特開2021-6839(P2021-6839A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000015
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000016
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000017
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000018
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000019
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000020
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000021
  • 特開2021006839-画像形成装置 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-6839(P2021-6839A)
(43)【公開日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20201218BHJP
   G03G 15/14 20060101ALI20201218BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20201218BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20201218BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20201218BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20201218BHJP
【FI】
   G03G21/00
   G03G15/14 101Z
   G03G5/147
   G03G5/147 502
   G03G9/097 372
   G03G9/087
   G03G9/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-120450(P2019-120450)
(22)【出願日】2019年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】井加田 洸輔
(72)【発明者】
【氏名】新藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】中田 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 恒
【テーマコード(参考)】
2H068
2H134
2H200
2H500
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA08
2H068BB07
2H068BB08
2H068BB57
2H068FA16
2H068FC01
2H068FC05
2H068FC08
2H134GA01
2H134GB02
2H134KF05
2H134KG01
2H134KG02
2H134KG03
2H134KG07
2H134KG08
2H134LA00
2H134LA01
2H134LA02
2H200FA02
2H200GA12
2H200GA16
2H200GA23
2H200GA31
2H200GA44
2H200GA47
2H200GA56
2H200GB12
2H200GB21
2H200GB37
2H200HA02
2H200HB12
2H200JA01
2H200JA21
2H200JB02
2H200JC03
2H200MA02
2H200MA04
2H200MA12
2H200MA13
2H200MA17
2H200MA20
2H200MC20
2H200NA01
2H200PA02
2H500AA01
2H500AA10
2H500CA16
2H500CA23
2H500CA34
2H500CA36
2H500EA37B
2H500EA52D
2H500EA60A
2H500FA09
(57)【要約】
【課題】 感光体表面の金属石鹸量を維持することによって画像流れの発生を抑制する。
【解決手段】 記録材にトナー像を形成するための画像形成動作と、トナー収容部に収容されたトナーを現像部材から像担持体の表面に供給することによって像担持体の表面に金属石鹸を塗布する塗布動作と、を実行する画像形成装置において、塗布動作における像担持体の表面移動速度の方が画像形成動作における像担持体の表面移動速度より小さく、且つ、塗布動作における現像部材の表面移動速度と像担持体の表面移動速度との速度差の方が画像形成動作における速度差より大きくする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体であって、
前記像担持体の表面を帯電する帯電部材と、
金属石鹸を含有するトナーを収容するトナー収容部と、
前記像担持体と対向する現像部において前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の前記表面に前記トナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、
前記現像部材の表面移動速度が前記像担持体の表面移動速度より大きくなるように、前記像担持体の回転速度を制御する制御部と、を有し、
記録材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、前記トナー収容部に収容された前記トナーを前記現像部材から前記像担持体の表面に供給することによって前記像担持体の表面に前記金属石鹸を塗布する塗布動作と、を実行する画像形成装置において、
前記制御部は、前記塗布動作における前記像担持体の表面移動速度の方が前記画像形成動作における前記像担持体の表面移動速度より小さく、且つ、前記塗布動作における前記現像部材の表面移動速度と前記像担持体の表面移動速度との速度差の方が前記画像形成動作における前記速度差より大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体の回転軸線方向において、前記像担持体の表面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0.10≦Rz≦0.70(μm)であり、且つ前記像担持体の前記表面の凹凸の平均間隔(Sm)の範囲が0<Sm≦70(μm)であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像部材は、前記画像形成動作と前記塗布動作とで異なる表面移動速度で回転することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体であって、前記像担持体の回転軸線方向において、前記像担持体の表面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0.10≦Rz≦0.70(μm)であり、且つ前記像担持体の前記表面の凹凸の平均間隔(Sm)の範囲が0<Sm≦70(μm)である像担持体と、
前記像担持体の前記表面を帯電する帯電部材と、
金属石鹸を含有するトナーを収容するトナー収容部と、
前記像担持体と対向する現像部において前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の前記表面に前記トナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、
前記現像部材の表面移動速度が前記像担持体の表面移動速度より大きくなるように、前記像担持体の回転速度と前記現像部材の回転速度のうち少なくとも一方を制御する制御部と、を有し、
記録材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、前記トナー収容部に収容された前記トナーを前記現像部材から前記像担持体の表面に供給することによって前記像担持体の表面に前記金属石鹸を塗布する塗布動作と、を実行する画像形成装置において、
前記制御部は、前記塗布動作における前記現像部材の表面移動速度と前記像担持体の表面移動速度との速度差の方が前記画像形成動作における前記速度差より大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部材に帯電電圧を印加する第1の電圧印加部と、
前記現像部材に現像電圧を印加する第2の電圧印加部と、を有し、
前記現像部における前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面の表面電位と、前記第2の電圧印加部によって前記現像部材に印加される前記現像電圧と、の差をバックコントラストとしたときに、前記制御部は、前記塗布動作における前記バックコントラストが前記画像形成動作におけるバックコントラストより大きくなるように制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像部材と接触して接触部を形成し、前記接触部において前記トナーを供給するトナー供給部材と、
前記トナー供給部材にトナー供給電圧を印加する第3の電圧印加部と、を有し、
前記制御部は、前記塗布動作において、前記金属石鹸に前記トナー供給部材から前記現像部材に向かう方向の静電気力が作用する向きの電位差が前記接触部に形成されるように前記第2の電圧印加部と前記第3の電圧印加部と、を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像部材は、前記画像形成動作と前記塗布動作とで異なる表面移動速度で回転することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体は、前記画像形成動作と前記塗布動作とで異なる表面移動速度で回転することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電部材と、
金属石鹸を含有するトナーを収容するトナー収容部と、
前記像担持体と対向する現像部において前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に前記トナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、
前記帯電部材に帯電電圧を印加する第1の電圧印加部と、
前記現像部材に現像電圧を印加する第2の電圧印加部と、
前記第1の電圧印加部と前記第2の電圧印加部とを制御する制御部と、を有し、
記録材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、前記トナー収容部に収容された前記トナーを前記現像部材から前記像担持体の表面に供給することによって前記像担持体の表面に前記金属石鹸を塗布する塗布動作と、を実行する画像形成装置において、
前記現像部における前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面の表面電位と、前記第2の電圧印加部によって前記現像部材に印加される前記現像電圧と、の差をバックコントラストとしたときに、前記制御部は、前記塗布動作における前記バックコントラストが前記画像形成動作におけるバックコントラストより大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記現像部材の表面移動速度が前記像担持体の表面移動速度より大きくなるように、前記像担持体の回転速度と前記現像部材の回転速度のうち少なくとも一方を制御し、前記塗布動作における前記現像部材の表面移動速度と前記像担持体の表面移動速度との速度差の方が前記画像形成動作における前記速度差より大きくなるように制御することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像部材は、前記画像形成動作と前記塗布動作とで異なる表面移動速度で回転することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記像担持体は、前記画像形成動作と前記塗布動作とで異なる表面移動速度で回転することを特徴とする請求項10または11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記像担持体の回転軸線方向において、前記像担持体の表面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0.10≦Rz≦0.70(μm)であり、且つ前記像担持体の前記表面の凹凸の平均間隔(Sm)の範囲が0<Sm≦70(μm)であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記現像部材と接触して接触部を形成し、前記接触部において前記トナーを供給するトナー供給部材と、
前記トナー供給部材にトナー供給電圧を印加する第3の電圧印加部と、を有し、
前記制御部は、前記塗布動作において、前記金属石鹸に前記トナー供給部材から前記現像部材に向かう方向の静電気力が作用する向きの電位差が前記接触部に形成されるように前記第2の電圧印加部と前記第3の電圧印加部と、を制御することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記塗布動作において、前記現像部材は前記現像部において前記像担持体と接触することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記トナーは、有機ケイ素重合体を含有し、
前記有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子が1個以上3個以下であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記有機ケイ素重合体が、R−SiO3/2(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記Rが炭素数1以上3以下の炭化水素基であることを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記像担持体と接触して転写部を形成し、前記転写部において前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を担持する中間転写体と、
前記中間転写体に担持された前記トナー像を記録材に転写する転写部材と、
前記像担持体の回転方向において前記像担持体における前記転写部の下流側で、且つ前記帯電部の上流側の前記像担持体の表面を露光する露光ユニットと、を有し、
前記制御部は、前記塗布動作における前記露光ユニットの露光量が、前記画像形成動作における前記露光ユニットの露光量より小さくなるように制御することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記塗布動作において前記露光ユニットによる露光を行わないことを特徴とする請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記金属石鹸は、金属種が、亜鉛、カルシウム、マグネシウムのうち少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記金属石鹸は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのうち少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記金属石鹸は、粒径が0.15μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記像担持体は、最表層にアクリル樹脂から構成される保護層を有することを特徴とする請求項1乃至23のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。ここで、画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録材(記録媒体)に画像を形成するものである。画像形成装置の例としては、複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ、及び、これらの複合機(マルチファンクションプリンタ)などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において用いられる電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)としては、低価格及び高生産性の利点から、有機感光体が普及している。これは、光導電性物質(電荷発生物質や電荷輸送物質)として有機材料を用いた感光層(有機感光層)が支持体上に設けられて構成される。
【0003】
感光体には、帯電、露光、現像、転写、クリーニングのそれぞれの工程において、電気的外力や機械的外力が直接加えられるため、これら外力に対する耐久性が要求される。具体的には、これら外力による表面の傷や摩耗の発生に対する耐久性、すなわち、耐傷性及び耐摩耗性が要求される。
【0004】
しかしながら、感光体の摩耗を抑制すると、感光体表面がリフレッシュされにくくなり、特に高湿環境下において、「画像流れ」と呼ばれる静電潜像のボケが生じやすくなる。画像流れは、主に、帯電による感光体表面での放電によって発生するオゾンやNOxなどの放電生成物が感光体の表面に付着することによって、感光体の表面抵抗が低下することが原因で発生する。感光体の摩耗を抑制するために、感光体の表面の摩擦係数を低くし高硬度とすると、表面が削れにくくなることで、表面に付着した放電生成物が除去されにくい。その結果として、感光体の表面に付着した放電生成物が高湿環境下で吸湿して低抵抗化し、感光体の表面の電荷保持能力を低下させ、画像流れが発生する。
【0005】
画像流れの発生を防止する方法として、特許文献1では、現像剤中に金属石鹸を含有させ、現像剤担持体から感光体表面に金属石鹸を供給する方法が提案されている。この方法では、金属石鹸であるステアリン酸亜鉛を現像剤担持体により感光体の表面に供給し、感光体の表面をステアリン酸亜鉛で被覆することで放電生成物の付着を抑制し、画像流れの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−121833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法によって感光体上に供給された金属石鹸が、感光体の回転によってクリーニング手段などの感光体に接触している部材に掻き取られてしまうことによって、画像流れが発生することがあった。
【0008】
以上の状況を鑑みて、本発明の目的は、感光体表面の金属石鹸量を維持することによって画像流れの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、回転可能な像担持体であって、前記像担持体の表面を帯電する帯電部材と、金属石鹸を含有するトナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体と対向する現像部において前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の前記表面に前記トナーを供給してトナー像を形成する現像部材と、前記現像部材の表面移動速度が前記像担持体の表面移動速度より大きくなるように、前記像担持体の回転速度を制御する制御部と、を有し、記録材に前記トナー像を形成するための画像形成動作と、前記トナー収容部に収容された前記トナーを前記現像部材から前記像担持体の表面に供給することによって前記像担持体の表面に前記金属石鹸を塗布する塗布動作と、を実行する画像形成装置において、前記制御部は、前記塗布動作における前記像担持体の表面移動速度の方が前記画像形成動作における前記像担持体の表面移動速度より小さく、且つ、前記塗布動作における前記現像部材の表面移動速度と前記像担持体の表面移動速度との速度差の方が前記画像形成動作における前記速度差より大きくなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、感光体表面の金属石鹸量を維持することによって画像流れの発生を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における画像形成装置の概略断面図である。
図2】実施例1におけるプロセスカートリッジの断面図である。
図3】実施例1における画像形成装置の制御様態を示す概略ブロック図である。
図4】実施例1におけるトナーの概略図である。
図5】実施例1におけるフローチャート図である。
図6】実施例3における粗面化処理した感光体表面の概略図である。
図7】実施例3における感光体表面を研磨する研磨装置の概略図である。
図8】実施例4における有機ケイ素化合物を含む表層の表層厚さの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【実施例1】
【0013】
1.画像形成装置
本実施例における電子写真画像形成装置の全体構成について説明する。図1は、実施例1の画像形成装置100の概略断面図である。実施例1の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザプリンタである。画像形成装置100は、画像情報にしたがって、記録材S(たとえば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することが出来る。画像情報は、画像形成装置100に接続された画像読み取り装置(不図示)、或いは、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器(不図示)から、画像形成装置100に入力される。
【0014】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。
【0015】
実施例1では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に併設された4個のドラム型の電子写真感光体(以下、感光体1)を有し、感光体1と画像形成部が一体化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。
静電潜像を担持する像担持体としての感光体1は、駆動手段(不図示)により回転駆動される。帯電部材たる帯電ローラ2は、導電性芯金と導電性ゴム層からなる単層ローラであって、外径φ7.5mm、体積抵抗率10〜10Ω・cmである。そして、後述する高圧電源としての帯電電圧印加部である帯電高圧71によって、帯電ローラ2に−1000Vの帯電電圧を印加することで、感光体1の表面は−500Vに一様に帯電される。帯電ローラ2にはVd+VthからなるDC(直流)電圧が印加されており、放電によって感光体1上を帯電電位Vdで一様に帯電する。この時のVdを暗部電位といい、−500Vである。Vthは放電開始電圧であり、印加する帯電電圧が小さいときは、感光体1上の表面電位は放電によっては増加しないが、放電開始電圧Vthから放電により表面電位が増加し始める。つまり、本実施例における放電開始電圧Vthは−500Vである。
【0016】
帯電ローラ2によって感光体1の表面を帯電した後、感光体1の表面には露光ユニット30からレーザ光が照射される。露光ユニット30は、画像情報に基づきレーザを照射して、感光体1の表面上に静電潜像を形成する露光手段である。レーザ光が照射された感光体1の表面は明部電位であるVlとして−100Vへと表面電位が変化し、静電潜像が形成される。
【0017】
図2は、感光体1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た実施例1のプロセスカートリッジ7の断面図である。プロセスカートリッジ7は、現像ユニット3と感光体ユニット13によって構成されている。現像ユニット3には、現像部材たる現像ローラ4、トナー供給部材たるトナー供給ローラ(以下、「供給ローラ」という)5がそれぞれ配置されている。不図示の駆動モータの駆動力を受けることによって、現像ローラ4は図2中矢印D方向に、供給ローラ5は図2中矢印R方向に、それぞれ回転を始める。そして、現像電圧印加部としての現像高圧72から現像ローラ4に現像電圧として−300Vの電圧が印加されることで、感光体1の表面上に形成された静電潜像、すなわち、上記のVl部に対して現像ローラ4によって現像剤(トナー)が供給されて現像される。
【0018】
感光体1の表面に現像された現像剤像(トナー像)は、図1に示した中間転写ベルト31に転写される。各画像形成部の感光体1に対向して、感光体1上のトナー像を記録材Sに転写するための中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト31は、各画像形成部の感光体1に当接し、図1中矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。
【0019】
中間転写ベルト31の内周面側には、各感光体1に対向するように、一次転写手段としての転写部材たる一次転写ローラ32がそれぞれ配置されている。そして、一次転写ローラ32に、一次転写電圧印加部としての一次転写電圧電源(一次転写高圧)73から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光体1上のトナー像が中間転写ベルト31上に転写(一次転写)される。本実施の形態におけるトナーの極性は、正規極性を負極性としている。したがって、一次転写電圧として正極性の電圧が印加されることで一次転写を行うことが出来る。
【0020】
また、中間転写ベルト31の外周面側において二次転写手段としての二次転写ローラ33が配置されている。そして、二次転写ローラ33に、二次転写電圧印加部としての二次転写電圧電源(二次転写高圧)74から、トナーの極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト31上のトナー像が記録材Sに転写(二次転写)される。例えば、フルカラー画像形成時には、上述のプロセスが、画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次行われ、中間転写ベルト31上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト31の移動と同期して記録材Sが二次転写部へと搬送される。そして、記録材Sを介して中間転写ベルト31に当接している二次転写ローラ33の作用によって、中間転写ベルト31上の4色トナー像は、一括して記録材S上に二次転写される。
【0021】
トナー像が転写された記録材Sは、定着装置34に搬送される。定着装置34において記録材Sに熱および圧力を加えることで、記録材Sにトナー像が定着され、記録材Sは画像形成装置100の外に排出される。
【0022】
一方、中間転写ベルト31にトナーを転写した後の感光体1の表面電位は、一次転写電圧を受けたことにより不均一となっている。そこで、前露光手段である前露光ユニット27で感光体1の表面を全面露光(全面光照射)することにより、前回の画像形成によって不均一となった感光体1の表面電位を一様に均す。即ち、感光体1の表面の残留電荷を除去するように感光体1の表面に光を照射する。前露光ユニット27は、中間転写ベルト31と感光体1の当接位置である転写部よりも感光体1の回転方向下流側で、帯電ローラ2と感光体1の当接位置である帯電部よりも感光体1の回転方向上流側の間に配設され、その対向部である感光体1の表面を露光する。前露光ユニット27の光源としてはLED、ハロゲンランプ等を用いることが出来る。使用する光源は特に限定されないが、駆動電圧が低く、また装置の小型化が容易という観点から、LEDを用いるのが好ましいため、本実施例では、前露光光源としてLEDを用いた。
【0023】
又、一次転写ローラ32によって転写されずに感光体1の表面に残存したトナーは、感光体1と接触するクリーニングブレード8によって感光体1の表面から掻き取られ、クリーニングブレード8の下方に設けられた廃トナー収容室9へ収容される。二次転写ローラ33で記録材Sに転写されず、中間転写ベルト31上に残留したトナーはクリーニング装置としての中間転写体用クリーニング装置35に搬送され、除去される。
【0024】
2.画像形成装置の制御様態
図3は、本実施例における画像形成装置100の要部の概略制御態様を示すブロック図である。制御部202は画像形成装置100の動作を制御する手段であり、各種の電気的情報信号の授受をする。また、各種のプロセス機器やセンサから入力する電気的情報信号の処理、各種のプロセス機器への指令信号の処理を行う。コントローラ200は、ホスト装置との間で各種の電気的な情報の授受をすると共に、画像形成装置100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って、インターフェース201を介して制御部202で統括的に制御する。制御部202は、様々な演算処理を行う中心的素子であるCPU155、記憶素子であるRAM、ROMなどのメモリ15などを有して構成される。RAMには、センサの検知結果、カウンタのカウント結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め実験などにより得られたデータテーブルなどが格納されている。制御部202には、画像形成装置100における各制御対象、センサ、カウンタなどが接続されている。制御部202は、各種の電気的情報信号の授受や、各部の駆動のタイミングなどを制御して、所定の画像形成シーケンスの制御などを行う。例えば、感光体1の表面にトナー像を形成するために以下の高圧電源ならびに装置を制御する。帯電電源としての帯電高圧71、現像電源としての現像高圧72、トナー供給電圧を供給する供給ローラ5の電源としての供給高圧75、トナー規制部材たる現像ブレード6の電源としての現像ブレード高圧76、露光ユニット30などの制御を行う。さらに、記録材Sにトナー像を形成するための、一次転写電源としての一次転写高圧73、二次転写電源としての二次転写高圧74などの制御を行う。その他、現像ローラ4と感光体1の当接離間を司る接離機構50の制御を行う。本実施例において、制御部202は、詳しくは後述する金属石鹸塗布動作を行うために、上記高圧などを制御する。
【0025】
3.プロセスカートリッジの概略構成
実施例1の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について、図2を用いて説明する。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100に設けられた不図示の装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。実施例1では、各色用のプロセスカートリッジ7はすべて同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー10が収容されている。実施例1では、プロセスカートリッジ7について説明するが、現像ユニット3が単独で画像形成装置100に着脱可能とする現像カートリッジを有する構成としても良い。
【0026】
尚、実施例1では、収容しているトナー10の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
【0027】
プロセスカートリッジ7は、現像ローラ4等を備えた現像ユニット3と、感光体1を備えた感光体ユニット13とを有する。
【0028】
本実施形態では、現像ユニット3と感光体ユニット13を一体化してプロセスカートリッジ7としているが、これに限らず、それぞれを現像カートリッジ、感光体カートリッジとして画像形成装置100に着脱自在な構成としてもよい。
【0029】
現像ユニット3は、現像室3aとトナー収容部3bに大別される。トナー収容部3bには、トナー10を現像室3aに搬送するためのトナー搬送部材22が設けられており、図中矢印Gの方向へ回転することによってトナー10を現像室3aへと搬送している。
【0030】
現像室3aには、感光体1と接触して図示矢印D方向に回転するトナー担持体としての現像ローラ4が設けられている。実施例1では、現像ローラ4と感光体1とは、対向する現像部において互いの表面が同一方向に移動するようにそれぞれ回転する。
【0031】
また、現像室3aの内部には、トナー収容部3bから搬送されたトナー10を現像ローラ4に供給する供給ローラ5と、供給ローラ5によって供給された現像ローラ4上のトナー10のコート量規制及び電荷付与を行うトナー規制部材6が配置されている。
【0032】
現像ローラ4、供給ローラ5、トナー規制部材6には高圧電源からそれぞれ独立した電圧が印加される。供給ローラ5によって現像ローラ4に供給されたトナー10は、現像ローラ4とトナー規制部材6との間での摺擦により摩擦帯電され、電荷を付与されると同時に層厚が規制される。規制された現像ローラ4上のトナー10は、現像ローラ4の回転により、感光体1との対向部に搬送され、感光体1上の静電潜像をトナー像として現像、可視化する。
【0033】
本発明では、現像ローラ4に印加される所定のDC電圧(現像電圧:Vdc)を−300Vとした。また、供給ローラ5に電圧(供給電圧:Vr=−250V)を印加することで、供給ローラ5と現像ローラ4との電位差(ΔVr)を調整し、現像ローラ4へのトナー10の供給量を調整することが出来る。本実施例ではΔVr=Vdc−Vrを−50Vとした。
【0034】
実施例1では、感光体1上の静電潜像をトナー像として現像、可視化する際、現像ローラ4は感光体1の周面上に接触するようにして回転駆動される。これは、後述するトナーに外添された金属石鹸を感光体1上に供給しやすくするためである。金属石鹸を供給することが出来る構成であれば、現像ローラ4と感光体1とが接触する構成に限られない。
【0035】
ここで、以降の説明においては、電位や印加電圧に関し、負極性側に絶対値が大きい(例えば−500Vに対して−1000V)ことを電位が高いと称し、負極性側に絶対値が小さい(例えば−500Vに対して−300V)ことを電位が低いと称する。これは、本実施例における負帯電性を持つトナー10を基準として考えるためである。
【0036】
また、本実施例での電圧は、アース電位(0V)との電位差として表現される。したがって、現像電圧=−300Vは、アース電位に対して、現像ローラ4の芯金に印加された現像電圧によって、−300Vの電位差を有したと解釈される。これは、帯電電圧などその他の電圧に関しても同様である。
【0037】
感光体ユニット13には、軸受(不図示)を介して感光体1が回転可能に取り付けられている。感光体1は、不図示の駆動モータの駆動力を受けることによって、図2中の矢印A方向に回転駆動される。また、感光体ユニット13には、感光体1の周面上に接触するように、帯電ローラ2、板状弾性体としてのクリーニングブレード8が配置されている。クリーニングブレード8は一端が板状金属板金に固定されており、他方の自由端が感光体1に当接し、感光体1との当接部であるクリーニングニップを形成する。クリーニングブレード8により感光体1の表面を摺擦し、転写工程で残留したトナー10や微粒子を掻き取り、廃トナー収容室9に収容することによって、帯電ローラ2の汚染や感光体1へのトナー10の連れ周りによる画像弊害を防止する。
【0038】
4.感光体の構成
感光体1は円筒状で導電性を有する金属支持体と、支持体の下引き層としての導電層と、下引き層上に形成される感光層(電荷発生層、電荷輸送層)と、感光層上に形成される保護層からなっている。感光体1は、OPC(有機光半導体)、アモルファスセレン、アモルファスシリコン等の感光材料を、アルミニウムやニッケルなどで形成された外径φ24mmの支持体としてのシリンダ上のドラム基体上に設けて構成したものである。さらに、本実施例における感光体1は、耐摩耗性改善のため、最表層に耐摩耗性の保護層を設けている。保護層を設けることで、耐久性を向上することが出来る。
【0039】
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【0040】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0041】
また、保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0042】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。保護層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0043】
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。実施例1では、保護層の平均膜厚を3μmとした。
【0044】
5.トナーの構成
実施例1に用いたトナー10の模式図を図4に示す。実施例1では、母粒子45aに流動性の担保と帯電性の改善のため無機ケイ素45bを外添した無機粒子外添トナー45を用いている。実施例1で使用するトナーは、負に帯電極性をもつ非磁性1成分の粒重合トナーであり、平均粒径は7μmである。
【0045】
さらに、画像流れの抑制を目的として、無機ケイ素45bに加えて金属石鹸45cが外添される。金属石鹸45cを感光体1に供給して保護膜を形成することにより、放電生成物などの付着を軽減することが出来る。放電生成物は水分を含むと抵抗が下がる。そのため、放電生成物が付着する感光体1の表面は低抵抗になる。金属石鹸45cを感光体1の表面に供給することによって、感光体1の表面抵抗が低くなることにより生じる画像流れの発生を抑制することが出来る。
【0046】
金属石鹸45cは、長鎖脂肪酸と、ナトリウム・カリウム以外の金属塩の総称である。具体的には、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属種との金属塩が挙げられる。実施例1では、金属石鹸45cとして、ステアリン酸亜鉛を外添する。尚、金属石鹸45cの種類としてはこれに限定されるものではなく、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛なども適宜可能であり、少なくともこれらのうち一種を選定すればよい。
【0047】
金属石鹸45cの外添量は0.6wt%以下が望ましい。外添量が多いほど画像流れの抑制には効果があるが、過剰に外添するとトナーの流動性が悪化し、画像後半の画像濃度が低くなる。これは、ベタ黒画像を出力する際に、後端に近づくにつれて追従性が悪くなるベタ追従性不良と呼ばれる現象である。一方、金属石鹸45cの外添量は0.05wt%以上が望ましい。少ないと金属石鹸45cの効果が発現されにくくなる。
【0048】
金属石鹸45cの平均粒径は、0.15μm以上2.0μm以下であることが好ましい。金属石鹸45cの平均粒径が0.15μmより小さくなると、感光体1の表面に塗布されにくくなる。特に、後述する感光体1の表面に溝がある状態においては顕著となる。一方、粒径が2.0μmより大きくなると、現像ユニット3内のトナー規制部材6などを通過することが出来ずに現像室3a内に取り残され、感光体1の表面に供給されにくくなる。以降、本実施例におけるトナーとは、トナー母粒子45aと外添剤を合わせた総称を一般的なトナーと呼ぶ。
【0049】
金属石鹸45cの平均粒径の測定方法を説明する。金属石鹸45cを0.5gに10mLのエタノールを加え、日本精機株式会社製の超音波分散器を用いて5分間超音波分散を行った。次に、測定溶媒としてエタノールを循環させる。そして、日機装株式会社製マイクロトラック レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(SPA型)に、得られた金属石鹸45cの分散液を粒子の散乱光量積算値に関連する値であるDV(回折光量)値が0.6〜0.8になるまで添加した。そして、この状態における粒度分布を測定し、50%径である累積中位径として得られるメジアン径を平均粒径とした。
【0050】
上記平均粒径の金属石鹸45cは、例えば、脂肪酸塩水溶液と無機金属塩の水溶液又は分散液を反応させる複分解法を用いて製造するとよい。
【0051】
本実施例においては、平均粒径が0.60μmのステアリン酸亜鉛を用いた。金属石鹸45cとしてのステアリン酸亜鉛はトナーと逆極性に帯電させることでトナー粒子に付着されており、非画像形成時に感光体1上に供給される。
【0052】
次に、トナー粒子の製造方法について説明する。トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることが出来る。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法が好ましい。さらに、湿式製造法としては懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを用いてもよい。
【0053】
本実施例においては、懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においては、まず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、及び必要に応じて着色剤などその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。この工程を重合性単量体組成物の調製工程という。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることが出来る。懸濁重合法における重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示出来る。
【0054】
スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
【0055】
次に、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する。この工程を造粒工程という。造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることがトナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することが出来るため、好適に用いられる。
【0056】
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
【0057】
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。
【0058】
上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上2.00質量部以下使用することが好ましい。
【0059】
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用出来る。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0060】
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る。この工程を重合工程という。重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことが出来る。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことが出来る。
【0061】
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、一般的に油溶性開始剤が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる。
【0062】
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤。
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を併用してもよく、以下のものが挙げられる。
【0063】
過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
【0064】
これらの重合開始剤は単独又は複数を併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
【0065】
無機シリカの水洗移行量は、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を使用し、外添条件である外添添加量とはねの先端の回転速度(周速)とはねの回転している時間(時間)を変更することで対応した。以下、表1にトナーaの外添条件を示す。尚、外添条件である周速、時間についての詳細は特開2016−38591号公報の記載の通りである。また、本実施例に用いたトナーaにはステアリン酸亜鉛を0.20wt%外添した。
【0066】
【表1】
【0067】
6.放電生成物による感光体への影響
画像形成装置100を用いて画像形成動作を実行する際に、帯電ローラ2での放電を行うとオゾンやNOx等の放電生成物が発生し、感光体1の表面に付着することがある。放電生成物は、感光体1に当接するクリーニングブレード8などによって掻き取られるが、付着する量が掻き取る量より多い場合、繰り返しの画像形成動作によって、徐々に感光体1の表面に蓄積していく。接触帯電方式では、コロナ帯電器を用いたコロナ帯電方式と比べて放電量は少なく、放電生成物の発生量は少ない。しかし、放電生成物の発生位置が感光体1と帯電ローラ2との間の微小な空隙であるため、放電生成物の発生が少量であっても、放電生成物が感光体1の表面に付着しやすい。そして、感光体1の表面に放電生成物が付着すると吸湿し、感光体1の表面の電気抵抗が低下する。抵抗の低下により、帯電ローラ2による放電での感光体1上の電位形成に影響し、所望のVd、Vlを形成することが出来ない。すると、画像形成を適切に行うことが出来ず、画像弊害が発生する。主な画像弊害としては、画像の一部もしくは全域で潜像なまりにより発生する白抜けや画像境界部の輪郭ボケ、電位のずれによるかぶりなどが挙げられる。
【0068】
そこで、放電生成物の影響を低減させるために、本実施例においては感光体1の表面に金属石鹸45cを供給して感光体1の表面に放電生成物が付着することを抑制する。
【0069】
7.金属石鹸塗布動作
実施例1では、前述したとおり、現像ローラ4が感光体1に接触することで現像部において現像ニップを形成している。また、現像ローラ4の表面と感光体1の表面との間に表面移動速度差を設けることで、現像ニップ部でトナー10が回転し、感光体1へ金属石鹸45cが供給される。以下、感光体1の表面移動速度に対する現像ローラ4の表面移動速度の比をDD周速比と呼ぶ。感光体1に金属石鹸45cを塗布する上で、DD周速比を上げていくと画像流れが良化する傾向にある。これは、DD周速比が大きくなることでトナー10の転がりが多くなり、金属石鹸45cと感光体1との接触機会が増加するためであると考察することが出来る。また、DD周速比が100%以下では感光体1の単位面積当たりの現像ローラ4の接触面積が減少する方向なので、感光体1の表面への金属石鹸45cの供給量が減少するため、100%より大きいDD周速比であることが望ましい。すなわち、現像ローラ4の表面移動速度の方が、感光体1の表面移動速度より大きい状態であることが望ましい。尚、DD周速比は、感光体1の表面と現像ローラ4の表面との表面移動速度の違いを表現する1つの指標であり、例えばDD周速比に代わり表面移動速度差(DD周速差)を指標としてもよい。DD周速比やDD周速差を変更する際には、現像ローラ4の回転速度を変更させてもよいし、感光体1の回転速度を変更させてもよい。
【0070】
しかしながら、DD周速比が大きい状態で常に画像形成動作を実行していると、初期に金属石鹸45cを過剰供給してしまい、現像室3aやトナー収容部3bから金属石鹸45cが枯渇してしまう。それだけでなく、トナー10を摺擦する回数も増加してしまい、トナー10が劣化し、帯電性を阻害することになる。
【0071】
そこで、実施例1においては、通常の画像形成動作とは別に、金属石鹸塗布動作を用意し、金属石鹸塗布動作では、現像ローラ4を感光体1の表面に当接させた状態で回転させ、かつDD周速比を画像形成動作よりも大きくする。金属石鹸塗布動作中は、帯電電圧を印加して感光体1を暗部電位Vdになるように制御し、現像電圧を画像形成動作時と同じとすることで、いわゆる、ベタ白印字を実施する。
【0072】
金属石鹸塗布動作を実行するタイミングは、画像形成動作前の感光体1の回転中か、画像形成動作後の感光体1の回転中が好ましい。すなわち、画像形成動作を行わない非画像形成動作時に実行する。また、ユーザが指定したタイミングで行ってもよい。
【0073】
また、金属石鹸塗布動作中は、前露光ユニット27の光量を画像形成動作時よりも小さくすることが好ましく、特にOFFにするとよい。金属石鹸塗布動作中の前露光量が小さい方が、画像流れが良好であるためである。このような傾向を示す原因としては、以下のような現象が考えられる。前露光量を小さくすることで感光体1の表面には除電されず残存した電荷による残電が残る。よって、正規極性とは逆極性である、正極性の金属石鹸45cの感光体1に対する電気的付着力が強くなることで、感光体1の表面からはがれにくくなる。その状態で、クリーニングブレード8や現像ローラ4を感光体1上の金属石鹸45cが通過すると、金属石鹸45cが感光体1に物理的に押し込まれることにより強固に付着する。つまり、前露光量を画像形成動作時より小さくしたことで、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの感光体1への保持能力を上げて、金属石鹸45cを感光体1へ強固に付着させることが出来ると考えられる。一方、感光体1の表面に露光する露光量を大きくすると、正極性の金属石鹸45cの感光体1に対する電気的付着力が弱まり、感光体1の表面からはがれやすくなることがある。
【0074】
また、供給ローラ5の現像ローラ4に対する電位差ΔVr(=Vdc−Vr)を金属石鹸45cの極性と逆極性にすることが望ましい。すなわち、金属石鹸45cに供給ローラ5から現像ローラ4に向かう方向の静電気力が作用する向きの電位差が、供給ローラ5と現像ローラ4とが接触する接触部に形成されるように電位差ΔVrを制御するということである。ΔVrを金属石鹸45cが帯電された極性と逆極性にすることで現像ローラ4側に金属石鹸45cを移動させ、供給ローラ5側に金属石鹸45cが移動することを抑制することが出来るため、感光体1の表面上に多くの金属石鹸45cを供給することが出来る。本実施例では、ΔVr=−50V、金属石鹸45cは正極性に帯電しているので、金属石鹸45cは積極的に現像ローラ4側に移動することとなる。
【0075】
8.金属石鹸塗布動作の制御手順
次に、図5のフローチャートを参照して、金属石鹸塗布動作の制御手順について説明する。実施例1では、制御部202によって金属石鹸塗布動作が実行される。金属石鹸塗布動作を実行する一例として、画像形成動作後に実行する場合について説明する。
【0076】
画像形成装置100の画像形成準備が整い、ユーザによりプリント信号が入力されると(S1)、画像形成動作を実行する(S2)。画像形成動作が終了すると、現像ローラ4を感光体1から離間させて駆動を停止させ、各種電圧をOFFする(S3)。その後、金属石鹸塗布動作を実行する(S4)。
【0077】
まず、帯電電圧、現像電圧、現像ブレード電圧、供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させて、現像ローラ4を感光体1に当接させて金属石鹸塗布動作時間(T)の計測を開始する(S5)。所定の時間Tに達するまで金属石鹸塗布動作を実行し続け(S6)、所定の時間に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止させて、印加していた電圧をOFFにして(S7)、金属石鹸塗布動作を終了する(S8)。続いて、連続プリントの要求があるかを判断し(S9)、要求がない場合はプリント終了動作に移行し(S10)、要求がある場合は、連続プリントの要求がなくなるまで、S2〜S9の動作を繰り返す。本実施例においては、所定の時間Tを5秒とした。所定の時間Tは5秒に限られず、適宜設定することが出来る。
【0078】
尚、S4における金属石鹸塗布動作は、現像ローラ4の離間動作を行わずにS2の画像形成動作の直後に行ってもよく、各種電圧の印加や駆動をそのまま行った状態で実行してもよい。
【0079】
9.金属石鹸塗布動作の効果
本実施例に記載の金属石鹸塗布動作を実行した時の効果を確認した。金属石鹸塗布動作のDD周速比および電圧設定は表2に記載の通りである。また、動作実行頻度としては、画像形成枚数600枚到達時、金属石鹸塗布動作の実行時間は5秒とした。
【0080】
【表2】
【0081】
比較例1は実施例1に記載の金属石鹸塗布動作を実行しない。比較例2は、金属石鹸塗布動作のDD周速比を画像形成時と同じDD周速比(140%)と同じにして600枚ごとに5秒間実行した。実施例1は、金属石鹸塗布動作のDD周速比を画像形成時より大きい300%に設定し、電圧設定を画像形成時と同様に設定した。
【0082】
以下に、実際の効果確認の結果を示す。実施例1、比較例1、比較例2、の画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。一日放置後で評価する理由としては、感光体1の表面上に生成した放電生成物が、一日放置することで十分に吸湿し、感光体1の表面抵抗を下げる影響が顕著に出るからである。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。評価指標は以下の通りである。
【0083】
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
△:軽微に発生 画像の一部で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
×:発生 画像の全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は80000枚まで行なった。すなわち、金属石鹸塗布動作を合わせて約130回行った結果となる。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3に示すように、比較例1では、20000枚までは良好なものの、40000枚で画像流れが発生している。初期は、金属石鹸45cがトナー10と共に供給されるため画像流れは良好だが、画像形成を繰り返していくと、供給可能な金属石鹸45cの量に比べて、感光体1の表面に留まる金属石鹸45cの方が少なくなる。そのため、画像形成動作のみでは金属石鹸45cの供給が間に合わなくなったため画像流れが発生したと考えられる。
【0086】
比較例2においては、比較例1と比較すると20000枚延命したが、60000枚で画像流れが発生する結果となった。金属石鹸塗布動作を実行した分、比較例1に比べて延命した。しかし、金属石鹸塗布動作でのDD周速比が画像形成動作時と変わらないので、金属石鹸塗布動作中に金属石鹸45cを十分に塗布することが出来ず、金属石鹸塗布動作の効果が発揮されなかったため、画像流れが発生したと考えられる。
【0087】
これに対して、実施例1では画像流れは80000枚まで良好であった。これは、金属石鹸塗布動作においてDD周速比アップの効果によって積極的に感光体1の表面へ金属石鹸45cが供給されたことによって、画像流れを抑制する効果が発現したためと考えられる。
【0088】
金属石鹸45cを外添したトナー10は画像流れに有効だが、画像形成を繰り返していくと供給可能な金属石鹸45cが不足し、十分に画像流れを抑制することが出来なかった。しかし、本実施例の構成においては、トナー10に金属石鹸45cを含有させて、以下のような制御を行うことで、画像流れを抑制する。感光体1の表面移動速度と現像ローラ4の表面移動速度との速度比を制御する制御部202によって、画像形成動作と現像ローラ4からトナー10を感光体1に転移させて感光体1の表面に金属石鹸45cを塗布する金属石鹸塗布動作と、を実行する。金属石鹸塗布動作における感光体1の表面移動速度と現像ローラ4の表面移動速度との速度比が画像形成動作における速度比より大きくなるように制御する。すると、金属石鹸45cが不足してきた状態でも、感光体1への金属石鹸45c供給を補うことが出来、画像流れを長期にわたって抑制することが可能となった。
【0089】
尚、本実施例においては、金属石鹸45cをトナー10に外添した状態で現像ローラ4から感光体1の表面に供給したが、供給源は現像ユニット3に配置された現像室3aとトナー収容部3bに限られない。現像ユニット3とは別に金属石鹸45cを供給する塗布ユニットを感光体1上に別途配置してもよい。
【実施例2】
【0090】
本実施例で適用する画像形成装置100の構成において、実施例1と同一部材には同一符号とし、説明を省略する。
【0091】
実施例2においては、金属石鹸塗布動作中は、DD周速比を画像形成動作時よりも実施例1と同様に大きくし、暗部電位Vdと現像電圧の電位差であるバックコントラストVbackを、通常の画像形成時より大きくする。トナー10とは逆極性に帯電した金属石鹸45cが、Vbackの大きさが大きいほど電気的に感光体1の表面上へより多く付着するので、現像ローラ4上の金属石鹸45cを効率的に付着することが出来るためである。実施例1において、Vbackの設定は、通常の画像形成時や金属石鹸塗布動作時には200Vに設定しているのに対して、実施例2においては金属石鹸塗布動作時には300Vとする。具体的には、現像電圧を−300Vから−200Vに設定する。もしくは、暗部電位Vdを−500Vから−600Vに設定するために、帯電電圧を−100V上乗せした−1100Vを帯電ローラ2に印加してもよい。
【0092】
しかし、金属石鹸45cを感光体1上に転移させるためにVbackを大きく設定することにより弊害も発生する。Vbackが大きすぎるとトナー10の正規極性とは逆極性に帯電したトナー10が感光体1の表面上に転移するかぶりが発生してしまうことによって、無駄なトナー消費を招く。したがって、本実施例においては、金属塗布動作時のVbackは200V以上500V以下が好ましく、さらに好適には300V以上400V以下とすることが好ましい。また、金属塗布動作時のVbackは、画像形成動作時のVback以上とし、金属塗布動作時と画像形成動作時のVbackの差分ΔVbackは0V以上300V以下が好ましく、さらに好適には100V以上200V以上が好ましい。
【0093】
実施例2においては、現像部における帯電ローラ2によって帯電された感光体1の表面の表面電位と、現像ローラ4に印加される現像電圧と、の差であるバックコントラストVbackは、塗布動作の方が画像形成動作より大きくする。すると、感光体1への金属石鹸45c供給を補うことが出来、さらに、画像流れを長期にわたって抑制することが可能となった。
【実施例3】
【0094】
実施例3においては、感光体1の表面に対して粗面化処理を行う。適切な粗面化処理を行なった感光体1を用いた場合、感光体1の表面に形成された溝に金属石鹸45cが埋まり、金属石鹸45cが除去されず感光体1の表面に残り続けることが出来る。よって、金属石鹸塗布動作の効果がさらに持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。
【0095】
上記のような効果を発現するためには、感光体1の表面に粗面化処理を施したときに、以下の条件を満たす感光体1を用いることによる。感光体1の周面の十点平均面粗さ(Rz)は0<Rz≦0.70(μm)であり(好ましくは、0.10≦Rz≦0.50(μm))、かつ周面の凹凸の平均間隔(Sm)は0<Sm≦70(μm)(好ましくは、5≦Sm≦70(μm))である。上記範囲とすることで、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが可能であり、その結果、画像流れを長期にわたって抑制することが出来る。そこで、本実施例では、感光体1の表面に適切な凹凸を形成する粗面化処理を行うことにより、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制する構成であることを特徴とする。
【0096】
1.感光体の粗面化処理
本実施例の感光体1は、金属石鹸45cの効果を持続させるため、表面に微小な凹凸を形成する粗面化処理を行っている。特許第4027407号公報によれば、感光体1の周面に、周面の略周方向に延びる幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が長手方向(母線方向、感光体1の回転軸線方向)に複数並ぶように形成されている。
【0097】
図6に、感光体1の周面1aに形成される溝1bの状態の例を示す。図6に示すように、各溝1bは、それぞれ感光体1の周面1a上においてその周方向に延びる環状の溝であり、周面1aの母線方向において、互いに間隔を空けて並ぶように形成されている。すなわち、周面1aは、溝1bが形成されていない平坦部1cと、溝1bと、が母線方向に交互に形成された構成となっている。なお、周面1aにおいて溝1bが形成される領域は、少なくとも、クリーニングブレード8が当接する領域を含んでいればよく、必ずしも、周面1aの長手方向の全域に渡って形成する必要はない。
【0098】
なお、上記公報でも述べているように、溝1bは、図6に示すように周方向と同じ方向に延びるように形成される構成に限定されない。例えば、溝1bが周方向に対して10°の角度をもたせて形成される構成でもよい。また、溝1bが周方向に対して±30°の角度をもたせて形成された構成とし、角度の異なる溝1bが互いに交差するように構成してもよい。本実施形態において、「略周方向」とは、完全に周方向である場合とほぼ周方向である場合とを含み、ほぼ周方向とは、具体的には、周方向に対して±60°未満の方向である。
【0099】
続いて、感光体1の表面を研磨する研磨方法について説明する。図7は、感光体1の表面を研磨する研磨装置の概略図である。研磨シート40は巻き取り機構(不図示)で矢印方向に巻き取られる。感光体1は矢印方向に回転する。バックアップローラー41は矢印方向に回転する。研磨条件としては、研磨シート40として理研コランダム社製の研磨シート(商品名:GC♯3000、基層シート厚:75μm)を用いた。そして、バックアップローラー41としては硬度20°のウレタンローラー(外径:50mm)を用い、侵入量:2.5mm、シート送り量:200〜400mm/sとして、研磨シート40の送り方向と感光体1の回転方向を同一として、5〜30秒間研磨した。研磨した後の感光体1の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700、SMB−9、(株)小坂研究所製)を用いて、下記の条件で測定した。感光体1の長手方向に、塗布上端から30、110、185mmの位置において測定し、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した。更に、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計9点の測定を行った。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
【0100】
表4に、本実施例において用いる感光体1のRzとSmを示す。表4の感光体a〜fは上記粗面化処理条件の研磨時間などを変えて作製した。感光体gは粗面化処理を実施していない実施例1、実施例2で用いた感光体1である。
【0101】
【表4】
【0102】
感光体1の周面の十点平均面粗さ(Rz)及び凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS規格(JIS B 0601)を基準とし、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器サーフコーダSE3500型を用い、以下の条件で測定した。
検出器:R2μm
0.7mNのダイヤモンド針
フィルタ:2CR
カットオフ値:0.8mm
測定長さ:2.5mm
送り速さ:0.1mm
【0103】
なお、本実施例では、感光体1の母線方向の3箇所において、それぞれの箇所での円周方向について各4箇所の計12箇所を測定箇所とした。感光体1の周面の凹凸の平均間隔(Sm)とは、図6に示すように、周面1aの母線方向において並ぶ、複数の溝1bの母線方向(長手方向)における間隔、あるいは平坦部1cの母線方向(長手方向)における間隔、として定義することが出来る。
【0104】
2.粗面化処理を行った感光体における金属石鹸塗布動作の効果
本実施例に記載の感光体1を用いて、金属石鹸塗布動作を実行した時の効果を確認した。金属石鹸塗布動作のDD周速比および電圧設定は実施例2に記載の通りである。実施例3において、感光体1に表4の感光体a〜dを用いた。比較例3では感光体eを用いた。比較例4では感光体fを用いた。
【0105】
以下に、実際の効果確認の結果を示す。実施例3、比較例3、比較例4の画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。その他の条件は実施例2と同様の条件で行った。評価指標は以下の通りである。
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
△:軽微に発生 画像の一部で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
×:発生 画像の全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
【0106】
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は120000枚まで行った。結果を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
表5に示すように、実施例3の感光体a〜dを用いると、120000枚で画像流れの発生は無かった。これは、感光体1の表面に適度な溝が適度な間隔で形成されていることによって、金属石鹸45cを感光体1の表面に保持することが出来た結果である。
【0109】
本実施例における粗面化処理を施した感光体1の表面の凹凸形状を、周面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0<Rz≦0.70(μm)であり、かつ周面の凹凸の平均間隔0<Sm≦70.0(μm)とする。上記条件の感光体1を用いることで、金属石鹸塗布動作の効果が持続する。
【0110】
比較例3の感光体eはRz=0.75(μm)であり、感光体1の表面に溝が深く形成されているため、溝を十分に埋めるまで多くの金属石鹸45cが必要となり、効果を十分に発揮することが出来ない条件であったと考えられる。実施例3の感光体cのRz=0.68(μm)では結果が良好であったことから、Rzが0.70(μm)を下回ると、粗面化処理の効果が強まることが分かった。さらに、金属石鹸45cの平均粒径として好ましい0.15μm〜2.0μmの大きさは、上記深さの溝に塗布しやすい形状であることが分かった。
【0111】
また、比較例4の感光体fはSm=78.5(μm)であるため溝同士の間隔が広く、溝が存在していない部分が多いことでクリーニングブレード8によって金属石鹸45cが除去されてしまう影響が多少出てしまったと考えられる。実施例3の感光体dのSm=67.3(μm)では結果が良好であったことから、Smが70.0(μm)を下回ると、粗面化処理の効果が強まることが分かった。
【0112】
以上の結果から、実施例3の粗面化処理を施した感光体1の表面の形状を、周面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0<Rz≦0.70(μm)、周面の凹凸の平均間隔0<Sm≦70.0(μm)とする。さらに、好適には、周面の十点平均面粗さ(Rz)は0.10≦Rz≦0.50(μm)、かつ周面の凹凸の平均間隔(Sm)は5≦Sm≦70(μm)である。0.10≦Rz≦0.50(μm)、5≦Sm≦70(μm)とすることによって、凹凸が効果的に作用し、金属石鹸45cがさらに感光体1の表面に留まりやすくなる。すると、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となる。したがって、実施例3の構成のように感光体1に粗面化処理を施すと、より高寿命な構成においても感光体の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
【実施例4】
【0113】
実施例1、実施例2、実施例3では図4に示したような無機ケイ素微粒子を外添したトナーを用いた場合について説明をしてきた。実施例4においては、トナーを変更し、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを用いた場合について説明する。
【0114】
本実施例のように有機ケイ素重合体トナーを用いた場合、機械的な摺擦によっても有機ケイ素重合体がトナーから外れにくく、金属石鹸塗布動作によって金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することが出来る。よって、金属石鹸塗布動作の効果がさらに持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。そのうえ、本来の無機シリカ外添の効果であるトナーの電荷やトナー物性値のコントロールを、表層の有機ケイ素重合体にて行うことが出来るため、画像に影響を及ぼすことも少ない。
【0115】
そこで、実施例4は、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを使用することにより、高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制する構成であることを特徴とする。なお、実施例1、実施例2、実施例3と重複する部分については説明を割愛する。
【0116】
1.有機ケイ素重合体を表層に含有するトナー
実施例4では、図8に示したようなトナー粒子、及び、トナー粒子の表面を被覆する、以下に記載した式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を有するトナーを用いる。
R−SiO3/2 (1)
(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
【0117】
トナー粒子の表面は、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体で被覆され、トナー粒子の最表面に存在する層である表層を有する。表層は従来のトナー粒子に比べてとても硬い。そのため、定着性の観点からトナー粒子表面の一部に表層が形成されていない部分を設けてもよい。有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましい。この条件は、トナー粒子の表面のうち少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の有機ケイ素重合体を含有する表層で構成されていることを近似している。すなわち、本条件を満たすと、有機ケイ素重合体を含有する表層が十分にトナー粒子の表面を被覆することとなる。より好ましくは表層の厚み2.5nm以下の割合が10.0%以下である。測定は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により規定することが出来る。詳細は後述する。
【0118】
次に、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体に関して説明する。式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。さらに、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中でR−SiO3/2で表される部分構造を、20%以上有していることを近似している。
【0119】
前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、−SiO3/2の構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の構造はR−SiO2/2−OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その構造はR−SiO1/2(−OH)2となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiO2で表されるシリカ構造に近い。そのため−SiO3/2骨格が多いほど、トナー粒子表面の表面自由エネルギーを低くすることが出来るため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。また、式(1)で表される構造による耐久性と、式(1)中のRの疎水性及び帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(=Mw:1000以下)の樹脂、及びガラス転移温度の低い(Tg:40℃以下)の樹脂のブリードが抑えられる。場合によっては離型剤のブリードも抑えられる。
【0120】
式(1)で示される構造のピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。式(1)で表される構造において、Rは炭素数が1以上6以下の炭化水素基である。これにより帯電量が安定しやすい。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上6以下の脂肪族炭化水素基、又はフェニル基が好ましい。本発明の実施形態において、上記Rは炭素数が1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが、帯電性及びカブリ防止のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないため感光体1と帯電ローラ2の汚染が良化する。炭素数が1以上3以下の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はビニル基が好ましく例示出来る。環境安定性と保存安定性の観点から、より好ましくは、Rはメチル基である。有機ケイ素重合体の製造例としては、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することが出来る。トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に設けることによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることが出来る。
【0121】
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることが出来る。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することが出来る。有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で示される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0122】
【化1】

(式(Z)中、R1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
【0123】
R1の炭化水素基(好ましくはアルキル基)により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることが出来る。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることも出来る。R1の疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてR1は炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。すなわち、有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子が1個以上3個以下であることが好ましい。R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合して架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることが出来る。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、炭素数1以上3以下のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。
【0124】
本発明の実施形態に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
【0125】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
【0126】
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
【0127】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
【0128】
また、本実施例の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0129】
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
【0130】
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は0.5質量%以上10.5質量%以下であることが好ましい。有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することが出来る。10.5質量%以下であることで、チャージアップを発生し難くすることが出来る。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。有機ケイ素重合体を含有する表層とトナーコア粒子は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることが出来る。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などを含有させてもよい。
【0131】
2.NMR測定による部分構造の確認方法
次に、NMR測定によるトナー粒子の部分構造確認方法について説明する。上記に記載のトナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製した。トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
【0132】
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0133】
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)で20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H−9R株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
【0134】
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。式(1)のRで表される炭化水素基は、13C−NMRにより確認した。
【0135】
13C−NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM−ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
【0136】
上記方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si−CH)、エチル基(Si−C)、プロピル基(Si−C)、ブチル基(Si−C)、ペンチル基(Si−C11)、ヘキシル基(Si−C13)またはフェニル基(Si−C−)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認した。次に、トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合の算出方法を説明する。
【0137】
トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR(固体)測定を、以下の測定条件で行う。
【0138】
29Si−NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM−ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000〜8000回
【0139】
上記測定後に、トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 式(2)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 式(3)
X3構造:RmSi(O1/2 式(4)
X4構造:Si(O1/2 式(5)
【0140】
【化2】
【0141】
【化3】
【0142】
【化4】
【0143】
【化5】

(式(2)、(3)及び(4)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1〜6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
【0144】
本発明の実施形態においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。
【0145】
なお、上記式(1)で示される構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C−NMR及び29Si−NMRの測定結果と共にH−NMRの測定結果によって同定してもよい。
【0146】
3.トナー粒子の断面観察による表層厚み測定方法
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下の割合の測定方法を説明する。本実施例において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
【0147】
常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(JEOL製JEM−2800)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。結着樹脂と表層材料の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行うことが出来る。材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いる。測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値がトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとする。
【0148】
上述のように、JEOL製JEM−2800を用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の暗視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIFQuantamを用い、ThreeWindow法によりマッピング像を取得して表層を確認する。
【0149】
次に、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、図8のようにトナー粒子断面を均等に16分割する。次に、中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1〜32)、分割軸の長さをRAn、表層の厚みをFRAnとする。そして、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算する。
【0150】
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
【0151】
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
【0152】
有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み2.5nm以下の割合は以下の式にて表される。
[有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
【0153】
4.トナー製造方法
以下に、実施例4に使用するトナーを具体的に説明するが、これらの実施例に制限されるものではない。実施例中及び比較例中の各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0154】
始めに、水系媒体1の調製工程について説明する。反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0155】
次に、表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程について説明する。撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、表層用有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
本実施例のように、有機ケイ素重合体を有する表層を形成する場合は、水系媒体中でトナー粒子を形成する場合には水系媒体中で後述する重合工程などを行いながら前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加して表層を形成させることが出来る。重合後のトナー粒子の分散液をコア粒子分散液として用いて、有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、表層を形成させてもよい。また、混練粉砕法など水系媒体以外の場合には得られたトナー粒子を水系媒体に分散してコア粒子分散液として用いて、前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、表層を形成させることが出来る。
【0156】
次に、重合性単量体組成物の調製工程について説明する。
・スチレン 60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 20.0部
・n−ブチルアクリレート 20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0157】
次に、造粒工程について説明する。水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0158】
次に、重合工程について説明する。造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行ってコア粒子を得た。スラリーの温度を55℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。55℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナーの表層形成を開始した。そのまま30分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持し、表層を形成させた。
【0159】
最後に、洗浄、乾燥工程について説明する。重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
【0160】
トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が存在すること、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下であることを確認した。本実施例においては、得られたトナー粒子に対し、すくなくとも無機ケイ素を外添せずにそのまま実施例4のトナーとして用いた。
【0161】
トナー粒子の表面におけるトナー粒子の表面を被覆する、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体の固着率は、30%以上100%以下であることが好ましい。これは、有機ケイ素重合体が存在していない表層部の面積が増えることで、トナー同士の付着力が増加し、帯電性が変わってしまうためである。
【0162】
実施例4では、有機ケイ素重合体や無機ケイ素微粒子を母粒子に外添させるのではなく、有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面に被覆させたトナーを用いている。外添させたトナーを使用した場合に比べて有機ケイ素重合体がトナーから外れにくい(固着率が高い)ため、金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することができ、金属石鹸45cによる画像流れ抑制効果をより維持することが可能となる。
【0163】
5.有機ケイ素重合体を用いたトナー粒子の効果確認
実施例4では、上記トナーの製造方法を用いて、トナー粒子の表面を被覆する有機ケイ素重合体の固着率が異なるように作製したトナーb〜eを用意した。固着率はトナーの作製条件により変わる。本実施例においては、重合工程における加水分解液を添加するときの条件、及び、添加後の保持時間を変えることにより固着率違いのトナーを作製した。尚、pH調整は塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で行った。表6にそれぞれの固着率違いのトナーを作製するための条件を示す。また、上記方法で作製したトナーb〜eは、実施例1と同様の方法で金属石鹸45cとしてステアリン酸亜鉛を0.20質量%外添している。ただし、トナーeに関しては、表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程は行わなかった。代わりに、表層用有機ケイ素化合物のメチルトリエトキシシラン30部をモノマーのまま、重合性単量体組成物の調製工程で添加した。重合工程では、70℃に冷却してpH測定を行った後、加水分解液の添加を行わなかった。70℃で撹拌を継続したまま、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持して表層を形成させた。
【0164】
【表6】
【0165】
以下に、実際の効果確認の結果を示す。比較例5のトナーe、実施例4のトナーb、トナーc、トナーdの画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。評価指標は以下の通りである。
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
△:軽微に発生 画像の一部で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
×:発生 画像の全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
【0166】
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は160000枚まで行なった。感光体1はいずれも実施例3で用いた粗面化処理を行ったRzとSmが条件を満たした感光体1を使用し、その他の条件は実施例2と同様の条件で行った。検討結果を表7に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
表7に示すように、比較例5のトナーeを用いた場合に比べて、有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面に被覆させたトナーを用いた実施例4におけるトナーb、トナーc、トナーdでは、160000枚まで画像流れの発生は無く、さらに良好な画像が得られた。
【0169】
有機ケイ素重合体の固着率が高いと、有機ケイ素重合体が感光体1の表面の溝に供給されにくく、金属石鹸45cを感光体1の表面の溝に供給しやすい。これは、有機ケイ素重合体がトナーから外れにくく、金属石鹸塗布動作によって金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することが出来るためである。本実施例のように、有機ケイ素重合体の固着率を90%以上とすることによって、感光体1の表面上に金属石鹸45cを積極的に供給することが可能となる。よって、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの画像流れ抑制効果が持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。
【0170】
実施例4の構成においては、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを用いることで、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの画像流れ抑制効果が持続する。
【0171】
その結果、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となる。
【0172】
尚、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4では反転現像を用いたが、それに限るものでなく、正規現像を用いても良い。実施例1、実施例2、実施例3、実施例4では負に帯電する感光体1を用いたが、それに限ったものではなく、正に帯電する感光体を用いても良い。
【0173】
また、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4では画像形成装置100として、カラーレーザプリンタを用いたが、モノクロレーザプリンタのように、単一のカートリッジ構成を有する画像形成装置100でもよい。
【0174】
また、中間転写ベルト31を用いるような中間転写方式ではなく、感光体1の表面に形成されたトナー像を記録材Sに直接転写する方式を用いてもよい。
【0175】
その他、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4の中で説明として用いた設定条件は一例であり、その限りではない。
【符号の説明】
【0176】
1 感光体
2 帯電ローラ
3b トナー収容部
4 現像ローラ
10 トナー
45c 金属石鹸
100 画像形成装置
202 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8