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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-73727(P2021-73727A)
(43)【公開日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8239 20060101AFI20210416BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20210416BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20210416BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20210416BHJP
   G11C 11/16 20060101ALI20210416BHJP
   G11C 11/15 20060101ALI20210416BHJP
【FI】
   H01L27/105 447
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
   G11C11/16 240
   G11C11/15
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-15248(P2021-15248)
(22)【出願日】2021年2月2日
(62)【分割の表示】特願2018-505823(P2018-505823)の分割
【原出願日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-50266(P2016-50266)
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-182359(P2016-182359)
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智生
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA06
4M119AA11
4M119BB01
4M119BB03
4M119BB20
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD09
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD47
4M119EE22
4M119EE27
4M119EE29
5F092AA01
5F092AA06
5F092AB07
5F092AB08
5F092AC08
5F092AC12
5F092AC26
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB17
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB30
5F092BB31
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
(57)【要約】
【課題】磁気抵抗効果素子が効率的に集積された磁気メモリを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態にかかる磁気メモリは、複数の磁気抵抗効果素子と、第1強磁性金属層に亘って接続された第1配線と、前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの第2強磁性金属層に接続されたスピン軌道トルク配線と、前記第1配線に接続された第1制御素子と、前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第1接続点に接続された第2制御素子と、前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点にそれぞれ接続される複数の第1セル選択素子と、を備え、前記複数の磁気抵抗効果素子のうちのいずれかの書き込み動作時において、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子の積層方向に電位差を印加すると共に、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子に接続されたスピン軌道トルク配線に沿って電流を印加する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1強磁性金属層と、第2強磁性金属層と、前記第1強磁性金属層及び前記第2強磁性金属層の間に設けられた非磁性層と、をそれぞれ有する複数の磁気抵抗効果素子と、
前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの前記第2強磁性金属層に接続され、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在する複数のスピン軌道トルク配線と、
前記複数の磁気抵抗効果素子のうちの2以上の磁気抵抗効果素子の前記第1強磁性金属層に亘って接続された第1配線と、
前記第1配線に接続され、前記磁気抵抗効果素子に流れる電流を制御する第1制御素子と、
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第1接続点に接続された複数の第2制御素子と、
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点にそれぞれ接続された複数の第1セル選択素子と、を備え、
前記複数の磁気抵抗効果素子のうちのいずれかの書き込み動作時において、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子の積層方向に電位差を印加すると共に、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子に接続されたスピン軌道トルク配線に沿って電流を印加する、磁気メモリ。
【請求項2】
第1強磁性金属層と、第2強磁性金属層と、前記第1強磁性金属層及び前記第2強磁性金属層の間に設けられた非磁性層と、をそれぞれ有する複数の磁気抵抗効果素子と、
前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの前記第2強磁性金属層に接続され、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在する複数のスピン軌道トルク配線と、
前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの前記第1強磁性金属層に接続された複数の第1制御素子と、
前記複数のスピン軌道トルク配線のうちの2以上のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第1接続点に亘って接続された第2制御素子と、
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点に接続された複数の第1セル選択素子と、を備え、
前記複数の磁気抵抗効果素子のうちのいずれかの書き込み動作時において、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子の積層方向に電位差を印加すると共に、書き込み動作が行われる磁気抵抗効果素子に接続されたスピン軌道トルク配線に沿って電流を印加する、磁気メモリ。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果素子は、前記積層方向から見て、前記第1接続点と前記第2接続点に挟まれている請求項1又は2に記載の磁気メモリ。
【請求項4】
前記非磁性層の面積抵抗が1000Ω/μmよりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項5】
前記第1制御素子の電位が前記第2制御素子の電位よりも高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項6】
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第3接続点に接続された複数の第2セル選択素子をさらに有し、
前記第3接続点は、前記積層方向から見て、前記磁気抵抗効果素子と重なる位置に設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項7】
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点に接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの第2強磁性金属層の磁化の向きを一括で制御するデータ消去用素子をさらに備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【請求項8】
前記スピン軌道トルク配線は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の非磁性金属を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子として巨大磁気抵抗(GMR)素子とトンネル磁気抵抗(TMR)素子が知られている。GMR素子は、強磁性層と非磁性層の多層膜により構成されている。TMR素子は、非磁性層として絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)が用いられている。一般に、TMR素子の素子抵抗はGMR素子の素子抵抗より高いが、TMR素子の磁気抵抗(MR)比はGMR素子のMR比より大きい。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)用の素子として注目されている。
【0003】
MRAMの書き込み方式としては、電流が作る磁場を利用して書き込みを行う(磁化反転する)方式、磁気抵抗素子の積層方向に電流を流して生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用して書き込みを行う(磁化反転する)方式等が知られている。磁場を利用して書き込みを行う方式は、細い配線に流すことができる電流に限界があり、素子サイズが小さくなると書き込みができなくなる恐れがある。
【0004】
これに対して、スピントランスファートルク(STT)を利用する方式は、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を印加する。一方の強磁性層(固定層、参照層)でスピン分極した電流は、もう一方の強磁性層(自由層、記録層)に移行される。この移行により、もう一方の強磁性層(自由層、記録層)の磁化にスピントランスファートルク(STT)が与えられ、書き込み(磁化反転)が行われる。したがって、素子サイズが小さくなるほど書き込みに必要な電流が小さくなり、集積化し易いという利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】I.M.Miron,K.Garello,G.Gaudin,P.−J.Zermatten,M.V.Costache,S.Auffret,S.Bandiera,B.Rodmacq,A.Schuhl,and P.Gambardella,Nature,476,189(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、STTを用いたTMR素子の磁化反転は、エネルギーの効率の視点から考えると効率的ではあるが、磁化反転をさせるための反転電流密度が高くなる恐れがある。この反転電流密度は、TMR素子の長寿命化の観点から低いことが望ましい。この点は、GMR素子についても同様である。
従って、TMR素子及びGMR素子のいずれの磁気抵抗効果素子においても、この磁気抵抗効果素子に流れる電流密度を低減することが望まれている。
【0007】
近年、スピン軌道相互作用して生成された純スピン流を利用した磁化反転も検討されている(例えば、非特許文献1)。スピン軌道相互作用した純スピン流は、スピン軌道トルク(SOT)を誘起し、SOTにより磁化反転を起こす。純スピン流は上向きスピンの電子と下向きスピン電子が同数で互いに逆向きに流れることで生み出される。そのため、電荷の流れは相殺されており、電流としてはゼロである。つまり、SOTを用いた磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果素子の積層方向に流れる電流がゼロであり、長寿命化の面で期待されている。
【0008】
しかしながら、スピン軌道相互作用により生じたSOTを利用した磁気抵抗効果素子は、実際の用途を考慮した応用についての検討が始まったばかりである。そのため、磁気メモリとしてSOTを利用した磁気抵抗効果素子を、実際に生産する場合、どのように集積するのが適切であるか等の様々な課題が考えられる。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、スピン軌道相互作用により生じたSOTを利用した磁気抵抗効果素子を効率的に集積できる磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
第1の態様に係る磁気メモリは、磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化するように構成された第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層の間に設けられた非磁性層とを有する複数の磁気抵抗効果素子と、前記複数の磁気抵抗効果素子のうち少なくとも一つの磁気抵抗効果素子の前記第1強磁性金属層に接続された第1配線と、前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの前記第2強磁性金属層に接続され、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在する複数のスピン軌道トルク配線と、前記第1配線に接続され、前記磁気抵抗効果素子に流れる電流を制御する少なくとも一つの第1制御素子と、前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第1接続点に接続され、前記スピン軌道トルク配線に流れる電流を制御する少なくとも一つの第2制御素子と、前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点に、それぞれ接続された複数の第1セル選択素子と、を備える。
【0012】
前記磁気抵抗効果素子は、前記積層方向から見て、前記第1接続点と前記第2接続点に挟まれていてもよい。
【0013】
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第3接続点に接続された複数の第2セル選択素子をさらに有し、前記第3接続点は、前記積層方向から見て、前記磁気抵抗効果素子と重なる位置に設けられていてもよい。
【0014】
前記複数のスピン軌道トルク配線のそれぞれの第2接続点に接続され、前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれの第2強磁性金属層の磁化の向きを一括で制御するデータ消去用素子をさらに備えてもよい。
【0015】
前記スピン軌道トルク配線は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の非磁性金属を含んでもよい。
【0016】
前記第1配線が複数の磁気抵抗効果素子に接続される場合において、前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれと前記第1制御素子との間に整流素子が設けられていてもよい。
【0017】
前記第1制御素子の電位が前記第2制御素子の電位よりも高い構成でもよい。
【0018】
前記非磁性層の面積抵抗が1000Ω/μmよりも大きくてもよい。
【0019】
第2の態様にかかる磁気メモリは、磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化するように構成された第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層の間に設けられた非磁性層とを有する磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の前記第2強磁性金属層に接続され、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を有する複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子のそれぞれの前記第1強磁性金属層に接続された複数の第1制御素子と、前記複数の駆動素子のうち少なくとも二つの駆動素子のスピン軌道トルク配線の第1接続点に接続された少なくとも一つの第2制御素子と、前記複数の駆動素子のそれぞれの前記スピン軌道トルク配線の第2接続点に接続された複数の第1セル選択素子と、を有する。
【0020】
第3の態様にかかる磁気メモリは、磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化するように構成された第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層の間に設けられた非磁性層とを有する磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の前記第2強磁性金属層に接続され、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を有する複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子のうち少なくとも二つの駆動素子の前記第1強磁性金属層に接続された少なくとも一つの第1制御素子と、前記複数の駆動素子のそれぞれの前記スピン軌道トルク配線の第1接続点に接続された複数の第2制御素子と、前記複数の駆動素子のそれぞれの前記スピン軌道トルク配線の第2接続点に接続された複数の第1セル選択素子と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
上記態様にかかる磁気メモリによれば、スピン軌道相互作用した純スピン流を利用した磁気抵抗効果素子を効率的に集積できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る磁気メモリの回路図である。
図2】第1実施形態の別の例に係る磁気メモリの別の例の回路図である。
図3】第1実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図である。
図4】第1実施形態に係る磁気メモリの磁気抵抗効果素子近傍の要部の断面模式図である。
図5】スピンホール効果について説明するための模式図である。
図6】第1実施形態に係る磁気メモリの回路構造の別の例の模式図である。
図7】第1実施形態に係る磁気メモリの回路構造の別の例の斜視模式図である。
図8】整流素子が設けられた磁気メモリの回路構造の模式図である。
図9】第2実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図である。
図10】第2実施形態に係る磁気メモリの回路構造の斜視模式図である。
図11】第2実施形態に係る磁気メモリの磁気抵抗効果素子近傍の要部の断面模式図である。
図12】第3実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図である。
図13】第3実施形態に係る磁気メモリの回路構造の斜視模式図である。
図14】第4実施形態に係る磁気メモリの回路構造の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
(第1実施形態)
<磁気メモリ(回路図)>
図1及び図2は、本実施形態にかかる磁気メモリの回路図である。磁気メモリ200は、複数の駆動素子100を有する。駆動素子100は、磁気抵抗効果素子10とスピン軌道トルク配線20とを有する。図1及び図2の回路では、スピン軌道トルク配線20を抵抗21、22として図示している。図1に示す磁気メモリ200及び図2に示す磁気メモリ201はいずれも、書込み時及び読込み時の電流リークは僅かであり、磁気メモリとして機能する。
【0025】
図1に示す磁気メモリ200及び図2に示す磁気メモリ201において、一つの駆動素子100には、第1制御素子13と、第2制御素子14と、第1セル選択素子15とが接続されている。これらの制御素子には、FET(field-effect transistor)等の公知のトランジスタ等が用いられる。
【0026】
第1制御素子13と第1セル選択素子15とを動作させる(「ON」状態にする)と、磁気抵抗効果素子10の積層方向に電流を流すことができ、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化を読出すことができる。また第2制御素子14と第1セル選択素子15とを動作させる(「ON」状態にする)と、スピン軌道トルク配線20に電流を流すことができ、磁気抵抗効果素子10の磁化反転(書込み)を行うことができる。
【0027】
図1に示す磁気メモリ200において、第2制御素子14は、少なくとも二つの駆動素子100に渡って接続されている。そのため、第2制御素子14は、集積基板の端部等に一つ設置すれば足りる。換言すると、第2制御素子14は、磁気メモリ200の集積性に大きな影響を及ぼさない。
【0028】
同様に、図2に示す磁気メモリ201では、第1制御素子13は、少なくとも二つの駆動素子100に渡って接続されている。そのため、第1制御素子13は、集積基板の端部等に一つ設置すれば足りる。換言すると、第1制御素子13は、磁気メモリ201の集積性に大きな影響を及ぼさない。
【0029】
いずれの場合においても、一つの駆動素子100と二つの制御素子とによって構成される単位セルが、磁気メモリの集積性に影響を与える。二つの制御素子は、図1に示す磁気メモリ200では、第1制御素子13と第1セル選択素子15であり、図2に示す磁気メモリ201では、第2制御素子14と第1セル選択素子15である。
【0030】
各駆動素子100を駆動するためには、最低3つの制御素子が必要である。しかしながら、集積度の観点では、一つの駆動素子と二つの制御素子によって構成される単位セルの配置を考慮すれば十分である。
【0031】
(回路構造)
図3は、第1実施形態に係る磁気メモリの回路構造を模式的に示した模式図である。図3に示す模式図は、図1に示す回路図に対応する。
第1実施形態に係る磁気メモリ200は、磁気抵抗効果素子10と、第1配線11と、スピン軌道トルク配線20と、第1制御素子13と、第2制御素子14と、第1セル選択素子15とを有する。
【0032】
<磁気抵抗効果素子>
図4は、第1実施形態に係る磁気メモリの磁気抵抗効果素子近傍の要部を拡大した断面模式図である。
【0033】
図4に示すように、磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性金属層1と、非磁性層2と、第2強磁性金属層3とを有する。非磁性層2は、第1強磁性金属層1と第2強磁性金属層3に挟持されている。
【0034】
図4には、絶縁部5と、第2配線16と、第3配線17と、を合せて図示する。絶縁部5は、磁気抵抗効果素子10を挟む第1配線11とスピン軌道トルク配線20との間を絶縁する。第2配線16は、スピン軌道トルク配線20の第1接続点20Aと、第2制御素子14との間に設けられた配線である。第3配線17は、スピン軌道トルク配線12の第2接続点20Bと、第1セル選択素子15との間に設けられた配線である。
【0035】
第1強磁性金属層1の磁化は一方向に固定されている。第1強磁性金属層1の磁化の向きに対して、第2強磁性金属層3の磁化の向きが相対的に変化することで、磁気抵抗効果素子10として機能する。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合、第1強磁性金属層の保磁力は第2強磁性金属層の保磁力よりも大きい。交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合、第1強磁性金属層の磁化は反強磁性層との交換結合によって固定される。
【0036】
磁気抵抗効果素子10は、非磁性層2が絶縁体からなる場合、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子であり、非磁性層2が金属からなる場合、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子である。
【0037】
磁気抵抗効果素子10には、公知の磁気抵抗効果素子の構成を用いることができる。例えば、磁気抵抗効果素子10の各層は複数の層からなるものでもよいし、第1強磁性金属層1の磁化方向を固定するための反強磁性層等のような他の層を備えてもよい。
第1強磁性金属層1は固定層や参照層、第2強磁性金属層3は自由層や記録層などと呼ばれる。
【0038】
第1強磁性金属層1及び第2強磁性金属層3は、磁化方向が層に平行な面内方向である面内磁化膜、磁化方向が層に対して垂直方向である垂直磁化膜のいずれでもよい。
【0039】
第1強磁性金属層1には、公知の材料を用いることができる。例えば、第1強磁性金属層1には、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、または、これらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。また第1強磁性金属層1には、これらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
【0040】
より高い出力を得るためには、第1強磁性金属層1にCoFeSiなどのホイスラー合金を用いることが好ましい。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
【0041】
第1強磁性金属層1にIrMn,PtMnなどの反強磁性材料を含む反強磁性層を隣接させてもよい。第1強磁性金属層1の第2強磁性金属層3に対する保磁力がより大きくなる。第1強磁性金属層1の漏れ磁場を第2強磁性金属層3に影響させないようにするため、磁気抵抗効果素子10をシンセティック強磁性結合の構造としてもよい。
【0042】
第1強磁性金属層1の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、CoとPtの積層膜を用いることが好ましい。例えば、第1強磁性金属層1を[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]/Ru(0.9nm)/[Pt(0.16nm)/Co(0.16nm)]/Ta(0.2nm)/FeB(1.0nm)とする。
【0043】
第2強磁性金属層3には、強磁性材料、特に軟磁性材料を適用できる。例えば、第2強磁性金属層3には、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。これらを満たす具体的な材料として、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feが挙げられる。
【0044】
第2強磁性金属層3の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、第2強磁性金属層3の厚みを2.5nm以下とすることが好ましい。第2強磁性金属層3と非磁性層2の界面で、第2強磁性金属層3に垂直磁気異方性を付加することができる。垂直磁気異方性は第2強磁性金属層3の膜厚を厚くすることによって効果が減衰するため、第2強磁性金属層3の膜厚は薄い方が好ましい。
【0045】
非磁性層2には、公知の材料を用いることができる。
例えば、非磁性層2が絶縁体からなる場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としてAl、SiO、Mg、及び、MgAl等を用いることができる。またこれらの他にも、Al、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等を非磁性層2に用いることができる。これらの材料の中でもMgOやMgAlは、コヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく透過できる。
非磁性層2が金属からなる場合、その材料としてCu、Au、Ag等を用いることができる。
【0046】
磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性金属層1、非磁性層2及び第2強磁性金属層3以外の公知の層を有してもよい。例えば、結晶配向性や磁性の安定性を高めるためのキャップ層等を有していてもよい。
【0047】
<第1配線>
第1配線11は、複数の磁気抵抗効果素子10のうち少なくとも一つの磁気抵抗効果素子10に設けられている。第1配線11は、複数の磁気抵抗効果素子10のそれぞれの第1強磁性金属層1と電気的に接続されている。
【0048】
第1配線11は、導電性の高い材料であれば特に問わない。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
【0049】
<スピン軌道トルク配線>
スピン軌道トルク配線20は、磁気抵抗効果素子10の積層方向に対して交差する方向に延在する。スピン軌道トルク配線20は、複数の磁気抵抗効果素子10のそれぞれに設けられている。スピン軌道トルク配線20は、それぞれの磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層3に接続されている。
【0050】
スピン軌道トルク配線20は、スピン軌道トルク配線20に電流を流す電源に電気的に接続され、その電源と共に、磁気抵抗効果素子10に純スピン流を注入するスピン注入手段として機能する。
スピン軌道トルク配線20は、第2強磁性金属層3に直接接続されていてもよいし、他の層を介して接続されていてもよい。
【0051】
スピン軌道トルク配線20は、電流が流れるとスピンホール効果によって純スピン流が生成される材料を含む。スピン軌道トルク配線20は、スピン軌道トルク配線20中に純スピン流を生成できる構成を有しているものであれば足りる。従って、単体の元素により構成されている場合に限られず、純スピン流が生成される材料で構成される部分と純スピン流が生成されない材料で構成される部分とを有してもよい。
【0052】
スピンホール効果とは、材料に電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の向きに直交する方向に純スピン流が誘起される現象である。
【0053】
図5は、スピンホール効果について説明するための模式図である。図5に基づいてスピンホール効果により純スピン流が生み出されるメカニズムを説明する。
【0054】
図5に示すように、スピン軌道トルク配線20の延在方向に電流Iを流すと、上向きスピンSと下向きスピンSはそれぞれ電流と直交する方向に曲げられる。通常のホール効果とスピンホール効果とは運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通する。一方で、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果では磁場が存在しないのに電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)で移動方向が曲げられる点で大きく異なる。
【0055】
非磁性体(強磁性体ではない材料)では上向きスピンSの電子数と下向きスピンSの電子数とが等しい。図中では、上方向に向かう上向きスピンSの電子数と下方向に向かう下向きスピンSの電子数が等しい。そのため、電荷の正味の流れとしての電流はゼロである。この電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0056】
これに対して、強磁性体中に電流を流した場合にも上向きスピン電子と下向きスピン電子が互いに反対方向に曲げられる点は同じである。しかしながら、強磁性体中では上向きスピン電子と下向きスピン電子のいずれかが多い状態である。そのため、結果として電荷の正味の流れが生じてしまう(電圧が発生してしまう)。従って、スピン軌道トルク配線20の材料としては、強磁性体だけからなる材料は含まれない。
【0057】
上向きスピンSの電子の流れをJ、下向きスピンSの電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J−Jで定義される。図5においては、純スピン流としてJが図中の上方向に流れる。ここで、Jは分極率が100%の電子の流れである。
【0058】
図5において、スピン軌道トルク配線20に強磁性体を接触させると、純スピン流は強磁性体中に拡散して流れ込む。つまり、スピン軌道トルク配線20に電流を流して純スピン流を生成すると、その純スピン流によりスピンはスピン軌道トルク配線20と接する第2強磁性金属層3に拡散する。純スピン流によりスピンが第2強磁性金属層3に注入されることで、スピン軌道トルク(SOT)効果で自由層である第2強磁性金属層の磁化反転が生じる。
【0059】
スピン軌道トルク配線20は、非磁性の重金属を含んでもよい。ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属の意味で用いている。スピン軌道トルク配線20は、非磁性の重金属だけからなってもよい。
【0060】
非磁性の重金属は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。例えば、非磁性の重金属として、タングステン、レニウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される1以上の金属原子を含む金属又は合金が挙げられる。
【0061】
これらの非磁性金属の重金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。通常、金属に電流を流すとすべての電子はそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動く。これに対して、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属は、スピン軌道相互作用が大きいため、電子の動く方向がスピンホール効果によって電子のスピンの向きに依存し、純スピン流Jが発生しやすい。
【0062】
タングステン、レニウム、オスミウム及びイリジウムは、最外殻に5dの電子を持ち、d軌道の5つの軌道が縮退している場合、大きな軌道角運動量を持つ。そのため、これらの材料は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きくなり、効率的にスピン流を発生できる。
【0063】
スピン軌道トルク配線20は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属とは、強磁性金属、あるいは、反強磁性金属を指す。非磁性金属に微量な磁性金属が含まれるとスピン軌道相互作用が増強され、スピン軌道トルク配線20に流す電流に対するスピン流生成効率を高くできる。スピン軌道トルク配線20は、反強磁性金属だけからなってもよい。
【0064】
スピン軌道相互作用はスピン軌道トルク配線材料の物質が生み出す固有の内場によって生じる。そのため、非磁性材料でも純スピン流は生じる。スピン軌道トルク配線材料に微量の磁性金属を添加すると、磁性金属自体が流れる電子スピンを散乱し、スピン流生成効率が向上する。ただし、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生した純スピン流が添加された磁性金属によって散乱され、結果としてスピン流が減少する。したがって、添加される磁性金属のモル比は、スピン軌道トルク配線20における純スピン生成部の主成分のモル比よりも十分小さい方が好ましい。目安で言えば、添加される磁性金属のモル比は純スピン生成部の主成分のモル比の3%以下であることが好ましい。
【0065】
スピン軌道トルク配線20は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。スピン軌道トルク配線20は、トポロジカル絶縁体だけからなってもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体、あるいは、高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。物質にはスピン軌道相互作用という内部磁場のようなものがある。外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する物質がトポロジカル絶縁体である。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率で生成することができる。
【0066】
トポロジカル絶縁体として、例えば、SnTe,Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3,TlBiSe,BiTe,(Bi1−xSbTeなどが好ましい。これらのトポロジカル絶縁体は、高効率でスピン流を生成することが可能である。
【0067】
<第1制御素子、第2制御素子、第1セル選択素子>
図3及び図4に示すように、第1制御素子13は、第1配線11に接続されている。第1制御素子13は、図示略の外部電源に接続され、第1配線11に流す電流を制御する。
【0068】
第1制御素子13は、必ずしも複数設ける必要はなく、第1配線11同士を互いに接続し、一つの第1制御素子13のみを設けてもよい。図6は、第1実施形態に係る磁気メモリ202の回路構造の別の例の模式図である。図7は第1実施形態に係る磁気メモリ202の回路構造の別の例の斜視模式図である。図6は、図7における第1配線11に沿って切断した断面に対応する。
【0069】
図7に示すように、磁気メモリ202における第1制御素子13は、行列状に配置された複数の磁気抵抗効果素子10のいずれかの行に電流を印加するかを制御する。そのため、第1制御素子13に電流を印加すると、第1配線11を介して複数の磁気抵抗効果素子10に電流が至るが、何れの磁気抵抗効果素子10に電流を流すかは、後述する第1セル選択素子15で制御可能である。
【0070】
一方で、第1配線11が複数の磁気抵抗効果素子10に接続されている場合、配線を伝って漏れ電流が発生する場合がある。例えば、第2制御素子14から印加した電流は第1セル選択素子15に流れることが正しい電流の流れである。しかしながら、その電流の一部は、磁気抵抗効果素子10及び第1配線11を介して隣接する磁気抵抗効果素子10に流れる可能性がある。この場合、この電流は磁気抵抗効果素子10にとってはノイズの原因となる。
【0071】
そのため第1配線11が複数の磁気抵抗効果素子10に接続されている場合は、ノイズを防ぐ手段を設けることが好ましい。図8は、整流素子30が設けられた磁気メモリ203の回路構造の模式図である。図8に示すように、それぞれの磁気抵抗効果素子10と第1制御素子13との間に整流素子30を設けると、電流が流れる方向を限定できる。電流が流れる方向を制御することで漏れ電流の発生を抑制し、ノイズの発生を低減できる。
【0072】
整流素子30は、公知のダイオードを用いることができる。整流素子30は、磁気抵抗効果素子10と第1制御素子13との間に配設されていれば、図8に示す第1配線11と磁気抵抗効果素子10の間に配設されている場合に限られない。例えば、第1配線11の途中に整流素子30を設けてもよい。
【0073】
ノイズを防ぐ別の手段として、第1制御素子13の電位を第2制御素子14の電位より高くしてもよい。第1制御素子13は磁気抵抗効果素子10の積層方向に流れる電流を制御し、第2制御素子14はスピン軌道トルク配線20の延在方向に流れる電流を制御する。そのため、第1制御素子13と第2制御素子14の動作は独立しており、それぞれの電位は第1セル選択素子15より高ければ、自由に設定できる。第1制御素子13の電位を第2制御素子14の電位より高くすると、電流の流れることができる方向が一方向に規定され、整流素子30を設けた場合と同様の効果が得られる。
【0074】
第2制御素子14は、複数のスピン軌道トルク配線20のそれぞれの第1接続点20Aに第2配線16を介して接続されている。第2制御素子14は、図示略の外部電源に接続され、スピン軌道トルク配線20に流す電流を制御する。図7では、第2制御素子14は、行列状に配置された複数の磁気抵抗効果素子10のいずれの列に電流を印加するかを制御する。第2制御素子14は、第1制御素子13と同様、必ずしも複数設ける必要はない。例えば、第2配線16同士を互いに接続し、一つの第2制御素子14のみを設けてもよい。この場合も、何れのスピン軌道トルク配線12に電流を印加するかは、後述する第1セル選択素子15で制御可能である。
【0075】
図1図8では、一つの第2制御素子14から延びる第2配線16は途中で分岐し、それぞれのスピン軌道トルク配線20に接続されている。すなわち、第2制御素子14の数を磁気抵抗効果素子10の数に対して少なくすることができ、磁気メモリの集積性を高めることができる。
【0076】
第1セル選択素子15は、複数のスピン軌道トルク配線20のそれぞれの第2接続点12Bに第3配線17を介して接続されている。第1セル選択素子15は、一つの磁気抵抗効果素子10に対して一つ設けられている。第1セル選択素子15は、いずれの磁気抵抗効果素子10に書込み電流及び読出し電流を流すかを制御する。第1セル選択素子15は、接地されている。
【0077】
第1制御素子13、第2制御素子14及び第1セル選択素子15は、公知のスイッチング素子を用いることができる。例えば、電界効果トランジスタ等に代表されるトランジスタ素子等を用いることができる。
【0078】
第2配線16及び第3配線17は、通常の配線として用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
【0079】
図4に示すように、第1接続点20Aと第2接続点20Bは、磁気抵抗効果素子10の積層方向から見て磁気抵抗効果素子10を挟む位置にそれぞれ設けられていることが好ましい。換言すると、磁気抵抗効果素子10は、積層方向から見て、第1接続点20Aと第2接続点20Bに挟まれている。
【0080】
第2配線16から供給された電流は、第1接続点20Aを介してスピン軌道トルク配線20に流れる。スピン軌道トルク配線20を流れた電流は、第2接続点20Bを介して、第3配線17に流れる。すなわち、スピン軌道トルク配線20に流れる電流の主方向は、第1接続点20Aから第2接続点20Bに向けた方向となる。第1接続点20Aと第2接続点20Bの間に磁気抵抗効果素子10を配設すると、電流の主方向と直交する位置に磁気抵抗効果素子10が存在することになり、純スピン流によりスピンを磁気抵抗効果素子10へ効率的に供給できる。
【0081】
ここまで本実施形態に係る磁気メモリの構成について説明した。以下、図3を例に、磁気メモリ200による書込み動作及び読出し動作について説明する。
【0082】
<書込み動作>
書き込み動作は、2種類の方式がある。
第1の方式は、純スピン流が誘起したスピン軌道トルク(SOT)のみを利用して書込み(磁化反転)を行う方式である。第2の方式は、スピントランスファートルク(STT)又は磁気抵抗効果素子10にかかる電圧による書込みをスピン軌道トルク(SOT)でアシストする方式である。
【0083】
まず、第1の方式について説明する。
第1の方式は、第2制御素子14と第1セル選択素子15によって書込みを制御する。
【0084】
第2制御素子14を開放(接続)し、開放する第1セル選択素子15を選択する。第2制御素子14は外部電源に接続され、第1セル選択素子15は接地されている。そのため、第2制御素子14、第2配線16、スピン軌道トルク配線20、第3配線17、選択された第1セル選択素子15の順に流れる第1の電流経路が形成される。
【0085】
第1の電流経路において、スピン軌道トルク配線20内を流れる電流は、スピン流を誘起する。スピン軌道トルク配線20内に誘起されたスピン流は、第2強磁性金属層3(図4参照)に浸みだし、第2強磁性金属層3内のスピンにスピン軌道トルク(SOT)を与える。その結果、データを書き込む磁気抵抗効果素子10(以下、「選択セル」ということがある。)の第2強磁性金属層3の磁化の向きが反転する。すなわち、第1の電流経路に電流が流れることで、選択セルの書き込み動作が行われる。
【0086】
次いで、第2の方式について説明する。
第2の方式は、第1制御素子13と、第2制御素子14と第1セル選択素子15によって書込みを制御する。
【0087】
第1制御素子13及び第2制御素子14を開放(接続)し、開放する第1セル選択素子15を選択する。第1制御素子13及び第2制御素子14は外部電源に接続され、第1セル選択素子15は接地されている。そのため、二つの電流経路が形成される。
【0088】
第1の電流経路は、第1の方式と同様に、第2制御素子14、第2配線16、スピン軌道トルク配線20、第3配線17、選択された第1セル選択素子15の順に流れる経路である。
第2の電流経路は、第1制御素子13、第1配線11、磁気抵抗効果素子10、スピン軌道トルク配線20、第3配線17、選択された第1セル選択素子15の順に流れる経路である。
【0089】
第1の方式と同様に、第1の電流経路に流れる電流は、スピン軌道トルク(SOT)を誘起する。第2の電流経路に流れる電流は、磁気抵抗効果素子10の積層方向に流れるため、スピントランスファートルク(STT)を誘起する。その結果、選択セルの第2強磁性金属層3の磁化の向きは、スピン軌道トルク及びスピントランスファートルクを受け、反転する。すなわち、STT及びSOTにより選択セルの書き込み動作が行われる。
【0090】
ここで磁気抵抗効果素子10の抵抗が高い場合、第2の電流経路に流れる電流量は少なくなる。例えば、磁気抵抗効果素子10を構成する非磁性層2の面積抵抗が1000Ω/μmよりも大きい場合、第2の電流経路に流れる電流量は非常に少なくなる。この場合でも、磁気抵抗効果素子10の積層方向には電位差があり、磁気抵抗効果素子10には電圧がかかる。磁化反転は、電圧差によっても生じると言われており、磁気抵抗効果素子10に加わる電圧差を利用してもよい。
【0091】
<読出し動作>
読出し動作は、上述の第2の電流経路に電流を流すことで行う。流す電流は、第2強磁性金属層3の磁化の向きが反転しない程度の電流である。
【0092】
磁気抵抗効果素子は、書込みが行われた選択セルと、書込みが行われていない非選択セルとで抵抗値が異なる。第1強磁性金属層1と第2強磁性金属層3の磁化の向きが反対の向き(反平行)の場合と、同じ向き(平行)の場合とで、磁気抵抗効果素子10の積層方向の抵抗値が異なるためである。
【0093】
それぞれの磁気抵抗効果素子10の抵抗値の違いを、第1制御素子13とそれぞれの第1セル選択素子15と間の電位差として読み出すことで、読み出し動作が行われる。
【0094】
<磁気メモリの製造方法>
本実施形態に係る磁気メモリは公知の方法を用いて製造することができる。以下、磁気メモリの製造方法について説明する。
【0095】
磁気メモリを作製する基板を準備する。基板は、平坦性に優れることが好ましい。平坦性に優れた表面を得るために、材料として例えば、Si、AlTiC等を用いることができる。
【0096】
次いで、基板上に第1配線11をパターニングする。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー等の手段によって行う。第1配線11がパターニングされた基板上に、第1強磁性金属層1、非磁性層2、第2強磁性金属層3を順に積層する。基板と第1強磁性金属層の間に下地層を設けてもよい。下地層は、基板上に積層される第1強磁性金属層1を含む各層の結晶配向性、結晶粒径等の結晶性を制御することができる。
【0097】
これらの層は、例えば、マグネトロンスパッタ装置を用いて形成できる。磁気抵抗効果素子がTMR素子の場合、トンネルバリア層は、例えば第1強磁性金属層1上にスパッタした0.4〜2.0nm程度のアルミニウム及び複数の非磁性元素の二価の陽イオンを含む金属薄膜を、プラズマ酸化あるいは酸素導入により酸化し、さらに熱処理を加えることによって形成できる。成膜法としてはマグネトロンスパッタ法のほか、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の薄膜作成法を用いることができる。
【0098】
次いで、磁気抵抗効果素子10を作製したい部分に、レジスト等の保護膜を設置し、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて不要部を除去する。除去した不要部をレジスト等の絶縁部5で埋めた後、上面を平坦化する。平坦化により、次に成膜するスピン軌道トルク配線20と磁気抵抗効果素子10の界面におけるスピン散乱を抑制できる。
【0099】
次に、平坦化した磁気抵抗効果素子10の上面に、スピン軌道トルク配線20を構成する材料を成膜する。成膜はスパッタ等を用いることができる。
【0100】
最後に、第2配線16、第3配線17、第1制御素子13、第2制御素子14、第1セル選択素子15をそれぞれ作製する。
【0101】
第2配線16及び第3配線17は、パターニング等により所望の部分にのみ作製する。第1制御素子13、第2制御素子14及び第1セル選択素子15は、トランジスタ等のスイッチング素子を公知の方法で作製する。作製する基板が、シリコン等の半導体の場合、同一基板上に、第1制御素子13、第2制御素子14及び第1セル選択素子15を作製できる。
【0102】
上述のように、本実施形態にかかる磁気メモリによれば、磁気抵抗効果素子10を選択するための第1制御素子13、第2制御素子14及び第1セル選択素子15の数を少なくできる。すなわち、スピン軌道相互作用した純スピン流を利用した磁気抵抗効果素子を効率的に集積できる。
【0103】
ここまで、磁化方向が変化する第2強磁性金属層3が基板側であるトップピン構造について説明した。本実施形態に係る磁気抵抗効果素子10は、トップピン構造に限られず、固定層である第1強磁性金属層1が基板側に来るボトムピン構造でもよい。
【0104】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図であり、図10は、第2実施形態に係る磁気メモリの回路構造の斜視模式図である。また図11は、第2実施形態に係る磁気メモリの磁気抵抗効果素子近傍の要部の断面模式図である。第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付している。
【0105】
第2実施形態に係る磁気メモリ204は、第4配線40及び第2セル選択素子41を備える点が、第1実施形態に係る磁気メモリ200と異なる。
【0106】
<第4配線及び第2セル選択素子>
第4配線40は、各磁気抵抗効果素子10と、第2セル選択素子41とを繋ぐ。第4配線40の磁気抵抗効果素子10の一端は、第3接続点20Cに接続されている。第3接続点20Cは、磁気抵抗効果素子10の積層方向から平面視した際に磁気抵抗効果素子10と重なる位置に設けられている(図11参照)。第3接続点20Cは、スピン軌道トルク配線20の磁気抵抗効果素子10と反対側の面に設けられている。
【0107】
第4配線40は、第2配線16及び第3配線17と同様に、通常の配線として用いられる材料を用いることができる。
【0108】
第2セル選択素子41は、公知のスイッチング素子を用いることができる。例えば、電界効果トランジスタ等に代表されるトランジスタ素子等を用いることができる。
【0109】
<書込み動作及び読み出し動作>
第2実施形態に係る磁気メモリ204は、読出し動作時の経路が異なる。書込み動作は、第1実施形態に係る磁気メモリ200と同一の方式で行われる。
【0110】
第2実施形態に係る磁気メモリ204の読出しは、以下の第3の電流経路となる。
第3の電流経路は、第1制御素子13、第1配線11、磁気抵抗効果素子10、スピン軌道トルク配線20、第4配線40、第2セル選択素子41の順に流れる経路である。
【0111】
第3の電流経路は、第1実施形態に係る磁気メモリ200における読出し経路である第2の電流経路と、スピン軌道トルク配線20を流れる電流の方向が異なる。第2の電流経路においては、磁気抵抗効果素子10と第3配線17の間で、スピン軌道トルク配線20の延在方向に沿って電流は流れる。これに対し、第3の電流経路においては、スピン軌道トルク配線20の延在方向に対して交差する向きに電流は流れる。磁気抵抗効果素子10と第4配線40は、磁気抵抗効果素子10の積層方向重なる位置に設けられているためである。
【0112】
スピン軌道トルク配線20は、第4配線40等の通常の配線よりも抵抗率が高い。スピン軌道トルク配線20の配線抵抗は、磁気メモリ200全体の回路抵抗の一要因である。読出し時の読出し電流をスピン軌道トルク配線20と交差する方向に流すことで、全体の回路抵抗に占める配線抵抗の割合を小さくすることができる。
【0113】
全体の回路に占める配線抵抗の割合が小さくなると、磁気抵抗効果素子10の磁気抵抗比の違いが判断しやすくなる。磁気メモリ204は、磁気抵抗効果素子10の磁気抵抗比の違いによってデータを読み出すため、データの信頼性が高まる。
【0114】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図であり、図13は、第3実施形態に係る磁気メモリの回路構造の斜視模式図である。図では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付している。
【0115】
第3実施形態に係る磁気メモリ205は、データ消去用素子50と、第5配線51とを有する点が、第1実施形態に係る磁気メモリ200と異なる。
【0116】
<第5配線及びデータ消去用素子>
図12及び図13に示すように、データ消去用素子50は、各スピン軌道トルク配線20に接続される第3配線17のそれぞれに接続されている。データ消去用素子50は、第5配線51と各第3配線17を介して、スピン軌道トルク配線20の第2接続点20Bに接続されている。
【0117】
データ消去用素子50は、公知のスイッチング素子を用いることができる。例えば、電界効果トランジスタ等に代表されるトランジスタ素子等を用いることができる。
【0118】
第5配線51は、第2配線16及び第3配線17と同様に、通常の配線として用いられる材料を用いることができる。
【0119】
第3実施形態に係る磁気メモリ205の書込み動作及び読出し動作は、第1実施形態にかかる磁気メモリ200と同様である。
【0120】
第3実施形態に係る磁気メモリ205は、データを消去する動作が可能である。
消去動作は、第2制御素子14とデータ消去用素子50とによって行う。第2制御素子14とデータ消去用素子50が開放されると、以下の第4の電流経路が形成される。
第4の電流経路は、第2制御素子14、第2配線16、各スピン軌道トルク配線20、各第3配線17、第5配線51、データ消去用素子50の順に流れる経路である。この際、ノイズを生み出す不適切な電流経路が形成されないように、データ消去用素子50の電位は第2制御素子14の電位より低くすることが好ましい。
【0121】
第4の電流経路に電流が流れると、各スピン軌道トルク配線20からスピン流が各磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層3に浸みだす。その結果、各磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層3の磁化の向きは反転する。第4の電流経路では、全てのスピン軌道トルク配線20に電流が供給される。そのため、第4の電流経路に電流が流れた後において、第1強磁性金属層1の磁化の向きに対する第2強磁性金属層3の磁化の向きは、全ての磁気抵抗効果素子10で同一となる。すなわち、一括書込みが行われることで全ての磁気抵抗効果素子10が有するデータが「1」又は「0」となり、実質的にデータが消去さる。
【0122】
一般に、磁気メモリはデータを保持できるという特徴を有する。そのため、それぞれのデータを確実に書き換えることが重要であり、データを一括で制御することは少ない。一方で、データ媒体を廃棄する際に、データを一括で制御(消去)したいというニーズは強い。
【0123】
例えば、スピントランスファートルク(STT)効果を利用して磁化反転を行う磁気メモリの場合、全ての磁気抵抗効果素子を磁化反転させようとすると、各磁気抵抗効果素子の積層方向に並列に電流を流す必要がある。磁気抵抗効果素子の数が少なければ可能であるが、磁気抵抗効果素子の数が増えると、非常に大きな容量の電流源が必要である。また磁気抵抗効果素子毎に電流を流すこともできるが、全てのデータを消去するためには長い時間が必要となる。これに対し、本実施形態に係る磁気メモリ205は、データの一括制御が可能である。
【0124】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態に係る磁気メモリの回路構造の模式図である。図では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付している。
【0125】
第4実施形態に係る磁気メモリ206は、磁場印加手段を有する点が、第1実施形態に係る磁気メモリ202と異なる。図14では、外部磁場印加手段として配線60を強磁性金属層10上に配設した。配線60の延在方向は、図14の方向には限られず、図14に示す配線60の延在方向に対して交差していてもよい。
【0126】
配線60に電流を流すことにより、配線60を中心とした磁界が生じる。この磁界は磁気抵抗効果素子10にとっては外部磁場となる。磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層3は外部磁場の影響を受ける。配線60に電流を流し外部磁場を磁気抵抗効果素子10に加えることで、第1の電流経路に電流を流すことによって生じるSOT及び第2の電流経路に電流を流すことによって生じるSTTによる磁化反転をアシストできる。
【0127】
配線60は、図14に示すように磁気抵抗効果素子10等を含む駆動素子と異なる高さ位置に形成される。そのため、配線60が磁気メモリの集積性を低下させることはない。配線60は導電性の高い材料に構成されていればよい。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
【0128】
外部磁場印加手段は、図14に示すような配線60に限られない。コイル等を用いた磁場発生装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1…第1強磁性金属層、2…非磁性層、3…第2強磁性金属層、5…絶縁部、10…磁気抵抗効果素子、11…第1配線、20…スピン軌道トルク配線、21,22…抵抗、13…第1制御素子、14…第2制御素子、15…第1セル選択素子、16…第2配線、17…第3配線、40…第4配線、41…第2セル選択素子、50…データ消去用素子、51…第5配線、60…配線、100…駆動素子、200,201,202,203,204,205,206…磁気メモリ
図1
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