【課題】回転体と供試体との間に軸受が位置する回転試験装置において、供試体の回転数が試験回転数に達した後に、軸受で生じる損失をより早く一定にすることができる構成を得る。
【解決手段】車両用試験装置1は、供試モータ2を回転させるダイナモ11と、供試モータ2とダイナモ11との間に設けられ、供試モータ2とダイナモ11とを回転可能に連結する中間軸31と、複数の転動体によって中間軸31を回転可能に支持する中間軸受32,33と、中間軸受32,33を保持するハウジング34と、ハウジング34を加熱する加熱部35,36と、ハウジング34の温度が、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際の所定温度になるように、加熱部35,36による加熱量を制御する加熱制御装置50と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような回転試験装置を用いた供試体の回転試験では、トルク検出部で検出されたトルクに対し、回転試験装置で生じる損失分を考慮することにより、前記供試体が発生するトルクを求めることができる。
【0006】
ところで、前記回転試験装置では、回転軸を回転可能に支持する軸受部分で損失が生じる。よって、前記回転試験装置のトルク検出部で検出されたトルクから、前記供試体が発生するトルクを精度良く求めるためには、前記供試体の回転試験時に軸受で生じる損失が一定であることが好ましい。
【0007】
しかしながら、軸受で発生する損失は回転数によって変化するため、前記損失によって前記軸受に生じる発熱量も回転数によって変化する。この発熱量の変化により、回転軸及び軸受の膨張や潤滑油の粘性も変化するため、軸受で発生する損失はさらに変化する。そのため、回転試験装置の回転数が供試体の試験回転数に達しても、軸受の温度、及び軸受内部の潤滑油の温度が収束しにくいため、前記軸受で生じる損失も一定になりにくい。したがって、回転試験装置を用いて供試体の回転試験を行う場合、供試体の回転数が試験回転数に達した後に、軸受の温度が一定になって前記軸受で生じる損失が一定になるまでに、長い時間を要する。
【0008】
このように、回転試験装置を用いて供試体の回転試験を行う際に、軸受で生じる損失が一定になるまでの時間がかかると、供試体の回転試験を開始するまでの時間が長くなる。
【0009】
本発明の目的は、回転体と供試体との間に軸受が位置する回転試験装置において、供試体の回転数が試験回転数に達した後に、軸受で生じる損失をより早く一定にすることができる構成を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る回転試験装置は、供試体を回転させる回転体と、前記供試体と前記回転体との間に設けられ、前記供試体と前記回転体とを回転可能に連結する回転軸と、複数の転動体によって前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングを加熱する加熱部と、前記ハウジングの温度が、前記回転体が所定回転数で回転した際の所定温度になるように、前記加熱部による加熱量を制御する加熱制御部と、を備える(第1の構成)。
【0011】
これにより、回転試験装置の軸受の温度を、回転体が所定回転数で回転したときの軸受の温度に迅速に到達させることができる。すなわち、前記軸受を保持するハウジングの温度が、回転体が所定回転数で回転した際の所定温度になるように、加熱部によって前記ハウジングを加熱することにより、所定回転数以下の運転であっても、前記ハウジングを介して前記軸受を加熱できるため、前記軸受の温度を迅速に一定にすることができる。
【0012】
したがって、前記回転体が所定回転数で回転した際に前記軸受で生じる損失を、迅速に一定にすることができる。よって、前記回転体の回転数が所定回転数に達した後、トルク計測を迅速に開始することができる。
【0013】
前記第1の構成において、回転試験装置は、前記ハウジングの温度を検出する温度検出部をさらに備える。前記加熱制御部は、前記ハウジングの温度が前記所定温度になるように、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記加熱部による加熱量を制御する(第2の構成)。
【0014】
これにより、回転試験装置は、ハウジングの温度に応じて、加熱部の加熱制御を行うことができる。よって、前記回転体が所定回転数で回転した際に前記軸受で生じる損失を、より迅速に一定にすることができる。そのため、前記回転体の回転数が所定回転数に達した後、トルクの高精度計測をより迅速に開始することができる。
【0015】
前記第1または第2の構成において、回転試験装置は、前記回転体と前記軸受との間に位置するトルク計と、前記トルク計によるトルク計測を制御するトルク計測制御部と、をさらに備える。前記トルク計測制御部は、前記ハウジングの温度、前記回転軸の温度、前記トルク計の温度のうち、前記ハウジングの温度を含む少なくとも一つの温度に基づいて、前記トルク計によるトルク計測を行う(第3の構成)。
【0016】
これにより、軸受の温度等が安定した状態を確認したうえで、トルク計によるトルク計測を行うことができる。よって、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0017】
前記第3の構成において、回転試験装置は、前記トルク計の温度を検出するトルク計温度検出部をさらに備える。前記トルク計測制御部は、前記ハウジングの温度とハウジング温度目標値との温度差が第1温度範囲内である場合において、前記トルク計温度検出部によって検出された前記トルク計の温度とトルク計温度目標値との温度差が第2温度範囲内である場合に、前記トルク計によるトルク計測を行う(第4の構成)。
【0018】
前記トルク計測制御部は、回転体が所定回転数で回転した際に収束するトルク計の温度であるトルク計温度目標値に対し、トルク計の温度が収束温度近傍の第2温度範囲内であることを確認してから、トルク計測を行う。これによって、トルク計の温度特性による影響がほとんど無い状態でのトルク計測が可能となる。
【0019】
前記第3または第4の構成において、回転試験装置は、前記回転軸の温度を検出する回転軸温度検出部をさらに備える。前記トルク計測制御部は、前記ハウジングの温度とハウジング温度目標値との温度差が第1温度範囲内である場合において、前記回転軸温度検出部によって検出された前記回転軸の温度と回転軸温度目標値との温度差が第3温度範囲内である場合に、前記トルク計によるトルク計測を行う(第5の構成)。
【0020】
トルク計測制御部は、回転体が所定回転数で回転した際に収束する回転軸の温度である回転軸温度目標値に対し、回転軸の温度が収束温度近傍の第3温度範囲内であることを確認してから、トルク計測を行う。これによって、軸受の温度が更に安定した状態でのトルク計測が可能となる。
【0021】
上述のように、ハウジングの温度の他に、トルク計の温度(第4の構成)や回転軸の温度(第5の構成)も監視することにより、軸受周囲やトルク計の温度状態が安定したことを確認したうえでトルク計測を行うことができ、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0022】
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記所定回転数は、前記供試体の回転試験における前記回転体の最高回転数である(第6の構成)。これにより、供試体の回転試験において、ハウジングに対し、回転体が最高回転数で回転した際の所定温度になるような加熱量を、加熱部によって与えることができる。よって、前記回転体が、前記供試体の回転試験で最高回転数以下のどのような回転数で回転している場合でも、前記ハウジングの温度を、前記所定温度により迅速に到達させることができる。そのため、軸受の温度を迅速に一定にすることができる。
【0023】
したがって、前記回転体が所定回転数で回転した際に前記軸受で生じる損失を、迅速に一定にすることができる。よって、前記回転体の回転数が所定回転数に達した後、トルクの高精度計測を迅速に開始することができる。
【0024】
前記第1から第6の構成のいずれか一つの構成において、前記加熱部は、前記ハウジングのうち前記軸受の径方向外方に位置する部分を加熱する(第7の構成)。これにより、加熱部によって、ハウジングのうち軸受の近傍に位置する部分を、効率良く加熱することができる。よって、前記軸受の温度をより迅速に一定にすることができる。
【0025】
したがって、前記回転体が所定回転数で回転した際に前記軸受で生じる損失を、より迅速に一定にすることができる。よって、前記回転体の回転数が所定回転数に達した後、トルクの高精度計測をより迅速に開始することができる。
【0026】
前記第1から第7の構成のうちいずれか一つの構成において、回転試験装置は、前記軸受内に潤滑油を噴霧する潤滑油供給部をさらに備える(第8の構成)。
【0027】
これにより、潤滑油を軸受に直接供給する場合に比べて、軸受に対して供給する潤滑油の量が少なくなるため、潤滑油の粘性変化による損失変化を極小化できる。
【0028】
更に、軸受において、潤滑油を介して交換される熱量がほとんど無いため、ハウジングを加熱する加熱部が発生する熱量が潤滑油に吸収されることなく、軸受近傍のハウジングを加熱することができる。これによって、前記第1から第6の構成による軸受温度一定化によるトルク計測の高精度化、及び、軸受の損失収束の迅速化の効果を最大限に引き出せる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態に係る回転試験装置は、供試体と回転体とを回転可能に連結する回転軸を複数の転動体によって回転可能に支持する軸受と、前記軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングを加熱する加熱部と、前記ハウジングの温度が、前記回転体が所定回転数で回転した際の所定温度になるように、前記加熱部による加熱量を制御する加熱制御部とを備える。
【0030】
これにより、前記ハウジングの温度を前記所定温度に迅速に到達させることができる。よって、前記軸受で生じる損失を迅速に一定にすることができる。したがって、前記回転体が前記所定回転数に到達した後、トルクの高精度計測を迅速に開始することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0033】
(全体構成)
図1は、実施形態に係る車両用試験装置1(回転試験装置)の概略構成を示すブロック図である。車両用試験装置1は、供試体である供試モータ2を回転させた状態で該供試モータ2の各種測定データを得るための試験装置である。
【0034】
車両用試験装置1は、供試モータ2に駆動連結されるダイナモ11(回転体)と、供試モータ2とダイナモ11とを回転可能に連結する中間軸31(回転軸)と、供試モータ2に発生するトルクを検出するトルク計41(トルク検出部)とを備える。
図1における符号3は、供試モータ2の駆動を制御するモータ制御装置である。
【0035】
モータ制御装置3は、入力されるトルク指令に応じて供試モータ2に電力を供給することにより、供試モータ2のトルクを制御する。モータ制御装置3の構成は、従来のインバータなどの制御装置と同様の構成を有するため、詳しい説明を省略する。
【0036】
なお、本実施形態では、回転試験装置として、車両用試験装置1の例を挙げているが、他の用途の試験装置であってもよい。
【0037】
ダイナモ11は、電動モータであり、回転数が制御される。ダイナモ11の構成は、一般的な電動モータと同様であるため、詳しい説明を省略する。ダイナモ11には、図示しない回転子の回転数を検出するための回転数センサ12が設けられている。
【0038】
ダイナモ11の回転子は、中間軸31を介して供試モータ2の回転子(図示省略)に接続されている。なお、特に図示しないが、ダイナモ11の回転子と中間軸31とは、両者にそれぞれ設けられたカップリング同士がボルトによって締結されることにより、駆動連結されている。また、特に図示しないが、中間軸31と供試モータ2の回転子も、同様に、カップリング同士がボルトによって締結されることにより、駆動連結されている。
【0039】
中間軸31には、ダイナモ11と供試モータ2との間に生じるトルクを検出するためのトルク計41が設けられている。トルク計41は、ダイナモ11と後述の中間軸受33との間に位置する。このトルク計41は、中間軸31に生じるねじれ角の差を検出する。トルク計41では、検出したねじれ角の差から中間軸31に生じるトルクを求め、トルク信号として出力する。なお、トルク計41からねじれ角の差に対応する信号を出力して、制御装置等によってトルク値を算出してもよい。
【0040】
中間軸31は、筒状のハウジング34を筒軸方向に貫通している。ハウジング34は、中間軸受32,33(軸受)を支持する。ハウジング34のうち中間軸受32,33を支持する部分が、軸受支持部34a,34bを構成する。なお、ハウジング34は、後述のベース1aによって支持されている。
【0041】
中間軸31は、中間軸受32,33によって、軸方向の2箇所で回転可能に支持されている。中間軸受32,33は、中間軸31において、トルク計41と供試モータ2との間の部分を回転可能に支持する。すなわち、中間軸受32,33は、中間軸31における供試モータ2側を回転可能に支持する。トルク計41は、ダイナモ11と中間軸受32,33との間に配置されている。
【0042】
中間軸受32は、中間軸31の軸方向における供試モータ2側を回転可能に支持する。中間軸受33は、中間軸31の軸方向において、中間軸受32よりもダイナモ11側に位置する。
【0043】
中間軸受32,33は、それぞれ、転動体32a,33aと、内側リング32b,33bと、外側リング32c,33cとを有する。内側リング32b,33bは、中間軸31の外周面に嵌合している。外側リング32c,33cは、後述するハウジング34の軸受支持部34a,34bに固定されている。転動体32a,33aは、内側リング32b,33bと外側リング32c,33cとの間に挟まれた状態で転動する。
【0044】
これにより、中間軸受32,33において、転動体32a,33aを介して、中間軸31をハウジング34に対して回転可能に支持することができる。このように、中間軸受32,33は、それぞれ、転動体32a,33aを有する転がり軸受である。なお、中間軸受32,33は、転動体として円柱部材を有していてもよい。
【0045】
車両用試験装置1において、ダイナモ11、中間軸31、ハウジング34、トルク計41及び中間軸受32,33は、ベース1aによって支持されている。また、供試モータ2は、ベース1a上に設けられたモータ固定部1bに固定されている。
【0046】
図2に示すように、中間軸受32,33には後述の潤滑油供給装置20によって、潤滑油が供給される。ハウジング34には、中間軸受32,33に対して潤滑油を供給するための潤滑油供給路(図示省略)が設けられている。
図1から
図3に、潤滑油供給装置20から中間軸受32,33への潤滑油の流れを、太い一点鎖線で模式的に示す。なお、
図2では、中間軸受32,33から潤滑油供給装置20への潤滑油の流れの記載を省略している。また、
図3では、潤滑油供給装置20の記載を省略し、中間軸受32の周辺における潤滑油の流れのみを図示している。
【0047】
図2に示すように、中間軸受32,33は、中間軸31の軸方向の外方から内方に向かって潤滑油が供給されるように構成されている。また、特に図示しないが、中間軸31は、軸方向において、中間軸受32,33の外方に位置する部分の外径よりも内方に位置する部分の外径が大きい。これにより、中間軸31の回転中において、中間軸受32,33に供給された潤滑油は、中間軸受32,33に対して中間軸31の軸方向内方に流れる。
【0048】
図1に示すように、車両用試験装置1は、中間軸受32,33に対して潤滑油をそれぞれ供給する潤滑油供給装置20(潤滑油供給部)を備える。潤滑油供給装置20は、潤滑油を空気とともに、中間軸受32,33に供給する。具体的には、潤滑油供給装置20は、空気を吐出するエアポンプ21と、エアポンプ21によって吐出された空気内にミスト状(霧状)の微量の潤滑油を吐出する潤滑油吐出部22と、エアポンプ21及び潤滑油吐出部22の駆動を制御する潤滑油制御部23とを備える。
【0049】
潤滑油制御部23は、エアポンプ21及び潤滑油吐出部22の駆動を制御することにより、中間軸受32,33に供給される潤滑油の油量及び空気量を調整する。
【0050】
このように、潤滑油供給装置20が、潤滑油を空気とともに、中間軸受32,33に供給する。つまり、圧縮空気により潤滑油をミスト状にし、空気が混在したミスト状の潤滑油を中間軸受32,33に供給することにより、潤滑油を軸受に直接供給する構成に比べて、中間軸受32,33の内部に供給する潤滑油の油量が極めて少なくなる。これにより、潤滑油の粘性による損失及び潤滑油の粘性変化による損失変化を、極小化できる。なお、損失をさらに低減するために、損失が極小となる潤滑油の油量及び空気量を回転数毎に予め求めて、その結果に基づいて単位時間当たりの油量及び空気量を調整してもよい。
【0051】
中間軸受32,33の内部の潤滑油温度は、軸受のころがり摩擦及び軸受温度によって決まる。しかしながら、中間軸31が一定の回転数の下では、軸受温度を迅速に所定温度にすることによって、中間軸受32,33の内部の潤滑油の温度も速やかに一定となる。よって、中間軸受32,33内に僅かに存在する潤滑油の粘性によって損失が生じたとしても、中間軸受32,33で生じる損失は速やかに安定化する。
【0052】
更に、中間軸受32,33において、潤滑油を介して交換される熱量がほとんど無いため、軸受温度を速やかに且つ安定的に所定温度に制御できる。つまり、軸受温度制御が油の潤滑による影響を受けないため、軸受温度は、速やかに且つ安定的に所定温度に制御される。軸受温度が安定すると、潤滑油の粘性変化による損失変化は、更に小さくなるため、安定する。このような軸受温度の安定性と潤滑油による損失の安定性との関係により、トルクの高精度計測を効果的に実現することができる。
【0053】
ハウジング34には、それぞれ、軸受支持部34a,34bを加熱する加熱部35,36が設けられている。
図2及び
図3に示すように、加熱部35,36は、ハウジング34の内部に、中間軸受32,33をそれぞれ囲むように周方向に並んで配置された複数(本実施形態では8個)のヒータ35a,36aを有する。
【0054】
ヒータ35a,36aは、棒状であり、中間軸31の軸方向に延びるようにハウジング34内に配置されている。ヒータ35a,36aは、軸受支持部34a,34bにおいて、中間軸受32,33の近傍で、且つ、転動体32a,33aと内側リング32b,33b及び外側リング32c,33cとの接触点に対して径方向外方に位置する。
【0055】
ここで、中間軸31の回転によって中間軸受32,33で損失が生じた場合、該損失によって生じた熱により、中間軸受32,33が径方向に膨張を生じる。そうすると、前記接触点において、転動体32a,33aと内側リング32b,33b及び外側リング32c,33cとの摩擦力が変化し、これによって中間軸受32,33で生じる損失が変化する。回転数によって中間軸受32、33の温度は異なるため、回転数を変更後、温度が安定するまでに長い時間を要する。よって、トルク計測の効率が低下する。
【0056】
これに対し、上述のように中間軸受32,33の近傍で且つ前記接触点の径方向外方にヒータ35a,36aを配置して、ハウジング34及び外側リング32c,33cを加熱することで、上述のような熱膨張による摩擦力の変化を抑制できる。これにより、供試モータ2の回転試験時に、回転数変更後の中間軸受の温度変動に伴う損失の変動を抑制できる。
【0057】
特に 、後述するように、ハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度が、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際のハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度になるように、ヒータ35a,36aの加熱制御を行うことにより、中間軸受32,33で生じる損失を迅速に一定にすることができる。ヒータ35a,36aは、後述の加熱制御装置50によって加熱量が制御される。
【0058】
なお、ヒータ35a,36aの形状は、中間軸受32,33を周方向に囲む円環状であってもよいし、円弧状であってもよい。すなわち、ヒータ35a,36aの形状は、ハウジング34の軸受支持部34a,34bを加熱可能な形状であれば、棒状以外の形状であってもよい。また、加熱部35は、ハウジング34の軸受支持部34a,34bを加熱可能な構成であれば、ヒータ以外の加熱装置を有していてもよい。
【0059】
図2に示すように、ハウジング34の軸受支持部34aには、軸受支持部34aの温度Ts1を検出する温度検出部37が設けられている。ハウジング34の軸受支持部34bには、軸受支持部34bの温度Ts2を検出する温度検出部38が設けられている。温度検出部37,38は、軸受支持部34a,34bにおいて中間軸受32,33の近傍に設けられているのが好ましい。なお、温度検出部37,38は、軸受支持部34a,34bにおいて中間軸受32,33から離れた位置に設けられていてもよい。すなわち、温度検出部37,38は、中間軸31が回転した際に中間軸受32,33で発生する熱による軸受支持部34a,34bの温度変化を検出可能な位置であれば、軸受支持部34a,34bのいずれの位置に設けられていてもよい。
【0060】
車両用試験装置1は、加熱部35,36の駆動制御を行う加熱制御装置50(加熱制御部)を備える。加熱制御装置50は、温度検出部37によって検出されたハウジング34の軸受支持部34aの温度Ts1(ハウジングの温度)と、目標温度Tsref1(所定温度、ハウジング温度目標値)との温度差を用いて、加熱部35の駆動制御を行う。加熱制御装置50は、温度検出部38によって検出されたハウジング34の軸受支持部34bの温度Ts2(ハウジングの温度)と、目標温度Tsref2(所定温度、ハウジング温度目標値)との温度差を用いて、加熱部36の駆動制御を行う。
【0061】
具体的には、加熱制御装置50は、温度差算出部51aと、加熱指令生成部52とを有する。
【0062】
温度差算出部51aは、後述の
図5における減算器151a,251aによって構成される。温度差算出部51aは、温度検出部37によって検出されたハウジング34の軸受支持部34aの温度Ts1と、目標温度Tsref1との温度差を算出する。温度差算出部51aは、温度検出部38によって検出されたハウジング34の軸受支持部34bの温度Ts2と、目標温度Tsref2との温度差を算出する。目標温度Tsref1は、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際のハウジング34の軸受支持部34aの温度に設定される。目標温度Tsref2は、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際のハウジング34の軸受支持部34bの温度に設定される。
【0063】
加熱指令生成部52は、温度差算出部51aによって求められた温度差に基づいて、加熱部35,36に対する加熱指令を生成する。加熱指令生成部52は、温度差算出部51aによって算出される温度差から、ハウジング34の軸受支持部34aの温度Ts1と目標温度Tsref1との差が大きいと判定した場合には、加熱部35の加熱量を増加させる加熱指令を生成する一方、前記温度差から、ハウジング34の軸受支持部34aの温度Ts1と目標温度Tsref1との差が小さいと判定した場合には、加熱部35の加熱量を減少または加熱部35による加熱を停止させる加熱指令を生成する。
【0064】
同様に、加熱指令生成部52は、温度差算出部51aによって算出される温度差から、ハウジング34の軸受支持部34bの温度Ts2と目標温度Tsref2との差が大きいと判定した場合には、加熱部36の加熱量を増加させる加熱指令を生成する一方、前記温度差から、ハウジング34の軸受支持部34bの温度Ts2と目標温度Tsref2との差が小さいと判定した場合には、加熱部36の加熱量を減少または加熱部36による加熱を停止させる加熱指令を生成する。
【0065】
なお、加熱指令生成部52は、加熱部35による加熱によって、ハウジング34の軸受支持部34aの温度Ts1を目標温度Tsref1に到達させることができる構成を有していれば、どのような構成を有していてもよい。加熱指令生成部52は、加熱部36による加熱によって、ハウジング34の軸受支持部34bの温度Ts2を目標温度Tsref2に到達させることができる構成を有していれば、どのような構成を有していてもよい。
【0066】
以上のように、加熱制御装置50は、ハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度が、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際のハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度になるように、加熱部35,36の加熱量を制御する。
【0067】
ここで、前記加熱量は、供試モータ2を車両用試験装置1から取り外した状態で、ダイナモ11が最高回転数で回転した際に中間軸受32,33で生じる発熱量から、ダイナモ11の現在の回転によって中間軸受32,33で生じる発熱量を引くことによって得られる発熱量差分を、ハウジング34の軸受支持部34a,34bにおける熱量に換算した値である。
【0068】
発熱量差分Whは、以下の(1)式及び(2)式を用いて求められる。
Wfm[W]=2π×Nm[r/min]×Tfm[Nm]/60 (1)
Wh[W]=Wfm[W]−2π×N[r/min]×Tf[Nm]/60 (2)
【0069】
ここで、Nmは、供試モータ2の回転試験における中間軸31の最高回転数であり、Tfmは、前記最高回転数において中間軸受32,33で生じる摩擦トルクである。また、Nは、中間軸31の現在の回転数であり、Tfは、現在の回転数において中間軸受32,33で生じる摩擦トルクである。
【0070】
上述のように、発熱量差分Whは、供試モータ2の回転試験において中間軸31が最高回転数で回転した際に中間軸受32,33で生じる発熱量Wfmから、中間軸31の現在の回転数で中間軸受32,33に生じる発熱量を減算することによって、求められる。
図4に、中間軸31の回転数に応じた中間軸受32,33の発熱量と発熱量差分Whとの関係を示す。
図4に示すように、中間軸31の回転数が増加すると、中間軸受32,33の発熱量が増加する。よって、中間軸31の回転数の増加に伴って、発熱量差分Whは減少する。
【0071】
上述での(1)式及び(2)式を用いて求められる、中間軸受32,33で生じる発熱量Wfmは、供試モータ2側の中間軸受32の発熱量とダイナモ(回転体)11側の中間軸受33の発熱量とを合算した値である。よって、上述のように求められる発熱量差分Whを、ハウジング34の軸受支持部34a,34bにおける熱量に換算した値が、加熱部35,36の加熱量の和に相当する。
【0072】
加熱制御装置50は、
図4に示す中間軸31の回転数と発熱量差分Whとの関係から、中間軸31の回転数に応じた加熱量を求め、該加熱量に基づいて加熱部35,36を駆動制御する。
【0073】
加熱制御装置50は、中間軸31の回転数に応じて計算される加熱量に基づいて加熱部35,36の駆動制御を行うとともに、軸受支持部34a,34bの温度を監視し、その温度が所定温度(最高回転数で運転時の収束温度)となるように、加熱部35,36を駆動制御することによって、より早く所定温度に到達させることができる。
【0074】
或いは、加熱制御装置50は、回転数に応じて実験で予め求められた加熱量に基づいて加熱部35,36の駆動制御を行うとともに、軸受支持部34a,34bの温度を監視し、その温度が所定温度(最高回転数で運転時の収束温度)となるように、加熱部35,36を駆動制御してもよい。
【0075】
以上の構成により、車両用試験装置1の中間軸受32,33の温度を、中間軸31が供試モータ2の回転試験において最高回転数で回転したときの中間軸受32,33の温度に迅速に到達させることができる。すなわち、中間軸受32,33を保持するハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度が、中間軸31が供試モータ2の回転試験において最高回転数で回転した際の目標温度Tsref1,Tsref2になるように、加熱部35,36によってハウジング34の軸受支持部34a,34bを加熱することにより、軸受支持部34a,34bを介して中間軸受32,33を加熱できるため、中間軸受32,33の温度を迅速に一定にすることができる。
【0076】
したがって、中間軸31が供試モータ2の回転試験における最高回転数で回転した際に中間軸受32,33で生じる損失を、迅速に一定にすることができる。よって、ダイナモ11の回転数が供試モータ2の試験回転数に達した後、供試モータ2の回転試験を迅速に開始することができる。
【0077】
また、中間軸受32,33に対して潤滑油を空気とともに供給することにより、中間軸受32,33に対して潤滑油を直接供給する場合に比べて、中間軸受32,33に対して供給する潤滑油の油量を低減できる。これにより、中間軸受32,33において、潤滑油を介して交換される熱量がほとんど無くなるため、中間軸受32,33の温度を容易に調整することができる。よって、車両用試験装置1で生じる機械損失をより精度良くコントロールすることができる。
【0078】
しかも、上述のように中間軸受32,33に対して供給する潤滑油の油量が少なくなることで、中間軸受32,33において中間軸31の回転による潤滑油の攪拌損失を低減できる。これにより、最高回転数での中間軸受32,33の損失も低減できるため、加熱部35,36で生じさせる加熱量を低減できる。
【0079】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0080】
前記実施形態では、加熱制御装置50は、軸受支持部34a,34bの温度が、供試モータ2の回転試験においてダイナモ11が最高回転数で回転した際のハウジング34の軸受支持部34a,34bの温度になるように、加熱部35の加熱量を制御する。しかしながら、加熱制御装置は、軸受支持部の温度が、ダイナモ11が最高回転数よりも低い回転数で回転した際のハウジングの軸受支持部の温度になるように、加熱部の加熱量を制御してもよい。この場合、トルク計測を行う回転数の上限は低くなるが、加熱部35,36で生じさせる加熱量を低減できる。
【0081】
前記実施形態では、車両用試験装置1は、軸受支持部34a,34bの温度が所定温度になるように加熱部35,36の加熱量を制御した上で、トルク計41によってトルクを計測する。しかしながら、車両用試験装置は、試験転開始直後では、軸受周囲の温度状態が安定していない状態である。つまり、加熱部35,36で生じる加熱量と中間軸受で発生する熱量と、中間軸に取り付けられたトルク計やフランジが回転することによって生じる風損(空気との摩擦による損失)によって発生する熱量とによって、中間軸受32,33の内側リング32b,33bを含む軸受温度が上昇するための時間が必要である。よって、軸受温度が安定しているかどうかを判断するために、中間軸側の温度を検出する温度検出部によって中間軸側の温度が予め回転数毎に定められた温度範囲内であることを確認した後、トルク計によってトルク計測を行ってもよい。車両用試験装置がこのような構成を備えることで、軸受周囲の温度状態が安定したことを確認することができる。そのため、車両用試験装置によって、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0082】
なお、トルク計によって計測されるトルク計測値は、前記トルク計の温度状態に影響を受ける。そのため、車両用試験装置は、軸受支持部の温度が所定温度であることに加えて、トルク計の温度を検出する温度検出部によってトルク計の温度が予め回転数毎に定められた温度範囲内であることを確認した後、トルク計によってトルク計測を行ってもよい。車両用試験装置がこのような構成を備えることで、トルク計の温度状態が安定したことを確認することができる。そのため、車両用試験装置によって、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0083】
図5は、上述の構成を有する車両用試験装置における加熱制御装置50及びトルク計測制御装置160の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、
図5及び以下の説明において、軸受支持部34aの温度Ts1を第1軸受温度ともいい、軸受支持部34bの温度Ts2を第2軸受温度ともいう。
【0084】
加熱制御装置50は、第1軸受温度の目標温度Tsref1及び中間軸31の回転数Nに基づいて、加熱部35によって軸受支持部34aを加熱する。加熱制御装置50は、温度検出部37によって検出された軸受支持部34aの温度Ts1を目標温度Tsref1に近づけるとともに、中間軸31の回転数、すなわち回転数センサ12から出力された回転数Nも考慮して、加熱制御を行う。
【0085】
同様に、加熱制御装置50は、第2軸受温度の目標温度Tsref2及び中間軸31の回転数Nに基づいて、加熱部36によって軸受支持部34bを加熱する。加熱制御装置50は、温度検出部38によって検出された軸受支持部34bの温度Ts2を目標温度Tsref2に近づけるとともに、中間軸31の回転数、すなわち回転数センサ12から出力された回転数Nも考慮して、加熱制御を行う。
【0086】
具体的には、加熱制御装置50は、第1軸受温度制御部150と、第2軸受温度制御部250とを有する。第1軸受温度制御部150は、加熱部35による軸受支持部34aの加熱を制御する。第2軸受温度制御部250は、加熱部36による軸受支持部34bの加熱を制御する。
【0087】
第1軸受温度制御部150は、加熱フィードバック量演算部151と、加熱フィードフォワード量演算部153と、加熱量演算部154と、加算器155とを有する。なお、加熱フィードバック量演算部151、加熱フィードフォワード量演算部153及び加熱量演算部154及び加算器155が、
図2における加熱指令生成部に対応する。
【0088】
第2軸受温度制御部250は、加熱フィードバック量演算部251と、加熱フィードフォワード量演算部253と、加熱量演算部254と、加算器255とを有する。なお、加熱フィードバック量演算部251、加熱フィードフォワード量演算部253、加熱量演算部254及び加算器255が、
図2における加熱指令生成部に対応する。
【0089】
図5では、記載簡略化のために、加熱フィードフォワード量演算部153,253を、加熱FF量演算部153,253と記載する。
【0090】
加熱フィードバック量演算部151,251は、それぞれ、温度検出部37,38によって検出された軸受支持部34a,34bの温度Ts1,Ts2と目標温度Tsref1,Tsref2との差を算出する。すなわち、加熱フィードバック量演算部151,251は、それぞれ、軸受支持部34a,34bの温度Ts1,Ts2を目標温度Tsref1,Tsref2に合わせるために必要な温度上昇分を算出する。
【0091】
具体的には、加熱フィードバック量演算部151,251は、温度検出部37,38によって検出された軸受支持部34a,34bの温度Ts1,Ts2(ハウジング温度)と目標温度Tsref1,Tsref2(ハウジング温度目標値)との温度差を算出する減算器151a,251aと、減算器151a,251aによって算出された温度差を用いてPID演算を行う演算器151b,251bとを有する。すなわち、加熱フィードバック量演算部151,251は、加熱部35,36の加熱制御において、中間軸受32,33の軸受支持部34a,34bにおける温度Ts1,Ts2と目標温度Tsref1,Tsref2との温度差を加熱量のフィードバック項とする。なお、減算器151a,251aが、
図2における温度差算出部を構成する。
【0092】
加熱フィードフォワード量演算部153,253は、回転数センサ12から出力された回転数Nと前記式(2)で計算される発熱量差分Whを、加熱量のフィードフォワード項とする。或いは、加熱フィードフォワード量演算部153,253は、実験によって予め求められた、回転数に応じた加熱量を、フィードフォワード項とする。
【0093】
加熱制御装置50は、温度差算出部として機能する減算器151aによって算出された温度差と、温度差算出部として機能する減算器251aによって算出された温度差との比によって、上述の発熱量差分Whを分配した加熱量を求め 、該加熱量に基づいて加熱部35,36を駆動制御する。或いは、加熱制御装置50は、回転数に応じて実験で予め求められた加熱量に基づいて加熱部35,36の駆動制御を行う。これにより、軸受温度は、所望の温度に近づく。
【0094】
しかしながら、周囲の気温や気流の状態によって、ハウジング表面からの放熱量が変化する。そのため、軸受支持部34a,34bにおける温度Ts1,Ts2と目標温度Tsref1との温度差をフィードバック値とする加熱量のフィードバック項を、加算器155,255により、加熱量のフィードフォワード項に加えたものを、加熱量とする。
【0095】
加熱量演算部154,254は、計算された加熱量から実際の加熱指令を生成する。
【0096】
これにより、加熱制御装置50は、中間軸31の回転数Nに基づいて、中間軸受32,33の軸受支持部34a,34bにおける温度Ts1,Ts2を目標温度Tsref1,Tsref2に近づけるように、加熱部35,36の加熱制御を行うことができる。
【0097】
トルク計測制御装置160は、第1軸受温度、第2軸受温度、トルク計温度及び中間軸温度に基づいて、トルク計41によるトルク計測の開始を制御する。具体的には、トルク計測制御装置160は、第1軸受温度差判定部161と、第2軸受温度差判定部163と、トルク計温度差算出部164と、トルク計温度差判定部165と、トルク計測制御部166と、中間軸温度差算出部167と、中間軸温度差判定部168、とを有する。
【0098】
第1軸受温度差判定部161は、第1軸受温度制御部150の減算器151aで算出された温度差が、温度差Aよりも小さいかどうかを判定する。第1軸受温度差判定部161は、前記温度差が温度差Aよりも小さい場合には、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。すなわち、第1軸受温度差判定部161は、前記温度差が第1温度範囲内であれば、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。
【0099】
第2軸受温度差判定部163は、第2軸受温度制御部250の減算器251aで算出された温度差が、温度差Aよりも小さいかどうかを判定する。第2軸受温度差判定部163は、前記温度差が温度差Aよりも小さい場合には、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。すなわち、第2軸受温度差判定部163は、前記温度差が第1温度範囲内であれば、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。
【0100】
トルク計温度差算出部164は、トルク計41の温度Ttqと、トルク計41の温度の目標値Ttqref(トルク計温度目標値)との温度差を算出する。なお、トルク計41の温度Ttqは、図示しない温度検出部によって検出される。
【0101】
トルク計温度差判定部165は、トルク計温度差算出部164で算出された温度差が、温度差Bよりも小さいかどうかを判定する。トルク計温度差判定部165は、前記温度差が温度差Bよりも小さい場合には、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。すなわち、トルク計温度差判定部165は、前記温度差が第2温度範囲内であれば、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。
【0102】
中間軸温度差算出部167は、中間軸31の温度Tisと、中間軸31の温度の目標値Tisref(回転軸温度目標値)との温度差を算出する。なお、中間軸31の温度Tisは、図示しない中間軸温度検出部によって検出される。
【0103】
中間軸温度差判定部168は、中間軸温度差算出部167で算出された温度差が、温度差Cよりも小さいかどうかを判定する。中間軸温度差判定部168は、前記温度差が温度差Cよりも小さい場合には、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。すなわち、中間軸温度差判定部168は、前記温度差が第3温度範囲内であれば、トルク計測制御部166に指令信号を出力する。
【0104】
トルク計測制御部166は、第1軸受温度差判定部161、第2軸受温度差判定部163、トルク計温度差判定部165及び中間軸温度差判定部168から、それぞれ指令信号が出力された場合に、トルク計測指令を生成して、出力する。トルク計測制御部166から出力されたトルク計測指令は、図示しないコントローラに入力される。このコントローラでは、前記トルク計測指令が入力されることにより、トルク計41の計測値を取得して、トルク計測を行う。
【0105】
車両用試験装置が上述のような構成を備えることで、軸受周囲の温度状態が安定したことを確認することができる。よって、車両用試験装置によって、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0106】
また、トルク計測制御装置は、第1軸受温度、第2軸受温度、トルク計温度及び中間軸温度のうち、少なくとも第1軸受温度及び第2軸受温度を含む複数の温度のみを用いて、トルク計41によるトルク計測の開始を制御してもよい。
【0107】
例えば、トルク計測制御装置は、第1軸受温度及び第2軸受温度における温度差が第1温度範囲内である場合に、トルク計41によるトルク計測を行う。
【0108】
また、例えば、トルク計測制御装置は、第1軸受温度及び第2軸受温度における温度差が第1温度範囲内の場合において、トルク計温度検出部によって検出されたトルク計41の温度Ttqとトルク計温度目標値Ttqrefとの温度差が第2温度範囲内である場合に、トルク計41によるトルク計測を行う。これによって、トルク計41の温度特性による影響がほとんど無い状態でのトルク計測が可能となる。
【0109】
また、例えば、トルク計測制御装置は、第1軸受温度及び第2軸受温度における温度差が第1温度範囲内の場合において、中間軸温度検出部によって検出された中間軸31の温度Tisと中間軸温度目標値Tisrefとの温度差が第3温度範囲内である場合に、トルク計41によるトルク計測を行う。これによって、軸受の温度が更に安定した状態でのトルク計測が可能となる。
【0110】
上述のように、第1軸受温度及び第2軸受温度の他に、トルク計41の温度、中間軸31の温度も監視することにより、軸受周囲やトルク計の温度状態が安定したことを確認したうえでトルク計測を行うことができる。これにより、再現性のより優れたトルク計測を行うことができる。
【0111】
なお、トルク計測制御装置は、トルク計温度検出部によって検出されたトルク計41の温度Ttqとトルク計温度目標値Ttqrefとの温度差が第2温度範囲内であるときは、中間軸の温度も安定した状態であるとして、中間軸温度差算出部167及び中間軸温度差判定部168の動作を省いてもよい。また、トルク計測の再現性に影響が無ければ、トルク計測制御装置は、第2軸受温度制御部250、第2軸受温度差判定部163、トルク計温度差算出部164、トルク計温度差判定部165、中間軸温度差算出部167及び中間軸温度差判定部168の少なくとも一つを有していなくてもよい。
【0112】
トルク計測制御部166は、第1軸受温度差判定部161から指令信号が出力された場合にトルク計測指令を生成して出力してもよいし、第1軸受温度差判定部161から指令信号が出力された場合に加えて、第2軸受温度差判定部163、トルク計温度差判定部165及び中間軸温度差判定部168の少なくとも一つから指令信号が出力された場合に、トルク計測指令を生成して出力してもよい。
【0113】
なお、上述の温度差A、B、Cは、トルク計41によってトルクを計測した際に、トルク計測の再現性に影響がないような温度範囲にそれぞれ設定される。第1軸受温度差判定部161及び第2軸受温度差判定部163で判定する際の温度差の基準は、同じ温度差であってもよいし、異なる温度差であってもよい。
【0114】
図5の例において、加熱制御装置50の第1軸受温度制御部150及び第2軸受温度制御部250は、温度偏差を小さくすることよりも温度の収束時間を短くすることを優先して、加熱フィードフォワード量演算部153,253のみによって、加熱量を求めてもよい。
【0115】
前記実施形態では、モータ制御装置3は、入力されるトルク指令に応じて供試モータ2に電力を供給することにより、供試モータ2のトルクを制御する。また、車両用試験装置1は、ダイナモ11の回転数を制御する。しかしながら、モータ制御装置が供試モータの回転数を制御し、車両用試験装置がダイナモのトルクを制御してもよい。
【0116】
前記実施形態では、中間軸31は、中間軸受32,33によって回転可能に支持されている。しかしながら、中間軸31は、3つ以上の軸受によって回転可能に支持されてもよい。この場合には、ハウジングにおいて各軸受を保持する部分に加熱部を設ければよい。
【0117】
前記実施形態では、ハウジング34の軸受支持部34a,34bには、それぞれ、8つのヒータ35a,36aが設けられている。また、ヒータ35a,36aは、それぞれ、中間軸受32,33を囲むように周方向に並んで配置されている。
【0118】
しかしながら、軸受支持部に設けられるヒータの数は、ハウジングにおいて中間軸受を保持する部分を加熱可能な数であれば、8つ以外でもよい。また、ヒータは、ハウジングにおいて中間軸受を保持する部分を加熱可能であれば、前記ハウジングの周方向の一部のみに配置されていてもよい。また、ヒータから軸受への加熱効率が軸受支持部の構造等によって異なる場合は、ヒータの加熱量のバランスを変更しても良い。例えば、軸受支持部で熱抵抗が小さな箇所についてはヒータの加熱量を多くする一方、軸受支持部で熱抵抗が大きな箇所についてはヒータの加熱量を少なくする。
【0119】
前記実施形態では、ヒータ35a,36aは、軸受支持部34a,34bにおいて、中間軸受32,33の近傍で、且つ、転動体32a,33aと内側リング32b,33b及び外側リング32c,33cとの接触点に対して径方向外方に位置する。しかしながら、ヒータは、軸受支持部における中間軸受の近傍を加熱可能な位置であれば、どのような位置に配置されていてもよい。
【0120】
前記実施形態では、中間軸受32,33では、供給された潤滑油が、中間軸31の軸方向の内方に向かって流れる。しかしながら、軸受に流れる潤滑油は、中間軸31の軸方向の外方に向かって流れてもよいし、前記軸方向に流れることなくそのまま下方に流れてもよい。