【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線電波調査システムにおいて、「基本となる技術構成1」は、調査領域に分散して配置した複数の通信端末とネットワーク上の解析サーバーとを有する無線電波調査システムであって、
前記通信端末は、調査対象に係る無線電波を受信する少なくとも一つの種類の端末側受信部と、前記ネットワーク上の前記解析サーバーに前記端末側受信部で受信した電波情報を送信する端末側送信部とを有しており、
前記無線電波調査システムは、前記複数の通信端末の位置情報を記憶する位置情報記憶部と、時間経過によって時系列的に得られる前記電波情報を前記複数の通信端末毎に記憶する電波情報記憶部と、前記複数の通信端末が配置された位置の空間情報を記憶する空間情報記憶部と、前記電波情報と前記空間情報に基づいて前記各通信端末の電波受信に関する異常を検出する電波異常検出部とを有していることを特徴とする。
前記「基本となる技術構成1」であれば、調査領域内に通信端末が複数個分散して配置するとともに、例えば、必要であれば、長い期間において継続的に時間経過を伴った電波情報を通信端末毎に得られる。また、電波異常検出部が、前記電波情報と前記空間情報に基づいて各通信端末の電波受信に関する異常を検出するので、異常検知を時間的にも空間的にも分かりやすい形で簡単に把握できる。
また、「基本となる技術構成2」は、調査領域に分散して配置した複数の通信端末とネットワーク上の解析サーバーとを有する無線電波調査システムであって、
前記通信端末は、調査対象に係る無線電波を受信する少なくとも一つの種類の端末側受信部と、前記ネットワーク上の前記解析サーバーに前記端末側受信部で受信した電波情報を送信する端末側送信部とを有しており、
前記無線電波調査システムは、前記複数の通信端末の位置情報を記憶する位置情報記憶部と、時間経過によって時系列的に得られる前記電波情報を前記複数の通信端末毎及び電波種類毎に記憶する電波情報記憶部と、前記複数の通信端末が配置された位置の空間情報を記憶する空間情報記憶部と、前記複数の通信端末が配置された位置の周辺情報を記憶する周辺情報記憶部と、前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報に基づいて前記調査領域の電波受信に影響を与える原因を推定する原因推定部とを有することを特徴とする。
なお、上記「基本となる技術構成1」又は「基本となる技術構成2」に対して、それぞれ下記各他の形態のいずれか一つを組み合わせて別の実施形態を構成することも可能である。
本発明に係る無線電波調査システムは、調査領域に分散して配置した複数の通信端末とネットワーク上の解析サーバーとを有する無線電波調査システムであって、
前記通信端末は、調査対象に係る無線電波を受信する少なくとも一つの種類の端末側受信部と、前記ネットワーク上の前記解析サーバーに前記端末側受信部で受信した電波情報を送信する端末側送信部とを有しており、
前記無線電波調査システムは、前記複数の通信端末の位置情報を記憶する位置情報記憶部と、時間経過によって時系列的に得られる前記電波情報を前記複数の通信端末毎及び電波種類毎に記憶する電波情報記憶部と、前記複数の通信端末が配置された位置の空間情報を記憶する空間情報記憶部と、前記複数の通信端末が配置された位置の周辺情報を記憶する周辺情報記憶部と、前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報に基づいて前記調査領域の電波受信に影響を与える原因を推定する原因推定部と、
少なくとも1つの前記通信端末の電波受信状態の異常を検出する端末側電波状態異常検出部と、異常を検出した前記通信端末の前記電波情報に係る検出情報量を定常時よりも多くなるように制御する端末側異常状態制御部とを有していることを特徴とする。
なお、前記原因推定部は機械学習を用いた機械学習部を含んで構成することができる。
【0009】
空間情報には、サイトサーベイに通常、考慮される「木造、鉄筋、コンクリート等の躯体情報」がある。
空間情報には、例えば、オフィスなどの部屋が何階にあるかという情報、ビル又は部屋内の間取り情報、階段、庭の位置、部屋内の電子機器、インターネット等に接続可能な情報端末の位置及びその位置の変更、部屋内のレイアウト変更などの構造物に関する情報が含まれる。なお、前記電子機器が部屋内位置をネットワーク的に把握できる電子機器であれば、さらに好ましい。この空間情報の把握は、本特許出願に係る他の請求項に係る発明においても同様に適用できる。
空間情報の一種である構造物情報としては、地下鉄構内、電車内、船内等の構造物の内部情報が含まれる。
周辺情報としては、部屋のあるビルの回りの地理情報、建物情報、道路配置などの情報が例示できる。
【0010】
本発明に係る構成であれば、調査領域内に通信端末が複数個分散して配置するとともに、例えば、必要であれば、長い期間において継続的に時間経過を伴った電波情報を通信端末毎及び電波種類毎に得られるので、長期的な電波受信の変動及び異常を検出することができる。また、原因推定部は、位置情報、空間情報、電波情報のみならず、例えば、外部の地理的状況、地図的状況に関する情報である周辺情報を加味して、期間継続的な電波情報に基づいて各種電波受信の障害になる原因を推定するので、人の経験や熟練度に影響を受けず、色々な可能性を広範囲に自動検討でき、電波受信障害の原因を精度良く推定することができる。
また、少なくとも1つの通信端末が電波受信状態の異常があった状態を、端末側電波状態異常検出部が検出して、端末側異常状態制御部が異常を検出した通信端末の前記検出情報量を定常時よりも多くなるように制御するので、異常状態において定常状態に比べて詳しいデータを送信又は記憶できる。したがって、原因推定部の推定精度を高めることができる。
【0011】
本発明に係る他の形態は、前記検出情報量を多くすることを、前記異常を検出した前記通信端末と前記解析サーバーとの前記電波情報に関する単位時間当たりのデータ通信量を多くすることで行われることを特徴とする。
この構成であれば、多数の通信端末を有するシステムであっても、異常状態でない定常状態の時はデータ通信量を増やす必要がないので、解析サーバー側の処理能力が比較的低い場合でも対処できる利点がある。
本発明に係る他の形態は、前記データ通信量の増加が前記通信端末からの電波受信データ送信間隔を定常時に比べて短く設定することによって行われることを特徴とする。
この構成であれば、簡単な構成でデータ通信量を増加させることを実現できる。
【0012】
本発明に係る他の形態は、少なくとも異常を検出した前記通信端末を含んで電波受信レベルをその時間領域において表示する時間領域表示部を有していることを特徴とする。
この構成であれば、異常時に設定された短い時間間隔において、異常に係る通信端末の時間的推移を把握しやすくなる。
【0013】
本発明に係る他の形態は、少なくとも異常を検出した前記通信端末を含んで周囲範囲の空間配置を表示する空間領域表示部を有していることを特徴とする。
異常を検出した通信端末の周囲範囲は、部屋の中、ビルの中などの調査範囲や、予め設定された半径などの所定距離内にある調査範囲等が例示できる。簡単には、周囲範囲を前記調査領域に設定してもよい。
この構成であれば、空間領域表示部が少なくとも異常を検出した通信端末を含んで周囲の空間配置を表示するので、異常が起こった通信端末の設置位置などの空間配置を把握しやすくなる。
【0014】
本発明に係る他の形態は、システムの使用者又はシステムの指示によって異常を検出した前記通信端末の前記時間領域及び/又は前記空間領域表示においてどの通信端末であるかを識別できるように表示する相互連携部を有していることを特徴とする。
この構成であれば、相互連携部によって時間領域及び/又は空間領域の表示において、異常を検出した通信端末の識別を分かりやすい形で行うことができる。また、相互連携部によって時間領域と空間領域を相互にリンクした状態で表示できるので、使用者において異常の把握程度を高めることができる。
【0015】
本発明に係る他の形態は、前記異常状態検出部によって検出されて、前記検出情報量の増えた前記電波情報と、前記通信端末が配置された所定空間内に存在する情報端末の運転情報と、に基づいて、前記原因推定部が前記調査領域の電波受信に影響を与える原因を推定することを特徴とする。
情報端末に起因する運転情報とは、その情報端末の停止、起動、ある特定機能状態への移行などの運転、通信等に関する情報などが例示できる。
この構成であれば、各種の情報機器に関する影響も加えた原因推定を行うことができる。
【0016】
本発明に係る他の形態は、前記周囲範囲に関する情報を記憶する周囲範囲情報記憶部を有しており、前記周囲範囲が予め決められた値又は算出された値によって設定されることを特徴とする。
なお、「周囲範囲情報」という概念は、異常を検出した通信端末に対してどこまでの領域まで通信端末を時間領域や空間領域の表示において含めるかを決める情報としても把握できるものである。
この構成であれば、異常を検出した通信端末を含んで周囲の空間配置を表示する場合に、異常状況に対応した「周囲範囲情報」の程度を好ましい範囲に設定するバリエーションを増やすことができる。
【0017】
本発明に係る他の形態は、調査対象に係る無線電波が複数種類あり、前記通信端末は、前記複数種類に対応する複数種類の前記端末側受信部を有しており、前記複数個の前記端末側受信部の内、一の種類の無線電波が他の種類の無線電波の受信に影響を与える度合いを検出する影響度検出部と、検出された影響度に基づいて、本システムが受信異常の原因を推定しようとする無線電波に対する少なくとも一つの他の種類の無線電波による悪影響を与える原因を推定する原因推定部とを有することを特徴とする。
なお、この形態においても、前記原因推定部は機械学習を用いた機械学習部を含んで構成することができる。
【0018】
この構成であれば、影響度検出部が一の種類の無線電波が他の種類の無線電波の受信に影響を与える度合いを検出し、原因推定部が検出された影響度に基づいて、異常原因を推定しようとする無線電波に対する少なくとも一つの他の種類の電波の悪影響を与える原因を推定する。通信端末が複数種類の無線電波を受信できる複数種類の前記端末側受信部を有しているので、例えば、無線LANとブルートゥースなどの混信等の無線異常の原因を簡単かつ正確に特定できる。
【0019】
本発明に係る他の形態は、前記複数の通信端末を、スマートフォンなどの汎用型の携帯通信端末で構成し、前記汎用型の携帯通信端末に前記通信端末が行う処理を実行させるソフトウエアを予めインストールしたことを特徴とする。
この構成であれば、前記複数の通信端末を、スマートフォンなどの汎用型の携帯通信端末で構成したので、本システム専用の通信端末を製造するよりも安価に無線電波調査システムを構築できる。
【0020】
本発明に係る他の形態は、前記複数の通信端末を、部屋や屋外に常設される常設型通信端末で構成したことを特徴とする。
この構成であれば、常設されているので装置が故障するまで、例えば10年〜20年でも電波受信障害の原因を探求できる電波情報を解析サーバーに送信することができる。
【0021】
本発明に係る他の形態は、前記調査領域を調査する場合に、前記複数の通信端末を、一時的に設けられる携帯通信端末と、部屋や屋外に常設される常設型通信端末とを共に使用することで構成したことを特徴とする。
この構成であれば、携帯通信端末と常設型通信端末とを共に利用しているので、短期的な調査と長期的な調査を組み合わせることにより、詳細に受信状況を把握することができる。つまり、長期期間に渡る電波情報と、例えば、何かトラブルが起こった場合に新しく設けた携帯通信端末から得られる電波情報とを組み合わせることで、より詳細な調査を可能にできる。
【0022】
本発明に係る他の形態は、前記原因推定部は、電波情報の異常を検出する異常電波情報検出部と、過去に蓄積された異常時の前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報と、正常時の前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報を入力データとして、教師データとしての異常の原因を与えて機械学習を行って得られた異常原因推定モデルとを有し、前記異常電波情報検出部によって検出された時に、前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報を入力データとして、前記異常原因推定モデルによって現在の状態における異常の原因を推定することを特徴とする。
この構成であれば、過去の異常のデータの蓄積に基づいて現在の異常を検出できる時間域において推定するので、人間の判断よりも原因の推定時間を著しく短縮することができる。異常を検出するとほぼ同時のリアルタイムで発生原因を推定することも可能である。また、機械学習によって生成された異常原因推定モデルは、位置情報、電波情報、空間情報、周辺情報を人間の先入観なく、関係づけるので人間の精度よりも原因推定の確度を高くすることが可能になる。
【0023】
なお、常設型通信端末を採用した顧客に対して、場所や測定箇所等の個人情報を明らかにしないという契約で正常情報と異常情報を集めることができるならば、システムを採用した顧客全体の情報から、教師あり学習に必要な多量の数の異常と正常のデータセット(前記位置情報、前記電波情報、前記空間情報、前記周辺情報)を蓄積及び取得することは、比較的簡単に行えるものである。
【0024】
本発明に係る他の形態は、前記異常が周期的異常であり、前記異常電波情報検出部が周期的異常を検出する周期的異常電波情報検出部であり、前記異常原因推定モデルが周期的異常原因推定モデルであることを特徴とする。
周期的な異常の原因の一例としては、Wi−Fi機能等が搭載されているバスの運行による電波障害、各種通信機能を備えた電車や移動体の通過などの影響がある。
毎回毎回、全く新しい原因の電波受信障害が起こることは稀であり、人間及び機械の活動に伴う電波受信障害は、人間及び機械の活動に伴って周期的に繰り返すことが多い。したがって、この構成であれば、周期的異常原因推定モデルを機械学習によってコンピュータ処理を行うことで、多くの電波受信に関する問題を短時間で解決できる可能性を高めることができる。
【0025】
本発明に係る他の形態は、前記通信端末が複数の常設型通信端末を含み、前記端末側受信部がWi−Fi機能を有する通信端末が使用する無線電波を受信する機能を備えており、不審な携帯端末が監視領域に侵入したことを前記複数の常設型通信端末から得られる複数の受信情報に基づいて検出する不審通信端末検出部を備えていることを特徴とする。
上記構成に関連して、前記通信端末が複数の常設型通信端末であり、前記端末側受信部が未確認電波源から発せられる無線電波を受信する機能を備えており、前記未確認電波源が監視領域に侵入したことを前記複数の常設型通信端末から得られる複数の受信情報に基づいて検出する未確認電波源検出部を備えている構成にすることもできる。
なお、この形態においても、不審通信端末検出部又は未確認電波源検出部は、常設型通信端末における位置情報、少なくとも一種類の電波情報、空間情報、周辺情報を利用した機械学習部を含んで構成することができる。
この構成であれば、不審通信端末検出部又は未確認電波源検出部が、不審な携帯端末又は未確認電波源が監視領域に侵入したことを複数の常設型通信端末から得られる複数の受信情報に基づいて検出することができる。特に、常設型通信端末の設置によって、正常な状態を予め把握することが可能なので、不審なWi−Fi機能を有する通信端末又は未確認電波源が侵入したことを正確かつ迅速に検出できる。
【0026】
本発明に係る他の形態は、前記不審通信端末検出部又は未確認電波源検出部は前記複数の常設型通信端末からの電波情報の変化を時系列的に補足する電波情報変化補足部を備えていることを特徴とする。
この構成であれば、不審な通信端末又は未確認電波源が監視領域に侵入した時から、監視領域を移動すれば、その移動に伴って複数の常設型通信端末の受信電波の受信強度は変化する。その変化を補足することで、例えば、侵入時から、不審な通信端末の移動経路を特定することが可能になり、不審な通信端末又は未確認電波源の現在位置などの情報を精度良く、かつ迅速に検出することができる。