(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-70474(P2021-70474A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20210409BHJP
B61D 17/20 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
B61F5/24 A
B61F5/24 B
B61F5/24 C
B61D17/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-183218(P2020-183218)
(22)【出願日】2020年10月30日
(31)【優先権主張番号】201911052304.1
(32)【優先日】2019年10月31日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518229179
【氏名又は名称】青▲島▼理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張 春巍
(72)【発明者】
【氏名】王 昊
(72)【発明者】
【氏名】徐 洋
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムを提供する。
【解決手段】センサと、コントローラと、制御装置とを含み、制御装置は、動力ユニットと、出力ユニットと、ハウジングとを含み、動力ユニットおよび出力ユニットはハウジング内に取り付けられる高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムであって、列車車体のヨーイング、ローリング、ピッチング運動に対してアクティブ制御トルクを加え、車体に直接作用して制御することにより、従来の高速列車の振動制御サスペンションシステムの技術ギャップを埋める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、コントローラと、制御装置(1)とを含む高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムであって、
前記センサは、制御される列車に取り付けられ、
前記制御装置(1)は、制御される列車の車両接続箇所に取り付けられ、前記制御装置(1)は、動力ユニット(14)と、出力ユニット(15)と、ハウジング(16)とを含み、前記動力ユニット(14)および前記出力ユニット(15)はいずれも前記ハウジング(16)内に取り付けられ、
前記ハウジング(16)は、底板(2)と、環状側板(3)と、蓋板(4)とを含み、前記底板(2)および前記蓋板(4)のいずれにも貫通孔(5)が形成され、前記底板(2)及び前記蓋板(4)は、車両に固定され、
前記動力ユニット(14)は、モータ(6)と、増速歯車対(13)とを含み、前記増速歯車対(15)は、増速主歯車(7)と、増速副歯車(8)とを含み、前記モータ(6)は、前記底板(2)に固定され、前記増速主歯車(7)は、前記モータ(6)に取り付けられ、前記増速副歯車(8)は、前記底板(2)に固定され、前記増速主歯車(7)と前記増速副歯車(8)は互いに噛み合い、前記センサおよび前記モータ(6)はいずれも前記コントローラに電気的に接続され、
前記出力ユニット(15)は、慣性モーメントリング(9)と、トルク伝達リング(10)と、接続リング(11)とを含み、前記慣性モーメントリング(9)、前記トルク伝達リング(10)および前記接続リング(11)はいずれも中空リングであり、前記中空リングの中心軸線は、前記貫通孔(5)の中心軸線に一致し、前記接続リング(11)は、前記底板(2)に固定され、前記慣性モーメントリング(9)は、前記トルク伝達リング(10)を介して前記接続リング(11)に固定され、前記慣性モーメントリング(9)の外周には、前記増速副歯車(8)に噛み合う歯が設けられることを特徴とする高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項2】
4セットの前記動力ユニット(14)は、前記出力ユニット(15)の外周に均等に配置されることを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項3】
前記接続リング(11)には環状溝(12)が形成され、前記トルク伝達リング(10)は、前記環状溝(12)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項4】
前記慣性モーメントリング(9)と前記トルク伝達リング(10)は一体構造であることを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項5】
前記増速副歯車(8)の直径は、前記増速主歯車(7)の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項6】
前記トルク伝達リング(10)の材質はゴムであることを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項7】
前記制御装置(1)の中心は、車両の中心軸線に位置することを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【請求項8】
前記センサは、車両の頂部に取り付けられ、前記コントローラは、前記モータ(6)の底部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動制御分野に関し、具体的には、高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車は、高速鉄道上の走行速度が速く、その動的挙動が複雑であり、走行過程において鉄道の不平坦、列車が擦れ違うときに形成される気圧差、および風、雨、雪などの外部要因の影響を受けるので、単一の運動パターンの制御問題ではなく、車体の並進運動(浮き沈み、横揺れおよび伸縮)、揺動運動(ピッチング、ヨーイングおよびローリング)および振動と運動の組み合わせの複雑な問題となる。列車の複雑な動的挙動の解決に適用される制御システムの研究は、重要な理論的および実用的な重要性を有する。
【0003】
高速列車の動的挙動に対して、現在、サスペンションシステムにより列車の振動および他の不利な動的挙動を制御している。しかし、従来のサスペンションシステムの作用方向には縦方向と横方向の2つの作用方向しかないので、その出力方向も縦方向と横方向の2つの方向に限られている。その結果、サスペンションシステムによる制御作用は十分に発揮されず、列車の不利な動的応答は十分に抑制されない。
【0004】
実際には、列車の動的応答によりヨーイング、ローリング、ピッチングなどの回転に類似した運動が発生する。回転運動に対しては、従来のサスペンションシステム技術の直線力作用は、最も効果的な制御力作用にならず、従来のサスペンションシステムの制御作用は十分に発揮されず、列車の不利な動的応答は十分に抑制されない。
【0005】
高速鉄道上の列車の走行速度の増加および人々の乗り心地に対する要求の向上に伴い、列車の高速走行過程において複雑な作用により発生する動的挙動、特に回転運動を含む動的挙動の問題はより顕著になっている。そのため、従来のサスペンション技術を補い、制御トルクを直接出力する制御システムの研究は、受動的外乱による車体の不安定な運動の減少、車体の動的安定性の向上、乗客の乗り心地の確保、車体の破壊および損傷の軽減、列車の使用寿命の延長に対して重要な理論的および実用的な重要性を有する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来技術のサスペンションシステムの不足に対して、列車ヨーイング、ローリング、ピッチングなどの回転成分を有する運動形態を制御できる高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムは、センサと、コントローラと、制御装置とを含み、
前記センサは、制御される列車に取り付けられ、
前記制御装置は、制御される列車の車両接続箇所に取り付けられ、前記制御装置は、動力ユニットと、出力ユニットと、ハウジングとを含み、前記動力ユニットおよび前記出力ユニットはいずれも前記ハウジング内に取り付けられ、
前記ハウジングは、底板と、環状側板と、蓋板とを含み、前記底板および前記蓋板のいずれにも貫通孔が形成され、前記底板及び前記蓋板は、車両に固定され、
前記動力ユニットは、モータと、増速歯車対とを含み、前記増速歯車対は、増速主歯車と、増速副歯車とを含み、前記モータは、前記底板に固定され、前記増速主歯車は、前記モータに取り付けられ、前記増速副歯車は、前記底板に固定され、前記増速主歯車と前記増速副歯車は互いに噛み合い、前記センサおよび前記モータはいずれも前記コントローラに電気的に接続され、
前記出力ユニットは、慣性モーメントリングと、トルク伝達リングと、接続リングとを含み、前記慣性モーメントリング、前記トルク伝達リングおよび前記接続リングはいずれも中空リングであり、前記中空リングの中心軸線は、前記貫通孔の中心軸線に一致し、前記接続リングは、前記底板に固定され、前記慣性モーメントリングは、前記トルク伝達リングを介して前記接続リングに固定され、前記慣性モーメントリングの外周には、前記増速副歯車に噛み合う歯が設けられる。
【0008】
好ましくは、4セットの前記動力ユニットは、前記出力ユニットの外周に均等に配置される。
好ましくは、前記接続リングには、環状溝が形成され、トルク伝達リングは、環状溝に固定される。
好ましくは、前記慣性モーメントリングと前記トルク伝達リングは一体構造である。
好ましくは、前記増速副歯車の直径は、前記増速主歯車の直径よりも小さい。
好ましくは、前記トルク伝達リングの材質はゴムである。
好ましくは、前記制御装置の中心は、車両の中心軸線に位置する。
好ましくは、前記センサは、車両の頂部に取り付けられ、前記コントローラは、前記モータの底部に固定される。
【0009】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明のアクティブ制御システムは、列車車体のヨーイング、ローリング、ピッチング運動に対して、車体にアクティブ制御トルクを直接加えることにより、車体を制御し、従来の高速列車の振動制御サスペンションシステムの技術ギャップを埋めた。
(2)本発明のアクティブ制御システムにより、受動的外乱による車体の不安定な運動が減少され、車体の動的安定性が向上し、乗客の乗り心地が確保され、車体の破壊および損傷が軽減され、列車の使用寿命が延長される。
(3)本発明のアクティブ制御設計により、制御システムの性能が最大限に発揮され、制御システムの制御効率が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】動力ユニットおよび出力ユニットの取付構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0012】
本発明の高速列車ローリング動的挙動アクティブ制御システムは、センサ、コントローラおよび制御装置1を含む。
図1に示すように、制御装置1は、制御される列車の1つの車両接続箇所に取り付けられ、制御装置1の中心は、車両の中心軸線に位置する。
制御装置1は、動力ユニット14、出力ユニット15およびハウジング16を含む。
【0013】
図2−3に示すように、ハウジング16は、底板2、環状側板3および蓋板4を含む。底板2は環状側板3に固定して接続され、蓋板4は、底板2に背向する環状側板3の一端に固定して接続され、底板2および蓋板4はいずれも車両に固定して接続され、底板および蓋板のいずれにも貫通孔5が形成され、底板2は、車両接続箇所の一方側の車両に取り付けられ、蓋板4は、車両接続箇所の他方側の車両に取り付けられ、動力ユニット14および出力ユニット15はいずれもハウジング16内に取り付けられる。
【0014】
図4に示すように、動力ユニット14は、モータ6および増速歯車対13を含む。増速歯車対13は、増速主歯車7および増速副歯車8を含む。モータ6は、底板2に固定される。増速主歯車7は、モータ6に取り付けられる。増速副歯車8は、底板2に固定される。増速主歯車7と増速副歯車8は互いに噛み合う。増速副歯車8の直径は、増速主歯車7の直径よりも小さい。
【0015】
図5−7に示すように、出力ユニット15は、慣性モーメントリング9、トルク伝達リング10および接続リング11を含む。慣性モーメントリング9、トルク伝達リング10および接続リング11は、いずれも中空リングである。慣性モーメントリング9の円心軸、トルク伝達リング10の円心軸および接続リング11の円心軸は互いに一致する。接続リング11は、底板2に固定され、具体的には、接続リング11は、ボルトにより底板2に固定される。トルク伝達リング10は、慣性モーメントリング9と接続リング11との間に接続される。接続リング11には環状溝12が形成される。慣性モーメントリング9とトルク伝達リング10は一体構造である。トルク伝達リング10は、環状溝12に挿入されて接続リング11に固定して接続される。トルク伝達リング10の材質はゴムである。具体的には、トルク伝達リング10は、硬質ゴムで作製され、トルクを伝達可能であるとともに、ある程度の制振効果を有する。慣性モーメントリング9の外周には、増速副歯車8に噛み合う歯が設けられる。動力ユニット14は合計4セットある。4セットの動力ユニット14は、出力ユニット15の外周に均等に配置される。
【0016】
慣性モーメントリング9、トルク伝達リング10および接続リング11の円心軸は、いずれも底板2および蓋板4における貫通孔5の中心軸線に一致する。底板2および蓋板4は、車両に固定して接続される。制御システム全体の中央にはチャンネルが形成される。チャンネルは車両に連通し、乗客の通過に供される。
【0017】
センサは、車両の頂部に取り付けられ、コントローラは、モータ6の底部に固定される。センサおよびモータ6は、いずれもコントローラに電気的に接続される。
【0018】
本発明の作用過程は以下の通りである。
センサにより列車の回転角度応答をリアルタイムにモニタリングし、それを電気信号に変換してコントローラに伝送する。コントローラは、一連の計算により電気信号を出力制御してモータ6に伝送する。モータ6は増速歯車対13を駆動することで慣性モーメントリング9の回転を加速または減速することにより、制御トルクが形成される。トルクは、トルク伝達リング10および接続リング11により底板2に伝達され、最終的に車体に作用する。本発明は、モータ6の転向および回転速度を変化させて制御力を出力することにより、車両の回転角度応答を制御する目的を達成する。
【0019】
本発明の基本原理は、力と偶力は相互に同等ではないという力学の基本概念に基づいている。ある場合には、制御される対象の運動特徴は、回転運動の形態がトルクによって制御されなければならないことを決定する。そのため、従来の出力方式または直線運動による制御システムは失効する。車体に制御トルクを直接加える本発明の制御方法は、従来の高速列車の振動制御サスペンションシステムの技術ギャップを埋めた。
【0020】
以上の説明は本発明の好ましい実施例を説明するものであり、本発明を制限しない。当業者は、本発明に対して様々な変更および変化を行うことができる。本発明の思想および原則内の全ての修正、同等置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0021】
1、制御装置
2、底板
3、環状側板
4、蓋板
5、貫通孔
6、モータ
7、増速主歯車
8、増速副歯車
9、慣性モーメントリング
10、トルク伝達リング
11、接続リング
12、環状溝
13、増速歯車対
14、動力ユニット
15、出力ユニット
16、ハウジング。
【外国語明細書】