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特開2021-71290速度・位置推定装置および速度・位置推定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-71290(P2021-71290A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】速度・位置推定装置および速度・位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20210409BHJP
【FI】
   G01P13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-195803(P2019-195803)
(22)【出願日】2019年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】512165628
【氏名又は名称】サイトセンシング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506132522
【氏名又は名称】株式会社NSD
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】松本 智子
【テーマコード(参考)】
2F034
【Fターム(参考)】
2F034AA19
2F034AB08
2F034EA05
(57)【要約】
【課題】リアルタイム性の高い高精度な速度・位置推定が可能な装置の実現。
【解決手段】歩行による鉛直方向の加速度の周波数を帯域通過フィルタによりフィルタリングした上でさらにその振幅をリミッタで所定範囲以外の範囲を固定値Aにすることで、有効に高精度で歩行信号以外の外乱などを除去することが可能である。またリミッタで振幅をカットすることで外乱を除去する効果を奏するため帯域通過フィルタの伝達関数を高次にする必要がなく、計算量が少ないため高速な推定処理が可能であり、リアルタイム性が高い処理が可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の歩行動作によって生じる上下動に基づいて歩行速度を推定するための装置であって、装置装着状態で歩行時に地面に対する略鉛直方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備えた鉛直方向加速度信号取得部と、
取得した加速度信号から外乱及び歩行以外の動作に基づく信号を減衰させた外乱減衰後信号を得るための帯域通過フィルタを備えた外乱除去部と、
外乱減衰後信号から外乱減衰後信号の振幅の値を示す信号である振幅信号を取得する振幅信号取得部と、
取得した振幅信号の内、所定の振幅範囲に入っている信号部分である歩行信号部分と、所定の振幅範囲外の信号部分である非歩行信号部分とを判別する歩行非歩行判別部と、
歩行動作モデルに基づく歩行演算のために歩行信号部分は整形せず、歩行非歩行判別部での判別結果が非歩行信号部分であると判別された信号部分は、その振幅を固定値A(Aは歩行動作モデルにおいて非歩行と解釈される値)に整形する信号整形部と、
を有する速度・位置推定装置。
【請求項2】
移動体の進行方向に平行に取り付け、移動体の進行方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備えた水平方向加速度信号取得部と、
取得した水平方向加速度信号から外乱を減衰させた外乱減衰後信号を得るための濾波器を備えた水平方向外乱除去部と、
外乱減衰後信号を積分し速度情報を算出する速度情報算出部と、
算出した速度を所定の値にリセットする速度リセット部と
を有する地面又は/及び海面と水平方向に移動する移動体の速度・位置推定装置。
【請求項3】
歩行者または移動体の進行方向変化(変化角度/単位時間)を検知するジャイロセンサを備えた進行方向変化検知部と、
地磁気に基づいて進行方向を検知する地磁気計を備えた地磁気計測部と、
後記進行方向出力部で進行方向変化が検知されない期間に地磁気計測部にて計測された進行方向に基づいて後記進行方向出力部から出力される進行方向を補正する補正部と、
既出力の進行方向と、既出力の進行方向出力時からの進行方向変化を積分した値に基づいて進行方向を出力する進行方向出力部と、
をさらに有する請求項1又は2に記載の速度・位置推定装置。
【請求項4】
歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する移動長算出出力部をさらに有する請求項1から請求項3のいずれか一に記載の速度・位置推定装置。
【請求項5】
後述する位置情報履歴保持部に保持されている位置情報と、移動長算出出力部にて算出出力される移動長と、進行方向出力部にて出力される進行方向と、に基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する自律演算位置情報算出出力部と、
算出し出力された位置情報の履歴を保持する位置情報履歴保持部と、
自律演算以外の方法で得られる位置情報である非自律由来位置情報を取得する非自律由来位置情報取得部と、
非自律由来位置情報に基づいて位置情報履歴保持部に保持されている位置情報を補正する位置情報補正部と、を有する請求項3に従属する請求項4に記載の速度・位置推定装置。
【請求項6】
歩行者の歩行動作によって生じる上下動に基づいて歩行速度を推定するための方法であって、
歩行時に地面に対する略鉛直方向の加速度信号を取得する鉛直方向加速度信号取得ステップと、
取得した加速度信号から外乱及び歩行以外の動作に基づく信号を減衰させた外乱減衰後信号を得るための外乱除去ステップと、
外乱減衰後信号の内、所定の振幅範囲に入っている信号部分である歩行信号部分と、所定の振幅範囲外の信号部分である非歩行信号部分とを判断する歩行非歩行判断ステップと、
歩行動作モデルに基づく歩行演算のために歩行信号部分は整形せず、歩行非歩行判断ステップでの判断結果が非歩行信号部分であると判断された信号部分は、その振幅を固定値A(Aは歩行動作モデルにおいて非歩行と解釈される値)に整形する信号整形ステップと、
を実行する速度・位置推定方法。
【請求項7】
移動体の進行方向の加速度信号を取得する水平方向加速度信号取得ステップと、
取得した水平方向加速度信号から外乱を減衰させた外乱減衰後信号を得る水平方向外乱除去ステップと、
外乱減衰後信号を積分し速度情報を算出する速度情報算出ステップと、
算出した速度を所定の値にリセットする速度リセットステップと
を実行する地面又は/及び海面と水平方向に移動する移動体の速度・位置推定方法。
【請求項8】
歩行者または移動体の進行方向変化(変化角度/単位時間)をジャイロセンサにより検知する進行方向変化検知ステップと、
地磁気に基づいて進行方向を地磁気計により検知する地磁気計測ステップと、
後記進行方向出力ステップで進行方向変化が検知されない期間に地磁気計測ステップにて計測された進行方向に基づいて後記進行方向出力ステップにおいて出力される進行方向を補正する補正ステップと、
既出力の進行方向と、既出力の進行方向出力時からの進行方向変化を積分した値に基づいて進行方向を出力する進行方向出力ステップと、
をさらに実行する請求項6又は7に記載の速度・位置推定方法。
【請求項9】
歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する移動長算出出力ステップをさらに実行する請求項6から請求項8のいずれか一に記載の速度・位置推定方法。
【請求項10】
後述する位置情報履歴取得ステップにより取得された位置情報と、移動長算出出力ステップにて算出出力される移動長と、進行方向出力ステップにて出力される進行方向と、に基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する自律演算位置情報算出出力ステップと、
算出し出力された位置情報の履歴を取得する位置情報履歴取得ステップと、
自律演算以外の方法で得られる位置情報である非自律由来位置情報を取得する非自律由来位置情報取得ステップと、
非自律由来位置情報に基づいて位置情報履歴取得ステップにより取得された位置情報を補正する位置情報補正ステップと、を実行する請求項8に従属する請求項9に記載の速度・位置推定方法。
【請求項11】
歩行者の歩行動作によって生じる上下動に基づいて歩行速度を推定するためのプログラムであって、
歩行時に地面に対する略鉛直方向の加速度信号を取得する鉛直方向加速度信号取得ステップと、
取得した加速度信号から外乱及び歩行以外の動作に基づく信号を減衰させた外乱減衰後信号を得るための外乱除去ステップと、
外乱減衰後信号の内、所定の振幅範囲に入っている信号部分である歩行信号部分と、所定の振幅範囲外の信号部分である非歩行信号部分とを判断する歩行非歩行判断ステップと、
歩行動作モデルに基づく歩行演算のために歩行信号部分は整形せず、歩行非歩行判断ステップでの判断結果が非歩行信号部分であると判断された信号部分は、その振幅を固定値A(Aは歩行動作モデルにおいて非歩行と解釈される値)に整形する信号整形ステップと、
を実行する速度・位置推定プログラム。
【請求項12】
移動体の進行方向の加速度信号を取得する水平方向加速度信号取得ステップと、
取得した水平方向加速度信号から外乱を減衰させた外乱減衰後信号を得る水平方向外乱除去ステップと、
外乱減衰後信号を積分し速度情報を算出する速度情報算出ステップと、
算出した速度を所定の値にリセットする速度リセットステップと
を実行する地面又は/及び海面と水平方向に移動する移動体の速度・位置推定プログラム。
【請求項13】
歩行者または移動体の進行方向変化(変化角度/単位時間)をジャイロセンサにより検知する進行方向変化検知ステップと、
地磁気に基づいて進行方向を地磁気計により検知する地磁気計測ステップと、
後記進行方向出力ステップで進行方向変化が検知されない期間に地磁気計測ステップにて計測された進行方向に基づいて後記進行方向出力ステップにおいて出力される進行方向を補正する補正ステップと、
既出力の進行方向と、既出力の進行方向出力時からの進行方向変化を積分した値に基づいて進行方向を出力する進行方向出力ステップと、
をさらに実行する請求項11又は12に記載の速度・位置推定プログラム。
【請求項14】
歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する移動長算出出力ステップをさらに実行する請求項11から請求項13のいずれか一に記載の速度・位置推定プログラム。
【請求項15】
後述する位置情報履歴取得ステップにより取得された位置情報と、移動長算出出力ステップにて算出出力される移動長と、進行方向出力ステップにて出力される進行方向と、に基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する自律演算位置情報算出出力ステップと、
算出し出力された位置情報の履歴を取得する位置情報履歴取得ステップと、
自律演算以外の方法で得られる位置情報である非自律由来位置情報を取得する非自律由来位置情報取得ステップと、
非自律由来位置情報に基づいて位置情報履歴取得ステップにより取得された位置情報を補正する位置情報補正ステップと、を実行する請求項13に従属する請求項14に記載の速度・位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する歩行者や車両の速度および位置を高精度でリアルタイムに推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
速度・位置推定はGPS(Global Positioning System)を用いて行うことができるが、屋内などGPS電波を受信できない環境下においては速度・位置推定を自律的に行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−138513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では屋内位置検出装置の発明が開示されている。同装置は、2軸加速度センサを用いて歩行者の歩行動作により生じる水平方向(進行方向)と鉛直方向(上下方向)との加速度を測定することにより歩数と歩幅とを求め、これらにより進行距離を算出する。これに加えて地磁気(方位)センサとジャイロセンサとにより進行方位を算出することにより、位置の特定が可能である。なお、測定された上下方向の加速度信号には、帯域通過フィルタを適用して、歩行周波数の成分のみを取り出す処理を行っている。この測定された上下方向の加速度信号により歩幅を算出することが可能である。具体的には、上下方向の加速度信号をバッファに所定時間蓄積し、周波数特性を演算により解析する。解析の結果算出されたピーク周波数を用いて所定の推定式により進行方向の歩幅を算出することが可能である。上記測定の結果特定された位置情報は、屋内に設置された絶対方位検出手段により補正が行われる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のように上下方向の加速度信号をバッファに所定時間蓄積して周波数特性を演算してピーク周波数を算出し進行方向の歩幅を推定する方法では、推定結果が出るまで少なくともバッファリングを行っている上記所定時間の分タイムラグが存在するため、速度の推定がリアルタイムでできないといった課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して本件発明は、帯域通過フィルタにより特定周波数帯の加速度を取り出すことに加え、加速度の振幅をも歩行非歩行の判定のための要素として導入することにより二重に歩行非歩行の峻別を行っている。すなわち、ある時刻において歩行による加速度が特定周波数帯の中にあったとしても、加速度の振幅が所定の値の範囲になければ、その時刻における加速度は歩行速度や位置の推定に使用しないこととしている。このような判定処理はほぼリアルタイムに行われ、タイムラグがないことから、より高精度に現在の速度や位置の推定が可能である。
【0007】
具体的には第一に歩行者の歩行動作によって生じる上下動に基づいて歩行速度を推定するための装置であって、装置装着状態で歩行時に地面に対する略鉛直方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備えた鉛直方向加速度信号取得部と、取得した加速度信号から外乱及び歩行以外の動作に基づく信号を減衰させた外乱減衰後信号を得るための帯域通過フィルタを備えた外乱除去部と、外乱減衰後信号から外乱減衰後信号の振幅の値を示す信号である振幅信号を取得する振幅信号取得部と、取得した振幅信号の内、所定の振幅範囲に入っている信号部分である歩行信号部分と、所定の振幅範囲外の信号部分である非歩行信号部分とを判別する歩行非歩行判別部と、歩行動作モデルに基づく歩行演算のために歩行信号部分は整形せず、歩行非歩行判別部での判別結果が非歩行信号部分であると判別された信号部分は、その振幅を固定値A(Aは歩行動作モデルにおいて非歩行と解釈される値)に整形する信号整形部と、を有する速度・位置推定装置を提供する。
【0008】
第二に、移動体の進行方向に平行に取り付け、移動体の進行方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備えた水平方向加速度信号取得部と、取得した水平方向加速度信号から外乱を減衰させた外乱減衰後信号を得るための濾波器を備えた水平方向外乱除去部と、外乱減衰後信号を積分し速度情報を算出する速度情報算出部と、算出した速度を所定の値にリセットする速度リセット部とを有する地面又は/及び海面と水平方向に移動する移動体の速度・位置推定装置を提供する。
【0009】
第三に、第一または第二の速度・位置推定装置を基本として、歩行者または移動体の進行方向変化(変化角度/単位時間)を検知するジャイロセンサを備えた進行方向変化検知部と、地磁気に基づいて進行方向を検知する地磁気計を備えた地磁気計測部と、後記進行方向出力部で進行方向変化が検知されない期間に地磁気計測部にて計測された進行方向に基づいて後記進行方向出力部から出力される進行方向を補正する補正部と、既出力の進行方向と、既出力の進行方向出力時からの進行方向変化を積分した値に基づいて進行方向を出力する進行方向出力部と、をさらに有する速度・位置推定装置を提供する。
【0010】
第四に、第一から第三の速度・位置推定装置を基本として、歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する移動長算出出力部をさらに有する速度・位置推定装置を提供する。
【0011】
第五に、第三の速度・位置推定装置を基本として構成される第四の速度・位置推定装置を基本として、後述する位置情報履歴保持部に保持されている位置情報と、移動長算出出力部にて算出出力される移動長と、進行方向出力部にて出力される進行方向と、に基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する自律演算位置情報算出出力部と、算出し出力された位置情報の履歴を保持する位置情報履歴保持部と、自律演算以外の方法で得られる位置情報である非自律由来位置情報を取得する非自律由来位置情報取得部と、非自律由来位置情報に基づいて位置情報履歴保持部に保持されている位置情報を補正する位置情報補正部と、を有する速度・位置推定装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記のような速度・位置推定装置により、自律航法を行う歩行者などの移動体が、外乱をリアルタイムで効果的に除去することが可能である。このため高精度に速度・位置の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の速度・位置推定装置における処理の概略の一例を示す図
図2】実施例1の速度・位置推定装置における信号処理の概要の一例を示す図
図3】実施例1の速度・位置推定装置の機能的構成を示す図
図4】弾性部材を利用する加速度センサを例示する概念図
図5】歩行時の鉛直方向加速度の大きさを示すグラフ
図6】歩行時の鉛直方向加速度の振幅の大きさを示すグラフ
図7】実施例1の速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャート
図8】実施例1の速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図
図9】実施例2の速度・位置推定装置における処理の概略の一例を示す図
図10】実施例2の速度・位置推定装置の機能的構成を示す図
図11】実施例2の速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャート
図12】実施例2の速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図
図13】実施例3の速度・位置推定装置における処理の概略の一例を示す図
図14】実施例3の速度・位置推定装置の機能的構成1を示す図
図15】実施例3の速度・位置推定装置の機能的構成2を示す図
図16】実施例3の速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャート
図17】実施例3の速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図
図18】実施例4の速度・位置推定装置の機能的構成1を示す図
図19】実施例4の速度・位置推定装置の機能的構成2を示す図
図20】実施例4の速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャート
図21】実施例4の速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図
図22】実施例5の速度・位置推定装置の機能的構成1を示す図
図23】実施例5の速度・位置推定装置の機能的構成2を示す図
図24】実施例5の速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャート
図25】実施例5の速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図
図26】鉛直方向の加速度の振幅と歩幅との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、実施例と請求項の相互の関係は以下の通りである。実施例1は主に請求項1、6、11に関し、実施例2は主に請求項2、7、12に関し、実施例3は主に請求項3、8、13、に関する。実施例4は主に請求項4、9、14に関する。実施例5は主に請求項5、10、15に関する。本件発明は、これら実施例に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【実施例1】
【0015】
<実施例1:概要>
図1は本実施例の速度・位置推定装置における処理の概要の一例を示す図である。図2は本実施例の速度・位置推定装置における信号処理の概要の一例を示す図である。図1にあるように本実施例の速度・位置推定装置(0101)は歩行者(0102)に装着される。同装置(0101)は加速度を取得するセンサを有する。このセンサは歩行者(0102)が歩行動作を行うことにより生ずる、鉛直方向の加速度a(0103)を計測する。この鉛直方向の加速度a(0103)の信号(0201)を帯域通過フィルタ(0202)に通し、所定の周波数帯の成分を取り出す。取り出された成分の振幅に対して所定の振幅範囲にあるか否かの判断を実行し、所定範囲にない場合には歩行成分でないと判断し、その振幅部分はリミッタ(0203)により固定値Aとする信号整形処理をおこなう。こうして得られた振幅を歩行運動モデル(0204)に入力し、出力として速度vが得られる。
【0016】
なお、以下に記載する各機能的構成は、ハードウエア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(フラッシュメモリやSSDなどの不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、圧電型加速度センサ、ピエゾ抵抗型加速度センサ、静電容量型加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサなどのセンシング手段、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウエア構成部、またその外部周辺装置用のインタフェース、通信用インタフェース、それらハードウエアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザインターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インタフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウエアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本装置の機能ブロックは専用ハードウエアによって実現されてもよい。また、各機能的構成をスマートフォンやタブレット端末によって実現することもできる。
【0017】
また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるプログラム、及びプログラムを固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0018】
<実施例1:機能的構成>
図3は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(0300)は、「鉛直方向加速度信号取得部」(0301)と、「外乱除去部」(0302)と、「振幅信号取得部」(0303)と、「歩行非歩行判別部」(0304)と、「信号整形部」(0305)と、を有する。
【0019】
<実施例1:加速度信号取得部>
「鉛直方向加速度信号取得部」(0301)は、装置装着状態で歩行時に地面に対する略鉛直方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備える。加速度センサは種々の方式のものが採用できる。図4は、弾性部材を利用する加速度センサを例示する概念図である。
【0020】
図4(a)は、カンチレバー構造の圧電型加速度センサの概念図である。図示するように、一端が固定された薄板状の「可撓性部材」(0401)と可撓製部材に貼着された薄板状の「圧電素子」(0402)とを有している。ここで、図示する「矢印」(0403)の方向に加速度が働いた場合、「可撓性部材」(0404)は加速度の方向と反対の方向に撓む。そして、可撓性部材の撓みにともなう圧電素子の変形により電圧が生じることで加速度を検出することができる。
【0021】
また、図4(b)は、静電容量型加速度センサの概念図である。図示するように、四隅が「バネ」(0405)に結ばれた薄板状の「可動部」(0406)の四辺には櫛歯状の「可動電極」(0407)が備わり、この可動電極を両側から挟むように2本の「固定電極」(0408、0409)が配置されている。加速度が働くことで可動電極が変位し、固定電極との位置関係に変化が生じるため電極間容量の変化が生じる。発生した容量変化を電圧変換することで加速度を検出する。
【0022】
上記のような弾性変形を利用する加速度センサは歩行による振動以外の種々の振動をも鋭敏に検出する。本速度・位置推定装置は、これらのノイズ要因を除去し得るので、弾性変形を利用する加速度センサを用いる場合にとくに有益である。また、弾性変形を利用する加速度センサに備わるバネや可撓性部材は、加速度センサによってその弾性や可撓性について特性が異なる場合がある。加速度センサの出力には加速度センサ自身の共振によるノイズが含まれ得る。このようなノイズは加速度センサに備わるバネや可撓性部材の特性に依存する。したがって、予め加速度センサ自身の共振によるノイズを検出しておくとともに、加速度情報取得の際にはその共振ノイズをキャンセルするように構成することも好ましい。
【0023】
なお、現在ではMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により極めて小型のセンサモジュールが存在し、例えば、スマートフォンなどの情報処理端末に内蔵され、スマートフォンの姿勢検知やモーションセンサの機能を果たしている。
【0024】
また、センサモジュールには、加速度センサだけでなくジャイロセンサや磁気センサを備えるものもあり、そのようなセンサモジュールを併せて用いてもよい。本発明においては必須ではないが、本速度・位置推定装置を機能拡張して測位装置などに応用する場合には、ジャイロセンサや磁気センサの検出値は方位の計測などに用いることができる。
【0025】
加速度センサにより取得された加速度信号は外乱除去部(0302)に対して出力される。当部の機能は上記のような加速度センサ、I/Oインタフェース、CPU、RAM、CPUにおいて実行される鉛直方向加速度信号取得プログラムなどにより実現される。
【0026】
<実施例1:外乱除去部>
「外乱除去部」(図3:0302)は、取得した加速度信号から外乱及び歩行以外の動作に基づく信号を減衰させた外乱減衰後信号を得るための帯域通過フィルタを備える。「外乱」とは電気的な高周波ノイズ等が含まれ、「歩行以外の動作に基づく信号」とは、歩行者の歩行を意図しない動作(例えば立ち上がる、座る、計測端末の操作等の低周波の動作)を指す。図5は歩行時の鉛直方向加速度の大きさを示すグラフである。このグラフにあるように、非歩行時においても加速度は生じておりこれらを検出することで非歩行時でも歩行中であると判定されてしまうという可能性があった。外乱除去部(0302)では特定の周波数付近の帯域のみを選択的に取得できるようにすることで歩行動作による加速度信号のみを取得することを目指している。一例としては0.5Hz〜4.0Hzにおける帯域に対する帯域通過フィルタを用いることで2Hz付近の歩行動作の帯域の加速度を選択的に取得することができ、後述する信号整形部(0305)による効果と併せて非歩行動作の帯域の加速度の影響を効果的に除去できる。帯域通過フィルタはCPUにおいて実行されるプログラムで実装されデジタル信号処理を行う。処理後の加速度信号は振幅信号取得部(0303)に対して外乱減衰後信号として出力される。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにおいて実行される外乱除去プログラムなどにより実現される。
【0027】
<実施例1:振幅信号取得部>
「振幅信号取得部」(0303)は、外乱減衰後信号から外乱減衰後信号の振幅の値を示す信号である振幅信号を取得する機能を有する。具体的には、所定のサンプリング周期で外乱減衰後信号の振幅の値を取得し、歩行非歩行判別部(0304)に対して出力する処理を実行する。本実施例の速度・位置推定装置では、外乱減衰後信号をサンプリングし、所定時間バッファリングすることで振幅の測定を行っている。一例として、サンプリング周波数を100Hzとして、バッファリングするサンプル数を125個とすると、過去1.25秒間に渡る外乱減衰後信号により歩行周期(約2Hz/歩=約0.5秒、2歩で1秒)の間の外乱減衰後信号をバッファリングすることができ、これらサンプリング周波数と同じ100Hzで評価することで適切に振幅を取得することができる。サンプリング周波数および振幅の評価周波数が低下すると動作の不連続感が目立ってくるため、少なくとも20Hz程度以上でなるべく高い周波数すなわち短い周期でサンプルおよび振幅の評価を行うことが望ましい。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される振幅信号取得プログラムにより実現される。
【0028】
<実施例1:歩行非歩行判別部>
「歩行非歩行判別部」(0304)は、取得した振幅信号の内、所定の振幅範囲に入っている信号部分である歩行信号部分と、所定の振幅範囲外の信号部分である非歩行信号部分とを判別する機能を有する。具体的には振幅信号取得部(0303)により取得された振幅の値を入力として受け取り、当該振幅の値が所定の振幅範囲内か否かの判断を行う。前記判断の結果、所定の振幅範囲内の値である場合に歩行信号であるとしては後述する「信号整形部」(0305)を経由せず、外乱減衰後信号の値をそのまま速度推定のために出力し記憶域に保持する。あるいは信号整形部(0305)を経由するが整形処理が行われずスルーさせて記憶域に保持する。一方、所定の振幅範囲外の値であるとの判断結果の場合には、非歩行信号であるとして、信号整形部(0305)に対してその旨の信号を時刻と関連付けて出力し整形処理を実行する。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される歩行非歩行判別プログラムにより実現される。
【0029】
<実施例1:信号整形部>
「信号整形部」(0305)は、歩行動作モデルに基づく歩行演算のために歩行信号部分は整形せず、歩行非歩行判別部での判別結果が非歩行信号部分であると判別された信号部分は、その振幅を固定値A(Aは歩行動作モデルにおいて非歩行と解釈される値)に整形する機能を有する。具体的には、歩行非歩行判別部(0304)より非歩行信号であるとして出力された振幅の値を受け取り、その値を固定値Aに変換し、速度推定のために出力し記憶域に保持する。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される信号整形プログラムにより実現される。
【0030】
図6は歩行時の鉛直方向加速度の振幅の大きさを示すグラフである。この図に示すように、加速度センサ計測値の振幅を示すグラフ(0601:点線)と、この計測値に対して外乱除去部(0302)と信号整形部(0305)とにおける処理を適用した後の振幅を示すグラフ(0602:実線)とを示している。なお当グラフでは一例として、帯域通過フィルタの通過周波数帯域の上限値は3.0Hzであり、下限値は0.8Hzである。そして、リミッタを適用する条件として加速度の振幅が上限値(=1.45G)より大きいか、または下限値(=0.25G)より小さい場合は、上記固定値Aを0として補正を行っている。グラフ(0602)の左半分(0603)では、帯域通過フィルタ通過により通過帯域以外の周波数成分が失われて減衰された加速度の振幅が、全て下限値0.25G未満であったので、リミッタ処理により固定値Aである0に補正されている。一方、図6の右半分の山(0604)では、帯域通過フィルタ通過後は、加速度の振幅が上限値(=1.45G)より小さく、下限値(=0.25G)より大きいためリミッタ処理を行わず帯域通過フィルタ通過後の加速度の振幅のままとなっている。
【0031】
一般に帯域通過フィルタは伝達関数が高次のものになるほど減衰頻度が大きく、遷移域の波形がより急峻となるため、より狙った帯域幅のみで信号を通過させることが可能である。しかしながら高次とすると計算量が増大し、リアルタイム性が低下する。本実施例の速度・位置推定装置の外乱除去部(0302)では一次の伝達関数を有する帯域通過フィルタを採用しているため計算量が最小に抑えられている。さらに本実施例の速度・位置推定装置は信号整形部(0305)において、所定の振幅の範囲外の振幅の値を固定値Aとすることで、外乱除去部(0302)における帯域フィルタの伝達関数の次数を上げることなく効果的に非歩行部分の信号を除去することが可能である。なぜなら、非歩行周波数帯の振幅は歩行によって得られる振幅よりも一般に大きすぎる(例えば着座の瞬間の振幅)か、又は小さすぎる(例えば加速度センサの共振信号)ためである。このため計算量が少なくて済み、高速に演算処理が可能であるため、リアルタイム性の高い速度・位置推定処理を実行することが可能である。
【0032】
このようにして、所定の時間帯が歩行中であることと、その歩行の際の加速度センサからの振幅の値が得られる。図26に示すように、ワインバーグの歩行モデルによって鉛直方向の加速度と、歩幅の関係は得られるので、得られた鉛直方向加速度の振幅の値からその時の歩幅は推定できる。そして、得られる加速度の周期ごとに、得られた歩幅との積をとることで歩行速度が得られる。また、加速度の周期が明瞭に得られない場合には帯域通過フィルタの通過帯域幅内の中央値を採用するか、又は、代表値として2Hz、1.8Hz、2.2Hzなどを採用する。代表値としてふさわしい値は、1.8Hz以上で2.2Hz以下の範囲である。なお、歩幅と身長との関係は大まかに身長×0.45=歩幅の関係といわれているので、速度・位置推定装置を装着する際に、身長のデータを入力させて平均的な歩幅を算出し、図26から鉛直方向の加速度の振幅を逆算して、その振幅近辺の周波数を歩行による加速度周波数と推定して、歩行速度の算出に用いるように構成してもよい。
【0033】
<実施例1:処理の流れ>
図7は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。この図にあるように、まず鉛直方向に平行に取り付けた加速度センサの計測値を取得する(ステップS0701)。次に帯域通過フィルタで外乱および歩行以外の動作を除去する(ステップS0702)。その後、加速度の振幅が上限値より大きい、または下限値より小さいか否かの判断を行う(ステップS0703)。判断結果が「真」であれば振幅を固定値Aの値とする(ステップS0704)。判断結果が「偽」であれば振幅の値はそのままで、次の処理である歩行動作を表す力学モデルにより速度を算出(ステップS0705)する。
【0034】
<実施例1:ハードウエア構成>
図8は、本実施例にかかる速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(0801)と、ハードディスクドライブ等の「不揮発性メモリ」(0802)と、「RAM」(0803)を備えている。また「加速度センサ」(0804)やこれに接続された「I/Oインタフェース」(0805)そして、それらが「システムバス」(0806)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0035】
また、「RAM」(0803)は、各種処理を行うプログラムを「CPU」(0801)に実行させるために読み出すと同時にそのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。また、この「RAM」(0803)にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、「CPU」(0801)で実行されるプログラムは、そのアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い、処理を行うことが可能になっている(本明細書を通じて同様である)。
【0036】
まず、不揮発性メモリ(0802)に保持されている鉛直方向加速度信号取得プログラムがRAM(0803)に呼び出されCPU(0801)にて実行状態に移る。同プログラムはI/Oインタフェース(0805)を介して入力される加速度センサ(0804)の計測値S(t)(tは測定時刻)をRAM(0803)に格納する。次に外乱除去プログラムがRAM(0803)に呼び出されCPU(0801)にて実行状態に移ると同じくRAM(0803)に保持されている通過帯域の上限値f1と下限値f2とを読み込み、RAM(0803)に格納されているS(t)の値に周波数帯域によるフィルタ演算を行う。その結果f1(上限値)より小さくf2(下限値)より大きい周波数成分のみ通過させた値をP(t)としてRAM(0803)に格納する。次に振幅信号取得プログラムがRAM(0803)に呼び出され、CPU(0801)にて実行状態とされる。同プログラムはCPU(0801)における演算処理により、P(t)の振幅を取得し、R(t)としてRAM(0803)に格納する。次に、歩行非歩行判別プログラムがRAM(0803)上に呼び出され、CPU(0801)にて実行状態となると、RAM(0803)に格納されている所定の振幅範囲を示すr1(上限値)とr2(下限値)を読み込み、同じくRAM(0803)に格納されているR(t)との値と比較演算を行う。演算の結果、R(t)の値がr1より大きい、またはR(t)の値がr2より小さい場合にはRAM(0803)に格納されている、信号整形プログラムを呼び出し、同プログラムによりR(t)の値を固定値であるAに書き換える。R(t)の値がr2からr1の間の値である場合には書き換え処理を行うことなく歩行非歩行判別プログラムの処理は完了する。こうして取得されたR(t)の値は速度算出プログラムに渡され、速度推定の演算処理に使用される。
【実施例2】
【0037】
<実施例2:概要>
実施例2では、歩行者以外の車両などの移動体の速度・位置を推定することの可能な速度・位置推定装置について説明する。図9は本実施例における速度・位置推定装置の処理の概要を示す図である。この図にあるように、水平方向に移動する移動体(0901)である車両に、計測装置である加速度センサ(0902)を装備している。このセンサは移動体(0901)が進行方向に移動することにより生ずる水平方向の加速度aを計測する。この加速度aを用いて速度や位置の推定を行う。
【0038】
<実施例2:機能的構成>
図10は、本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(1000)の機能的構成を示す図である。本実施例にかかる速度・位置推定装置は、「水平方向加速度信号取得部」(1001)と、「水平方向外乱除去部」(1002)と、「速度情報算出部」(1003)と、「速度リセット部」(1004)とを有する。
【0039】
<実施例2:水平方向加速度信号取得部>
「水平方向加速度信号取得部」(1001)は移動体の進行方向に平行に取り付け、移動体の進行方向の加速度信号を取得するための加速度センサを備えている。「移動体」とは、歩行者以外の移動体であって、車両(自動車、自転車)、船舶、航空機などが含まれる。取得された加速度信号はデジタル化され、その値を水平方向外乱除去部(1002)に出力する。当部の機能は、加速度センサとI/Oインタフェース、CPUとRAM、CPUにて実行される水平方向加速度信号取得プログラムによって実現される。
【0040】
<実施例2:水平方向外乱除去部>
「水平方向外乱除去部」(1002)は、取得した水平方向加速度信号から外乱を減衰させた外乱減衰後信号を得るための濾波器を備えている。水平方向加速度信号取得部(1001)より加速度信号の値を入力として取得し、その周波数を特定する。「濾波器」には帯域通過フィルタをはじめ、ローパスフィルタ、帯域阻止フィルタ等が含まれる。帯域通過フィルタを使用した場合には、特定された周波数のうち所定の周波数帯域(通過帯域)についてはそのままの値を保持し、その他の帯域(減衰帯域)については0などの減衰値に変換する。処理後の加速度信号の値は、速度情報算出部(1003)に対して外乱減衰後信号として出力する。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される水平方向外乱除去プログラムにより実現される。なお、濾波器の通過および阻止する帯域の周波数帯は、移動体の種類によって適宜定められる。移動体が自動車であるのか、飛行機であるのか、あるいは自転車であるのかによって適切な周波数帯が定められる。
【0041】
<実施例2:速度情報算出部>
「速度情報算出部」(1003)は、外乱減衰後信号を積分し速度情報を算出する機能を有する。「水平方向外乱除去部」(1002)より外乱減衰後信号の値(加速度)を入力として受け取り、CPUによる演算により積分を行うことで速度情報を算出する。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される速度情報算出プログラムなどにより実現される。
【0042】
<実施例2:速度リセット部>
「速度リセット部」(1004)は算出した速度を所定の値にリセットする機能を有する。「所定の値にリセット」とは、例えば車両の停止を知らせる車両停止信号を検出すると、速度を0とする処理を実行する等の場合が考えられる。具体的には速度情報算出部(1003)に対しリセット信号を送出する。一般に、時間が経過するほど実際の速度との誤差が増大するが、本実施例の速度・位置推定装置では停止に伴い速度リセット処理を実行することで、誤差をゼロリセットすることが可能である。当部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される速度リセットプログラムなどにより実現される。リセットはマニュアルで実行してもよいし、速度が所定の条件を満たしたことで自動的にリセットするように構成してもよい。例えば算出される速度がマイナスとなる場合には速度をゼロにリセットするように構成することができる。そして、リセット量すなわち、誤差速度分過去にさかのぼって速度情報を修正するように構成することもできる。出発点を起点として、最終的にリセットした速度分グラフをリセット時から出発時に逆向きに徐々に時間に比例し修正分が小さくなるように修正するのである。
【0043】
<実施例2:処理の流れ>
図11は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の時刻tにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。この図にあるように、まず移動体の進行方向の加速度信号を取得する(ステップS1101)。次に濾波器で外乱を減衰させた外乱減衰後信号を取得する(ステップS1102)。次に外乱後減衰後信号を積分し速度情報を算出する(ステップS1103)。算出後移動体の停止が検出されたか否かを判断する(ステップS1104)。停止を検出していないという判断結果の場合は一連の処理を終了する。一方、停止を検出している場合には、算出した速度を所定の値にリセットする(ステップS1105)。
【0044】
<実施例2:ハードウエア構成>
図12は、本実施例にかかる速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(1201)と、ハードディスクドライブ等の「不揮発性メモリ」(1202)と、「RAM」(1203)を備えている。また「加速度センサ」(1204)、移動体が停止しているか否かを判断する「停止検出センサ」(1207)やこれに接続された「I/Oインタフェース」(1205)そして、それらが「システムバス」(1206)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0045】
まず、不揮発性メモリ(1202)に格納されている水平方向加速度信号取得プログラムがRAM(1203)へ呼び出され、CPU(1201)にて実行される。移動体が進行すると、加速度が生じ、I/Oインタフェース(1205)に接続されている加速度センサ(1204)から加速度信号が出力される。当該信号はI/Oインタフェース(1205)を介して加速度センサ(1204)の計測値H(t)(tは測定時刻)をRAM(1203)に格納する。次に水平方向外乱除去プログラムがRAM(1203)に呼び出され、CPU(1201)にて実行される。同プログラムはRAM(1203)に格納されているフィルタの通過帯域の上限値f3と下限値f4とを読み込み、RAM(1203)に格納されているH(t)の値に周波数帯域によるフィルタ演算を行う。その結果f3(上限値)より小さくf4(下限値)より大きい周波数成分のみ通過させた値をK(t)としてRAM(1203)に格納する。次に、速度情報算出プログラムがRAM(1203)上に呼び出されCPU(1201)において実行される。同プログラムはRAM(1203)に格納されているK(t)を読み込み、CPU(1201)にて積分の演算処理を実行し、速度V(t)を算出し、RAM(1203)上に格納する。ここで、速度リセットプログラムが待機状態となっており、移動体が停止しているか否かを判断する停止検出センサ(車輪等に設置されたセンサ等)(1207)により停止が検出され、割り込みが起こると実行状態となり、同プログラムはRAM(1203)上の速度V(t)を所定の値V0(一例として0)とする処理を実行する。
【実施例3】
【0046】
<実施例3:概要>
本実施例の速度・位置推定装置は、ジャイロセンサによる進行方向変化の検知と、地磁気計による進行方向の検知とが可能である。ジャイロセンサにより角速度が検知され、積分することにより算出された進行方向変化分をすでに計算によって得られている方向に加えた値を新たな方向とし、直進時等に地磁気計により検知された進行方向で補正を行うことで正しい進行方向の出力が可能である。これは時間の経過につれ、方向の算出結果に誤差がたまるために行うものである。図13は本実施例の速度・位置推定装置の処理の概要を示すための概念図である。ここでは車両模型を広場において、目標地点を設定し、途中からの車両模型の動きを示す。この図にあるように、車両模型(1301)が(A)を通って目標地点である(★)に向かおうとしたところ、この曲線部分で生じた方位算定誤差によって、(B)方向に回動してしまった。その後、直進して直進部分(B)を通行している場面を示している。ここで目標(★)の進行方向はA地点から見て真東方向であったとする。車両は直進区間の中のB地点において地磁気センサにより磁北を取得し、真東の方向を特定する。本願発明はこの時点での方向の補正を特徴とするものである。この発明を応用して、例えばその後、車両は真東+所定の補正量を加えた方向に車両を向け、目標方向へ補正を行い目標(★)に達することができる。このように、地磁気に基づく方向の補正を行うことにより、ジャイロセンサに(1302)よる進行方向検知の誤差を解消でき、正しい位置の推定が可能となる。
【0047】
<実施例3:機能的構成1>
図14は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(1400)は、「加速度信号取得部」(1401)と、「外乱除去部」(1402)と、「振幅信号取得部」(1403)と、「歩行非歩行判別部」(1404)と、「信号整形部」(1405)と、を有する。これら構成要件については上記にて説明済みであるので記載は省略する。本実施例の機能的構成1ではこれら構成要件に加え「進行方向変化検知部」(1406)と、「地磁気計側部」(1407)と、「補正部」(1408)と、「進行方向出力部」(1409)とを新たに有する。
【0048】
<実施例3:機能的構成2>
図15は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の別の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(1500)は、「水平方向加速度信号取得部」(1501)と、「水平方向外乱除去部」(1502)と、「速度情報算出部」(1503)と、「速度リセット部」(1504)とを有する。本実施例の機能的構成2ではこれら構成要件に加え「進行方向変化検知部」(1506)と、「地磁気計側部」(1507)と、「補正部」(1508)と、「進行方向出力部」(1509)とを新たに有する。以下新たな構成要件について説明する。
【0049】
<実施例3:進行方向変化検知部>
「進行方向変化検知部」(1406、1506)は、歩行者または移動体の進行方向変化(変化角度/単位時間)を検知するジャイロセンサを備える。ジャイロセンサは「回転機械式」、「光学式」、「振動式」各方式が存在しておりどの方式を採用してもよいが、スマートフォンなどに採用されている「振動式」が装置の小型化が可能であり好適である。検知された進行方向の変化は、後述する進行方向出力部(1409、1509)に対して出力される。同部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される進行方向変化検知プログラム、ジャイロセンサおよびI/Oインタフェース等で実現される。
【0050】
<実施例3:地磁気計測部>
「地磁気計測部」(1407、1507)は、地磁気に基づいて進行方向を検知する地磁気計を備える。地磁気計はいわゆる「電子コンパス」が採用できる。電子コンパスには、ホールセンサ、MI(Magneto Impedance)型、MR(Magneto Resistance)型などの方式があるが、高精度の方向検知には感度の高いMI型が好適である。また、車両用途では上下の加速度の影響が少ないことから2軸のセンサを適用できるのに対して、歩行者や航空機など上下の加速度の影響が大きい場合には、3軸のセンサを適用することが望ましい。当部で検知された進行方向は後述する補正部(1408、1508)に対して出力される。同部の機能は、CPUとRAM、CPUにて実行される地磁気計測プログラム、地磁気センサおよびI/Oインタフェース等で実現される。
【0051】
<実施例3:補正部>
「補正部」(1408、1508)は、後述する進行方向出力部(1409、1509)で進行方向変化が検知されない期間に地磁気計測部(1407、1507)にて計測された進行方向に基づいて後記進行方向出力部(1409、1509)から出力される進行方向を補正する機能を有する。「進行方向変化が検知されない期間」とは例えば道路を直進していたり、停止したりといった状態の期間を指し、ジャイロセンサ等で進行方向の変化が小さい期間のことを指す。当部は地磁気計測部(1406、1506)および後記進行方向出力部(1409、1509)より進行方向データを取得し、CPUにおける演算処理で補正値を算出し、進行方向出力部(1409、1509)から出力される進行方向を補正する。同部の機能はCPUとRAM、CPUにて実行され、補正値を算出する補正プログラムにより実現される。
【0052】
<実施例3:進行方向出力部>
「進行方向出力部」(1409、1509)は、既出力の進行方向と、既出力の進行方向出力時からの進行方向変化を積分した値に基づいて進行方向を出力する機能を有する。「既出力の進行方向」とは、例えば出発時や、前回出力された進行方向、前回補正され出力された進行方向などが含まれる。したがって前回出力時からプラス何度、マイナス何度といったフォーマットにより出力することが可能である。同部の機能はCPUとRAM、CPUにて実行される進行方向出力プログラムにより実現される。
【0053】
<実施例3:処理の流れ>
図16は本実施例の速度・位置推定装置の時刻tにおける進行方向算出および出力処理の流れの一例を示すフローチャートである。この図に示すように、まず進行方向変化を積分して変化量を保持されている進行方向に加算する(ステップS1601)。次に進行方向を出力し(ステップS1602)、進行方向の変化があるか否かの判断を行う(ステップS1603)。進行方向の変化がない場合には進行方向を地磁気により補正する(ステップS1604)。
【0054】
<実施例3:ハードウエア構成>
図17は、本実施例にかかる速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(1701)と、ハードディスクドライブ等の「不揮発性メモリ」(1702)と、「RAM」(1703)を備えている。また「ジャイロセンサ」(1708)と「地磁気センサ」(1709)やこれに接続された「I/Oインタフェース」(1705)そして、それらが「システムバス」(1706)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0055】
まず、不揮発性メモリ(1702)に格納されている進行方向変化検知プログラムがRAM(1703)へ呼び出され、CPU(1701)にて実行される。移動体が進行し回動すると、角速度が生じ、I/Oインタフェース(1705)に接続されているジャイロセンサ(1708)から角速度信号が出力される。当該信号はI/Oインタフェース(1705)を介してジャイロセンサ(1708)の計測値J(t)(tは測定時刻)をRAM(1703)に格納する。次にCPU(1701)で進行方向出力プログラムが実行され、既に出力され、RAM(1703)に格納されている進行方向T(t0)とt0からの進行方向変化量M(t0〜t)(J(t0→t)を積分した値)に基づいて進行方向G(t)を出力する。一方CPU(1701)では地磁気計測プログラムも実行され、地磁気センサ(1709)により方位を取得する。次にCPU(1701)では補正プログラムが実行され、G(t)の変化の振幅と所定の閾値uとを比較し、G(t)の変化の振幅が一定時間の間uの値を下回るか否かの判断を実行する。G(t)の変化の振幅が一定時間の間uの値を下回っていると判断された場合には、地磁気センサ(1709)の値に基づいて補正量Cを算出する。そして、G(t)とCとに基づいて補正後の進行方向D(t)をCPU(1701)において新たな進行方向として出力する。
【実施例4】
【0056】
<実施例4:概要>
本実施例の速度・位置推定装置は、上記実施例で算出した歩行者や車両の歩行信号部分の信号や水平方向加速度信号を用いて移動長を算出することが可能である。
【0057】
<実施例4:機能的構成1>
図18は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(1800)は、「加速度信号取得部」(1801)と、「外乱除去部」(1802)と、「振幅信号取得部」(1803)と、「歩行非歩行判別部」(1804)と、「信号整形部」(1805)と、を有する。これら構成要件については上記にて説明済みであるので記載は省略する。本実施例の機能的構成1では、これら構成要件に加え、「移動長算出出力部」(1810)を新たに有する。
【0058】
<実施例4:機能的構成2>
図19は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の別の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(1900)は、「水平方向加速度信号取得部」(1901)と、「水平方向外乱除去部」(1902)と、「速度情報算出部」(1903)と、「速度リセット部」(1904)とを有する。本実施例の機能的構成2では、これら構成要件に加え「移動長算出出力部」(1910)を新たに有する。以下新たな構成要件について説明する。
【0059】
<実施例4:移動長算出出力部>
「移動長算出出力部」(1810、1910)は、歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する機能を有する。なお機能的構成1の移動長算出出力部(1810)は歩行信号部分の信号を用いて移動長を算出し出力する。具体的にはまず下記の数式1を用いて歩行信号部分の鉛直方向の加速度の振幅av,ampから歩幅S(歩幅S∝速度v)を算出し歩幅Sに比例する速度を算出する。
【数1】
歩幅Sから速度vの算出は鉛直方向の加速度の周波数を用いてステップ検出することで導出できる。このvを積分することで移動長を算出することが可能である。なお、Kは比例ゲインである。
【0060】
機能的構成2の移動長算出出力部(1910)は水平方向加速度信号を用いて移動長を算出し出力する。水平加速度信号を積分し速度を算出し、さらに積分することで移動長を算出することが可能である。
【0061】
<実施例4:処理の流れ>
図20は本実施例の速度・位置推定装置における処理の流れを示すフローチャートである。この図に示すように、まずA:歩行信号部分の信号またはB:水平加速度信号を取得する(ステップS2001)。次に移動長の算出を行う(ステップS2002)。
【0062】
<実施例4:ハードウエア構成>
図21は、本実施例にかかる速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(2101)と、ハードディスクドライブ等の「不揮発性メモリ」(2102)と、「RAM」(2103)を備えている。また「加速度センサ」(2104)やこれに接続された「I/Oインタフェース」(2105)そして、それらが「システムバス」(2106)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0063】
不揮発性メモリ(2102)上とRAM(2103)上には、上記実施例のハードウエア構成において説明した各種プログラムが格納されている。これらプログラムに関してはすでに説明済みであるので記載は省略する。
【0064】
ここで、CPU(2101)において上記実施例の信号整形プログラムや水平方向加速度信号取得プログラムにより、歩行信号部分の信号または水平方向加速度信号が出力される。CPU(2101)において移動長算出出力プログラムが起動し、歩行信号部分の信号や水平方向加速度信号を入力として受け取る。同プログラムはCPU(2101)における演算処理で加速度信号を積分し速度を算出し、さらにこれを積分することで変位を得る。得られた変位はRAM(2103)に格納される。
【実施例5】
【0065】
<実施例5:概要>
本実施例の速度・位置推定装置は、自律航法を念頭とした自律演算位置情報を算出し、この履歴を位置情報履歴として記憶域に格納する。その上で自律演算以外の方法である電波ビーコンなどで得られる位置情報である非自律由来位置情報により、記憶域に格納された位置情報履歴を補正することが可能である。
【0066】
<実施例5:機能的構成1>
図22は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(2200)は、「鉛直加速度信号取得部」(2201)と、「外乱除去部」(2202)と、「振幅信号取得部」(2203)と、「歩行非歩行判別部」(2204)と、「信号整形部」(2205)と、「進行方向変化検知部」(2206)と、「地磁気計測部」(2207)と、「補正部」(2208)と、「進行方向変化検知部」(2209)と、「移動長算出出力部」(2210)と、を有する。これら構成要件については上記にて説明済みであるので記載は省略する。本実施例の機能的構成1では、これら構成要件に加え、「自律演算位置情報算出出力部」(2211)と、「位置情報履歴保持部」(2212)と、「非自律由来位置情報取得部」(2213)と、「位置情報補正部」(2214)と、を新たに有する。
【0067】
<実施例5:機能的構成2>
図23は、本実施例にかかる速度・位置推定装置の機能的構成の一例を示す図である。本実施例にかかる「速度・位置推定装置」(2300)は、「水平方向加速度信号取得部」(2301)と、「水平方向外乱除去部」(2302)と、「速度情報算出部」(2303)と、「速度リセット部」(2304)と、「進行方向変化検知部」(2306)と、「地磁気計測部」(2307)と、「補正部」(2308)と、「進行方向出力部」(2309)と、を有する。これら構成要件については上記にて説明済みであるので記載は省略する。本実施例の機能的構成2では、これら構成要件に加え、「自律演算位置情報算出出力部」(2311)と、「位置情報履歴保持部」(2312)と、「非自律由来位置情報取得部」(2313)と、「位置情報補正部」(2314)と、を新たに有する。
【0068】
<実施例5:自律演算位置情報算出出力部>
「自律演算位置情報算出出力部」(2211、2311)は、後述する位置情報履歴保持部に保持されている位置情報と、移動長算出出力部にて算出出力される移動長と、進行方向出力部にて出力される進行方向と、に基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する機能を有する。本発明において「位置情報」とは、「方向」と「距離」の概念により定義されている情報であり、GPSにより緯度、経度の情報を特定することの難しい、屋内の通路等において位置を特定するために使用可能な情報である。算出され出力された自律演算位置情報は位置情報履歴保持部(2212、2312)に対し出力される。当部の機能はCPUとRAM、CPUにて実行される自律演算位置情報算出出力プログラムにより実現される。
【0069】
<実施例5:位置情報履歴保持部>
「位置情報履歴保持部」(2212、2312)は、算出し出力された位置情報の履歴を保持する機能を有する。具体的には自律演算位置情報算出出力部(2211、2311)から位置情報を入力として受け取り、記憶域に位置情報の履歴を格納する。この時、時刻情報と関連付けて履歴が格納される。
【0070】
<実施例5:非自律由来位置情報取得部>
「非自律由来位置情報取得部」(2213、2313)は、自律演算以外の方法で得られる位置情報である非自律由来位置情報を取得する機能を有する。自律演算以外の方法とは、例えばBLEビーコンなどの電波ビーコンなどによる位置情報の提供などがあげられる。また地図情報から位置情報が通行可能な領域の境界線を越えていないかを判別し、超えていた場合は通行領域内へ位置情報を補正するような方法もある。取得した非自立由来位置情報は時刻情報に関連付けられて位置情報補正部(2214、2314)に対して出力される。当部の機能はCPUとRAM、CPUにて実行される非自立由来位置情報取得プログラムと、電波ビーコン等の電波を受信するためのアンテナや無線モジュール等で実現される。
【0071】
<実施例5:位置情報補正部>
「位置情報補正部」(2214、2314)は、非自律由来位置情報に基づいて位置情報履歴保持部に保持されている位置情報を補正する機能を有する。具体的には非自立由来位置情報取得部(2213、2313)から非自立由来位置情報を受け取り、記憶域に格納されている位置情報履歴保持部の位置情報を書き換える。このとき、時刻情報を参照し、該当する時刻の位置情報の履歴を書き換える。ここで該当する時刻とは、現在の時刻tはもとより直近の時刻t−1、及び直後の時刻t+1の3通りが含まれており、これらの時刻の位置情報を書き換えるといった処理も「履歴を書き換える」ことに含まれることとする。当部の機能はCPUとRAM、CPUにて実行される位置情報補正プログラム等で実現される。
【0072】
<実施例5:処理の流れ>
図24は本実施例の速度・位置推定装置の時刻tにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、C:進行方向を出力し、D:移動長を算出出力する。次に時刻t−1における位置情報と、移動長と、進行方向とに基づいた位置情報である自律演算位置情報を算出し出力する(ステップS2401)。次に自立演算以外の方法で得られる位置情報である非自立由来位置情報を取得する(ステップS2402)。次に非自立由来位置情報に基づいて記憶域に格納されている位置情報履歴の位置情報を補正する(ステップS2403)。
【0073】
<実施例5:ハードウエア構成>
図25は、本実施例にかかる速度・位置推定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(2501)と、ハードディスクドライブ等の「不揮発性メモリ」(2502)と、「RAM」(2503)を備えている。また「加速度センサ」(2504)や「ジャイロセンサ」(2508)と「地磁気センサ」(2509)やこれに接続された「I/Oインタフェース」(2505)、電波ビーコンなどの電波を受信する「通信モジュール」(2510)と「アンテナ」(2511)、そして、それらが「システムバス」(2506)などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0074】
不揮発性メモリ(2502)上とRAM(2503)上には、上記実施例のハードウエア構成において説明した各種プログラムが格納されている。これらプログラムに関してはすでに説明済みであるので記載は省略する。
【0075】
RAM(2503)上に位置情報履歴L(t−1)が格納されている。ここで、移動長算出プログラムがCPU(2501)で実行されて移動長W(t)が算出され、RAM(2503)上に一時的に保持されている。また、進行方向出力プログラムがCPU(2501)で実行され、進行方向の値E(t)がRAM(2503)保持されている。ここで時刻t1での位置情報の補正を考える。自律演算位置情報算出出力プログラムがCPU(2501)において起動し、位置情報履歴L(t0)(t0<t1)を読み込む。次に移動長算出プログラムと進行方向出力プログラムとがCPU(2501)で実行され、移動長W(t0〜t1)と進行方向の値E(t0〜t1)が得られる。これらを用いて、L(t1)を算出する。L(t1)は、RAM(2503)上に保持される。一方、RAM(2503)上に電波ビーコンの位置情報L1が格納されている。無線モジュール(2510)ではアンテナ(2511)を介して電波ビーコンの電波を受信し、その強度に応じてL1周辺への補正位置情報L2を得る。またRAM(2503)上に格納されている地図情報から位置情報が通行可能な領域の境界線を越えていないかを判別し、超えていた場合は通行領域内への補正位置情報L3を得る。この補正位置情報で、CPUにて実行されている補正プログラムによりRAM(2503)上に格納されているL(t1)をL2(t1)またはL3(t1)へ書き換えることで補正処理が完了する。
【符号の説明】
【0076】
0301:鉛直方向加速度信号取得部
0302:外乱除去部
0303:振幅信号取得部
0304:歩行非歩行判別部
0305:信号整形部
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