特開2021-7298(P2021-7298A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-7298(P2021-7298A)
(43)【公開日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20201218BHJP
【FI】
   H02K15/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-174138(P2020-174138)
(22)【出願日】2020年10月15日
(62)【分割の表示】特願2017-191493(P2017-191493)の分割
【原出願日】2017年9月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山田 宜弘
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP01
5H615QQ19
5H615RR01
5H615SS44
5H615TT26
(57)【要約】
【課題】密閉型の電動機のケース内面での結露の発生を防止する電動機の製造方法を得ること。
【解決手段】ステータコア10の周囲に樹脂製のインシュレータ11,12を介して巻線13が巻き付けられた固定子1がケース30,32の内部の密閉空間に収容された密閉型の電動機60の製造方法であって、インシュレータ11,12を、電動機60の定格温度範囲の下限温度においてインシュレータ11,12から揮発した水蒸気がケース30,32の内部に結露を発生させる量未満の水分を含有している状態である乾燥状態に乾燥させる工程と、ステータコア10に乾燥状態のインシュレータ11,12を組み付ける工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの周囲に樹脂製のインシュレータを介して巻線が巻き付けられた固定子がケースの内部の密閉空間に収容された密閉型の電動機の製造方法であって、
前記インシュレータを、前記電動機の定格温度範囲の下限温度において前記インシュレータから揮発した水蒸気が前記ケースの内部に結露を発生させる量未満の水分を含有している状態である乾燥状態に乾燥させる工程と、
前記ステータコアに前記乾燥状態のインシュレータを組み付ける工程とを有することを特徴とする電動機の製造方法。
【請求項2】
前記インシュレータの材料にナイロン6,6を用い、
前記ステータコアに前記インシュレータを組み付ける工程の前段に、成型された前記乾燥状態の前記インシュレータを相対湿度40%以下の低湿環境で保管し、前記乾燥状態を維持する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の電動機の製造方法。
【請求項3】
成型された前記乾燥状態の前記インシュレータを、成型後20時間以内に、前記ステータコアに組み付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉型の電動機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、電動機の巻線とステータコアとの間の絶縁物であるインシュレータには、樹脂成型品が利用されている。インシュレータは、巻線の温度上昇に耐えること、薄い肉厚で成型して巻線スペースを確保できること、絶縁性能を有すること、適度な柔らかさを持ちステータコアへの組み付けが容易であること、及び低価格であることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インシュレータに使用される樹脂は、吸湿性を有し、成型後は空気中の水分を吸収し、内部に蓄える。電動機の運転時に電流が流れて巻線の温度が上昇すると、巻線と接触しているインシュレータの温度も上昇する。インシュレータが内部に水分を蓄えていると、温度の上昇に伴って水蒸気が放出される。
【0005】
したがって、電動機内部への水、埃又はガスの侵入を防止する目的で、ケースを密閉する密閉型の電動機は、インシュレータから放出された水蒸気が凝縮し、ケース内面に結露が発生する可能性があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、密閉型の電動機のケース内面での結露の発生を防止する電動機の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電動機の製造方法は、ステータコアの周囲に樹脂製のインシュレータを介して巻線が巻き付けられた固定子がケースの内部の密閉空間に収容された密閉型の電動機の製造方法であって、インシュレータを、電動機の定格温度範囲の下限温度においてインシュレータから揮発した水蒸気がケースの内部に結露を発生させる量未満の水分を含有している状態である乾燥状態に乾燥させる工程と、ステータコアに乾燥状態のインシュレータを組み付ける工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、密閉型の電動機のケース内面での結露の発生を防止する電動機の製造方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る電動機の断面図
図2】実施の形態1に係る電動機の製造方法の流れを示すフローチャート
図3】実施の形態1に係る電動機のケース内の空気の温度と水蒸気量との関係を示す図
図4】実施の形態1に係る電動機の製造方法の第1の手法を示すフローチャート
図5】実施の形態1に係る電動機の製造方法の第2の手法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る電動機の製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電動機の断面図である。電動機60は、直流ブラシレスモータである。ケース30,32は、固定子1及び回転子2を収容する密閉空間を形成する。ケース30とケース32との合わせ面は、ゴム製のOリング53で密閉されており、外部からの水、埃及びガスの侵入が防止されている。また、軸21が貫通する部分は、ゴム製のオイルシール51により密閉されており、外部からの水、埃及びガスの侵入が防止されている。また、電源コード42が貫通する部分は、ゴム製のコードブッシュ52により密閉されており、外部からの水、埃及びガスの侵入が防止されている。
【0012】
回転子2は、電磁鋼板を積層したロータコア22が軸21に組み付けられている。回転子2は、ケース30に設置される軸受23と、ブラケット31に設置される軸受24とで支持される。
【0013】
固定子1は、電磁鋼板を積層して構成されたステータコア10と、ステータコア10に組み付けられた樹脂製のインシュレータ11,12と、インシュレータ11,12の上からステータコア10に複数環状に巻かれた巻線13とを有する。固定子1は、ケース30に固定される。ステータコア10と巻線13とは、インシュレータ11,12によって絶縁される。インシュレータ11,12の材料には、ナイロンを始めとするポリアミド合成樹脂を適用可能であるが、これに限定されない。
【0014】
巻線13に流す電流を制御する駆動回路41は、ケース32に固定されて支持されている。巻線13と駆動回路41とは、不図示のリード線で接続される。ブラケット31には、リード線が貫通する穴が形成されている。
【0015】
巻線13に電流が流れることで、ステータコア10に磁力が発生し、電磁石となる。巻線13に流す電流を駆動回路41が順次切り替えることで、ステータコア10側の電磁石の磁力とロータコア22側の磁力との引力及び斥力で軸21が回転する。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る電動機の製造方法の流れを示すフローチャートである。ステップS1において、インシュレータ11,12を成型する。ステップS2において、ステータコア10に乾燥状態のインシュレータ11,12を組み付ける。乾燥状態とは、電動機60の定格温度範囲の下限値において、インシュレータ11,12から揮発した水蒸気がケース30,32の内部に結露を発生させる量未満の水分を含有している状態を指す。ステップS3において、インシュレータ11,12の上からステータコア10に巻線13を巻く。ステップS4において、固定子1及び回転子2をケース30,32に収容する。
【0017】
巻線13は、抵抗成分を有するため、電流が流れると発熱する。ステータコア10と巻線13とを絶縁するインシュレータ11,12は、巻線13と接触しており、巻線13で発生した熱が伝わる。インシュレータ11,12の内部に水分が含まれる場合、インシュレータ11,12の温度が上昇することで、インシュレータ11,12の内部の水分が蒸発し、ケース30,32内の湿度が上昇する。また、巻線13で発生した熱は、ケース30,32内の空気にも伝わり、ケース30,32内の空気の温度が上昇する。ケース30,32内の空気の温度が上昇すると、飽和水蒸気量も増加するため、インシュレータ11,12の内部からの水分の蒸発量も増大する。
【0018】
外気と触れておりかつ巻線13から遠い部分であるケース32は、電動機60の中で最も温度が低い部分である。ケース32の内面付近では、局所的に空気の温度が低く、飽和水蒸気量も低いため、電動機60の使用状況によっては巻線13の温度とケース32との温度差が大きくなる。巻線13の温度とケース32との温度差が大きくなって、ケース32の内面付近の空気の水蒸気量が飽和水蒸気量を超えると、ケース32に結露が発生する。
【0019】
図3は、実施の形態1に係る電動機のケース内の空気の温度と水蒸気量との関係を示す図である。図3中の曲線Sは、飽和水蒸気量を示しており、温度と水蒸気量との組み合わせが曲線Sよりも上側の領域となることは実際にはありえず、空気中の水蒸気は結露する。ケース30,32内の空気の温度がT、水蒸気量がHの場合、ケース30,32内の空気の温度が低下すると、温度T、水蒸気量Hで飽和する。さらにケース30,32内の空気の温度をTまで下げると、曲線Sに沿って水蒸気量はHまで低下する。このとき、(H−H)に相当する水蒸気は、ケース30,32内において結露水となる。
【0020】
ケース32の内面付近の空気の水蒸気量が、結露条件を満たす状態となり、ケース32に結露が発生すると、ケース30,32内の空気の湿度は下がる。ケース30,32内の空気の湿度が下がると、さらにインシュレータ11,12の内部の水分の蒸発が促進され、最終的にはインシュレータ11,12の内部の水分は、大部分がケース32での結露水となる。
【0021】
インシュレータ11,12の材料に適用可能なナイロン6,6のうちの一種の温度23℃での平衡吸水率は、相対湿度が50%の場合2.7%であり、日本国の国内での平均湿度に相当する相対湿度70%の場合4.5%であり、相対湿度100%の場合8.5%である。インシュレータ11,12を成型する際には、乾燥状態の材料を用いるため、成型直後のインシュレータ11,12は、水分を0.3%以上含むことはない。なお、乾燥状態ではない材料を用いる場合であっても、成型時の加熱により材料内の水分は揮発するため、成型直後のインシュレータ11,12は、乾燥状態となる。
【0022】
成型後のインシュレータ11,12は、空気中の水分を吸収して内部に蓄える。実施の形態1において、インシュレータ11,12の質量は乾燥状態で64gであり、平衡吸水率での吸水量は、相対湿度50%で1.7gであり、相対湿度70%で2.9gであり、相対湿度100%で5.4gである。なお、インシュレータ11,12の吸水速度は、樹脂の種類、雰囲気の温湿度及びインシュレータ11,12の厚さによって異なる。インシュレータ11,12は、巻線13を配置するスペースを確保する目的で、厚さが0.5mm以下の部分が多く、表面積が大きいため、吸水速度は速い。日本国の国内における常温では、成型後1ヶ月でのインシュレータ11,12の吸水量は、1gを超える。温度28℃、相対湿度85%では、インシュレータ11,12は1日で1.5g吸水する。
【0023】
結露水が発生し電気回路部へ滴下した場合、電気回路部は故障に至る。具体的な故障内容には、巻線13の短絡故障、腐食断線及び絶縁不良が挙げられる。特に、電子回路基板を内蔵する電動機60では、水分に弱い部品も多く、故障確率が高くなり、製品寿命が短くなる。実施の形態1において、電子回路基板は、駆動回路41である。
【0024】
実施の形態1に係る電動機60では、インシュレータ11,12は、吸水率が2%以下の乾燥状態でステータコア10に組み付けられ、電動機60に組み込まれる。
【0025】
実施の形態1に係る電動機60は、下記の第1の手法、第2の手法及び第3の手法のいずれかを適用して製造されており、吸水率が2%以下の乾燥状態でインシュレータ11,12をステータコア10に組み付けられている。
【0026】
第1の手法では、ステータコア10に組み付けるのに先立ってインシュレータ11,12を乾燥させ、乾燥状態とする。実施の形態1において、インシュレータ11,12は、吸水率が2%以下のとき乾燥状態であるとする。図4は、実施の形態1に係る電動機の製造方法の第1の手法を示すフローチャートである。図4は、図2のステップS2の処理の詳細を示している。ステップS11において、インシュレータ11,12を乾燥させ、乾燥状態にする。乾燥方法は、温度を100℃に設定した定温乾燥機にインシュレータ11,12を入れて、乾燥機内の空気の飽和水蒸気量を上昇させ湿度を下げることで、インシュレータ11,12内部の水分を蒸発させる。ステップS12において、乾燥状態にしたインシュレータ11,12をステータコア10に組み付ける。
【0027】
第2の手法では、成型された乾燥状態のインシュレータ11,12を、ステータコア10に組み付けるまでの間、低湿状態で保管し、インシュレータ11,12を乾燥状態のまま維持する。図5は、実施の形態1に係る電動機の製造方法の第2の手法を示すフローチャートである。図5は、図2のステップS2の処理の詳細を示している。ステップS21において、インシュレータ11,12を低湿環境で保管する。ナイロン6,6であれば、相対湿度40%以下が低湿状態に該当する。ステップS22において、乾燥状態が維持されているインシュレータ11,12をステータコア10に組み付ける。
【0028】
第3の手法では、成型された乾燥状態のインシュレータ11,12を、乾燥状態である間にステータコア10に組み付ける。すなわち、インシュレータ11,12を成型後、吸水率が2%を超えないうちにステータコア10に組み付ける。
【0029】
電動機60を組み立てる環境は、低湿度であるほど好ましく、高湿度環境の場合には、インシュレータ11,12が吸湿する前に組み立てる必要がある。相対湿度85%の環境の場合、吸水率を2%以下にするには、インシュレータ11,12を成型後20時間以内に電動機60を密閉状態に組み上げる必要がある。
【0030】
乾燥状態のインシュレータ11,12が密閉型の電動機60に組み込まれると、インシュレータ11,12は、ケース30,32内の空気中の水分を吸収し、ケース30,32内は低湿度となる。図3の低湿度状態では、高湿度状態よりも温度差が大きくないと結露が発生しないため、結露が発生する可能性は高湿度状態よりも低くなる。ケース30,32内でインシュレータ11,12が吸収する水分は、ケース30,32内の空間に存在可能な水蒸気量であり、吸湿性の高い材料で作られたインシュレータ11,12の吸水可能量の1割未満である。実施の形態1では、ケース30,32内の空間の大きさが0.002mで、温度が28℃で相対湿度が85%の時に組み立てを実施すると、ケース30,32内に存在できる水蒸気量は0.05g程度である。インシュレータ11,12の吸水可能量は、相対湿度85%では4gである。既にインシュレータ11,12が2%吸水している場合、インシュレータ11,12は1.3gの水分を吸水していることになるため、残りの吸水可能量は2.7gとなる。ケース30,32内の水蒸気0.05gはインシュレータ11,12が吸水していき、ケース30,32内は低湿度となる。
【0031】
実施の形態1に係る電動機の製造方法によれば、乾燥状態のインシュレータ11,12をステータコア10に組み付けるため、ケース30,32内面での結露の発生を防止することができる。
【0032】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 固定子、2 回転子、10 ステータコア、11,12 インシュレータ、13 巻線、21 軸、22 ロータコア、23,24 軸受、30,32 ケース、31 ブラケット、41 駆動回路、42 電源コード、51 オイルシール、52 コードブッシュ、53 Oリング、60 電動機。
図1
図2
図3
図4
図5