(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-68678(P2021-68678A)
(43)【公開日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/72 20110101AFI20210402BHJP
【FI】
H01R12/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-195391(P2019-195391)
(22)【出願日】2019年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小西 雄一
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB16
5E223AB28
5E223BA07
5E223BB12
5E223CD01
5E223DB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回路基板に取り付く状態で上下方向の振れが抑制されたコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング10の左右側面120にロックアーム20を備え、ハウジングの輪郭形状に切り抜かれた切欠き部500に前方から取り付ロックアームは前方を固定端とし、後方を自由端とする片持ち梁で、ロックアームは前方寄りにガイド部210と後方寄りにロック部を備える。ガイド部には回路基板50に取り付く際ガイドとなる溝部が備わり、ロック部には回路基板と係止するための係止部220が備わる。係止部には係止突部と係止溝部が備わり、係止溝部の幅寸法A2と溝部の幅寸法A1はA1>A2の関係にある。ハウジングの上面100及び下面の後端部には庇部30が備わり、庇部はハウジングの左右側面120よりも外側に張り出す側面庇部310が備わる。側面庇部がロックアームの係止部の上下方向の動きを規制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型ハウジングの左右側面にロックアームを備え、前記ハウジングの輪郭形状に切り欠かれた回路基板の切欠き部に前方から取り付くコネクタであって、
前記ロックアームは前方を固定端とし、後方を自由端とする内外方向に変位可能な片持ち梁であって、前記ロックアームを前方寄りのガイド部と後方寄りのロック部に分けた場合、前記ガイド部には前記回路基板に取り付く際ガイドとなる溝部又は孔部が備わり、前記ロック部には前記回路基板に取り付く状態で前記回路基板と係止するための係止部が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、前記係止部には係止突部と係止溝部が備わり、前記係止溝部の幅寸法A2と前記溝部又は孔部の幅寸法A1は、A1>A2の関係にあるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタであって、前記ロックアームは前記ガイド部と前記係止部とが階段状に形成されていて、低い方の位置には前記ガイド部が備わり、高い方の位置には前記係止部が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、前記コネクタの前記ハウジングの上面及び下面の後端部には庇部が備わり、前記庇部は前記ハウジングの左右側面よりも外側に張り出し側面庇部が備わり、前記側面庇部が取り付き位置にある前記ロックアームの前記係止部の上下方向の動きを規制するところに特徴を有するコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、前記係止部には前記ロックアームの開閉動作を操作する操作部が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に取り付くコネクタに関する。
【0002】
この分野のコネクタとして先行文献1に記載の技術が知られている。二股状に分岐した一対の接触片が回路基板の接点部を上下方向から挟持して電気的接続状態を得る。このときハウジングは、左右側面に備わる一対のロックアームで回路基板に係止される。回路基板には、ハウジングの輪郭形状に切り取られた切欠き部が形成されており、ロックアームに備わる係止孔に対応する位置には、係止突部が形成されている。また、係止状態でロックアームの可変側の端部が切欠き部の入り口付近に形成された鉤爪部に当接することでコネクタの抜け出しが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許公開公報 10−2018−0039936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロックアームと,回路基板とが互いに係止部を重ねる係止位置は、ロックアームの固定側の基端部付近である。すなわち、コネクタ全体に対する係止位置はコネクタ側面の嵌合方向寄りにある。これにより、電線が取り出されるコネクタの反嵌合方向側は、電線のあおりなどによる不用意な力で振れ幅が大きくなる傾向がある。また、ロックアームの係止孔又は係止溝は嵌合方向に延在する所定の距離を有するものではあるけれども、ロックアームの固定部がコネクタの嵌合方向側にあるために、コネクタは嵌合方向側を支点にして反嵌合方向側が振れやすい傾向にある。しかも、コネクタにはこのような振れを規制する装備は備わらないのでコネクタの振れは抑えられないおそれがある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みて、回路基板に取り付くコネクタの上下方向の振れを抑制するコネクタに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、(1)箱型ハウジングの左右側面にロックアームを備え、前記ハウジングの輪郭形状に切り欠かれた回路基板の切欠き部に前方から取り付くコネクタであって、前記ロックアームは前方を固定端とし、後方を自由端とする内外方向に変位可能な片持ち梁であって、前記ロックアームを前方寄りのガイド部と後方寄りのロック部に分けた場合、前記ガイド部には前記回路基板に取り付く際ガイドとなる溝部又は孔部が備わり、前記ロック部には前記回路基板に取り付く状態で前記回路基板と係止するための係止部が備わるところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、回路基板に対して上下方向の動きを規制するガイド部がロックアームの前方寄りに備わり、後方寄りには回路基板と取り付く状態を保持するための係止部が備わる。このように、コネクタの嵌合方向に沿ってガイド部とガイド部の後方に係止部とが連続的に備わるので上下方向の振れが抑制されたコネクタが得られる。
【0008】
好ましくは、本発明のコネクタは、(2)上記(1)に記載のコネクタであって、前記係止部には係止突部と係止溝部が備わり、前記係止溝部の幅寸法A2と前記溝部又は孔部の幅寸法A1は、A1>A2の関係にあるところに特徴を有するものである。
【0009】
この発明によれば、溝部の幅がA1>A2の関係にあるので、ロックアームの前方側(固定端側)よりも後方側(自由端側)の方が上下方向の動きが規制されている。これにより、コネクタ全体に対して電線が取り出される後方側の動きが前方側に比べてより上下方向の動きが規制されたコネクタが得られる。
【0010】
好ましくは、本発明のコネクタは、(3)上記(1)又は(2)に記載のコネクタであって、前記ロックアームは前記ガイド部と前記係止部とが階段状に形成されていて、低い方の位置には前記ガイド部が備わり、高い方の位置には前記係止部が備わるところに特徴を有するものである。
【0011】
この発明によれば、コネクタに対して一対のロックアームの係止部はガイド部に対して幅方向のより外側に備わるものなので、コネクタの上下方向の振れが抑制されたコネクタが得られる。
【0012】
好ましくは、本発明のコネクタは、(4)上記(3)に記載のコネクタであって、前記コネクタの前記ハウジングの上面及び下面の後端部には庇部が備わり、前記庇部は前記ハウジングの左右側面よりも外側に張り出し側面庇部が備わり、前記側面庇部が取り付き位置にある前記ロックアームの前記係止部の上下方向の動きを規制するところに特徴を有するものである。
【0013】
この発明によれば、ハウジング後端側の上下方向の動きは、庇部とロックアームとの当接で抑制されるので、上下方向の動きが規制されたコネクタが得られる。
【0014】
好ましくは、本発明のコネクタは、(5)上記(4)に記載のコネクタであって、前記係止部には前記ロックアームの開閉動作を操作する操作部が備わるところに特徴を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るコネクタの外観斜視図であって、(1)は回路基板に取り付く前、(2)は回路基板に取り付く状態である。
【
図2】
図2は同コネクタのロックアームの拡大斜視図である。
【
図3】
図3は同コネクタの側方外観図であって、回路基板に取り付く状態である。
【
図4】
図4は同コネクタの前方外観図であって、回路基板に取り付く状態である。
【
図8】
図8は別の実施形態に係るコネクタの外観斜視図であって、回路基板に取り付く状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態によって限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することができる。
図1は本発明の実施形態に係るコネクタの外観斜視図であって、(1)は回路基板に取り付く前、(2)は回路基板に取り付く状態である。
図2は同コネクタのロックアームの拡大斜視図である。
図3は同コネクタの側方外観図であって、回路基板に取り付く状態である。
図4は同コネクタの前方外観図であって、回路基板に取り付く状態である。
図5は
図3のV−V断面図である。
図6は
図3のVI−VI断面図である。
図7は
図4のVII−VII断面図である。
図8は別の実施形態に係るコネクタの外観斜視図であって、回路基板に取り付く状態を示す図である。
【0017】
本実施形態のコネクタ1は、
図1に示されるように、回路基板50の板面を上下方向から重なるように取り付くものである。コネクタ1は、コネクタハウジング10の輪郭形状に切り取られた切欠き部500に取り付けられる。コネクタ1は、取り付位置で回路基板50上の接点部と図示しないコンタクトの接触部とが接続する。切欠き部500の側面側の切断面には、前方寄り(奥側)に被ガイド部510、510と、後方寄りに被係止部520、520とが備わる。
【0018】
コネクタ1は、扁平箱型のハウジング10と、図示しないコンタクトとを備える。コンタクトは、導電性金属の成形品で回路基板50の接点部に接続する接触部と、電線Wの導体部に接続する接続部とを備える。ハウジング10は、合成樹脂の射出成型品で非導電性である。
【0019】
ハウジング10は、
図1に示されるように、内部にコンタクト収容部11を備える。コンタクト収容部11は、各収容室が仕切り壁で区画されていて、左右方向に等間隔で配置されている。図示しないコンタクトは、ランス装置などで抜け出さないように収容室に保持されている。
【0020】
ハウジング10の左右側面120、120には、
図2に示されるように、ロックアーム20が備わる。ロックアーム20は、ハウジング10の側面120の略全体に重なるように備わり、前方側を固定端、後方側を自由端とする片持ち梁である。
【0021】
ロックアーム20は、
図2に示されるように、前方側にガイド部210と、後方側に係止部220とを備える。ガイド部210と係止部220とは階段状に形成されていて、係止部220はガイド部210よりも一段高い位置にある。すなわち、係止部220はガイド部に対してより外側に張り出す態様で備わる。ガイド部210の内側は略全体がハウジング10側面120に接しているが、係止部220はハウジング10側面120に対して全体的に隙間が形成されている。
【0022】
ガイド部210には、
図2に示されるように、前後方向に延びる溝部211が形成されている。溝部211は、上下方向の幅寸法A1を有している。幅寸法A1は、溝部211全域で略一定である。また、溝部211内面は平滑である。そして、溝部211の前端及び溝部211の底面は開口している。すなわち溝部211は、底壁が無くハウジング10に形成された、回路基板50に嵌合するための嵌合溝部に連通している。コネクタ1は、回路基板50に対して嵌合溝部及び溝部211でその
板厚に重なる態様で取り付く。
【0023】
係止部220は、
図2に示されるように、ガイド部210の後方に備わり、前後方向に延びる係止溝部221を備える。係止溝部221は、上下方向の幅寸法A2と、所定の深さ寸法を有する有底溝である。係止溝部221の前端及び後端は開口しており、取り付け時回路基板50の切欠き部500の切断面に形成された被係止部520が通過する。係止溝部221には、前方に係止突部223が備わる。係止溝部221の底面は、前方が後方に比べて隆起している。隆起はなめらかな面で構成されている。
【0024】
係止部220の上面及び下面は、
図2に示されるように、ガイド部210の上面及び下面と連続的な平面で形成されており、ともに平坦である。係止部220の上面及び下面の一部には、ハウジング10の上下方向の振れを規制するための規制部225が形成されている。ハウジング10の右側面120に備わる右側のロックアーム20の係止部220は、右側面120(左側のロックアーム20の係止部220は左側面120)に操作部230が備わる。操作部230は庇状に形成されている。
【0025】
<取り付け>
図1、3、4を参照して、コネクタ1の回路基板50への取り付けを説明する。説明中の指示方向は、原則図中の方向定義に従う。コネクタ1を回路基板50の切欠き部500に正対させる。このとき電線Wが取り出される面が後方である。回路基板50を板厚方向から重なる態様で取り付くための嵌合溝部が形成されており、嵌合溝部はハウジング10の前面から後方に延びている。
【0026】
ロックアーム20のガイド部210を、回路基板50の切欠き部500の切断面に形成された被ガイド部510に合わせ、水平姿勢のままコネクタ1を回路基板50側へ押し込む。そうすると、ハウジング10の嵌合溝部は、回路基板50との重なり代を増していく。さらに水平姿勢のまま押し込むと、図示しないコンタクトと、回路基板50の接点部との接続が開始する。この過程で、ロックアーム20の係止部220と、切欠き部500の切断面に形成された被係止部520との係止が始まる。これにより、ロックアーム20は内側に撓み、しだいに撓み量を増していく。撓みは、係止部220の係止突部223が被係止部520の突出部を乗り越える過程で生じる変化なので、両者の頂点が接するところで撓み量は最大になる。最大撓み位置を越えて、さらにコネクタ1を押し込むと、押切り状態でコネクタ1は回路基板50に取り付く。
【0027】
取り付き状態でコネクタ1は、
図3、4に示されるように、回路基板50の切欠き部500に取り付き、コネクタ1の後面は回路基板50の側面近傍まで入り込み、ロックアーム20も略全体が回路基板50の切欠き部500に入り込む。
【0028】
取り付き状態でコネクタ1は、
図4に示されるように、ロックアーム20の規制部225が側面庇部310に重なる位置にある。規制部225の表面と側面庇部310の内面との間には、ロックアーム20の動きに干渉しないように隙間が設けられているが、ハウジング10の上下方向の動きは規制部225によって制限されることとなる。
【0029】
ガイド部210では、
図5、6に示されるように、切欠き部500の被ガイド部510が溝部211に嵌り込み、コネクタ1の上下の動きが規制されている。
【0030】
係止部220では、
図7に示されるように、切欠き部500の被係止部520が係止突部223によって前後方向の動きが規制されている。また、係止溝部221に被係止部520が嵌り込み、上下方向の動きが規制されている。
【0031】
<効果>
・ガイド部210の後方に係止部220を設けることで上下の振れが抑制されたコネクタ1が得られる。
・側面庇部310と規制部225との重なり合いにより、上下方向の振れが抑制されたコネクタ1が得られる。
・ハウジング10に庇部30が備わるので、ハーネスの絡みが抑制されたコネクタ1が得られる。
【0032】
<第2実施形態>
本発明は上述した実施形態に限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素は変更されうる。たとえば、
図8に示されるように、ロックアーム20の係止部220Aがハウジング10の後面よりもさらに後方へ延在するものであってよい。このように変更した場合でも概ね上述した効果が得られる。
ロックアーム20は、ガイド部210と係止部220Aとを階段状に有し、係止部220Aはガイド部210に対して一段高い位置にある。係止部220Aは、ハウジング10後面よりもさらに後方へ延びている。コネクタ1は回路基板50の深い位置で取り付き、コネクタ1の後面は回路基板50の側面よりも内側にある。また、係止部220Aは回路基
板50の側面よりもさらに後方位置にある。
【符号の説明】
【0033】
1 コネクタ
10 ハウジング
100 上面
110 下面
120 側面
130 前面
140 後面
11 コンタクト収容部
20 ロックアーム
210 ガイド部
211 溝部
220 係止部
221 係止溝部
223 係止突部
225 規制部
230 操作部
30 庇部
310 側面庇部
50 回路基板
500 切欠き部
510 被ガイド部
520 被係止部
W 電線