【課題】水や水を含む主剤に分散した際の分散性、コーティング組成物としたときのポットライフ、並びに、塗膜にしたときの硬度、耐水性及び耐溶剤性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート組成物は、(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物と、親水性化合物と、から誘導される親水性ポリイソシアネート化合物、並びに、(B)ケイ素含有化合物、を含有し、前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、前記(B)ケイ素含有化合物の含有量が1質量部以上50質量部以下である。
(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物と、親水性化合物と、から誘導される親水性ポリイソシアネート化合物、並びに
(B)ケイ素含有化合物、
を含有し、
前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、前記(B)ケイ素含有化合物の含有量が1質量部以上50質量部以下である、ポリイソシアネート組成物。
前記親水性化合物は、アニオン性化合物、カチオン性化合物及びノニオン性化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、前記ケイ素含有化合物の含有量が2質量部以上50質量部以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0017】
≪ポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、(A)親水性ポリイソシアネート化合物と(B)ケイ素含有化合物と、を含有する。(A)親水性ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物と、親水性化合物と、から誘導される。
【0018】
前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、前記ケイ素含有化合物の含有量は1質量部以上50質量部以下であり、2質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上40質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上20質量部以下が特に好ましい。ケイ素含有化合物の含有量が上記範囲内であることで、水分散性、並びに、塗膜としたときの硬度、耐水性及び耐溶剤性により優れるポリイソシアネート組成物が得られる。なお、ケイ素含有化合物の含有量において、対照となるポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート組成物の製造時に用いられる原料ポリイソシアネート化合物、又は、ポリイソシアネート組成物中の親水性ポリイソシアネート化合物及び親水性基が導入されていない未導入のポリイソシアネート化合物を示す。
ケイ素含有化合物の含有量は、ポリイソシアネート組成物の製造における配合量から算出することもでき、或いは、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)により算出することができる。
【0019】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、後述の実施例に示すように、水や水を含む主剤に分散した際の分散性に優れ、ポットライフに優れるコーティング組成物、並びに、硬度、耐水性及び耐溶剤性に優れる塗膜が得られる。また、上記効果が得られることから、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、水系二液型ポリウレタン組成物の硬化剤として好適に用いられる。
本実施形態のポリイソシアネート組成物の構成成分について、詳細を説明する。
【0020】
<(A)親水性ポリイソシアネート化合物>
(A)親水性ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物と親水性化合物から誘導される。すなわち、親水性ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物と親水性化合物との反応物であり、ポリイソシアネート化合物の少なくとも一部のイソシアネート基と親水性化合物の官能基とが結合を形成し、親水性基が導入されている。そのため、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、良好な水分散性を発現することができる。
【0021】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性ポリイソシアネート化合物に加えて、親水性基が導入されていない未導入のポリイソシアネート化合物を含んでもいてもよい。
【0022】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、親水性基の含有率は、ポリイソシアネート組成物の総質量に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、1質量%以上40質量%以下がさらに好ましく、1質量%以上30質量%以下が特に好ましい。親水性基の含有率が上記上限値以下であることで、水系二液型ポリウレタン組成物の硬化剤として用いた場合の硬化性をより高くすることができる。
【0023】
[ポリイソシアネート化合物]
親水性ポリイソシアネート化合物の原料となるポリイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導される。すなわち、ポリイソシアネート化合物は、上記ジイソシアネートの反応物である。
【0024】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6−ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と称する場合がある)、1,9−ジイソシアナトノナン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1、6−ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。
【0025】
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と称する場合がある)、1,3−又は1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル1−イソシアナト−3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と称する場合がある)、4−4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と称する場合がある)、2,5−又は2,6−ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。
【0026】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、m−及びp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α′,α′−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
中でも、ジイソシアネートとしては、HDI、IPDI、水添XDI、水添MDI、又はXDIが好ましく、HDI、IPDI、水添XDI、又は水添MDIがより好ましい。
【0028】
上記ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)〜(h)に示すポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
(a)2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン基を有するポリイソシアネート化合物;
(b)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート基又はイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアネート化合物;
(c)3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット基を有するポリイソシアネート化合物;
(d)2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン基を有するポリイソシアネート化合物;
(e)1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート化合物;
(f)2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート化合物;
(g)1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート化合物;
(h)1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素基を有するポリイソシアネート化合物
【0029】
中でも、ポリイソシアネート化合物としては、分子内にビウレット基、イソシアヌレート基、ウレタン基、ウレトジオン基、又はアロファネート基を有するものが好ましい。ビウレット基を有するものは接着性に優れている。イソシアヌレート基を有するものは耐候性に優れている。長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン基を有するものは弾性及び伸展性に優れている。ウレトジオン基を有するものは低粘度である。アロファネート基を有するものは、低粘度に加え、組み込まれた水酸基を有する化合物が有する性能(極性、Tgなど)を付与できる。
【0030】
ポリイソシアネート化合物は、脂肪族トリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物を含んでもよい。前記脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナト−ヘキサノエート等が挙げられる。
【0031】
上述したポリイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(ポリイソシアネート化合物の製造方法)
イソシアヌレート基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ジイソシアネートを触媒等によりイソシアヌレート化反応を行い、所定の転化率になったときに該反応を停止し、未反応のジイソシアネートを除去する方法が挙げられる。
【0033】
イソシアヌレート化反応に用いられる触媒としては、特に限定されないが、塩基性を示すものが好ましく、具体的には、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、アルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、金属アルコラート、アミノシリル基含有化合物、マンニッヒ塩基類、第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、燐系化合物等が挙げられる。
テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等が挙げられる。
アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
アルカリ金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。
金属アルコラートとしては、例えば、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等が挙げられる。
アミノシリル基含有化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
燐系化合物としては、例えば、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0034】
これらの触媒の使用量は、原料である、ジイソシアネート(及び、必要に応じてアルコール)の総質量に対して、10質量ppm以上1.0質量%以下が好ましい。また、イソシアヌレート化反応を終了させるために、触媒を中和する酸性物質の添加、熱分解、化学分解等により不活性化してもよい。触媒を中和する酸性物質としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネート化合物の収率は、一般的には、10質量%以上70質量%以下となる傾向にある。より高い収率で得られたポリイソシアネート化合物は、より粘度が高くなる傾向にある。収率は、原料成分の総質量に対する得られたポリイソシアネート化合物の質量の割合から算出できる。
【0036】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより進み易くなる傾向にあり、反応温度が上記上限値以下であることで、着色を引き起こすような副反応をより抑制することができる傾向にある。
【0037】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネートモノマーを薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。ポリイソシアネート化合物は、未反応のジイソシアネートを含んでいた場合であっても、ジイソシアネートの含有量がポリイソシアネート化合物の総質量に対して、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。残留未反応ジイソシアネートモノマー濃度が上記範囲内であることにより、硬化性がより優れる傾向にある。
【0038】
アロファネート基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法としては、例えば、ジイソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
【0039】
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
【0040】
アルコールの水酸基のモル量に対するジイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、10/1以上1000/1以下が好ましく、100/1以上1000/1以下がより好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、イソシアネート基平均数(平均官能基数)をより十分に確保することができる。
【0041】
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2−エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
また、上記イソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。上記イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート型ポリイソシアネートも当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、上記イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
【0042】
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだジイソシアネートモノマーの質量に対して、10000質量ppmが好ましく、1000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。一方、上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0043】
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましく、80℃がさらに好ましく、90℃が特に好ましい。一方、アロファネート化反応温度の上限値としては、160℃が好ましく、155℃がより好ましく、150℃がさらに好ましく、145℃が特に好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、60℃以上160℃以下が好ましく、70℃以上155℃以下がより好ましく、80℃以上150℃以下がさらに好ましく、90℃以上145℃以下が特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等の特性変化をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0044】
アロファネート化反応時間の下限値としては、0.2時間が好ましく、0.4時間がより好ましく、0.6時間がさらに好ましく、0.8時間が特に好ましく、1時間が最も好ましい。一方、アロファネート化反応時間の上限値としては、8時間が好ましく、6時間がより好ましく、4時間がさらに好ましく、3時間が特に好ましく、2時間が最も好ましい。
すなわち、アロファネート化反応時間は、0.2時間以上8時間以下が好ましく、0.4時間以上6時間以下がより好ましく、0.6時間以上4時間以下がさらに好ましく、0.8時間以上3時間以下が特に好ましく、1時間以上2時間以下が最も好ましい。
アロファネート化反応時間が上記下限値以上であることにより、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができ、一方、上記上限値以下であることにより、ポリイソシアネートの着色等の特性変化をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0045】
所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のアロファネート化反応触媒の失活剤を添加してアロファネート化反応を停止する。
【0046】
ポリイソシアネート化合物において、イソシアヌレート基に対するアロファネート基(以下、「アロファネート基/イソシアヌレート基」とも表記する場合がある。)のモル比率は、架橋性を向上させる観点から、0.50以下であることが好ましい。アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比率は、
13C−NMRの測定法により測定することができる。
【0047】
ウレタン基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法としては、例えば、トリメチロールプロパン等の2価以上6価以下のアルコール系化合物とジイソシアネートとを、アルコール系化合物の水酸基/ジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が約1/2以上約1/100以下となるように反応させた後、未反応ジイソシアネートを除去精製して、得られる。
【0048】
(ポリイソシアネート化合物の物性)
ポリイソシアネート化合物の数平均分子量は、塗膜の耐溶剤性の観点から、450以上4000以下が好ましく、500以上3500以下がより好ましく、550以上3000以下がさらに好ましい。
数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0049】
ポリイソシアネート化合物の平均官能基数は、塗膜の耐溶剤性の観点とイソシアネート基保持率との観点から、1.8以上6.2以下が好ましく、2.0以上5.6以下がより好ましく、2.5以上4.6以下がさらに好ましい。
平均官能基数は、ポリイソシアネート1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数であり、ポリイソシアネートの数平均分子量(Mn)とイソシアネート基含有率(NCO%)とから以下の式を用いて算出することができる。
【0050】
[平均官能基数] = Mn×NCO%/4200
【0051】
[親水性化合物]
親水性ポリイソシアネート化合物の原料である親水性化合物としては、親水性基を有する化合物である。親水性化合物は、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0052】
親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性化合物、カチオン性化合物、ノニオン性化合物等が挙げられる。これら親水性化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(アニオン性化合物)
アニオン性化合物は、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、スルホン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0054】
カルボン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリヒドロキシカルボン酸等の水酸基を含有するカルボン酸が挙げられる。中でも、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0055】
リン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、特定のポリエーテルホスホネート(例えばRHODAFAC(登録商標)の商品名で市販されているもの(ソルベイ日華株式会社))が挙げられる。中でも、酸性リン酸エステルが好ましい。
【0056】
水分散性の観点から、ポリイソシアネート組成物は、該ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。リン原子の含有率が0.03質量%以上であることで、界面張力が下がることに起因して、より良好な水分散性を示す傾向にある。
【0057】
また、ポリイソシアネート組成物は、塗膜物性の観点から、ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が6.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。リン原子の含有率が上記上限値以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなることに起因して、塗膜物性がより良好となる傾向にある。
【0058】
リン原子の含有率を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、上記リン酸基を含有する化合物と原料ポリイソシアネート化合物との配合比を調整する方法が挙げられる。また、リン原子の含有率は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により測定する。
【0059】
スルホン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を含有するスルホン酸、アミノ基を含有するスルホン酸等が挙げられる。水酸基を含有するスルホン酸としては、例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、4−ヒドロキシブタンスルホン酸、5−ヒドロキシペンタンスルホン酸、6−ヒドロキシヘキサンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸、特定のポリエーテルスルホネート(例えば、Tegomer(登録商標)の商品名で市販されているもの(The Goldschmidt AG,Essen,ドイツ))等が挙げられる。アミノ基を含有するスルホン酸としては、例えば、2−アミノエタンスルホン酸、2−メチルアミノエタンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−アミノトルエン−2−スルホン酸、5−アミノトルエン−2−スルホン酸、2−アミノナフタレン−4−スルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
中でも、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、又は3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸が好ましい。
【0061】
アニオン性化合物のカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性基は、無機塩基や有機アミン化合物で中和することが好ましい。
【0062】
無機塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、カドミウム、鉛、アルミニウム等の金属;アンモニアが挙げられる。
【0063】
有機アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリデシルアミン、トリステアリルアミン等の直鎖三級アミン類;トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン等の分岐三級アミン類;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジエチルブチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルラウリルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルヘキシルアミン等の混合炭化水素基を有する三級アミン類;N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の脂環三級アミン類;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチル−4−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジエチルフェニルアミン、N,N−ジフェニルメチルアミン等の芳香環置換基を有する三級アミン類;N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−ブチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−プロピルモルホリン、N−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリン、N−イソブチルモルホリン、キヌクリジン等の環状アミン類等が挙げられる。これらの有機アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
中でも、炭素数5以上30以下の三級のアミン類が好ましく、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリデシルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジエチルブチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルラウリルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジエチルフェニルアミン、N,N−ジフェニルメチルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン等が挙げられる。これらの好ましい有機アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
ポリイソシアネート化合物を水に分散させるために、親水性化合物で変性を行う(親水性化合物に由来する親水性基をポリイソシアネート化合物に導入する)が、変性する割合を高くしすぎないことにより、塗膜物性(硬度、耐水性及び耐溶剤性)の低下を抑制できる傾向にある。すなわち、アニオン性化合物は乳化力が高いため、少量で高い乳化効果を得ることができる。
【0066】
ポリイソシアネート組成物において、硫黄原子の含有率の下限値は、水分散性の観点から、ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、0.03質量%が好ましく、0.05質量%がより好ましく、0.08質量%がさらに好ましい。硫黄原子の含有率が上記下限値以上であることで、界面張力が下がることに起因して、より良好な水分散性を示す傾向がある。
【0067】
また、ポリイソシアネート組成物において、硫黄原子の含有率の上限値は、塗膜物性の観点から、ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、3.0質量%が好ましく、2.5質量%がより好ましく、2.0質量%がさらに好ましい。硫黄原子の含有率が上記上限値以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなることに起因して、塗膜物性がより良好となる傾向にある。
【0068】
すなわち、ポリイソシアネート組成物において、硫黄原子の含有率は、ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、0.03質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.08質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0069】
硫黄原子の含有率を上記範囲内に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、上記スルホン酸基を含有する化合物と原料ポリイソシアネート化合物との配合比を調整する方法が挙げられる。また、硫黄原子の含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)により測定することができる。
【0070】
原料ポリイソシアネート化合物と上記アニオン性化合物とを反応させる方法として、以下のものに限定されないが、例えば、原料ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基と、上記アニオン性化合物が有する活性水素基とを反応させる方法が挙げられる。
【0071】
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−(ジメチルアミノプロピル)アミノエタノール等の水酸基を含有するアミン化合物が挙げられる。中でも、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、又はN,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノールが好ましい。上記カチオン性化合物に由来する、ポリイソシアネートに導入された三級アミノ基(カチオン性親水性基)は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
【0072】
カチオン性化合物の三級アミノ基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。上記カルボキシ基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。上記スルホン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。上記燐酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。上記ハロゲン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩酸等が挙げられる。上記硫酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、硫酸等が挙げられる。中でも、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0073】
(ノニオン性化合物)
ノニオン性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが有する水酸基の数は、ポリイソシアネート組成物の粘度を低くする観点から、1つであることが好ましい。好ましいポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、下記一般式(II)で表される構造を有する。
【化3】
【0074】
(一般式(II)中、R
21は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R
22は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、n21は4.0以上20以下である。)
【0075】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、単一成分ではなく、重合度を示すn21(以下、「重合度n21」又は単に「n21」と称する場合がある)の数が異なる物質の集合体である。そのため、重合度n21は、その平均値で表す。
ポリイソシアネートを水系主剤に配合する際、主剤と混ぜたときの増粘が問題となる場合が多い。増粘が多い場合は、ポリイソシアネートが主剤へ均一に分散することができず、塗膜物性の低下につながる傾向にある。
そのため、n21は、水分散性と主剤への分散性及との観点から、4.0以上20以下であり、4.0以上16以下が好ましく、4.0以上12以下がより好ましい。n21が上記下限値以上であることで、乳化力が増すため分散性が向上する傾向にあり、一方、上記上限値以下であることで、粘度上昇を防ぐため、容易に分散することができる傾向にある。
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、n21が異なるものを2種以上組み合わせて使用される。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのn21は、プロトン核磁気共鳴(NMR)法により測定することができる。
【0076】
一般式(II)中、R
21は、親水性付与の観点から、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より親水性が付与できる観点から、炭素数2のエチレン基が好ましい。
また、R
22は、親水性付与の観点から炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より親水性が付与できる観点から、炭素数1のメチル基が好ましい。
【0077】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとして具体的には、以下のものに限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテル、ポリ(エチレン、プロピレン)グリコール(モノ)メチルエーテル、ポリエチレングリコール(モノ)エチルエーテルが挙げられる。中でも、親水性付与の観点から、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルが好ましい。
【0078】
ポリイソシアネート組成物において、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率は、塗膜物性の観点から、ポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、2.0質量%以上30質量%以下が好ましく、4.0質量%以上20質量%以下がより好ましく、6.0質量%以上18質量%以下がさらに好ましく、6.0質量%以上16質量%以下が特に好ましい。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率が上記範囲内であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなり、塗膜物性(硬度、耐水性及び耐溶剤性)がより良好となる傾向にある。
【0079】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率を上記範囲内に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネート化合物との配合比を調整する方法が挙げられる。また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率は、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)により測定することができる。
【0080】
ポリイソシアネート組成物中において、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルによって変性された割合(変性率)(以下、「ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの導入率」と称する場合がある)は、原料ポリイソイソシアネート化合物のイソシアネート基100モル当量に対して、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分が導入された割合である。上記変性率は、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率を上述した好ましい範囲に調整する観点から、0.5モル%以上40モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上30モル%以下であることがより好ましく、2.0モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
上記含有率及び変性率は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。
具体的には、ポリイソシアネート組成物を試料として、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未導入のポリイソシアネート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分が1つ導入されたポリイソシアネート、2つ導入されたポリイソシアネート、及び、3つ以上導入されたポリイソシアネートのピーク面積比から求めることができる。LCによる測定条件としては、例えば、以下の条件等が挙げられる。
【0082】
(測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm
C18 内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とする。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0083】
<(B)ケイ素含有化合物>
(B)ケイ素含有化合物は、分子中にケイ素原子を有する有機化合物である。また、その中でも水分散性、ポットライフの点で、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。以下、下記一般式(I)で表される化合物を「ケイ素含有化合物(I)」と称する場合がある。
【0085】
一般式(I)中、X
11はアルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアヌレート基、ハロアルキル基又はメルカプト基である。
R
11、R
12及びR
13は、互いに独立して、水素原子、アルコキシ基又はアルキル基である。R
11、R
12及びR
13からなる群より選ばれる2つ以上は互いに結合して環構造を形成してよい。前記環構造は、芳香族環、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基である。R
11、R
12及びR
13は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R
11、R
12及びR
13からなる群より選ばれる1つ以上はアルコキシ基である。
n11は0以上10以下の整数である。
【0086】
R
11、R
12及びR
13におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。中でも、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0087】
R
11、R
12及びR
13におけるアルコキシ基は、例えば、加水分解反応によって水酸基となっていてもよい。この場合、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つ、又は全部が加水分解反応によって水酸基となっていてもよい。
【0088】
R
11、R
12及びR
13におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。中でも、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0089】
X
11におけるハロアルキル基としては、上述したR
11、R
12及びR
13におけるアルキル基を構成する水素原子のうち少なくとも1つがハロゲン原子に置換された基である。ハロアルキル基を構成するハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。このようなハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、フルオロメチル基、ヨウ化メチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、フルオロエチル基、ヨウ化エチル基、クロロプロピル基等が挙げられる。
【0090】
ケイ素含有化合物(I)として具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシヌレート、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらケイ素含有化合物(I)は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0091】
ケイ素含有化合物(I)は、X
11に不飽和炭化水素基やエポキシ基を有することができる。不飽和炭化水素基を有するケイ素含有化合物(I)としては、例えば、ビニル基、メタクリル基又はアクリル基を有するケイ素含有化合物(I)(すなわち、X
11がビニル基、メタクリル基又はアクリル基であるケイ素含有化合物(I))が挙げられる。X
11がビニル基、メタクリル基又はアクリル基であるケイ素含有化合物(I)として具体的には、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0092】
<その他成分>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性ポリイソシアネート化合物及びケイ素含有化合物に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0093】
溶剤としては、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよい。これら溶剤は単独又は混合して使用することができる。
【0094】
疎水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS(Low Aromatic White Spirit)、HAWS(High Aromatic White Spirit)、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エステル類、ケトン類、アミド類が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0095】
親水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エーテルアルコール類のエステル類が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
エーテルアルコール類のエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0096】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、溶剤の含有量は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の全質量に対して、0質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
酸化防止剤及び光安定剤としては、例えば、以下の(a)〜(e)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
(a)燐酸若しくは亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体;
(b)フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;
(c)フェノール系誘導体(特に、ヒンダードフェノール化合物);
(d)チオエーテル系化合物、ジチオ酸塩系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオカルバニリド系化合物、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;
(e)スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物
【0098】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。重合禁止剤として具体的には、例えば、 ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン、ナフトキノン、2,6−ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t− ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0099】
界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0100】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤の合計含有量は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の全質量に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0101】
<ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、ポリイソシアネート化合物と親水性化合物との反応を行い、親水性ポリイソシアネート化合物を得た後、得られた親水性ポリイソシアネート化合物とケイ素含有化合物との混合を行う方法等が挙げられる。
【0102】
ポリイソシアネート化合物と親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0103】
ポリイソシアネート化合物と親水性化合物との反応温度は、−20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0104】
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ポリイソシアネート組成物の水分散性、及び、塗料組成物としたときのポットライフがより良好なものになる傾向にある。
【0105】
親水性化合物が水酸基を有するスルホン酸である場合に、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、(A)水酸基を有するスルホン酸のアミン塩と、ポリイソシアネートとを混合反応させる工程を含むことが好ましい。又は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、例えば、(B)水酸基を有するスルホン酸と、ポリイソシアネートと、上記アミン化合物(1)と、を混合反応させる工程を含むことが好ましい。
【0106】
工程(A)では、スルホン酸のアミン塩は、予め調整しておいてからポリイソシアネートに添加することが好ましい。また、工程(B)では、ポリイソシアネートに、水酸基を有するスルホン酸と、アミン化合物とを同時に添加してもよく、順に添加してもよい。
中でも、工程(A)であることが好ましく、スルホン酸のアミン塩は、予め調整しておいてからポリイソシアネートに添加することがより好ましい。
【0107】
当該反応工程において、水酸基を有するスルホン酸又はそのアミン塩と、ポリイソシアネートとの混合比率は、乳化性と塗膜物性との観点から、イソシアネート基/水酸基のモル比で、2以上400以下の範囲であることが好ましく、5以上200以下の範囲であることがより好ましく、10以上100以下の範囲であるさらに好ましい。
【0108】
当該反応工程において、反応温度や反応時間は、反応の進行に応じて適宜決められるが、反応温度は0℃以上150℃以下であることが好ましく、反応時間は30分以上48時間以下であることが好ましい。
【0109】
また、当該反応工程において、場合により既知の通常の触媒を使用してもよい。当該触媒としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)〜(f)に示すもの等が挙げられる。これらは単独又は混合して使用してもよい。
(a)オクタン酸スズ、2−エチル−1−ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;
(b)塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2−エチル−1−ヘキサン酸亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;
(c)有機チタン化合物;
(d)有機ジルコニウム化合物;
(e)トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類;
(f)トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類
【0110】
上述した反応工程により、親水性ポリイソシアネート化合物を得た後、ケイ素含有化合物を添加して十分に攪拌することで、ポリイソシアネート組成物が得られる。ケイ素含有化合物の配合量は、上述したケイ素含有化合物の含有量の範囲となるように適宜調整することができる。
【0111】
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法において、溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いられる溶剤は、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよい。親水性溶剤及び疎水性溶剤としては、上述にその他の成分において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0112】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法において、親水性ポリイソシアネート化合物及びケイ素含有化合物に加えて、更に酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加してもよい。酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤としては、上述のその他の成分において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0113】
<ポリイソシアネート組成物の特性>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性化合物が水酸基を有するスルホン酸である場合に、乳化性と塗膜物性との観点から、原料ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基100モル量に対し、水酸基を有するスルホン酸による変性率が0.25モル量以上50モル量以下が好ましく、0.5モル量以上20モル量以下がより好ましく、1モル量以上10モル量以下がさらに好ましい。
水酸基を有するスルホン酸による変性率は、イオンクロマトグラフィー(IC)により測定することができる。
【0114】
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率は、不揮発分を100質量%とした場合に、塗膜の耐溶剤性の観点から、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、15質量%以上24質量%以下であることがより好ましい。イソシアネート基含有率を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、親水性化合物とポリイソシアネート化合物との配合比を調整する方法が挙げられる。イソシアネート基含有率は例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0115】
≪コーティング組成物≫
本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリイソシアネート組成物を含む。
本実施形態のコーティング組成物は、有機溶剤系のコーティング組成物として用いることもできるが、水を主とする媒体中に、上述のポリイソシアネート組成物と、塗膜形成成分である樹脂類とが溶解又は分散している水系コーティング組成物として用いることが好ましい。特に、建築用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、プラスチック用塗料、粘着剤、接着剤、建材、家庭用水系塗料、その他コーティング剤、シーリング剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤にも使用することができる。
【0116】
<樹脂類>
主剤の樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体等が挙げられる。
中でも、樹脂類としては、アクリル樹脂類又はポリエステル樹脂類が好ましい。
【0117】
(アクリル樹脂類)
アクリル樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)〜(e)等に示す重合性モノマーから選ばれた単独又は混合物を重合させて得られるアクリル樹脂類が挙げられる。これらアクリル樹脂類は単独又は混合して使用してもよい。
(a)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(b)(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
(c)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;
(d)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類;
(e)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、p−スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸等のその他の重合性モノマー類
【0118】
その重合方法としては、乳化重合が一般的であるが、懸濁重合、分散重合、溶液重合でも製造できる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
【0119】
(ポリエステル樹脂類)
ポリエステル樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂類等が挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。
ジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ジグリセリン、ジメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0120】
又は、例えば、低分子量ポリオールの水酸基にε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトン類等もポリエステル樹脂類として用いることができる。
【0121】
(ポリエーテル樹脂類)
ポリエーテル樹脂類としては、例えば、以下(a)〜(d)に示すもの等が挙げられる。
(a)多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、強塩基性触媒を使用して、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類;
(b)ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;
(c)環状エーテル類の開環重合によって得られるポリエーテルポリオール類;
(d)(a)〜(c)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類
【0122】
(a)における前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)〜(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等;
(ii)エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;
(vi)スタキオース等の四糖類
【0123】
(a)における前記強塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属類の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。アルカリ金属類としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0124】
(a)における前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
【0125】
(b)における前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0126】
(c)における前記環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0127】
また、本実施形態のコーティング組成物において、これらの樹脂類は、必要に応じて、メラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョン、ウレタンアクリルエマルジョン等の樹脂を併用することができる。
【0128】
また、これらの樹脂類は、水に乳化、分散又は溶解することが好ましい。そのために、樹脂類に含まれるカルボキシ基、スルホン基等を中和することができる。
カルボキシ基、スルホン基等を中和するための中和剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
中でも、中和剤としては、第三級アミンであることが好ましく、トリエチルアミン、又は、ジメチルエタノールアミンであることがより好ましい。
【0129】
<その他成分>
本実施形態のコーティング組成物は、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に、一般的に塗料に加えられる添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、増粘剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒(硬化促進用の触媒)、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤等が挙げられる。これら添加剤を1種単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0130】
架橋反応触媒(硬化促進用の触媒)としては、以下に限定されないが、例えば、以下の(a)又は(b)に示すもの等が挙げられる。
(a)ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属塩;
(b)トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン等の3級アミン類
【0131】
本実施形態のコーティング組成物は、塗料への分散性を良くするために、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に界面活性剤を含んでもよい。
【0132】
本実施形態のコーティング組成物は、塗料の保存安定性を良くするために、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤を含んでもよい。
【0133】
≪コーティング基材≫
本実施形態のコーティング基材は、上述のコーティング組成物によってコーティングされたコーティング基材である。本実施形態のコーティング基材は、上述のコーティング組成物を硬化させてなるコーティング膜からなるコーティング層を有するものであることが好ましい。
【0134】
本実施形態のコーティング基材は、所望の基材と、コーティング層との間に、通常のプライマー層を備えてもよい。
前記基材としては、例えば、金属、木材、ガラス、石、セラミック材料、コンクリート、硬質及び可撓性プラスチック、繊維製品、皮革製品、紙等が挙げられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における、ポリイソシアネート組成物の物性及び評価は、以下のとおり測定及び評価を行なった。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0137】
<物性の測定方法>
[物性1]
(粘度)
粘度はE型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃で測定した。標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下のとおりである。
【0138】
(回転数)
100r.p.m.(128mPa・s未満の場合)
50r.p.m.(128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20r.p.m.(256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10r.p.m.(640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5r.p.m.(1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
2.5r.p.m.(2560mPa・s以上5120mPa・s未満の場合)
【0139】
[物性2]
(イソシアネート基含有率)
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301−1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率の測定方法を示す。
【0140】
(1)試料1g(Wg)を200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ−n−ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2−プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量(V1mL)を求めた。
(5)試料を添加しない以外、上記(1)〜(4)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量(V0mL)を求めた。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率(NCO%)を以下に示す式を用いて、算出した。
【0141】
[イソシアネート基含有率](質量%) = (V0−V1)×42/[W(1g)×1000]×100
【0142】
[物性3]
(不揮発分)
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、溶剤希釈をした場合には、以下に示す方法を用いて、不揮発分を算出した。まず、アルミニウム製カップの質量を精秤し(W0g)、試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量(W1g)を精秤した。次いで、試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で3時間加熱した。次いで、加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量を精秤した(W2g)。次いで、試料中の乾燥残分の質量%を不揮発分として、以下に示す式を用いて、不揮発分を計算した。なお、溶剤希釈なしの場合には、不揮発分は実質的に100質量%であるとして扱った。
【0143】
[不揮発分](質量%) = (W2−W0)/(W1−W0)×100
【0144】
<評価方法>
[評価1]
(ポリイソシアネート組成物の水分散性)
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、水分散性を以下に示す方法を用いて、評価した。
(1)100mLフラスコと、吉野紙との質量を測定した(W0g)。
(2)ポリイソシアネート組成物を、固形分換算で16g(W2g)となるように100mLフラスコに採取し、脱イオン水24gを添加した。
(3)プロペラ羽根を使用し、200rpmで3分間、100mLフラスコ内の溶液を撹拌した後、(1)で秤量した吉野紙で濾過した。
(4)吉野紙に残った濾過残渣と、100mLフラスコに残った残渣とを合わせて105℃の乾燥機中で1時間加熱し、質量(g)を求めた(W1g)。
(5)以下の式を用いて、ポリイソシアネート組成物が水へ分散した割合を求めた。なお、式中、Yは不揮発分(質量%)である。
【0145】
水へ分散した割合(質量%)
= {1−(W2(g)−W0(g))/(W2(16g)×Y)}×100
【0146】
(6)次いで、以下の評価基準に従い、水分散性を評価した。
【0147】
(評価基準)
◎:95質量%以上
○:90質量%以上95質量%未満
△:80質量%以上90質量%未満
×:80質量%未満
【0148】
[コーティング組成物の製造]
アクリルポリオール水分散体(製品名:Setaqua6510、樹脂あたりの水酸基価:138mgKOH/g、Allnex社製):40gを容器に量り取った。次いで、アクリルポリオール水分散体中の水酸基のモル量に対する、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル量の比(NCO/OH)が1.25になるように、各ポリイソシアネート組成物を加えた。さらに、コーティング組成物中の固形分が42質量%となるように脱イオン水を加え、プロペラ羽根を用いて600rpmで10分間撹拌し、各コーティング組成物を得た。作製したコーティング組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0149】
[評価2]
(ポットライフ)
上記方法により得られた各コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、ゲル化までに1時間毎で厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃、50%湿度の雰囲気下で乾燥させ、翌日、得られた塗膜の光沢を測定した。コーティング組成物作製直後を0時間とし、そのときの塗膜の光沢度(20°)をG0とし、n時間後の光沢度をGnとし、イソシアネート基の保持率=Gn/G0を算出し、80%以上を保持できる時間をポットライフの時間とした。以下の評価基準に従い、ポットライフを評価した。
【0150】
(評価基準)
○:4時間以上
△:2時間以上4時間未満
×:2時間未満
【0151】
[評価3]
(塗膜の鉛筆硬度)
上記方法により得られた各コーティング組成物を用いて、軟鋼板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装した。次いで、23℃、50%RHの雰囲気下で乾燥させ、7日後、得られた塗膜の鉛筆硬度をJIS K 5600−5−4に準拠した方法で測定した。なお、硬度は、以下の順で高くなる。鉛筆硬度がF以上であるものを硬度が良好なものであると評価した。
【0152】
B<HB<F<H
【0153】
[評価4]
(塗膜の耐水性)
上記方法により得られた各コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、得られた塗膜上に直径20mmのシリコン製Oリングを載せ、その中に水を0.5g注ぎ入れた。次いで、23℃で12時間置き、表面に残った水を除いた後の塗膜の様子を観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の耐水性を評価した。なお、以下の評価基準における「ブリスター」とは、塗膜の表面に生じる水泡や膨れのことを意味する。
【0154】
(評価基準)
○:変化なし。
△:白濁、ブリスター発生無し。
×:ブリスター発生あり、白濁又は塗膜溶解。
【0155】
[評価5]
(塗膜の耐エタノール性)
上記方法により得られた各コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、60℃で30分間焼成した。次いで、23℃/50%RHの雰囲気下で冷却して塗膜を得た。翌日、得られた塗膜上にエタノールを含ませた綿棒で10回のラビングを実施し、表面の塗膜の様子を観察した。評価基準は以下のとおりとした。
【0156】
(評価基準)
○:透明、凹みなし
△:わずかに凹み又は白濁あり
×:白濁又は凹みあり
【0157】
<スルホン酸アミン塩の合成>
[合成例1−1]
(HES/TBAの合成)
70質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸(以下、「HES」と略記する場合がある)水溶液:20質量部に、1−プロパノール:10質量部を添加して撹拌して溶液を得た。更に、HESに対するモル当量比が1となるようにトリブチルアミン(以下、「TBA」と略記する場合がある)を量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下した。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.8質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(以下、「HES/TBA」と略記する場合がある)を得た。
【0158】
[合成例1−2]
(HBS/DMCHAの合成)
85質量%の4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸(以下、「HBS」と略記する場合がある)水溶液:20質量部に、1−プロパノール:10質量部を添加して撹拌して溶液を得た。更に、HBSに対するモル当量比が1となるようにジメチルシクロヘキシルアミン(以下、「DMCHA」と略記する場合がある)を量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下した。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.8質量%の4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ジメチルシクロヘキシルアミン(以下、「HBS/DMCHA」と略記する場合がある)を得た。
【0159】
[合成例1−3]
(リン酸2−ヒドロキシエチル/TBAの合成)
HESの代わりにリン酸2−ヒドロキシエチルを用いて、リン酸2−ヒドロキシエチルに対するモル当量比が0.88となるようにTBAを用いた以外は、合成例1−1と同様の方法を用いて、固形分99.6質量%のリン酸2−ヒドロキシエチルトリブチルアミン塩(以下、「リン酸2−ヒドロキシエチル/TBA」と略記する場合がある)を得た。
【0160】
<ポリイソシアネート化合物の合成>
[合成例2−1]
(ポリイソシアネートP−1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、及び、イソブタノール:4.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が25質量%になった時点で燐酸を添加して反応を停止した。次いで、反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートP−1を得た。得られたポリイソシアネートP−1の25℃における粘度は1500mPa・s、イソシアネート基含有率は23.1質量%であった。
【0161】
[合成例2−2]
(ポリイソシアネートP−2の合成)
収率が50質量%になった時点で燐酸を添加して反応を停止した以外は、合成例2−1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネートP−2を得た。得られたポリイソシアネートP−2の25℃における粘度は2700mPa・s、イソシアネート基含有率は21.7質量%であった。
【0162】
[合成例2−3]
(ポリイソシアネートP−3の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、IPDI:1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が25質量%になった時点で燐酸を添加して反応を停止した。次いで、反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のIPDIを除去し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を25質量%添加し、ポリイソシアネートP−3を得た。得られたポリイソシアネートP−3の25℃における粘度は1800mPa・s、イソシアネート基含有率は12.1質量%であった。
【0163】
[合成例2−4]
(ポリイソシアネートP−4の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、及び、イソブタノール:4.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が25質量%になった時点で燐酸を添加して反応を停止した。次いで、反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、得られたポリイソシアネートと、XDIのトリメチロールプロパン変性体(「タケネートD−110N」(商品名)、三井化学ポリウレタン社製、イソシアネート基含有率:11.5質量%)とを、同じ質量でブレンドし、ポリイソシアネートP−4を得た。得られたポリイソシアネートP−4の25℃における粘度は900mPa・s、イソシアネート基含有率は17.3質量%であった。
【0164】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]ポリイソシアネート組成物PA−a1の製造
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−1で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA):6.8質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(「KBE−403」(商品名)、信越化学株式会社製):5質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−a1を得た。
【0165】
[実施例2]
(ポリイソシアネート組成物PA−a2の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:15質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a2を製造した。
【0166】
[実施例3]
(ポリイソシアネート組成物PA−a3の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:25質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a3を製造した。
【0167】
[実施例4]
(ポリイソシアネート組成物PA−a4の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:35質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a4を製造した。
【0168】
[実施例5]
(ポリイソシアネート組成物PA−a5の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−1で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA):6.4質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(「KBM−5013」(商品名)、信越化学株式会社製):10質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a5を製造した。
【0169】
[実施例6]
(ポリイソシアネート組成物PA−a6の製造)
KBM−5013:10質量部の代わりに、KBM−5013:20質量部を添加した以外は実施例5と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a6を製造した。
【0170】
[実施例7]
(ポリイソシアネート組成物PA−a7の製造)
KBM−5013:10質量部の代わりに、KBM−5013:30質量部を添加した以外は実施例5と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a7を製造した。
【0171】
[実施例8]
(ポリイソシアネート組成物PA−a8の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約20となるように、合成例1−2で得られた4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ジメチルシクロヘキシルアミン(HBS/DMCHA):7.2質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し、KBE−403:10質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−a8を得た。
【0172】
[実施例9]
(ポリイソシアネート組成物PA−a9の製造)
ポリイソシアネートP−1:100質量部の代わりに、合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部を用い、且つ、KBE−403:10質量部の代わりに、メチルトリメトキシシラン(「KBM−13」商品名、信越化学株式会社製):5質量部を添加し以外は実施例8と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a9を製造した。
【0173】
[実施例10]
(ポリイソシアネート組成物PA−a10の製造)
KBM−13:5質量部の代わりに、KBM−13:15質量部を添加し以外は実施例9と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a10を製造した。
【0174】
[実施例11]
(ポリイソシアネート組成物PA−a11の製造)
KBM−13:5質量部の代わりに、KBM−13:25質量部を添加し以外は実施例9と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a11を製造した。
【0175】
[実施例12]
(ポリイソシアネート組成物PA−a12の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、アミノ基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/アミノ基)が20.0となるように、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(以下、「CAPS」と略記する場合がある):6.1質量部、及び、DMCHA:3.5質量部を添加し、窒素雰囲気下、還流しながら、100℃で5時間撹拌して、反応を行った。反応終了後、温度を50℃までに降温し、KBE−403:5質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−a12を製造した。
【0176】
[実施例13]
(ポリイソシアネート組成物PA−a13の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:15質量部を添加した以外は実施例12と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a13を製造した。
【0177】
[実施例14]
(ポリイソシアネート組成物PA−a14の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:30質量部を添加した以外は実施例12と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a14を製造した。
【0178】
[実施例15]
(ポリイソシアネート組成物PA−a15の製造)
KBE−403:5質量部の代わりに、KBE−403:40質量部を添加した以外は実施例12と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a15を製造した。
【0179】
[実施例16]
(ポリイソシアネート組成物PA−a16の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約10となるように、エチレンオキサイド繰返単位の平均数が4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(「MPG」(商品名)、日本乳化剤株式会社製):8.2質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、温度を50℃までに降温し、KBM−13:8質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−a16を製造した。
【0180】
[実施例17]
(ポリイソシアネート組成物PA−a17の製造)
KBM−13:8質量部の代わりに、KBM−13:15質量部を添加した以外は実施例16と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a17を製造した。
【0181】
[実施例18]
(ポリイソシアネート組成物PA−a18の製造)
KBM−13:8質量部の代わりに、KBM−13:25質量部を添加した以外は実施例16と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a18を製造した。
【0182】
[実施例19]
(ポリイソシアネート組成物PA−a19の製造)
KBM−13:8質量部の代わりに、KBM−5013:18質量部を添加し以外は実施例16と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a19を製造した。
【0183】
[実施例20]
(ポリイソシアネート組成物PA−a20の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部の代わりに、合成例2−3で得られたポリイソシアネートP−3:100質量部を用いて、KBE−403:5質量部の代わりに、KBM−5013:10質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a20を製造した。
【0184】
[実施例21]
(ポリイソシアネート組成物PA−a21の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部の代わりに、合成例2−4で得られたポリイソシアネートP−4:100質量部を用いて、KBE−403:5質量部の代わりに、KBM−5013:10質量部を添加した以外は実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PA−a21を製造した。
【0185】
[実施例22]
(ポリイソシアネート組成物PA−a22の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−1で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA):6.8質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し、テトラエトキシシラン(「KBE−04」(商品名)、信越化学株式会社製):10質量部を添加しポリイソシアネート組成物PA−a22を製造した。
【0186】
[実施例23]
(ポリイソシアネート組成物PA−a23の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−2で得られた4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ジメチルシクロヘキシルアミン(HBS/DMCHA):7.2質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し、テトラエチルシラン(「LS−2340」(商品名)、信越化学株式会社製):15質量部を添加しポリイソシアネート組成物PA−a23を製造した。
【0187】
[実施例24]
(ポリイソシアネート組成物PA−24aの製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−3で得られたリン酸2−ヒドロキシエチルトリブチルアミン塩(リン酸2−ヒドロキシエチル/TBA):6.8質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、温度を50℃までに降温し、KBE−403:15質量部を添加しポリイソシアネート組成物PA−a24を製造した。
【0188】
[比較例1]
(ポリイソシアネート組成物PA−b1の製造)
合成例2−1で得られたポリイソシアネートP−1:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約25となるように、合成例1−1で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(HES/TBA):6.8質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続し、ポリイソシアネート組成物PA−b1を製造した。
【0189】
[比較例2]
(ポリイソシアネート組成物PA−b2の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約20となるように、合成例1−2で得られた4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ジメチルシクロヘキシルアミン(HBS/DMCHA):7.2質量部を添加し、窒素下、還流下、120℃で3時間攪拌して反応を行い、還流を外して100℃で1時間撹拌して反応を継続し、ポリイソシアネート組成物PA−b2を得た。
【0190】
[比較例3]
(ポリイソシアネート組成物PA−b3の製造)
比較例1で得られたポリイソシアネート組成物PA−b1を50℃まで昇温し、KBE−403:60質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−b3を製造した。
【0191】
[比較例4]
(ポリイソシアネート組成物PA−b4の製造)
比較例2で得られたポリイソシアネート組成物PA−b2を50℃まで昇温し、KBM−5013:75質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−4bを製造した。
【0192】
[比較例5]
(ポリイソシアネート組成物PA−b5の製造)
比較例1で得られたポリイソシアネート組成物PA−b1を50℃まで昇温し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ−ト(PMA):20質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−b5を製造した。
【0193】
[比較例6]
(ポリイソシアネート組成物PA−b6の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、イソシアネート基/水酸基のモル当量比が約10となるように、MPG:8.2質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、ポリイソシアネート組成物PA−b6を製造した。
【0194】
[比較例7]
(ポリイソシアネート組成物PA−b7の製造)
合成例2−2で得られたポリイソシアネートP−2:100質量部に、KBE−403:15質量部を添加し、十分攪拌後、ポリイソシアネート組成物PA−b7を製造した。
【0195】
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物の物性を上記に記載の方法を用いて測定した。結果を表1〜表6に示す。また、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を用いて、上記に記載の方法により評価を行った。結果を表1〜表6に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
【表3】
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【0201】
【表6】
【0202】
表1〜表5から、親水性ポリイソシアネート化合物とケイ素含有化合物とを含有するポリイソシアネート組成物PA−a1〜PA−a23(実施例1〜23)では、水分散性、コーティング組成物としたときのポットライフ、並びに、塗膜の硬度、耐水性及び耐エタノール性に優れていた。
また、ケイ素含有化合物の含有量が異なるポリイソシアネート組成物PA−a1〜PA−a4(実施例1〜4)の比較、ポリイソシアネート組成物PA−a5〜PA−a7(実施例5〜7)の比較、ポリイソシアネート組成物PA−a9〜PA−a11(実施例9〜11)の比較、ポリイソシアネート組成物PA−a12〜PA−a15(実施例12〜15)の比較、及び、ポリイソシアネート組成物PA−a16〜PA−a18(実施例16〜18)の比較において、ポリイソシアネート化合物100質量部に対するケイ素含有化合物の含有量が15質量部以上である場合に、水分散性が特に良好になる傾向がみられた。
また、ケイ素含有化合物の種類が異なるポリイソシアネート組成物PA−a5及びPA−a22(実施例5及び22)の比較、並びに、ポリイソシアネート組成物PA−a10及びPA−a23(実施例10及び23)の比較において、特定の構造を有するケイ素含有化合物(上記一般式(I)で表される化合物)を用いたポリイソシアネート組成物PA−a5及びPA−a10では、水分散性、コーティング組成物としたときのポットライフ、並びに、塗膜の硬度、耐水性及び耐エタノール性の全てが特に良好になる傾向がみられた。
ポリイソシアネート化合物の種類が異なるポリイソシアネート組成物PA−a5、PA−a20及びPA−a21(実施例5、20及び21)において、脂肪族ジイソシアネートからなるポリイソシアネート化合物を用いたポリイソシアネート組成物PA−a5では、コーティング組成物としたときのポットライフがより優れる傾向がみられ、脂環族ジイソシアネートからなるポリイソシアネート化合物を用いたポリイソシアネート組成物PA−a20では、水分散性及びコーティング組成物としたときのポットライフが特に良好になる傾向がみられた。
親水性化合物の種類が異なるポリイソシアネート組成物PA−a10及びPA−a17(実施例10及び17)、並びに、PA−a11及びPA−a18(実施例11及び18)において、スルホン酸アミン塩を用いたポリイソシアネート組成物PA−a10及びPA−a11では、塗膜としたときの耐水性及び耐エタノール性がより優れる傾向がみられた。
【0203】
一方で、表6から、ケイ素含有化合物を含まないポリイソシアネート組成物PA−b1、PA−b2、及びPA−b6(比較例1、2、及び6)では、コーティング組成物としたときのポットライフは許容される程度であったが、水分散性、並びに、塗膜としたときの耐水性及び耐エタノール性がいずれも不良であり、ポリイソシアネート組成物PA−b6(比較例6)では、塗膜としたときの硬度も不良であった。
また、ケイ素含有化合物の含有量がポリイソシアネート化合物100質量部に対して50質量部超であるポリイソシアネート組成物PA−b3及びPA−b4(比較例3及び4)では、水分散性が良好であり、コーティング組成物としたときのポットライフは許容される程度であったが、塗膜としたときの硬度、耐水性及び耐エタノール性がいずれも不良であった。
また、ケイ素含有化合物の代わりに溶剤としてPMAを添加したポリイソシアネート組成物PA−b5(比較例5)では、水分散性、コーティング組成物としたときのポットライフ、並びに、塗膜としたときの硬度は許容される程度であったが、塗膜としたときの耐水性及び耐エタノール性がいずれも不良であった。
また、親水性化合物が導入された親水性ポリイソシアネート化合物を用いずに、ただのポリイソシアネート化合物を用いたポリイソシアネート組成物PA−b7(比較例7)では、塗膜としたときの耐水性及び耐エタノール性は許容される程度であったが、水分散性、コーティング組成物としたときのポットライフ、及び塗膜としたときの硬度がいずれも不良であった。