【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかるインクジェットインク(以下、「本発明のインク」と記す)は、成分として、顔料と、分散剤と、分散媒を少なくとも含み、各成分が、可食性であるインクジェットインクであって、前記分散媒が、有機溶媒のみからなり、前記有機溶媒が、50重量%以上含まれるとともに、前記顔料の平均分散粒子径(D
50)が50〜200nm、かつ、前記顔料の最大分散粒子径(D
99)が400nm未満であることを特徴としている。
【0008】
なお、本発明において、顔料の平均分散粒子径(D
50)が50〜200nm、かつ、最大分散粒子径(D
99)が400nm未満に限定されるが、平均分散粒子径(D
50)は、130nm以下が好ましく、110nm以下でより好ましく、最大分散粒子径(D
99)は、350nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。
本発明において、顔料としては、可食性のものであれば特に限定されないが、たとえば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、二酸化チタン、アルミニウムレーキなどが挙げられ、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄などの酸化鉄が好適である。
【0009】
上記酸化鉄の配合割合は、安定性、耐久性などのインクとして十分な性能を確保できれば、特に限定されないが、インクジェットインク100重量部中、0.5〜10重量部含まれることが好ましい。
酸化鉄の配合割合が0.5重量未満では、印刷体の色濃度に問題が出るおそれがあり、10重量部を超えると、ノズルのつまりなどの問題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明のインクにおいて、分散剤としては、可食性で、顔料の分散性を確保できれば、特に限定されないが、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と記す)、メタクリル酸コポリマー、アンモニアアルキルメタアクリレートコポリマー、デカグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも、PVPが好ましい。
すなわち、PVPは、分散剤としてだけではなくバインダーとしても作用し、別途バインダーを加えなくてもよくなる。そして、分子量1000以上10万未満のPVPが特に好ましい。
【0011】
また、本発明のインクにおいて、分散媒としては、可食性の有機溶媒であれば特に限定されないが、揮発性が高く、インクの速乾性に優れるため、エタノールが好適である。
【0012】
因みに、PVPを分散剤、エタノールを分散媒として用いた系においては、重量比で、
PVP:エタノール=1:4〜1:8が好ましく、PVP:エタノール=1:5〜1:7がより好ましい。
すなわち、エタノールが少なすぎると、顔料粒子がノズルに詰まりやすくなり、ドット抜けなどが発生しやすくなり、多すぎると、印刷濃度に問題がでるおそれがある。
【0013】
本発明のインクは、必要に応じて、ノズル先端での分散媒の揮発によるインクの固化を防ぐ目的で、表面調整剤を成分として含んでも構わない。
すなわち、プリンタを一定期間以上停止してプリンタを再稼働させる場合のように、インクが連続的に使用されるのではない場合、分散媒が揮発してノズル先端で顔料濃度が高くなったり、インクが固化したりして、ノズルが詰まるおそれがあるが、上記表面調整剤を成分中に加えることによって、分散媒の揮発を遅らせることができる。
【0014】
上記表面調整剤としては、医薬品添加物規格を満足するとともに、上記機能を備えたものであれば、特に限定されないが、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、シリコーンオイル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ひまし油などが挙げられる。
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、たとえば、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、 ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等の各種脂肪酸とグリセリンとの反応生成物である モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、ならびに上記各種脂肪酸とポリグリセリンとの反応生成物であるポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノクエン酸モノステアリン酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸モノステアリン酸エスエル、デカグリセンリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノミスチリン酸エステルなどのグリセリン脂肪酸エステルなどのHLB(親水性親油性バランス)が7〜15のものが好ましい。
HLBが、上記の範囲未満または上記範囲を超えると、インクの固化が防げずに、インクがノズルに詰まりやすくなったり、ドット抜けなどが発生しやすくなったりするおそれがある。
【0015】
上記表面調整剤の添加量は、特に限定されないが、インク100重量部中に、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜2重量部がより好ましく、0.3〜0.7重量部が特に好ましい。
すなわち、表面調整剤の添加量が多すぎると、ノズルが詰まったり、ドット抜けが発生したりするおそれがあり、少なくなると、表面調整剤の添加効果を得られなくなるおそれがある。
【0016】
本発明のインクジェットは、ノズルの乾燥防止のために、必要に応じて可食性の保湿成分が含まれていても構わない。
保湿成分としては、たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、水、食用乳化剤などが挙げられる。
保湿成分の添加量としては、5重量%以下が好ましい。
【0017】
本発明にかかるインクジェットインクを製造する方法としては、特に限定されないが、たとえば、少なくとも、前記顔料と、分散剤と、分散媒を分散混合して得た予備分散体を、遠心分離して形成される上澄み液からなる分散体を得たのち、この分散体をインクジェットインクとする方法、前記分散体を濃縮して得た濃縮分散体をインクジェットインクとする方法、得られた濃縮分散体の顔料濃度を調整するために有機溶媒で濃縮分散体を希釈する方法などが挙げられる。
【0018】
上記予備分散体を得る方法としては、特に限定されないが、メディアレスの分散機を用いても、分散メディアを用いる分散機を用いてもよい。
上記メディアレスの分散機としては、乳化分散装置(たとえば、パウレック社の商品名マイクロフルイダイサー、吉田機械工業社の商品名ナノマイザー、スギノマシン社の商品名スターバースト)が挙げられる。
一方、分散メディアとしては、サンドミルやビーズミルが挙げられる。
【0019】
なお、メディアレスの分散機は、目的外の成分の混入(コンタミネーション)を防止することできるため、得られるインクジェットインクの品質安定性の点で好ましいが、処理量に制限があるとともに、処理時間が長くかかるとともに、顔料粒子を十分細かくすることができないおそれがある。
【0020】
なお、媒体攪拌粉砕機としては、特に限定されないが、湿式媒体攪拌ミルが挙げられ、中でも、横型のビーズミルが好ましい。
上記ビーズミルに使用されるビーズ(媒体)としては、特に限定されないが、ジルコニアビーズが一般的である。
【0021】
本発明の製造方法において、分散体形成工程のあとに、得られた分散体を濃縮する濃縮分散体形成工程を設けるようにしても構わない。
すなわち、分散体形成工程において得られた分散体は、遠心分離によって顔料濃度が低くなっているので、そのままでは、十分な濃度の文字や図柄を印刷できないおそれがある。
そこで、分散体の他の成分、特に、分散媒を取り除くなどして、濃縮を図り、顔料濃度を高めることが好ましい。
【0022】
また、上記濃縮方法としては、特に限定されないが、ろ過濃縮、蒸発濃縮、減圧濃縮、超音波霧化分離が挙げられ、中でも、分散媒とともに、余分な分散剤を取り除きやすいことからろ過濃縮が好ましい。
【0023】
本発明の製造方法は、上記濃縮分散体に少なくとも他の成分を加えて濃度調整する濃度調整工程を備えていてもよい。
すなわち、濃縮工程で濃縮分散体は、各成分がインクとして使用するために適した濃度範囲になっていない場合がある。
そこで、各成分が使用に適した濃度範囲となるように濃度調整すればよい。
【0024】
本発明のインクジェットインクは、医療用の錠剤、健康食品の錠剤等への文字や図柄等の印刷に好適であるが、もちろん、他の印刷対象物、たとえば、食品類を包装する包装材料及び食品と接触する材料、ならびに食品類にも印刷可能である。
健康食品、又は医薬品用の錠剤は、コーティングの施された錠剤、コーティングのない素錠、易崩壊性の錠剤等、様々な種類の錠剤にも使用できる。
この錠剤としては、素錠、OD錠、FC錠、糖衣錠等の種々の剤形のものを対象とできる。
【0025】
包装材料としては、たとえば、パンの包装、食品のトレイ、弁当容器、パック等があり、食品と接触する材料としては、割りはし、楊枝、串等が挙げられる。
食品類としては、たとえば、ガム、キャンディー、ビスケット、クッキー、饅頭、チョコレート、みかん、りんご、スイカ、メロン、マンゴー、柿、桃等の果物や、野菜、加工肉類等が挙げられる。