【解決手段】第1MRセンサ28および第2MRセンサ30は、第1磁気抵抗効果素子パターンと、第2磁気抵抗効果素子パターンとを組み合わせたものであり、第1MRセンサがピストン18の軸方向と平行な向きのマグネット26の磁界成分を最も多く受けるときに、第2MRセンサがピストンの径方向と平行な向きのマグネットの磁界成分を最も多く受けるように、第1MRセンサと第2MRセンサが所定の間隔Lを置いて配置される。
ピストンに取り付けられたマグネットの磁界をシリンダチューブに取り付けられた第1MRセンサおよび第2MRセンサで検出することにより、前記ピストンが所定位置にあることを検出する流体圧シリンダであって、
前記第1MRセンサおよび前記第2MRセンサは、前記ピストンの軸方向と平行な向きの磁界の強さに応じて抵抗値が減少する第1磁気抵抗効果素子パターンと、前記ピストンの径方向と平行な向きの磁界の強さに応じて抵抗値が減少する第2磁気抵抗効果素子パターンとを組み合わせたものであり、前記第1MRセンサが前記ピストンの軸方向と平行な向きの前記マグネットの磁界成分を最も多く受けるときに、前記第2MRセンサが前記ピストンの径方向と平行な向きの前記マグネットの磁界成分を最も多く受けるように、前記第1MRセンサと前記第2MRセンサが所定の間隔を置いて配置される流体圧シリンダ。
ピストンに取り付けられたマグネットの磁界をシリンダチューブに取り付けられた第1MRセンサ、第2MRセンサおよび第3MRセンサで検出することにより、前記ピストンが所定位置にあることを検出する流体圧シリンダであって、
前記第1MRセンサ、前記第2MRセンサおよび前記第3MRセンサは、前記ピストンの軸方向と平行な向きの磁界の強さに応じて抵抗値が減少する第1磁気抵抗効果素子パターンと、前記ピストンの径方向と平行な向きの磁界の強さに応じて抵抗値が減少する第2磁気抵抗効果素子パターンとを組み合わせたものであり、前記第1MRセンサが前記ピストンの軸方向と平行な向きの前記マグネットの磁界成分を最も多く受けるときに、前記第2MRセンサおよび前記第3MRセンサが前記ピストンの径方向と平行な向きの前記マグネットの磁界成分を最も多く受けるように、前記第1MRセンサ、前記第2MRセンサおよび前記第3MRセンサが前記ピストンの軸方向と平行な向きに所定の間隔で並んで配置される流体圧シリンダ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る流体圧シリンダについて、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る流体圧シリンダ10について、
図1〜
図16を参照しながら説明する。
図1に示されるように、流体圧シリンダ10は、一端がロッドカバー12で封止されるとともに他端がヘッドカバー14で封止されるシリンダチューブ16と、シリンダチューブ16内に摺動自在に配設されるピストン18と、ピストン18に連結されるピストンロッド20を含む。これらシリンダチューブ16、ロッドカバー12、ヘッドカバー14、ピストン18およびピストンロッド20は、いずれも、アルミニウム合金等の非磁性体材料から構成される。
【0015】
以下の説明において、上下左右の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面における方向をいうものであり、部材等の実際の配置を限定するものではない。また、ピストン18の摺動方向であるピストン18の軸方向と平行な向き、すなわち、図面における左右方向をA方向といい、ピストン18の径方向と平行な向き、すなわち、図面上における上下方向をB方向ということがある。
【0016】
シリンダチューブ16の内部空間は、ピストン18によってロッドカバー12側の第1圧力室22とヘッドカバー14側の第2圧力室24とに区画される。第1圧力室22と第2圧力室24には、それぞれ図示しないポートを介して圧力流体が給排される。ピストンロッド20の一端はピストン18に連結され、ピストンロッド20の他端はロッドカバー12を通って外部に延びている。
【0017】
第1圧力室22に圧力流体が供給されるとともに第2圧力室24の圧力流体が排出されると、ピストン18が右方に移動し、ピストンロッド20が引き込まれる。第2圧力室24に圧力流体が供給されるとともに第1圧力室22の圧力流体が排出されると、ピストン18が左方に移動し、ピストンロッド20が押し出される。
【0018】
本実施形態では、ピストンロッド20の押し出し工程において、所要の仕事が行われる。例えば、溶接ラインにおいて、溶接対象の板材であるワークがピストンロッド20の他端によって位置決め保持される。なお、ピストンロッド20を押し出す向きにピストン18が移動する工程を「駆動工程」といい、ピストンロッド20を引き込む向きにピストン18が移動する工程を「復帰工程」という。
【0019】
ピストン18の外周部には、環状のマグネット(永久磁石)26が取り付けられている。マグネット26はA方向に着磁されており、マグネット26の左側端面がN極、右側端面がS極となっている。マグネット26の周囲には、マグネット26の左側端面から出て、マグネット26の径方向外側を通り、マグネット26の右側端面に戻る磁界(磁束)46が形成されている。この磁界46は、シリンダチューブ16を超えて所定の領域まで及ぶ。本実施形態では、マグネット26の形状は、ピストン18の周囲を360度周回する環状であるが、ピストン18の回転を規制する構造を備えている場合は、マグネット26の形状は環状でなくてもよい。
【0020】
ロッドカバー12に近接するシリンダチューブ16の外側には、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサとしての第1MRセンサ28および第2MRセンサ30がA方向に所定距離Lを隔てて取り付けられている。また、第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に接続され、これらのセンサの出力を処理するセンサモジュール32がシリンダチューブ16の外側に設けられている。本実施形態では、第1MRセンサ28および第2MRセンサ30は、センサモジュール32とは別体として設けられているが、これらのセンサは、センサモジュール32の中に組み込まれてもよい。
【0021】
第1MRセンサ28と第2MRセンサ30は同一の構成であるので、代表して、第1MRセンサ28の構成について、
図2および
図3を参照しながら説明する。
図2に示されるように、第1MRセンサ28は、C方向の磁界に反応し、その強さに応じて抵抗値が減少する第1磁気抵抗効果素子パターン28aと、C方向と垂直なD方向の磁界に反応し、その強さに応じて抵抗値が減少する第2磁気抵抗効果素子パターン28bとを組み合わせたものである。
【0022】
図3に示されるように、第1磁気抵抗効果素子パターン28aの一端は、正電源電圧(Vcc)に接続され、第2磁気抵抗効果素子パターン28bの一端は、基準電圧(Gnd)に接続される。第1磁気抵抗効果素子パターン28aと第2磁気抵抗効果素子パターン28bとの連結点の電位が第1MRセンサ28の出力(V1)となる。第1磁気抵抗効果素子パターン28aの抵抗値が減少すると、連結点の電位が高くなり、第2磁気抵抗効果素子パターン28bの抵抗値が減少すると、連結点の電位が低くなる。
【0023】
次に、シリンダチューブ16に対する第1MRセンサ28と第2MRセンサ30の取付姿勢および取付位置について説明する。
【0024】
[センサの取付姿勢]
第1MRセンサ28は、第1磁気抵抗効果素子パターン28aが反応するC方向がA方向、第2磁気抵抗効果素子パターン28bが反応するD方向がB方向となるような姿勢で、シリンダチューブ16の外側に取り付けられる。同様に、第2MRセンサ30も、第1磁気抵抗効果素子パターンが反応する方向がA方向、第2磁気抵抗効果素子パターンが反応する方向がB方向となるような姿勢で、シリンダチューブ16の外側に取り付けられる。
【0025】
[センサの取付位置]
第1MRセンサ28は、ピストン18が
図1に示される基準位置にあるとき、ピストン18に取り付けられたマグネット26の磁界46のA方向成分を最も多く受ける位置に取り付けられる。一方、第2MRセンサ30は、第1MRセンサ28よりも右側であって、ピストン18が上記基準位置にあるとき、マグネット26の磁界46のB方向成分を最も多く受ける位置に取り付けられる。換言すれば、第1MRセンサ28がマグネット26の磁界46のA方向成分を最も多く受けるときに第2MRセンサ30がマグネット26の磁界46のB方向成分を最も多く受けるように、第1MRセンサ28と第2MRセンサ30がA方向に所定距離Lを隔てて配置される。
【0026】
本実施形態では、ピストン18の駆動工程においてストロークエンドに到達する少し手前で図示しないワークを位置決め保持しているときをピストン18の基準位置としている。
【0027】
図4に示されるように、ピストン18が基準位置から右方に距離Lだけ離れた位置にあるとき、第1MRセンサ28は、マグネット26の磁界46のB方向成分を多く受け、第2MRセンサ30は、マグネット26の磁界46のA方向成分を多く受ける。また、
図5に示されるように、ピストン18が基準位置から右方に距離2Lだけ離れた位置にあるとき、第1MRセンサ28は、マグネット26の磁界46の影響をほとんど受けず、第2MRセンサ30は、マグネット26の磁界46のB方向成分を多く受ける。
【0028】
図6は、ピストン18の位置Xに応じた第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2を示す図である。横軸はピストン18の位置Xを表し、縦軸はセンサの出力を表している。第1MRセンサ28の出力V1は実線で示され、第2MRセンサ30の出力V2は点線で示されている。ピストン18の位置Xは、ピストン18が基準位置にあるときを原点にとり、ピストン18がそれよりも右方にあるときを正の値としている。なお、便宜上、ピストン18がストロークエンドを超えて左方に位置する場合も含めて、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2を示している。
【0029】
第1MRセンサ28の出力V1は、ピストン18が原点にあるとき(X=0のとき)、最大値V
MAXとなり、X=Lのとき最小値V
MINとなる。第2MRセンサ30の出力V2は、X=Lのとき最大値V
MAXとなり、X=0およびX=2Lのとき最小値V
MINとなる。第2MRセンサ30は、第1MRセンサ28から所定距離Lだけ右方に配置されているので、第2MRセンサ30の出力V2の波形は、第1MRセンサ28の出力V1の波形を横軸正方向に距離Lに相当する分だけシフトしたものとなる。
【0030】
第1MRセンサ28および第2MRセンサ30がマグネット26から十分離れた遠方にあってマグネット26の磁界46を全く受けないとしたときの出力が基準出力Vsとして示されている。基準出力Vsと上記最大値V
MAXとの間の所定値がオン閾値V
ONとして設定され、基準出力Vsと上記最小値V
MINとの間の所定値がオフ閾値V
OFFとして設定される。
【0031】
図7に示されるように、第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に接続されるセンサモジュール32は、制御部34、第1比較部36aないし第4比較部36d、位置判定部38、第1診断部40、第2診断部42および通信部44を備えている。前述したオン閾値V
ONおよびオフ閾値V
OFFは、制御部34に保持されている。
【0032】
第1比較部36aには、第1MRセンサ28から出力V1が入力されるとともに、制御部34からオン閾値V
ONが入力される。第1比較部36aにおいて、第1MRセンサ28の出力V1がオン閾値V
ONと比較される。第1比較部36aは、第1MRセンサ28の出力V1がオン閾値V
ON以上であるとき、比較信号C1を立ち上げ、第1MRセンサ28の出力V1がオン閾値V
ON未満であるとき、比較信号C1を立ち下げる。
【0033】
第2比較部36bには、第1MRセンサ28から出力V1が入力されるとともに、制御部34からオフ閾値V
OFFが入力される。第2比較部36bにおいて、第1MRセンサ28の出力V1がオフ閾値V
OFFと比較される。第2比較部36bは、第1MRセンサ28の出力V1がオフ閾値V
OFF以下であるとき、比較信号C2を立ち上げ、第1MRセンサ28の出力V1がオフ閾値V
OFFを上回るとき、比較信号C2を立ち下げる。
【0034】
第3比較部36cには、第2MRセンサ30から出力V2が入力されるとともに、制御部34からオン閾値V
ONが入力される。第3比較部36cにおいて、第2MRセンサ30の出力V2がオン閾値V
ONと比較される。第3比較部36cは、第2MRセンサ30の出力V2がオン閾値V
ON以上であるとき、比較信号C3を立ち上げ、第2MRセンサ30の出力V2がオン閾値V
ON未満であるとき、比較信号C3を立ち下げる。
【0035】
第4比較部36dには、第2MRセンサ30から出力V2が入力されるとともに、制御部34からオフ閾値V
OFFが入力される。第4比較部36dにおいて、第2MRセンサ30の出力V2がオフ閾値V
OFFと比較される。第4比較部36dは、第2MRセンサ30の出力V2がオフ閾値V
OFF以下であるとき、比較信号C4を立ち上げ、第2MRセンサ30の出力V2がオフ閾値V
OFFを上回るとき、比較信号C4を立ち下げる。
【0036】
ピストン18の位置Xに応じた比較信号C1〜C4の状態が
図8に示されている。比較信号C1は、ピストン18がX1よりも若干大きいX3の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C2は、ピストン18がX2の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C3は、ピストン18がX2よりも若干小さいX4の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C4は、ピストン18がX1の位置に到達したときに切り換わる。
【0037】
比較信号C1〜C4は位置判定部38に入力され、位置判定部38において、ピストン18が所定位置に到達したか否かが判定される。位置判定部38は、判定した結果をスイッチ信号SWとして制御部34に出力する。スイッチ信号SWは、初期値がオフに設定されている。
図8に示されるように、位置判定部38は、比較信号C1および比較信号C4がともに立ち上がった状態となったとき、すなわち、ピストン18が原点に近づく方向に移動してX1の位置に到達したとき、スイッチ信号SWをオフからオンに切り換える。
【0038】
また、位置判定部38は、比較信号C2および比較信号C3がともに立ち上がった状態となったとき、すなわち、ピストン18が原点から離れる方向に移動してX2の位置に到達したとき、スイッチ信号SWをオンからオフに切り換える。スイッチ信号SWのオフからオンへの切換およびオンからオフへの切換が
図8に示されている。
【0039】
制御部34は、通信部44を介して外部と双方向に通信可能となっている。制御部34は、位置判定部38から受け取ったスイッチ信号SWに応じて、例えば、図示しないランプの点灯と消灯を指示する信号SW´を通信部44を介して外部に出力する。この場合、ピストン18の駆動工程においてピストン18がX1の位置に到達してから、復帰工程に切り換わってピストン18がX2の位置に到達するまでの間、ランプが点灯した状態となる。
【0040】
ランプが点灯することにより、ピストン18が駆動工程のストロークエンド近傍に到達したことが分かり、ランプが消灯することにより、ピストン18の復帰工程が開始された直後であることが分かる。また、ランプが点灯した状態にあるとき、ピストン18がロッドカバー12に接近した所定の領域に存在することが分かる。スイッチ信号SWは、流体圧シリンダ10と関連して動作する図示しない外部機器の制御に用いられてもよい。
【0041】
外部からセンサモジュール32に対してオン閾値V
ONおよびオフ閾値V
OFFの設定変更を行うことができる。制御部34は、通信部44を介して外部からオン閾値V
ONおよびオフ閾値V
OFFの設定変更に関するデータを受け取ると、新たなオン閾値V
ONを第1比較部36aおよび第3比較部36cに出力し、新たなオフ閾値V
OFFを第2比較部36bおよび第4比較部36dに出力する。
【0042】
マグネット26は、経年変化に伴って磁力が低下し(減磁し)、また、第1MRセンサ28および第2MRセンサ30は、高温環境下に長期間置かれると感度が低下する。このような事象が生じると、オン閾値V
ONの設定にもよるが、第1MRセンサ28の出力V1の最大値V
MAXまたは第2MRセンサ30の出力V2の最大値V
MAXがオン閾値V
ONを超えない程度まで減少する可能性がある。
【0043】
そこで、第1MRセンサ28の出力V1の最大値V
MAXおよび第2MRセンサ30の出力V2の最大値V
MAXが経年変化等により所定以上減少していないか監視することを目的として、第1診断部40および第2診断部42が設けられている。第1診断部40には第1MRセンサ28の出力V1が入力され、第2診断部42には第2MRセンサ30の出力V2が入力される。以下、第1診断部40における処理内容を説明するが、第2診断部42における処理内容もこれと同様である。
【0044】
第1診断部40は、最大値判定部40aと、最大値記憶部40bと、監視部40cとを有する。最大値判定部40aは、第1MRセンサ28の出力V1が増加から減少に転じる毎に、そのときの出力(例えば減少に転じる直前の出力V1)を最大値V
MAXとして最大値記憶部40bに送る。最大値記憶部40bは、最大値判定部40aから受け取った最大値V
MAXデータを時系列で記憶する。
【0045】
監視部40cは、定期的に、最大値記憶部40bに記憶された多数の最大値V
MAXデータのうち、直近の所定数のデータについて平均値を算出し、これを当初の所定数のデータの平均値と比較する。そして、直近の所定数のデータの平均値が当初の所定数のデータの平均値よりも所定値以上小さいと判定した場合、制御部34に対して注意信号E1を出力する。
【0046】
制御部34は、第1診断部40の監視部40cから注意信号E1を受け取ると、マグネット26の減磁や第1MRセンサ28の感度の低下等の事象が発生した蓋然性が高いことを報知するため、通信部44を介して注意信号E1´を外部に出力する。これにより、作業者に対して、部品交換等のメンテナンスを促したり、オン閾値V
ONの調整を促したりすることができる。
【0047】
本実施形態では、第1診断部40で第1MRセンサ28の出力V1の最大値V
MAXを監視し、第2診断部42で第2MRセンサ30の出力V2の最大値V
MAXを監視しているが、共通の診断部によって出力V1の最大値V
MAXと出力V2の最大値V
MAXを総合的に監視してもよい。出力V1の最大値V
MAXと出力V2の最大値V
MAXの両方が所定以上減少している場合は、マグネット26の減磁が原因となっている蓋然性が高く、それらの一方のみが所定以上減少している場合は、当該MRセンサの感度低下が原因となっている蓋然性が高い。共通の診断部がこれらの事象を区別して注意信号を出力すれば効率的である。
【0048】
次に、流体圧シリンダ10が種々の外部磁界が作用する環境下に置かれた場合について、
図9〜
図16を参照しながら説明する。なお、
図9等において、流体圧シリンダ10は簡略化して示している。
【0049】
(他のシリンダ磁界が作用する場合)
図9に示されるように、他の流体圧シリンダ50が流体圧シリンダ10とB方向に並んで配置され、他の流体圧シリンダ50のピストン52に装着されたマグネット54の磁界56が流体圧シリンダ10の第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する場合を想定する。第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する磁界56は、他の流体圧シリンダ50の動作位置に応じて変動する。
【0050】
他の流体圧シリンダ50の磁界56に基づく第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2の例が
図10に示されている。横軸は、A方向に沿った他の流体圧シリンダ50のピストン52の位置を表し、縦軸はセンサの出力を表している。第1MRセンサ28の出力V1は実線で示され、第2MRセンサ30の出力V2は点線で示されている。ピストン52の位置は、A方向において前述した流体圧シリンダ10のピストン18の基準位置と対応する位置を原点にとっている。
【0051】
第1MRセンサ28および第2MRセンサ30から他の流体圧シリンダ50のマグネット54までのB方向の距離は、第1MRセンサ28および第2MRセンサ30から流体圧シリンダ10のマグネット26までのB方向の距離よりも大きい。このため、
図10に示されるように、第2MRセンサ30の出力V2がオフ閾値V
OFF以下となる蓋然性は低い。したがって、スイッチ信号SWがオンオフする蓋然性は低く、他の流体圧シリンダ50の磁界56が作用したとき、流体圧シリンダ10のピストン18が所定位置にあることを誤って検出するのを防止できる。オフ閾値V
OFFを基準出力Vsから離れるように設定変更すれば、誤検出をさらに確実に防止できる。
【0052】
(溶接磁界が作用する場合)
流体圧シリンダ10が溶接ラインに設置され、溶接電流によって生じる磁界(溶接磁界)が流体圧シリンダ10の第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する場合を想定する。溶接磁界は、マグネットの磁界とは異なり、一方向の成分のみからなる磁界である。以下、溶接磁界の向きがA方向である場合とB方向である場合に分けて説明する。
【0053】
図11に示されるように、A方向の溶接磁界58が第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する場合を想定する。この溶接磁界58に基づく第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2の例が
図12に示されている。横軸は時間を表し、縦軸はセンサの出力を表している。溶接電流は一定であるため、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2は、溶接が開始されると、基準出力Vsから立ち上がった後、一定値Vaを保つ。なお、第2MRセンサ30の出力V2は、第1MRセンサ28の出力V1と一致している。
【0054】
図12に示されるように、上記一定値Vaはオン閾値V
ON以上であるが、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2が基準出力Vsより小さくなることはなく、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2がオフ閾値V
OFF以下となることはない。したがって、スイッチ信号SWはオンオフしないので、A方向の溶接磁界58が作用したとき、ピストン18が所定位置にあることを誤って検出するのを防止できる。
【0055】
図13に示されるように、B方向の溶接磁界60が第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する場合を想定する。この溶接磁界60に基づく第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2の例が
図14に示されている。横軸は時間を表し、縦軸はセンサの出力を表している。溶接電流は一定であるため、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2は、溶接が開始されると、基準出力Vsから立ち下がった後、一定値Vbを保つ。なお、第2MRセンサ30の出力V2は、第1MRセンサ28の出力V1と一致している。
【0056】
図14に示されるように、上記一定値Vbはオフ閾値V
OFF以下であるが、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2が基準出力Vsより大きくなることはなく、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2がオン閾値V
ON以上となることはない。したがって、スイッチ信号SWはオンオフせず、B方向の溶接磁界60が作用したとき、ピストン18が所定位置にあることを誤って検出するのを防止できる。
【0057】
(着磁したボルト等の磁界が作用する場合)
図15に示されるように、流体圧シリンダ10の組立てや取付けに用いられるボルト等の取付部材62が溶接磁界により磁化され、取付部材62の磁界64が流体圧シリンダ10の第1MRセンサ28および第2MRセンサ30に作用する場合を想定する。着磁した取付部材62の磁界64に基づく第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2の例が
図16に示されている。横軸は時間を表し、縦軸はセンサの出力を表している。第1MRセンサ28の出力V1は実線で示され、第2MRセンサ30の出力V2は点線で示されている。
【0058】
着磁した取付部材62の周囲には、取付部材62の一端側から出て取付部材62の他端側に戻る磁界(磁束)64が形成されているが、この磁界64は全く変動しない。したがって、少なくともスイッチ信号SWがオンオフすることはなく、着磁したボルト等の取付部材62の磁界64が作用したとき、ピストン18が所定位置にあることを誤って検出するのを防止できる。
【0059】
本実施形態の流体圧シリンダ10によれば、互いに直交する2方向にそれぞれ反応する一対の磁気抵抗効果素子パターンを備えた2つのMRセンサ28、30を所定の間隔Lを置いて配置することにより、ピストン18の位置を精度良く検出することができるとともに、種々の外部磁界が作用しても、ピストン18の位置が誤検出されることがない。
【0060】
また、第1MRセンサ28の出力V1および第2MRセンサ30の出力V2の最大値V
MAXが所定以上減少していないか監視する第1診断部40および第2診断部42を設けたので、マグネット26の減磁や第1MRセンサ28または第2MRセンサ30の感度低下等を容易に知ることができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る流体圧シリンダ70について、
図17〜
図20を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係る流体圧シリンダ70において、上述した流体圧シリンダ10と同一または同等の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
第1実施形態は、検出しようとするピストン18の位置をロッドカバー12の近傍とする場合に好適なものであるのに対して、第2実施形態は、検出しようとするピストン18の位置がロッドカバー12の近傍でない場合でも好適なものである。すなわち、第2実施形態では、ピストン18の基準位置を任意の位置に設定することができる。
【0063】
図17に示されるように、シリンダチューブ16の外側には、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサとしての第3MRセンサ72と第1MRセンサ28と第2MRセンサ30がこの順にA方向に並んで取り付けられている。第3MRセンサ72と第1MRセンサ28との間隔は、第1MRセンサ28と第2MRセンサ30との間隔Lと同じである。
【0064】
第3MRセンサ72は、第1MRセンサ28と同一の構成であり、第1MRセンサ28と同様に、第1磁気抵抗効果素子パターンが反応する方向がA方向、第2磁気抵抗効果素子パターンが反応する方向がB方向となるような姿勢で、シリンダチューブ16の外側に取り付けられる。ピストン18が
図17に示される基準位置にあるとき、第3MRセンサ72は、第2MRセンサ30と同じく、マグネット26の磁界46のB方向成分を最も多く受ける。
【0065】
図18は、ピストン18の位置Xに応じた第1MRセンサ28の出力V1と、第2MRセンサ30の出力V2と、第3MRセンサ72の出力V3とを示す図である。横軸はピストン18の位置Xを表し、縦軸はセンサの出力を表している。第1MRセンサ28の出力V1は実線で示され、第2MRセンサ30の出力V2は点線で示され、第3MRセンサ72の出力V3は二点鎖線で示されている。ピストン18の位置Xは、ピストン18が基準位置にあるときを原点にとり、ピストン18が基準位置よりも右方にあるときを正の値、ピストン18が基準位置よりも左方にあるときを負の値としている。
【0066】
第1MRセンサ28の出力V1は、X=0のとき最大値V
MAXとなり、X=LおよびX=−Lのとき最小値V
MINとなる。第2MRセンサ30の出力V2は、X=Lのとき最大値V
MAXとなり、X=0のとき最小値V
MINとなる。第3MRセンサ72の出力V3は、X=−Lのとき最大値V
MAXとなり、X=0のとき最小値V
MINとなる。第3MRセンサ72は、第1MRセンサ28から所定距離Lだけ左方に配置されているので、第3MRセンサ72の出力V3の波形は、第1MRセンサ28の出力V1の波形を横軸負方向に距離Lに相当する分だけシフトしたものとなる。
【0067】
図19に示されるように、第1MRセンサ28と第2MRセンサ30と第3MRセンサ72とに接続されるセンサモジュール32は、制御部34、第1比較部36aないし第5比較部36e、位置判定部38、第1診断部40、第2診断部42、第3診断部43および通信部44を備えている。
【0068】
第5比較部36eには、第3MRセンサ72から出力V3が入力されるとともに、制御部34からオン閾値V
ONが入力される。第5比較部36eにおいて、第3MRセンサ72の出力V3がオン閾値V
ONと比較される。第5比較部36eは、第3MRセンサ72の出力V3がオン閾値V
ON以上であるとき、比較信号C5を立ち上げ、第3MRセンサ72の出力V3がオン閾値V
ON未満であるとき、比較信号C5を立ち下げる。
【0069】
ピストン18の位置Xに応じた比較信号C1〜C5の状態が
図20に示されている。比較信号C1は、ピストン18がX1よりも若干大きいX3の位置に到達したとき、および、ピストン18が−X1よりも若干小さい−X3の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C2は、ピストン18がX2の位置に到達したとき、および、ピストン18が−X2の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C3は、ピストン18がX2よりも若干小さいX4の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C4は、ピストン18がX1の位置に到達したとき、および、ピストン18が−X1の位置に到達したときに切り換わる。比較信号C5は、ピストン18が−X2よりも若干大きい−X4の位置に到達したときに切り換わる。
【0070】
比較信号C1〜C5は位置判定部38に入力され、位置判定部38において、ピストン18が所定位置に到達したか否かが判定される。位置判定部38は、判定した結果をスイッチ信号SWとして制御部34に出力する。スイッチ信号SWは、初期値がオフに設定されている。
図20に示されるように、位置判定部38は、比較信号C1および比較信号C4がともに立ち上がった状態となったとき、スイッチ信号SWをオフからオンに切り換える。すなわち、ピストン18が右方から原点に近づく方向に移動してX1の位置に到達したとき、および、ピストン18が左方から原点に近づく方向に移動して−X1の位置に到達したとき、スイッチ信号SWをオフからオンに切り換える。
【0071】
また、位置判定部38は、比較信号C2および比較信号C3がともに立ち上がった状態となったとき、すなわち、ピストン18が原点から右方に離れる方向に移動してX2の位置に到達したとき、スイッチ信号SWをオンからオフに切り換える。さらに、位置判定部38は、比較信号C2および比較信号C5がともに立ち上がった状態となったとき、すなわち、ピストン18が原点から左方に離れる方向に移動して−X2の位置に到達したとき、スイッチ信号SWをオンからオフに切り換える。
【0072】
スイッチ信号SWのオフからオンへの切換およびオンからオフへの切換が
図20に示されている。同図から理解されるように、スイッチ信号SWは、ピストン18が原点を中心とする限定された領域に存在するときにオンするので、ピストン18が基準位置(原点)の近傍にあることを容易に検出できる。
【0073】
第3MRセンサ72の出力V3の最大値V
MAXが経年変化等により所定以上減少していないか監視することを目的として、第3診断部43が設けられている。第3診断部43には、第3MRセンサ72の出力V3が入力される。第3診断部43における処理内容は、前述した第1診断部40における処理内容と同様である。
【0074】
本実施形態の流体圧シリンダ70によれば、第1MRセンサ28と第2MRセンサ30に加えて第3MRセンサ72を設けたので、検出しようとするピストン18の位置を、ロッドカバー12の近傍に限らず、任意の位置に設定することができる。
【0075】
本発明に係る流体圧シリンダは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。