【実施例】
【0115】
D.種化合物の調製
中間体
中間体I:2−クロロメチル−3,5−ジフルオロ−ピリジンの調製
【0116】
【化23】
工程A:3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボン酸エチルエステルの調製
【0117】
【化24】
氷水浴を用いて冷やしたエタノール(5mL)中の3,5−ジフルオロピリジン−2−
カルボン酸の懸濁液(2.0g、12.6mmol)に、滴下しながら塩化チオニル(2mL)を添加した。溶液を60℃で3時間加熱した。反応物を周囲温度まで戻し、真空中で濃縮し、エチルエステル、塩酸塩を黄色の油状物質(2.5g)として得た。
工程B:(3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イル)−メタノールの調製
【0118】
【化25】
氷水浴を用いて冷やしたエタノール(10mL)中のパートAの3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−カルボン酸エチルエステルの溶液(2.5g、12.6mmol)に、小分けして水素化ホウ素ナトリウム(1.43g、37.8mmol)を添加した。溶液を0℃で30分間撹拌し、周囲温度で2時間撹拌した。反応物を0℃まで戻し、飽和塩化アンモニウムを滴下して加えた。溶媒を真空中で除去し、結果として得られる残渣を酢酸エチルと水で分けた。有機層を飽和塩化アンモニウム、水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。スラリーをろ過及び濃縮し、アルコールを黄色の油状物質(1.8g)として得た:MS(ES)m/e146(M+H)。
【0119】
工程C:2−クロロメチル−3,5−ジフルオロ−ピリジンの調製
【0120】
【化26】
ジクロロメタン(20mL)中のパートBの(3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イル)−メタノールの溶液(1.8g、12.3mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミドを3滴添加し、氷水浴を用いて冷やした。塩化チオニル(2mL)を滴下して添加し、溶液を周囲温度で1時間撹拌した。溶液を真空中で濃縮し、淡褐色液体としてクロロ化合物(1.75g)を得た。
【0121】
化合物番号49、実施例A:3−クロロ−4−((3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)メトキシ)−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンの調製
【0122】
【化27】
【0123】
工程A:2’−クロロ−4−ヒドロキシ−6,5’−ジメチル−[1,4’]ビピリジニ
ル−2−オンの調製
【0124】
【化28】
【0125】
ゴム製セプタムを取り付けたねじ蓋のバイアルに、Organic Letters、11(21)、4910−4913;2009に記載されている通りに調製した2,2−ジメチル−6−(2−オキソ−プロピル)−[1,3]ジオキサン−4−オン(500mg、2.7mmol)及び2−クロロ−5−メチル−ピリジン−4−イルアミン(575mg、4mmol、1.5eq.)を添加した。混合物を無水1,4−ジオキサン(10mL)に溶解した。混合物が均質になると、バイアルを攪拌機/90℃に設定したホットプレート上に置いた。反応容器をこの温度で3.5時間加熱した。反応バイアルを熱から外し、HPLCで分析し、HPLCは、反応が95%超で完成したことを示した。小瓶をホットプレート上に戻した。加熱した混合物に、H
2SO
4(250μL)を添加し、反応を1時間加熱した。反応バイアルを熱から外し、周囲温度まで冷やした後、開いたバイアル頂部の上で空気流を流すことでジオキサンを除去し、茶色の残渣を得た。水(約4mL)をバイアルに添加し、混合物を30分間撹拌した。結果として得られた黄褐色の固体を、追加した水及びジエチルエーテルから洗浄してろ過し、所望した生成物(531mg、硫酸塩であることをもとに57%)を黄褐色の固体として得、HPLCによると約95%の純度であった:MS(ES)m/e250(M+H)。
【0126】
工程B:2’−クロロ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンの調製
【0127】
【化29】
【0128】
N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)中のパートAの2’−クロロ−4−ヒドロキシ−6,5’−ジメチル−[1,4’]ビピリジニル−2−オン(6.0g、20.1mmol)の溶液に、4−メトキシベンジルクロリド(2.73mL、20.1mmol)、炭酸カリウム(6.93g、50.2mmol)及び18−クラウン−6(100mg)を添加した。スラリーを60℃で3時間加熱し、周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルと水で分けた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶液を真空中で濃縮し、茶色の油状物質を得た。順相クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)によって、アルキル化生成物を淡黄色固体(4.6g)として得た:MS(ES)m/e371(M+H)。
【0129】
工程C:2’−アセチル−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンの調製
【0130】
【化30】
【0131】
1,4−ジオキサン(30mL)中の、パートBの2’−クロロ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オン(4.6g、12.4mmol)、トリブチル(1−エトキシビニル)スズ(4.6mL、13.6mmol)及びPdCl
2(PPh
3)
2(87mg、0.12mmol)の溶液を、CEM Explorer(商標)のマイクロ波を用いて130℃で2時間照射した。結果として得られた暗色の溶液をセライトに通してろ過し、酢酸エチルですすいだ。ろ過物を濃縮し、残渣をテトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、加水分解が完全になるまで濃HClで処理した。溶液を真空中で濃縮し、順相クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)を用いて精製し、黄色の油状物質(3.3g)としてアセチル化合物を得た:MS(ES)m/e379(M+H)。
【0132】
工程D:2’−アセチル−3−クロロ−4−ヒドロキシ−5’−メチル−[1,4’]ビピリジニル−2−オンの調製
【0133】
【化31】
【0134】
2−プロパノール(100mL)中のパートCの2’−アセチル−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オン(3.3g、8.7mmol)の溶液に、N−クロロサクシニミド(1.27g、9.6mmol)及び10滴のジクロロ酢酸を添加した。スラリーを60℃で3時間加熱した。結果として得られたスラリーを濃縮し、残渣を酢酸エチルと水で分けた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶液を真空中で濃縮した。残渣をジクロロメタンに懸濁し、結果として得られた白色の固体を真空ろ過によって回収し、塩素化脱保護生成物(1.16g)を得た:MS(ES)m/e293(M+H)。
【0135】
工程E:2’−アセチル−3−クロロ−4−(3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イル
メトキシ)−5’−メチル−[1,4’]ビピリジニル−2−オンの調製
【0136】
【化32】
【0137】
N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)中のパートDの2’−アセチル−3−クロロ−4−ヒドロキシ−5’−メチル−[1,4’]ビピリジニル−2−オン(500mg、1.7mmol)の溶液に、2−クロロメチル−3,5−ジフルオロ−ピリジン(277mg、1.7mmol)、炭酸カリウム(590mg、4.28mmol)及び18−クラウン−6(10mg)を添加し、反応物を60℃で4時間撹拌した。冷やした後、溶液を酢酸エチルと水で分けた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶液をろ過及び真空中で濃縮した。粗物質を、順相クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)を用いて精製し、アルキル化生成物を黄色の固体(397mg)として得た:MS(ES)m/e420(M+H)。
【0138】
工程F:3−クロロ−4−((3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)メトキシ)−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンの調製
【0139】
【化33】
【0140】
N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)中の工程Eからの2’−アセチル−3−クロロ−4−(3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イルメトキシ)−5’−メチル−[1,4’]ビピリジニル−2−オン(397mg、0.95mmol)の溶液に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.18mL、1.42mmol)を添加し、溶液を55℃まで18時間加熱した。溶液を半分の体積まで濃縮し、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミジンHCl(195mg、1.42mmol)及び炭酸カリウム(393mg、2.85mmol)を添加した。スラリーを75℃で18時間加熱した。スラリーを周囲温度まで戻し、酢酸エチルと水で分けた。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶液を濃縮し、順相クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)を用いて精製し、表題化合物を淡黄色の固体(255mg、46%)として得た:MS(ES)m/e514(M+H)。
【0141】
3−クロロ−4−((3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)メトキシ)−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンのキラル分割
【0142】
ラセミ体の3−クロロ−4−((3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)メトキシ)−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オン(250mg、0.49mmol)を、二酸化炭素及びエタノールの移動相を有する超臨界流体クロマトグラフィー(Thar80、分取SFC、ChiralCel OD−H、250×30mmIDカラム)を用いて分離した。分離方法では、50mL/分の流速及び10分のサイクル時間で40%エタノールのアイソクラティック方法を用いた。旋光度はWZZ−2S旋光計を用いて決定した。
【0143】
1.77分で溶出した速い異性体は115mgのアトロプ異性体1をもたらした:[α]
D20−60.7°(CH
3OH);
1H NMR(400MHz、DMSO−d
6)δppm 8.97(d、J=5.09Hz、1H)、8.86(s、1H)、8.69(s、1H)、8.61(s、1H)、8.24(d、J=5.08Hz、1H)、8.10(t、1H)、6.85(s、1H)、5.50(s、2H)、5.26(s、1H)、2.11(s、3H)、1.98(s、3H)、1.54(s、3H)、1.52(s、3H);MS(ES)m/e514(M+H)。
【0144】
3.68分で溶出した遅い異性体は、112mgのアトロプ異性体2をもたらした:[α]
D20+61.9°(CH
3OH);
1H NMR(400MHz、DMSO−d
6)δppm 8.97(d、J=5.09Hz、1H)、8.86(s、1H)、8.69(s、1H)、8.61(s、1H)、8.24(d、J=5.08Hz、1H)、8.10(t、1H)、6.85(s、1H)、5.50(s、2H)、5.26(s、1H)、2.11(s、3H)、1.98(s、3H)、1.54(s、3H)、1.52(s、3H);MS(ES)m/e514(M+H)。
【0145】
化合物番号65、実施例B:3−クロロ−4−((5−フルオロピリミジン−4−イル)メトキシ)−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンの調製
【0146】
【化34】
【0147】
表題化合物を、化合物49、実施例Aの工程Eまで従い、しかし3−クロロ−4−ヒドロキシ−2’−(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリミジン−4−イル)−5’,6−ジメチル−2H−[1,4’−ビピリジン]−2−オンを、2−(クロロメチル)−3,5−ジフルオロピリジンではなく4−(クロロメチル)−5−フルオロピリミジンでアルキル化することで調製し、所望するベンジルエーテルを得た。表題化合物を、化合物49、実施例A、工程Fの一般的な手順に従って調製した。
【0148】
E.治療の方法
本開示は、ある状態を有する、又はある状態を有しやすい対象のそのような状態を治療する方法をさらに提供し、当該方法は、対象に治療上有効な量の1つ以上の上記化合物を投与することによってである。1つの実施形態では、治療は予防療法である。別の実施形態では、治療は対症療法である。別の実施形態では、回復療法である。
【0149】
1.状態
本発明に従って治療され得る状態としては、限定はしないが、自己免疫性障害、慢性炎症性障害、急性炎症性障害、自己炎症性障害、疼痛、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、線維症、代謝疾患、がん、腫瘍、白血病、リンパ腫等が挙げられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を用いて調節不全のサイトカイン、酵素及び/又は炎症性メディエーターの生産、安定性、分泌、翻訳後プロセシングから生じる障害を有する患者を治療する。調節不全であり得るサイトカインの例としては、腫瘍壊死因子アルファ及びインターフェロンアルファ、ベータ及びガンマと一緒にインターロイキン1、2、6、8、10、12、17、22及び23であり得る。調節不全であり得る炎症性メディエーターの例としては、一酸化窒素、プロスタグランジン及びロイコトリエンが挙げられる。酵素の例としては、シクロオキシゲナーゼ、一酸化窒素シンターゼ及びマトリックスメタロプロテアーゼが挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を用いて、調節不全であるp38活性、活性化、生合成又は経路機能を有する患者を治療する。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を用いて、自己免疫性障害、慢性及び/若しくは急性炎症性障害並びに/又は自己炎症性障害を患う当該方法が必要な患者を治療する。障害の例としては、限定はしないが、大腸炎、多発性硬化症、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、若年性関節炎、乾癬性関節炎、クリオピリン関連周期性症候群、マックル・ウェルズ症候群、家族性感冒自己炎症性症候群、新生児期発症多臓器性炎症性疾患、TNF受容体関連周期性症候群、急性膵炎、慢性膵炎、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性網膜症、スチル病、多発性硬化症、血管炎、サーコイドーシス、肺炎症、急性呼吸窮迫症候群、滲出型及萎縮型加齢黄斑変性症、自己免疫性溶血性症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性ニューロパシー、自己免疫性卵巣不全、自己免疫性精巣炎、自己免疫性血小板減少症、反応性関節炎、強直性脊椎炎、シリコーン移植関連自己免疫疾患、シェーグレン症候群、家族性地中海熱、全身性エリテマトーデス、血管炎症候群(例えば巨細胞性動脈炎、ベーチェット病及びウェジナー肉芽腫症といった)、白斑、自己免疫疾患の二次的な血液学的兆候(例えば貧血といった)、薬剤誘発性自己免疫、橋本甲状腺炎、下垂体炎、特発性血小板紫斑病、金属誘発性自己免疫、重症筋無力症、天疱瘡、自己免疫性難聴(例えばメニエール病が挙げられる)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、HW関連自己免疫症候群及びギラン−バレー病が挙げられる;炎症性状態の例としては、限定はしないが、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、エンドトキシン誘発性毒素ショック、グラム陰性菌敗血、エンドトキシンショック症候群、糸球体腎炎、腹膜炎、間質性膀胱炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、酸素過剰誘発性炎症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、血管炎、移植片対宿主反応(すなわち、移植片対宿主疾患)、同種移植片拒絶(例えば、急性同種移植片拒絶及び慢性同種移植片拒絶)、初期の移植拒絶(例えば、急性同種移植片拒絶反応)、再潅流傷害、急性疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、結合組織炎、膵臓炎、慢性感染症、脳膜炎、脳炎、心筋炎、歯肉炎、手術後の外傷、組織傷害、外傷性脳損傷、肝炎、全腸炎、副鼻腔炎、ぶどう膜炎、眼炎症、視神経炎、胃潰瘍、食道炎、腹膜炎、歯膜炎、皮膚筋炎、胃炎、筋炎、多発性筋痛、肺炎並びに気管支炎が挙げられる。線維症;限
定はしないが、肥満、ステロイド耐性、耐糖能障害、メタボリックシンドロームを包含する代謝疾患。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法を用いて腫瘍を患っている当該方法が必要な患者を治療し得る。これらの状態の例としては、限定はしないが、血管新生、多発性骨髄腫、白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マスト細胞腫瘍、リンパ腫、ホジキン病、骨がん、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、胃癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、神経がん、脳がん、頭頚部癌、喉癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、乳癌、小細胞肺癌、黒色腫、皮膚癌、奇形腫、横紋筋肉腫、神経膠腫、転移性及び骨障害が挙げられる。いくつかの実施形態では、調節不全p38に関わる疾患としては、限定はしないがアテローム性動脈硬化症、アテローム性硬化症冠動脈の再狭窄、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、移植心冠動脈病変及び脳卒中を包含する心血管及び脳血管障害;炎症性又はアポトーシス性要素を有する中枢神経系障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、ニューロン虚血並びに末梢神経障害が挙げられる。患者という用語は、上記の状態を有するヒト及び非ヒト動物の双方を指す。非ヒト動物は、限定はしないが、イヌ及びネコの種といったペット動物であり得る。
【0153】
2.対象
本発明に従って治療される適切な対象には、哺乳動物対象が包含される。本発明に従った哺乳動物としては、限定はしないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯動物、ウサギ、霊長動物等が挙げられ、子宮内の哺乳動物を包含する。対象はいずれかの性別及びいずれかの発達段階であり得る。
【0154】
3.投与及び投薬
本発明の化合物は概して、治療上有効な量で投与される。
【0155】
本発明の化合物は、あらゆる適切な経路で、そのような経路に適した医薬組成物の形態で、意図する治療に効果的な用量で投与され得る。効果的な投与量は通常、単一又は分割用量で、1日当たり、体重1kg当たりで約0.001〜約100mg、好ましくは約0.01〜約30mg/kg/日である。年齢、種及び治療する状態によって、この範囲の下限よりも少ない投与量が適切であり得る。他の場合では、有害な副作用なしで、より多い用量が用いられ得る。より多い用量はまた、終日の投与のために複数のより小さな用量に分割され得る。
【0156】
F.医薬組成物
上記の状態の治療のために、本明細書で記載する化合物は以下のように投与され得る:
【0157】
経口投与
本発明の化合物は、化合物が胃腸管に入る、又は、口から直接血流へ吸収される(例えば、口腔又は舌下投与)よう嚥下することを包含する経口で投与され得る。
【0158】
経口投与に適した組成物としては、液体、ゲル又は粉末を含み得る錠剤、舐剤及びカプセルといった固形製剤が挙げられる。
【0159】
経口投与のための組成物は、即時放出、又は、遅延放出若しくは徐放出を包含する修飾放出として製剤化され得、腸溶性コーティングがあってもよい。
【0160】
液体製剤としては、軟カプセル又は硬カプセルで用いられ得る溶液、シロップ及び懸濁液が挙げられ得る。そのような製剤は、薬剤的に許容可能な担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、セルロース又は油を含み得る。製剤はまた、1つ以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含み得る。
【0161】
錠剤剤形では、存在する薬剤の量は、重量で剤形の約0.05%〜約95%、より典型的には重量で剤形の約2%〜約50%であり得る。さらに、錠剤は、重量で剤形の約0.5%〜約35%、より典型的には剤形の約2%〜約25%で含む崩壊剤を含み得る。崩壊剤の例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン等が挙げられる。
【0162】
錠剤での使用のための適切な潤滑剤は、重量で約0.1%〜約5%の量で存在し得、カルシウム、亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0163】
錠剤での使用のための適切な結合剤としては、ゼラチン、ポリエチレングリコール、糖、ガム、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。錠剤での使用のための適切な希釈剤としては、マンニトール、キシリトール、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール及びデンプンが挙げられる。
【0164】
錠剤での使用のための適切な表面活性剤及び流動促進剤は、重量で約0.1%〜約3%の量で存在し得、ポリソルベート80、ドデシル硫酸ナトリウム、滑石及び二酸化ケイ素が挙げられ得る。
【0165】
非経口投与
本発明の化合物は、血流、筋肉又は内臓器官へ直接投与され得る。非経口投与に適した手段としては、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、髄腔内、頭蓋内等が挙げられる。非経口投与に適したデバイスとしては、注射器(針及び針無しの注射器)及び点滴方法が挙げられる。
【0166】
非経口投与のための組成物は、即時放出、又は、遅延放出若しくは徐放出を包含する修飾放出として製剤化され得る。
【0167】
多くの非経口製剤は、塩、緩衝剤及び炭水化物を包含する賦形剤を含む水溶液である。
【0168】
非経口製剤はまた、脱水形態(例えば、凍結乾燥によって)又は滅菌非水性溶液としても調製され得る。これら製剤は、滅菌水といった適切な媒体と一緒に用いられ得る。溶解性強化剤もまた、非経口溶液の調製で用いられ得る。
【0169】
局所投与
本発明の化合物は、皮膚に局所的又は経皮的に投与され得る。この局所投与の製剤はとしては、ローション、溶液、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、軟膏、泡状物質、インプラント、パッチ等が挙げられ得る。局所投与製剤のための薬剤的に許容可能な担体としては、水、アルコール、鉱油、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ得る。局所投与はまた、電気穿孔、イオン泳動、音波泳動等によって実施され得る。
【0170】
局所投与のための組成物は、即時放出、又は、遅延放出若しくは徐放出を包含する修飾放出として製剤化され得る。
【0171】
G.組合せ及び併用療法
本発明の化合物は、単独で、又は、他の薬剤的に活性な化合物と組合せて用いて、上記した状態といった状態を治療し得る。本発明の化合物及び他の薬剤的に活性な化合物は、同時(同一の剤形又は異なる剤形のいずれかで)又は順次投与され得る。したがって、1
つの実施形態では、本発明は、対象に治療上有効な量の1つ以上の本発明の化合物及び1つ以上の追加の薬剤的に活性な化合物を投与することで状態を治療する方法を含む。
【0172】
別の実施形態では、1つ以上の本発明の化合物、1つ以上の追加の薬剤的に活性な化合物及び薬剤的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0173】
別の実施形態では、1つ以上の追加の薬剤的に活性な化合物は、抗炎症薬、抗アテローム性動脈硬化薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、細胞分裂阻害薬、抗増殖剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、サイトカイン阻害薬及び細胞接着分子の阻害剤から成る群から選択される。
【0174】
本明細書に記載されるp38阻害剤組成物はまた、治療される状態に関する治療上の価値で選択される他の治療用薬剤と一緒に組合せて使用してもよい。概して、本明細書に記載される組成物、及び、併用療法を採用する実施形態での他の剤は、同一の医薬組成物で投与される必要はなく、異なる物理的及び化学的特徴のために、異なる経路で投与されてもよい。最初の投与は概して、確立されたプロトコルに従ってなされ、次いで、観察される効果をもとに、投与量、投与形態及び投与回数が続いて修正される。特定の例では、本明細書に記載するp38阻害剤組成物を他の治療剤と一緒に組合せて投与するのがふさわしい。ほんの例として、本明細書に記載するp38阻害剤組成物を摂取して患者が経験する副作用の1つが発疹である場合、最初の治療剤と組合せて抗ヒスタミン剤を投与するのがふさわしい。又は、ほんの例として、p38阻害剤の治療上の有効性は、治療上の効果も有する他の治療剤(治療レジメンも含む)の投与によって強化される。いずれの場合も、治療されている疾患、障害又は状態に関わらず、患者が経験する全体的な効果は、単に2つの治療剤を加算したものであるか、又は、患者は相乗効果を経験するかのいずれかである。
【0175】
薬剤が治療の組合せで使用される場合、治療上有効な投与量はさまざまである。併用療法レジメンでの使用のための薬剤及び他の剤の治療上有効な投与量を実験的に決定する方法は、実証されている方法論である。併用療法はさらに、患者の臨床管理を手助けする様々な時に開始及び停止する周期的な治療を包含する。いずれの場合も、複数の治療剤(その1つは本明細書に記載するp38阻害剤)は、いずれかの順番で投与され、又は、同時でも投与される。同時の場合、複数の治療剤は単一、統一的な形態又は複数の形態(ほんの例として、単一のピル又は2つの別々のピルのいずれかとして)で提供されてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、治療剤のうち1つが複数回用量で与えられ、又は、双方とも複数回用量として与えられる。同時でない場合、複数回用量間のタイミングは、0週間超から12週間未満まで変化してもよい。
【0177】
さらに、併用方法、組成物及び製剤は、2つの剤のみの使用に限定されず、複数の治療薬の組合せの使用も企図される。軽減が望まれる状態を治療、予防又は改善するための投与レジメンは、様々な要因に従って修正されてもよいことが理解される。これらの要因としては、対象が患う障害、並びに、対象の年齢、体重、性別、食事及び医療状態が挙げられる。したがって、実際に採用される投与レジメンは大きくばらつき、いくつかの実施形態では、したがって、本明細書に記載する投与レジメンから逸脱する。
【0178】
本明細書で開示する併用療法を構成する医薬剤は、まとめた剤形又は実質同時投与を意図した別々の剤形であってもよい。併用療法を構成する医薬剤はまた、順次投与されてもよく、いずれかの剤が2工程投与を必要とするレジメンで投与される。2工程投与レジメンは、活性剤の順次投与、又は、別々の活性剤の間隔をあけた投与を必要としてもよい。複数投与工程間の時間間隔は、医薬剤の効力、溶解性、生物利用性、漿内半減期及び動態
プロファイルといった各医薬剤の特性次第で数分間から数時間の範囲に及ぶ。標的分子濃度の概日変動を用いて最適用量間隔を決定してもよい。
【0179】
別の実施形態では、p38阻害剤は、患者に追加又は相乗効果を提供する手順と組合せて使用してもよい。p38阻害剤及び追加の療法は、疾患又は状態の発症の前、間、又は、後に投与されてもよく、p38阻害剤を含む組成物の投与のタイミングは、いくつかの実施形態で異なる。したがって、例えば、障害又は状態の発症を予防するために、p38阻害剤を予防剤として用い、状態又は疾患を進行する傾向を有する対象に持続的に投与する。p38阻害剤及び組成物は、症状の間、又は、症状の開始後できる限りすぐに対象に投与されてもよい。本発明の実施形態が本明細書で示され、説明されてきたが、当業者には、そのような実施形態は例として提供されているだけであることが明らかであろう。多くの変更、変化及び置き換えを、本発明を逸脱することなく、当業者は思いつくだろう。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の実施の際に、本明細書に記載する実施形態に様々な代替手段が用いられることが理解されるべきである。
【0180】
p38阻害剤は、次のクラスの薬剤と組合せて使用され得る:NSAID、免疫抑制薬、免疫調節薬、細胞分裂阻害薬、抗増殖剤、血管新生阻害剤、生物剤、ステロイド、ビタミンD3類似体、レチノイド、他のキナーゼ阻害剤、サイトカイン阻害薬、コルチコステロイド及び細胞接着分子の阻害剤。対象がアテローム性動脈硬化症を患っている若しくは患う危険がある場合、又は、アテローム性動脈硬化症に関する状態を患っている若しくは患う危険がある場合、本明細書に記載するp38阻害剤組成物は、アテローム性動脈硬化症若しくはアテローム性動脈硬化症に関する状態を治療するための1つ以上の剤又は方法と一緒に、いずれかの組合せで使用してもよい。アテローム性動脈硬化症又はアテローム性動脈硬化症に関する状態を治療する治療剤/治療の例としては、限定はしないが、次のうちいずれかが挙げられる:トルセトラピブ、アスピリン、ナイアシン、HMG CoA還元酵素阻害剤(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン及びシンバスタチン)、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、ゲムフィブロジル、プロブコール及びクロファイブレート。
【0181】
対象が炎症状態を患っている若しくは患う危険がある場合、本明細書に記載するp38阻害剤組成物は、炎症状態を治療するための1つ以上の剤又は方法と一緒に、いずれかの組合せで使用してもよい。自己免疫及び/又は炎症状態を治療する治療剤/治療の例としては、限定はしないが、次のうちいずれかが挙げられる:コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えばイブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、アスピリン、フェノプロフェン(NALFON)、フルルビプロフェン(ANSAID)、ケトプロフェン、オキサプロジン(DAYPRO)、ジクロフェナク・ナトリウム(VOLTAREN)、ジクロフェナクカリウム(CATAFLAM)、エトドラク(LODINE)、インドメタシン(INDOCIN)、ケトロラク(TORADOL)、スリンダク(CLINORIL)、トルメチン(TOLECTIN)、メクロフェナム酸(MECLOMEN)、メフェナム酸(PONSTEL))ナブメトン(RELAFEN)、ピロキシカム(FELDENE)、COX−2阻害薬(例えば、セレコキシブ(CELEBREX))、免疫抑制薬(例えば、メトトレキサート(RHEUMATREX)、レフルノミド(ARAVA)、アザチオプリン(IMURAN)、シクロスポリン(NEORAL、SANDIMMUNE)、タクロリムス及びシクロフォスファミド(CYTOXAN)、CD20遮断剤(RITUXIMAB)、腫瘍壊死因子(TNF)遮断剤(例えば、エタネルセプト(ENBREL)、インフリキシマブ(REMICADE)及びアダリムマブ(HUMIRA)、アバタセプト(CTLA4−Ig)及びインターロイキン−1受容体拮抗薬(例えばアナキンラ(KINERET))、インターロイキン6阻害剤(例えば、ACTEMRA)、インターロイキン17阻害剤(例えば、AIN457)、ヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、TASOCITINIB)、Syk阻害剤(例えばR7
88)、クロロキン及びその誘導体。
【0182】
がん及び腫瘍性疾患での使用に関しては、p38阻害剤は次のクラスの薬剤のうち1つ以上と一緒に最も有利に使用される:抗がん剤は、EGFRキナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、VEGFR阻害剤、抗VEGFR2抗体、KDR抗体、AKT阻害剤、PDK−1阻害剤、PI3K阻害剤、c−kit/Kdrチロシンキナーゼ阻害剤、Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR2阻害剤、PDGFR−ベータ阻害剤、KIT阻害剤、Flt3チロシンキナーゼ阻害剤、PDGF受容体ファミリー阻害剤、Flt3チロシンキナーゼ阻害剤、RETチロシンキナーゼ受容体ファミリー阻害剤、VEGF−3受容体アンタゴニスト、Rafタンパク質キナーゼファミリー阻害剤、血管新生阻害剤、Erb2阻害剤、mTOR阻害剤、IGF−1R抗体、NFkB阻害剤、プロテオソーム阻害剤、化学療法薬剤又はグルコース還元剤である。
【0183】
H.生物学的評価
【0184】
【表6】
【0185】
実施例C:p38阻害性効力及びp38/MK2基質選択性:この実験では、本発明の化合物のp38経路を阻害する効力を評価する。p38はリン酸化を介してMK2及びPRAKを活性化し、双方は次いでHsp27と相互作用し、炎症の増大及びショックを管理する能力の低下につながる。実験では、MK2及びPRAKの活性の半分を阻害するのに必要な本発明の化合物の量を測定した。これは、本発明の化合物が、自己免疫状態、リンパ腫及び関節リウマチを包含する多くの疾患を治療するのに役立つ炎症応答の低下を手助けするのにどれだけ効果的であるかを測定するものである。化合物の、新規のMK2基質
選択性阻害活性機構を、HSP−27由来のペプチド基質の、p38/MK2対p38/PRAK誘導リン酸化の遮断における、阻害剤効力を比較する酵素アッセイで評価する。化合物の活性化リン酸化−p38αを阻害する能力を、p38α/MK2及びp38α/PRAKカスケードアッセイ形式を用いて評価する。p38αのキナーゼ活性を、GST−MK2又はGST−PRAKをリン酸化するその能力によって決定する。p38αによるMK2又はPRAKの活性化を、蛍光標識したMK2/PRAK特異性ペプチド基質、Hsp27ペプチド(FITC−KKKALSRQLSVAA)のリン酸化を測定することで定量化する。Hsp27ペプチドのリン酸化を、IMAP技術(モレキュラーデバイス(Molecular Devices)社、カリフォルニア州、サニーベール)を用いて数量化する。キナーゼ反応を、20mMのHEPES、pH7.5、10mMのMgCl
2、0.01%Triton X−100、0.01%BSA、1mMのDTT及び2%DMSO中の384ウェルプレート(グライナー(Greiner)社、781280)で実行する。阻害剤濃度は0.02〜30,000nMの間でばらつき、一方で、Hsp27ペプチド基質及びMgATPはそれぞれ1μM及び10μMで一定に保たれる。活性化p38αを、カスケード反応での1nMの非リン酸化GST−MK2との反応のために30pMの最終濃度まで添加する。p38α/PRAKカスケードに関しては、非活性化GST−PRAKを10nMで一定に保つ一方で、p38αを200pMの最終濃度まで添加する。キナーゼ反応を室温でインキュベートし、IMAP結合溶液の添加によって120分後にクエンチした。これらの条件下で、およそ20%の基質Hsp27ペプチドがリン酸化される。反応をHsp27ペプチド及びMgATPの添加によって開始するプリインキュベーション実験を除いて、反応は活性化p38αの添加によって開始される。p38αの阻害剤とのプリインキュベーション、又はp38αの非活性化GST−MK2若しくは非活性化GST−PRAK及び阻害剤とのプリインキュベーションを、ATP及びHsp27ペプチドを添加して触媒作用を開始する前に、2×最終アッセイ濃度で、室温にて、240分間実施する。p38α化合物阻害活性効力を、p38α/MK2カスケードアッセイの用量反応IC50値又はKi値から定量化する一方で、基質選択性を、p38α/PRAK:p38α/MK2のIC50値の割合として算出する。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、自己免疫疾患及びリンパ腫といったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。
【0186】
化合物を上記アッセイに従って試験し、以下のIC50値をもたらした:
【0187】
【表7】
【0188】
実施例D:ヒトの単球におけるサイトカインの制御:p38経路は、TNFα、IL−1β及びIL−6を包含する複数の炎症促進性サイトカインの生合成に必要不可欠であるこ
とが示されている。したがって、p38MAPK経路の阻害は、炎症促進性サイトカインの生合成を減少させることで炎症応答を低下させるだろう。本実験では、TNFα、IL−6及びIL−1β(炎症促進性サイトカイン)の生合成を半分阻害するのに必要な本発明の化合物の量を示す。これは、自己免疫状態、リンパ腫及び関節リウマチを包含する多くの疾患の治療を助ける効果である炎症の低下に役立つ本発明の化合物の有効性を反映する。p38阻害剤のサイトカイン生産を遮断する効力及び効能の評価は、ヒトU937細胞株を用いて実行される。U937ヒト前単球細胞株を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(メリーランド州、ロックビル)から取得する。これらの細胞は、Burnette(Burnetteら、(2009).SD0006:a potent, selective and orally available inhibitor of p38 kinase,Pharmacology 84(1):42−60)が説明する通り、単球/マクロファージ表現型に分化する。分化したU937細胞を、完全な培地の96ウェルの組織培養プレート(200,000個の細胞/ウェル)に播種する。24時間後、細胞を60分間、化合物の存在下又は不在下で前処理し、次いで、LPS(0.1μg/mL)で4時間刺激する。次いで、培養培地を、ELISAによるTNFα、IL−6又はIL−1βの量の決定のために回収する。4パラメーターロジスティックモデルを用いて、及び、最良の最小二乗法へのあてはめを繰り返した後にIC
50の値を求め、サイトカイン濃度を組み換えタンパク質の標準曲線から推定する。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、リンパ腫又は炎症といったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。
【0189】
化合物を上記アッセイに従って試験し、以下のIC
50値をもたらした:
【0190】
【表8】
【0191】
実施例E:ヒトの単球におけるリン酸化タンパク質分析:本実験は、本発明の化合物のJNK経路を阻害する有効性及び選択性を示す。JNK経路は、炎症性サイトカインの生産を増加させることで炎症の増大をもたらす。この経路の阻害はより小さい炎症につながり、したがって、自己免疫状態、リンパ腫及び関節リウマチを包含する多くの疾患を治療するだろう。古典的p38阻害剤は、p38の基質の下流のリン酸化を遮断する一方で、JNKといった並行した経路の活性を上昇させる。異なるクラスのp38阻害剤のp38及びJNK経路制御に対する影響の評価を、2つの経路に関してそれぞれリン酸化HSP27及びリン酸化JNKを用いて行う。p38阻害剤のリン酸化タンパク質に影響を与える効力及び効能の評価は、ヒトU937細胞株を用いて実行される。U937ヒト前単球細胞株を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(メリーランド州、ロックビル)から取得
する。これらの細胞は、Burnette(Burnetteら、(2009).SD0006:a potent,selective and orally available inhibitor of p38 kinase,Pharmacology
84(1):42−60)が説明する通り、単球/マクロファージ表現型に分化する。浮遊細胞(T75cm
2の組織培養フラスコ内で1ミリリットル当たりおよそ50万個)を10%のウシ胎仔血清(FBS)と抗生物質を含むRPMIで成長させる。1日目に、フォルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA、20ng/ml)を培養フラスコに添加し、細胞を一晩37℃/5%CO
2でインキュベートする。2日目に、細胞を遠心分離し、PMA無しの新しい培地で再懸濁することで、細胞を洗浄する。付着した細胞をかきとり、遠心分離し、1ミリリットル当たり100万個の密度である新しい培地で再懸濁することで、付着した細胞を3日目に回収する。PMAで分化したU937細胞を次いで96ウェルの平底組織培養プレート(100ml/ウェル)の各ウェルに配分し、1ウェル当たり100,000個の細胞を回復させ、一晩インキュベートする。アッセイの日に、新しい培地(50ml/ウェル)をプレートに添加し、続いて化合物(25ml/ウェル、濃度応答)を1時間添加する。細胞を100mlの最終アッセイ体積で、LPS(100ng/ml)で刺激する。30分後、完全な溶解緩衝液(50ml/ウェル、MSD Tris溶解緩衝液、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を補充)を添加し、プレートを振盪機上に4℃で30分間置き、−20℃で冷凍保存する。細胞溶解物(25ml/ウェル)を解凍し、リン酸化Hsp27/合計Hsp27又はリン酸化JNK/合計JNKの決定のためにアッセイプレートからメソスケール(Meso Scale)検出プレートへ移す。
【0192】
化合物を上記アッセイに従って試験し、以下のIC
50及びEC
50値をもたらした:
【0193】
【表9】
【0194】
実施例F:ヒトの全血からのエンドトキシン誘導サイトカイン生産:ヒトの全血(HWB;25〜45ml)を、NSAIDフリーのドナーからヘパリンナトリウム(10ml、158USP単位)を含むバキュテナー回収管内へ集め、プール化し、優しく振動し、96ウェルの丸底組織培養プレート(180ml/ウェル)の各ウェルに配分した。化合物(10ml/ウェル、濃度応答)を添加し、使い捨ての96ポリプロピレンのピンツールを用いて15〜20秒間優しく混合し、プレートを37℃/5%CO
2で1時間インキュベートする。HWBを200mlの最終アッセイ体積で、LPS(100ng/ml)で刺激させる。3時間後、プレートを240xgで5分間回転し、赤血球をペレット化する。血漿を慎重に別の96ウェルの丸底プレートに写し、アッセイ培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)と抗生物質を含むDMEM)で2倍に希釈する。最後に、希釈した血漿(2
5ml/ウェル)を、IL−1、IL−6又はTNFαの決定のためにMeso Scale検出プレートへ移す。
【0195】
実施例G:A549細胞におけるIL−1誘導IL−6生産の決定:付着したA549細胞(T75cm
2組織培養フラスコ当たりおよそ500万個)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)と抗生物質を含むF−12K培地で成長させる。細胞をトリプシン処理し、洗浄及び1ミリリットル当たり30万個で再懸濁する。A549細胞を次いで96−ウェルの平底組織培養プレート(100ml/ウェル)の各ウェルに配分し、及び1ウェル当たり30,000個の細胞を回復させて一晩インキュベートする。アッセイの日に、新しい培地(50ml/ウェル)をプレートに添加し、続いて化合物(25ml/ウェル、濃度応答)を1時間添加する。細胞を100mlの最終アッセイ体積で、LPS(100ng/ml)で刺激する。3時間後、培養した培地(25ml/ウェル)をアッセイプレートから、IL−6量の決定のために、Meso Scaleのカスタムコーティングした検出プレートに移す。検出プレートを4℃で一晩インキュベートし、続いてsulfo標識の抗体カクテル(25ml/ウェル)を、力強く振盪させながら室温で1時間添加する。リード緩衝液(150ml/ウェル、dH
2Oで4倍に希釈したMSD4×リード緩衝液)を添加し、Meso Scale Sector Imager 6000を用いてプレートを読む。検出プレートの電気刺激の際に、リード緩衝液の共反応物が電気化学反応を強化し、光の形態でエネルギーが放出される。このシグナルを内部CCDカメラで捕捉し、定量化する。A549細胞の生存率をMTTアッセイを用いて決定する。LPSとの細胞の3時間のインキュベーション及び培養した培地の回収後、アッセイプレートをひっくり返し、優しく叩いていずれかの残留液体を除去する。MTT(アッセイ培地で調製する1mg/ml溶液)を添加(100ml/ウェル)し、プレートを37℃/5%CO
2のインキュベーターに3時間戻す。プレートを再度ひっくり返し、いずれかの液体も除去し、一晩乾燥させる。イソプロパノール(100ml/ウェル)を添加して、結果として得られるホルマザン結晶を可溶化し、プレートをMolecular Devices SpectraMax分光光度計を用いて570nm/650nmで読む。
【0196】
実施例H:関節リウマチ滑膜線維芽細胞(RASF)におけるIL−1β誘導プロスタグランジン生産:関節リウマチ滑膜線維芽細胞(RASF)は、膝全置換を行った女性RA患者の炎症性滑膜に由来する。滑膜組織は隣接の軟骨から裂いて、コラゲナーゼで単一細胞内へ分散させる。細胞は拡大し、バンク化する。RASF細胞をさらに、上記Burnetteが説明するように培養する。RASF細胞を、完全な成長培地の96ウェルの組織培養プレート(5×10
4個の細胞/ウェル)に播種する。24時間後、培地を、1%FBSを含む新しい成長培地と取り換える。細胞を化合物又はジメチルスルホキシド(DMSO)媒体対照の段階濃度(30,000〜0.01nM)で1時間処理し、次いで、1ng/mLのIL−1β(R&Dシステムズ(R&D Systems)社、ミネソタ州、ミネアポリス)で18〜20時間、37℃にて刺激し、培養上清(conditioned media))を回収する。培養培地のPGE
2量をELISA(ケイマンケミカル(Cayman
Chemical)社、ミシガン州、アンアーバー)で定量化する。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、リンパ腫又は関節リウマチといったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。
【0197】
実施例J:HUVEC細胞における基質選択性:化合物をp38/MK2の選択性阻害での生化学的特徴付け工程から特定する場合、化合物を次に細胞ベースアッセイに配置し、酵素の細胞翻訳可能性(translatability)を確認する。これらのアッセイは、ヒト臍帯
静脈内皮細胞(HUVEC)を用い、Hsp27リン酸化(p38/MK2活性化のバイオマーカー)を阻害する一方、別のp38の下流基質であるMSKに関連している組織因子(TF)を生産することを証明するものである。96ウェル形式では、付着したHUVEC(5継代以下)を1時間、参照として非選択性p38阻害剤又は対照のための媒体を
含む段階希釈した化合物で処理する。Hsp27リン酸化に関して、細胞を次いで500pg/mLのIL−1βで0.5時間刺激し、培地を除去し、細胞を溶解し、溶解物内のリン酸化Hsp27を酵素結合免疫吸着測定(ELISA)(ライフテクノロジー(Life Technologies)社、カリフォルニア州、カールスバッド)で定量化する。TF放出の手順は、IL−1β刺激が5時間続く以外はELISAベースアッセイ(アメリカン・ダイアグノスティカ(American Diagnostica)社、コネチカット州、スタンフォード)と同様である。TF阻害IC
50:HSP27リン酸化阻害IC
50の割合をこれらの細胞における基質選択性指数として定義する。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、リンパ腫及び自己炎症性疾患といったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。
【0198】
実施例K:イヌB細胞の成長制御:p38阻害剤は、独特にもイヌのB細胞増殖及び生存を阻害することが示されている。イヌB細胞に対するこの選択性効果は、米国で40,000超のペット動物に影響を及ぼす致死的疾患であるイヌB細胞リンパ腫の治療上での処置で利用され得る。p38阻害剤のB細胞成長に対する影響の定量化は、B細胞リンパ腫における効能の細胞の指標である。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、リンパ腫といったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。これらのアッセイは、Seventh Wave Laboratoriesと共同研究しているSaint Louis University Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルで得たビーグル犬の脾臓を用いる。白血球を、Histopaque1077による遠心分離によって脾細胞から単離する。増殖への効果を評価するため、白血球を次いで48時間、媒体又は試験化合物の存在下の96ウェルプレートで培養する。細胞を、TLR4刺激に関してはLPS、Staphylococcus aureusB細胞マイトジェン又はコンカナバリン−A T細胞マイトジェンで刺激し、次いで、増殖を、BRDU組込みELISA(Roche、ドイツ、マンハイム)で定量化する。アポトーシス実験のために、白血球を96−ウェルポリプロピレンU底プレート上にプレート化し、アクチノマイシンD又はシクロヘキシミド(アポトーシスの割合を増大する必要がある場合)の不在又は存在下で、p38MAPK阻害剤又はスタウロスポリン(陽性対照として)で最大24時間処理する。アポトーシスをCaspase−Glo3/7発光アッセイ(プロメガ(Promega)社、ウィスコンシン州、マディソン)を用いて決定する。双方のアッセイで、増加していく濃度の阻害剤でインキュベーションした後に作製される値を、阻害剤なしの陰性対照と比較する。
【0199】
実施例L:ラットにおけるLPS誘導TNFα生産:経口投薬より18時間前にラットを絶食させ、実験の間中、水へは自由にアクセスできるようにする。各実験群は5匹の動物から成る。化合物を、0.5%メチルセルロース(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社、ミズーリ州、セントルイス)、0.025%Tween 20(シグマアルドリッチ社)を含む媒体中の懸濁液として調製する。化合物又は媒体を、1mLの体積で、経口の経管栄養法で投与する。1つの実験で2つの媒体群を用いて実験内のばらつきを調整する。0.5mLの滅菌生理食塩水(バクスターヘルスケア(Baxter Healthcare)社、イリノイ州、ディアフィールド)中1mg/kgの用量で化合物を静脈内注射した4時間後、LPS(E.coli血清型0111:B4、シグマアルドリッチ社)を投与する。最大TNFα及びIL−1β生産に対応する時間点である、LPS注射から90分後、心穿刺を介して血液を血清分離管で回収する。凝血後、血清を取り出し、−20℃で保存し、IL−1β及びTNFα量をELISA(前述のBurnette)で定量化する。本明細書に記載され、本アッセイで評価される式(I)の種化合物は、リンパ腫又は炎症といったp38キナーゼ介在疾患の治療で治療効果を提供することが予想される。
【0200】
言及した文献は全て、参照によって、本明細書に記述されたように組込まれる。本発明又はその例示的な実施形態の要素を紹介する場合に、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」及び「前記(said)」は、1つ以上の要素があることを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「包含する(including)」及び「有する(having)」という語句は包含的であり、列挙した要素以外に追加の要素があり得ることを意味することが意図される。本発明は具体的な実施形態に対して説明してきたが、これら実施形態の詳細は限定として解釈されるべきではない。