【解決手段】停水式検定装置10は、流体を圧送するポンプ13と、ポンプ13から圧送された流体を溜める基準タンク14と、流体の流量を計測する流量計50が設けられ、一端がポンプ13と接続し、他端が基準タンク14内に連通する配管12と、配管12に設けられ、当該配管12を開閉する同期バルブ19と、同期バルブ19を、流量計50による流量の計測に同期させて動作させる制御部20とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水道メータ等の流量計に対応した検定装置は、例えば、流量計に実際に通水させた流体を基準器に流入させて、当該基準器に貯留した流体の体積値と、流量計の計測値とを比較して、流量計の計量精度(器差)を求める構成となっている。
【0005】
また、流量計の検定方式としては、停水式及び通水式の2種類が提供されている。停水式の検定方法は、流量計が、流体の流量がゼロとなる状態から、計測を開始するものである。この停水式検定方法は、一般的に広く使用されるものであって、この停水式検定方法を適用した装置は、簡素な構成で、製造コストも安価となっている。一方、通水式の検定方法は、流量計が、流体が一定流量で通過している状態から、計測を開始するものである。この通水式検定方法は、停水式検定方法と比べて、構成機器が多く、製造コストが高くなっている。
【0006】
羽根車式及び電磁式の流量計は、流量計の中でも、比較的に応答速度が速く、流量の立ち上がり及び立ち下がりを高精度に計測可能な分解能を備えているため、停水式検定装置に適用可能となっている。これに対して、超音波式の流量計は、1対の超音波センサ間で、超音波を送受信させることにより、流体の流量を計測するため、応答速度が遅く、流量の立ち上がり及び立ち下がりに対する分解能が低い。
【0007】
このため、応答速度が遅い流量計は、停水式検定装置には適用が困難となるため、通水式検定装置に適用するしかなかった。しかしながら、上述したように、通水式検定装置は、停水式検定装置と比べて、製造コストが非常に高額となるため、応答速度が遅い流量計の器差検定を行う場合には、大きな設備投資が必要であった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、応答速度が遅い流量計でも、器差検定を高精度に行うことができる停水式検定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る停水式検定装置は、流体を圧送するポンプと、ポンプから圧送された流体を溜める基準タンクと、流体の流量を計測する被検査流量計が設けられ、一端がポンプと接続し、他端が基準タンク内に連通する配管と、配管に設けられ、当該配管を開閉する同期バルブと、同期バルブを、被検査流量計による流量の計測に同期させて動作させる制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、応答速度が遅い流量計でも、器差検定を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1に係る停水式検定装置10について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る停水式検定装置10の概略構成図である。なお、
図1に示した矢印は、流体(例えば、水)の流れ方向を示している。
【0014】
図1に示した停水式検定装置10は、検査すべき1台または複数台の流量計(被検査流量計)50を通過する流体の流量がゼロとなる状態から、当該流量計50の器差検定を行うものである。器差とは、流量計50を実際に通って流れた流体の実流量と、これに対応する流量計50の計測量(指示量)との差の、実流量に対する百分率として定義されるものである。なお、
図1に示した停水式検定装置10は、8台の流量計50を器差検定する例としている。
【0015】
流量計50は、例えば、超音波積算熱量計である。この超音波式の流量計50は、流体中において、1対の超音波センサ間で、超音波を送受信させることにより、当該流体の瞬時流量を計測する。このように、流量計50は、超音波の送受信によって、流体の瞬時流量を計測するため、羽根車式及び電磁式の流量計と比べて、応答速度が遅く、流量の立ち上がり及び立ち下がりに対する分解能が低い。また、流量計50は、羽根車式及び電磁式の流量計のように、計測開始から流れた流体の累積値となる積算流量を計測するものではなく、一定時間当たりに流れる流体の流量となる瞬時流量を計測するものである。
【0016】
なお、停水式検定装置10は、超音波式の流量計50の器差検定だけでなく、羽根車式及び電磁式の流量計の器差検定についても行うことができる。
【0017】
停水式検定装置10は、検定台11、配管12、ポンプ13、基準タンク14、入側バルブ15、出側バルブ16、通水バルブ17、流量設定部18、同期バルブ19、及び、制御部20を備えている。この停水式検定装置10は、従来の構成に対して、同期バルブ19及び制御部20を追加した構成となっている。
【0018】
配管12は、検定台11の上面を沿うように、ポンプ13と基準タンク14との間を繋いでいる。配管12の一端(上流端)は、ポンプ13の出口と接続し、配管12の他端(下流端)は、基準タンク14内に連通している。
【0019】
検定台11の上面には、複数台の流量計50が、配管12の長さ方向に沿って、直列に配置されている。流量計50は、配管12と接続すると共に、クランプ部材11aによって、検定台11の上面に取り付けられている。このとき、流量計50は、その入口が配管12を介してポンプ13の出口と連通する一方、その出口が配管12を介して基準タンク14内に連通している。また、全ての流量計50は、同じ高さ位置に配置されている。
【0020】
ポンプ13の入口は、給水源(図示省略)と接続している。これにより、給水源に貯留する流体は、ポンプ13の駆動によって、当該給水源から汲み上げられた後、配管12及び流量計50を通過して、基準タンク14内に圧送られる。ポンプ13の吐出圧力は、一定(例えば、1000kPa・G)となっている。
【0021】
基準タンク14は、計量法で定められた基準器を構成するものであって、ポンプ13から圧送された流体を溜めるものである。この基準タンク14は、レベルゲージ14a、排水管14b、及び、排水バルブ14cを有している。
【0022】
レベルゲージ14aは、透明な材料で形成されている。このレベルゲージ14aは、基準タンク14の外面に沿って設けられており、当該基準タンク14内と連通している。これにより、作業者は、レベルゲージ14aを見ることにより、基準タンク14内に溜められた流体の体積を目視で読み取ることができる。
【0023】
排水管14bは、基準タンク14内の下部に連通しており、排水バルブ14cは、その排水管14bに設けられている。この排水バルブ14cは、手動によって排水管14bを開閉可能となっている。基準タンク14内に溜められた流体は、排水バルブ14cが開状態となることにより、当該基準タンク14の外部に排出される。
【0024】
入側バルブ15は、配管12において、複数台の流量計50のうち、最も上流側に位置する流量計50よりも上流側に配置されている。出側バルブ16は、複数台の流量計50のうち、最も下流側に位置する流量計50よりも下流側に配置されている。入側バルブ15及び出側バルブ16は、手動によって配管12を開閉可能となっており、配管12内から気泡を除去する際に使用される。
【0025】
通水バルブ17は、配管12において、出側バルブ16よりも下流側に配置されている。この通水バルブ17は、手動によって配管12を開閉可能となっており、ポンプ13と基準タンク14とを、配管12を介して連通させるものである。
【0026】
流量設定部18は、配管12において、通水バルブ17よりも下流側に配置されている。また、流量設定部18は、配管12の立ち上がり区間に設けられており、この配管12の立ち上がり区間は、検定台11の上面に沿うように配置された配管12の水平区間から立ち上がった部分である。そして、流量設定部18は、配管12内を流れる流体の流量、即ち、流量計50を通過する流体の流量を調整する。この流量設定部18は、例えば、浮子式流量計であって、流量計50に対応する定格流量を調整可能となっている。
【0027】
同期バルブ19は、配管12において、入側バルブ15と、複数台の流量計50のうち最も上流側に位置する流量計50との間に、配置されている。この同期バルブ19は、流量計50における応答速度以下の速度で、配管12を開閉可能となっている。
【0028】
制御部20は、同期バルブ19及び流量計50と電気的に接続されている。この制御部20は、同期バルブ19を、流量計50による流量の計測に同期させて動作させる。具体的には、制御部20は、流量計50の計測動作が開始されると、これに同期して、同期バルブ19を開き始める。また、同期バルブ19は、流量計50の計測動作が終了すると、これに同期して、同期バルブ19を完全に閉じた状態とする。即ち、制御部20は、流量計50の応答速度以下の速度で、且つ、流量計50における流体の流量がゼロとなる計測開始及び計測終了に同期させて開閉させる。
【0029】
次に、停水式検定装置10を用いて、流量計50を器差検定する際の動作について、以下に説明する。
【0030】
先ず、作業者は、流量計50を、配管12に接続すると共に、クランプ部材11aを用いて、検定台11の上面に取り付ける。
【0031】
次いで、作業者は、排水バルブ14c、入側バルブ15、出側バルブ16、通水バルブ17、及び、同期バルブ19の全てのバルブが閉状態であることを確認する。
【0032】
そして、作業者は、ポンプ13を駆動させる。これにより、給水源に貯留する水は、当該給水源から汲み上げられた後、配管12における閉状態の入側バルブ15の手前まで流入する。
【0033】
次いで、制御部20は、同期バルブ19を動作させて開状態にする。
【0034】
そして、作業者は、入側バルブ15、出側バルブ16、及び、通水バルブ17を順に操作して、それらを段階的に開状態にする。これにより、配管12は、ポンプ13側から基準タンク14側に向けて、段階的に満水状態となるため、配管12内に存在する気泡は、流体と共に流れて、基準タンク14内に排出される。
【0035】
次いで、作業者は、流量設定部18を操作して、流量計50に流す流体の流量を、所定の定格流量に設定する。
【0036】
そして、制御部20は、同期バルブ19を動作させて閉状態にする。このとき、流量設定部18は、配管12の立ち上がり区間に配置されているため、その内部は、満水状態のままである。
【0037】
次いで、作業者は、排水バルブ14cを操作して開状態にする。これにより、基準タンク14内に溜まっている水は、その排水バルブ14cを介して、当該基準タンク14の外部に排出される。更に、作業者は、レベルゲージ14aがゼロ又は任意の体積値を指していることを確認してから、排水バルブ14cを操作して閉状態にする。
【0038】
そして、制御部20は、同期バルブ19を動作させて開状態にする。これにより、流量計50は、流体の流量がゼロとなる状態から、計測を開始することになる。このとき、制御部20は、同期バルブ19を、流量計50の応答速度以下で、且つ、流量計50における流体の流量がゼロとなる計測開始に同期させて、全閉状態から全開状態まで開動作させる。
【0039】
次いで、作業者は、流量計50によって計測された流体の瞬時流量を積算して、流量積算値を算出し続ける。
【0040】
そして、制御部20は、所定の期間が経過すると、同期バルブ19を動作させて閉状態にする。これにより、流量計50は、瞬時流量の計測を終了することになるが、流体の流量がゼロとなる状態で、計測を終了する。このとき、制御部20は、同期バルブ19を、流量計50の応答速度以下で、且つ、流量計50における流体の流量がゼロとなる計測終了に同期させて、全開状態から全閉状態まで閉動作させる。
【0041】
次いで、作業者は、レベルゲージ14aを見ることにより、基準タンク14内に流入した流体の体積値を目視で読み取る。
【0042】
そして、作業者は、最終的な積算流量と、読み取った体積値とを比較して、流量計50の器差を算出する。
【0043】
次いで、作業者は、算出した器差が、所定の流量範囲となる検定公差を超えているか否かを判定する。即ち、上記器差が検定公差を超えていない場合には、作業者は、流量計50を合格品であると判定する。一方、上記器差が検定公差を超えている場合には、作業者は、流量計50を不合格品であると判定する。
【0044】
ここで、
図2は、実施の形態1に係る停水式検定装置10における流量計50の分解能を示した図である。この
図2に示したグラフでは、横軸が時間を示し、縦軸が流量を示しており、2点鎖線で囲まれた領域が、流量計50における分解能の設定領域となっている。
【0045】
図2に示すように、制御部20は、同期バルブ19を、流量計50による流量の計測に同期させて動作させることにより、当該流量計50は、流量の立ち上がり及び立ち下がりに対して、分解能を均等に設定することができる。このとき、流量計50は、流量の立ち上がり及び立ち下がりに対して、それぞれ1つの分解能で対応しており、各分解能は、流量の立ち上がり及び立ち下がりの全領域を含むように設定されている。これにより、停水式検定装置10は、応答速度が遅い流量計50でも、器差検定を高精度に行うことができる。
【0046】
また、同期バルブ19は、その閉動作に伴って、衝撃波を流体中に発生させてしまう場合がある。この衝撃波は、流体中を伝搬して、流量計50に衝突した際に、反射波を発生させ、この反射波は、同期バルブ19に到達するおそれがある。このように、同期バルブ19は、反射波を受けてしまうと、その開閉動作に影響が出でしまう。しかしながら、停水式検定装置10は、同期バルブ19を、最も上流側に位置する流量計50よりも更に上流側に配置しているため、反射波の同期バルブ19への到達を抑制することができる。なお、同期バルブ19は、複数台の流量計50のうち最も下流側に位置する流量計50よりも下流側に配置されても良い。
【0047】
以上より、実施の形態1に係る停水式検定装置10は、流体を圧送するポンプ13と、ポンプ13から圧送された流体を溜める基準タンク14と、流体の流量を計測する流量計50が設けられ、一端がポンプ13と接続し、他端が基準タンク14内に連通する配管12と、配管12に設けられ、当該配管12を開閉する同期バルブ19と、同期バルブ19を、流量計50による流量の計測に同期させて動作させる制御部20とを備えている。これにより、停水式検定装置10は、応答速度が遅い流量計50でも、器差検定を高精度に行うことができる。
【0048】
また、同期バルブ19は、流量計50における応答速度以下の速度で、配管12を開閉可能である。これにより、停水式検定装置10は、応答速度が遅い流量計50の器差検定を、確実に行うことができる。
【0049】
更に、同期バルブ19は、配管12における流量計50よりも上流側に配置されている。これにより、同期バルブ19は、閉動作に伴って衝撃波を発生させてしまった場合でも、最も上流側に位置する流量計50よりも更に上流側に配置されているため、衝撃波がその流量計50に衝突した際に発生する反射波を受けるおそれがない。
【0050】
なお、本願発明は、その発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは、実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。