(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-68382(P2021-68382A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】疾患予測システム、保険料算出システム及び疾患予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20120101AFI20210402BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20210402BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-195404(P2019-195404)
(22)【出願日】2019年10月28日
(11)【特許番号】特許第6734457号(P6734457)
(45)【特許公報発行日】2020年8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】小森 伸昭
(72)【発明者】
【氏名】亀井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】河本 光祐
(72)【発明者】
【氏名】菊地 了
(72)【発明者】
【氏名】岸田 滋史
(72)【発明者】
【氏名】井部 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】三枝 亮太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、動物が将来疾患に罹患する可能性を判定する疾患予測システム等を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像から推定されるその動物の疾患罹患の予測を出力する判定手段と、を備える疾患予測システムであって、前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が疾患に罹患する予測とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の疾患に罹患するかを予測判定する判定手段と、を備える疾患予測システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が疾患に罹患するかどうかの予測判定とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測システム。
【請求項2】
前記動物が、犬である請求項1記載の疾患予測システム。
【請求項3】
前記入力画像が、動物の顔を正面から撮影した画像である請求項1または2記載の疾患予測システム。
【請求項4】
保険の対象となる動物の顔画像を請求項1〜3のいずれか一項記載の疾患予測システムに入力し、出力された疾患罹患の予測に応じて当該動物の保険料を決定する保険料算出システム。
【請求項5】
ヒトを除く動物の顔画像と、その動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを教師データとして用いて人工知能に学習させることを特徴とする疾患予測モデルの製造方法。
【請求項6】
ヒトを除く動物の顔画像を用意するステップと、
前記顔画像を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の顔画像から所定期間内にその動物が疾患に罹患するかどうかの予測を出力するステップと、を有する疾患予測方法であって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が所定期間内に疾患に罹患する予測とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患予測システム、保険料算出システム及び疾患予測方法に関し、詳しくは、動物の顔の画像から、動物の将来の疾患罹患可能性に関する情報を提供する疾患予測システム、保険料算出システム及び疾患予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫、ウサギを始めとする愛玩動物、牛や豚を始めとする家畜は、人間にとってかけがえのない存在である。近年、人間が飼育する動物の平均寿命が大幅に伸びた一方で、動物がその一生の中で何らかの疾患に罹患することが多くなり、飼育者が負担する医療費の増大が問題となっている。
【0003】
動物の健康を維持するためには、日頃の食事、運動などを通じた体調管理や不調への素早い対応が重要となるが、動物は、自己の言葉で体の不調を訴えることができないため、症状が進行して、外形的に観察可能な何らかの徴候が生じたときに飼育者が初めて動物の疾患の罹患に気付くのが実情である。
【0004】
そのため、簡易な方法で、動物が将来疾患に罹患する可能性があるのかを知る手段が求められている。特に、疾患に罹患していない状態、症状が何ら現れていない状態において、将来の疾患罹患の可能性を知ることができれば、疾患の予防に向けた措置を具体的にとることが可能となるため、有用である。
【0005】
特許文献1には、被験者を診断するコンピュータシステムであって、前記被験者の時系列の変化を伴う複数枚の第1被験者画像を取得する第1画像取得手段と、取得した前記第1被験者画像を画像解析する第1画像解析手段と、過去の別の被験者の時系列の変化を伴う複数枚の第2被験者画像を取得する第2画像取得手段と、取得した前記第2被験者画像を画像解析する第2画像解析手段と、前記第1被験者画像の画像解析の結果と、前記第2被験者画像の画像解析の結果とを照合する照合手段と、照合した結果に基づいて、前記被験者を診断する診断手段と、を備えることを特徴とするコンピュータシステムが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1は、被験者の診断を行うシステムであって、被験者の将来の疾患罹患可能性を判定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2018/211688号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、簡易な方法で、動物が将来疾患に罹患する可能性を判定する疾患予測システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
動物を対象とする健康保険、いわゆるペット保険を運営する保険会社には、膨大な数の動物の写真と、その動物の写真撮影時以降の病歴が蓄積されており、本発明者らは、これらを用いて上記課題が解決できないかを検討してきた。その結果、動物の写真と病歴の記録を教師データとして人工知能を学習させると、動物の写真からその動物が将来疾患に罹患するかどうかを判定する予測モデルを生成できることを見いだし、本発明を関係するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[6]である。
[1]ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の疾患に罹患するかを予測判定する判定手段と、を備える疾患予測システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が疾患に罹患するかどうかの予測判定とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測システム。
[2]前記動物が、犬である[1]の疾患予測システム。
[3]前記入力画像が、動物の顔を正面から撮影した画像である[1]または[2]の疾患予測システム。
[4]保険の対象となる動物の顔画像を[1]〜[3]のいずれかの疾患予測システムに入力し、出力された疾患罹患の予測に応じて当該動物の保険料を決定する保険料算出システム。
[5]ヒトを除く動物の顔画像と、その動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを教師データとして用いて人工知能に学習させることを特徴とする疾患予測モデルの製造方法。
[6]ヒトを除く動物の顔画像を用意するステップと、
前記顔画像を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の顔画像から所定期間内にその動物が疾患に罹患するかどうかの予測を出力するステップと、を有する疾患予測方法であって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が所定期間内に疾患に罹患する予測とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡易な方法で、動物が将来疾患に罹患する可能性を判定する疾患予測システム等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明の保険料算出システムの一実施態様を表す構成概略図である。
【
図4】実施例の学習に用いた動物の顔画像(写真)である。
【
図5】実施例の学習に用いた動物の顔画像(写真)である。
【
図6】実施例の学習に用いた動物の顔画像(写真)である。
【
図7】実施例の学習に用いた画像の枚数とテスト結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[疾患予測システム]
本発明の疾患予測システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の疾患罹患の予測を判定し出力する判定手段と、を備える。
【0014】
[受付手段]
本発明の受付手段は、疾患への罹患を予測したい動物の顔画像の入力を受け付ける手段である。動物としては、犬、猫、ウサギ、フェレット等が挙げられる。画像の受付方法は、スキャン、画像データの入力、送信などいずれの方法であってもよい。顔画像のフォーマットは特に限定されないが、顔画像は、動物の顔を正面から撮影した写真であることが好ましく、
図1に表すような動物の顔が大きく写っている写真がより好ましい。そのような写真として、ヒトの運転免許証の写真のような写真が挙げられる。
図2のように、動物の健康保険証に用いられる画像も好ましい。画像は、白黒、グレースケール、カラーのいずれであってもよい。動物の顔全体が写っていない画像、画像編集ソフトウェアで形状が編集された画像、複数の動物が写っている画像、目や耳が判別出来ないほど顔が小さく写っている画像あるいは不鮮明な画像は好ましくない。画像については、ノーマライゼーションが施され、解像度等が統一されたものが好ましい。
【0015】
[判定手段]
本発明の判定手段は、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患罹患の事実とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が疾患に罹患する予測とする学習済みモデルを含む。
【0016】
前記学習済みモデルとしては、人工知能(AI)が好ましい。人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムであり、具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。人工知能としては、汎用型、特化型のいずれであってもよく、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のいずれであってもよく、公開されているソフトウェアを使用することができる。
【0017】
学習済みモデルを生成するために、人工知能を教師データを用いて学習させる。学習としては、機械学習とデイープラーニング(深層学習)のいずれであってもよいが、ディープラーニングが好ましい。ディープラーニングは、機械学習を発展させたものであり、特徴量を自動的に見つけ出す点に特徴がある。
【0018】
学習済みモデルを生成するための学習方法としては、特に制限されず、公開されているソフトウェアを用いることができる。例えば、NVIDIAが公開しているDIGITS (the Deep Learning GPU Training System)を用いることができる。その他、例えば、「サポートベクターマシン入門」(共立出版)等において公開されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等によって学習させてもよい。
【0019】
学習のための教師データは、動物の顔画像とその動物が顔画像撮影時から所定期間内に、好ましくは3年以内、より好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内に疾患に罹患したか、罹患しなかったかの罹患の有無である。教師データとしての動物の顔画像は、上記受付方法で説明した顔画像と同様である。当該動物が疾患に罹患したかどうかの情報は、例えば、保険請求の事実(「事故」ともいう)として、動物病院あるいは保険をかけた飼い主等から入手可能である。つまり、当該動物がペット保険をかけられた動物である場合、当該動物が病院にかかり疾患に罹患したとの診断を受ければ、動物病院あるいは飼い主(ペット保険の契約者)が、保険会社に対して疾患への罹患の事実とともに保険金支払いを請求するので、保険会社は当該動物が疾患に罹患したことを知ることができる。他方、顔画像の作成から所定時間経過までに保険金の請求がなければ、保険をかけられた当該動物はその期間疾患に罹患しなかったと判断することができる。
【0020】
学習済みモデルは、個々の疾患ごとに生成してもよく、複数の疾患をまとめて生成してもよい。個々の疾患ごとに学習済みモデルを生成する場合には、特定の疾患に罹患した動物について、当該疾患への罹患から所定期間前に撮影された顔画像と、当該疾患に罹患したこと、比較対象として顔画像撮影から所定期間疾患に罹患しなかった動物の顔画像と、所定期間疾患に罹患しなかったことを教師データとして学習を行う。複数の疾患をまとめて学習させる場合には、教師データとして、ある疾患に罹患した動物とその罹患から所定期間前に撮影された顔画像、その疾患とは別の疾患に罹患した動物とその罹患から所定期間前に撮影された顔画像、さらに別の疾患に罹患した動物とその罹患から所定期間前に撮影された顔画像、というように、複数の種類の教師データを用意すればよい。
【0021】
[疾患]
本発明において対象となる疾患の種類は特に限定されず、例えば、眼科系疾患、耳科系疾患、皮膚系疾患が挙げられる。眼科系疾患としては、結膜炎、目やに、角膜炎、角膜潰瘍/びらん、流涙症、白内障、緑内障が挙げられる。耳科系疾患としては、外耳炎、中耳炎が挙げられる。皮膚系疾患としては、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、膿皮症が挙げられる。
【0022】
[出力]
本発明の判定手段は、入力情報として、動物の顔画像を受け付けると、上記学習済みモデルによって、当該動物が顔画像撮影時から所定期間内、好ましくは3年以内、より好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内に疾患に罹患するかどうかの予測判定を行う。
出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンの画面上において、「今後1年以内に疾患に罹患する可能性あり」、あるいは、「今後1年以内に疾患に罹患する可能性は低い」といった表示をすることで予測判定を出力することができる。
個々の疾患に特定した学習済みモデルを生成した場合には、画像受付後所定期間内に当該疾患に罹患するかどうかの予測判定を行う。複数の疾患を含めて学習済みモデルを生成した場合には、画像受付後所定期間内に、教師データに含まれていた疾患のうちの特定の疾患に罹患するかどうかの予測判定を行う。
本発明の疾患予測システムは、判定手段から判定結果を受信し、判定結果を出力する出力手段を別途有していてもよい。
【0023】
[保険料算出システム]
本発明の保険料算出システムは、保険の対象となる動物の顔画像を上記の疾患予測システムに入力し、出力された疾患罹患の予測に応じて当該動物の保険料を決定するものである。保険料の決定には、疾患罹患の予測のほか、当該動物の種類、年齢、性別、体重等の情報を用いてもよい。
以下、本発明の保険料算出システムの一実施態様を
図3を参照しながら説明する。
【0024】
図3中、端末40は、保険契約者(ユーザ)が利用する端末である。端末40は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末などが挙げられる。端末40は、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。
保険契約者は、端末40から、サーバにアクセスし、保険の対象となる動物の顔画像(写真)、及び、当該動物の種類、品種、写真撮影時の年齢、体重、既往歴などの情報を入力、送信する。
また、保険契約者は、端末40がサーバにアクセスすることによって、サーバにおける疾患予測結果や保険料算出結果を受信することができる。
【0025】
本実施形態においては、サーバはコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。
【0026】
記憶部10は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。記憶部10には、サーバの各部を動作させるための情報処理プログラムが記憶され、特に、判定手段(学習済みモデル)11と、必要に応じて保険料算出手段12が記憶される。保険料の算出を目的とせず、単に疾患への罹患の予測を出力する疾患予測システムとして構成する場合には保険料算出手段12は無くてもよい。
【0027】
判定手段(学習済みモデル)11は、上記のように、保険契約者が入力した保険対象となる動物の顔画像を入力とし、当該画像に含まれる動物が写真撮影時又は顔画像入力時から所定期間内(例えば1年以内)に特定の疾患に罹患するかどうかの予測を出力するものである。本実施形態における判定手段(学習済みモデル)11は、例えばディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。
【0028】
保険料算出手段12は、上記判定手段11が出力した疾患の罹患の予測と、保険契約者が入力した当該動物の種類、品種、写真撮影時の年齢、体重、既往歴などの情報から、当該動物の保険料を算出するソフトウェアである。例えば、ソフトウェアは、当該動物の種類、品種、写真撮影時の年齢、体重、既往歴等に応じて、保険料の等級分けを行い、最後に、上記判定手段11が出力した疾患の罹患の予測を加味して当該等級を修正し、最終的な保険料を算出するためのソフトウェアである。
保険料算出手段12と判定手段(学習済みモデル)11は一つのソフトウェアであってもよい。
【0029】
処理演算部20は、記憶部に記憶された判定手段(学習済みモデル)11や保険料算出手段12を用いて、疾患の罹患の予測や保険料を算出する。
【0030】
インターフェース部(通信部)30は、受付手段31と出力手段32を備え、保険契約者の端末から、動物の顔画像やその他の情報を受け付け、保険契約者の端末に対して、疾患の罹患の予測や保険料の算出結果を出力する。
【0031】
本実施形態の保険料算出システムにより、保険契約者は、ペットの健康保険証を作成するための写真をサーバにアップロードすることで、ペットの健康保険証が作成されると同時に、ペットの保険料や将来の疾患の罹患の予測結果を得ることができる。
【実施例】
【0032】
トイプードルの顔写真(一例として、
図4〜
図6のカラー写真。256×256ピクセルに統一した。)を
図7の表記載の枚数用いて、ディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。
人工知能(ニューラルネットワーク)としては、GoogleNetを用い、学習用ソフトウェアとして、NVIDIA DIGITS Ver.3.0.0を用い、写真データを疾患への罹患の有無でラベル付けをしてディープラーニングを行った。
【0033】
眼科系疾患については、教師データ用写真として、写真撮影後1年以内に眼科系疾患に罹患したトイプードルの写真を4800枚、1年以内に眼科系疾患に罹患しなかったトイプードルの写真を4800枚用いて学習済みモデルAの生成を行った。
生成された学習済みモデルAについて、学習用に用いた9600枚の写真のうち、2400枚を用いてテストを行ったところ、眼科系疾患の有無の判定の正答率(実際に1年以内に疾患に罹患した動物の写真を「疾患罹患あり」と判定した写真の枚数と、実際に1年以内に疾患に罹患しなかった動物の写真を「疾患罹患なし」と判定した写真の合計枚数の、全体の枚数に対する割合)は70.5%であった。
【0034】
耳科系疾患については、教師データ用写真として、写真撮影後1年以内に耳科系疾患に罹患したトイプードルの写真を6400枚、1年以内に耳科系疾患に罹患しなかったトイプードルの写真を6400枚用いて学習済みモデルBの生成を行った。
生成された学習済みモデルBについて、学習用に用いた12800枚の写真のうち、3200枚を用いてテストを行ったところ、耳科系疾患の有無の判定の正答率は56.4%であった。
【0035】
皮膚系疾患については、教師データ用写真として、写真撮影後1年以内に皮膚科系疾患に罹患したトイプードルの写真を6400枚、1年以内に皮膚科系疾患に罹患しなかったトイプードルの写真を6400枚用いて学習済みモデルCの生成を行った。
生成された学習済みモデルCについて、学習用に用いた12800枚の写真のうち、3200枚を用いてテストを行ったところ、皮膚科系疾患の有無の判定の正答率は64.9%であった。
【0036】
上記で生成された学習済みモデルA〜Cについて、教師用データとして用いなかったトイプードルの画像を用いて判定を行った。
【0037】
眼科系疾患については、教師用データとして用いなかったトイプードルの画像を4066枚使用し、うち、2033枚が眼科系疾患に罹患しなかったトイプードルの画像(「事故なし」)であり、2033枚が撮影から1年以内に眼科系疾患に罹患したトイプードルの画像(「事故あり」)であった。学習済みモデルAは、トイプードルの疾患の予測として、正答率が70.1%であった。
【0038】
耳科系疾患については、教師用データとして用いなかったトイプードルの画像を4000枚使用し、うち、2000枚が耳科系疾患に罹患しなかったトイプードルの画像(「事故なし」)であり、2000枚が撮影から1年以内に耳科系疾患に罹患したトイプードルの画像(「事故あり」)であった。学習済みモデルBは、トイプードルの疾患の予測として、正答率が55.0%であった。
【0039】
皮膚科系疾患については、教師用データとして用いなかったトイプードルの画像を4000枚使用し、うち、2000枚が皮膚科系疾患に罹患しなかったトイプードルの画像(「事故なし」)であり、2000枚が撮影から1年以内に皮膚科系疾患に罹患したトイプードルの画像(「事故あり」)であった。学習済みモデルCは、トイプードルの疾患の予測として、正答率が63.9%であった。
【手続補正書】
【提出日】2020年4月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の疾患に罹患するかを予測判定する判定手段と、を備える疾患予測システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が疾患に罹患するかどうかの予測判定とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測システム。
【請求項2】
前記動物が、犬である請求項1記載の疾患予測システム。
【請求項3】
前記入力画像が、動物の顔を正面から撮影した画像である請求項1または2記載の疾患予測システム。
【請求項4】
保険の対象となる動物の顔画像を請求項1〜3のいずれか一項記載の疾患予測システムに入力し、出力された疾患罹患の予測に応じて当該動物の保険料を決定する保険料算出システム。
【請求項5】
ヒトを除く動物の顔画像からその動物が所定期間内に疾患に罹患するかどうかの予測をする学習済みモデルの生成方法であって、教師データとして、ヒトを除く動物の顔画像と、その動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを人工知能を含むコンピュータに入力し、人工知能に学習させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
ヒトを除く動物の顔画像を用意するステップと、
前記顔画像を学習済みモデルに入力し、コンピュータが前記学習済みモデルを用いて、前記入力された動物の顔画像から所定期間内にその動物が疾患に罹患するかどうかの予測を出力するステップと、を有する疾患予測方法であって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時から所定期間内の疾患への罹患の有無とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物が所定期間内に疾患に罹患する予測とする学習済みモデルであることを特徴とする疾患予測方法。