(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-73875(P2021-73875A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】氷菓モールド冷却装置
(51)【国際特許分類】
A23G 9/22 20060101AFI20210423BHJP
A23G 9/14 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
A23G9/22
A23G9/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-202039(P2019-202039)
(22)【出願日】2019年11月7日
(11)【特許番号】特許第6718187号(P6718187)
(45)【特許公報発行日】2020年7月8日
(71)【出願人】
【識別番号】500324130
【氏名又は名称】サイトー機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】池上 司
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GT03
4B014GT15
4B014GU04
(57)【要約】
【課題】ブライン槽の下手側で急速冷却が可能な氷菓モールド冷却装置を提供する。
【解決手段】この氷菓モールド冷却装置100は、下手側の吐出部をブライン吐出壁80で構成し、このブライン吐出壁80の間にモールドMを通過させる。また、ブライン吐出壁80は壁面に吐出口82を有し、この吐出口82からブライン冷却装置で冷却した低温のブラインが吐出する。このため、モールドMはブライン吐出壁80の間を通過する間、左右のブライン吐出壁80から低温のブラインが至近距離で吹き付けられ急速に冷却する。このため、従来の吐出部よりも冷却能力が高くモールドM内の氷菓材料を短時間で冷却、凍結することができる。これにより、生産性を落とすことなく、複雑な層構成の多種多様な氷菓を製造することができる。また、製造設備の設置台数によってはモールドユニット3の搬送速度を上げることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温のブラインを貯留するブライン槽と、
前記ブライン槽にブラインを供給するブライン供給管と、
前記ブライン供給管から供給されるブラインを前記ブライン槽内に吐出する吐出部と、
氷菓のモールドが所定の間隙を取って横方向に複数固定したモールドユニットを保持して前記ブライン槽に浸漬するように搬送する搬送部と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記吐出部は、前記モールドユニットの搬送方向に沿ったブライン吐出壁を有し、前記ブライン吐出壁は前記モールドのそれぞれの間隙に位置するように複数配列され、さらにブラインの吐出口が前記ブライン吐出壁の壁面に形成されて、前記ブライン供給管から供給されるブラインを前記ブライン槽内のブライン中で前記モールドに横方向から吹き付けることを特徴とする氷菓モールド冷却装置。
【請求項2】
ブライン吐出壁がブライン槽の下手側に配置されることを特徴とする請求項1記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項3】
ブライン供給管と接続しモールドユニットの搬送方向に沿った複数の枝管をさらに有し、
前記枝管とブライン吐出壁とが一対一対応することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項4】
それぞれの枝管に流量調節機構を備えたことを特徴とする請求項3記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項5】
ブライン吐出壁が複数の吐出壁ブロックで形成されるとともに、前記吐出壁ブロックの下部が枝管と接続し、
前記枝管はブラインの供給口を側方もしくは斜め側方に備え、
前記供給口から供給されたブラインが前記吐出壁ブロックの内部を通って壁面の吐出口から吐出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項6】
それぞれの枝管を環状とし、ブライン供給管との接続位置を挟んだ双方の前記枝管に流量調節機構をそれぞれ備えたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の氷菓モールド冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷菓材料が注入されたモールドを冷却してアイスキャンディーなどの氷菓を製造する氷菓モールド冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイスキャンディーなどの氷菓の製造装置として、所謂バイターラインと称される氷菓モールド冷却装置が一般的に普及している。このバイターラインと称される氷菓モールド冷却装置は、氷菓の型となるモールドMが横方向に複数固定した例えば
図1に示すモールドユニット3をブライン槽内に貯留した低温のブライン中に浸漬し、順次移動させながら氷菓材料の充填やスティックの挿入などを行い、連続的に氷菓を製造する装置である。このような氷菓モールド冷却装置に関し、本願発明者らは下記[特許文献1]に記載の発明を行った。この[特許文献1]に記載の発明は、
図3に示すように、ブライン供給管25aと横パイプ50とを上面視で略梯子形状に配置し、横パイプ50の側面にブライン吐出口26を設け、ここから吐出したブラインを誘導板27で上方に向けることでブラインの液面の波立ちを抑制するものである。
【0003】
ここで、
図8に示す従来の氷菓モールド冷却装置10を用い、表層と内部とで味(氷菓材料)の異なる氷菓を製造する手順を簡単に説明する。尚、
図8及び後述の
図2〜
図4においては、ブライン槽20におけるモールドユニット3と搬送チェーン42の図示を部分的に省略する。また、ここでの上手側及び前側とはモールドユニット3の進行方向に対して上手側(上流側)を意味し、下手側、後側とはモールドユニット3の進行方向における下手側(下流側)を意味する。
【0004】
先ず、表層と内部とで氷菓材料の異なる氷菓を製造する場合、氷菓モールド冷却装置10の上手側には製造設備として、第1の氷菓材料を充填する第1の充填装置12aと、モールドM内の未凍結の氷菓材料を吸引除去する吸引装置13と、第2の氷菓材料を充填する第2の充填装置12bと、氷菓の持ち手となるスティックをモールドM内に挿入するスティックインタサータ14と、が少なくとも配置される。また、ブライン槽20の下手側には回収設備として、ブライン槽20から引き上げられたモールドMを温めて氷菓の外側を一部融解するデフロスト装置16と、スティックを挟持してモールドM内から氷菓を引き抜く抜取り装置17と、が少なくとも配置される。
【0005】
そして、氷菓モールド冷却装置10のブライン槽20には図示しないブライン冷却装置で所定の温度に冷却されたブラインがブライン供給管25を介して供給される。また、ブライン槽20から溢れた余剰なブラインは、ブライン槽20の外側に設けられたブライン回収槽30に落水し、図示しないブライン回収タンク及びブライン返送管を介してブライン冷却装置に返送される。そして、このブライン冷却装置にて再度冷却された後、ブライン供給管25を介してブライン槽20に供給される。
【0006】
また、ブライン槽20の前後には駆動ギア44が設けられ、この駆動ギア44間にはブライン槽20の両長辺に沿うように搬送チェーン42が架け渡される。そして、これらブライン槽20を挟んで左右に位置する両搬送チェーン42の間にモールドユニット3を架け渡すようにして固定する。そして、駆動ギア44が回転すると搬送チェーン42が移動し、これに伴ってモールドユニット3がブライン槽20の上手側から下手側に向けて移動する。
【0007】
そして、モールドユニット3が第1の充填装置12aの動作位置に達すると、第1の充填装置12aは各モールドM内に氷菓の表層側となる第1の氷菓材料を所定量注入する。注入された第1の氷菓材料はブライン槽20内のブラインによって冷却され、モールドMと接触している外側から徐々に凍結する。そして、モールドユニット3がブライン槽20内を進みモールドM内の第1の氷菓材料の凍結層の厚みが概ね目標の厚みとなるところで、モールドユニット3は吸引装置13の動作位置に達する。
【0008】
モールドユニット3が吸引装置13の動作位置に達すると、吸引装置13はノズルを各モールドM内に挿し入れて内側の未凍結の第1の氷菓材料を吸引除去する。次に、モールドユニット3は第2の充填装置12bの動作位置に移動する。そして、第2の充填装置12bは第1の氷菓材料の凍結層の内側に(氷菓の内部を構成する)第2の氷菓材料を所定量注入する。この第2の氷菓材料はモールドユニット3がブライン槽20内を進行する間に冷却され徐々に凍結する。そして、第2の氷菓材料が所定の半凍結状態となるところで、モールドユニット3はスティックインタサータ14の動作位置に達する。モールドユニット3がスティックインタサータ14の動作位置に達すると、スティックインタサータ14は半凍結状態の第2の氷菓材料に氷菓の持ち手となるスティックを挿し入れる。そして、モールドユニット3は残りのブライン槽20内を進んで第2の氷菓材料は完全に凍結する。
【0009】
そして、モールドM内の氷菓材料が完全に凍結し、モールドユニット3がブライン槽20の終端部近傍に到達すると、搬送チェーン42は徐々に上昇し、これによりモールドユニット3はブライン槽20から引き上げられる。そして、デフロスト装置16によってモールドMが温められ、氷菓とモールドMとの接触部分が融解する。次に、抜取り装置17が氷菓材料中に挿入したスティックを挟持して氷菓ごとモールドMから引抜く。これにより氷菓が完成する。尚、氷菓が引き抜かれたモールドユニット3は後側の駆動ギア44で反転した後、モールド洗浄部18によって洗浄され、前側の駆動ギア44で再反転した後、再度氷菓の製造に給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5226134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、ブライン槽20の上手側には複数の製造設備が設置される。そして特に多くの層構成を有する複雑な氷菓を製造する場合には、製造設備の設置台数も多くなり製造設備の設置領域がブライン槽20の多くの範囲を占めることとなる。このような場合、下手側の凍結領域が短くなり、通常の搬送速度ではブライン槽20の終端でも氷菓材料の凍結が間に合わず製品が完全に凍結しない虞がある。このため、モールドユニット3の搬送速度を全体的に遅らせる必要があり、生産性が悪化するという問題点がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ブライン槽の下手側で急速冷却が可能な氷菓モールド冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(1)低温のブラインを貯留するブライン槽20と、前記ブライン槽20にブラインを供給するブライン供給管25a、25bと、前記ブライン供給管25a、25bから供給されるブラインを前記ブライン槽20内に吐出する吐出部と、氷菓のモールドMが所定の間隙Aを取って横方向に複数固定したモールドユニット3を保持して前記ブライン槽20に浸漬するように搬送する搬送部と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記吐出部は、前記モールドユニット3の搬送方向に沿ったブライン吐出壁80を有し、前記ブライン吐出壁80は前記モールドMのそれぞれの間隙Aに位置するように複数配列され、さらにブラインの吐出口82が前記ブライン吐出壁80の壁面に形成されて、前記ブライン供給管25bから供給されるブラインを前記ブライン槽20内のブライン中で前記モールドMに横方向から吹き付けることを特徴とする氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ブライン吐出壁80がブライン槽20の下手側に配置されることを特徴とする上記(1)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)ブライン供給管25bと接続しモールドユニット3の搬送方向に沿った複数の枝管84をさらに有し、
前記枝管84とブライン吐出壁80とが一対一対応することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)それぞれの枝管84に流量調節機構86を備えたことを特徴とする上記(3)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)ブライン吐出壁80が複数の吐出壁ブロック88で形成されるとともに、前記吐出壁ブロック88の下部が枝管84と接続し、
前記枝管84はブラインの供給口84aを側方もしくは斜め側方に備え、
前記供給口84aから供給されたブラインが前記吐出壁ブロック88の内部を通って壁面の吐出口82から吐出することを特徴とする上記(3)または上記(4)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)それぞれの枝管84を環状とし、ブライン供給管25bとの接続位置を挟んだ双方の前記枝管84に流量調節機構86をそれぞれ備えたことを特徴とする上記(4)または上記(5)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る氷菓モールド冷却装置は、下手側の吐出部をブライン吐出壁で構成し、このブライン吐出壁の間に氷菓のモールドを通過させる。この際、モールドには左右のブライン吐出壁から低温のブラインが至近距離で吹き付けられ急速に冷却する。これにより、短い距離で短時間に氷菓材料を凍結することができ、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が多い場合でも、生産性を落とすことなく複雑な層構成の多種多様な氷菓を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】氷菓モールド冷却装置に用いるモールドユニットを示す図である。
【
図2】本発明に係る氷菓モールド冷却装置の全体を示す概略構成図である。
【
図3】従来の氷菓モールド冷却装置の吐出部を説明する図である。
【
図4】本発明に係る氷菓モールド冷却装置のブライン吐出壁を説明する図である。
【
図5】本発明に係る氷菓モールド冷却装置の枝管の例を説明する図である。
【
図6】本発明のブライン吐出壁の吐出壁ブロックを説明する略断面図である。
【
図7】氷菓モールド冷却装置に用いるモールドユニットの他の例を示す図である。
【
図8】従来の氷菓モールド冷却装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、従来の装置と同様の構成に関しては同符号にて表す。
【0017】
先ず、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は
図2の概略構成図に示すように、従来の氷菓モールド冷却装置10と同様、低温のブラインを貯留するブライン槽20と、このブライン槽20にブラインを供給するブライン供給管25a、25bと、このブライン供給管25a、25bから供給されるブラインをブライン槽20内に吐出する吐出部と、モールドユニット3を保持してブライン槽20に浸漬するように搬送する搬送部と、を有している。また、氷菓モールド冷却装置100は、氷菓が抜き取られた後のモールドMを洗浄するモールド洗浄部18を有している。
【0018】
次に、氷菓モールド冷却装置100の各部の構成をさらに詳しく説明する。先ず、氷菓モールド冷却装置100に用いるモールドユニット3は、
図1(a)の正面図及び
図1(b)の上面図に示すように、横方向に配列した複数の開口6を備えたモールドプレート5と、この開口6と上端縁が固定し氷菓の型となるモールドMとで主に構成される。尚、隣り合う開口6と開口6との間には所定の間隙が設けられ、これによりモールドMも所定の間隙Aを取って横方向に複数(一般的には12個)配列する。また、モールドプレート5の両端部には搬送チェーン42にネジ止め等で固定する固定部7が設けられる。
【0019】
また、氷菓モールド冷却装置100のブライン槽20は、長さが約十数メートルの長尺の槽であり、略中央部分からブライン供給管25a、25bが引き込まれる。尚、ブライン供給管25aはブライン槽20の前方にブラインを供給する供給管であり、ブライン供給管25bはブライン槽20の後方にブラインを供給する供給管である。そして、これらブライン供給管25a、25bにはそれぞれ吐出部が固定する。尚、この吐出部に関しては後述する。そして、このブライン槽20には図示しないブライン冷却装置で冷却された−30℃〜−36℃程度の低温のブライン(一般的には塩化カルシウム溶液が用いられる)がブライン供給管25a、25bを介して供給され、規定の水位もしくは満水状態に維持される。また、ブライン槽20の外周にはブライン回収槽30が設けられ、ブライン槽20から溢れた余剰なブラインを回収し、ブライン回収タンク及びブライン返送管を介してブライン冷却装置に返送する。返送されたブラインはブライン冷却装置にて所定の温度に冷却された後、再度、ブライン供給管25a、25bを介してブライン槽20に供給される。
【0020】
また、搬送部は前述のようにモールドユニット3を保持してブライン槽20に浸漬しながら搬送するものであり、ブライン槽20の長辺の両側に配設された搬送チェーン42と、ブライン槽20の前後に設けられこの搬送チェーン42を回転させる駆動ギア44と、この駆動ギア44を回転させる図示しないモータ等の回転手段と、を有している。そして、モールドユニット3は両端の固定部7を介して左右の搬送チェーン42の間に架け渡すように固定される。また、駆動ギア44が回転手段によって回転動作すると搬送チェーン42は前後の駆動ギア44の間を移動する。また、搬送チェーン42はブライン槽20の前端部及び後端部に設けられた図示しないテンションローラもしくはガイド等によって、前端部では下降し、後端部では上昇する。これにより、搬送チェーン42によって保持されたモールドユニット3は、ブライン槽20の前端部で下降してモールドMがブラインに浸漬し、そのままブライン槽20内を移動して、後端部でブライン槽20から引き上げられる。そして、氷菓モールド冷却装置100に設置された各製造設備、回収設備の動作位置に順次移動する。
【0021】
次に、吐出部に関して説明する。尚、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、主に下手側の吐出部であるブライン吐出壁80に特徴を有するものである。よって、上手側の吐出部に関しては特に限定は無い。ただしここでは、上手側で用いる吐出部として、従来の氷菓モールド冷却装置10の横パイプ50を用いた例を使用して説明を行う。
【0022】
先ず、上手側の吐出部である横パイプ50と接続するブライン供給管25aは、
図3(a)の上面拡大図に示すように、ブライン槽20の長手方向に沿って2本設置され、それぞれ前方に向けて配設される。そして、横パイプ50はこの左右2本のブライン供給管25aの間に架け渡すようにして複数接続する。よって、ブライン供給管25aと横パイプ50とは上面視で略梯子形状を呈する。また、
図3(b)の側面図及び
図3(c)の斜視図に示すように、それぞれの横パイプ50の前後の側面にはブライン吐出口26が複数形成され、さらに横パイプ50には上方が拡がった略逆ハの字形状の誘導板27が設けられる。そして、横パイプ50のブライン吐出口26から噴出したブラインは、
図3(b)中の黒矢印に示すように、誘導板27によって上方向に誘導され上方を通過するモールドMの冷却に給される。ここで、ブライン槽20の上手側には製造設備が設置され、半凍結状態での動作や凍結層の厚み制御が必要となる場合がある。従ってこの領域では従来の吐出部を用いてある程度時間を掛けてモールドMを冷却する方が製造面から好ましい。
【0023】
次に、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の特徴的な構成であるブライン吐出壁80に関して
図4を用いて説明する。ここで、
図4(a)はブライン吐出壁80部分の上面図であり、
図4(b)は側面図であり、
図4(c)は上手側からの略断面図である。
【0024】
本発明に係るブライン吐出壁80は、モールドユニット3の搬送方向、即ちブライン槽20の長辺方向に沿った板状の吐出部であり、両側の壁面に複数の吐出口82を有している。ただし、ブライン槽20の側面に最も近い一番外側のブライン吐出壁80は内側の壁面に吐出口82を備えていれば良い。尚、吐出口82は氷菓材料が充填したモールドMの底部から上部までブラインが当たるよう縦方向に複数配列して形成することが好ましい。従って、吐出口82はブライン吐出壁80の壁面に面状に配列することとなる。また、
図4(c)に示すように、ブライン吐出壁80はモールドユニット3の搬送時に各モールドMの間隙Aにそれぞれ位置するように設置する。よってモールドユニット3がブライン吐出壁80の設置領域を通過する際には、各モールドMはブライン吐出壁80の間を移動することとなる。このとき、ブライン吐出壁80の吐出口82は壁面に位置し側方を向いているから、ブライン吐出壁80の間を移動するモールドMにはブライン吐出壁80の吐出口82からブライン冷却装置で冷却された低温のブラインが左右から至近距離で吹き付けられることとなる。このため、本発明に係るブライン吐出壁80は、従来の吐出部よりも冷却能力が高くモールドM内の氷菓材料を短時間で冷却、凍結することができる。また、ブライン吐出壁80はある程度の長さ切れ目なく連続的に形成することが好ましい。無論、列ごとのブライン吐出壁80を上手側から下手側まで切れ目なく連続的に形成しても良い。この構成ではモールドMは列ごとにブライン吐出壁80で区切られることとなるため、吐出口82から吐出したブラインはブライン吐出壁80によって流路が制限されモールドMを効果的に冷却することができる。
【0025】
尚、ブライン吐出壁80とブライン供給管25bとの接続は以下のようにして行う事が好ましい。先ず、ブライン供給管25bにはブライン吐出壁80と同数の複数の枝管84が接続する。この枝管84はブライン吐出壁80と同様にモールドユニット3の搬送方向、即ちブライン槽20の長辺方向に沿い、且つ上面視でモールドMの間隙Aに位置する。そして、この枝管84とブライン吐出壁80とが一対一対応で接続する。尚、それぞれの枝管84にはブライン吐出壁80の接続位置よりも上流側に流量調節機構86を各々設けることが好ましい。この構成によれば各枝管84におけるブラインの供給量の調節が可能となり、各ブライン吐出壁80の吐出量を略均等化することができる。また、吐出口82が片面のみの一番外側のブライン吐出壁80の吐出口82の吐出量と、吐出口82が両壁面の内側のブライン吐出壁80の吐出口82の吐出量とを略同等とすることができる。また、枝管84は
図2、
図4に示すようにブライン吐出壁80の一方からブラインを供給するようにしても良いが、
図5に示すように環状に構成しブライン吐出壁80の上手側、下手側の2方からブラインを供給することが好ましい。またこの場合、流量調節機構86はブライン供給管25bとの接続位置を挟んだ双方(上手側、下手側)のそれぞれの枝管84に設けることが好ましい。この構成によれば、ブライン吐出壁80は上手側、下手側の2方からブラインの供給を受けるため、片側のみからブラインの供給を受けるものと比較して、個々のブライン吐出壁80内における各位置(上手側、下手側等)での吐出量のバラつきを低減することができる。
【0026】
また、ブライン吐出壁80は複数の吐出壁ブロック88を連ねて構成することが好ましい。ここで、
図6(a)、(b)に吐出壁ブロック88の略断面図を示す。尚、
図6では両壁に吐出口82を有する吐出壁ブロック88を示している。これら
図6に示す吐出壁ブロック88は上側の壁部88aと下側の接続部88bとから主に構成され、壁部88aの壁面に複数の吐出口82を有している。また、吐出壁ブロック88の接続部88bは枝管84と接続するものであり内部に接続孔89を有する。この接続孔89は一端が枝管84の供給口84aと接続するとともに、他端側が壁部88aの吐出口82と接続する。そして、枝管84を流下するブラインは供給口84aから接続孔89を介して壁部88aの吐出口82からブライン槽20内に吐出する。尚、吐出壁ブロック88は、
図6(a)に示すように合成樹脂等で一体的に成型しても良いし、
図6(b)に示すように上端部分を例えば金属製のプレート部材87で構成し保護するようにしても良い。また、吐出壁ブロック88は枝管84に対して着脱可能に構成することが好ましい。この構成では、ブライン吐出壁80及び枝管84等のメンテナンスが容易な他、必要に応じてブライン吐出壁80の長さを調節することができる。尚、吐出壁ブロック88と枝管84との接続は、
図6(a)に示すように吐出壁ブロック88側が枝管84を保持するように構成しても良いし、
図6(b)に示すように保持部材85等を介して枝管84側が吐出壁ブロック88を保持するようにしても良い。
【0027】
また、本発明に係るブライン吐出壁80はモールドMのピッチが同じで間隙Aの幅がブライン吐出壁80の幅よりも広ければ、モールドMの形状に制限は無く棒状、四角柱状等、如何なる形状のものでも使用が可能である。また、一般的に使用されているモールドユニット3には、
図7に示すような主ピッチが(12個取り用と)同等でモールドMが2個取り用のものが存在する。本発明に係るブライン吐出壁80は、このような2個取り用のモールドユニット3に対しても吐出壁ブロック88を付け替えることなく、そのまま使用することができる。尚、2個取りモールドMの内側の側面にはブライン吐出壁80からのブラインが直接は吹き付けられないが、周囲には吹き付けられたブラインが流動しているためモールドMの外側と内側とで凍結速度に大きな差が生じることはない。このように、本願発明の氷菓モールド冷却装置100は、ブライン液中で吹き付けを行うためモールドM(間隙A)のピッチが同等であれば如何なる形状のモールドMであっても使用が可能であり、応用性が高く優れた汎用性を有する。
【0028】
また、枝管84の供給口84aは上方向以外の側方もしくは斜め側方に向けて形成することが好ましい。尚、枝管84の供給口84aが上方向に存在する場合、仮に何らかの原因で吐出壁ブロック88が外れるとブラインが上方に向けて噴出することとなる。このときの噴出量によってはブラインの液面が波立ち、ブラインがモールドプレート5を超えてモールドM内に進入し製品に混入する虞がある。しかしながら、枝管84の供給口84aを側方もしくは斜め側方に向けて形成していれば、仮に吐出壁ブロック88が外れてもブラインは上方には噴出せず、液面の波立ちを防止することができる。これにより、製品へのブライン混入のリスクを低減し、信頼性の向上を図ることができる。
【0029】
次に、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の動作を説明する。先ず、従来の装置と同様に目的とする氷菓を製造するための製造設備、回収設備を設置する。また、製造する氷菓と対応したモールドユニット3を氷菓モールド冷却装置100の左右の搬送チェーン42に架け渡すようにして固定する。また、ブライン槽20にはブライン冷却装置で所定の温度に冷却されたブラインがブライン供給管25a、25b、横パイプ50、ブライン吐出壁80を介して供給され、所定の水位に維持される。
【0030】
次に、氷菓モールド冷却装置100の搬送部を動作させる。これにより、駆動ギア44が回転し、搬送チェーン42が前後の駆動ギア44の間を移動する。この搬送チェーン42の移動に伴ってモールドユニット3も移動する。そして、モールドユニット3が各製造設備の動作位置に達すると、氷菓材料の注入や吸引、スティックの挿入等が行われる。
【0031】
各製造設備による動作が完了すると、次にモールドユニット3は下手側に位置するブライン吐出壁80の設置領域に移動する。このときモールドMはブライン吐出壁80の間を移動し、その際、ブライン吐出壁80の壁面に設けられた吐出口82から低温のブラインが各モールドMの左右に至近距離から吹き付けられる。この吹き付けはモールドMがブライン吐出壁80間を移動している間、継続して行われ、これによりモールドM内の氷菓材料は急速に冷却され凍結する。
【0032】
氷菓材料が凍結したモールドユニット3はブライン槽20の終端部で引き上げられ、デフロスト装置16によってモールドMと氷菓との接触部分が融解される。そして、抜取り装置17によってスティックが挟持されモールドMから引抜かれることで氷菓として完成する。完成した氷菓は次工程に送られ包装等の然るべき処理が行われる。また、氷菓が抜き取られたモールドユニット3はモールド洗浄部18によって洗浄された後、再度氷菓の製造に給される。
【0033】
以上のように、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、下手側の吐出部をブライン吐出壁80で構成し、このブライン吐出壁80の間にモールドMを通過させる。また、ブライン吐出壁80は壁面に吐出口82を有し、この吐出口82からブライン冷却装置で冷却した低温のブラインが吐出する。このため、モールドMはブライン吐出壁80の間を通過する間、左右のブライン吐出壁80から低温のブラインが至近距離で吹き付けられ急速に冷却される。また、このブラインの吹き付けはブライン槽20内のブライン液中で行われるため、吹き付けられたブラインはモールドMの周囲を流動し氷菓材料の冷却に寄与する。このため、モールドM(間隙A)のピッチが同じであれば、如何なる形状のモールドMに対してもブラインの吹き付けによる急速冷却が可能となる。
【0034】
そして、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、このブライン吐出壁80による急速冷却が可能なため、短い距離でも短時間で氷菓材料を完全に凍結することができる。これにより、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が増えた場合でも、モールドユニット3の搬送速度を遅らせることなく、氷菓の製造が可能となる。これにより、生産性を落とすことなく、複雑な層構成の多種多様な氷菓を製造することができる。また、製造設備の設置台数によってはモールドユニット3の搬送速度を上げることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
尚、本例で示した氷菓モールド冷却装置100、ブライン吐出壁80の各部の構成、形状、動作機構、配管経路、デザイン等は一例であり、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
3 モールドユニット
20 ブライン槽
25b ブライン供給管
80 ブライン吐出壁
82 吐出口
84 枝管
84a 供給口
86 流量調節機構
88 吐出壁ブロック
100 氷菓モールド冷却装置
A 間隙
M モールド
【手続補正書】
【提出日】2020年4月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温のブラインを貯留するブライン槽と、
前記ブライン槽にブラインを供給するブライン供給管と、
前記ブライン供給管から供給されるブラインを前記ブライン槽内に吐出する吐出部と、
氷菓のモールドが所定の間隙を取って搬送方向に対し横方向に複数固定したモールドユニットを保持して前記ブライン槽に浸漬するように搬送する搬送部と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記吐出部は、前記モールドユニットの搬送方向に沿ったブライン吐出壁を有し、前記ブライン吐出壁は前記モールドの全ての間隙に位置して前記モールドの全てが前記ブライン吐出壁の間を通過するように複数配列され、さらにブラインの吐出口が前記ブライン吐出壁の壁面に形成されて、前記ブライン供給管から供給されるブラインを前記ブライン槽内のブライン中で前記モールドの全てに左右方向から個別に吹き付けることを特徴とする氷菓モールド冷却装置。
【請求項2】
ブライン吐出壁がブライン槽の下手側に配置されることを特徴とする請求項1記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項3】
ブライン供給管と接続しモールドユニットの搬送方向に沿った複数の枝管をさらに有し、
前記枝管とブライン吐出壁とが一対一対応することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項4】
それぞれの枝管に流量調節機構を備えたことを特徴とする請求項3記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項5】
ブライン吐出壁が複数の吐出壁ブロックで形成されるとともに、前記吐出壁ブロックの下部が枝管と接続し、
前記枝管はブラインの供給口を側方もしくは斜め側方に備え、
前記供給口から供給されたブラインが前記吐出壁ブロックの内部を通って壁面の吐出口から吐出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項6】
それぞれの枝管を環状とし、ブライン供給管との接続位置を挟んだ双方の前記枝管に流量調節機構をそれぞれ備えたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の氷菓モールド冷却装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、
(1)低温のブラインを貯留するブライン槽20と、前記ブライン槽20にブラインを供給するブライン供給管25a、25bと、前記ブライン供給管25a、25bから供給されるブラインを前記ブライン槽20内に吐出する吐出部と、氷菓のモールドMが所定の間隙Aを取って
搬送方向に対し横方向に複数固定したモールドユニット3を保持して前記ブライン槽20に浸漬するように搬送する搬送部と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記吐出部は、前記モールドユニット3の搬送方向に沿ったブライン吐出壁80を有し、前記ブライン吐出壁80は前記モールドMの
全ての間隙Aに位置
して前記モールドの全てが前記ブライン吐出壁の間を通過するように複数配列され、さらにブラインの吐出口82が前記ブライン吐出壁80の壁面に形成されて、前記ブライン供給管25bから供給されるブラインを前記ブライン槽20内のブライン中で前記モールドM
の全てに左右方向から
個別に吹き付けることを特徴とする氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ブライン吐出壁80がブライン槽20の下手側に配置されることを特徴とする上記(1)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)ブライン供給管25bと接続しモールドユニット3の搬送方向に沿った複数の枝管84をさらに有し、
前記枝管84とブライン吐出壁80とが一対一対応することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)それぞれの枝管84に流量調節機構86を備えたことを特徴とする上記(3)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)ブライン吐出壁80が複数の吐出壁ブロック88で形成されるとともに、前記吐出壁ブロック88の下部が枝管84と接続し、
前記枝管84はブラインの供給口84aを側方もしくは斜め側方に備え、
前記供給口84aから供給されたブラインが前記吐出壁ブロック88の内部を通って壁面の吐出口82から吐出することを特徴とする上記(3)または上記(4)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)それぞれの枝管84を環状とし、ブライン供給管25bとの接続位置を挟んだ双方の前記枝管84に流量調節機構86をそれぞれ備えたことを特徴とする上記(4)または上記(5)に記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。