こる前に微生物340が第2フィルタ160を透過させることができる。その結果、液体試料300中の微生物340を効率的に回収しつつ、血球320を除去することができる。
【0042】
なお、第1フィルタ140の厚みは、たとえば、血球320の膜透過速度と微生物340の膜透過速度との差に応じて設計され、微生物340が第2フィルタ160を透過してから第2フィルタ160上に血球320が堆積するように血球320と微生物340とを分離させることができる厚みであればよい。たとえば、第1フィルタ140は、1.3mm以上の厚みを有する。
【0043】
なお、液体試料300の全量を濾過し終わったタイミングで、血球320が第2フィルタ160に到達していないような構成であってもよく、また、血球320の全部または一部が到達しているような構成であってもよい。第1フィルタ140で第1濾過を液体試料300に行うことで、血球320よりも微生物340を先行させた状態を作りだし、その状態のまま、微生物340をサイズ選択的に透過させることで、第2濾過中に目詰まりを起こすことなく、血球が除去された濾液を得られればよい。
【0044】
[実施形態2]
実施形態2にかかる液体試料の処理装置は、測定対象物を回収するための回収用の濾過器を含む。
【0045】
図4は、実施形態2にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。実施形態2にかかる回収装置1aは、実施形態1にかかる回収装置1と比較して、処理装置100に代えて処理装置100aを備え、吸引ボックス200に代えて廃液ボックス200aを備え、回収容器220を備えていない点で異なる。
【0046】
処理装置100aは、容器120aから構成されている。容器120aは、第1濾過器122と、第2濾過器124と、第1濾過器122と第2濾過器124とを連結する連結管130とを含む。
【0047】
第1濾過器122は、実施形態1にかかる処理装置100と共通の構成を備える。具体的には、第1濾過器122内には、第1フィルタ140と第2フィルタ160とが配置されている。第1濾過器122の構成は、処理装置100と共通するため、その説明を省略する。液体試料300を第1濾過器122によって濾過することで、図3を参照して説明したステップS100とステップS200とが実現され、血球320が取り除かれた濾液が得られる。
【0048】
第1濾過器122で濾過されて得られた濾液は、連結管130を通って第2濾過器124に導かれる。第2濾過器124内には、測定対象物をサイズ選択的に補足する性質を有する第3フィルタ180が配置されている。具体的には、第3フィルタ180は、測定対象物よりも小さい径の孔を有する。測定対象物が微生物のうちの菌である場合、第3フィルタ180は、たとえば、一般的な滅菌フィルタであって、フィルタ径が0.2〜0.45μmのフィルタである。
【0049】
第3フィルタ180は、回収したい測定対象物の大きさに応じて設計される。第3フィルタ180は、回収したい測定対象物を濾別できればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。なお、第3フィルタ180として表面濾過用のメンブレンフィルタを採用した場合、測定対象物が第3フィルタ180の上に堆積する一方、第3フィルタ180として深層濾過用のフィルタを採用すると、フィルタ内部で測定対象物が捕捉される。そのため、第3フィルタ180として表面濾過用のメンブレンフィルタを採用した場合の方が、深層濾過用のフィルタを採用した場合に比べて、測定対象物を回収しやすいことが予想される。
【0050】
第1濾過器122で濾過されて得られた濾液を第2濾過器124で濾別することで、測定対象物を第3フィルタ180によって捕捉することができる。第2濾過器124によって濾過されて得られた濾液は、廃液ボックス200a内に回収される。
【0051】
廃液ボックス200aは、測定に利用されない廃液を回収するための廃液タンクとしての機能と、真空ポンプが接続される吸引ボックスとしての機能とを兼ね備えている。
【0052】
実施形態2にかかる処理装置100aを利用して液体試料300を濾過することで、微生物340に対する濾過抵抗が、血球320に対する濾過抵抗よりも小さい第1フィルタ140を用いた第1濾過を液体試料300に対して行い、これにより血球320に対して微生物340を先行させるステップ(S100)と、第1フィルタ140に血球320が残った状態で第2フィルタ160を用いた第2濾過を行って微生物340をサイズ選択的に透過させ、これにより液体試料300から血球320が除去された濾液を得るステップ(S200)と、この濾液から微生物340を濾別ステップ(S300)とを含む液体試料の処理方法が実現される。
【0053】
実施形態2にかかる処理装置100aは、実施形態1にかかる処理装置100と比して、第2フィルタ160の下流側に配置された第3フィルタ180をさらに備える。そのため、処理装置100aで液体試料300を濾過するという一の単位操作で測定対象物を回収することができ、簡便な処理で測定対象物を回収することができる。
【0054】
また、実施形態2にかかる処理装置100aは、第1濾過器122により血球320が除去され、第2濾過器124内に微生物340が回収される。その結果、微生物340を回収するにあたり、血球320が第2濾過器124内に混入してしまうことを防止することができる。また、第1濾過器122と第2濾過器124とが別体で構成されているため、液体試料300を濾過した後、第3フィルタ180によって回収された微生物を収集する操作を行いやすい。
【0055】
[実施形態3]
実施形態3にかかる処理装置は、濾液が排出される出口側(二次側)から吸引して濾過する構成ではなく、入り口側(一次側)から圧力をかけることで液体試料300を濾過する構成である。
【0056】
図5は、実施形態3にかかる処理装置を含む回収装置の全体構成を模式的に示す図である。実施形態3にかかる回収装置1bは、実施形態2にかかる回収装置1aと比較して、処理装置100aに代えて処理装置100bを備え、廃液ボックス200aに代えて廃液タンク200bを備える。廃液タンク200bは、廃液ボックス200aと異なり吸引ボックスとしての機能を有していない。処理装置100bは、容器120aに代えて容器120bから構成されている。容器120bは、第1濾過器122に代えて第1濾過器122bを備える点で処理装置100aと異なるものの、他の構成は処理装置100aと共通する。なお、第1濾過器122bは、第1濾過器122と比して、コネクタ26を入り口側に備える点で異なるものの、その他の構成は共通する。
【0057】
第1濾過器122bは、シリンジフィルタであって、シリンジ400の筒先420と接続するためのコネクタ26を入り口側(一次側)に備える。液体試料300が充填されたシリンジ400の筒先420を第1濾過器122bのコネクタ26に接続し、押し子440を押すことで、第2濾過器124上に測定対象物が回収される。
【0058】
[変形例]
実施形態1〜実施形態3においては、圧力をかけて液体試料300を濾過する例を示したが、圧力をかけずに濾過してもよい。また、遠心濾過用のチューブ内に第1フィルタ140と第2フィルタ160を配置し、当該チューブに対して遠心力をかけて濾過してもよい。なお、液体試料が遠心分離機内で飛散するリスクを考慮すると、実施形態1または実施形態2にかかる吸引濾過または、実施形態3にかかるシリンジを用いた濾過(加圧濾過)が好ましい。なお、加圧濾過と吸引濾過とを組み合わせて液体試料300を濾過するようにしてもよい。すなわち、第1フィルタ140を用いた第1濾過の一次側からの加圧プロセスおよび、第2フィルタ160を用いた第2濾過の二次側からの減圧プロセスのうちの少なくとも一方により、血球を除去して濾液を得る工程を実現してもよい。なお、加圧プロセスおよび減圧プロセスの少なくとも一方により、血球を除去して濾液を得る工程と、測定対象物を濾別する工程とを実現してもよい。
【0059】
上記実施形態1〜3において、第1フィルタ140と第2フィルタ160とは重ねて配置されているとしたが、これに限られない。たとえば、第1フィルタ140と第2フィルタ160とを密着させて容器120内に配置してもよい。また、第1フィルタ140と第2フィルタ160とが一体で成形されていてもよい。また、第1フィルタ140と第2フィルタ160とは重ねて配置されていなくとも、第2フィルタ160上に血球320が堆積して目詰まりが起こる前に微生物340が第2フィルタ160を透過できるような構成であればよく、第1フィルタ140と第2フィルタ160との間に隙間を設けられていてもよい。
【0060】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態及びその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0061】
(第1項)一態様に係る液体試料の処理方法は、血球と血球よりも小さい測定対象物を含む液体試料に対して、測定対象物に対する濾過抵抗が、血球に対する濾過抵抗よりも小さい第1フィルタを用いた第1濾過を行い、これにより血球に対して測定対象物を先行させるステップと、第1フィルタに血球が残った状態で、測定対象物を含む濾液に対して第2フィルタを用いた第2濾過を行って測定対象物をサイズ選択的に透過させ、これにより液体試料から血球が除去された濾液を得るステップとを含む。
【0062】
このような構成によれば、第1フィルタに血球が残った状態で、第2濾過を行って測定対象物を透過させるため、血球により目詰まりが生じることを防止することができ、濾過という簡便な方法で血球を除去することができる。
【0063】
(第2項)第1項に記載の液体試料の処理方法の先行させるステップにおいては、液体試料が深層濾過されてもよい。
【0064】
このような構成によれば、血球が内部捕捉されることで血球の移動が測定対象物に比べて遅くなり、その結果、測定対象物を血球に対して先行させることとなる。
【0065】
(第3項)第1項または第2項に記載の液体試料の処理方法の濾液を得るステップにおいては、測定対象物を含む濾液が表面濾過される。
【0066】
このような構成によれば、深層濾過に比べて血球を確実に除去することができる。
【0067】
(第4項)第1項から第3項のいずれか1項に記載の液体試料の処理方法は、濾液を得るステップで得られた濾液から、測定対象物を濾別するステップをさらに備えてもよい。
【0068】
このような構成によれば、血球を取り除いた状態で測定対象物を回収することができ、測定対象物の精製ができる。
【0069】
(第5項)第1項から第4項のいずれか1項に記載の液体試料の処理方法において、測定対象物は、微生物を含む。
【0070】
このような構成によれば、血球を含む液体試料から微生物を精製することができる。また、第1フィルタに血球が残った状態で第2濾過を行って微生物を透過させるため、血球により目詰まりが生じることなく微生物が透過し、濾液内に効率的に微生物を残すことができる。そのため、微生物を効率的に回収することができ、その結果、回収した微生物を培養して所定の数まで育てるまでに必要な時間を短縮することができる。
【0071】
(第6項)第1項から第5項のいずれか1項に記載の液体試料の処理方法の先行させるステップおよび濾液を得るステップは、第1濾過の一次側からの加圧プロセスおよび第2濾過の二次側からの減圧プロセスのうちの少なくとも一方を含む。
【0072】
(第7項)また、一態様に係る液体試料の処理装置は、血球を含む液体試料を受ける容器と、容器内に配置された第1フィルタと、容器内において第1フィルタの下流側に配置された第2フィルタとを含む。第1フィルタは、血球および血球よりも小さい測定対象物を透過可能であって、測定対象物を血球よりも先に透過させる性質を有する。第2フィルタは、血球をサイズ選択的に捕捉し且つ測定対象物をサイズ選択的に透過させることが可能である。
【0073】
このような構成によれば、第1フィルタが血球よりも測定対象物を先に透過させる性質を有するため、第1フィルタの下流側に配置された第2フィルタに血球よりも測定対象物の方が先に到達し、測定対象物が血球よりも先に第2フィルタを透過するため、血球により目詰まりが生じることを防止することができ、濾過という簡便な方法で血球を除去することができる。
【0074】
(第8項)第7項に記載の液体試料の処理装置において、第1フィルタは、第2フィルタの上流側に重ねて配置されてもよい。
【0075】
(第9項)第7項または第8項に記載の液体試料の処理装置において、第1フィルタは、血球を一時的に捕捉する機構を有していてもよい。
【0076】
このような構成によれば、血球が内部捕捉されることで血球の移動が測定対象物に比べて遅くなり、その結果、血球よりも測定対象物が先に第1フィルタを透過することとなる。
【0077】
(第10項)第9項に記載の液体試料の処理装置において、第1フィルタは、デプスフィルタであってもよい。
【0078】
(第11項)第10項に記載の液体試料の処理装置において、デプスフィルタは、ガラス繊維フィルタであってもよい。
【0079】
(第12項)第7項〜第11項に記載の液体試料の処理装置において、第2フィルタは、血球よりも小さく測定対象物よりも大きい孔の径を有していてもよい。
【0080】
(第13項)第7項から第12項のいずれか1項に記載の液体試料の処理装置において、第2フィルタは、メンブレンフィルタであってもよい。
【0081】
このような構成によれば、デプスフィルターに比べて血球を確実に除去することができる。
【0082】
(第14項)第7項〜第13項のいずれか1項に記載の液体試料の処理装置において、第2フィルタは、2μm以上6μm以下のフィルタ径を有していてもよい。
【0083】
(第15項)第7項から第14項のいずれか1項に記載の液体試料の処理装置は、容器内において第2フィルタの下流側に配置され、測定対象物をサイズ選択的に捕捉する性質を有する第3フィルタをさらに備えていてもよい。
【0084】
このような構成によれば、血球を取り除いた状態で測定対象物を回収することができ、測定対象物の精製ができる。
【0085】
(第16項)第15項に記載の液体試料の処理装置において、容器は、第1フィルタおよび第2フィルタが配置された第1濾過器と、第1濾過器の下流側に設けられた第3フィルタが配置された第2濾過器とを含む。
【0086】
この構成によれば、第1濾過器により血球が除去され、第2濾過器内に測定対象物が回収される。その結果、測定対象物を回収するにあたり、血球が第2濾過器内に混入してしまうことを防止することができる。
【0087】
(第17項)第7項から第16項のいずれか1項に記載の液体試料の処理装置において、測定対象物は、微生物を含む。
【0088】
このような構成によれば、血球を含む液体試料から微生物を精製することができる。また、微生物が血球よりも先に第2フィルタを透過するため、血球により第2フィルタが目詰まりを起こす前に微生物を透過させることができ、濾液内に効率的に微生物を残すことができる。そのため、微生物を効率的に回収することができ、その結果、回収した微生物を培養して所定の数まで育てるまでに必要な時間を短縮することができる。
【0089】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1,1a,1b 回収装置、22 内部空間、24 排出口、26 コネクタ、100,100a,100b 処理装置、120,120a,120b 容器、122,122b 第1濾過器、124 第2濾過器、130 連結管、140 第1フィルタ、160 第2フィルタ、180 第3フィルタ、200 吸引ボックス、200a 廃液ボックス、200b 廃液タンク、220 回収容器、300 液体試料、320 血球、340 微生物、400 シリンジ、420 筒先、440 押し子。
図1
図2
図3
図4
図5