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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-70145(P2021-70145A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】放電加工装置の下側ガイドユニット
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/00 20060101AFI20210409BHJP
   B23H 9/14 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
   B23H1/00 B
   B23H9/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-210669(P2019-210669)
(22)【出願日】2019年11月21日
(11)【特許番号】特許第6675514号(P6675514)
(45)【特許公報発行日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】201911043656.0
(32)【優先日】2019年10月30日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】土肥 祐三
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059DA03
3C059DD10
3C059EA02
3C059HA14
(57)【要約】
【課題】電極ガイドをより簡単に確実に着脱可能な構成であり、コンパクトな設計の下側ガイドユニットを提供する。
【解決手段】本発明によれば、ハウジングと、電極ガイドと、引き上げ機構とを備え、ハウジングは、嵌合孔を備え、電極ガイドは、テーパ部を備え、引き上げ機構は、ガイド支持具と、複数のリンクと、動力シリンダとを備え、ガイド支持具は、付勢部材と、変位部材とを備え、付勢部材は、変位部材を付勢可能に配置され、変位部材は、規制位置と開放位置との間を変位可能に構成され、複数のリンクは、ガイド支持具を挟んで配置され、動力シリンダが加える力により回転可能に構成され、変位部材が規制位置にあるとき、電極ガイドは付勢部材の付勢力によりガイド支持具に対して固定され、変位部材が開放位置に変位することにより、電極ガイドが下側ガイドユニットから脱去可能となるように構成される、下側ガイドユニットが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工を行うための放電加工装置において工具電極の鉛直下側部分を導通する下側ガイドユニットであって、
ハウジングと、電極ガイドと、引き上げ機構とを備え、
前記ハウジングは、テーパ面を有する嵌合孔を備え、
前記電極ガイドは、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部を備え、
前記引き上げ機構は、ガイド支持具と、複数のリンクと、動力シリンダとを備え、
前記ガイド支持具は、少なくとも1つの付勢部材と、変位部材とを備え、
前記付勢部材は、前記変位部材を鉛直方向に付勢可能に配置され、
前記変位部材は、規制位置と開放位置との間を鉛直方向に変位可能に構成され、
前記複数のリンクは、前記ガイド支持具を挟んで配置され、前記動力シリンダが加える力により回転可能に構成され、
前記変位部材が前記規制位置にあるとき、前記電極ガイドは、前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合した状態で、前記付勢部材の付勢力により前記ガイド支持具に対して固定され、
前記複数のリンクの回転に伴い前記変位部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記開放位置に変位することにより、前記電極ガイドが前記下側ガイドユニットから脱去可能となるように構成される、下側ガイドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の下側ガイドユニットであって、
前記ガイド支持具は、前記複数のリンクが配置されている側に前記変位部材を挟むように配置された外枠をさらに備え、
前記外枠は、水平方向に延びる2つのスロット状貫通孔を有し、
前記変位部材は、前記外枠が配置されている側に各々突出する2つの突出部を有し、
前記2つの突出部は、前記2つのスロット状貫通孔に各々挿入され、前記変位部材の変位に伴い前記スロット状貫通孔内を移動可能に構成される、下側ガイドユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の下側ガイドユニットであって、
前記電極ガイドは、上端に設けられたプルスタッド部をさらに備え、
前記ガイド支持具は、複数のボールをさらに備え、
前記複数のボールは、前記ガイド支持具の内部に形成されたボール収容空間内において、前記変位部材の変位に伴い係合位置と係脱位置との間を移動可能に構成され、
前記変位部材が前記規制位置に変位すると、前記複数のボールは、前記係合位置に移動して前記プルスタッド部に係合し、
前記変位部材が前記開放位置に変位すると、前記複数のボールは、前記プルスタッド部から係脱して前記係脱位置に移動する、下側ガイドユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の下側ガイドユニットであって、
前記複数のリンクは、2対の平行リンクである、下側ガイドユニット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の下側ガイドユニットであって、
前記付勢部材は、少なくともその一部が前記ハウジングの上面に形成された孔に収容されている、下側ガイドユニット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の下側ガイドユニットであって、
前記少なくとも1つの付勢部材は、並列に配置された4つの圧縮バネである、下側ガイドユニット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の下側ガイドユニットであって、
前記動力シリンダは、前記ガイド支持具に水平方向の力を加えて前記複数のリンクを回転可能に構成される複動シリンダである、下側ガイドユニット。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の下側ガイドユニットであって、
前記ハウジング及び前記電極ガイドは、加工液又は圧縮気体を供給するための少なくとも1つの流路をその内部に備える、下側ガイドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具電極と被加工物との間に放電を発生させ、放電エネルギーによって被加工物を放電加工する放電加工装置において、工具電極の鉛直下側部分を導通する下側ガイドを収容した下側ガイドユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工具電極が数百mm以上の長尺棒状又はパイプ形状で直径(外径)が数mmφ以下のいわゆる細穴電極である場合、細穴電極は、剛性が低く撓みやすいので、加工ヘッドから細穴電極の先端までの距離が長い場合、加工中に芯振れを起こして真直ぐに孔をあけることができなくなる。そのため、細穴放電加工装置においては、被加工物の上面の近傍に電極ガイドが収容されている下側ガイドユニットを設けて細穴電極の先端側を支持するようにするとともに、加工ヘッドと下側ガイドユニットの間に加工ヘッドから下側ガイドユニットまでの距離に対応して1以上の中間ガイドを設けている。所望の加工孔の直径に合わせて使用する細穴電極の直径も変わるので、このような細穴電極の先端側に電極ガイドが設けられている細穴放電加工装置においては、異なる外径の細穴電極に交換する場合、電極ガイドも共に交換される。細穴電極及び電極ガイドの交換は、工数が掛かる作業であり、生産効率を上げるために自動化されることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、電極ガイドの自動交換への対応を目的として、細穴加工用電極の接触感知による位置決め操作を自動的に行う機能を備えた細穴放電加工機が開示されている。この細穴放電加工機において、電極ガイドは、ガイド取付けベースに形成された挿設孔に対して上方から自動挿脱される。また、特許文献2には、工具電極を電極ホルダごと交換する自動交換機能を備える放電加工装置が開示されている。特許文献2に開示されているよく知られているプルスタッド方式の電極ホルダの着脱機構においては、電極ホルダは、電極ホルダチャックに対して下方から自動挿脱され、電極ホルダの装着時は、電極ホルダに形成された溝と鋼球との係合により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3999537号
【特許文献2】特許第4152602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下側ガイドユニットは、被加工物の上面の近傍に存在するので、加工の障害にならないようにコンパクトに構成されている。また、細穴電極を無駄なく使用するために、下側ガイドユニットの高さ、言い換えると、厚さが可能な限り小さくされている。そのため、下側ガイドユニットに電極ガイドを自動交換する機構を設ける場合は、下側ガイドユニットが電極ガイドをより簡単に確実に着脱することができる構成にして下側ガイドユニットが大きくならないようにすることが要求される。このとき、細穴放電加工においては、加工誤差が十数μm以下の高精度で加工を行うために、電極ガイドの交換精度も高くする必要があり、具体的には、下側ガイドユニットのハウジングに対する電極ガイドの位置決めを高精度に行うことが求められる。
【0006】
加えて、下側ガイドユニットの上方には、細穴電極を保持して加工ヘッドに取り付けるための電極ホルダ、放電加工時に細穴電極を回転させるためのスピンドル、及び中間ガイド等の構成部品を備えている。従って、下側ガイドユニットにおいて、電極ガイドの交換を自動化するにあたって電極ガイドの上方に着脱機構を設ける構成にする場合、他の構成部品の配置の影響によって、設計上、相当の制約を受けてしまう。一方、下方に着脱機構を構成する場合は、着脱機構が被加工物と干渉するおそれがある。また、例えば、電極ガイド内部の流路に供給される加工液により高圧噴流を受ける等の場合であっても下側ガイドユニットから電極ガイドが離脱しないようにするために電極ガイドを強固に取り付けて固定する必要があるため、下側ガイドユニットを含む放電加工ユニット全体が大型化する傾向にある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、電極ガイドをより簡単に確実に着脱可能な構成であり、コンパクトな設計の下側ガイドユニットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、放電加工を行うための放電加工装置において工具電極の鉛直下側部分を導通する下側ガイドユニットであって、ハウジングと、電極ガイドと、引き上げ機構とを備え、前記ハウジングは、テーパ面を有する嵌合孔を備え、前記電極ガイドは、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部を備え、前記引き上げ機構は、ガイド支持具と、複数のリンクと、動力シリンダとを備え、前記ガイド支持具は、少なくとも1つの付勢部材と、変位部材とを備え、前記付勢部材は、前記変位部材を鉛直方向に付勢可能に配置され、前記変位部材は、規制位置と開放位置との間を鉛直方向に変位可能に構成され、前記複数のリンクは、前記ガイド支持具を挟んで配置され、前記動力シリンダが加える力により回転可能に構成され、前記変位部材が前記規制位置にあるとき、前記電極ガイドは、前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合した状態で、前記付勢部材の付勢力により前記ガイド支持具に対して固定され、前記複数のリンクの回転に伴い前記変位部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記開放位置に変位することにより、前記電極ガイドが前記下側ガイドユニットから脱去可能となるように構成される、下側ガイドユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る下側ガイドユニットにおいて、電極ガイドの装着時には、電極ガイドのテーパ部がハウジングの嵌合孔に嵌合された状態で、付勢部材により鉛直上向きに付勢されている。嵌合により、電極ガイドの中心軸方向におけるハウジングに対する電極ガイドの位置が一意的に決まるため、位置決めが容易であり、また、付勢部材の付勢力により、電極ガイドを確実に固定できる。また、動力シリンダによりリンクを回転させることで当該固定が解除され、電極ガイドを容易に抜脱することができる。リンクの利用により、動力シリンダが加える力を鉛直方向の力に変換して変位部材を変位させることが可能であるため、電極ガイドの上方に動力機構を配置する必要がなく、よりコンパクトな下側ガイドユニットを実現できる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0011】
好ましくは、前記ガイド支持具は、前記複数のリンクが配置されている側に前記変位部材を挟むように配置された外枠をさらに備え、前記外枠は、水平方向に延びる2つのスロット状貫通孔を有し、前記変位部材は、前記外枠が配置されている側に各々突出する2つの突出部を有し、前記2つの突出部は、前記2つのスロット状貫通孔に各々挿入され、前記変位部材の変位に伴い前記スロット状貫通孔内を移動可能に構成される。
好ましくは、前記電極ガイドは、上端に設けられたプルスタッド部をさらに備え、前記ガイド支持具は、複数のボールをさらに備え、前記複数のボールは、前記ガイド支持具の内部に形成されたボール収容空間内において、前記変位部材の変位に伴い係合位置と係脱位置との間を移動可能に構成され、前記変位部材が前記規制位置に変位すると、前記複数のボールは、前記係合位置に移動して前記プルスタッド部に係合し、前記変位部材が前記開放位置に変位すると、前記複数のボールは、前記プルスタッド部から係脱して前記係脱位置に移動する。
好ましくは、前記複数のリンクは、2対の平行リンクである。
好ましくは、前記付勢部材は、少なくともその一部が前記ハウジングの上面に形成された孔に収容されている。
好ましくは、前記少なくとも1つの付勢部材は、並列に配置された4つの圧縮バネである。
好ましくは、前記動力シリンダは、前記ガイド支持具に水平方向の力を加えて前記複数のリンクを回転可能に構成される複動シリンダである。
好ましくは、前記ハウジング及び前記電極ガイドは、加工液又は圧縮気体を供給するための少なくとも1つの流路をその内部に備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る下側ガイドユニット100の斜視図である。
図2図1の下側ガイドユニット100の上方正面側から見た、工具電極1及び動力シリンダ49を除く構成部品の分解斜視図である。
図3図1の下側ガイドユニット100の下方背面側から見た、工具電極1、電極ガイド2、及び動力シリンダ49を除く構成部品の分解斜視図である。
図4】電極ガイド2を装着・固定した状態における下側ガイドユニット100の、電極ガイド2の中心軸を通る平面における正面断面図である。
図5図1におけるA−A断面図である。
図6図1のハウジング3及び電極ガイド2の、正面から見た分解断面図である。
図7図1の引き上げ機構4の、正面から見た分解断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る下側ガイドユニット100における、電極ガイド2を装着・固定した状態の側面図である。
図9図8の状態の側断面図である。
図10図9のD部の拡大図である。
図11】本発明の実施形態に係る下側ガイドユニット100における、電極ガイド2が下側ガイドユニット100から脱去可能な状態の側面図である。
図12図11の状態の側断面図である。
図13図12のE部の拡大図である。
図14図6のダイス固定部2cの部品を単独で拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。尚、加工ヘッドと中間ガイドを含めて細穴放電加工装置の全体の構成は、図示省略されているが、基本的によく知られている実施の形態の放電加工装置と概ね同一であって、具体的には、各先行技術が参照される。
【0014】
1.下側ガイドユニットの構成
本発明の一実施形態の下側ガイドユニット100は、放電加工を行うための放電加工装置に装着され、被加工物(不図示)の加工部分に放電加工を行うためのものである。図1及び図4に示すように、下側ガイドユニット100は、工具電極1の鉛直下側部分を導通し、電極ガイド2と、ハウジング3と、引き上げ機構4とを備える。電極ガイド2及びハウジング3の内部には、加工液供給装置5から送られる加圧加工液、及び圧縮気体供給装置6から送られる圧縮空気の流路が形成されており、当該流路を経由して生成されるミストを電極ガイド2の下面から被加工物の加工部分に噴射し、これにより加工中に生じる加工屑を除去しながら放電加工を行う構成となっている。
【0015】
1.1.工具電極
工具電極1は、内部に中空孔が設けられた円筒型のパイプ電極であり、外径は、例えば、0.3〜3.0mmである。工具電極1は、電極ガイド2の中心軸に沿って少なくとも先端が突出するように電極ガイド2に導通され、下側ガイドユニット100の上方においては、中間部を中間ガイド(不図示)に指示され、上側部分において電極ホルダ(不図示)により加工ヘッド(不図示)に装着されている。被加工物の加工時には、工具電極1と被加工物との間に電圧が印加されることにより放電が発生し、工具電極1は、下側ガイドユニット100の上方に存在するスピンドル(不図示)により電極ガイド2の中心軸周りに回転しながら加工を行うことが可能である。また、工具電極1の中空孔内には、圧縮気体供給装置6から圧縮気体が供給され、被加工物の加工部分に噴射される。尚、本実施形態における工具電極1は、断面が円形の中空孔を有するパイプ電極であるが、任意の形状及び個数の中空孔を有するパイプ電極を使用可能であり、中空孔を有しない棒状電極を使用してもよい。
【0016】
1.2.ハウジング
図4及び図6に示すように、ハウジング3は、テーパ面3bを有する嵌合孔3aを備え、複数のリンク48を介して引き上げ機構4により支持される。ハウジング3のテーパ面3bには、第1供給路出口7a及び第2供給路出口8aが設けられる。ハウジング3内には、加工液供給装置5及び第1供給路出口7aを接続する第1供給路7と、圧縮気体供給装置6及び第2供給路出口8aを接続する第2供給路8とが形成される。第1供給路7は、加圧加工液を加工液供給装置5から電極ガイド2へと供給するための流路であり、第2供給路8は、圧縮気体を圧縮気体供給装置6から電極ガイド2へと供給するための流路である。
【0017】
1.3.加工液供給装置
加工液供給装置5は、加圧加工液を供給するためのものである。加工液としては、例えば、水、水溶性加工液、油性加工液等を用いることができる。本実施形態においては、加工液として水を用いる。
【0018】
1.4.圧縮気体供給装置
圧縮気体供給装置6は、圧縮気体を供給するためのものである。圧縮気体としては、例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン等を用いることができる。本実施形態においては、圧縮気体として空気を用いる。
【0019】
1.5.電極ガイド
図2図4、及び図6に示すように、電極ガイド2は、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部2aと、テーパ部2aよりも上方且つ電極ガイド2の上端に設けられ、上端に膨出部分を有するプルスタッド部2eと、テーパ部2aよりも下方(圧縮気体の流れについて下流側)に設けられたダイス固定部2cと、下面に形成された噴射口2dとを備える。電極ガイド2は、引き上げ機構4に対して挿脱可能に装着される。テーパ部2aのテーパ面2bには、テーパ部2aの周方向に沿って延びる環状凹部を有する第1接続口9a及び第2接続口10aが、第2接続口10aが第1接続口9aよりも電極ガイド2の下面に近い位置に配置されるように設けられる。
【0020】
電極ガイド2内には、第1接続口9aと噴射口2dとを接続する第1流通経路9が形成される。第1流通経路9は、テーパ部2aがハウジング3の嵌合孔3aに嵌合することにより第1供給路7と接続されて、加工液供給装置5から供給される加圧加工液の流路となる。第1流通経路9は、電極ガイド2の中心軸に沿って挿通される工具電極1と電極ガイド2の内面との間に形成された加工液充填領域9cを備える。供給された加工液を加工液充填領域9cに充填し、流通させることにより、工具電極1を効率的に冷却し、放電加工時の工具電極1の消耗を抑制することができる。
【0021】
第1接続口9aは、第1環状凹部9a1と、第1環状凹部9a1の周方向において離間するように第1環状凹部9a1の底面に形成された複数の第1開口部9a2とを備え、第1接続口9aは、複数の第1開口部9a2を介して第1流通経路9に接続される。本実施形態においては、第1環状凹部9a1の周方向において対向する位置に2つの第1開口部9a2が形成されている。加工液供給装置5が第1供給路7及び第1流通経路9に加圧加工液を供給すると、加工液は2つの第1開口部9a2を介して第1流通経路9へと送られる。これにより、加工液充填領域9cにおいて加工液を偏りなく安定的に流通させることができる。
【0022】
図2図4、及び図6に示すように、電極ガイド2内には、第2接続口10aと噴射口2dとを接続する第2流通経路10がさらに形成される。第2流通経路10は、テーパ部2aがハウジング3の嵌合孔3aに嵌合することにより第2供給路8と接続されて、圧縮気体供給装置6から供給される圧縮気体の流路となる。第2流通経路10は、圧縮気体の流れについて下流側にミスト生成空間10eを備える。
【0023】
第2接続口10aは、第2環状凹部10a1と、第2環状凹部10a1の周方向において離間するように第2環状凹部10a1の底面に形成された複数の第2開口部10a2とを備え、第2接続口10aは、複数の第2開口部10a2を介して第2流通経路10に接続される。本実施形態においては、第2環状凹部10a1の周方向において対向する位置に2つの第2開口部10a2が形成されている。圧縮気体供給装置6が第2供給路8及び第2流通経路10に圧縮気体を供給すると、圧縮空気は2つの第2開口部10a2を介して第2流通経路10へと流入する。
【0024】
図4及び図6に示すように、加工液充填領域9cには、工具電極1を導通し、且つ互いに離間して配置された複数のダイスが配置され、工具電極1とダイスとの間には、間隙(クリアランス)が設けられる。本実施形態においては、3つのダイス17a,17b,17cが配置され、工具電極1との間に間隙が各々設けられている。
【0025】
ダイス17a,17b,17cにより、放電加工中に生じる工具電極1の芯振れとそれに伴う加工位置のずれを防止し、高い精度で加工を行うことができる。また、工具電極1とダイス17a,17b,17cとの間隙を介して加圧加工液を流通させることで、ダイスからの流出点において微小量の加工液を噴出させることができる。これにより、加工液充填領域9cの上端部においては、加工液充填領域9c内の加工液を噴出させて上方に突出した工具電極1を冷却することができる。また、加工液充填領域9cの下端部においては、加工液充填領域9c内の加工液をミスト生成空間10eへと補助的に噴出させることができる。尚、間隙の大きさは、好ましくは、0.0025〜0.010mmである。
【0026】
図4及び図6に示すように、電極ガイド2のダイス固定部2cは、その内面によりダイス17b,17cを固定している。図14に示すように、ダイス固定部2cの内面上には、内面の周方向において離間された複数の加工液噴出溝2c1が形成されており、加工液充填領域9c内の加圧加工液は、加工液噴出溝を介してミスト生成空間10eに偏りなく供給される。本実施形態においては、ダイス固定部2cの内面の周方向において90度毎に、断面が同一径の略半円形状である4つの加工液噴出溝が電極ガイド2の中心軸方向に延びるように形成されている。
【0027】
図6に示すように、テーパ部2aのテーパ面2bには、テーパ部2aの周方向に沿って延びる環状溝13が、第1接続口9aの上方、第1接続口9aと第2接続口10aとの間、第2接続口10aの下方の3箇所に形成され、各環状溝13にはOリング14が嵌入される。Oリング14は、電極ガイド2が引き上げ機構4に固定された状態で、テーパ部2aのテーパ面2bに沿って第1接続口9a及び第2接続口10a各々の両側をシールし、これにより、各接続口から漏れ出した加工液及び圧縮気体が電極ガイド2の外部にさらに漏れ出すことを防止できる。
【0028】
1.6.引き上げ機構
図1に示すように、引き上げ機構4は、ガイド支持具40と、複数のリンク48と、動力シリンダ49とを備え、電極ガイド2を挿脱可能に保持する。
【0029】
<ガイド支持具40>
図2図3、及び図7に示すように、ガイド支持具40は、少なくとも1つの付勢部材41と、変位部材42と、外枠43と、前枠44と、後枠45と、位置決め部材46と、ガイドシャフト47とを備える。
【0030】
本実施形態における変位部材42は、水平面に沿って配置された平板状の平板部42aと、平板部42aの下方に位置する円筒状の円筒部42bとを備え、略中心部には、プルスタッド収容孔42fが形成される。平板部42aの対向する1対の側面には、2つの突出部42cが設けられる。
【0031】
変位部材42の下方には略平板上の位置決め部材46が配置されている。位置決め部材46は、水平面に沿って配置された平板状の平板部46aと、平板部46aの上方に位置する円筒状の円筒部46bとを備える。図4及び図7に示すように、変位部材42の円筒部42bの外面は、位置決め部材46の円筒部46bの内面に対して同軸になるようにガイドシャフト47によって案内されており、従って、変位部材42は、位置決め部材46に対して鉛直方向に変位可能である。
【0032】
図1図4、及び図7に示すように、本実施形態において、外枠43は、変位部材42を挟むように配置され正面側が前枠44により連結されている1対の部材であり、その側面上には、水平方向に延びる2つのスロット状貫通孔43aが形成される。変位部材42の2つの突出部42cは各々、2つのスロット状貫通孔43aに挿入され、スロット状貫通孔43aがスロットの長手方向に沿って突出部42cに対して相対移動可能となるように構成される。
【0033】
図3及び図7に示すように、変位部材42の円筒部42bの円筒壁には、周方向に沿って複数のボール孔42eが形成され、ボール孔42eの全て又は一部に、ステンレス製のボール42dが嵌入される。後述するように、ボール42dは、変位部材42の鉛直方向変位に伴って、位置決め部材46の円筒部46b内部のボール収容空間46d内を移動可能に構成され、電極ガイド2のプルスタッド部2eと係合して、電極ガイド2を引き上げ機構4に対して固定する役割を果たす。本実施形態においては、4つのボール42dが、変位部材42の円筒部42bの周方向に沿って等間隔に形成された4つのボール孔42eに各々嵌入される。尚、複数のボール孔42eの数及び位置は、本実施形態の構成に限定されず、増減可能であるが、好ましくは、変位部材42の円筒部42bの周方向に沿って等間隔に形成される。また、用いられるボール42dの数は、本実施形態の例に限定されないが、実用上複数必要であり、好ましくは、3個又は4個である。
【0034】
図2図3、及び図5に示すように、本実施形態に係るガイド支持具40は、付勢部材41として4つの圧縮バネを備える。変位部材42の平板部42aの4隅に形成された貫通孔42gには、4つのガイドシャフト47の上端が嵌入されており、各付勢部材41はガイドシャフト47に巻装された状態で、鉛直方向に沿って並列に配置される。位置決め部材46の4隅には4つの貫通孔46cが形成され、ガイドシャフト47に巻装された付勢部材41は、位置決め部材46の貫通孔46cに各々導通される。また、ハウジング3の上面には嵌合孔3aの周囲に4つの付勢部材収容空間3cが形成されており、ガイドシャフト47の下端は、付勢部材収容空間3cの底面において、4つの固定部材3eにより各々固定される。つまり、ガイドシャフト47に巻装された付勢部材41の下側は、ハウジング3の上面に形成された4つの付勢部材収容空間3cに各々収容される。本実施形態において、図5に示す状態の付勢部材41は、凡そ下半分が付勢部材収容空間3cに収容されている。
【0035】
このような構成により、付勢部材41は、変位部材42を鉛直方向に付勢することができる。後述するように、付勢部材41は、当該付勢により電極ガイド2を引き上げて固定する役割を果たす。また、付勢部材41の少なくとも一部を付勢部材収容空間3c内に収容することにより、付勢部材41の配置による下側ガイドユニット全体の高さ(厚さ)の増加を最小限に抑えることが可能となる。尚、付勢部材41の数及び配置は本実施形態の例に限定されないが、好ましくは、複数の付勢部材41が、変位部材42の平板部42aの下面において、外周により近い位置に、外周に沿って凡そ等間隔に配置される。
【0036】
ガイド支持具40の背面には、後枠45が外枠43と連結された状態で配置される。後枠45の中央部に形成されたスロット状の貫通孔には、ガイド支持具40と動力シリンダ49とを連結するための連結部材45aが導通される。
【0037】
<動力シリンダ49>
図1及び図8に示すように、本実施形態に係る動力シリンダ49は、ガイド支持具40の背面側に配置され、シリンダ49aと、シリンダ49aの内部で摺動可能なピストン49bと、ロッド49cと、ジョイントブロック49dと、ベース49eとを備える。シリンダ49aは、その正面においてジョイントブロック49dと連結される。また、ロッド49cは、ジョイントブロック49dに形成されたロッド導通孔49d1に導通され、連結部材45a、連結ナット45bを介してガイド支持具40と連結される。ベース49eは、その上面においてジョイントブロック49dと連結され、その正面においてハウジング3の背面と接する。
【0038】
本実施形態に係る動力シリンダ49は複動型のエアシリンダであり、空気圧によりロッド49cが水平方向(図6におけるX+方向又はX−方向)に往復運動を行う。ロッド49cの先端は連結部材45aを介して後枠45に連結されており、ロッド49cの往復運動に伴い、後枠45及びそれに連結されている外枠43がX+方向又はX−方向に移動する。尚、本実施形態においては、動力シリンダ49として複動型のエアシリンダを用いたが、動力シリンダ49の種類はこれに限定されず、例えば、単動型のエアシリンダや、油圧シリンダを用いてもよい。
【0039】
図9に示すように、ロッド49cには、連結部材45a及び連結ナット45bがダブルナットで固定されており、図9に示すロッド49cがX+方向に最大限引き戻された状態において、連結部材45aと後枠45の連結部材45a側の端面との間には数mmの間隔(遊び)が設けられている。このような遊びを設けることにより、特に、ロッド49cが最大限引き戻されてピストン49bが停止する際に、ガイド支持具40への停止に伴う振動の伝播を抑制できる。
【0040】
<複数のリンク48>
本実施形態に係るガイド支持具40は、複数のリンク48として2対の平行リンクを備える。図2及び図7に示すように、リンク48は、アーム部48a及び2つの連結部48bを備え、アーム部48aが各連結部48bに対して回転可能に構成される。2対のリンク48は、ガイド支持具40を挟むように配置され、2つの連結部48bが外枠43の側面上に形成された連結孔43b及びハウジング3の側面上に形成された連結孔3dに各々嵌入した状態で固定され、引き上げ機構4とハウジング3とを連結する。図8及び図9において、動力シリンダ49が水平方向(図8におけるX+方向又はX−方向)に加える力により後枠45及び外枠43がX+方向又はX−方向に移動すると、各リンク48は、ハウジング3の連結孔3dに嵌入された連結部48bを軸として回転する。具体的には、動力シリンダ49がX−方向に力を加えることにより、リンク48は支点Cを中心として半時計回りに回転し、動力シリンダ49がX+方向に力を加えることにより、リンク48は支点Cを中心として時計回りに回転する。
【0041】
2.電極ガイド2の挿脱
次に、引き上げ機構4に対する電極ガイド2の挿脱方法について説明する。
2.1.電極ガイド2の固定
まず、電極ガイド2が引き上げ機構4に対して取り付けられ、固定されている状態について説明する。図4図8、及び図9に示すように、電極ガイド2の固定時において、電極ガイド2のテーパ部2aは、ハウジング3の嵌合孔3aに対して、テーパ部2aのテーパ面2bがハウジング3のテーパ面3bに密着するように、嵌合している。プルスタッド部2eは、少なくともその一部が変位部材42のプルスタッド収容孔42fに収容されている。この状態での変位部材42の位置を、規制位置と定める。
【0042】
規制位置にある変位部材42は、付勢部材41により鉛直上向きに付勢されている。具体的には、4つの付勢部材41各々のばね定数をk[N/mm]、各付勢部材41の変位をΔL[mm]とし、変位部材42が規制位置にある際にΔL=ΔLa[mm]であるとすると、規制位置にある変位部材42に対する鉛直上向きの付勢力Fs(ΔL)[N]は、以下の式1により求められる。
【0043】
【数1】
【0044】
図10に示すように、変位部材42が規制位置にあるとき、ボール42dは、プルスタッド部2eの膨出部分及び位置決め部材46の円筒部46bの内面に挟持されている。この状態でのボール42dの位置を、係合位置と定める。付勢部材41による付勢、及びボール42dのプルスタッド部2eとの係合により、電極ガイド2は、引き上げ機構4から抜け落ちることなく強固に固定される。
【0045】
本実施形態において、放電加工時には、電極ガイド2内の第1流通経路9及び第2流通経路10内に加圧加工液及び圧縮空気が供給され、生成されたミストが噴射口2dから噴射される。この場合、供給される流体により、電極ガイド2に対して鉛直下向きの力Ff[N]が発生する。FsがFf及び電極ガイド2の荷重による鉛直下向きの力を十分に上回るように付勢部材41を適宜設計することで、ミスト噴射を行いながら、電極ガイド2の固定を保つことができる。
【0046】
2.2.電極ガイド2の脱去
次に、電極ガイド2を引き上げ機構4から取り外す方法について説明する。電極ガイド2を取り外す際には、図8及び図9に示した装着・固定状態において、動力シリンダ49により、後枠45に対してX−方向の力を加える。ロッド49cの動きに伴い後枠45及び外枠43がX−方向に移動すると、リンク48が半時計回りに回転し、図11及び図12に示す、電極ガイド2が下側ガイドユニット100から脱去可能な状態に移行する。
【0047】
図8を参照して、動力シリンダ49が加える力によるリンク48の回転についてより詳細に説明する。動力シリンダ49がX−方向に加える力をFh[N]、リンク48と鉛直方向とがなす角度をθ、リンク48と外枠43との結合点Bと、支点Cとの間の距離をRとする。電極ガイド2の自重はFh,Fsに比べ十分に小さいとすると、支点C周りの力のモーメントのつり合いは、以下の式2で表される。
【0048】
【数2】
【0049】
従って、動力シリンダ49により、(式3)を満たすようなX−方向の力Fh[N]を加えることにより、リンク48が半時計回りに回転し始める。
【0050】
【数3】
【0051】
ここで、図8及び図9に示した装着・固定状態から図11及び図12に示した脱去可能な状態に移行する過程において、常に式3を満たすように、動力シリンダ49により力Fhを加えることで、リンク48を回転可能である。
【0052】
この際、変位部材42は外枠43の移動に伴って鉛直下向きに変位する。上述のように、スロット状貫通孔43aは、スロットの長手方向に沿って突出部42cに対して相対移動可能に構成されている。このような構成により、図8及び図9に示した装着・固定状態から図11及び図12に示した脱去可能状態へ移行する過程において、又は後述する脱去可能状態から装着・固定状態へ移行する過程において、変位部材42を鉛直方向にのみ変位させることができる。
【0053】
図13に示すように、変位部材42の鉛直下向きへの変位に伴い、ボール42dは、ボール収容空間46dを移動して、プルスタッド部2eの膨出部分から係脱する。これにより、電極ガイド2の引き上げ機構4への固定が解除され、電極ガイド2は下側ガイドユニット100から脱去可能となる。電極ガイド2が下側ガイドユニット100から脱去可能となった図11から図13の状態における、変位部材42の位置を開放位置、ボール42dの位置を係脱位置と定める。
【0054】
2.3.電極ガイド2の装着
次に、電極ガイド2を引き上げ機構4に取り付ける方法について説明する。電極ガイド2の取り付け時には、変位部材42が開放位置にある状態において、電極ガイド2のテーパ部2aをハウジング3の嵌合孔3aに対して下方から嵌合させる。図12及び図13に示すように、テーパ部2aが嵌合孔3aに嵌合すると、プルスタッド部2eは、少なくともその一部が変位部材42のプルスタッド収容孔42fに収容されるが、この時点ではボール42dは係脱位置にあるため、電極ガイド2は引き上げ機構4に対して固定されていない。
【0055】
この状態から、動力シリンダ49により、後枠45に対してX+方向の力を加える。ロッド49cの動きに伴い後枠45及び外枠43がX+方向に移動すると、リンク48が時計回りに回転し、変位部材42が規制位置に変位し、図8及び図9の状態に戻る。
【0056】
変位部材42の開放位置から規制位置への変位に伴い、係脱位置にあるボール42dは、ボール収容空間46d内を係合位置へと移動し、図10に示すように、プルスタッド部2eの膨出部分及び位置決め部材46の円筒部46bの内面に係合し挟持され、これにより、電極ガイド2が引き上げ機構4に対して固定される。
【0057】
上述のように、本実施形態における引き上げ機構4においては、動力シリンダ49によりリンク48を回転させることで、電極ガイド2の固定及び開放を容易に行うことができる。加えて、リンク48の利用により、動力シリンダ49が加える水平方向の力を鉛直方向の力に変換して変位部材42を変位させることが可能であるため、動力シリンダ49をガイド支持具40の背面に配置し、鉛直方向においてコンパクトな下側ガイドユニット100を実現できる。
【0058】
2.4.電極ガイド2の装着時の流路の接続
電極ガイド2の装着において、テーパ部2aが嵌合孔3aに嵌合すると、図4及び図6に示すように、第1流通経路9と第1供給路7とが第1接続口9a及び第1供給路出口7aを介して接続され、第2流通経路10と第2供給路8とが第2接続口10a及び第2供給路出口8aを介して接続される。これにより、電極ガイド2及びハウジング3内に形成された加工液流路同士及び圧縮空気の流路同士が各々接続される。
【0059】
テーパ部2aの嵌合孔3aへの嵌合により、電極ガイド2の中心軸方向におけるハウジング3に対する電極ガイド2の位置は一意的に決まる。さらに、第1接続口9a及び第2接続口10aがテーパ部2aの周方向に沿って延びる環状凹部を備えるため、周方向の任意の位置において第1供給路出口7a及び第2供給路出口8aと各々接続可能であり、流通経路と供給路とをより容易且つ確実に接続することができる。電極ガイド2が装着された状態で、さらに、工具電極1を電極ガイド2の中心軸に沿って挿通させて装着することで、放電加工が可能な状態になる。
【0060】
3.放電加工時のミスト生成
次に、放電加工時のミスト生成について説明する。
【0061】
図4に示すように、加工液供給装置5から供給された加圧加工液は、加工液充填領域9cを経由して加工液噴出溝2c1からミスト生成空間10eへと噴出し、ミスト生成空間10eにおいて圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、噴射口2dから工具電極1に沿うようにミストとして噴射される。これにより、加工箇所近傍の加工屑を効率的に除去できる。
【0062】
加工液をミスト状にして噴射する場合、加工箇所により近い下側ガイドユニット100の下側でミストが生成されることが望ましい。加工箇所からより離れた位置で加工液が圧縮空気と混合すると、生成されたミストが加工箇所に移送される過程で凝集してミスト微粒子のサイズが大きくなり、加工屑の除去効果が低下する。本実施形態においては、第1接続口9aと第2接続口10aとを相互に異なる高さに設け、テーパ部2aのテーパ面2bに沿って両側をOリング14によりシールすることで、各接続口から漏れ出した加工液及び圧縮気体がミスト生成空間10eに至る前に混合することを防止できる。これにより、良質のミストを生成し、加工箇所近傍に安定的に送ることが可能となる。
【0063】
4.他の実施形態
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
1 :工具電極
2 :電極ガイド
2a :テーパ部
2b :テーパ面
2c :ダイス固定部
2c1 :加工液噴出溝
2d :噴射口
2e :プルスタッド部
3 :ハウジング
3a :嵌合孔
3b :テーパ面
3c :付勢部材収容空間
3d :連結孔
3e :固定部材
4 :引き上げ機構
5 :加工液供給装置
6 :圧縮気体供給装置
7 :第1供給路
7a :第1供給路出口
8 :第2供給路
8a :第2供給路出口
9 :第1流通経路
9a :第1接続口
9a1 :第1環状凹部
9a2 :第1開口部
9c :加工液充填領域
10 :第2流通経路
10a :第2接続口
10a1 :第2環状凹部
10a2 :第2開口部
10e :ミスト生成空間
13 :環状溝
14 :Oリング
17a,17b,17c :ダイス
40 :ガイド支持具
41 :付勢部材
42 :変位部材
42a :平板部
42b :円筒部
42c :突出部
42d :ボール
42e :ボール孔
42f :プルスタッド収容孔
42g :貫通孔
43 :外枠
43a :スロット状貫通孔
43b :連結孔
44 :前枠
45 :後枠
45a :連結部材
45b :連結ナット
46 :位置決め部材
46a :平板部
46b :円筒部
46c :貫通孔
46d :ボール収容空間
47 :ガイドシャフト
48 :リンク
48a :アーム部
48b :連結部
49 :動力シリンダ
49a :シリンダ
49b :ピストン
49c :ロッド
49d :ジョイントブロック
49d1 :ロッド導通孔
49e :ベース
100 :下側ガイドユニット
B :結合点
C :支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14