特開2021-69288(P2021-69288A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021069288-簡易ハウス 図000003
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  • 特開2021069288-簡易ハウス 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-69288(P2021-69288A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】簡易ハウス
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20210409BHJP
【FI】
   A01G13/02 Q
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-196361(P2019-196361)
(22)【出願日】2019年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】504154894
【氏名又は名称】中川原 秀己
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】中川原 秀己
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過度の太陽光線から植物を保護し、より良好な状態をした収穫物を得ることが可能な簡易ハウスを提供する。
【解決手段】簡易ハウス10に用いられる任意の形状の面を有する積層シート11は、少なくとも赤外線を遮蔽する物質がその少なくとも一方の面上にコーティングされた本体層15を含んで構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の形状の面を有する積層シートを用いて構成されている簡易ハウスであって、前記積層シートは、少なくとも赤外線を遮蔽する物質がその少なくとも一方の面上にコーティングされた本体層を含んで構成されていることを特徴とする簡易ハウス。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易ハウスであって、前記本体層の少なくとも一方の面上にはさらに、紫外線を遮蔽する物質を含む層が積層されていることを特徴とする簡易ハウス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の簡易ハウスであって、前記赤外線を遮蔽する物質は、アルミニウムまたはその合金であることを特徴とする簡易ハウス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の簡易ハウスであって、前記シート状材は、高分子材料および不織布を含む材料であることを特徴とする簡易ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜や草花などの植物に取付可能な簡易ハウスに関する。特に、本発明は、栽培者の管理下に置かれる農作物に取付可能な簡易ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農業用ハウス、特にビニルハウスを使用しての農作物の栽培が盛んに行われている。しかしながら、従来の農業用ハウスはいずれも大掛かりな設備であり、膨大な資材はもとより、広大な敷地が必要であった。そして、専門の設備組立業者により長期間を要して組み立てられるので、所要資金も膨大なものとなってしまう。
【0003】
一方、上述の農業用ハウスを用いずに果菜を露地栽培することも可能である。しかしながら、トマトを露地栽培する場合を例に挙げると、紫外線や赤外線の照射を直接受けることによるヘタからの割れの発生(いわゆる、ヘタ割れ)、皮の硬化、色やけの発生などの弊害が生じうる。また、栽培する果菜によっては、実の生育途上で害虫や野鳥による食害を被る場合もある。
【0004】
このような弊害を防ぐために、農業用ハウスを建設する資金がない場合などにおいては、紙やプラスチックフィルムなどの材料製のシートを袋状に加工したものを果菜の実に被せることが行われてきた。
【0005】
また、上述の袋状加工シートを作成する作業や果菜を被覆する作業の煩雑性などに鑑みて、さらに、果菜に対する防虫・防菌性をより高めるべく、下記特許文献1に開示されている果菜用簡易ハウスが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−42811号公報(特許第6359918号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている果菜用簡易ハウスは、低コストで、簡易な操作により、誰でも、必要に応じて何時でも何処にでも、果菜や草花などの植物に取付可能なものである。
【0008】
しかしながら、このような簡易ハウスを用いても、十分に防ぎきれない害がある。それは、太陽光、すなわち可視光線に加えて紫外線や赤外線の過度な照射が植物、特に果実部に及ぼす様々な被害である。特許文献1では、合成樹脂シートの少なくとも一部に紫外線および/または赤外線遮蔽フィルムを積層する簡易ハウスの構成例も開示されている(同文献図5参照)が、このような構成例をもってしても、特に夏季の強い太陽光に対しては、紫外線や赤外線を遮蔽するには必ずしも十分ではなかった。
【0009】
例えば、赤外線は、放射を受けると熱を感じるので熱線とも呼ばれる。植物に照射される赤外線は、適量であれば植物の成長を促進させるが、過度の赤外線が当たると、熱により植物細胞に損傷を与えることとなる。トマトの着色不良、スイカの玉焼け、茄子の裂傷等は赤外線を過度に受けた場合に生じる不良症状である。また、植物によっては、紫外線の過度の照射も植物のへた割れ、着色不良、玉焼け、葉焼けや擦烈傷などの原因となる。
【0010】
このため、従来の簡易ハウスよりも太陽光、特に紫外線や赤外線の遮蔽性が高く、結果として植物をより強く保護可能な簡易ハウスが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本発明に係る簡易ハウスは、任意の形状の面を有する積層シートを用いて構成されているが、この積層シートは、その少なくとも一方の面上に、赤外線を遮蔽する物質がコーティングされた本体層を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る簡易ハウスによれば、例えば、過度の太陽光線から植物を保護し、より良好な状態をした収穫物を得るという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る簡易ハウスの実施例を示す平面図である。
図2図1に示す実施例の一使用態様例を示す図である。
図3図1に示す実施例の一使用態様例を示す図である。
図4図1に示す実施例の概略的な側面図である。
図5】本発明に係る簡易ハウスの一実施例を製造するために使用した積層シートの本体層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明による簡易ハウスの実施例を詳細に説明する。本明細書においては、まずは簡易ハウスの実施例の構成として公知の部分および典型的な使用例について簡潔に言及し、次いで、本願発明に特有の構成について詳細に説明することとする。
【0015】
図1に示されているように、本発明による簡易ハウス10の実施例は、矩形の積層シート11から構成されている。なお、図1は簡易ハウス10の実施例の裏面を上から見た図である。簡易ハウス10の表面または裏面は、果菜や草花などの植物に簡易ハウス10を取り付けて使用する際に外側の面になるか内側の面になるかで定義している。使用時に外側を向く簡易ハウス10の面が表面であり、他方、内側を向く面が裏面である。積層シート11の構造に関する詳細な説明については後述する。
【0016】
なお、図示はしないが、簡易ハウス10を構成する積層シート11の形状は矩形に限らず、四角形以外の多角形、円形や楕円形、またはこれらの形状の組合せなど、任意の形状を採り得る。このような形状を採る積層シート11の中心部を、図1では参照符号11cとして示す。
【0017】
簡易ハウス10には、積層シート11の任意の一端11pから積層シート11の中心部11cの方向に延びている切込み12が設けられている。
簡易ハウス10は、積層シート11の裏面に固定手段13、13を設けている。固定手段13、13のより具体的な配置位置は、切込み12の両サイド近傍部である。図面で示す実施例では、固定手段13、13は面ファスナである。しかしながら、固定手段13は面ファスナに限定されず、例えば両面テープや、雄部および雌部一対からなるホックなど、様々な公知の固定手段を切込み部分同士の固定のために用いて構わない。
【0018】
具体的にどのような固定手段を用いるかは、積層シート11の形状、切込み12の長さ、簡易ハウス10の被覆対象として想定する果菜の大きさや形状など、様々な要因を総合的に考慮して決定することが好ましい。さらに、固定手段を設ける位置および設ける個数も、積層シート11の形状、切込み12の長さ、簡易ハウス10の被覆対象として想定する果菜の大きさや形状など、様々な要因を総合的に考慮して決定することが好ましい。
【0019】
図1に示す簡易ハウス10の使用例を図2および図3を参照しながら簡潔に説明する。なお、これらの図において、積層シート11の材質に鑑みれば、簡易ハウス10の奥側にあるものは通常であれば視認することはできない。しかしながら、使用例の説明の便宜上、図示方向からは本来視認することができない部分であっても破線で示すこととする。
【0020】
まず、図2に示すように、簡易ハウス10の切込み12を開き、この開いた部分に果菜や草花の茎(図2の参照符号Kで示す)または果菜や草花の支持柱を挟み、切込み12の両サイド近傍部に設けられている固定手段13、13同士を係合させて固定する。
【0021】
果菜がトマトである場合には、例えば図3で示すように、トマトの実T、T・・・を積層シート11が覆うように、実T、T・・・がなっている部分の近傍の茎Kを、切込み12の開いた部分で挟み込み、面ファスナなどの固定手段13、13で固定することによって簡易ハウス10を用いることができる。
【0022】
なお、図3は、トマトの実T、T・・・がある程度生育した状態を示しているが、本発明の実施例に係る簡易ハウス10を取り付ける時期は、トマトの実T、T・・・が直径約1〜2cmのときであることが好ましい。2cm以上に生育した後で作業者が簡易ハウス10を取り付けるのであれば、実T、T・・・は既に紫外線の悪影響を受けていわゆるへた割れなどが発生してしまうからである。
【0023】
続いて、本発明に係る簡易ハウス10に用いる積層シート11のいくつかの構造例について、図4を参照しながらより詳細に説明する。図4には、図1に示す簡易ハウス10を側面から見た図が概略的に示されている。説明の便宜上、図4での側面図はある程度拡大して描写されているが、積層シート11の厚さは可撓性を確保できる程度に十分な薄さを備えるものである。
【0024】
本実施例で用いられている積層シート11は、本体層15と、本体層15の各面上に塗布され本体層15を保護する保護層17、18によって構成されている。図4の例では、積層シート11の表面に塗布することによって積層されるのが保護層17であり、裏面に塗布することによって積層されるのが保護層18である。積層シート11は、太陽光、より具体的には赤外線、可視光線および/または紫外線を遮蔽し、これらのシート透過を適度に抑えることができる。
【0025】
積層シート11は、植物に応じて任意の種類の光を遮蔽可能な材料を用いて形成してもよく、または、かかる特性を得るべくシート11の構成材料を加工してもよい。本体層15のコーティング加工や、本体層15表面に特定の種類の光を遮蔽する効果を有する塗料などを塗布して保護層17、18を形成することも、積層シートの構成材料の遮光性を高めるための加工例に含まれる。
例えば、本体層15に赤外線を遮蔽する物質をコーティングしようとする場合、アルミニウムまたはその合金をコーティング材に用いてもよい。かかる構成により、積層シート11は、可視光線のみならず赤外線の遮蔽能力を高めることができる。
【0026】
積層シート11はさらに、防水性や透湿性を適度に保ち、防風性を備えるような材料を用いて形成してもよく、または、かかる特性を得るべくシート11の構成材料を加工してもよい。本体層15のコーティング加工や、本体層15表面に保護層17、18を塗布することも、積層シートの構成材料の加工例に含まれる。
なお、図4では、上述した目的で積層シート11の本体層15に施したコーティング加工部分を、本体加工層部15aとして図示している。
【0027】
本体層15は、可撓性を有するシート材料で形成され、これによって果菜や草花をその形状や大きさに関わらず適切かつ十分に覆うことができる。
保護層17、18は、特定の種類の光を吸収する性質を有していてもよい。また、保護層17、18は、本体層15の表面に積層されることによって、本体層15が酸化して劣化することを防止する性質を有するものであってもよい。
【0028】
なお、保護層17、18は、本体層15が外部に露出しないように本体層15の側端部を覆うようにしてもよい。例えば、保護層17、18の面寸法を本体層15の面寸法よりも少し大きめに形成し、保護層17と18で本体層15を覆い被せるように両保護層の縁部同士を接合させてもよい。
【0029】
このように、複数の材料を用いて、さらにはこれらの材料に必要に応じて加工を施し積層シート11を形成することにより、果菜や草花などの植物を様々な悪影響から守ることが可能となる。1種類の材料のみを用いて簡易ハウス10の本体部を形成したのでは、植物に悪影響を与える様々な要因のうち一部のものに対してしか植物を保護できないのが通常である。しかしながら、様々な特性をもつ材料を組み合わせて、または、積層シート11の基材(例えば、本体層15)に加工を施して簡易ハウス10の積層シート11を形成することによって、より多種類の植物に悪影響を与える要因から植物を保護することが可能となる。
【0030】
複数の材料を使用し、所定の材料加工を施して形成された積層シート11の構成およびその形成過程は、例えば以下の通りである。可視光線の反射性が高く透湿性、防水性、防風性などに優れたシート状の材料製の本体層15を準備する。本体層15となるシート状の材料の例としては、ポリエチレンなどの高分子材料および不織布が含まれる材料が挙げられる。
【0031】
続いて、本体層15に、アルミ等によるコーティングを施して赤外線反射性を高める。さらに、コーティングを施した本体層15の両面上に、本体層の酸化劣化を防ぐ塗料を塗布して保護層17、18を形成し、簡易ハウス10の耐久性を高める。このとき、完成品たる簡易ハウス10の使用対象となる植物が過度の紫外線照射を避けるべきものである場合には、保護層17、18を形成するために塗布される材料には、紫外線不透過特性を有する成分を含有するものを用いる。
【実施例】
【0032】
本発明に係る簡易ハウス10の製造例を以下に示す。本発明に係る簡易ハウス10の実施例を製造するにあたって、北恵株式会社製のヒートバリアシートII(型番HBII−50)を簡易ハウス10の積層シート11の本体層15として用意した。
本体層15として用いるヒートバリアシートIIは、その厚さが0.2mmであり、三層構造からなる。三層構造のうち第1番目の層152は、ポリエステル長繊維不織布で構成され、これによって強度保持効果が得られる。第1番目の層152の上に形成されている第2番目の層154は、ポリエチレン製通気フィルムで構成され、これによって透湿および防水効果が得られる。第2番目の層154の上に形成されている第3番目の層156は、表面にアルミニウム特殊コーティング156aを施したポリエステル長繊維不織布で構成され、これによって遮赤外線機能(遮熱機能)が得られ、簡易ハウス10を被せた植物を熱の害から保護することが可能となる。
なお、第1番目の層152で構成される面の側が積層シート11の裏面側となり、第3番目の層156で構成される面の側が積層シート11の表面側となる。
【0033】
積層シート11の本体層15となる上述のシートを、任意の寸法に切断する。例えば、トマトやメロン、スイカ用の簡易ハウス10を構成する本体層15を用意すべく、上述のシートを約30cm四方の正方形または略正方形状に切断し、同様に茄子用の本体層15として、上述のシートを約25cm四方の正方形または略正方形状に切断してもよい。
【0034】
続いて、積層シート11の裏面上に、固定手段13、13として面ファスナを熱圧着により取り付ける。圧着取付する面ファスナの寸法、個数および取付箇所は、完成品たる簡易ハウス10の意図する用途に応じて任意に設計可能である。また、面ファスナは縫い付けてもよいし、その他の公知の手段で取付けてもよい。
トマト用の簡易ハウス10を製造する場合には、本体層15たるヒートバリアシートIIの両面に、本体層15の酸化を防止可能な成分および紫外線を遮断または吸収可能な成分を有する水性保護塗料を塗布する。塗布の結果、簡易ハウス10の積層シート11には保護層17、18が形成されたこととなる。これによって、簡易ハウス10でトマトを覆うことによってトマト果実を紫外線の害から保護することができる。例えば、簡易ハウス10はトマトのヘタ割れや着色不良を防ぐことができる。
【0035】
他方、茄子用の簡易ハウス10を製造する場合には、本体層15たるヒートバリアシートIIの両面に、本体層15の酸化を防止可能な特性を有する水性保護塗料を塗布し、これによって保護層17、18を形成する。なお、この場合には水性保護塗料には紫外線を遮断(吸収)可能な成分は含有させない。茄子の果実を良好に生育させるために紫外線は必要な要素であるからである。より具体的に述べると、茄子には適度な紫外線を浴びさせて、茄子の鮮やかな紫色のもととなるアントシアニンを生成させることが好ましい。
【0036】
ここまで、本発明の好ましい実施例について述べてきたが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更や置換が可能であり、あるいは上述の実施例と同等に構成され得ることは当業者にとって明らかである。
また、本願発明は、上記特許文献1に記載の技術に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 簡易ハウス
11 積層シート
12 切込み
13 固定手段
15 本体層
15a 本体加工層部
17、18 保護層
図1
図2
図3
図4
図5