【課題】同期電動機の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とに切り替える制御装置において、矩形波駆動制御の場合でもd軸電流及びq軸電流を精度良く制御可能な構成を得る。
【解決手段】モータ2の駆動を制御する制御装置1は、電流指令生成部10と、電圧指令生成部と、PWM信号生成部と、矩形波信号生成部と、制御切換部と、主回路50と、を備える。電流指令生成部10は、電圧利用率が、PWM駆動による最小電流制御の場合と矩形波駆動制御の場合とでモータ2に流れる電流が等しいときの所定の電圧利用率を越えないように、電流指令を生成する。前記制御切換部は、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率よりも小さい場合に、前記PWM信号生成部に電圧指令を入力する一方、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率である場合に、前記矩形波信号生成部に電圧指令を入力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PWM駆動制御では、スイッチング指令である出力電圧の振幅及び位相を調整可能である。そのため、同期電動機を電流制御する場合、d軸電流及びq軸電流を個別に制御することができる。
【0007】
一方、矩形波駆動制御では、矩形波電圧である出力電圧の振幅が一定であり、位相のみを調整可能である。そのため、同期電動機を電流制御する場合、同期電動機に流れるd軸電流及びq軸電流を個別に制御することができない。よって、d軸電流及びq軸電流の指令値が、実際のd軸電流及びq軸電流と乖離する場合がある。この場合、矩形波駆動制御によって、同期電動機のトルクを精度良く制御することができない。
【0008】
なお、矩形波駆動制御の場合には、一般的に、上述の特許文献1に開示されているように、トルク指令とトルクのフィードバック値とを比較して求めた電圧位相によって、矩形波電圧の位相を制御する。この場合、d軸電流及びq軸電流は、制御されない。
【0009】
本発明の目的は、同期電動機の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とに切り替える制御装置において、矩形波駆動制御の場合でもd軸電流及びq軸電流を精度良く制御可能な構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る同期電動機の制御装置は、同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御装置である。この制御装置は、トルク指令から電流指令を生成する電流指令生成部と、前記電流指令に基づいて電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記電圧指令に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記電圧指令に基づいて矩形波信号を生成する矩形波信号生成部と、電圧利用率に応じて、前記PWM信号生成部及び前記矩形波信号生成部の一方に前記電圧指令を入力する制御切換部と、前記PWM信号生成部または前記矩形波信号生成部で生成された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御部と、を備える。前記電流指令生成部は、電圧利用率が、前記PWM信号によって前記同期電動機を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によって前記同期電動機を駆動する場合とで前記同期電動機に流れる電流が等しいときの所定の電圧利用率を越えないように、前記電流指令を生成し、前記制御切換部は、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率よりも小さい場合に、前記PWM信号生成部に前記電圧指令を入力する一方、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率である場合に、前記矩形波信号生成部に前記電圧指令を入力する(第1の構成)。
【0011】
この構成により、PWM信号を生成するPWM信号生成部と矩形波信号を生成する矩形波信号生成部とを備える制御装置において、電圧利用率が、前記PWM信号によって同期電動機を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によって前記同期電動機を駆動する場合とで前記同期電動機に流れる電流が等しいときの所定の電圧利用率を越えないように電流指令が生成され、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率よりも小さい場合には、PWM駆動制御を行う一方、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率である場合には、矩形波駆動制御を行うことができる。これにより、一つのコントローラで生成された電流指令を用いてPWM駆動制御と矩形波駆動制御との切り替えを行うことができる。よって、制御装置の構成を簡略化することができる。
【0012】
また、電圧利用率が前記所定の電圧利用率である場合には、PWM駆動制御における最小電流と矩形波駆動制御における電流とは等しい。そのため、電圧利用率が前記所定の電圧利用率になった場合に、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替えることにより、制御を切り替える際の電流の変化を抑制できる。これにより、制御を切り替える際の電流波形の乱れの発生を防止できる。
【0013】
さらに、上述のように、電圧利用率が前記所定の電圧利用率になった場合に、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替えることにより、矩形波駆動制御において、d軸電流及びq軸電流の両方を精度良く制御することができる。
【0014】
前記第1の構成において、前記電流指令は、d軸電流指令を含む。前記電流指令生成部は、電圧利用率が前記所定の電圧利用率よりも大きい場合に、電圧利用率が前記所定の電圧利用率になるように、前記d軸電流指令を補正するためのd軸電流指令補正値を求める弱め界磁制御部を有する(第2の構成)。
【0015】
これにより、矩形波駆動制御の場合でも、d軸電流を制御することにより、電流を精度良く制御することができる。
【0016】
前記第1または第2の構成において、前記PWM信号によって前記同期電動機を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によって前記同期電動機を駆動する場合とで前記同期電動機に等しい電流が流れるときの電圧利用率は、0.78である(第3の構成)。
【0017】
これにより、矩形波駆動制御の電圧利用率である0.78に合わせて、同期電動機の駆動制御としてPWM駆動制御または矩形波駆動制御を行うことができるため、PWM駆動制御及び矩形波駆動制御において電流を精度良く制御できる。しかも、それぞれの制御に専用の制御部が不要になるため、制御装置の構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態に係る同期電動機の制御装置によれば、該制御装置は、電流指令生成部、電圧指令生成部、PWM信号生成部、矩形波信号生成部、制御切換部及び駆動制御部を有する。前記電流指令生成部は、電圧利用率が、PWM信号によって同期電動機を最小電流で駆動する場合と矩形波信号によって前記同期電動機を駆動する場合とで前記同期電動機に流れる電流が等しいときの所定の電圧利用率を越えないように、電流指令を生成する。前記制御切換部は、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率よりも小さい場合に、前記PWM信号生成部に電圧指令を入力する一方、前記電圧利用率が前記所定の電圧利用率である場合に、前記矩形波信号生成部に電圧指令を入力する。これにより、電流指令によってPWM駆動制御及び矩形波駆動制御を行うことができるため、制御装置の簡略化を図れる。また、PWM駆動制御及び矩形波駆動制御において、電流を精度良く制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置1の概略構成を示すブロック図である。制御装置1は、入力指令としてのトルク指令に基づいてq軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refを生成した後、電流制御部20でq軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refに基づいてPWM信号または矩形波信号を生成する。また、制御装置1は、電流制御部20で生成されたPWM信号または矩形波信号を用いて、主回路50によってモータ2(同期電動機)を駆動制御する。なお、本実施形態では、モータ2は、回転子及び固定子を有する三相交流モータであるが、モータ2はどのような構成を有するモータであってもよい。
【0022】
制御装置1は、電流指令生成部10と、電流制御部20と、主回路50(駆動制御部)と、3相2相変換部60と、電流センサ70と、位置センサ80とを備える。
【0023】
電流センサ70は、主回路50からモータ2に供給される電流のうち、U相及びW相の電流をそれぞれ検出する。検出された電流は、3相2相変換部60に、U相電流フィードバック値Iu_fb及びW相電流フィードバック値Iw_fbとして入力される。
【0024】
位置センサ80は、モータ2の図示しない回転子の回転位置を検出し、該回転位置を回転角度の信号として出力する。位置センサ80から出力された回転角度信号は、電流制御部20に入力される。
【0025】
電流指令生成部10は、トルク指令に基づいて電流指令を生成する。具体的には、電流指令生成部10は、トルク指令T_refに基づいて、q軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refを生成する。また、電流指令生成部10は、トルク指令T_refに基づいてd軸電流指令Id_refを生成する際に、後述の弱め界磁制御部13で生成されたd軸電流指令補正値Id_ref0も考慮して、d軸電流指令Id_refを生成する。
【0026】
詳しくは、電流指令生成部10は、d軸電流指令生成部11と、q軸電流指令生成部12と、弱め界磁制御部13とを備える。
【0027】
d軸電流指令生成部11は、トルク指令T_ref及び後述の弱め界磁制御部13で生成されたd軸電流指令補正値Id_ref0を用いて、d軸電流指令Id_refを生成する。d軸電流指令生成部11は、d軸電流指令変換部11aと、加算部11bとを有する。d軸電流指令変換部11aは、トルク指令T_refをd軸電流において最小電流であるd軸電流指令初期値Id_ref1に変換する。加算部11bは、d軸電流指令初期値Id_ref1に、後述の弱め界磁制御部13で生成されたd軸電流指令補正値Id_ref0を加算することにより、d軸電流指令Id_refを生成する。
【0028】
d軸電流指令生成部11で生成されたd軸電流指令Id_refは、q軸電流指令生成部12、電流制御部20及び弱め界磁制御部13に入力される。
【0029】
q軸電流指令生成部12は、d軸電流指令生成部11で生成されたd軸電流指令Id_refからq軸電流指令Iq_refを生成する。q軸電流指令生成部12で生成されたq軸電流指令Iq_refは、電流制御部20及び弱め界磁制御部13に入力される。
【0030】
弱め界磁制御部13は、d軸電流指令生成部11で生成されたd軸電流指令Id_ref、q軸電流指令生成部12で生成されたq軸電流指令Iq_ref、及び、主回路50の入力直流電圧に基づいて、電圧利用率を算出し、該電圧利用率が電圧利用率指令値よりも大きい場合に、それらの差分を用いてPI演算した結果をd軸電流指令補正値Id_ref0として出力する。
【0031】
弱め界磁制御部13は、電圧変換部15と、線間電圧実効値算出部16と、電圧利用率算出部17と、電圧利用率比較部18と、PI演算部19と、判定部30とを有する。
【0032】
電圧変換部15は、q軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refを、q軸電圧Vq及びd軸電圧Vdに変換する。具体的には、電圧変換部15は、以下の(1)式及び(2)式によって、q軸電圧Vq及びd軸電圧Vdを求める。
Vd=R・Id−ω・Lq・Iq (1)
Vq=R・Iq+ω・(φm+Ld・Id) (2)
【0033】
ここで、Rはモータ2の巻線抵抗であり、ωはモータ2の回転角速度であり、Ldはd軸インダクタンスであり、Lqはq軸インダクタンスであり、φmはモータ2の鎖交磁束の最大値である。
【0034】
線間電圧実効値算出部16は、電圧変換部15で求めたq軸電圧Vq及びd軸電圧Vdを用いて、線間電圧実効値を求める。具体的には、線間電圧実効値算出部16は、以下の(3)式によって、線間電圧実効値を求める。
線間電圧実効値=√(Vd^2+Vq^2) (3)
【0035】
電圧利用率算出部17は、線間電圧実効値算出部16で求めた線間電圧実効値及び主回路50の入力直流電圧から、電圧利用率を算出する。具体的には、電圧利用率算出部17は、以下の(4)式によって、電圧利用率を求める。
電圧利用率=線間電圧実効値/入力直流電圧 (4)
【0036】
電圧利用率比較部18は、電圧利用率算出部17で算出された電圧利用率を、電圧利用率指令値と比較して、その比較結果を出力する。具体的には、電圧利用率比較部18は、前記電圧利用率指令値に対する前記電圧利用率の差分を出力する。
【0037】
前記電圧利用率指令値は、予め設定されていてもよいし、入力によって変更可能であってもよい。本実施形態では、前記電圧利用率指令値は、矩形波信号の場合の電圧利用率である0.78に設定される。電圧利用率が0.78の場合、PWM駆動による最小電流制御の際にモータ2に流れる電流と矩形波駆動制御の際にモータ2に流れる電流とは等しい。すなわち、前記電圧利用率指令値は、PWM信号によってモータ2を最小電流で駆動する場合と矩形波信号によってモータ2を駆動する場合とでモータ2に流れる電流が等しいときの電圧利用率に設定される。前記電圧利用率指令値が、所定の電圧利用率に対応する。
【0038】
判定部30は、電圧利用率比較部18で求めた差分が負の場合に、電圧利用率比較部18で求めた前記差分をそのままPI演算部19に出力する。一方、判定部30は、電圧利用率比較部18で求めた差分がゼロ以上の場合には、電圧利用率比較部18で求めた前記差分の値に関係なくPI演算部19にゼロを出力する。
【0039】
すなわち、判定部30は、電圧利用率算出部17で算出された電圧利用率が前記電圧利用率指令値よりも大きい場合にのみ、電圧利用率比較部18で求めた前記差分をPI演算部19に出力する。
【0040】
PI演算部19は、電圧利用率比較部18の出力結果をPI演算して、d軸電流指令補正値Id_ref0を求める。このd軸電流指令補正値Id_ref0は、電圧利用率が前記電圧利用率指令値を越えないように、d軸電流指令Id_refを補正する値である。上述のように、判定部30は、電圧利用率算出部17で算出された電圧利用率が前記電圧利用率指令値よりも大きい場合にのみ、電圧利用率比較部18で求めた前記差分をPI演算部19に出力する。よって、PI演算部19は、電圧利用率算出部17で算出された電圧利用率が前記電圧利用率指令値よりも大きい場合にのみ、d軸電流指令補正値Id_ref0を出力する。PI演算部19で得られたd軸電流指令補正値Id_ref0は、d軸電流指令生成部11の加算部11bに入力される。
【0041】
以上のような電流指令生成部10の構成により、トルク指令及び電圧利用率を用いて、q軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refを生成することができる。電流指令生成部10は、弱め界磁制御部13によって、電圧利用率が電圧利用率指令値を越えないようなq軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refを生成することができる。
【0042】
電流指令生成部10で生成されたq軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refは、電流制御部20に入力される。
【0043】
電流制御部20は、入力されたq軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refに基づいて、電圧利用率に応じてPWM信号または矩形波信号を生成し、該生成した信号を主回路50に出力する。電流制御部20の詳しい構成を
図2に示す。
【0044】
電流制御部20は、電圧指令生成部21と、制御切換部22と、PWM信号生成部23と、矩形波信号生成部24とを有する。
【0045】
電圧指令生成部21は、電流指令生成部10で生成されたq軸電流指令Iq_ref及びモータ2の入力電流のフィードバック値であるq軸電流フィードバック値Iq_fbを用いて、q軸電圧指令Vq_refを生成する。また、電圧指令生成部21は、電流指令生成部10で生成されたd軸電流指令Id_ref及びモータ2の入力電流のフィードバック値であるd軸電流フィードバック値Id_fbを用いて、d軸電圧指令Vd_refを生成する。
【0046】
電圧指令生成部21は、q軸電流フィードバック部21aと、q軸電流PI演算部21bと、d軸電流フィードバック部21cと、d軸電流PI演算部21dとを有する。
【0047】
q軸電流フィードバック部21aは、q軸電流指令Iq_refからq軸電流フィードバック値Iq_fbを減算して、q軸電流指令修正値を求める。q軸電流PI演算部21bは、前記q軸電流指令修正値をPI演算することにより、q軸電圧指令Vq_refを生成する。
【0048】
d軸電流フィードバック部21cは、d軸電流指令Id_refからd軸電流フィードバック値Id_fbを減算して、d軸電流指令修正値を求める。d軸電流PI演算部21dは、前記d軸電流指令修正値をPI演算することにより、d軸電圧指令Vd_refを生成する。
【0049】
制御切換部22は、電圧利用率に応じて、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御または矩形波駆動制御に切り替える。具体的には、制御切換部22は、電圧利用率が電圧利用率指令値よりも小さい場合には、後述のPWM信号生成部23に、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを入力する一方、電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値である場合には、後述の矩形波信号生成部24に、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを入力する。
【0050】
なお、制御切換部22は、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを用いて、上述の(3)式によって、線間電圧実効値を求めるとともに、該線間電圧実効値と主回路50の入力直流電圧とを用いて、上述の(4)式によって、電圧利用率を求める。制御切換部22は、求めた電圧利用率を用いて、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御または矩形波駆動制御に切り換える。
【0051】
PWM信号生成部23は、入力されたq軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを用いて、主回路50の後述するスイッチング素子に入力するためのPWM信号を生成する。詳しくは、PWM信号生成部23は、2相3相変換部23aと、三角波比較部23bとを有する。
【0052】
2相3相変換部23aは、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを、3相の電圧Vu,Vv,Vwに変換する。2相3相変換部23aは、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを3相の電圧Vu,Vv,Vwに変換する際に、位置センサ80によって検出されたモータ2の回転角度信号を用いる。三角波比較部23bは、3相の電圧Vu,Vv,Vwを三角波信号と比較することにより、PWM信号を生成する。2相3相変換部23a及び三角波比較部23bの処理動作は、従来と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0053】
三角波比較部23bで生成されたPWM信号は、主回路50に入力される。主回路50では、図示しないスイッチング素子が、PWM信号に応じてオンオフ動作を行う。これにより、主回路50からモータ2の3相の各コイルに電流が供給される。
【0054】
矩形波信号生成部24は、入力されたq軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを用いて、主回路50の後述するスイッチング素子に入力するための矩形波信号を生成する。詳しくは、矩形波信号生成部24は、電圧位相生成部24aと、割り込み処理部24bとを有する。
【0055】
電圧位相生成部24aは、q軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refに基づいて、矩形波信号の生成に用いる電圧位相信号を生成する。割り込み処理部24bは、電圧位相生成部24aで生成された電圧位相信号になるような3相の矩形波信号を生成する。割り込み処理部24bは、矩形波信号を生成する際に、位置センサ80によって検出されたモータ2の回転角度信号を用いる。電圧位相生成部24a及び割り込み処理部24bの処理動作は、従来と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0056】
主回路50は、図示しない複数のスイッチング素子を有する。前記複数のスイッチング素子は、電流制御部20で生成されたPWM信号または矩形波信号に応じて、オンオフ動作を行う。これにより、主回路50からモータ2に対して所定の波形を有する電流が供給される。よって、制御装置1によって、モータ2の駆動が制御される。
【0057】
3相2相変換部60は、電流センサ70によって検出されたU相電流フィードバック値Iu_fb及びW相電流フィードバック値Iw_fbを、q軸電流フィードバック値Iq_fb及びd軸電流フィードバック値Id_fbに変換する。
【0058】
なお、主回路50及び3相2相変換部60の構成も、従来の構成と同様であるため、主回路50及び3相2相変換部60についての詳しい説明は省略する。
【0059】
以上より、本実施形態では、モータ2の駆動を制御する制御装置1は、トルク指令T_refから電流指令Iq_ref,Id_refを生成する電流指令生成部10と、電流指令Iq_ref,Id_refから電圧指令Vq_ref,Vd_refを生成する電圧指令生成部21と、電圧指令Vq_ref,Vd_refに基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成部23と、電圧指令Vq_ref,Vd_refに基づいて矩形波信号を生成する矩形波信号生成部24と、電圧利用率に応じて、PWM信号生成部23及び矩形波信号生成部24の一方に電圧指令Vq_ref,Vd_refを入力する制御切換部22と、PWM信号生成部23または矩形波信号生成部24で生成された信号を用いて、モータ2の駆動を制御する主回路50と、を備える。電流指令生成部10は、電圧利用率が、前記PWM信号によってモータ2を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によってモータ2を駆動する場合とでモータ2に流れる電流が等しいときの所定の電圧利用率(本実施形態では、電圧利用率指令値)を越えないように、電流指令Iq_ref,Id_refを生成する。制御切換部22は、電圧利用率が電圧利用率指令値よりも小さい場合に、前記PWM信号生成部に電圧指令Vq_ref,Vd_refを入力する一方、前記電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値になった場合に、前記矩形波信号生成部に電圧指令Vq_ref,Vd_refを入力する。
【0060】
この構成により、PWM信号を生成するPWM信号生成部23と矩形波信号を生成する矩形波信号生成部24とを備える制御装置1において、電圧利用率が、前記PWM信号によってモータ2を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によってモータ2を駆動する場合とでモータ2に流れる電流が等しいときの電圧利用率指令値を越えないように電流指令Iq_ref,Id_refが生成され、前記電圧利用率が電圧利用率指令値よりも小さい場合には、PWM駆動制御を行う一方、前記電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値になった場合には、矩形波駆動制御を行うことができる。これにより、一つのコントローラで生成された電流指令Iq_ref,Id_refを用いてPWM駆動制御と矩形駆動波制御との切り替えを行うことができる。よって、制御装置1の構成を簡略化することができる。
【0061】
また、電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値である場合には、PWM駆動制御における最小電流と矩形波駆動制御における電流とは等しい。そのため、電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値の場合に、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替えることにより、制御を切り替える際の電流の変化を抑制できる。これにより、制御を切り替える際の電流波形の乱れの発生を防止できる。
【0062】
さらに、上述のように、電圧利用率が電圧利用率指令値と同じ値である場合に、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替えることにより、矩形波駆動制御において、d軸電流及びq軸電流の両方を精度良く制御することができる。
【0063】
また、本実施形態では、電流指令生成部10は、電圧利用率が、前記所定の電圧利用率よりも大きい場合に、電圧利用率が前記所定の電圧利用率になるように、前記d軸電流指令を補正するためのd軸電流指令補正値を求める弱め界磁制御部13を有する。
【0064】
これにより、矩形波駆動制御の場合でも、d軸電流を制御することにより、電流を精度良く制御することができる。
【0065】
前記PWM信号によってモータ2を最小電流で駆動する場合と前記矩形波信号によってモータ2を駆動する場合とでモータ2に等しい電流が流れるときの電圧利用率は、0.78である。
【0066】
これにより、矩形波駆動制御の電圧利用率である0.78に合わせて、モータ2の駆動制御としてPWM駆動制御または矩形波駆動制御を行うことができるため、PWM駆動制御及び矩形波駆動制御において電流を精度良く制御できる。しかも、それぞれの制御に専用の制御部が不要になるため、制御装置1の構成を簡略化できる。
【0067】
(モータの駆動制御の切り換え)
次に、上述のような構成を有する制御装置1において、モータ2の駆動制御の選択について
図3を用いて説明する。
図3は、制御装置1によるモータ2の駆動制御の選択を示すフローである。
【0068】
図3に示すフローがスタートすると(START)、まずステップS1において、制御装置1の制御切換部22は、電圧利用率を算出する。電圧利用率は、q軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refから求められるq軸電圧Vq及びd軸電圧Vdと、主回路50の入力直流電圧とに基づいて、上述の式(3)及び式(4)を用いて求められる。
【0069】
次に、ステップS2で、制御切換部22は、求めた電圧利用率が0.78かどうかを判定する。制御切換部22は、電圧利用率が0.78の場合(YESの場合)には、モータ2を矩形波駆動制御で駆動制御する。すなわち、制御切換部22は、矩形波信号生成部24にq軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを出力する。
【0070】
一方、制御切換部22は、電圧利用率が0.78よりも小さい場合(NOの場合)には、モータ2をPWM駆動制御で駆動制御する。すなわち、制御切換部22は、PWM信号生成部23にq軸電圧指令Vq_ref及びd軸電圧指令Vd_refを出力する。
【0071】
これにより、モータ2の駆動制御を、電圧利用率に応じて矩形波駆動制御またはPWM駆動制御に切り換えることができる。
【0072】
本実施形態では、制御切換部22は、前記電圧利用率が0.78よりも小さい場合に、PWM信号生成部23に電圧指令Vq_ref,Vd_refを入力する一方、前記電圧利用率が0.78のときに、矩形波信号生成部24に電圧指令Vq_ref,Vd_refを入力する。
【0073】
これにより、モータ2の駆動を電流指令Iq_ref,Id_refで制御しつつ、電圧利用率に応じてモータ2の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とでスムーズに切り替えることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0075】
前記実施形態では、電圧変換部15が、q軸電流指令Iq_ref及びd軸電流指令Id_refからq軸電圧Vq及びd軸電圧Vdを求めて、線間電圧実効値算出部16は、式(3)を用いて、線間電圧実効値を算出する。
【0076】
しかしながら、電圧変換部が、3相2相変換部60から出力されるq軸電流フィードバック値Iq_fb及びd軸電流フィードバック値Id_fから、q軸電圧Vq及びd軸電圧Vdを求めて、線間電圧実効値算出部が、式(3)により、線間電圧実効値を算出してもよい。
【0077】
また、線間電圧算出部は、モータ2の線間電圧の実測値を用いて、式(3)により、線間電圧実効値を算出してもよい。この場合には、前記実施形態のような電圧変換部は不要である。
【0078】
前記実施形態では、3相交流モータであるモータ2の駆動を制御する制御装置1の構成について説明したが、この限りではなく、3相以外の複数相の交流モータの駆動を制御する制御装置に適用してもよい。すなわち、モータは、同期電動機であれば、どのような構成を有していてもよい。