【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「パーソナルエリア高速大容量無線通信・無線電力伝送モジュールの研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【解決手段】アンテナシステムは、所定の周波数で無線通信を行う第1アンテナおよび第2アンテナを備える。第1アンテナは、仮想的な第1平面に配置され、所定の周波数に対応する波長の整数倍である第1周囲長を有する第1円形ループアンテナを備える。第2アンテナは、第1平面に対向する仮想的な第2平面に配置され、第1周囲長を有する第2円形ループアンテナを備える。アンテナシステムは、第1平面に対向し、かつ、第1平面および第2平面の間に配置された第3平面に配置され、第1周囲長を有する第3円形ループアンテナをさらに備える。第1円形ループアンテナは、所定の周波数の電気信号が流れるときに節が発生する箇所の少なくとも1つにおいて抵抗素子を備える。
【背景技術】
【0002】
大量のデータを高速に伝送する需要がある一方で、貴重な資源である周波数の有効利用が重要な課題となっている。有効利用の指標として、伝送情報量を帯域幅で割った、周波数あたりの伝送レートを向上する技術の重要性が増大している。
【0003】
このような技術として、同じ時間内に同じ帯域内で、電波特性の違いを活用して多重化する空間多重化の手法が有効である。その一例として、送受信側のそれぞれに複数のアンテナを設けたMIMO(Multiple−Input and Multiple Output)技術が知られている。しかし、MIMO技術には、混ざり合った信号を数学的に分離する複雑な信号処理が必要であり、また、複数のアンテナを協調させて動作させる必要もあるため、通信システムが複雑にならざるを得ない。
【0004】
近年、同一の周波数における多重化の手法として、OAM(Orbital Angular Momentum:軌道角運動量)通信が提案されている。軌道角運動量は、新しく解明された光(電磁波)の保存量である。この手法をマイクロ波でも使用して周波数効率を向上させるための研究が開始されている。
【0005】
しかし、電磁波を放射するレーザまたはアンテナの放射電磁界は軌道角運動量を有していない電磁界であるため、軌道角運動量を有する電磁波の電磁界を作成するために、送信側に複数のアンテナを設け、これらのアンテナの間に位相器を設ける場合がある。さらに、一般的なMIMO通信の場合と同様に、受信側に設けた複数のアンテナによって得られる受信信号間の相関から各モードの信号を取り出すための信号処理が必要となる。したがって、このような場合も、通信システムが複雑になってしまう。
【0006】
そこで、位相器を用いなくてもOAMモードを放射するアンテナと、このようなアンテナを活用したシンプルで経済的なMIMO通信装置が提案されている。
【0007】
上記に関連して、特許文献1(国際公開第2017/188172号)には、無線通信装置及びアンテナ装置が開示されている。この無線通信装置は、送信アンテナと、送信アンテナから送信された無線信号を受信する受信アンテナとを有する。送信アンテナ及び受信アンテナは、複数の円形ループアンテナと、複数の給電部とを備える。複数の円形ループアンテナは、それぞれが無線通信周波数から決まる波長の約整数倍の異なる周囲長を持ち、同一の平面に同心円状に配置される。複数の給電部は、複数の円形ループアンテナに個別に接続される。この無線通信装置では、送信アンテナの複数の円形ループアンテナの中心軸と、受信アンテナの複数の円形ループアンテナの中心軸とを、ほぼ直線状に配置している。また、このアンテナ装置は、複数の円形ループアンテナと、複数の給電部とを備える。複数の円形ループアンテナは、それぞれが無線通信周波数から決まる波長の約整数倍の異なる周囲長を持ち、同一の平面に同心円状に配置される。複数の給電部は、複数の円形ループアンテナに個別に接続される。このアンテナ装置では、複数の給電部に、それぞれ別の送信部又は受信部を接続している。
【0008】
また、特許文献2(国際公開第2018/216438号)には、無線通信装置及びアンテナ装置が開示されている。この無線通信装置は、送信アンテナと、送信アンテナから送信された無線信号を受信する受信アンテナとを有する。送信アンテナ及び受信アンテナは、第1の円形ループアンテナ群と、第2の円形ループアンテナ群と、複数の給電部とを備える。第1の円形ループアンテナ群では、無線通信周波数から決まる波長の約整数倍であるm
1,m
2,・・・,m
N倍(Nは2以上の整数)のそれぞれ異なる周囲長を有するN個の円形ループアンテナ素子が、同一平面に同心円状に配置される。第2の円形ループアンテナ群では、第1の円形ループアンテナ群とは別の同一平面に同心円状に配置されたN個の円形ループアンテナ素子が、第1の円形ループアンテナ群のN個の円形ループアンテナ素子と同一の周囲長を持つ。複数の給電部は、第1の円形ループアンテナ群及び第2の円形ループアンテナ群のそれぞれの円形ループアンテナ素子に個別に接続される。送信アンテナのN個の円形ループアンテナ素子の中心軸と、受信アンテナのN個の円形ループアンテナ素子の中心軸とは、ほぼ直線状に配置されている。第1の円形ループアンテナ群と第2の円形ループアンテナ群とで、同じ周囲長を有する円形ループアンテナ素子に給電部を接続する角度位置は、(2l+1)π/2m
iだけ回転した角度位置(但し、lは任意の整数、m
iは波長の約整数倍であるm
1〜m
Nの値)に設定されている。また、このアンテナ装置は、第1の円形ループアンテナ群と、第2の円形ループアンテナ群と、複数の給電部とを備える。第1の円形ループアンテナ群では、無線通信周波数から決まる波長の約整数倍であるm
1,m
2,・・・,m
N倍(Nは2以上の整数)のそれぞれ異なる周囲長を有するN個の円形ループアンテナ素子が、同一平面に同心円状に配置される。第2の円形ループアンテナ群では、第1の円形ループアンテナ群とは別の同一平面に同心円状に配置されたN個の円形ループアンテナ素子が、第1の円形ループアンテナ群のN個の円形ループアンテナ素子と同一の周囲長を持つ。複数の給電部は、第1の円形ループアンテナ群及び第2の円形ループアンテナ群のそれぞれの円形ループアンテナ素子に個別に接続される。第1の円形ループアンテナ群と第2の円形ループアンテナ群とで、同じ周囲長を有する円形ループアンテナ素子に給電部を接続する角度位置が、(2l+1)π/2m
iだけ回転した角度位置(但し、lは任意の整数、m
iは波長の約整数倍であるm
1〜m
Nの値)に設定する。
【0009】
特許文献2では、直交モードを活用するためにアンテナが2層構造になっており、2層目の給電線が1層目のアンテナの間を通過するように配置されている。また、同じループ半径を有する2つの円形ループアンテナの間で直交するモードを利用するために直交偏波を活用しているが、物理的な制約により、偏波と重なる位置に給電線を配置している。そのため、アンテナから放射された電界によって給電線の外導体が散乱波を放射し、この散乱波によってアンテナが誘起されて電流が生じる。その結果、たとえ円形ループアンテナが理想的に設計されていたとしても、受信側の電流分布が乱され、受信時のモード単一性が悪化する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明によるアンテナシステムおよびアンテナを実施するための形態を以下に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態では、特許文献2の給電線から放射される散乱波を抑制するために、各ループアンテナの導体に抵抗素子を装荷することによって、各ループアンテナにおける定在波以外の電流分布に対して損失を与える。その結果、給電線からの散乱波によってアンテナに生じる電流が抑制され、所望のOAMを高品質に受信することが可能となる。
【0019】
図1Aを参照して、一実施形態によるアンテナシステム1の一構成例について説明する。
図1Aは、一実施形態によるアンテナシステム1の一構成例を示す図である。
【0020】
図1Aのアンテナシステム1の構成要素について説明する。アンテナシステム1は、第1のアンテナ10と、第2のアンテナ20とを備える。
【0021】
第1のアンテナ10は、アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180と、反射板190と、給電線119、129、139、149、159、169、179、189とを備える。アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180は、それぞれ、給電部111、121、131、141、151、161、171、181を有している。
【0022】
第2のアンテナ20は、アンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280と、反射板290と、給電線219、229、239、249、259、269、279、289とを備える。アンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280は、それぞれ、給電部211、221、231、241、251、261、271、281を有している。
【0023】
以降、説明を簡単にするために、アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180を区別しない場合に、これらをアンテナ素子1i0と記す場合がある。ここで、iは1から8までの任意の整数を表してもよい。同様に、給電線119、129、139、149、159、169、179、189を給電線1i9と記し、給電部111、121、131、141、151、161、171、181を給電部1i1と記す場合がある。さらに、アンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280をアンテナ素子2i0と記し、給電線219、229、239、249、259、269、279、289を給電線2i9と記し、給電部211、221、231、241、251、261、271、281を給電部2i1と記す場合がある。
【0024】
図1Aでは図示を省略するが、第1のアンテナ10には、通信回路301〜308が外部に接続されていてもよいし、内部に含まれていてもよい。また、第2のアンテナ20には、通信回路309〜316が外部に接続されていてもよいし、内部に含まれていてもよい。
【0025】
図1Bは、一実施形態によるアンテナシステムの一構成例を示す写真である。
図1Bにおいて、左側には第1のアンテナ10があり、その右側には第2のアンテナ20があり、そのさらに右側には給電線40がある。
図1Bの給電線40は、
図1Aの給電線2i9の一部または全てに対応している。
【0026】
図1Aのアンテナシステム1の構成要素の接続関係および位置関係について説明する。
【0027】
第1のアンテナ10において、アンテナ素子1i0は、それぞれ、給電部1i1を介して、給電線1i9の一方の端部に、それぞれ接続されている。給電線1i9の他方の端部は、複数の通信回路301〜308に、それぞれ接続されている。
【0028】
第2のアンテナ20において、アンテナ素子2i0は、それぞれ、給電部2i1を介して、給電線2i9の一方の端部に、それぞれ接続されている。給電線2i9の他方の端部は、通信回路309〜316に、それぞれ接続されている。
【0029】
図1Aに右手系の直交座標系XYZを定義する。X軸は、
図1Aの上下方向に対応し、+X方向は
図1Aの上方向に対応する。Y軸は、
図1Aの前後方向に対応し、+Y方向は
図1Aの前方向に対応する。Z軸は
図1Aの左右方向に対応し、+Z方向は
図1Aの右方向に対応する。
【0030】
第1のアンテナ10において、反射板190は第1の仮想的なXY平面に配置されており、アンテナ素子110、120、130、140は第2の仮想的なXY平面に配置されており、アンテナ素子150、160、170、180は第3の仮想的なXY平面に配置されている。
【0031】
第2のアンテナ20において、アンテナ素子250、260、270、280は第4の仮想的なXY平面に配置されており、アンテナ素子210、220、230、240は第5の仮想的なXY平面に配置されており、反射板290は第6の仮想的なXY平面に配置されている。
【0032】
図1Aの例では、第2の仮想的なXY平面と、第3の仮想的なXY平面との間の、Z方向の距離は、長さD1である。また、第4の仮想的なXY平面と、第5の仮想的なXY平面との間の距離も、同様に長さD1である。一例として、長さD1は10mmであってもよいが、これはあくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。
【0033】
一例として、第1のアンテナ10は、その厚さが長さD1に等しい、図示しない基板をさらに備えていてもよい。この場合、アンテナ素子110、120、130、140をこの基板の一方の表面に設け、アンテナ素子150、160、170、180を基板の他方の表面に設けても良い。また、このとき、この基板の一方の表面が第2の仮想的なXY平面に対応していてもよいし、この基板の他方の表面が第3の仮想的なXY平面に対応していてもよい。もしくは、図示しない1枚の基板の代わりに、図示しない2枚の基板を用意して、一方の基板の表面にアンテナ素子110、120、130、140を設け、他方の基板の表面にアンテナ素子150、160、170、180を設けてもよい。このとき、一方の基板の表面は第2の仮想的なXY平面に対応し、他方の基板の表面は第3の仮想的なXY平面に対応してもよい。このとき、2枚の基板は対向していてもよい。
図1Bは、この構成に対応している。
【0034】
同様に、第2のアンテナ20は、その厚さが長さD1に等しい、図示しない別の基板をさらに備えていてもよい。この場合、アンテナ素子210、220、230、240をこの別の基板の一方の表面に設け、アンテナ素子250、260、270、280を基板の他方の表面に設けても良い。言い換えれば、この別の基板の一方の表面が第4の仮想的なXY平面に対応していてもよいし、この別の基板の他方の表面が第5の仮想的なXY平面に対応してしてもよい。もしくは、図示しない1枚の基板の代わりに、図示しない2枚の基板を用意して、一方の基板の表面にアンテナ素子210、220、230、240を設け、他方の基板の表面にアンテナ素子250、260、270、280を設けてもよい。このとき、一方の基板の表面は第4の仮想的なXY平面に対応し、他方の基板の表面は第5の仮想的なXY平面に対応してもよい。このとき、2枚の基板は対向していてもよい。
図1Bは、この構成に対応している。
【0035】
図1Aの例では、第1の仮想的なXY平面と、第2の仮想的なXY平面との間の、Z方向の距離は、長さD2である。また、第5の仮想的なXY平面と、第6の仮想的なXY平面との間の距離も、同様に長さD2である。一例として、長さD2は5mmであってもよいが、これはあくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。
【0036】
図1Aの例では、第2の仮想的なXY平面と、第4の仮想的なXY平面との間の、Z方向の距離は、長さD3である。また、図示を省略しているが、第3の仮想的なXY平面と、第5の仮想的なXY平面との間の距離も、同様に長さD3である。一例として、長さD3は30mmであってもよいが、これはあくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。
【0037】
図1Aの例において、第1のアンテナ10は、送信アンテナとして動作する際に、第2のアンテナ20に向けて、すなわち+Z方向に向けて、電磁波を照射する。したがって、給電線1i9は、アンテナ素子1i0から見て、照射方向とは逆方向である−Z方向に配置されていることが好ましく、例えば反射板190を貫通していても良い。
【0038】
図1Aの例において、第2のアンテナ20は、送信アンテナとして動作する際に、第1のアンテナ10に向けて、すなわち−Z方向に向けて、電磁波を照射する。したがって、給電線2i9は、アンテナ素子2i0から見て、照射方向とは逆方向である+Z方向に配置されていることが好ましく、例えば反射板290を貫通していても良い。
【0040】
本実施形態では、第1のアンテナ10および第2のアンテナ20は、同様に構成されている。そこで、
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図2Dでは、第1のアンテナ10の構成要素の符号に続いて、第2のアンテナ20の構成要素の符号を括弧で示している。
【0041】
図2Aは、本実施形態による第1のアンテナ10および第2のアンテナ20の基本的な構成例を示しており、
図2B、
図2Cおよび
図2Dは
図2Aの構成例に変形を加えた構成例をそれぞれ示している。より詳細には、
図2Aおよび
図2Cは主に後述する抵抗素子の位置関係を説明するための構成例であり、
図2Bおよび
図2Dは主に後述する給電部の位置関係を説明するための構成例である。
【0042】
図2Aには、
図1Aと同じ直交座標系XYZが示されている。
図2Aは、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)のうち、アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)を、+Z軸方向側から見ている。
【0043】
図2Aに示した第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の構成要素について説明する。第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)は、その第1層に、基板101(201)と、アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)とを備えている。また、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)は、その第2層に、基板101(201)と、アンテナ素子150、160、170、180(250、260、270、280)とを備えている。すなわち、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第1層は基板101(201)の表面に配置されており、その第2層は同じ基板101(201)の表面に対向する裏面に配置されている。ただし、この構成はあくまでも一例であり、本実施形態を限定しない。例えば、基板101(201)を2枚用意し、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第1層および第2層を、これら2枚の基板101(201)の表面にそれぞれ配置してもよい。すなわち、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第1層を第1の基板101(201)の表面に配置し、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第2層を第2の基板101(201)の表面に配置してもよい。このとき、2枚の基板101(201)は、対向するように配置されてもよい。
図1Bは、この構成に対応している。以下、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第1層および第2層はほぼ同様に構成されているので、まず第1層の構成について説明し、次に第1層および第2層の構成の差異について説明する。
【0044】
アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)は、同心円状に配置された円形ループアンテナである。ここで、各円形ループアンテナの中心は、直交座標系XYZの原点を通るZ軸と、アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)のループ半径はそれぞれ異なる。一例として、アンテナ素子120、130、140(220、230、240)のループ半径は、それぞれ、アンテナ素子110(210)のループ半径の2倍、3倍、4倍である。言い換えれば、アンテナ素子120、130、140(220、230、240)の周囲長は、それぞれ、アンテナ素子110(210)の周囲長の2倍、3倍、4倍である。これらの倍数は、整数であることが好ましい。ただし、これらの倍数はあくまでも一例であって、本実施形態を限定しない。
【0045】
ここで、アンテナ素子110(210)の周囲長は、周波数に対応する波長に実質的に等しいことが好ましい。一般化すると、アンテナ素子1i0(2i0)の周囲長は、アンテナ素子110(210)の周囲長の、実質的に整数倍であって、その倍数は必ずしも厳密な整数であるとは限らない。すなわち、所望の周波数を有する信号を入力されて定在波が発生するように、アンテナ素子1i0(2i0)の周囲長は決定されることが好ましいのであって、この周囲長は、実際のアンテナ素子1i0(2i0)およびその周囲の構成要素などの影響により、所望の周波数に対応する波長の整数倍に厳密に等しいとは限らない。以降、本稿で倍数が整数であると述べるとき、これは上記のように実質的な整数倍であることを意味する。一例として、本実施形態のアンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)のループ半径は、それぞれ、8.0mm、16.0mm、24.0mm、32.8mmであってもよい。
【0046】
アンテナ素子110(210)は、給電部111(211)と、導体112(212)と、抵抗素子113A、113B(213A、213B)とを備えている。導体112(212)の幅は一様であって、例えば0.2mmであってもよい。ここで、導体112(212)の両端には、給電部111(211)が接続されている。また、導体112(212)は3つの部分に分割されており、これら3つの部分は抵抗素子113A、113B(213A、213B)を介して直列に接続されている。ここで、給電部111(211)を介して外部から入力信号を入力して導体112(212)に定在波が発生するとき、その節が導体112(212)に配置される位置に、抵抗素子113A、113B(213A、213B)は配置される。以降、抵抗素子113A、113B(213A、213B)を区別しない場合に、これらを抵抗素子113(213)と記す場合がある。
【0047】
一例として、円形ループアンテナに発生する定在波の節の位置は、以下の式1で一般化される。
A=(2k+1)π/2n …(式1)
ここで、Aは、節の位置を、円形ループアンテナの中心から給電部に向かう直線と、中心から節に向かう直線との間の角度として、ラジアンで表す。nは、アンテナ素子の周囲長の、入力信号の波長に対する倍数を表す。kは、0以上2n未満の任意の整数を表す。πは、円周率を表す。
【0048】
上記の式1をアンテナ素子110(210)の例に適用すると、倍数nは1であり、任意の正数kは0または1であり、角度Aはπ/2または3π/2である。
【0049】
同様に、アンテナ素子120(220)は、給電部121(221)と、導体122(222)と、抵抗素子123A、123B、123C、123D(223A、223B、223C、223D)とを備えている。導体122(222)の幅は一様であって、例えば0.2mmであってもよい。ここで、導体122(222)の両端には、給電部121(221)が接続されている。また、導体122(222)は5つの部分に分割されており、これら5つの部分は抵抗素子123A、123B、123C、123D(223A、223B、223C、223D)を介して直列に接続されている。上記の式1をアンテナ素子120(220)の例に適用すると、倍数nは2であり、任意の正数kは0、1、2または3であり、角度Aはπ/4、3π/4、5π/4または7π/4であり、抵抗素子123A、123B、123C、123D(223A、223B、223C、223D)はこれらの角度Aに対応する位置に配置されている。以降、抵抗素子123A〜123D(223A〜223D)を区別しない場合に、これらを抵抗素子123(223)と記す場合がある。
【0050】
同様に、アンテナ素子130(230)は、給電部131(231)と、導体132(232)と、抵抗素子133A、133B、133C、133D、133E、133F(233A、233B、233C、233D、233E、233F)とを備えている。導体132(232)の幅は一様であって、例えば0.2mmであってもよい。ここで、導体132(232)の両端には、給電部131(231)が接続されている。また、導体132(232)は7つの部分に分割されており、これら7つの部分は抵抗素子133A、133B、133C、133D、133E、133F(233A、233B、233C、233D、233E、233F)を介して直列に接続されている。上記の式1をアンテナ素子130(230)の例に適用すると、倍数nは3であり、任意の正数kは0、1、2、3、4または5であり、角度Aはπ/6、3π/6、5π/6、7π/6、9π/6または11π/6であり、抵抗素子133A、133B、133C、133D、133E、133F(233A、233B、233C、233D、233E、233F)はこれらの角度Aに対応する位置に配置されている。以降、抵抗素子133A〜133F(233A〜233F)を区別しない場合に、これらを抵抗素子133(233)と記す場合がある。
【0051】
同様に、アンテナ素子140(240)は、給電部141(241)と、導体142(242)と、抵抗素子143A、143B、143C、143D、143E、143F、143G、143H(243A、243B、243C、243D、243E、243F、243G、243H)とを備えている。導体142(242)の幅は一様であって、例えば0.4mmであってもよい。ここで、導体142(242)の両端には、給電部141(241)が接続されている。また、導体142(242)は9つの部分に分割されており、これら9つの部分は抵抗素子143A、143B、143C、143D、143E、143F、143G、143H(243A、243B、243C、243D、243E、243F、243G、243H)を介して直列に接続されている。上記の式1をアンテナ素子140(240)の例に適用すると、倍数nは4であり、任意の正数kは0、1、2、3、4、5、6または7であり、角度Aはπ/8、3π/8、5π/8、7π/8、9π/8、11π/8、13π/8または15π/8であり、抵抗素子143A、143B、143C、143D、143E、143F、143G、143H(243A、243B、243C、243D、243E、243F、243G、243H)はこれらの角度Aに対応する位置に配置されている。以降、抵抗素子143A〜143H(243A〜243H)を区別しない場合に、これらを抵抗素子143(243)と記す場合がある。
【0052】
図2Cを参照して、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第2層の一構成例について説明する。第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の第2層は、第1層との以下の対応関係に以下の変更を加えることで得られる。すなわち、アンテナ素子150、160、170、180(250、260、270、280)は、それぞれ、アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)と同様に構成されている。より詳細には、第2層の給電部151、161、171、181(251、261、271、281)は、第1層の給電部111、121、131、141(211、221、231、241)に、それぞれ対応する。第2層の導体152、162、172、182(252、262、272、282)は、第1層の導体112、122、132、142(212、222、232、242)に、それぞれ対応する。第2層の抵抗素子153A〜153B、163A〜163D、173A〜173F、183A〜183H(253A〜253B、263A〜263D、273A〜273F、283A〜283H)は、第1層の抵抗素子113A〜113B、123A〜123D、133A〜133F、143A〜143H(213A〜213B、223A〜223D、233A〜233F、243A〜243H)に、それぞれ対応する。
【0053】
ここで、抵抗素子153A〜153B(253A〜253B)を区別しない場合には、これらを抵抗素子153(253)と記す場合がある。また、抵抗素子163A〜163D(263A〜263D)を区別しない場合には、これらを抵抗素子163(263)と記す場合がある。また、抵抗素子173A〜173F(273A〜273F)を区別しない場合には、これらを抵抗素子173(273)と記す場合がある。また、抵抗素子183A〜183H(283A〜283H)を区別しない場合には、これらを抵抗素子183(283)と記す場合がある。さらに、抵抗素子113、123、133、143、153、163、173、183(213、223、233、243、253、263、273、283)を区別しない場合には、これらを抵抗素子1i3(2i3)と記す場合がある。
【0054】
ただし、アンテナ素子150、160、170、180の幅は、0.4mmであってもよい。また、アンテナ素子150、160、170、180のループ半径は、アンテナ素子110、120、130、140のループ半径と異なっていてもよい。一例として、アンテナ素子150、160、170、180のループ半径は、それぞれ、8.0mm、16.4mm、25.0mm、33.2mmであってもよい。
【0055】
さらに、第1のアンテナ10のアンテナ素子1i0と、第2のアンテナ20のアンテナ素子2i0との間で、ループ半径が異なっていてもよい。一例として、第1のアンテナ10が送信側であり、第2のアンテナ20が受信側である場合には、アンテナ素子1i0、2i0のループ半径は以下のとおりであっても良い。すなわち、アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180のループ半径は、それぞれ、8.0mm、16.0mm、24.0mm、32.8mm、8.0mm、16.4mm、25.0mm、33.2mmであってもよい。また、アンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280のループ半径は、それぞれ、8.0mm、15.9mm、24.0mm、33.0mm、7.9mm、16.4mm、24.7mm、33.2mmであってもよい。
【0056】
以上、
図2Aおよび
図2Cを参照して、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)に含まれるアンテナ素子1i0(2i0)の構成について、特にアンテナ素子1i0(2i0)のそれぞれに含まれる抵抗素子1i3(2i3)の、給電部1i1(2i1)の位置に基づく位置関係について、説明した。
【0057】
次に、
図2Bを参照して、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)に含まれるアンテナ素子110、120、130、140のそれぞれに含まれる給電部1i1(2i1)の位置について説明する。
【0058】
図2Bに示した第1のアンテナ10(20)は、例えば
図2Aに示した第1のアンテナ10(20)に、以下の変更を加えることで得られる。すなわち、アンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)のそれぞれを、Z軸を中心に、所定の角度だけ、+Z方向から見て反時計回りに回転させる。より詳細には、第1のアンテナ素子110(210)を第1の角度θ1だけ回転し、第2のアンテナ素子120(220)を第2の角度θ2だけ回転し、第3のアンテナ素子130(230)を第3の角度θ3だけ回転し、第4のアンテナ素子140(240)を第4の角度θ4だけ回転する。ここで、第1の角度θ1は0度であり、第2の角度θ2は90度であり、第3の角度θ3は45度であり、第4の角度θ4は22.5度である。なお、これらの角度の値は、あくまでも一例に過ぎず、本実施形態を限定しない。
【0059】
次に、
図2Dを参照して、第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)に含まれるアンテナ素子150、160、170、180(250、260、270、280)のそれぞれに含まれる給電部1i1(2i1)の位置について説明する。
【0060】
図2Dに示した第1のアンテナ10(20)は、例えば
図2Cに示した第1のアンテナ10(20)に、以下の変更を加えることで得られる。すなわち、アンテナ素子150、160、170、180(250、260、270、280)のそれぞれを、Z軸を中心に、所定の角度だけ、−Z方向から見て時計回りに回転させる。より詳細には、第5のアンテナ素子150(250)を第5の角度θ5だけ回転し、第6のアンテナ素子160(260)を第6の角度θ6だけ回転し、第7のアンテナ素子170(270)を第7の角度θ7だけ回転し、第8のアンテナ素子180(280)を第8の角度θ8だけ回転する。ここで、第5の角度θ5は90度であり、第6の角度θ6は45度であり、第7の角度θ7は75度であり、第8の角度θ8は0度である。なお、これらの角度の値は、あくまでも一例に過ぎず、本実施形態を限定しない。
【0061】
図2Bに示したアンテナ素子110、120、130、140(210、220、230、240)と、
図2Dに示したアンテナ素子150、160、170、180(250、260、270、280)とのうち、同じループ半径を有するアンテナ素子1i0(2i0)の組み合わせの中における、給電部1i1(2i1)の位置関係について説明する。このような組み合わせに含まれるアンテナ素子1i0および2i0において直交偏波を活用するためには、円形ループアンテナの中心および給電部1i1、2i1をそれぞれ通る2本の直線の間の角度Bが、以下の式2を満たすことが好ましい。
B=(2k+1)π/2n …(式2)
ここで、角度Bは、ラジアンで表す。nは、アンテナ素子の周囲長の、入力信号の波長に対する倍数を表す。kは、0以上2n未満の任意の整数を表す。πは、円周率を表す。
【0062】
図2Bおよび
図2Dのように構成された本実施形態による第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)に含まれる給電部1i1(2i1)について説明する。給電部1i1(2i1)には、入力インピーダンスを整合するためにバランを設けてもよい。第1のアンテナ10を送信側に使用する場合には、給電部1i1の入力インピーダンスが概ね50Ωであったので、50Ωから50Ωに変換するバランを、給電部1i1のそれぞれに設けた。また、第2のアンテナ20を受信側に使用する場合には、給電部2i1の入力インピーダンスが概ね80Ωであったので、50Ωから80Ωに変換するバランを、給電部2i1のそれぞれに設けた。
【0063】
一実施形態によるアンテナシステム1の動作について説明する。ここでは、第1のアンテナ10を送信側アンテナとして用い、第2のアンテナ20を受信側アンテナとして用いる場合について説明するが、これはあくまでも一例に過ぎず、本実施形態を限定しない。
【0064】
第1のアンテナ10に含まれるアンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180は、独立した8個のチャンネルのためにそれぞれ使用される。すなわち、図示しない通信回路301〜308が、周波数は同じであるが互いに独立している8個の信号を、アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180にそれぞれ供給してもよい。このとき、第1のアンテナ10は、アンテナ素子110、120、130、140、150、160、170、180を介して、第2のアンテナ20に向けて8個の無線信号を同時に送信する。
【0065】
このとき、第2のアンテナ20に含まれるアンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280も、独立した8個のチャンネルのためにそれぞれ使用される。すなわち、アンテナ素子210、220、230、240、250、260、270、280によって受信された、周波数は同じであるが互いに独立している8個の無線信号を、図示しない通信回路309〜316が、それぞれ独立に受け取ってもよい。
【0066】
発明者は、本実施形態によるアンテナシステム1によれば、従来技術によるアンテナシステムよりも優れた伝送特性を得られることを、実験により確認した。このことを、
図3A〜
図3Hおよび
図4A〜
図4Hを参照して説明する。
【0067】
図3A〜
図3Hは、本実施形態による第1のアンテナ10および第2のアンテナ20の間で行われる無線通信における通過特性の実測値の一例を示すグラフである。これらの図のそれぞれには、複数のグラフが含まれており、これらのグラフにはそれぞれ「Gnnmm」という形式の符号が付されている。ここで、mmの部分は入力側ポート番号を2桁の数で示しており、nnの部分は出力側ポート番号を2桁の数で示している。例えば、符号「G0901」が付されたグラフは、入力側ポート番号が1であり、出力側ポート番号が9である場合の通過特性を示すグラフであり、すなわちS
9,1パラメータを示すグラフである。
【0068】
なお、
図1Aに示した給電部111、121、131、141、151、161、171、181がそれぞれ接続される通信回路301〜308が、入力側ポート番号1〜8にそれぞれ対応している。また、
図1Aに示した給電部211、221、231、241、251、261、271、281がそれぞれ接続される通信回路309〜316が、出力側ポート番号9〜16にそれぞれ対応している。
【0069】
図3Aは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第1ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Aのグラフは、第1のグラフG0901、第2のグラフG1001、第3のグラフG1101、第5のグラフG1301および第6のグラフG1401を含んでいる。なお、第4のグラフG1201、第7のグラフG1501および第8のグラフG1601については、
図3Aの枠外に隠れている。
【0070】
図3Bは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第2ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Bのグラフは、第1のグラフG0902、第2のグラフG1002、第3のグラフG1102、第4のグラフG1202、第5のグラフG1302および第7のグラフG1502を含んでいる。なお、第6のグラフG1402および第8のグラフG1602については、
図3Bの枠外に隠れている。
【0071】
図3Cは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第3ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Cのグラフは、第1のグラフG0903、第2のグラフG1003、第3のグラフG1103、第4のグラフG1203、第7のグラフG1503および第8のグラフG1603を含んでいる。なお、第5のグラフG1303および第6のグラフG1403については、
図3Cの下辺より下に隠れている。
【0072】
図3Dは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第4ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Dのグラフは、第1のグラフG0904、第2のグラフG1004、第3のグラフG1104、第4のグラフG1204、第7のグラフG1504および第8のグラフG1604を含んでいる。なお、第5のグラフG1304および第6のグラフG1404については、
図3Dの下辺より下に隠れている。
【0073】
図3Eは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第5ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Eのグラフは、第1のグラフG0905、第2のグラフG1005、第3のグラフG1105、第4のグラフG1205、第5のグラフG1305、第6のグラフG1405、第7のグラフG1505および第8のグラフG1605を含んでいる。
【0074】
図3Fは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第6ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Fのグラフは、第1のグラフG0906、第2のグラフG1006、第3のグラフG1106、第4のグラフG1206、第5のグラフG1306、第6のグラフG1406、第7のグラフG1506および第8のグラフG1606を含んでいる。
【0075】
図3Gは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第7ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Gのグラフは、第1のグラフG0907、第2のグラフG1007、第3のグラフG1107、第4のグラフG1207、第5のグラフG1307、第6のグラフG1407、第7のグラフG1507および第8のグラフG1607を含んでいる。
【0076】
図3Hは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第8ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図3Hのグラフは、第1のグラフG0908、第2のグラフG1008、第3のグラフG1108、第4のグラフG1208、第5のグラフG1308、第6のグラフG1408、第7のグラフG1508および第8のグラフG1608を含んでいる。
【0077】
図3A〜
図3Hに示したいずれの場合も、第1のアンテナ10に含まれる送信側アンテナ素子と、第2のアンテナ20に含まれる受信側アンテナ素子との間で、ループ半径が同じであり、かつ、給電点の方向が同じである場合に、通過特性が最も有利となる。具体的には、
図3Aでは、第1ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子110)および第9ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子210)の組み合わせ(第1のグラフG0901)が最も有利である。
図3Bでは、第2ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子120)および第10ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子220)の組み合わせ(第2のグラフG1002)が最も有利である。
図3Cでは、第3ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子130)および第11ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子230)の組み合わせ(第3のグラフG1103)が最も有利である。
図3Dでは、第4ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子140)および第12ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子240)の組み合わせ(第4のグラフG1204)が最も有利である。
図3Eでは、第5ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子150)および第13ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子250)の組み合わせ(第5のグラフG1305)が最も有利である。
図3Fでは、第6ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子160)および第14ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子260)の組み合わせ(第6のグラフG1406)が最も有利である。
図3Gでは、第7ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子170)および第15ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子270)の組み合わせ(第7のグラフG1507)が最も有利である。
図3Hでは、第8ポート(第1のアンテナ10のアンテナ素子180)および第16ポート(第2のアンテナ20のアンテナ素子280)の組み合わせ(第8のグラフG1608)が最も有利である。
【0078】
さらに、
図3A〜
図3Hのそれぞれにおいて、上記の最も有利な組み合わせにおける通過特性と、最も有利な組み合わせの次に有利な組み合わせにおける通過特性と差が最も小さくなるのは、
図3Fにおいて周波数が5.21GHzである場合であり、このときの通過特性の差ΔS1は6.8dBである。言い換えれば、本実施形態によるアンテナシステム1では、6.8dB以上の通過特性の差ΔS1が得られる。
【0079】
図4A〜
図4Hは、本実施形態によるアンテナシステム1との比較対象となる関連技術によるアンテナシステムに含まれる2つのアンテナの間で行われる無線通信における通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
【0080】
この比較対象となるアンテナシステムは、本実施形態によるアンテナシステム1に、以下の変更を加えることで得られる。すなわち、全ての抵抗素子1i3(2i3)を取り除き、取り除かれた抵抗素子1i3の両端に接続されていた導体1i2(2i2)を導通する。
図4A〜
図4Hに係るその他の測定条件は、
図3A〜
図3Hに係る測定条件と同じである。
【0081】
図4Aは、関連技術によるアンテナシステム1の、第1ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Aのグラフは、第1のグラフG0901、第2のグラフG1001、第3のグラフG1101、第4のグラフG1201、第5のグラフG1301、第6のグラフG1401、第7のグラフG1501および第8のグラフG1601を含んでいる。
【0082】
図4Bは、関連技術によるアンテナシステム1の、第2ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Bのグラフは、第1のグラフG0902、第2のグラフG1002、第3のグラフG1102、第4のグラフG1202、第5のグラフG1302、第6のグラフG1402、第7のグラフG1502および第8のグラフG1602を含んでいる。
【0083】
図4Cは、関連技術によるアンテナシステム1の、第3ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Cのグラフは、第1のグラフG0903、第2のグラフG1003、第3のグラフG1103、第4のグラフG1203、第6のグラフG1403、第7のグラフG1503および第8のグラフG1603を含んでいる。なお、第5のグラフG1303については、
図4Cの下辺より下に隠れている。
【0084】
図4Dは、関連技術によるアンテナシステム1の、第4ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Dのグラフは、第1のグラフG0904、第2のグラフG1004、第3のグラフG1104、第4のグラフG1204、第5のグラフG1304、第6のグラフG1404、第7のグラフG1504および第8のグラフG1604を含んでいる。
【0085】
図4Eは、関連技術によるアンテナシステム1の、第5ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Eのグラフは、第1のグラフG0905、第2のグラフG1005、第3のグラフG1105、第4のグラフG1205、第5のグラフG1305、第6のグラフG1405、第7のグラフG1505および第8のグラフG1605を含んでいる。
【0086】
図4Fは、関連技術によるアンテナシステム1の、第6ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Fのグラフは、第1のグラフG0906、第2のグラフG1006、第3のグラフG1106、第4のグラフG1206、第5のグラフG1306、第6のグラフG1406、第7のグラフG1506および第8のグラフG1606を含んでいる。
【0087】
図4Gは、関連技術によるアンテナシステム1の、第7ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Gのグラフは、第1のグラフG0907、第2のグラフG1007、第3のグラフG1107、第4のグラフG1207、第5のグラフG1307、第6のグラフG1407、第7のグラフG1507および第8のグラフG1607を含んでいる。
【0088】
図4Hは、関連技術によるアンテナシステム1の、第8ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図4Hのグラフは、第1のグラフG0908、第2のグラフG1008、第3のグラフG1108、第4のグラフG1208、第5のグラフG1308、第6のグラフG1408、第7のグラフG1508および第8のグラフG1608を含んでいる。
【0089】
ここで、
図4A〜
図4Hのそれぞれにおいて、送信側アンテナ素子および受信側アンテナ素子の全ての組み合わせの中で、通過特性が最も有利な組み合わせにおける通過特性と、その次に有利な通過特性とを求め、これらの差が
図4A〜
図4Hの中で最も小さくなる条件を求める。この条件を
図3A〜
図3Hの場合と同様に求めると、それは
図4Fにおいて周波数が5.31GHzである場合であり、このときの通過特性の差ΔS2は、3.5dBである。言い換えれば、関連技術によるアンテナシステムでは、3.5dB以上の通過特性が得られる。
【0090】
前述のように、本実施形態によるアンテナシステム1では6.8dB以上の通過特性の差ΔS1が得られる。したがって、本実施形態によるアンテナシステム1によれば、関連技術によるアンテナシステムの場合と比較して、通過特性の差がΔS1−ΔS2=3.3dB改善した。このことは、本実施形態によるアンテナシステム1およびこれに用いるアンテナ10、20によれば、周波数あたりの伝送レートがそれだけ向上する、という優れた作用効果を奏することを意味する。
【0091】
(パラボロイドを用いた変形例)
図5を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
図5は、一実施形態によるアンテナシステムの1A一構成例を示す図である。
【0092】
図5に示したアンテナシステム1Aの構成要素について説明する。アンテナシステム1Aは、第1のアンテナ10と、第2のアンテナ20と、第1のパラボロイド51と、第2のパラボロイド52とを備える。
【0093】
第1のアンテナ10および第2のアンテナ20の構成は、
図1A、
図2B、
図2Dなどに示した構成と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0094】
第1のパラボロイド51および第2のパラボロイド52のそれぞれは、放物面状の反射面を有し、その焦点の位置から放射状に照射される電磁波を、その回転対称軸に平行な方向に伝搬する平面波に変換することができる。第1のパラボロイド51および第2のパラボロイド52のそれぞれにおいて、回転対称軸は焦点を通る。
【0095】
図5に示したアンテナシステム1Aの構成要素の位置関係について説明する。第1のパラボロイド51および第2のパラボロイド52は、互いの回転対称軸が平行となるように対向しており、好ましくは互いの回転対称軸を共有するように対向している。第1のアンテナ10は、第1のパラボロイド51の焦点の位置に、第1のパラボロイド51の反射面に向けて電磁波を照射するように配置されている。
図5では、第1のアンテナ10が電磁波を照射する方向を、第1のパラボロイド51の反射面に向かい、第1のパラボロイド51の回転対称軸を通るZ方向の矢印として示している。同様に、第2のアンテナ20は、第2のパラボロイド52の焦点の位置に、第2のパラボロイド52の反射面に向けて電磁波を照射するように配置されている。
図5では、第2のアンテナ20が電磁波を照射する方向を、第2のパラボロイド52の反射面に向かい、第2のパラボロイド52の回転対称軸を通るZ’方向の矢印として示している。ここで、Z方向およびZ’方向が互いに逆であることに注目されたい。言い換えれば、
図5の構成例によれば、
図1Aなどに示した構成例とは異なり、第1のアンテナ10および第2のアンテナ20が、それぞれの照射方向が互いから離れる方向を向くように配置されていることに注目されたい。
【0096】
図5に示したアンテナシステム1Aの動作について説明する。第1のアンテナ10から照射される電磁波は第1のパラボロイド51の反射面で反射して平面波となり、この平面波は第2のパラボロイド52の反射面で反射してその焦点の位置に配置された第2のアンテナ20によって受信される。こうすることで、
図5の構成例によれば、
図1Aの場合と比較して、伝搬距離が大幅に向上する。
【0097】
なお、第1のパラボロイド51は、第1のアンテナ10に組み合わされて使用されるので、第1のアンテナ10の一部として扱ってもよい。言い換えれば、第1のパラボロイド51は、第1のアンテナ10に含まれてもよい。同様に、第2のパラボロイド52は、第2のアンテナ20に組み合わされて使用されるので、第2のアンテナ20の一部として扱ってもよい。言い換えれば、第2のパラボロイド52は、第2のアンテナ20に含まれてもよい。
【0098】
(第2の実施形態)
図6を参照して、一実施形態によるアンテナの一構成例について説明する。
図6は、一実施形態によるアンテナ10(20)の一構成例を示す図である。
【0099】
図6に示した第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)の構成について説明する。第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)は、
図2Aに示した第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)に以下の変更を加えることで得られる。すなわち、抵抗素子1i3の一部を取り除き、取り除かれた抵抗素子1i3(2i3)に接続されていた導体1i2(2i2)を互いに導通させる。
図6の例では、それぞれのアンテナ素子1i0(2i0)において、給電部1i1(2i1)に隣接する抵抗素子1i3(2i3)を選択的に残し、それら以外の抵抗素子1i3(2i3)を取り除き、対応する導体1i2(2i2)を導通させた。言い換えれば、本実施形態では、円形ループアンテナにおける、以下の式3で一般化される位置にだけ、抵抗素子1i3(2i3)を設けた。
A=±π/2n …(式3)
ここで、Aは、節の位置を、円形ループアンテナの中心から給電部に向かう直線と、中心から節に向かう直線との間の角度として、ラジアンで表す。nは、アンテナ素子の周囲長の、入力信号の波長に対する倍数を表す。πは、円周率を表す。ただし、この選択はあくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。
【0100】
図6に示した第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)にも、
図2Aの場合と同様に、円形ループアンテナの中心を通る中心軸に対してそれぞれのアンテナ素子1i0(2i0)を回転して給電部1i1(2i1)の位置を調節する変更を加える。その結果、
図2Bおよび
図2Dと同様の位置に給電部1i1(2i1)が配置された第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)が得られる。
【0101】
発明者は、実験により、本実施形態による第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)でも、
図3A〜
図3Hの場合と同様の特性が得られることを確認した。なお、本実施形態による第1のアンテナ10(第2のアンテナ20)との比較対象は、
図3A〜
図3Hの場合と同様に、アンテナ素子1i0(2i0)のそれぞれについて全ての抵抗素子1i3(2i3)を取り除いて全ての導体1i2(2i2)を導通した構成のアンテナである。この比較対象の特性は
図4A〜
図4Hに示したとおりであるので、ここではそのさらなる詳細な説明を省略する。
【0102】
図7Aは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第1ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Aのグラフは、第1のグラフG0901、第2のグラフG1001、第3のグラフG1101、第4のグラフG1201、第5のグラフG1301、第6のグラフG1401および第7のグラフG1501を含んでいる。なお、第8のグラフG1601については、
図7Aの下辺より下に隠れている。
【0103】
図7Bは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第2ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Bのグラフは、第1のグラフG0902、第2のグラフG1002、第3のグラフG1102、第4のグラフG1202、第5のグラフG1302、第6のグラフG1402および第7のグラフG1502を含んでいる。なお、第8のグラフG1602については、
図7Bの下辺より下に隠れている。
【0104】
図7Cは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第3ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Cのグラフは、第1のグラフG0903、第2のグラフG1003、第3のグラフG1103、第4のグラフG1203、第6のグラフG1403、第7のグラフG1503および第8のグラフG1603を含んでいる。なお、第5のグラフG1303については、
図7Cの下辺より下に隠れている。
【0105】
図7Dは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第4ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Dのグラフは、第1のグラフG0904、第2のグラフG1004、第3のグラフG1104、第4のグラフG1204、第5のグラフG1304、第7のグラフG1504および第8のグラフG1604を含んでいる。なお、第6のグラフG1404については、
図7Dの下辺より下に隠れている。
【0106】
図7Eは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第5ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Eのグラフは、第1のグラフG0905、第2のグラフG1005、第3のグラフG1105、第4のグラフG1205、第5のグラフG1305、第6のグラフG1405、第7のグラフG1505および第8のグラフG1605を含んでいる。
【0107】
図7Fは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第6ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Fのグラフは、第1のグラフG0906、第2のグラフG1006、第3のグラフG1106、第4のグラフG1206、第5のグラフG1306、第6のグラフG1406、第7のグラフG1506および第8のグラフG1606を含んでいる。
【0108】
図7Gは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第7ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Gのグラフは、第1のグラフG0907、第2のグラフG1007、第3のグラフG1107、第4のグラフG1207、第5のグラフG1307、第6のグラフG1407、第7のグラフG1507および第8のグラフG1607を含んでいる。
【0109】
図7Hは、一実施形態によるアンテナシステム1の、第8ポートと、第9ポート〜第16ポートとの間の通過特性の実測値の一例を示すグラフである。
図7Hのグラフは、第1のグラフG0908、第2のグラフG1008、第3のグラフG1108、第4のグラフG1208、第5のグラフG1308、第6のグラフG1408、第7のグラフG1508および第8のグラフG1608を含んでいる。
【0110】
ここで、
図7A〜
図7Hのそれぞれにおいて、送信側アンテナ素子および受信側アンテナ素子の全ての組み合わせの中で、通過特性が最も有利な組み合わせにおける通過特性と、その次に有利な通過特性とを求め、これらの差が
図7A〜
図7Hの中で最も小さくなる条件を求める。この条件を
図3A〜
図3Hの場合と同様に求めると、それは
図7Fにおいて周波数が5.21GHzである場合であり、このときの通過特性の差ΔS3は9.67dBである。言い換えれば、本実施形態によるアンテナシステム1では、9.67dB以上の通過特性が得られる。
【0111】
図4A〜
図4Hを参照して説明したように、本実施形態の比較対象となる関連技術によるアンテナシステム1では3.5dB以上の通過特性の差ΔS2が得られる。したがって、本実施形態によるアンテナシステム1によれば、関連技術によるアンテナシステムの場合と比較して、通過特性の差がΔS3−ΔS2=6.17dB改善した。このことは、本実施形態によるアンテナシステム1およびこれに用いるアンテナ10、20によれば、周波数あたりの伝送レートがそれだけ向上する、という優れた作用効果を奏することを意味する。
【0112】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。