(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-72624(P2021-72624A)
(43)【公開日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】圧電セラミック超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20210409BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20210409BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
H04R1/00 332
H04R17/00 330Z
G01S7/521 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-180422(P2020-180422)
(22)【出願日】2020年10月28日
(31)【優先権主張番号】19465584
(32)【優先日】2019年10月29日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ドゥルフ
【テーマコード(参考)】
5D019
5J083
【Fターム(参考)】
5D019AA17
5D019AA18
5D019BB02
5D019BB09
5D019FF01
5D019GG09
5J083AD04
5J083AE06
5J083AF01
5J083CA04
5J083CA21
5J083CB02
5J083CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】性能を大きく損なうことなく広い温度範囲において動作可能であり、かつPCBに発振器を永続的に支持する、車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサ10であって、超音波を生成する円盤形の圧電セラミック発振器12、圧電セラミック発振器に電力を供給するプリント回路基板14及び圧電セラミック発振器とプリント回路基板との間に配置され、圧電セラミック発振器を支持する複合エラストマ要素16を有する。複合エラストマ要素には、第1エラストマ配合要素20及び第2エラストマ配合要素22が含まれる。第1エラストマ配合要素は、第1温度範囲において第1温度依存粘弾性を有する。第2エラストマ配合要素は、第1温度範囲とは異なる第2温度範囲において、第2温度依存粘弾性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を生成する円盤形の圧電セラミック発振器(12)と、
円盤形の前記圧電セラミック発振器(12)に電力を供給するプリント回路基板(14)と、
円盤形の前記圧電セラミック発振器(12)と前記プリント回路基板(14)との間に配置された、前記プリント回路基板(14)に前記圧電セラミック発振器(12)を支持するための複合エラストマ要素(16)と、
を有し、
前記複合エラストマ要素(16)には、第1エラストマ配合要素(20)および第2エラストマ配合要素(22)が含まれ、
前記第1エラストマ配合要素(20)は、第1温度範囲において、第1温度依存粘弾性を有しかつ前記プリント回路基板(14)に前記圧電セラミック発振器(12)を支持し、
前記第2エラストマ配合要素(22)は、前記第1温度範囲とは異なる第2温度範囲において、第2温度依存粘弾性を有しかつ前記プリント回路基板(14)に前記圧電セラミック発振器(12)を支持する、
車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサ(10)。
【請求項2】
前記第1エラストマ配合要素(20)と、前記第2エラストマ配合要素(22)とは、交互に配置されている、請求項1記載の圧電セラミック超音波トランスデューサ(10)。
【請求項3】
前記複合エラストマ要素(16)は、円盤形の本体(23)を有しており、前記第1エラストマ配合要素(20)および前記第2エラストマ配合要素(22)は、直径の異なる共軸の環状の要素である、請求項2記載の圧電セラミック超音波トランスデューサ(10)。
【請求項4】
前記第1温度範囲は、約−40℃〜約+20℃の範囲であり、前記第2温度範囲は、約+20℃〜約+90℃の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項記載の圧電セラミック超音波トランスデューサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサに関する。
【0002】
圧電セラミック超音波トランスデューサは、例えば、空気ばねにおける距離測定にも、車両における距離測定システムにも使用されることが多い。圧電セラミック超音波トランスデューサでは、一般に円盤形の圧電セラミック発振器が使用される。この圧電セラミック発振器は、電場によって励起されると、当業者には公知のように、超音波を生成する機械振動を発生させる。この場合にこれら超音波は、当業者に公知のように距離測定に使用される。
【0003】
しかしながら、(超音波を生成するために)圧電セラミック発振器を発振させると、例えば、この発振器にエネルギを供給するプリント回路基板(PCB:printed circuit board)にも機械振動が伝達されてしまう。(振動する)圧電セラミック発振器と、その周囲、特にPCBとの間の機械的結合を最小化するためには、圧電セラミック発振器からPCBに伝達される振動を減衰および機械的にデカップリングするために、特定の粘弾性を有するエラストマ要素が、圧電セラミック発振器とPCBとの間に取り付けられる。さらに、圧電セラミック発振器とPCBとの間の電気接続は、圧電セラミック発振器とPCBとの間のあらゆる機械振動結合を最小化するために極めて細いワイヤとして実現されることが多い。これらの極めて細いワイヤはまた、一般に、エラストマ要素を通して延在する。
【0004】
しかしながらこれらのエラストマ要素に伴う1つの問題は、機械振動デカップリングの質は、圧電セラミック発振器が動作する温度に大きく依存することである。例えば、温度が極めて低い場合、エラストマ要素は、硬くなり、したがって発振器とPCBとの間の機械的デカップリングが悪化してしまうことがある。その結果として、PCBは振動しはじめ、圧電セラミック超音波トランスデューサの信号対雑音比を基本的に下げてしまうノイズ信号を放出してしまうことがある。さらに、いくつかの極端な場合には、エラストマ要素の硬さが増大することにより、圧電セラミック発振器とPCBとの間の、堅牢かつ永続的なボンディングは、もはや保証されないことがある。
【0005】
したがって本発明の課題は、性能を大きく損なうことなく広い温度範囲において動作可能であり、かつPCBに発振器を永続的に支持する、車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に記載の圧電セラミック超音波トランスデューサによって解決される。別の利点および発展形態は、従属請求項に示されている。
【0007】
本発明の一態様によれば、車両用の圧電セラミック超音波トランスデューサが開示される。この圧電セラミック超音波トランスデューサは、超音波を生成する円盤形の圧電セラミック発振器、円盤形の圧電セラミック発振器に電力を供給するプリント回路基板(PCB:printed circuit board)、および円盤形の圧電セラミック発振器とプリント回路基板との間に配置された、プリント回路基板に圧電セラミック発振器を支持するための複合エラストマ要素(composite elastomeric element)を有する。本発明によれば、複合エラストマ要素には、第1エラストマ配合要素(first elastomeric compound element)および第2エラストマ配合要素(second elastomeric compound element)が含まれ、第1エラストマ配合要素は、第1温度範囲において、第1温度依存粘弾性を有しかつプリント回路基板に圧電セラミック発振器を支持し、第2エラストマ配合要素は、第1温度範囲とは異なる第2温度範囲において第1温度依存粘弾性とは異なる第2温度依存粘弾性を有しかつ第1温度範囲とは異なる第2温度範囲においてプリント回路基板に圧電セラミック発振器を支持する。
【0008】
本発明は、異なる2つの温度依存エラストマ配合要素を使用することにより、2つのエラストマ配合要素の少なくとも1つにより、PCBに圧電セラミック発振器が堅牢かつ永続的に支持されるようにし、またそれぞれの温度範囲にわたって発振器とPCBとの間で十分に良好な機械振動デカップリングが行われるようにするという着想に少なくとも部分的に基づいている。
【0009】
本開示の意味において、「PCBに支持される」という言い回しは、第1温度範囲中は、主に第1エラストマ配合要素により、PCBにおける支持が行われ、第2温度範囲中は、主に第2エラストマ配合要素により、PCBにおける支持が行われることを意味する。
【0010】
したがって、一例を挙げると、低温範囲中、例えば第1エラストマ配合要素は引き続いて十分な粘弾性を有し、これにより、振動する圧電セラミック発振器とPCBとの間の機械振動デカップリングは、主に第1エラストマ配合要素によって保証される。逆に、高温範囲中、例えば,第2エラストマ配合要素はなお十分な粘弾性を有し、これにより、振動する圧電セラミック発振器とPCBとの間の機械振動デカップリングが、主に第2エラストマ配合要素によって保証される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、第1エラストマ配合要素と、第2エラストマ配合要素とは、複合エラストマ要素内で交互に配置されている。したがって高温範囲または低温範囲のどちらかの間、2つのエラストマ配合要素のうち1つによって交互に、発振器とPCBとの間で良好に機械振動デカップリングを行い、また永続しかつ堅牢な、発振器に対する支持も行うことができる。
【0012】
好適な一実施形態において、複合エラストマ要素は、円盤形の本体を有し、(交互に配置されている)第1エラストマ配合要素および第2エラストマ配合要素は、直径の異なる共軸の環状の要素である。この好適な実施形態では、2つのエラストマ配合要素の少なくとも1つにより、円盤形の圧電セラミック発振器に対する環状の支持面が実現される。環状の支持面が実現されることの利点は、圧電セラミック発振器の振動が、環状の支持面間で均等に分散され、したがって2つの温度範囲のいずれについても、発振器の任意の傾きを最小化できることである。
【0013】
例えば、圧電セラミック超音波トランスデューサが低温範囲内で動作されて第1エラストマ配合要素が選択され、これにより、この第1エラストマ配合要素が、低温範囲内で、圧電セラミック発振器を支持するための良好な粘弾性を有する場合、環状の支持面により、発振器の任意の傾きは、低温範囲内で最小化可能である。逆に、圧電セラミック超音波トランスデューサが高温範囲内で動作されて第2エラストマ配合要素が選択され、これにより、この第2エラストマ配合要素が、高温範囲内で、圧電セラミック発振器を支持するための良好な粘弾性を有する場合、環状の支持面により、発振器の任意の傾きは、高温度範囲内で最小化可能である。
【0014】
本発明の別の一実施形態によれば、第1温度範囲は、約−40℃〜約+20℃の範囲であり、第2温度範囲は、約+20℃〜約+90℃の範囲である。この別の実施形態では、第1エラストマ配合要素は、この第1エラストマ配合要素が、第1温度範囲内で、圧電セラミック発振器を主に支持するために第1温度依存の粘弾性を有するように選択され、第2エラストマ配合要素は、この第2エラストマ配合要素が、第2温度範囲内で、圧電セラミック発振器を主に支持するための第2温度依存の粘弾性を有するように選択される。
【0015】
本発明に組み込まれておりかつ明細書の一部を構成する添付の図面により、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態による圧電セラミック超音波トランスデューサの概略図である。
【
図2】
図1の圧電セラミック超音波トランスデューサの線A−Aに沿った概略断面図である。
【
図3】本発明による圧電セラミック超音波トランスデューサの別の一実施形態の概略断面図である。
【0017】
本開示内では、同じ参照符号は、同じ構成要素を示すものとする。
【0018】
図1には、本発明の第1実施形態の圧電セラミック超音波トランスデューサ10の概略断面図が示されている。圧電セラミック超音波トランスデューサ10は、例えば、空気ばねにおける距離測定にも、車両における距離測定システムにも共に使用可能である。
【0019】
圧電セラミック超音波トランスデューサ10には、超音波を生成する円盤形の圧電セラミック発振器12と、圧電セラミック発振器12に電力を供給するプリント回路基板14(PCB:printed circuit board )とが含まれている。圧電セラミック超音波トランスデューサ10にはさらに、PCB14に発振器12を支持するために、発振器12とPCB14と間に配置された複合エラストマ要素16が含まれている。発振器12とPCB14とを電気接続するために、複数の電気接続18が、複合エラストマ要素16内に設けられている。これらの電気接続18は、例えば極めて細いワイヤであってよい。
【0020】
図1に見られるように、複合エラストマ要素16には、2つのエラストマ配合要素が含まれている。第1エラストマ配合要素20は、第2エラストマ配合要素22の隣に配置されている。第1エラストマ配合要素20は、この第1エラストマ配合要素20が、第1温度範囲において、例えば約−40℃〜約+20℃の範囲において、第1温度依存粘弾性を有しかつPCB14に発振器12を主に支持するように選択されている。したがって第1エラストマ配合要素20はまた、「低温エラストマ配合要素」とも称することが可能である。第2エラストマ配合要素22は、この第2エラストマ配合要素22が、第2温度範囲において、例えば約+20℃〜約+90℃の範囲において、第2温度依存粘弾性を有しかつPCB14に発振器12を主に支持するように選択されている。したがって第2エラストマ配合要素22はまた、「高温エラストマ配合要素」とも称することが可能である。このため、低温エラストマ配合要素20は、高温エラストマ配合要素22とは異なる材料または異なる材料組成から作製可能である。
【0021】
図1にさらに見られるように、第1エラストマ配合要素20と、第2エラストマ配合要素22とは、複合エラストマ要素16内で交互に配置されている。したがって複合エラストマ要素16は、低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22の交互の区画を有する。低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22の交互の区画の個数は、当面の応用に適合可能である。また複合エラストマ要素16は、軸線24に沿って軸線方向に延在しかつ軸線24に対して垂直方向の半径方向に延在する円盤形の本体23を有する。したがってまた、当面の応用に依存して、すなわち円盤形の本体23の(円盤形の本体23の軸線方向に測定した)高さも、低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22のそれぞれの区画の(円盤形の本体23の半径方向に沿って測定した)厚さも共に適合させることができる。
【0022】
図2を参照すると、
図1の圧電セラミック超音波トランスデューサ10の、線A−Aに沿った概略断面図が示されている。
【0023】
ここに見られるように、第1エラストマ配合要素20および第2エラストマ配合要素22は共に、(円盤形の本体23の半径方向に、すなわち軸線24に対して垂直な方向に測定した)直径の異なる共軸の環状の要素である。したがって低温エラストマ配合要素20または高温エラストマ配合要素22のどちらかにより、それぞれ低温範囲または高温範囲において、PCB14に発振器12を支持するための環状の支持面が実現される。
【0024】
図3を参照すると、
図1の圧電セラミック超音波トランスデューサ10の、線A−Aに沿った別の一実施形態の概略断面図が示されている。
【0025】
ここに見られるように、
図3による圧電セラミック超音波トランスデューサ10において、低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22は、(
図2に示したような)直径の異なる共軸の環状の要素ではなく、交互の列または柱である。
図3に示したこの実施形態は、交互に配置される低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22の別の一実施例である。当面の応用に依存して、交互に配置される低温エラストマ配合要素20および高温エラストマ配合要素22の別の適切な実施形態も考えられる。
【0026】
本発明による圧電セラミック超音波トランスデューサ10により、低温エラストマ配合要素および高温エラストマ配合要素を備えた複合エラストマ要素を有することによって、低温度範囲および高温度範囲にわたり、信頼性の高い性能が保証される。さらに、低温エラストマ配合要素および高温エラストマ配合要素は、低温度範囲または高温度範囲のどちらかのうちで、それぞれの温度依存の粘弾性が最善であるように選択されているため、PCB14に発振器12を永続的かつ高い信頼性で支持することも、発振器12とPCB14との間の良好な機械振動デカップリングも共に保証される。
【0027】
図1〜3に関連して、異なる2つの(すなわち低温および高温の)エラストマ配合要素だけが示されているが、複合エラストマ要素16が、3つ以上の異なるエラストマ配合要素を含み得ることが考えられる。例えば、図示しない別の実施形態では、複合エラストマ要素16は、当面の応用に適合されたそれぞれ異なる温度依存性の粘弾性を有する3つ以上の異なるエラストマ配合要素を含んでいてよい。
【外国語明細書】