【解決手段】スロットアレイアンテナは、第1の導電部材と、第2の導電部材とを備える。第1の導電部材は、第1の導電性表面に開口する複数の第1種のスロットと、第2の導電性表面に開口し第1の方向に沿って並ぶ複数の第2種のスロットとを有する。各第1種のスロットの開口は、第1の方向に対して傾斜した第2の方向に延びる。各第2種のスロットは、第1の方向に交差する第3の方向に延びる横部分と、横部分の端部に接続し第3の方向に交差する第4の方向に延びる縦部分とを含む。各第2種のスロットは、第1の導電部材の内部において第1種のスロットに接続される2つ以上の接続箇所を有する。2つ以上の接続箇所の少なくとも1つは、第2種のスロットの縦部分と第1種のスロットとが接続する箇所である。
前記複数の第2種のスロットは、前記横部分および前記縦部分に隣接する部位と、前記第3の導電性表面との距離が互いに異なる2つ以上の第2種のスロットを含む、請求項2、4、5のいずれかに記載のスロットアレイアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の実施形態において用いられ得るWRG導波路の構成および動作の例を説明する。
【0013】
WRGは、人工磁気導体として機能するワッフルアイアン構造中に設けられ得るリッジ導波路である。このようなリッジ導波路は、マイクロ波またはミリ波帯において、損失の低いアンテナ給電路を実現できる。また、このようなリッジ導波路を利用することにより、アンテナ素子を高密度に配置することが可能である。
【0014】
図1は、このような導波路装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1には、互いに直交するX、Y、Z方向を示すXYZ座標が示されている。図示されている導波路装置100は、対向して平行に配置された板形状(プレート状)の導電部材110および120を備えている。導電部材120には複数の導電性ロッド124が配列されている。
【0015】
なお、本願の図面に示される構造物の向きは、説明のわかりやすさを考慮して設定されており、本開示の実施形態が現実に実施されるときの向きをなんら制限するものではない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するものではない。
【0016】
図2Aは、導波路装置100のXZ面に平行な断面の構成を模式的に示している。
図2Aに示されるように、導電部材110は、導電部材120に対向する側に導電性表面110aを有している。導電性表面110aは、導電性ロッド124の軸方向(Z方向)に直交する平面(XY面に平行な平面)に沿って二次元的に拡がっている。この例における導電性表面110aは平滑な平面であるが、後述するように、導電性表面110aは平面である必要は無い。
【0017】
図3は、わかり易さのため、導電部材110と導電部材120との間隔を極端に離した状態にある導波路装置100を模式的に示す斜視図である。現実の導波路装置100では、
図1および
図2Aに示したように、導電部材110と導電部材120との間隔は狭く、導電部材110は、導電部材120の全ての導電性ロッド124を覆うように配置されている。
【0018】
図1から
図3は、導波路装置100の一部分のみを示している。導電部材110、120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124は、実際には、図示されている部分の外側にも拡がって存在する。導波部材122の端部には、後述するように、電磁波が外部空間に漏洩することを防止するチョーク構造が設けられる。チョーク構造は、例えば、導波部材122の端部に隣接して配置された導電性ロッドの列を含む。
【0019】
再び
図2Aを参照する。導電部材120上に配列された複数の導電性ロッド124は、それぞれ、導電性表面110aに対向する先端部124aを有している。図示されている例において、複数の導電性ロッド124の先端部124aは同一または実質的に同一の平面上にある。この平面は人工磁気導体の表面125を形成している。導電性ロッド124は、その全体が導電性を有している必要はなく、ロッド状構造物の少なくとも上面および側面に沿って拡がる導電層があればよい。この導電層はロッド状構造物の表層に位置してもよいが、表層が絶縁塗装または樹脂層からなり、ロッド状構造物の表面には導電層が存在していなくてもよい。また、導電部材120は、その全体が導電性を有している必要はない。導電部材120の表面のうち、複数の導電性ロッド124が配列されている側の面120aが導電性を有し、隣接する複数の導電性ロッド124の表面が導電体によって電気的に接続されていればよい。導電部材120の導電性を有する層は、絶縁塗装または樹脂層で覆われていてもよい。言い換えると、導電部材120および複数の導電性ロッド124の組み合わせの全体は、導電部材110の導電性表面110aに対向する凹凸状の導電層を有していればよい。
【0020】
導電部材120上には、複数の導電性ロッド124の間にリッジ状の導波部材122が配置されている。より詳細には、導波部材122の両側にそれぞれ人工磁気導体が位置しており、導波部材122は両側の人工磁気導体によって挟まれている。
図3からわかるように、この例における導波部材122は、導電部材120に支持され、Y方向に直線的に延びている。図示されている例において、導波部材122は、導電性ロッド124の高さおよび幅と同一の高さおよび幅を有する。後述するように、導波部材122の高さおよび幅は、導電性ロッド124の高さおよび幅とは異なっていてもよい。導波部材122は、導電性ロッド124とは異なり、導電性表面110aに沿って電磁波を案内する方向(この例ではY方向)に延びている。導波部材122も、全体が導電性を有している必要は無く、導電部材110の導電性表面110aに対向する導電性の導波面122aを有していればよい。導電部材120、複数の導電性ロッド124、および導波部材122は、連続した単一構造体の一部であってもよい。さらに、導電部材110も、この単一構造体の一部であってもよい。
【0021】
導波部材122の両側において、各人工磁気導体の表面125と導電部材110の導電性表面110aとの間の空間は、特定周波数帯域内の周波数を有する電磁波を伝搬させない。そのような周波数帯域は「禁止帯域」と呼ばれる。導波路装置100内を伝搬する電磁波(信号波)の周波数(以下、「動作周波数」と称することがある。)が禁止帯域に含まれるように人工磁気導体は設計される。禁止帯域は、導電性ロッド124の高さ、すなわち、隣接する複数の導電性ロッド124の間に形成される溝の深さ、導電性ロッド124の幅、配置間隔、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110aとの間隙の大きさによって調整され得る。
【0022】
次に、
図4を参照しながら、
図2Aに示す構造における各部材の寸法、形状、配置等の例を説明する。
【0023】
導波路装置は、所定の帯域(「動作周波数帯域」と称する。)の電磁波の送信および受信の少なくとも一方に用いられる。本明細書において、導電部材110の導電性表面110aと導波部材122の導波面122aとの間の導波路を伝搬する電磁波(信号波)の自由空間における波長の代表値(例えば、動作周波数帯域の中心周波数に対応する中心波長)をλoとする。また、動作周波数帯域における最高周波数の電磁波の自由空間における波長をλmとする。各導電性ロッド124のうち、導電部材120に接している方の端の部分を「基部」と称する。
図4に示すように、各導電性ロッド124は、先端部124aと基部124bとを有する。各部材の寸法、形状、配置等の例は、以下のとおりである。
【0024】
(1)導電性ロッドの幅
導電性ロッド124の幅(X方向およびY方向のサイズ)は、λm/2未満に設定され得る。この範囲内であれば、X方向およびY方向における最低次の共振の発生を防ぐことができる。なお、XおよびY方向だけでなくXY断面の対角方向でも共振が起こる可能性があるため、導電性ロッド124のXY断面の対角線の長さもλm/2未満であることが好ましい。ロッドの幅および対角線の長さの下限値は、工法的に作製できる最小の長さであり、特に限定されない。
【0025】
(2)導電性ロッドの基部から導電部材110の導電性表面までの距離
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110aまでの距離は、導電性ロッド124の高さよりも長く、かつλm/2未満に設定され得る。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110aとの間において共振が生じ、信号波の閉じ込め効果が失われる。
【0026】
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110aまでの距離は、導電部材110と導電部材120との間隔に相当する。例えば導波路をミリ波帯である76.5±0.5GHzの信号波が伝搬する場合、信号波の波長は、3.8934mmから3.9446mmの範囲内である。したがって、この場合、λmは3.8934mmとなるので、導電部材110と導電部材120との間隔は、3.8934mmの半分よりも小さく設計される。導電部材110と導電部材120とが、このような狭い間隔を実現するように対向して配置されていれば、導電部材110と導電部材120とが厳密に平行である必要はない。また、導電部材110と導電部材120との間隔がλm/2未満であれば、導電部材110および/または導電部材120の全体または一部が曲面形状を有していてもよい。他方、導電部材110、120の平面形状(XY面に垂直に投影した領域の形状)および平面サイズ(XY面に垂直に投影した領域のサイズ)は、用途に応じて任意に設計され得る。
【0027】
図2Aに示される例において、導電性表面120aは平面であるが、本開示の実施形態はこれに限られない。例えば、
図2Bに示すように、導電性表面120aは断面がU字またはV字に近い形状である面の底部であってもよい。導電性ロッド124または導波部材122が、基部に向かって幅が拡大する形状をもつ場合に、導電性表面120aはこのような構造になる。このような構造であっても、導電性表面110aと導電性表面120aとの間の距離が波長λmの半分よりも短ければ、
図2Bに示す装置は、本開示の実施形態における導波路装置として機能し得る。
【0028】
(3)導電性ロッドの先端部から導電性表面までの距離L2
導電性ロッド124の先端部124aから導電性表面110aまでの距離L2は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110aとの間を電磁波が往復する伝搬モードが生じ、電磁波を閉じ込められなくなるからである。なお、複数の導電性ロッド124のうち、少なくとも導波部材122と隣り合うものについては、先端が導電性表面110aとは電気的には接触していない状態にある。ここで、導電性ロッドの先端が導電性表面に電気的に接触していない状態とは、先端と導電性表面との間に空隙がある状態、あるいは、導電性ロッドの先端と導電性表面とのいずれかに絶縁層が存在し、導電性ロッドの先端と導電性表面が絶縁層を間に介して接触している状態、のいずれかを指す。
【0029】
(4)導電性ロッドの配列および形状
複数の導電性ロッド124のうちの隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間は、例えばλm/2未満の幅を有する。隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間の幅は、当該2つの導電性ロッド124の一方の表面(側面)から他方の表面(側面)までの最短距離によって定義される。このロッド間の隙間の幅は、ロッド間の領域で最低次の共振が起こらないように決定される。共振が生じる条件は、導電性ロッド124の高さ、隣接する2つの導電性ロッド間の距離、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110aとの間の空隙の容量の組み合わせによって決まる。よって、ロッド間の隙間の幅は、他の設計パラメータに依存して適宜決定される。ロッド間の隙間の幅には明確な下限はないが、製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、例えばλm/16以上であり得る。なお、隙間の幅は一定である必要はない。λm/2未満であれば、導電性ロッド124の間の隙間は様々な幅を有していてもよい。
【0030】
複数の導電性ロッド124の配列は、人工磁気導体としての機能を発揮する限り、図示されている例に限定されない。複数の導電性ロッド124は、直交する行および列状に並んでいる必要は無く、行および列は90度以外の角度で交差していてもよい。複数の導電性ロッド124は、行または列に沿って直線上に配列されている必要は無く、単純な規則性を示さずに分散して配置されていてもよい。各導電性ロッド124の形状およびサイズも、導電部材120上の位置に応じて変化していてよい。
【0031】
複数の導電性ロッド124の先端部124aが形成する人工磁気導体の表面125は、厳密に平面である必要は無く、微細な凹凸を有する平面または曲面であってもよい。すなわち、各導電性ロッド124の高さが一様である必要はなく、導電性ロッド124の配列が人工磁気導体として機能し得る範囲内で個々の導電性ロッド124は多様性を持ち得る。
【0032】
各導電性ロッド124は、図示されている角柱形状に限らず、例えば円筒状の形状を有していてもよい。さらに、各導電性ロッド124は、単純な柱状の形状を有している必要はない。人工磁気導体は、導電性ロッド124の配列以外の構造によっても実現することができ、多様な人工磁気導体を本開示の導波路装置に利用することができる。なお、導電性ロッド124の先端部124aの形状が角柱形状である場合は、その対角線の長さはλm/2未満であることが好ましい。楕円形状であるときは、長軸の長さがλm/2未満であることが好ましい。先端部124aがさらに他の形状をとる場合でも、その差し渡し寸法は一番長い部分でもλm/2未満であることが好ましい。
【0033】
導電性ロッド124(特に、導波部材122に隣接する導電性ロッド124)の高さ、すなわち、基部124bから先端部124aまでの長さは、導電性表面110aと導電性表面120aとの間の距離(λm/2未満)よりも短い値、例えば、λo/4に設定され得る。
【0034】
(5)導波面の幅
導波部材122の導波面122aの幅、すなわち、導波部材122が延びる方向に直交する方向における導波面122aのサイズは、λm/2未満(例えばλo/8)に設定され得る。導波面122aの幅がλm/2以上になると、幅方向で共振が起こり、共振が起こるとWRGは単純な伝送線路としては動作しなくなるからである。
【0035】
(6)導波部材の高さ
導波部材122の高さ(図示される例ではZ方向のサイズ)は、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110aとの距離がλm/2以上となるからである。
【0036】
(7)導波面と導電性表面との間の距離L1
導波部材122の導波面122aと導電性表面110aとの間の距離L1については、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導波面122aと導電性表面110aとの間で共振が起こり、導波路として機能しなくなるからである。ある例では、当該距離L1はλm/4以下である。製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、距離L1を、例えばλm/16以上とすることが好ましい。
【0037】
導電性表面110aと導波面122aとの距離L1の下限、および導電性表面110aと導電性ロッド124の先端部124aとの距離L2の下限は、機械工作の精度と、上下の2つの導電部材110、120を一定の距離に保つように組み立てる際の精度とに依存する。プレス工法またはインジェクション工法を用いた場合、上記距離の現実的な下限は50マイクロメートル(μm)程度である。MEMS(Micro−Electro−Mechanical System)技術を用いて例えばテラヘルツ領域の製品を作る場合には、上記距離の下限は、2〜3μm程度である。
【0038】
次に、導波部材122、導電部材110、120、および複数の導電性ロッド124を有する導波路構造の変形例を説明する。以下の変形例は、後述する各実施形態におけるいずれの箇所のWRG構造にも適用され得る。
【0039】
図5Aは、導波部材122の上面である導波面122aのみが導電性を有し、導波部材122の導波面122a以外の部分は導電性を有していない構造の例を示す断面図である。導電部材110および導電部材120も同様に、導波部材122が位置する側の表面(導電性表面110a、120a)のみが導電性を有し、他の部分は導電性を有していない。このように、導波部材122、導電部材110、120の各々は、全体が導電性を有していなくてもよい。
【0040】
図5Bは、導波部材122が導電部材120上に形成されていない変形例を示す図である。この例では、導波部材122は、導電部材110と導電部材とを支持する支持部材(例えば、筐体の内壁等)に固定されている。導波部材122と導電部材120との間には間隙が存在する。このように、導波部材122は導電部材120に接続されていなくてもよい。
【0041】
図5Cは、導電部材120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124の各々が、誘電体の表面に金属などの導電性材料がコーティングされた構造の例を示す図である。導電部材120、導波部材122、および複数の導電性ロッド124は、相互に導電体で接続されている。一方、導電部材110は、金属などの導電性材料で構成されている。
【0042】
図5Dおよび
図5Eは、導電部材110、120、導波部材122、および導電性ロッド124の各々の最表面に、誘電体の層110b、120bを有する構造の例を示す図である。
図5Dは、導体である金属製の導電部材の表面を誘電体の層で覆った構造の例を示す。
図5Eは、導電部材120が、樹脂などの誘電体製の部材の表面を、金属などの導体で覆い、さらにその金属の層を誘電体の層で覆った構造を有する例を示す。金属表面を覆う誘電体の層は樹脂などの塗膜であってもよいし、当該金属が酸化する事で生成された不動態皮膜などの酸化皮膜であってもよい。
【0043】
最表面の誘電体層は、WRG導波路によって伝播される電磁波の損失を増やす。しかし、導電性を有する導電性表面110a、120aを腐食から守ることができる。また、直流電圧や、WRG導波路によっては伝播されない程度に周波数の低い交流電圧の影響を遮断することができる。
【0044】
図5Fは、導波部材122の高さが導電性ロッド124の高さよりも低く、導電部材110の導電性表面110aのうち、導波面122aに対向する部分が、導波部材122の側に突出している例を示す図である。このような構造であっても、
図4に示す寸法の範囲を満たしていれば、前述の実施形態と同様に動作する。
【0045】
図5Gは、
図5Fの構造において、さらに、導電性表面110aのうち導電性ロッド124に対向する部分が、導電性ロッド124の側に突出している例を示す図である。このような構造であっても、
図4に示す寸法の範囲を満たしていれば、前述の実施形態と同様に動作する。なお、導電性表面110aの一部が突出する構造に代えて、一部が窪む構造であってもよい。
【0046】
図6Aは、導電部材110の導電性表面110aが曲面形状を有する例を示す図である。
図6Bは、さらに、導電部材120の導電性表面120aも曲面形状を有する例を示す図である。これらの例のように、導電性表面110a、120aは、平面形状に限らず、曲面形状を有していてもよい。曲面状の導電性表面を有する導電部材も、「板形状」の導電部材に該当する。
【0047】
上記の構成を有する導波路装置100によれば、動作周波数の信号波は、人工磁気導体の表面125と導電部材110の導電性表面110aとの間の空間を伝搬することはできず、導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110aとの間の空間を伝搬する。このような導波路構造における導波部材122の幅は、中空導波管とは異なり、伝搬すべき電磁波の半波長以上の幅を有する必要はない。また、導電部材110と導電部材120とを厚さ方向(YZ面に平行)に延びる金属壁によって電気的に接続する必要もない。
【0048】
図7Aは、導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110aとの間隙における幅の狭い空間を伝搬する電磁波を模式的に示している。
図7Aにおける3本の矢印は、伝搬する電磁波の電界の向きを模式的に示している。伝搬する電磁波の電界は、導電部材110の導電性表面110aおよび導波面122aに対して垂直である。
【0049】
導波部材122の両側には、それぞれ、複数の導電性ロッド124によって形成された人工磁気導体が配置されている。電磁波は導波部材122の導波面122aと導電部材110の導電性表面110aとの間隙を伝搬する。
図7Aは、模式的であり、電磁波が現実に作る電磁界の大きさを正確には示していない。導波面122a上の空間を伝搬する電磁波(電磁界)の一部は、導波面122aの幅によって区画される空間から外側(人工磁気導体が存在する側)に横方向に拡がっていてもよい。この例では、電磁波は、
図7Aの紙面に垂直な方向(Y方向)に伝搬する。このような導波部材122は、Y方向に直線的に延びている必要は無く、不図示の屈曲部および/または分岐部を有し得る。電磁波は導波部材122の導波面122aに沿って伝搬するため、屈曲部では伝搬方向が変わり、分岐部では伝搬方向が複数の方向に分岐する。
【0050】
図7Aの導波路構造では、伝搬する電磁波の両側に、中空導波管では不可欠の金属壁(電気壁)が存在していない。このため、この例における導波路構造では、伝搬する電磁波が作る電磁界モードの境界条件に「金属壁(電気壁)による拘束条件」が含まれず、導波面122aの幅(X方向のサイズ)は、電磁波の波長の半分未満である。
【0051】
図7Bは、参考のため、中空導波管530の断面を模式的に示している。
図7Bには、中空導波管530の内部空間532に形成される電磁界モード(TE
10)の電界の向きが矢印によって模式的に表されている。矢印の長さは電界の強さに対応している。中空導波管530の内部空間532の幅は、波長の半分よりも広く設定されなければならない。すなわち、中空導波管530の内部空間532の幅は、伝搬する電磁波の波長の半分よりも小さく設定され得ない。
【0052】
図7Cは、導電部材120上に2個の導波部材122が設けられている形態の例を示す断面図である。隣接する2つの導波部材122の間には、複数の導電性ロッド124の列によって形成される人工磁気導体が配置されている。より正確には、各導波部材122の両側に複数の導電性ロッド124によって形成される人工磁気導体が配置され、各導波部材122が独立した電磁波の伝搬を実現することが可能である。
【0053】
図7Dは、参考のため、2つの中空導波管530を並べて配置した導波路装置の断面を模式的に示している。2つの中空導波管530は、相互に電気的に絶縁されている。電磁波が伝搬する空間の周囲が、中空導波管530を構成する金属壁で覆われている必要がある。このため、電磁波が伝搬する内部空間532の間隔を、金属壁の2枚の厚さの合計よりも短縮することはできない。金属壁の2枚の厚さの合計は、通常、伝搬する電磁波の波長の半分よりも長い。したがって、中空導波管530の配列間隔(中心間隔)を、伝搬する電磁波の波長よりも短くすることは困難である。特に、電磁波の波長が10mm以下となるミリ波帯、あるいはそれ以下の波長の電磁波を扱う場合は、波長に比して十分に薄い金属壁を形成することが難しくなる。このため、商業的に現実的なコストで実現することが困難になる。
【0054】
これに対して、人工磁気導体を備える導波路装置100は、導波部材122を近接させた構造を容易に実現することができる。このため、複数のアンテナ素子が近接して配置されたアンテナアレイへの給電に好適に用いられ得る。
【0055】
図8Aは、上記のような導波路構造を利用したスロットアンテナアレイ200の構成の一部を模式的に示す斜視図である。
図8Bは、このスロットアンテナアレイ200におけるX方向に並ぶ2つのスロット112の中心を通るXZ面に平行な断面の一部を模式的に示す図である。このスロットアンテナアレイ200においては、第1の導電部材110が、X方向およびY方向に配列された複数のスロット112を有している。この例では、複数のスロット112は2つのスロット列を含み、各スロット列は、Y方向に等間隔に並ぶ6個のスロット112を含んでいる。第2の導電部材120には、Y方向に延びる2つの導波部材122が設けられている。各導波部材122は、1つのスロット列に対向する導電性の導波面122aを有する。2つの導波部材122の間の領域、および2つの導波部材122の外側の領域には、複数の導電性ロッド124が配置されている。これらの導電性ロッド124は、人工磁気導体を形成している。
【0056】
各導波部材122の導波面122aと、導電部材110の導電性表面110aとの間の導波路には、不図示の送信回路から電磁波が供給される。これにより、Y方向に並ぶ複数のスロット112が励振され、各スロット112から電磁波が放射される。
【0057】
図8Aおよび
図8Bに示す構成においては、Y方向に沿って並ぶ複数のスロット112(放射素子)の配置間隔は、WRG導波路内での電磁波の波長またはその整数倍に一致するように決定され得る。これにより、各スロット112から同一の位相の電磁波を放射することができる。しかし、スロット112の配置間隔をそのように決定した場合、Y方向に隣り合う2つのスロット112の間隔を十分に小さくすることができず、グレーティングローブが発生する等の好ましくない現象が生じるおそれがある。
【0058】
本発明者らは、以上の課題を解決するために、以下に説明する実施形態の構成に想到した。以下、本開示の例示的な実施形態を説明する。
【0059】
(実施形態1)
図9は、本開示の第1の実施形態によるスロットアレイアンテナ300の構成を示す斜視図である。スロットアレイアンテナ300は、第1の導電部材310と、第2の導電部材320とを備える。第1の導電部材310および第2の導電部材320は、互いに間隙を空けて積層されている。第1の導電部材310および第2の導電部材320の各々は、例えば金属板を加工して成形され得る。導電部材310、320の各々は、例えば成形されたプラスチックの表面にめっき加工を施すことによっても作製され得る。
【0060】
第1の導電部材310は、正面側に第1の導電性表面310aを有し、背面側に第2の導電性表面310bを有する。本明細書では、電磁波が放射される側を「正面側」と称し、その反対側を「背面側」と称する。第2の導電部材320は、第2の導電性表面310bに対向する第3の導電性表面320aを正面側に有する。第1の導電部材310および第2の導電部材320の各々は、板形状またはブロック形状を有する。本実施形態において、導電性表面310a、310b、310cの各々は平坦であり、XY面に平行である。
【0061】
第1の導電部材310は、第1の導電性表面310aに開口する複数の第1種のスロット311を有する。複数の第1種のスロット311は、第1の導電性表面310aに沿った第1の方向(本実施形態ではY方向)に沿って並んでいる。各第1種のスロット311の、第1の導電性表面310aにおける開口は、第1の方向(Y方向)に対して傾斜した第2の方向に延びた形状を有する。本実施形態では第2の方向はY方向に対して約45度傾斜した方向である。第2の方向と第1の方向とのなす角は、45度に限定されず、0度よりも大きく、90度よりも小さい任意の値に設定することができる。本実施形態における複数の第1種のスロット311は、Y方向に沿って一定の間隔で並んでいる。各第1種のスロット311は、放射素子として機能する。
【0062】
図10は、第1の導電部材310の背面側の構造を示す斜視図である。
図10に示すように、第1の導電部材310は、第2の導電性表面310bに開口する複数の第2種のスロット312を有する。複数の第2種のスロット312も第1の方向(Y方向)に沿って並んでいる。なお、本実施形態において第1の導電性表面310aは第2の導電性表面310bと平行である。よって、前述した第1の方向は、第1の導電性表面310aおよび第2の導電性表面310bの両方に平行である。但し、より一般には、第1の導電性表面310aと第2の導電性表面310bとが平行ではない形態も選択可能である。そのような場合、第1種のスロット311および第2種のスロット312のそれぞれの開口は、それぞれ第1の導電性表面310aおよび第2の導電性表面310bに沿って並ぶが、それらの開口が並ぶ方向は、空間的に見た場合には同じ方向とは言えない。但し、空間的にはそれら2つの方向は同一の仮想的な平面の上に載る。本明細書では、便宜上、この様な場合において、これらの方向は同一であると見なし、ともに「第1の方向」と呼ぶ。第2種のスロット312の個数は、第1種のスロット311の個数の半分である。各第2種のスロット312は、第1の導電部材310の内部において、互いに隣り合う2つの第1種のスロット311に繋がっている。各第2種のスロット312は、Z軸に沿って見た場合に、アルファベットの「H」に類似する形状を有する。以下、このような形状を「H形状」と称する。
【0063】
図11は、スロットアレイアンテナ300から第1の導電部材310が除去され第2の導電部材320が露出した状態を示す斜視図である。
図11に示すように、スロットアレイアンテナ300は、第2の導電部材320の上に、導波部材322と、複数の導電性ロッド324とを備える。導波部材322は、第3の導電性表面320aから突出するリッジ状の構造を有する。複数の導電性ロッド324は、第3の導電性表面320aから突出しており、導波部材322の周囲に配置されている。導波部材322は、第2の導電性表面310bに対向する導電性の導波面322aを有する。導波部材322は、第1の方向に沿って延びており、導波面322aは、Z方向から見通した場合に各第2種のスロット312の中央部に重なる位置にある。導波面322aと第2の導電性表面310bとの間に導波路が規定される。
【0064】
導波部材322の一端は、ポート327を介して導波管326に接続されている。ポート327の周囲にも複数の導電性ロッド324が配置されている。導波管326は、Z方向に沿って延びており、図示されていない送信回路に接続されている。導波管326を介して、送信回路から導波面322a上の導波路に電磁波が供給される。
【0065】
本実施形態における導波部材322の導波面322aには、複数の凹部322dが設けられている。凹部322dは、導波面322aに沿って伝搬する信号波の位相を調整するために設けられている。凹部322dの位置として、各第2種のスロット312の位置での信号波の位相を適切に変化させて、所望の放射特性が得られる位置が選択されている。
【0066】
導波部材322は、延びる方向が変化する屈曲部を有していてもよい。
図11の例では、導波部材322は、2つの屈曲部322cを有する。各屈曲部322cおよびそれに隣接する箇所では、インピーダンス整合のため、導波面322aの高さが他の箇所での高さとは異なっている。
【0067】
複数の導電性ロッド324は、導波部材322の両側およびポート327の周囲に配置され、人工磁気導体を形成する。電磁波は人工磁気導体と第2の導電性表面310bとの間の空間を伝搬できない。このため、電磁波は、導波面322aと第2の導電性表面310bとの間の導波路を伝搬しながら、各第2種のスロット312を励振する。第2種のスロット312が励振されると、それに繋がる2つの第1種のスロット311も励振される。これにより、各第1種のスロット311から電磁波が放射される。
【0068】
第2の導電部材320、複数の導電性ロッド324、および導波部材322は、連続した単一構造体の一部であってもよいし、互いに分離していてもよい。
【0069】
図9から
図11に示す第2の導電部材320は、第1の導電部材310に比べて極端に薄い。このような構造に限定されず、第2の導電部材320は、より厚い構造を有していてもよい。第2の導電部材320は、例えば各導電性ロッド324の高さの半分程度の厚さを有していてもよい。
【0070】
次に、本実施形態における第1種のスロット311と第2種のスロット312の構造をより詳細に説明する。
【0071】
図12は、第1の導電部材310の一部を拡大して示す図である。
図13は、第1の導電部材310を正面側から見た図である。図示されるように、第1の方向(Y方向)に沿って並ぶ第1種のスロット311のそれぞれの開口は、第1の方向に対して傾斜した第2の方向に延びており、矩形に近い形状を有する。各第1種のスロット311の大部分は、第1の導電部材310を貫通しておらず、底を有する。各第1種のスロット311における底の部分を基部311aと称する。基部311aの中央には、第2の方向に延びる溝部311bがある。各第1種のスロット311の端部の一部分は、背面側の第2種のスロット312に繋がっており、その箇所で第1の導電部材310を貫通している。1つの第2種のスロット312は、隣り合う2つの第1種のスロット311に繋がっている。各第2種のスロット312と、2つの第1種のスロット311とが接続される2つの箇所は、第1の導電部材310を貫通している。すなわち、第1の導電性表面310aに垂直な方向から見た場合に第1種のスロット311と第2種のスロット312とが重なり合う部分は、第1の導電部材310の表裏を貫通する貫通孔を形成する。
【0072】
本実施形態では、第1種のスロット311は、基部311aの内側に溝部311bが設けられた階段状の構造を有する。溝部311bは、第1種のスロット311の延びる方向に延びる。溝部311bの幅は、基部311a全体の幅よりも狭い。各第1種のスロット311は、基部311aから開口に向かうにつれて幅が徐々に拡大する形状を有していてもよい。その場合、第1種のスロット311は、溝部311bを有していなくてもよい。このように、基部311aの内側に段差または傾斜面を設けることにより、インピーダンスの整合度が向上する。
【0073】
図12の例では、第1種のスロット311の基部311aおよび溝部311bの一端は第2種のスロット312の一部と繋がっている。このような構造により、第2種のスロット312と第1種のスロット311との間で電磁波を伝搬させ、当該電磁波の電界方向を変化させることができる。第2種のスロット312の内部においては、電磁波の電界の主方向は、導波部材322が延びる方向(すなわちY方向)に平行である。これに対し、第1種のスロット311の内部においては、電界の主方向は、導波部材322が延びる方向から45度傾斜した方向である。したがって、Y方向が鉛直方向に一致するようにスロットアレイアンテナが配置される場合、鉛直方向から45度傾いた方向の電界成分を持つ偏波を放射することができる。前述のように、この傾斜角度は45度に限らない。但しこの角度が90度近くになると、第2種のスロット312から第1種のスロット311には実質的に電磁波が伝搬しなくなる。
【0074】
図13に示すように、第1の方向(Y方向)において隣り合う2つの第1種のスロット311の間隔D1は、第1の方向において隣り合う2つの第2種のスロット312の間隔D2よりも狭い。本実施形態では、第1種のスロット311の配置間隔D1は、第2種のスロット312の配置間隔D2の約半分である。このような構成により、第1種のスロット311によって規定される放射素子を、第2種のスロット312よりも高い密度で配置することができる。第2種のスロット312の配置間隔D2が、WRG導波路内での電磁波の波長に一致する場合、当該波長の約半分の間隔D1で放射素子を配置することができる。このように放射素子を密に配置することができるため、グレーティングローブの発生を効果的に抑制することができる。
【0075】
図14は、第2種のスロット312の構造をより具体的に示す平面図である。各第2種のスロット312は、第1の方向(Y方向)に交差する第3の方向(本実施形態ではX方向に一致)に延びる横部分312dと、横部分312dの両端部にそれぞれ接続され第3の方向に交差する第4の方向(本実施形態ではY方向に一致)に延びる一対の縦部分312eとを含む。あるいは、横部分312dが一対の縦部分312eの少なくとも一方と交差する態様であっても良い。その場合、横部分312dの2つの端部の少なくとも一方は、横部分312dと縦部分312eとが接続する部位を超えて延びる。このように、2つの縦部分312eの一方は横部分312dの一か所に接続され、2つの縦部分312eの他方は横部分312dの上記一か所とは異なる箇所に接続される。第3の方向は、X方向に対して若干傾斜していてもよい。同様に、第4の方向は、Y方向に対して若干傾斜していてもよい。各第2種のスロット312は、第1の導電部材310の内部において2つの第1種のスロット311にそれぞれ接続される2つの接続箇所を有する。本実施形態では、2つの接続箇所は、第2種のスロット312の2つの縦部分312eと2つの第1種のスロット311とがそれぞれ接続する箇所である。各第2種のスロット312の横部分312dは、導波部材322の導波面322aに対向する。
【0076】
本実施形態における第2種のスロット312は、H形状を有する。横部分312dは、2つの縦部分312eにほぼ垂直であり、2つの縦部分312eのほぼ中央部同士を繋いでいる。このようなH形状のスロットでは、高次の共振が起こらず、かつ、スロットインピーダンスが小さくなり過ぎないように、その形状およびサイズが決定される。H形状の中心点(すなわち横部分312dの中心点)から縦部分312eのいずれかの端部までの、横部分312dおよび縦部分312eに沿った長さの2倍をLとする。Lは、λo/2<L<λoを満たす長さに設定され得る。例えば、Lは約λo/2に設定され得る。
【0077】
本実施形態では、第2種のスロット312の2つの縦部分312eの一部は、第1の導電部材310を貫通する貫通孔となっている。一方、横部分312dは、第1の導電部材310を貫通せず、第1の導電部材310の内部に底を有する。当該横部分312dは、Y方向において隣り合う2つの第1種のスロット311の間における第1の導電性表面310aの反対側に位置する。横部分312dの底部の反対側に、隣り合う2つの第1種のスロット311の間における第1の導電性表面310aの底部が位置する。
【0078】
本実施形態では、
図10に示すように、第1の導電部材310は、複数の凹部312aおよび複数の凸部312bを、第2の導電性表面310bに有する。凹部312aは、隣り合う部分よりも導波面322aと第2の導電性表面310bとの間隔を広げる。凸部312bは、隣り合う部分よりも導波面322aと第2の導電性表面310bとの間隔を狭める。各凹部312aおよび各凸部312bは、複数の第2種のスロット312の1つにおける横部分312dおよび縦部分312eに隣接する。
【0079】
図15Aは、第2種のスロット312に設けられた凹部312aの構成例を示す斜視図である。
図15Aに示す第2種のスロット312では、横部分312dおよび2つの縦部分312eに隣接して一対のリッジ部312cが設けられている。一対のリッジ部312cの端面に、2つの凹部312aがある。凹部312aは、第2の導電性表面310b側に露出したリッジ部312cの端面において第2の導電性表面310bよりも奥側に凹んだ部位である。凹部312aを設けることにより、隣り合う部位よりも第2の導電性表面310bと導波面322aとの間隔を広げて導波路のキャパシタンスを局所的に減らすことができる。
【0080】
図15Bは、第2種のスロット312に設けられた凸部312bの構成例を示す斜視図である。
図15Bに示す第2種のスロット312では、一対のリッジ部312cの端面に、2つの凸部312bがある。凸部312bは、第2の導電性表面310b側に露出したリッジ部312cの端面において第2の導電性表面310bよりも手前側に突出した部位である。凸部312bを設けることにより、隣り合う部位よりも第2の導電性表面310bと導波面322aとの間隔を狭めて導波路のキャパシタンスを局所的に増やすことができる。
【0081】
本実施形態では、
図10に示すように、第2種のスロット312の一対のリッジ部312cの端面の位置が、電磁波の給電側(−Y方向側)から導波路の終端側(+Y方向側)に進むにつれて導波面322aに近づいている。但し、最も終端側に位置する第2種のスロット312は例外である。言い換えれば、最も終端側に位置する第2種のスロット312を除き、第2の導電性表面310bと導波面322aとの間隔が、給電側から終端側に進むにつれて次第に狭くなっている。リッジ部312cの端面の位置が第2の導電性表面310bよりも奥である場合、その端面は凹部312aになる。反対に、リッジ部312cの端面の位置が第2の導電性表面310bよりも手前である場合、その端面は凸部312bになる。
図10の例では、給電側の4つの第2種のスロット312は凹部312aを有し、続く4つの第2種のスロット312は凸部312bを有し、最も終端側に位置する第2種のスロット312は凹部も凸部も有しない。
【0082】
本実施形態のように、第2種のスロット312における一対のリッジ部312cの端面の高さを調整することにより、WRG導波路と第2種のスロット312との結合の強さを調整することできる。この調整を適切に行うことにより、複数の第1種のスロット311に、目的に応じた適正な放射を行わせることができる。
図10の例では、導波路の給電側端部(+Y方向側)から導波路の終端(−Y方向側)に進むにしたがって、導波路と第2種のスロット312との結合が強くなる。このような構成により、スロットアレイアンテナ300は、例えばコセカント2乗特性を実現することができる。
【0083】
コセカント2乗特性とは、正面方向からの角度をθとして、放射される電磁波の強度がcosecθ(=1/sinθ)の2乗に概ね比例する特性をいう。スロットアレイアンテナ300がコセカント2乗特性を有していれば、例えば無線通信基地局に設置されるアンテナとして用いられた場合に、電波を近距離から遠距離にわたって同程度の受信強度を実現できる。
【0084】
本実施形態では、複数の第2種のスロット312の全てについて、横部分および縦部分に隣接する部位と、第3の導電性表面320aとの距離が異なっている。このような形態に限らず、複数の第2種のスロット312のうち、横部分および縦部分に隣接する部位と、第3の導電性表面320aとの距離が互いに異なる2つ以上の第2種のスロットを含む任意の形態を採用してもよい。
【0085】
(実施形態2)
図16は、本開示の第2の実施形態によるスロットアレイアンテナ300Aの構成を示す斜視図である。
図17は、スロットアレイアンテナ300Aの構造の一部を拡大して示す断面図である。
【0086】
本実施形態では、Y方向に並ぶ複数の第1種のスロット311の基部311aの深さが、スロットによって異なっている。
図17に示すように、複数の第1種のスロット311は、基部311aの深さが異なる第1種のスロット311Aおよび311Bを含む。
【0087】
図17に示される例では、第1種のスロット311Aの基部311aの深さよりも、第1種のスロット311Bの基部311aの深さの方が大きい。すなわち、第1種のスロット311Aの基部311aは、第1種のスロット311Bの基部311aよりも高い位置にある。第1種のスロット311Aと第1種のスロット311Bとが、第1の方向(Y方向)に沿って交互に配置されている。Y方向に隣り合う2つの第1種のスロット311Aおよび311Bは、1つの第2種のスロット312に接続されている。第1種のスロット311Aよりも第1種のスロット311Bの方が給電部に近い。
【0088】
このように、基部311aの深さをスロットによって変えることで、導波部材322上の導波路を伝搬する電磁波の位相を調整することができる。第1種のスロット311A、311Bの構成は、基部311aの深さが異なる点を除けば、第1の実施形態における第1種のスロット311の構成と同様である。第2種のスロット312の構成は、第1の実施形態における第2種のスロット312の構成と同様である。
【0089】
図18は、第2の導電部材320およびその上の導波部材322および複数の導電性ロッド324を示す斜視図である。
図19は、第1種のスロット311、第2種のスロット312、導波部材322、および導電性ロッド324の配置関係を示す上面図である。本実施形態における導波部材322は、第1の実施形態における導波部材322よりも短い。
図17から
図19に示すように、本実施形態では、導波路の終端側における導波部材322の端部322eが、H形状の第2種のスロット312の横部分の直下付近に位置する。このように、導波部材322の長さを短くすることにより、終端側の放射素子からの放射量が少なくなるように調整することができる。
【0090】
以上の実施形態におけるスロットアレイアンテナは、Y方向(第1の方向)に沿って並ぶ複数のスロットの列を1列のみ備えている。本開示はそのような構成に限定されず、第1の方向に交差する方向に並ぶ複数のスロット列を備えたスロットアレイアンテナを構成することができる。そのような構成により、2次元的に放射素子が配置されたアレイアンテナを実現することができる。
【0091】
図20は、複数の放射素子が2次元的に並ぶスロットアレイアンテナの例を示す斜視図である。
図21は、スロットアレイアンテナ300Bから第1の導電部材310を除去して第2の導電部材320が露出した構成を示す斜視図である。このスロットアレイアンテナ300Bでは、第1の導電部材310が、X方向およびY方向に2次元的に並ぶ複数の第1種のスロット311を有する。第2の導電部材320は、X方向に並ぶ複数の導波部材322を有する。各導波部材322の両側に複数の導電性ロッド324の列が配置されている。各導波部材322の給電側の端部は、ポート327に接続されている。各ポート327は貫通孔であり、不図示のマイクロ波集積回路などの電子回路に接続される。そのような電子回路は、送信回路または受信回路として機能する。電子回路は、例えば
図21に示す第2の導電部材320の背面側に設けられ得る。各導波部材322上の導波路への給電については、様々な構成を採用することができる。それらの例は、例えば米国特許第10042045、米国特許第10090600、米国特許第10158158、国際特許出願公開第2018/207796、国際特許出願公開第2018/207838、米国特許出願第16/121768に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。
【0092】
図22は、スロットアレイアンテナ300Bの終端側の部分の断面構造を示す図である。
図22に示すように、Y方向に並ぶ複数の第1種のスロット311は、
図17の例と同様、基部311aの深さがスロットによって異なっている。1つの第2種のスロット312に接続される隣り合う2つの第1種のスロット311のうち、給電側の第1種のスロット311Bの基部311aの深さの方が終端側の第1種のスロット311Aの基部311aの深さよりも大きい。X方向において隣り合う複数の第1種のスロットの基部311aの深さはいずれも同じである。
【0093】
図23は、第1の導電部材310の背面側の構造を示す斜視図である。
図23に示すように、複数の第2種のスロット312がX方向およびY方向に沿って2次元的に配置されている。給電側における5列の第2種のスロット312A1、312A2、312A3、312A4、312A5の内側には、一対のリッジ部の端面が第2の導電性表面310bよりも奥に窪んだ凹部312a1、312a2、312a3が設けられている。
図23の例では、最も給電側に位置する2列の第2種のスロット312A1、312A2の凹部312a1の深さが最も大きく、次いで、3列目および4列目の第2種のスロット312A3、312A4の凹部312a2、5列目の第2種のスロット312A5の凹部312a3の順に、終端側に近づくにつれてリッジ部の端面の位置が高くなっている。一方、終端側における4列の第2種のスロット312B1、312B2、312B3、312B4には凹部が設けられていない。
【0094】
第1の実施形態と同様に、本実施形態のスロットアレイアンテナにおいても、導波部材322によって規定される導波路と各第2種のスロット312との結合を調整することができる。例えば、コセカント2乗特性を実現することができる。
【0095】
本実施形態では、複数の第2種のスロット312の各々における一対のリッジ部の端面は、第2の導電性表面310bと同一の平面上または第2の導電性表面310bよりも奥にある。しかし、このような構造に限定されない。例えば、実施形態1と同様に、一部の第2種のスロット312の一対のリッジ部の端面が、第2の導電性表面310bから突出する凸部であってもよい。複数の第2種のスロット312の少なくとも1つにおいて、横部分および縦部分に隣接する位置に、適切な深さの凹部、または適切な高さの凸部を設けた構造により、要求される性能に応じて放射特性を調整することができる。
【0096】
なお、本実施形態における2次元に放射素子を並べた構成は、実施形態1および後述する他の実施形態の構造に適用することもできる。
【0097】
(実施形態3)
図24Aは、第3の実施形態におけるスロットアレイアンテナ300Cの構造を模式的に示す斜視図である。
図24Bは、スロットアレイアンテナ300Cにおける第1の導電部材310の正面側の構成を示す斜視図である。
図24Cは、第1の導電部材310の構造を示す透過斜視図である。
図24Dは、第1の導電部材310の背面側の構造を示す斜視図である。
【0098】
本実施形態におけるスロットアレイアンテナ300Cでは、第1の導電部材310側に導波部材322および複数の導電性ロッド324が設けられている。前述の各実施形態では、導波部材322は、第2の導電部材320の第3の導電性表面320aから突出するリッジ状の構造を有する。これに対し、本実施形態では、導波部材322は、第1の導電部材310の第2の導電性表面310bから突出するリッジ状の構造を有する。複数の導電性ロッド324も同様に、第2の導電性表面310bに接続されている。
【0099】
図24Aから
図24Cに示すように、本実施形態においても、複数の第1種のスロット311の各々の、第1の導電性表面310aにおける開口が延びる方向は、第1の方向(Y方向)に対して傾斜した第2の方向に配向している。
図24Dに示すように、導波部材(リッジ)322は、第3の導電性表面320aに対向する導電性の導波面322aを有し、Y方向に沿って延びている。複数の導電性ロッド324は、導波部材322の周囲に配置され、導波面322aに沿って伝搬する電磁波の漏洩を抑制する。本実施形態では、第2種のスロット312の横部分の位置で、導波部材322およびその導波面322aが分断されている。言い換えれば、導波部材322は、互いに分離され同一の方向に延びる複数のリッジを含む。これらのリッジの端面間の間隙は、第2種のスロットの横部分に連続している。
【0100】
このような構造によれば、導波部材322における1つのリッジの導波面322aに沿って伝搬する電磁波は、その一部が第2種のスロット312および2つの第1種のスロット311を介して外部空間に放射され、他の一部は、その先にある他のリッジに沿って伝搬する。本実施形態の構成によっても、前述の実施形態と同様、複数の第1種のスロット311から電磁波を放射することができる。
【0101】
以上の実施形態における第2種のスロット312は、いずれもH形状を有する。しかし、第2種のスロット312の形状はH形状に限定されない。以下、第2種のスロット312の他の形状の例を説明する。
【0102】
図25Aは、Z形状を有する第2種のスロット312Zの例を示している。この第2種のスロット312Zは、アルファベットの「Z」に類似する断面形状を有する。スロット312Zは、一方向に延びる横部分312dと、横部分312dの両端部に接続され、横部分312dに交差する方向に延びる2つの縦部分312eとを有する。横部分312dの両端部を起点とした場合に2つの縦部分312eが延びる方向は、互いに逆である。
【0103】
図25Bは、U形状を有する第2種のスロット312Uの例を示している。この第2種のスロット312Uは、アルファベットの「U」に類似する断面形状を有する。スロット312Uも、一方向に延びる横部分312dと、横部分312dの両端部に接続され、横部分312dに交差する方向に延びる2つの縦部分312eとを有する。Z形状のスロット312Zとは異なり、横部分312dの両端部を起点とした場合に2つの縦部分312eが延びる方向は、同一である。
【0104】
図25Cは、L形状を有する第2種のスロット312Lの例を示している。この第2種のスロット312Lは、アルファベットの「L」に類似する断面形状を有する。スロット312Lは、一方向に延びる横部分312dと、横部分312dの一方の端部に接続され、横部分312dに交差する方向に延びる縦部分312eとを有する。この第2種のスロット312Lは、横部分312dに接続される縦部分312eを1つのみ有する点で、前述の各第2種のスロットとは異なる。このようなL形状の構造においても、第2種のスロット312Lを、隣り合う2つの第1種のスロット311に第1の導電部材310の内部で繋げた構造は可能である。例えば、
図25Dに示すように、第2種のスロット312Lの横部分312dと一方の第1種のスロット311が重なり、第2種のスロット312Lの縦部分312eと他方の第1種のスロット311が重なる構造を採用してもよい。
図25Dの構成では、複数の第1種のスロット311が配列される方向と、複数の第2種のスロット312が配列される方向とが一致しない。
【0105】
前述の各実施形態におけるH形状の第2種のスロット312の代わりに、
図25Aから
図25Cに例示されるいずれかの第2種のスロットを用いてもよい。
【0106】
(実施形態4)
図26Aは、本開示の第4の実施形態によるスロットアレイアンテナ300Dの構造を示す斜視図である。
図26Bは、スロットアレイアンテナ300Dの内部構造を示す透過斜視図である。
図26Cは、第1種のスロット311と第2種のスロット312の配置関係を示す上面図である。
【0107】
本実施形態では、1つの第2種のスロット312が1つの第1種のスロット311に繋がっている点で、前述の各実施形態とは異なる。本実施形態における各第2種のスロット312は、楕円に近い形状を有する。各第2種のスロット312が延びる方向は、導波部材322が延びる第1の方向(Y方向)に平行である。複数の第2種のスロット312の各々は、導波部材322の導波面の中心線に対して+X方向または−X方向に変位している。このように、変位の方向は、Y方向において隣り合う2つの第2種のスロット312で互いに反対である。このように、本実施形態における複数の第2種のスロット312の配列は、千鳥配列(staggered Arrangement)である。第1種のスロット311の開口が延びる方向は、前述の各実施形態と同様、第1の方向に対して傾斜した第2の方向である。第2種のスロット312の各々は、第1の導電部材310の内部において、第1種のスロット311と接続する接続箇所を1つのみ有する。この接続箇所において、第1の導電部材310は貫通孔313を有する。
【0108】
図27Aは、本実施形態の変形例による第1の導電部材310の構造を示す斜視図である。
図27Bは、本変形例における第1の導電部材310を正面側から見た図である。
図27Cは、本変形例における第1の導電部材310を背面側から見た図である。この例では、各第1種のスロット311は基部311aと溝部311bとを有する。溝部311bは、第1種のスロット311の内壁面に隣接する。隣り合う2つの第1種のスロット311において、溝部311bは、各スロットの中央部から互いに反対の方向に変位している。このような構造により、第2種のスロット312と第1種のスロット311との接続箇所を、第1の方向に一定の間隔で配列させることができ、良好な放射を実現することができる。
【0109】
本開示の実施形態におけるスロットアレイアンテナは、例えば無線通信システムに利用され得る。そのような無線通信システムは、上述したいずれかの実施形態におけるスロットアレイアンテナと、スロットアレイアンテナに接続された通信回路(送信回路または受信回路)とを備える。送信回路は、例えば、送信すべき信号を表す信号波をスロットアレイアンテナ内の導波路に供給するように構成され得る。受信回路は、スロットアレイアンテナを介して受信された信号波を復調してアナログまたはデジタルの信号として出力するように構成され得る。
【0110】
近年、マッシブMIMOと呼ばれる通信技術が知られている。マッシブMIMOは、場合によっては100個以上のアンテナ素子を用いることによって通信容量の飛躍的な拡大を実現する技術である。マッシブMIMOによれば、同一の周波数帯を用いて多数のユーザーの同時接続が可能になる。マッシブMIMOは、20GHz帯などの、比較的高い周波数を利用する際に有用であり、第5世代移動通信システム(5G)などの通信に利用され得る。本開示の実施形態によるアンテナアレイは、このようなマッシブMIMOを用いる通信システムにおいて利用され得る。
【0111】
本開示の実施形態におけるスロットアレイアンテナは、例えば車両、船舶、航空機、ロボット等の移動体に搭載されるレーダ装置またはレーダシステムにも用いられ得る。レーダ装置は、上述したいずれかの実施形態におけるスロットアレイアンテナと、当該スロットアレイアンテナに接続されたMMICなどのマイクロ波集積回路とを備える。レーダシステムは、当該レーダ装置と、当該レーダ装置のマイクロ波集積回路に接続された信号処理回路とを備える。信号処理回路は、例えば、マイクロ波集積回路によって受信された信号に基づき、到来波の方位を推定する処理等を行う。信号処理回路は、例えば、MUSIC法、ESPRIT法、およびSAGE法などのアルゴリズムを実行して、到来波の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成され得る。信号処理回路は、さらに、公知のアルゴリズムにより、到来波の波源である物標までの距離、物標の相対速度、物標の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成されていてもよい。
【0112】
本開示における「信号処理回路」の用語は、単一の回路に限られず、複数の回路の組み合わせを概念的に1つの機能部品として捉えた態様も含む。信号処理回路は、1個または複数のシステムオンチップ(SoC)によって実現されてもよい。例えば、信号処理回路の一部または全部がプログラマブルロジックデバイス(PLD)であるFPGA(Field−Programmable Gate Array)であってもよい。その場合、信号処理回路は、複数の演算素子(例えば汎用ロジックおよびマルチプライヤ)および複数のメモリ素子(例えばルックアップテーブルまたはメモリブロック)を含む。または、信号処理回路は、汎用プロセッサおよびメインメモリ装置の集合であってもよい。信号処理回路は、プロセッサコアとメモリとを含む回路であってもよい。これらは信号処理回路として機能し得る。
【0113】
本開示の実施形態におけるアンテナ装置と、小型化が可能なWRG構造とを組み合わせた場合、従来の中空導波管を用いた構成と比較して、アンテナ素子が配列される面の面積を小さくすることができる。このため、当該アンテナ装置を搭載したレーダシステムを、狭小な場所にも容易に搭載することができる。レーダシステムは、例えば道路または建物に固定されて使用され得る。
【0114】
本開示の実施形態におけるスロットアレイアンテナは、さらに、屋内測位システム(IPS:Indoor Positioning System)におけるアンテナとしても利用することができる。屋内測位システムでは、建物内にいる人、または無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)などの移動体の位置を特定することができる。スロットアレイアンテナはまた、店舗または施設に来場した人が有する情報端末(スマートフォン等)に情報を提供するシステムにおいて用いられる電波発信機(ビーコン)に用いることもできる。そのようなシステムでは、ビーコンは、例えば数秒に1回、IDなどの情報を重畳した電磁波を発する。その電磁波を情報端末が受信すると、情報端末は、通信回線を介して遠隔地のサーバコンピュータに、受け取った情報を送信する。サーバコンピュータは、情報端末から得た情報から、その情報端末の位置を特定し、その位置に応じた情報(例えば、商品案内またはクーポン)を、当該情報端末に提供する。
【0115】
WRG構造を有するスロットアレイアンテナを備えたレーダシステム、通信システム、および各種監視システムの応用例が、例えば米国特許第9786995号明細書および米国特許第10027032号明細書に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。本開示のスロットアレイアンテナは、これらの文献に開示された各応用例に適用することができる。