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特開2021-73932ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体及びその製造方法、並びにファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-73932(P2021-73932A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体及びその製造方法、並びにファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キット
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20210423BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20210423BHJP
   C12N 11/084 20200101ALI20210423BHJP
【FI】
   C12N5/071
   C12N5/077
   C12N11/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-204500(P2019-204500)
(22)【出願日】2019年11月12日
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳二
(72)【発明者】
【氏名】景山 達斗
(72)【発明者】
【氏名】南茂 彩華
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
【Fターム(参考)】
4B033NA16
4B033NB35
4B033NB45
4B033NB48
4B033NB50
4B033NB58
4B033NC06
4B033ND12
4B065AA90X
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065BC31
4B065BC46
4B065BC47
4B065BD38
4B065BD39
4B065BD40
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易なファイバー担体−細胞含有ゲル複合体、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造する方法、並びに、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造するためのキットを提供する。
【解決手段】ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法は、(1)基材と前記基材の表面上に配置されたファイバー担体とを用意すること;、(2)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、ハイドロゲル高分子と分散された細胞とを含む液滴を形成すること;、(3)気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴をゲル化させて、前記ファイバー担体と前記ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得ること;、を含む。
【選択図】図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基材と前記基材の表面上に配置されたファイバー担体とを用意すること;、
(2)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、ハイドロゲル高分子と分散された細胞とを含む液滴を形成すること;、
(3)気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴をゲル化させて、前記ファイバー担体と前記ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得ること;、
を含む、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項2】
前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の前記細胞含有ゲル体を前記基材の前記表面から脱離させることをさらに含む、
請求項1に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項3】
前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の前記細胞含有ゲル体内で前記細胞を培養することをさらに含む、
請求項1又は2に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項4】
前記細胞含有ゲル体内で前記細胞を培養して、前記細胞の凝集塊を形成する、
請求項3に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項5】
前記(2)において、気相中、前記基材の前記表面上で、互いに離間して1つの前記ファイバー担体に付着し、各々が前記ハイドロゲル高分子と前記分散された細胞とを含む複数の前記液滴を形成し、
前記(3)において、気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴をゲル化させて、前記1つのファイバー担体と、互いに離間して前記1つのファイバー担体に付着した複数の前記細胞含有ゲル体とを含む前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得る、
請求項1乃至4のいずれかに記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項6】
前記ファイバー担体−細胞含有ハイドロゲル複合体の前記1つのファイバー担体を切断して、1つのファイバー担体片と前記1つのファイバー担体片に付着した1つの前記細胞含有ゲル体とを含む、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体片を得ることをさらに含む、
請求項5に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項7】
前記(1)において、前記基材の前記表面上に配置された複数の前記ファイバー担体を用意し、
前記複数のファイバー担体の各々について、前記(2)及び(3)を実施する、
請求項1乃至6のいずれかに記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項8】
前記(1)において、一部が支持部材に固定され、他の一部が前記基材の前記表面上に配置された前記ファイバー担体を用意し、
前記支持部材に固定された前記ファイバー担体について、前記(2)及び(3)を実施する、
請求項1乃至7のいずれかに記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項9】
前記(2)は、
(2−1)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、第一のハイドロゲル高分子と分散された第一の細胞とを含む第一の液滴を形成すること、及び、
(2−2)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、第二のハイドロゲル高分子と分散された第二の細胞とを含み、前記第一の液滴と連結した第二の液滴を形成して、前記ファイバー担体に付着した液滴連結体を得ることを含み、
前記(3)において、気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴連結体をゲル化させて、前記ファイバー担体と前記ファイバー担体に付着した前記細胞含有ゲル体とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得る、
請求項1乃至8のいずれかに記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項10】
前記第一の細胞と前記第二の細胞との組み合わせが、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせである、
請求項9に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法。
【請求項11】
1つのファイバー担体と、
各々がハイドロゲル高分子及び細胞を含む、互いに離間して前記1つのファイバー担体に付着した複数の細胞含有ゲル体と、
を含む、
ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体。
【請求項12】
前記複数の細胞含有ゲル体の各々は、前記細胞の凝集塊を含む、
請求項11に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体。
【請求項13】
前記複数の細胞含有ゲル体の各々は、第一のハイドロゲル高分子及び第一の細胞を含む第一のゲル部と、第二のハイドロゲル高分子及び第二の細胞を含む第二のゲル部とを含む、
請求項11又は12に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体。
【請求項14】
前記第一の細胞と前記第二の細胞との組み合わせが、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせである、
請求項11乃至13のいずれかに記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体。
【請求項15】
ハイドロゲル高分子及び細胞を含む細胞含有ゲル体を付着させるファイバー担体と、
前記ファイバー担体が固定された支持部材と、
を含む、
ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キット。
【請求項16】
その表面上に、気相中、前記支持部材に固定された前記ファイバー担体が配置されるとともに、前記ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体が形成される基材をさらに含む、
請求項15に記載のファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体及びその製造方法、並びにファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガイドを有する移植用再生器官原基の製造方法であって、間葉系細胞から実質的に構成される第1の細胞集合体と、上皮系細胞から実質的に構成される第2の細胞集合体とを密着させて支持担体内部で培養することにより再生器官原基を調製する工程と、当該再生器官原基にガイドを挿入する工程とを含む製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、移植後に生じる発毛の毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体との少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持部材内部で培養する工程、を含み、前記再生毛包原基にガイドを挿入する工程をさらに含む移植用再生毛包原基の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/108069号
【特許文献2】国際公開第2012/115079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法においては、まず再生器官原基を調製し、その後、当該再生器官原基にガイドを挿入するため、操作には熟練を要していた。さらに、大量の再生器官原基を調製する場合、当該大量の再生器官原基の各々にガイドを挿入するため、大量のガイドの挿入、及び、ガイドが挿入された大量の再生器官原基の取扱いにおいては、操作が煩雑にならざるを得なかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、取り扱いが容易なファイバー担体−細胞含有ゲル複合体、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造する方法、並びに、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造するためのキットを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法は、(1)基材と前記基材の表面上に配置されたファイバー担体とを用意すること;、(2)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、ハイドロゲル高分子と分散された細胞とを含む液滴を形成すること;、(3)気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴をゲル化させて、前記ファイバー担体と前記ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得ること;、を含む。本発明によれば、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造する方法が提供される。
【0008】
前記方法は、前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の前記細胞含有ゲル体を前記基材の前記表面から脱離させることをさらに含むこととしてもよい。また、前記方法は、前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の前記細胞含有ゲル体内で前記細胞を培養することをさらに含むこととしてもよい。この場合、前記細胞含有ゲル体内で前記細胞を培養して、前記細胞の凝集塊を形成することとしてもよい。
【0009】
前記方法では、前記(2)において、気相中、前記基材の前記表面上で、互いに離間して1つの前記ファイバー担体に付着し、各々が前記ハイドロゲル高分子と前記分散された細胞とを含む複数の前記液滴を形成し、前記(3)において、気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴をゲル化させて、前記1つのファイバー担体と、互いに離間して前記1つのファイバー担体に付着した複数の前記細胞含有ゲル体とを含む前記ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得ることとしてもよい。この場合、前記方法は、前記ファイバー担体−細胞含有ハイドロゲル複合体の前記1つのファイバー担体を切断して、1つのファイバー担体片と前記1つのファイバー担体片に付着した1つの前記細胞含有ゲル体とを含む、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体片を得ることをさらに含むこととしてもよい。
【0010】
前記方法では、前記(1)において、前記基材の前記表面上に配置された複数の前記ファイバー担体を用意し、前記複数のファイバー担体の各々について、前記(2)及び(3)を実施することとしてもよい。また、前記方法では、前記(1)において、一部が支持部材に固定され、他の一部が前記基材の前記表面上に配置された前記ファイバー担体を用意し、前記支持部材に固定された前記ファイバー担体について、前記(2)及び(3)を実施することとしてもよい。
【0011】
前記方法において、前記(2)は、(2−1)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、第一のハイドロゲル高分子と分散された第一の細胞とを含む第一の液滴を形成すること、及び、(2−2)気相中、前記基材の前記表面上で、前記ファイバー担体に付着し、第二のハイドロゲル高分子と分散された第二の細胞とを含み、前記第一の液滴と連結した第二の液滴を形成して、前記ファイバー担体に付着した液滴連結体を得ることを含み、前記(3)において、気相中、前記基材の前記表面上で、前記液滴連結体をゲル化させて、前記ファイバー担体と前記ファイバー担体に付着した前記細胞含有ゲル体とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を得ることとしてもよい。この場合、前記第一の細胞と前記第二の細胞との組み合わせが、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせであることとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体は、1つのファイバー担体と、各々がハイドロゲル高分子及び細胞を含む、互いに離間して前記1つのファイバー担体に付着した複数の細胞含有ゲル体と、を含む。本発明によれば、取り扱いが容易なファイバー担体−細胞含有ゲル複合体が提供される。
【0013】
前記複合体において、前記複数の細胞含有ゲル体の各々は、前記細胞の凝集塊を含むこととしてもよい。また、前記複合体において、前記複数の細胞含有ゲル体の各々は、第一のハイドロゲル高分子及び第一の細胞を含む第一のゲル部と、第二のハイドロゲル高分子及び第二の細胞を含む第二のゲル部とを含むこととしてもよい。また、前記複合体において、前記第一の細胞と前記第二の細胞との組み合わせが、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせであることとしてもよい。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キットは、ハイドロゲル高分子及び細胞を含む細胞含有ゲル体を付着させるファイバー担体と、前記ファイバー担体が固定された支持部材と、を含む。本発明によれば、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造するためのキットが提供される。
【0015】
前記キットは、その表面上に、気相中、前記支持部材に固定された前記ファイバー担体が配置されるとともに、前記ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体が形成される基材をさらに含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、取り扱いが容易なファイバー担体−細胞含有ゲル複合体、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造する方法、並びに、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を簡便に製造するためのキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程の一部を模式的に示す説明図である。
図1B】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程の他の部を模式的に示す説明図である。
図1C】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図1D】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図1E】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図1F】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図1G】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図1H】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の一例に含まれる主な工程のさらに他の部を模式的に示す説明図である。
図2A】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程の一部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2B】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程の他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2C】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2D】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2E】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2F】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2G】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図2H】本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法の他の例に含まれる主な工程のさらに他の部を平面視で模式的に示す説明図である。
図3A図2Aに示すIII−A線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3B図2Bに示すIII−B線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3C図2Cに示すIII−C線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3D図2Dに示すIII−D線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3E図2Eに示すIII−E線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3F図2Fに示すIII−F線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3G図2Gに示すIII−G線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図3H図2Hに示すIII−H線で切断した断面を模式的に示す説明図である。
図4A】本実施形態に係る実施例1における培養1日目の複合体の位相差顕微鏡写真を示す説明図である。
図4B】本実施形態に係る実施例1における培養3日目の複合体の位相差顕微鏡写真を示す説明図である。
図5A】本実施形態に係る実施例1における培養1日目の複合体の蛍光顕微鏡写真を示す説明図である。
図5B】本実施形態に係る実施例1における培養3日目の複合体の蛍光顕微鏡写真を示す説明図である。
図6A】本実施形態に係る実施例2においてファイバー担体−細胞含有ゲル複合体を移植後3週間が経過した時点における発毛を観察した結果の一例を示す説明図である。
図6B】本実施形態に係る実施例2においてファイバー担体を含まない細胞含有ゲル体のみを移植後3週間が経過した時点における発毛を観察した結果の一例を示す説明図である。
図7】本実施形態に係る実施例3において、支持部材に固定されたファイバー担体と、当該ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体とを含む複合体を製造した結果の一例を示す説明図である。
図8A】本実施形態に係る実施例3における培養1日目の複合体の光学顕微鏡写真を示す説明図である。
図8B】本実施形態に係る実施例3における培養3日目の複合体の光学顕微鏡写真を示す説明図である。
図9A】本実施形態に係る実施例3における培養開始直後の複合体の位相差顕微鏡写真を示す説明図である。
図9B】本実施形態に係る実施例3における培養3日目の複合体の位相差顕微鏡写真を示す説明図である。
図10A】本実施形態に係る実施例3における培養開始直後の複合体の蛍光顕微鏡写真を示す説明図である。
図10B】本実施形態に係る実施例3における培養3日目の複合体の蛍光顕微鏡写真を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0019】
図1A図1Hには、本実施形態に係るファイバー担体−細胞含有ゲル複合体の製造方法(以下、「本方法」という。)の一例に含まれる主な工程を模式的に示す。本方法は、(1)基材100と当該基材100の表面110上に配置されたファイバー担体10とを用意すること(図1A);、(2)気相200中、当該基材表面110上で、当該ファイバー担体10に付着し、ハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む液滴30を形成すること(図1B図1D);、(3)気相200中、当該基材表面110上で、当該液滴30をゲル化させて、当該ファイバー担体10と当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体50を得ること(図1E);、を含む。
【0020】
ここで、本明細書においては、上記(2)が、(2−1)気相200中、基材表面110上で、ファイバー担体10に付着し、第一のハイドロゲル高分子と分散された第一の細胞21とを含む第一の液滴31を形成すること(図1B)、及び、(2−2)気相200中、当該基材表面110上で、当該ファイバー担体10に付着し、第二のハイドロゲル高分子と分散された第二の細胞22とを含み、当該第一の液滴31と連結した第二の液滴32を形成して(図1C)、当該ファイバー担体10に付着した液滴連結体33を得ること(図1D)を含み、上記(3)において、気相200中、基材表面110上で、当該液滴連結体33をゲル化させて、当該ファイバー担体10と当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40とを含む複合体50を得る(図1E)場合について主に説明する。
【0021】
本方法においては、まず、上記(1)において、ファイバー担体10が配置された基材表面110を用意する。ファイバー担体10は、ファイバー状の形状を有し、液滴30及び細胞含有ゲル体40が付着可能な担体であれば特に限られない。ファイバー担体10を構成する材料は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られず、例えば、有機材料、無機材料、金属、セラミック等、任意の材料が用いられる。ファイバー担体10としては、例えば、人工繊維、又は天然繊維が好ましく用いられる。
【0022】
人工繊維としては、例えば、合成樹脂繊維等の人工有機繊維、半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維等の人工無機繊維、ステンレス繊維等の金属繊維、及びセラミック繊維からなる群より選択される1以上が用いられる。
【0023】
天然繊維としては、例えば、動物由来繊維、植物由来繊維、及び、鉱物由来繊維からなる群より選択される1以上が用いられる。動物由来繊維としては、例えば、ヒトの毛髪、又は非ヒト動物の毛(非ヒト哺乳類の毛、鳥類の毛、絹繊維等の昆虫由来繊維を含む。)が用いられる。植物由来繊維としては、例えば、綿繊維、又は麻繊維が用いられる。ファイバー担体10としては、生分解性繊維を用いることとしてもよい。
【0024】
ファイバー担体10は、可撓性を有することが好ましく、動物の毛(特に、ヒトの毛髪)に類似した可撓性を有することが特に好ましい。ファイバー担体10の形状は、本発明による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、動物の毛(特に、ヒトの毛髪)に類似した形状を有することが好ましい。ファイバー担体10の断面形状は、本発明による効果が得られる範囲であれば特に限られず、円形、楕円形、矩形、その他の任意の形状であってよいが、円形又は楕円形であることが好ましい。ファイバー担体10は、中空体(例えば、中空糸)であってもよいし、中実体であってもよいが、中実体であることが好ましい。
【0025】
各ファイバー担体10は、単独で存在する1本のファイバー状の担体である。すなわち、ファイバー担体10は、例えば、他のファイバーと編まれていない。また、ファイバー担体10は、例えば、シート状の布(例えば、織布及び不織布)を構成するものではない。
【0026】
ファイバー担体10の断面積(ファイバー担体10の長手方向に直交する断面の面積)は、本発明による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、100μm以上であることとしてもよく、300μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることが特に好ましい。また、ファイバー担体10の断面積は、例えば、1mm以下であることとしてもよく、100000μm以下であることが好ましく、50000μm以下であることがより好ましく、10000μm以下であることが特に好ましい。ファイバー担体10の断面積は、上述した下限値の一つと、上述した上限値の一つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0027】
ファイバー担体10の長さは、本発明による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、5mm以上であることとしてもよく、10mm以上であることとしてもよく、15mm以上であることとしてもよく、20mm以上であることとしてもよく、25mm以上であることとしてもよく、30mm以上であることとしてもよい。また、ファイバー担体30の長さは、例えば、500mm以下であることとしてもよく、300mm以下であることとしてもよい。ファイバー担体10の長さは、上述した下限値の一つと、上述した上限値の一つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0028】
ファイバー担体10は、その一部に液滴30が付着できるように基材表面110上に配置されていればよく、当該ファイバー担体10は当該基材表面110と接していなくてもよいが、当該ファイバー担体10の少なくとも一部が当該基材表面110と接していることが好ましい。
【0029】
ファイバー担体10の少なくとも一部が基材表面110上に接して配置されている場合、当該ファイバー担体10の少なくとも一部は、当該基材表面110に脱離可能に接して配置されていることが好ましい。
【0030】
基材100は、その表面110上に、ファイバー担体10を配置でき、且つ、液滴30及び細胞含有ゲル体40を形成できるものであれば特に限られず、例えば、樹脂、ガラス、セラミック又は金属の基材であることとしてもよい。
【0031】
基材表面110は、少なくとも液滴30及び細胞含有ゲル40が形成される部分が、撥水性表面であることが好ましい。この場合、撥水性の基材表面110の水接触角は、例えば、90°以上であることとしてもよく、100°以上であることが好ましく、105°以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。
【0032】
撥水性の基材表面110は、例えば、撥水性の材料(例えば、フッ素含有ポリマー等の疎水性樹脂)の基材100の使用、及び/又は、撥水性処理(例えば、フッ素含有官能基等の疎水性官能基による修飾)により形成される。また、基材表面110は、平坦であることが好ましい。
【0033】
気相200は、気体の相であれば特に限られないが、当該気体は、酸素を含むことが好ましく、空気が好ましく使用される。液滴30を形成する気相200と、細胞含有ゲル体40を形成する気相200とは、気体組成が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
本方法においては、次に、上記(2)において、気相200中、基材表面110上で、ファイバー担体10に付着した液滴30を形成する。具体的に、液滴30は、ハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む、当該細胞20の懸濁液(細胞20が懸濁されたハイドロゲル水溶液)を、ファイバー担体10の一部を覆うように基材表面110上に滴下して形成する。
【0035】
より具体的に、図1B図1Dに示す例では、気相200中、基材表面110上で、ファイバー担体10に付着した液滴30として、第一の液滴31、第二の液滴32、及び液滴連結体33を形成する。第一の液滴31は、細胞20として第一の細胞21を含み、第二の液滴32は、細胞20として第二の細胞22を含み、液滴連結体33は、細胞20として当該第一の細胞21及び第二の細胞22を含む。
【0036】
すなわち、まず、第一のハイドロゲル高分子を含む第一の細胞21の懸濁液を、ファイバー担体10の一部を覆うように滴下して、当該ファイバー担体10に付着した第一の液滴31を形成し、次いで、第二のハイドロゲル高分子を含む第二の細胞22の懸濁液を、当該第一の液滴32に隣接した当該ファイバー担体10の他の一部を覆うように滴下して、当該ファイバー担体10に付着し当該第一の液滴31と連結した第二の液滴32を形成する。こうして、第一の液滴31と第二の液滴32とが融合して形成された、ファイバー担体10に付着した液滴連結体33を得る。液滴30の滴下は、図1B及び図1Cに示すように、ピペット等の分注器具300を用いて好ましく行われる。
【0037】
ファイバー担体10に付着した液滴30の表面の一部は、基材表面110に接する。すなわち、図1B図1Dに示す例では、第一の液滴31の表面の一部は、基材表面110の一部に接し、第二の液滴32の表面の一部は、当該基材表面110の他の一部に接する。
【0038】
ファイバー担体10に付着した液滴30は、気相200中で流動性を有するが、ハイドロゲル高分子を含み、水よりも粘性及び比重が大きいため、当該液滴30中において細胞20は、分散された状態で維持される。
【0039】
すなわち、図1B図1Dに示す例では、液滴連結体33の第一の液滴31に由来する部分では、第一の細胞21が分散された状態で維持され、当該液滴連結体33の第二の液滴32に由来する部分では、第二の細胞22が分散された状態で維持される。
【0040】
液滴30において、分散された個々の細胞は、他の細胞と結合しておらず、又は数個の細胞と結合しているのみであり、当該液滴30中に分散されて浮遊している細胞である。例えば、細胞懸濁液に含まれる細胞と溶媒とを分離するために、分散された細胞を含む当該細胞懸濁液を遠心する場合、遠心後に形成される当該細胞の沈殿物は、当該細胞の凝集塊であり、当該沈殿物を構成する細胞は、分散された細胞ではない。
【0041】
細胞20は、動物に由来する生きた細胞であれば特に限られない。動物は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物(ヒト以外の動物)であってもよいが、ヒト細胞を用いることが好ましい。非ヒト動物は、特に限られないが、非ヒト脊椎動物(ヒト以外の脊椎動物)であることが好ましい。非ヒト脊椎動物は、特に限られないが、非ヒト哺乳類であることが好ましい。非ヒト哺乳類は、特に限られないが、例えば、霊長類(例えば、サル)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)、食肉類(例えば、イヌ、ネコ)、又は有蹄類(例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)であってもよい。
【0042】
細胞20は、分化細胞であってもよいし、未分化細胞(幹細胞)であってもよい。幹細胞は、全能性幹細胞であってもよいし、多能性幹細胞であってもよいし、組織幹細胞であってもよい。具体的に、幹細胞は、例えば、人工多能性(iPS)幹細胞であってもよいし、胚性幹(ES)細胞であってもよいし、胚性生殖(EG)細胞であってもよい。分化細胞は、分化した機能を有する細胞であれば特に限られないが、例えば、生体から採取された細胞(生体から採取された後に培養された細胞であってもよい。)であってもよいし、生体外において幹細胞から誘導された細胞であってもよい。
【0043】
細胞20は、生体内の組織に由来する細胞であることとしてもよい。生体内の組織は、特に限られないが、例えば、毛包組織、皮膚組織、肝臓組織、心臓組織、腎臓組織、神経組織、骨組織、軟骨組織、骨髄組織、肺組織、腺組織、歯周組織又は血液であることとしてもよい。
【0044】
細胞20は、接着性細胞であってもよいし、非接着性細胞であってもよいが、接着性細胞であることが好ましい。接着性細胞は、生体内において、他の細胞及び/又は細胞外マトリクスに接着した状態で存在する細胞である。
【0045】
細胞20としては、1種の細胞のみを用いてもよいし、2種以上の細胞を組み合わせて用いてもよい。すなわち、1つの液滴30は、1種の細胞のみを含むこととしてもよいし、2種以上の細胞を含むこととしてもよい。また、1つの細胞含有ゲル体40は、1種の細胞のみを含むこととしてもよいし、2種以上の細胞を含むこととしてもよい。
【0046】
図1A図1Hに示すように、第一の細胞21と第二の細胞22とを少なくとも用いる場合、当該第一の細胞21と当該第二の細胞22との組み合わせは、本発明による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、相互作用する異なる細胞の組み合わせであることが好ましい。異なる細胞の組み合わせは、例えば、分化機能、増殖性、及び細胞表面マーカーからなる群より選択される1以上が異なる細胞の組み合わせである。
【0047】
第一の細胞21と第二の細胞22との相互作用は、特に限られないが、例えば、一方の細胞が分泌する物質が他方の細胞に作用する組み合わせ、及び/又は、細胞間結合を形成する組み合わせであることが好ましい。なお、一方の細胞が分泌する物質が他方の細胞に作用する場合、さらに、当該他方の細胞が分泌する物質が当該一方の細胞に作用してもよい。また、一方の細胞が分泌する物質が他方の細胞に作用する場合、当該物質が細胞含有ゲル体40の内部を拡散して当該他方の細胞に作用することとしてもよいし、当該物質が細胞含有ゲル体40を含む溶液(例えば、培養液)中に拡散し、その後、当該溶液中から当該細胞含有ゲル体40の当該他方の細胞に作用することとしてもよい。
【0048】
第一の細胞21と第二の細胞22との組み合わせは、生体内において相互作用する異なる細胞の組み合わせであることが好ましい。この場合、第一の細胞21と第二の細胞22との組み合わせは、生体内の同一の組織において相互作用する異なる細胞の組み合わせであってもよい。生体内の組織は、特に限られないが、例えば、毛包組織、皮膚組織、肝臓組織、心臓組織、腎臓組織、神経組織、骨組織、軟骨組織、骨髄組織、肺組織、腺組織、歯周組織又は血液であることとしてもよい。
【0049】
第一の細胞21と第二の細胞22との組み合わせは、同一の動物に由来する細胞の組み合わせであってもよいし、異なる動物に由来する細胞の組み合わせであってもよい。すなわち、第一の細胞21及び第二の細胞22は、いずれもヒト細胞(ヒトに由来する細胞)であってもよいし、いずれも非ヒト動物細胞(ヒト以外の動物に由来する細胞)であってもよいし、一方がヒト細胞であり、他方が非ヒト動物細胞であってもよい。
【0050】
第一の細胞21と第二の細胞22との組み合わせは、例えば、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせであることとしてもよい。上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせは、特に限られないが、例えば、毛包組織又は腺組織(例えば、汗腺、皮脂腺、涙腺、及び唾液腺からなる群より選択される1以上)において相互作用する上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせであることが好ましい。
【0051】
上皮系細胞及び/又は間葉系細胞は、生体の毛包組織又は腺組織(例えば、汗腺、皮脂腺、涙腺、及び唾液腺からなる群より選択される1以上)から採取された細胞(例えば、当該毛包組織から採取された後に培養された細胞)であってもよいし、生体外において幹細胞から誘導された細胞であってもよい。
【0052】
具体的に、上皮系細胞は、毛包組織のバルジ領域の外毛根鞘最外層細胞、毛母基部に由来する上皮系細胞、又は幹細胞(例えば、iPS細胞、ES細胞、又はEG細胞)から誘導された毛包上皮系細胞であることとしてもよい。また、上皮系細胞は、上皮幹細胞であってもよい。
【0053】
上皮系細胞は、発毛関連特性(例えば、発毛関連遺伝子の発現、及び/又は、間葉系細胞との共培養による毛包原基の形成)を有するものであってもよい。上皮系細胞は、毛包組織(例えば、毛包組織のバルジ領域の外毛根鞘最外層、及び又は、毛母基部)に由来する細胞であってもよく、皮膚組織に由来する細胞であってもよく、生体外で幹細胞(例えば、iPS幹細胞、ES細胞、又はEG細胞)から誘導された細胞であってもよい。
【0054】
上皮系細胞は、生体から採取された初代細胞であってもよく、予め培養された細胞(例えば、継代培養された細胞、及び/又は、株化された細胞)であってもよい。上皮系細胞は、例えば、サイトケラチンを発現する細胞として特定される。上皮系細胞は、上皮幹細胞であることが好ましい。上皮幹細胞は、例えば、サイトケラチン15、及び/又は、CD34を発現する細胞として特定される。
【0055】
間葉系細胞は、毛乳頭細胞、真皮毛根鞘細胞、発生期の皮膚間葉系細胞、又は幹細胞(例えば、iPS細胞、ES細胞、又はEG細胞)から誘導された毛包間葉系細胞であることとしてもよい。
【0056】
間葉系細胞は、発毛関連特性(例えば、発毛関連遺伝子の発現、及び/又は、上皮系細胞との共培養による毛包原基の形成)を有するものであってもよい。間葉系細胞は、成体毛包組織(例えば、毛乳頭及び/又は毛球部毛根鞘)に由来する細胞であってもよく、皮膚組織(胎児、幼体、成体のいずれの皮膚組織であってもよい。)に由来する細胞であってもよく、生体外で幹細胞(例えば、人工多能性(iPS)幹細胞、胚性幹(ES)細胞、又は胚性生殖(EG)細胞)から誘導された細胞であってもよい。
【0057】
間葉系細胞は、生体から採取された初代細胞であってもよく、予め培養された細胞(例えば、継代培養された細胞、及び/又は、株化された細胞)であってもよい。間葉系細胞は、例えば、Versican及びALP(アルカリフォスファターゼ)を発現する細胞として特定される。具体的に、間葉系細胞としては、毛乳頭細胞及び/又は毛球部毛根鞘細胞が好ましく用いられる。毛乳頭細胞及び毛球部毛根鞘細胞は、Versican及びALPを発現する。
【0058】
図1B図1Dに示す例において、第一の液滴31は、細胞20として主に第一の細胞21を含み、第二の液滴32は、細胞20として主に第二の細胞22を含む。すなわち、第一の液滴31に含まれる細胞の総数に対する第一の細胞21の数の割合、及び/又は、第二の液滴32に含まれる細胞の総数に対する第二の細胞22の数の割合は、それぞれ互いに独立に、例えば、50%以上であることとしてもよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより一層好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0059】
ハイドロゲル高分子は、ゲル化能を有する親水性高分子であれば特に限られない。ハイドロゲル高分子は、天然由来の高分子であってもよいし、人工的に合成された高分子であってもよいが、天然由来の高分子であることが好ましい。また、ハイドロゲル高分子は、生体適合性の高分子であることが好ましい。
【0060】
ハイドロゲル高分子は、細胞外マトリクスであることが好ましい。細胞外マトリクスは、生体内に存在するものであれば特に限られない。ハイドロゲル高分子は、細胞20に対して細胞接着性を有することとしてもよい。
【0061】
すなわち、図1B及び図1Cに示す例において、第一の液滴31に含まれる第一のハイドロゲル高分子は、第一の細胞21に対して細胞接着性を有し、及び/又は、第二の液滴32に含まれる第二のハイドロゲル高分子は、第二の細胞22に対して細胞接着性を有することとしてもよい。
【0062】
細胞接着性を有するハイドロゲル高分子は、細胞表面の分子と結合する高分子であり、例えば、当該細胞表面の分子と特異的に、又は非特異的に結合する特定のアミノ酸配列、及び/又は糖鎖を有する。
【0063】
具体的に、細胞接着性を有するハイドロゲル高分子は、例えば、コラーゲン(例えば、I型、II型、III型、IV型、V型、及びXI型からなる群より選択される1以上のコラーゲン)、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸)、プロテオグリカン、フィブリン、及びゼラチンからなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
【0064】
また、ハイドロゲル高分子は、ゼラチン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、及び合成高分子(例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド等)からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
【0065】
図1B及び図1Cに示す例において、第一の液滴31に含まれる第一のハイドロゲル高分子と、第二の液滴に含まれる第二のハイドロゲル高分子とは、同一種類の高分子であってもよいし、異なる種類の高分子であってもよい。すなわち、例えば、第一のハイドロゲル高分子及び第二のハイドロゲル高分子は、いずれもI型コラーゲンであることとしてもよいし、第一のハイドロゲル高分子がI型コラーゲンであり、第二のハイドロゲル高分子がグリコサミノグリカンであることとしてもよい。
【0066】
液滴30に含まれる細胞20の密度(複数の液滴31,32を滴下する場合には、当該複数の液滴31,32の各々に含まれる細胞20の密度)は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよい。
【0067】
液滴30の体積(複数の液滴31,32を滴下する場合には、当該複数の液滴31,32の各々の体積(1つの液滴の体積))は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、0.01μL以上、1mL以下であることとしてもよく、0.1μL以上、100μL以下であることとしてもよく、1μL以上、10μL以下であることとしてもよい。
【0068】
なお、本方法においてゲル化の対象となる液滴30は、図1D及び図1Eに示すように、2つの液滴31,32が融合して形成された液滴連結体33であってもよいが、これに限られず、1つの液滴から構成されてもよいし、3つ以上の液滴が融合して形成された液滴連結体であってもよい。
【0069】
本方法においては、さらに、上記(3)において、気相200中、基材表面110上で、ファイバー担体10に付着した液滴30をゲル化させる。すなわち、図1D及び図1Eに示す例では、気相200中、基材表面110上で、ファイバー担体10に付着した液滴連結体33をゲル化させる。
【0070】
この結果、ファイバー担体10と、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40と、を含む複合体50が得られる。すなわち、図1D及び図1Eに示す例では、液滴連結体33をゲル化することにより、第一の液滴31に由来する第一のゲル部41と、第二の液滴32に由来する第二のゲル部42と、を含む細胞含有ゲル体40が得られる。複合体50において、流動性を有しない細胞含有ゲル体40は、ファイバー担体10に固定される。
【0071】
液滴30のゲル化によって形成された細胞含有ゲル体40は、当該液滴30と同様、ファイバー担体10の一部を覆い、且つ、当該細胞含有ゲル体40の表面の一部は、基材表面110に接する。
【0072】
ゲル化により、液滴30に含まれていたハイドロゲル高分子が分子間ネットワークを形成し、当該液滴30は流動性を失い、細胞含有ゲル体40が得られる。ゲル化の方法は、特に限られず、例えば、液滴30に含まれているハイドロゲル高分子の種類及び/又は濃度に応じて、適切な条件でゲル化を行う。具体的に、例えば、液滴30が、ハイドロゲル高分子としてI型コラーゲンを含む場合、当該液滴30を25℃〜37℃で、15分〜60分維持することにより、ゲル化を行うことができる。
【0073】
未だ培養されていない細胞含有ゲル体40の体積は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、0.01μL以上、100mL以下であることとしてもよく、0.1μL以上、10mL以下であることとしてもよく、1μL以上、1mL以下であることとしてもよく、1μL以上、500μL以下であることとしてもよい。
【0074】
未だ培養されていない細胞含有ゲル体40に含まれる細胞20の密度は、特に限られないが、例えば、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよい。
【0075】
本方法によれば、気相200中、基材表面110上で、まず、ファイバー担体10に付着した、ハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む液滴30を形成し、次いで、当該液滴30をゲル化させるという簡便な操作により、当該ファイバー担体10に固定された細胞含有ゲル体40を含む複合体50を容易に製造することができる。
【0076】
また、図1A図1Eに示すように、気相200中、基材表面110上で、複数の液滴31,32を連結する場合には、例えば、各液滴31,32のサイズ、及び/又は、配置を調節することにより、最終的に形成される細胞含有ゲル体40における複数の細胞21,22間の相互作用のための境界面の大きさを簡便且つ効果的に調節することができる。
【0077】
本方法は、複合体50の細胞含有ゲル体40を基材表面110から脱離させることをさらに含むこととしてもよい。すなわち、この場合、図1E及び図1Fに示すように、ファイバー担体10に付着し、基材表面110に接していた細胞含有ゲル体を、当該基材表面110から脱離させて、当該基材表面110に接していない、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40を得る。
【0078】
細胞含有ゲル体40を基材表面110から脱離させる方法は、当該細胞含有ゲル体40に含まれる細胞20の生存を維持しつつ当該細胞含有ゲル体40を基材表面110から脱離させる方法であれば特に限られないが、例えば、当該細胞含有ゲル体40が接している当該基材表面110を培養液等の水溶液中に浸漬する方法、当該細胞含有ゲル体40及び/又は当該基材表面110に培養液等の水溶液の流れを与える方法、又は、培養液等の水溶液中、ピペットチップ等の器具で細胞含有ゲル体40に軽く触れる方法が好ましく使用される。
【0079】
また、基材表面110から脱離させて回収した細胞含有ゲル体40を、そのまま使用して、当該細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養する場合には、当該細胞含有ゲル体40に含まれるハイドロゲル高分子を分解する酵素処理を行うことなく、当該細胞含有ゲル体40を当該基材表面110から脱離させることが好ましい。
【0080】
なお、複合体50の細胞含有ゲル体40はファイバー担体10の一部に付着していることから、当該細胞含有ゲル体40を基材表面110から脱離させる際には、当該ファイバー担体10の少なくとも当該一部も脱離させることになる。
【0081】
細胞含有ゲル体40の脱離により、基材表面110に付着していない細胞含有ゲル体40を含む複合体50が得られる。ファイバー担体10以外に付着していない細胞含有ゲル40を含む複合体50は、様々な用途に供することができる。
【0082】
基材表面110から脱離した複合体50は、図1F図1Hに示すように、細胞含有ゲル体40から延び出した、ファイバー担体10の端部10a,10bを有する。複合体50において細胞含有ゲル体40から延び出すファイバー担体10の端部10a,10bは、当該ファイバー担体10の2つの端部10a,10bの両方であってもよいし、当該2つの端部10a,10bの一方のみであってもよい。また、複合体50の細胞含有ゲル体40から延び出すファイバー担体10の端部10a,10bは、図1F図1Hに示すように、自由端である。
【0083】
本方法は、複合体50の細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することをさらに含むこととしてもよい。この場合、複合体50の細胞含有ゲル体40を培養液410に浸漬して、当該培養液410中の細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養する。
【0084】
また、基材表面110から脱離した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することが好ましい。すなわち、図1F図1Hに示す例では、基材表面110から細胞含有ゲル体40を脱離させた後、当該細胞含有ゲル体40を培養容器400内の培養液410に浸漬し、当該培養液410中の当該細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養する。より具体的に、細胞含有ゲル体40において、第一のゲル部41内で第一の細胞21を培養するとともに、第二のゲル部42内で第二の細胞22を培養する。
【0085】
また、図1F図1Hに示すように、自由端(端部10a,10b)を有するファイバー担体10の全体を培養液410に浸漬し、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することとしてもよい。
【0086】
培養液410は、細胞20の生存を維持するために必要な組成、pH及び浸透圧等の特性を有する水溶液であれば特に限られない。培養液410に含まれる成分としては、例えば、糖類、アミノ酸、ビタミン、無機塩、抗生物質、増殖因子が挙げられる。
【0087】
培養時間は、特に限られず、例えば、12時間以上、10日以下であることとしてもよく、1日以上、7日以下であることとしてもよい。培養温度は、細胞20の生存を維持できる範囲であれば特に限られず、例えば、25℃以上、40℃以下であることとしてもよく、30℃以上、39℃以下であることが好ましい。
【0088】
本方法においては、細胞含有ゲル体40を培養液410中で浮いた状態に維持し、当該浮いた状態の細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することが好ましい。すなわち、図1G及び図1Hに示す例では、培養液410中で浮いた状態の細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養している。
【0089】
なお、培養液410中で細胞含有ゲル体40が浮いている状態とは、当該細胞含有ゲル体40が培養容器400の壁面に実質的に付着していない状態である。すなわち、例えば、培養容器400の壁面に接することなく培養液410中で浮いている細胞含有ゲル体40のみならず、培養液410に流れを発生させれば、培養容器400の壁面から容易に脱離する程度に当該壁面に弱く付着した状態の細胞含有ゲル体40も、実質的に浮いた状態である。
【0090】
本方法においては、細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養して、当該細胞20の凝集塊60を形成することとしてもよい。すなわち、この場合、ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することにより、当該細胞含有ゲル体40内において、当該ファイバー担体10に付着した細胞凝集塊60を形成する。
【0091】
すなわち、細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養する場合には、当該細胞含有ゲル体40内で、細胞凝集塊60として、当該第一の細胞21の凝集塊61、及び/又は、当該第二の細胞22の凝集塊62を形成する。
【0092】
具体的に、図1G及び図1Hに示す例では、ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養することにより、第一のゲル部41において当該ファイバー担体10に付着した当該第一の細胞21の凝集塊61を形成するとともに、第二のゲル部42において当該ファイバー担体10に付着した当該第二の細胞22の凝集塊62を形成している。
【0093】
細胞凝集塊60は、細胞含有ゲル体40内において、培養時間の経過に伴い、細胞20が互いに結合し、自発的に凝集することにより形成される。すなわち、図1G及び図1Hに示す例では、細胞含有ゲル体40内において、第一の細胞21が凝集して第一の細胞凝集塊61を形成するとともに、第二の細胞22が凝集して第二の細胞凝集塊62を形成している。
【0094】
また、図1G及び図1Hに示すように、互いに結合した第一の細胞凝集塊61及び第二の細胞凝集塊62を形成することとしてもよい。この場合、第一の細胞凝集塊61を構成する第一の細胞21のうち一部の第一の細胞21と、第二の細胞凝集塊62を構成する第二の細胞22のうち一部の第二の細胞22とが結合を形成する。その結果、細胞含有ゲル体40内において、第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とを含む、ファイバー担体10に付着した細胞凝集塊連結体63が形成される。この細胞凝集塊連結体63において、第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とは、図1Hに示すように、ファイバー担体10が延びる方向(当該ファイバー担体10の長手方向)に連結されている。
【0095】
具体的に、例えば、第一の細胞21が上皮系細胞(例えば、毛包組織に由来する上皮幹細胞等の毛包上皮系細胞)であり、第二の細胞22が間葉系細胞(例えば、毛乳頭細胞等の毛包間葉系細胞)である場合、ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で、当該第一の細胞21が第一の細胞凝集塊61を形成するとともに、当該第二の細胞22が第二の細胞凝集塊62を形成し、さらに、当該第一の細胞凝集塊61と当該第二の細胞凝集塊62とが連結することにより、毛包原基である細胞凝集塊連結体63が形成される。この毛包原基である細胞凝集塊連結体63は、好ましくは、生体に移植した場合に発毛する能力を有する。
【0096】
本方法においては、分散された細胞20を含む細胞含有ゲル体40を培養して、当該細胞20の凝集塊60を含む、収縮した細胞含有ゲル体40を得ることとしてもよい。すなわち、培養時間の経過に伴い、細胞含有ゲル体40内で細胞20が互いに結合し、徐々に凝集して細胞凝集塊60を形成する場合、当該細胞含有ゲル体40は、培養時間の経過に伴って、ファイバー担体10に付着したまま収縮する。
【0097】
具体的に、図1G及び図1Hに示すように、分散された第一の細胞21及び分散された第二の細胞22を含む細胞含有ゲル体40を培養することにより、当該第一の細胞21の凝集塊61及び当該第二の細胞22の凝集塊62を含む、収縮した細胞含有ゲル体40が得られる。
【0098】
培養開始時の分散された細胞20を含む細胞含有ゲル体40(例えば、図1Gに示す、分散された第一の細胞21及び分散された第二の細胞22を含む細胞含有ゲル体40)の体積に対する、培養後の細胞凝集塊60を含む細胞含有ゲル体40(例えば、図1Hに示す、第一の細胞凝集塊61及び第二の細胞凝集塊62を含む細胞含有ゲル体40)の体積の割合は、例えば、50%以下であることとしてもよく、40%以下であることとしてもよく、30%以下であることとしてもよく、20%以下であることとしてもよく、10%以下であることとしてもよい。
【0099】
このような培養経過に伴う細胞含有ゲル体40の収縮は、ハイドロゲル高分子が細胞20に対して細胞接着性を有する場合に顕著となる。すなわち、図1G及び図1Hに示すような培養経過に伴う細胞含有ゲル体40の収縮は、第一のハイドロゲル高分子が第一の細胞21に対して細胞接着性を有し、及び/又は、第二のハイドロゲル高分子が第二の細胞22に対して細胞接着性を有する場合に顕著となる。
【0100】
細胞凝集塊60は、当該細胞含有ゲル体40を基材表面110から脱離させた後、培養液410中で浮いた状態の当該細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することにより、効果的に形成される。
【0101】
細胞凝集塊60を含む細胞含有ゲル体40における細胞20の密度(当該細胞含有ゲル体40の単位体積に含まれる細胞20の数)は、例えば、1×10cells/mL以上、1×1011cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×1010cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×1010cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよく、1×10cells/mL以上、1×10cells/mL以下であることとしてもよい。
【0102】
本方法においては、ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養して、細胞凝集塊60と、当該細胞凝集塊60を覆うハイドロゲル被覆部40aとを含み、当該細胞凝集塊60の内部におけるハイドロゲル高分子の密度が、当該ハイドロゲル被覆部40aにおけるそれより大きい、細胞含有ゲル体40を得ることとしてもよい。
【0103】
すなわち、図1Hに示す例では、細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養して、下記(a)及び/又は(b)の特性:(a)第一の細胞凝集塊61と、当該第一の細胞凝集塊61を覆う第一のハイドロゲル被覆部41aとを含み、当該第一の細胞凝集塊61の内部における第一のハイドロゲル高分子の密度が、当該第一のハイドロゲル被覆部41aにおけるそれより大きい;、(b)第二の細胞凝集塊62と、当該第二の細胞凝集塊62を覆う第二のハイドロゲル被覆部42aとを含み、当該第二の細胞凝集塊62の内部における第二のハイドロゲル高分子の密度が、当該第二のハイドロゲル被覆部42aにおけるそれより大きい;、を有する細胞含有ゲル体40を得る。
【0104】
すなわち、ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内において、培養時間の経過に伴って細胞20が凝集して細胞凝集塊60を形成する場合、凝集した当該細胞20間のハイドロゲル部分は、当該細胞凝集塊60を被覆するハイドロゲル部分に比べて顕著に収縮する。
【0105】
その結果、細胞凝集塊60を含む細胞含有ゲル体40においては、当該細胞凝集塊60の内部におけるハイドロゲル高分子の密度が、ハイドロゲル被覆部40aにおけるそれより大きくなる。
【0106】
このようなハイドロゲル高分子の局所的な濃縮は、特に、当該ハイドロゲル高分子が細胞20に対して細胞接着性を有する場合に顕著となる。すなわち、この場合、細胞20は、それが接着しているハイドロゲル高分子を手繰り寄せながら凝集するため、当該細胞20の近傍のハイドロゲル高分子は、当該細胞20から離れたハイドロゲル高分子に比べて顕著に濃縮される。
【0107】
細胞含有ゲル体40内におけるハイドロゲル高分子の密度の分布は、例えば、当該ハイドロゲル高分子に特異的な染色法を用いることにより、確認することができる。具体的に、例えば、細胞含有ゲル体40に含まれるハイドロゲル高分子を、蛍光標識した抗体を用いて染色し、染色後の当該細胞含有ゲル体40を蛍光顕微鏡下で観察して、細胞凝集塊60の内部における蛍光強度と、ハイドロゲル被覆部40aにおける蛍光強度とを比較することにより、当該細胞凝集塊60の内部におけるハイドロゲル高分子の密度と、ハイドロゲル被覆部40aにおけるハイドロゲル高分子の密度とを定量的に比較することができる。
【0108】
具体的に、細胞凝集塊60を含む細胞含有ゲル体40において、ハイドロゲル被覆部40aにおけるハイドロゲル高分子の密度に対する、当該細胞凝集塊60の内部における当該ハイドロゲル高分子の密度は、例えば、2倍以上であることとしてもよく、5倍以上であることとしてもよく、10倍以上であることとしてもよい。
【0109】
このような細胞含有ゲル体40内における、ハイドロゲル高分子の偏在は、まず気相200中で、分散された細胞20を含む細胞含有ゲル体40を形成し、その後、当該細胞含有ゲル体40内で当該細胞20を培養して細胞凝集塊60を形成するという本方法に特徴的な操作に起因するものである。
【0110】
本方法において、まず気相200中で、複数の液滴31,32を連結しゲル化して細胞含有ゲル体40を形成し、その後、当該細胞含有ゲル体40内で細胞21,22を培養して、互いに結合した複数の細胞凝集塊61,62を形成する場合、例えば、当該複数の液滴31,32のサイズ、及び/又は、配置を調節することにより、最終的に得られる細胞含有ゲル体40における当該複数の細胞凝集塊61,62間の結合面の大きさを簡便且つ効果的に制御することができる。
【0111】
また、上述のようにして得られる細胞含有ゲル体40においては、第一の細胞21と第二の細胞22との相互作用のための境界面、及び/又は、第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62との相互作用のための境界面(当該第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とが結合している場合には、その結合面)の大きさを任意に設定することができる。
【0112】
図2A図2Hには、本方法の他の例に含まれる主な工程を平面視で模式的に示す。図3A図3Hには、図2A図2Hに示すIII−A線〜III−H線で切断した断面を模式的に示す。
【0113】
本方法の上記(1)においては、基材表面110上に配置された複数のファイバー担体10を用意し、当該複数のファイバー担体10の各々について、上記(2)及び(3)を実施することとしてもよい。
【0114】
すなわち、図2A図2E及び図3A図3Eに示す例では、まず、基材表面110上に配置された複数(3つ)のファイバー担体10を用意し、次いで、当該複数(3つ)のファイバー担体10の各々について、当該ファイバー担体10に付着した液滴30の形成、及び、当該液滴30のゲル化による細胞含有ゲル体40の形成を実施して、各々が1つのファーバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40を含む、複数(3つ)の複合体50を製造している。
【0115】
なお、複数のファイバー担体10は、基材表面110上に平行に配置されることが好ましい。また、基材表面110上に複数のファイバー担体10が配置される場合であっても、各細胞含有ゲル体40は、当該複数のファイバー担体10の1つのみに付着するよう形成される。すなわち、各細胞含有ゲル体40が付着しているファイバー担体10の数は1である。このため、本方法により製造される各複合体50は、1つのファイバー担体10を含む。すなわち、各複合体50に含まれるファイバー担体10の数は1である。
【0116】
本方法は、上記(2)において、気相200中、基材表面110上で、各々がハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む、互いに離間して1つのファイバー担体10に付着した複数の液滴30を形成し、上記(3)において、気相200中、基材表面110上で、当該液滴30をゲル化させて、当該1つのファイバー担体10と、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数の細胞含有ゲル体40とを含む複合体50を得ることとしてもよい。
【0117】
すなわち、図2C図2E及び図3C図3Eに示す例では、気相200中、基材表面110上で、各ファイバー担体10について、まず、互いに離間して1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の液滴30を形成し、次いで、当該液滴30をゲル化させて、当該1つのファイバー担体10と、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の細胞含有ゲル体40とを含む複合体50を製造している。
【0118】
より具体的には、基材表面110上に配置された複数(3つ)のファイバー担体10の各々に関し、上記(2−1)において、気相200中、基材表面110上で、各々が第一のハイドロゲル高分子と分散された第一の細胞21とを含む、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の第一の液滴31を形成し(図2C及び図3C)、上記(2−2)において、気相200中、当該基材表面110上で、各々が第二のハイドロゲル高分子と分散された第二の細胞22とを含み且つ当該複数(3つ)の第一の液滴31の異なる1つと連結した、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の第二の液滴32を形成して、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の液滴連結体33を得(図2D及び図3D)、上記(3)において、気相200中、基材表面110上で、当該複数(3つ)の液滴連結体33をゲル化させて、当該1つのファイバー担体10と、互いに離間して当該1つのファイバー担体10に付着した複数(3つ)の細胞含有ゲル体40とを含む複合体50を得る(図2E及び図3E)。
【0119】
なお、ファイバー担体10に付着した複数の液滴30の滴下には、規則的に配置された複数の分注器具(例えば、複数のピペットチップ)を備えた自動分注ロボットが好ましく使用される。このような自動分注ロボットは、例えば、ハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む懸濁液を収容するタンクと、基材100を置くステージとを有し、その動作は、コンピュータにより制御される。
【0120】
そして、自動分注ロボットを動作させることにより、規則的に配置された複数の分注器具から、タンク内の細胞懸濁液を、基材100の表面110上に配置されたファイバー担体10上の互いに離間した複数の位置に滴下することにより、当該分注器具の配置に対応した規則的な配置で、互いに離間して当該ファイバー担体10に付着した複数の液滴30を効率よく形成することができる。
【0121】
本方法は、上記(1)において、一部が支持部材500に固定され、他の一部が基材表面110上に配置されたファイバー担体10を用意し、当該支持部材500に固定された当該ファイバー担体10について、上記(2)及び(3)を実施することとしてもよい。
【0122】
この場合、ファイバー担体10の支持部材500に固定される一部は、当該ファイバー担体10の一部であれば特に限られないが、当該ファイバー担体10の一方の端部10a及び/又は他方の端部10bであることが好ましく、当該ファイバー担体10の両端部10a,10bであることが特に好ましい。
【0123】
また、支持部材500に固定されたファイバー担体10の基材表面110上に配置される他の一部は、当該ファイバー担体10の当該支持部材500に固定されている部分以外の部分であれば特に限られないが、当該ファイバー担体10の両端部10a,10bが当該支持部材500に固定されている場合には、当該両端部10a,10bの間の部分である中央部10cを当該基材表面110上に配置する。ファイバー担体10の基材表面110に配置される部分(例えば、中央部10c)の少なくとも一部(例えば、液滴30が付着する部分)は、当該基材表面110に接して配置されることが好ましい。
【0124】
また、各々の一部が支持部材500に固定され、他の一部が基材表面110上に配置された、複数のファイバー担体10を用意することとしてもよい。この場合、複数のファイバー担体10は、平行に延びるよう支持部材500に固定されることが好ましい。
【0125】
具体的に、図2A図2Hに示す例では、各々の両端部10a,10bが支持部材500に固定され、中央部10cが基材表面110上に配置された、複数(3つ)のファイバー担体10が使用されている。また、複数(3つ)のファイバー担体10は、互いに平行に支持部材500に固定されている。なお、複数のファイバー担体10は、互いに離間して支持部材500に固定されている。
【0126】
このような本方法においては、ハイドロゲル高分子及び細胞20を含む細胞含有ゲル体40を付着させるファイバー担体10と、当該ファイバー担体10が固定された支持部材500と、を含む、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体製造用キット(以下、「本キット」という)が好ましく使用される。
【0127】
本キットは、図2A及び図3Aに示すように、各々にハイドロゲル高分子及び細胞20を含む細胞含有ゲル体40を付着させる複数のファイバー担体10と、当該複数のファイバー担体10が互いに離間して固定された支持部材500と、を含むこととしてもよい。
【0128】
本方法においては、まず、複数のファイバー担体10が固定された支持部材500を用意する。図2A及び図3Aに示す例において、支持部材500は、ファイバー担体10の一対の端部10a,10bを固定する一対の固定部510a,510bと、当該一対の固定部510a,510bの間に形成された開口部520と、を含む。この例において、開口部520は、貫通穴として形成されているが、有底穴として形成されてもよい。また、図2A及び図3Aに示す例において、支持部材500の一対の固定部510a,510bは、連結部530により連結されている。すなわち、支持部材500は、枠状に形成されている。
【0129】
次いで、図2B及び図3Bに示すように、支持部材500に固定されたファイバー担体10を基材100の表面110上に配置する。すなわち、支持部材500と別体に形成された基材100を、当該支持部材500と組み合わせて用いる。
【0130】
具体的に、図2B及び図3Bに示す例では、支持部材500の開口部520(図2A及び図3A)に基材100を配置することにより、当該開口部520内で、ファイバー担体10(具体的には、当該ファイバー担体10の中央部10c)を当該基材100の表面110上に配置する。
【0131】
すなわち、支持部材500及び基材100は、当該支持部材500の開口部520に当該基材100を配置することで、当該支持部材500に固定されたファイバー担体10が当該基材100の表面110上に配置されるようなサイズ及び形状で形成されている。
【0132】
この点、本方法で使用される本キットは、ファイバー担体10及び支持部材500に加えて、気相200中、その表面110上に、当該支持部材500に固定された当該ファイバー担体10が配置されるとともに、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40が形成される、基材100をさらに含むこととしてもよい。
【0133】
この場合、本キットは、複数のファイバー担体10と、当該複数のファイバー担体10が互いに離間して固定された支持部材500とに加えて、その表面110に、各々が当該複数のファイバー担体10の1つに付着した複数の細胞含有ゲル体40が形成される基材100をさらに含むこととしてもよい。
【0134】
そして、本方法では、上記(2)において、気相200中、基材表面110上で、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着し、ハイドロゲル高分子と分散された細胞20とを含む液滴30を形成し、上記(3)において、気相200中、当該基材表面110上で、当該液滴30をゲル化させて、当該支持部材500に固定されたファイバー担体10と当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40とを含むファイバー担体−細胞含有ゲル複合体50を得る。
【0135】
本方法は、ファイバー担体10が固定された支持部材500を用いる場合、当該支持部材500に固定された当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40を当該基材表面110から脱離させることをさらに含むこととしてもよい。
【0136】
すなわち、図2D図2E及び図3D図3Eに示すように、気相200中、基材表面110上で、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40を形成して複合体50を得た後、当該ファイバー担体10を当該支持部材500に固定したまま、当該ファイバー担体10に付着した当該細胞含有ゲル体40を、当該基材表面110から脱離させる。この場合、複合体50は、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着し、基材表面110から脱離した(例えば、気相中又は液相中に浮いた状態の)細胞含有ゲル体40を含むこととなる。
【0137】
本方法においては、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養することとしてもよい。
【0138】
すなわち、図2F図2G及び図3F図3Gに示すように、支持部材500に固定された複数のファイバー担体10の各々に付着した複数の細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養する。
【0139】
具体的に、図2F図2G及び図3F図3Gに示す例では、支持部材500に固定された各ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40を培養容器400内の培養液410中に浸漬し、当該培養液410中で浮いた状態の当該細胞含有ゲル体40内で、細胞20を培養する。
【0140】
より具体的に、図2F図2G及び図3F図3Gに示す例では、細胞含有ゲル体40と、支持部材500に固定されたファイバー担体10のうち少なくとも当該細胞含有ゲル体40が付着している部分とが、培養液410に浸漬されている。この例においては、支持部材500に固定された複合体50の全体が培養液410に浸漬されている。また、ファイバー担体10が固定されている支持部材500の固定部510a,510bも培養液410に浸漬されている。ただし、これらの例に限られず、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40が培養液中に配置されていればよい。
【0141】
本方法は、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養して、細胞凝集塊60を形成することとしてもよい。すなわち、図2F図2G及び図3F図3Gに示す例では、支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40内で第一の細胞21及び第二の細胞22を培養して、当該第一の細胞21の凝集塊61及び当該第二の細胞22の凝集塊62を形成している。
【0142】
支持部材500に固定されたファイバー担体10に付着した細胞凝集塊60を形成する場合、図2F図2G及び図3F図3Gに示すように、分散された細胞20を含む培養開始時の細胞含有ゲル体40(図2F及び図3F)に比べて、培養後の、細胞凝集塊60を含む細胞含有ゲル体40(図2G及び図3G)は、収縮して、その体積が減少してもよい。
【0143】
本方法において、1つのファイバー担体10に付着した複数の細胞含有ゲル体40を含む複合体50を形成する場合、本方法は、当該複合体50の当該1つのファイバー担体10を切断して、1つのファイバー担体片11(自由端である端部11a,11bを有する当該ファイバー担体10の一部)と、当該1つのファイバー担体片11に付着した1つの細胞含有ゲル体40(当該ファイバー担体10に付着していた複数の細胞含有ゲル体40の1つ)とを含む、ファイバー担体−細胞含有ゲル複合体片51(当該複数の細胞含有ゲル体40を含む複合体50の一部)を得ることをさらに含むこととしてもよい。
【0144】
具体的に、図2H及び図3Hに示す例では、複合体50に含まれる、支持部材500に固定された1つのファイバー担体10のうち、互いに離間した複数の細胞含有ゲル体40の間の部分を切断して、複合体片51を得る。
【0145】
より具体的に、支持部材500に固定された1つのファイバー担体10のうち、当該1つのファイバー担体10に付着した隣接した細胞含有ゲル体40の間の部分(当該隣接した細胞含有ゲル体40を連結する部分)を切断することにより、当該隣接する細胞含有ゲル体40の一方と、当該ファイバー担体10の一部である1つのファイバー担体片11とを含む複合体片51が得られる。なお、切断により単離された複合体片51に含まれるファイバー担体片11の両端部11a,11bは自由端になる。
【0146】
なお、図2H及び図3Hに示す例では、3つの複合体50の各々から複合体片51が1つずつ形成される様子を示しているが、当該3つの複合体50の各々は細胞含有ゲル体40を3つずつ含むことから、支持部材500に固定されたファイバー担体10をさらに切断することにより、最大で9つの複合体片51が得られる。すなわち、複数の複合体50の一部又は全部について、1つの複合体50に含まれる、所定数の細胞含有ゲル体40が付着したファイバー担体10を切断して、当該所定数の複合体片51を得ることとしてもよい。
【0147】
なお、ファイバー担体10が支持部材500に固定されている場合、当該支持体500に固定されたファイバー担体10を切断するが、これに限られず、例えば、支持部材500を使用しない場合には、複数の細胞含有ゲル体40が付着した、自由端である両端部10a,10bを有するファイバー担体10を切断することとしてもよい。
【0148】
複数の細胞含有ゲル体40が付着した1つのファイバー担体10を切断するタイミングは、図2H及び図3Hに示すように、当該細胞含有ゲル体40内で細胞20を培養した後、特に、細胞凝集塊60が形成された後であることが好ましいが、これに限られず、例えば、当該細胞含有ゲル体40内における細胞20の培養中の任意のタイミングであってもよいし、当該細胞含有ゲル体40内における細胞20の培養の開始前であってもよい。
【0149】
本方法によれば、ファイバー担体10と、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40とを含む複合体50が簡便に製造される。本方法により製造される複合体50は、1つのファイバー担体10と、ハイドロゲル高分子及び細胞20を含み当該1つのファイバー担体に付着した1つの細胞含有ゲル体40とを含むことが好ましい。
【0150】
細胞含有ゲル体40を1つだけ含む複合体50は、上述のとおり、1つのファイバー担体10に液滴30又は液滴連結体33を1つだけ付着させゲル化させることにより製造されてもよいし、又は、複数の細胞含有ゲル体40が互いに離間して付着した1つのファイバー担体10を切断して形成された複合体片51であってもよい。すなわち、複数の細胞含有ゲル体40が付着した1つのファイバー担体10を切断する場合、本方法は、複合体50として、複合体片51を製造する方法であることとしてもよい。
【0151】
複合体50において、各細胞含有ゲル体40は、上述のとおり、細胞凝集塊60を含むこととしてもよい。本方法により製造される複合体50は、1つのファイバー担体10と、各々がハイドロゲル高分子及び細胞20を含む、互いに離間して当該1つのファイバー担体に付着した複数の細胞含有ゲル体40と、を含むこととしてもよい。
【0152】
また、上述のとおり、複合体50において、細胞含有ゲル体40は、第一のハイドロゲル高分子及び第一の細胞21を含む第一のゲル部41と、第二のハイドロゲル高分子及び第二の細胞22を含む第二のゲル部42とを含むこととしてもよい。
【0153】
この場合、第一のゲル部41は、第一の細胞凝集塊61を含み、第二のゲル部42は、第二の細胞凝集塊62を含むこととしてもよい。さらに、細胞含有ゲル体40は、第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とが連結して形成された細胞凝集塊連結体63を含むこととしてもよい。
【0154】
複合体50において、第一の細胞21と第二の細胞22との組み合わせは、上皮系細胞と間葉系細胞との組み合わせであることとしてもよい。この場合、複合体50に含まれる細胞含有ゲル体40は、第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とを含むことが好ましく、当該第一の細胞凝集塊61と第二の細胞凝集塊62とが連結して形成された細胞凝集塊連結体63を含むことが好ましく、生体に移植した場合に発毛する能力を有する当該細胞凝集塊連結体63を含むことが特に好ましい。
【0155】
複合体50に含まれる1つのファイバー担体10は、支持部材500に固定されていることとしてもよく、この場合、その両端10a,10bが支持部材500に固定されていることが好ましい。
【0156】
本方法により製造される複合体50は、ファイバー担体10を含むという特徴を利用して、様々な用途に適用される。すなわち、例えば、複合体50の細胞含有ゲル体40が生体への移植用細胞を含む場合には、当該複合体50は、移植片として利用される。すなわち、本方法は、移植用複合体50の製造方法であることとしてもよい。複合体50が移植される生体は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよいが、ヒトであることが好ましい。
【0157】
複合体50において、ファイバー担体10は、細胞含有ゲル体40を輸送するための担体として効果的に利用される。すなわち、例えば、微小な細胞含有ゲル体40を生体の移植部位まで輸送する際、利用者は、当該細胞含有ゲル体40に付着したファイバー担体10をピンセット等の器具で把持することにより、当該細胞含有ゲル体40を簡便且つ確実に輸送することができる。
【0158】
複合体50の細胞含有ゲル体40が、毛包組織由来の細胞又は腺組織由来の細胞(例えば、上皮系細胞及び/又は間葉系細胞)を含む場合、当該複合体50は、毛包組織又は腺組織を再生させるため、生体に移植することができる。この場合、ファイバー担体10は、当該ファイバー担体10に付着した細胞含有ゲル体40に含まれる細胞20が増殖し、及び/又は遊走するための担体としての役割を果たすことが期待される。
【0159】
本方法により製造された複合体50を生体に移植して、その移植部位から毛を生やす場合(例えば、複合体50の細胞含有ゲル体40が、上皮系細胞及び/又は間葉系細胞、好ましくは上皮系細胞の凝集塊及び/又は間葉系細胞の凝集塊、特に好ましくは上皮系細胞の凝集塊と間葉系細胞の凝集塊とが連結して形成された毛包原基を含む場合)、当該生体は特に限られず、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよいが、ヒトであることが好ましい。この場合、複合体50は、生体に移植した場合に発毛する能力を有する毛髪再生用移植片である。複合体50の生体への移植は、当該生体の皮膚への移植であることが好ましい。皮膚への移植は、例えば、皮下移植であってもよいし、皮内移植であってもよい。すなわち、複合体50は、皮膚(例えば、頭皮)への移植片であることとしてもよい。
【0160】
複合体50の製造及びその生体への移植は、医学的用途であってもよいし、研究用途であってもよい。すなわち、例えば、脱毛を伴う疾患の治療又は予防のために、当該疾患を患っている又は患う可能性のあるヒト患者に移植する目的で複合体50を製造し、当該複合体50を当該ヒト患者に移植することとしてもよい。
【0161】
脱毛を伴う疾患は、特に限られないが、例えば、男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)、女子男性型脱毛症(Female Androgenetic Alopecia:FAGA)、分娩後脱毛症、びまん性脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、牽引性脱毛症、代謝異常性脱毛症、圧迫性脱毛症、円形脱毛症、神経性脱毛症、抜毛症、全身性脱毛症、及び症候性脱毛症からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
【0162】
また、例えば、脱毛を伴う疾患の治療又は予防に使用され得る物質の探索、及び/又は当該疾患の機構に関与する物質の探索のために、複合体50を製造し、又は当該複合体50を非ヒト動物に移植することとしてもよい。
【0163】
なお、複合体50を生体に移植した後、当該複合体50に含まれるファイバー担体10は除去される。すなわち、例えば、移植された複合体50から延び出るファイバー担体10をピンセット等の器具を用いて引き抜くことにより、当該ファイバー担体10を除去することができる。また、複合体50の移植後、当該複合体50のファイバー担体10が自然に抜け落ちることもある。また、ファイバー担体10が生体分解性材料で構成されている場合には、移植後、当該ファイバー担体10は、加水分解等によって分解され、除去される。
【0164】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0165】
[細胞の調製]
胎齢18日のC57BL/6マウス胎児より背部の皮膚組織を採取し、中尾らが報告した方法(Koh-ei Toyoshima et al. Nature Communication, 3, 784, 2012)を一部改変して、ディスパーゼ処理を4℃で1時間、30rpm震盪条件で行い、当該皮膚組織の上皮層と間葉層とを分離した。その後、上皮層に100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施し、さらにトリプシン処理を10分施し、最終的に40μmメッシュセルストレイナーを通過した、分散された上皮系細胞を得た。また、間葉層には100U/mLのコラゲナーゼ処理を1時間20分施し、最終的に40μmメッシュセルストレイナーを通過した、分散された間葉系細胞を得た。
【0166】
[複合体の製造]
基材表面として、直径6cmの培養用ディッシュの蓋の内側の撥水性表面を使用した。ファイバー担体としては、長さ約5cm〜10cmに切断した医療用の縫合糸(直径約50μm、ナイロン製又はシルク製)を使用した。そして、基材表面に、複数のファイバー担体を平行に配置した。
【0167】
第一のハイドロゲル高分子及び第二のハイドロゲル高分子として、コラーゲン(コラーゲンTypeI−A、新田ゼラチン株式会社製)を使用した。また、第一の細胞として間葉系細胞を使用し、第二の細胞として上皮系細胞を使用した。
【0168】
すなわち、コラーゲンの水溶液中に間葉系細胞を1×10cells/2μLの濃度で分散して、コラーゲンを含む当該間葉系細胞の懸濁液を調製した。同様に、コラーゲンの水溶液中に上皮系細胞を1×10cells/2μLの濃度で分散して、コラーゲンを含む当該上皮系細胞の懸濁液を調製した。
【0169】
そして、まず、空気中、基材表面に配置された各ファイバー担体上に、間葉系細胞の懸濁液を2μLずつ滴下し、各々が、コラーゲン及び分散された間葉系細胞を含み1つのファイバー担体に付着した、複数の第一の液滴を形成した。
【0170】
次いで、空気中、基材表面に配置された各ファイバー担体上の第一の液滴に連結する位置に、上皮系細胞の懸濁液を2μLずつ滴下し、各々が、コラーゲン及び分散された上皮系細胞を含み、1つの第一の液滴と連結し、1つのファイバー担体に付着した複数の第二の液滴を形成した。
【0171】
こうして、各々が、1つのファイバー担体上で1つの第一の液滴と1つの第二の液滴とが連結して形成され、当該1つのファイバー担体に付着した、複数の液滴連結体を得た。
【0172】
さらに、基材表面上で各ファイバー担体に付着した液滴連結体を30分間、37℃でインキュベーションすることにより、当該液滴連結体をゲル化させた。こうして、各々が、1つのファイバー担体と、当該1つのファイバー担体に付着した1つの細胞含有ゲル体とを含む、複数の複合体を得た。
【0173】
その後、基材表面上の複合体を培養液中に浸漬し、ピペッティングで当該培養液を流動させることにより、当該複合体(ファイバー担体及び細胞含有ゲル体)を当該基材表面110から脱離させた。
【0174】
脱離させた複合体を培養液(混合培地(DMEM(Sigma)+KG2+10%ウシ胎児血清+1%ペニシリン))に浮遊させ、当該複合体の細胞含有ゲル体内で間葉系細胞及び上皮系細胞を3日間培養した。
【0175】
[結果]
図4A及び図4Bには、それぞれ培養1日目(Day1)及び培養3日目(Day3)の時点における複合体の位相差顕微鏡写真を示す。図5A及び図5Bには、それぞれ培養1日目(Day1)及び培養3日目(Day3)の時点における複合体の蛍光顕微鏡写真を示す。
【0176】
なお、図5A及び図5Bは、それぞれ図4A及び図4Bに対応している。また、図5A及び図5Bにおいて、間葉系細胞は第一の蛍光試薬(Vybrant(商標) DiI Cell-Labeling Solution、Invitrogen(商標))により染色されて赤色の蛍光として検出され、上皮系細胞は第二の蛍光試薬(Vybrant(商標) DiO Cell-Labeling Solution、Invitrogen(商標))により染色されて緑色の蛍光として検出された。
【0177】
図4A及び図5Aに示すように、培養1日目の複合体は、1つのファイバー担体と、細胞含有ゲル体とを含み、当該細胞含有ゲル体は、分散された間葉系細胞と分散された上皮系細胞とを含んでいた。
【0178】
一方、図4B及び図5Bに示すように、培養3日目の複合体の1つのファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体は、互いに連結した間葉系細胞の凝集塊と上皮系細胞の凝集塊とを含んでいた。
【0179】
また、間葉系細胞の凝集塊及び上皮系細胞の凝集塊は、ファイバー担体の一部の外周を覆っていた。すなわち、複合体において、ファイバー担体は、間葉系細胞の凝集塊及び上皮系細胞の凝集塊を貫通するように延びていた。
【0180】
また、3日間の培養によって、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体は顕著に収縮した。すなわち、培養3日目の細胞含有ゲル体の体積は、培養開始時及び培養1日目の細胞含有ゲル体の体積に比べて顕著に減少した。
【実施例2】
【0181】
[細胞の調製]
上述の実施例1と同様にして、間葉系細胞及び上皮系細胞を調製した。
【0182】
[複合体の製造]
上述の実施例1と同様にして、長さ約5mm〜10mmの医療用縫合糸(直径約50μm、ナイロン製、株式会社夏目製作所製)からなる1つのファイバー担体と、当該1つのファイバー担体に付着した1つの細胞含有ゲル体とを含む複合体を製造した。複合体の細胞含有ゲル体は、間葉系細胞の凝集塊と上皮系細胞の凝集塊とが連結して形成された細胞凝集塊連結体を含んでいた。
【0183】
[複合体の移植]
上述のようにして製造した複合体を、ヌードマウスの皮下に移植した。すなわち、まず、複数の複合体の各々において、細胞凝集塊連結体に含まれる間葉系細胞の凝集塊から延び出るファイバー担体の一方の自由端、及び、当該細胞凝集塊連結体に含まれる上皮系細胞の凝集塊から延び出るファイバー担体の他方の自由端のうち、当該間葉系細胞の凝集塊から延び出る当該一方の自由端を切断した。
【0184】
一方、ヌードマウスにイソフルラン吸引麻酔を施し、その背部をイソジンで消毒した。続いてVランスマイクロメス(日本アルコン株式会社製)を用いて、ヌードマウスの皮膚表皮層から真皮層下部に至る移植創を複数形成した。
【0185】
そして、各複合体の上皮系細胞の凝集塊から延び出るファイバー担体の自由端をピンセットで把持し、複数の移植創の各々に、当該ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体を含む複合体を1つずつ注入した。すなわち、各移植部において、間葉系細胞の凝集塊が皮膚の内側に配置され、上皮系細胞の凝集塊が当該皮膚の外側に配置され、当該上皮系細胞の凝集塊から延び出るファイバー担体の自由端が、当該皮膚の外側まで延び出るよう、複合体を移植した。複合体の移植後、各移植部から延び出るファイバー担体の脱離を防止するため、移植部をサージカルテープで覆った。なお、動物の飼育及び動物実験は横浜国立大学動物実験委員会の指針を遵守して行った。
【0186】
また、比較として、ファイバー担体を用いないこと以外は同一の方法で製造した、間葉系細胞の凝集塊と上皮系細胞の凝集塊とが連結して形成された細胞凝集塊連結体を含む細胞含有ゲル体を同様にヌードマウスの皮下に移植した。
【0187】
[結果]
図6A及び図6Bには、移植後3週間が経過した時点における、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体の移植部位、及び、ファイバー担体に付着していない細胞含有ゲル体のみの移植部位の写真をそれぞれ示す。
【0188】
図6A及び図6Bに示すように、ファイバー担体の有無にかかわらず、細胞含有ゲル体の移植部位に発毛が確認された(図中の矢印)。しかしながら、図6Bに示すように、細胞含有ゲル体のみを移植した場合には、移植部位から生えた毛は皮下に留まり、皮膚を貫通した発毛は確認されなかった。
【0189】
これに対し、図6Aに示すように、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体を移植した場合には、移植部位から皮膚を貫通した複数の毛が生えていた。なお、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体を移植した場合において、ヌードマウスへの複合体の移植後7日目に移植部からサージカルテープを除去したが、その翌日には当該ファイバー担体は、抜け落ちた。
【実施例3】
【0190】
[細胞の調製]
上述の実施例1と同様にして、間葉系細胞及び上皮系細胞を調製した。
【0191】
[複合体の製造]
支持部材に固定された複数のファイバー担体を用意した。まず、図2A及び図3Aに示すような、枠状の支持部材を作製した。すなわち、中央部に正方形状の貫通穴が形成された枠状にPDMSを硬化させて、枠状のPDMS製支持部材を作製した。次いで、この支持部材の中央の貫通穴に正方形状(3cm×3cm)の樹脂製プレートを配置した。このプレートの表面は撥水性であった。
【0192】
その後、支持部材の対向する一対の固定部に4対の切り込みを形成し、各対の切り込みに、長さ約70mmの医療用縫合糸(直径約50μm、ナイロン製、株式会社夏目製作所製)からなる1つのファイバー担体の両端部を差し込み固定した。なお、支持部材の外にはみ出たファイバー担体の自由端は、当該支持部材の裏側に固定した。こうして、各々の両端部が支持部材に固定され、各々の中央部が撥水性表面上に配置された、平行に配置された4つのファイバー担体を用意した。
【0193】
次いで、空気中、撥水性表面に配置された各ファイバー担体の4か所に、間葉系細胞の懸濁液を2μLずつ滴下し、各ファイバー担体について、各々がコラーゲン及び分散された間葉系細胞を含み、互いに離間して1つのファイバー担体に付着した、4つの第一の液滴を形成した。
【0194】
その後、空気中、撥水性表面に配置された各ファイバー担体の各第一の液滴に連結する位置に、上皮系細胞の懸濁液を2μLずつ滴下し、各ファイバー担体について、各々がコラーゲン及び分散された上皮系細胞を含み、1つの第一の液滴と連結し、互いに離間して1つのファイバー担体に付着した4つの第二の液滴を形成した。
【0195】
こうして、各ファイバー担体について、各々が、1つの第一の液滴と1つの第二の液滴とが連結して形成され、互いに離間して1つのファイバー担体に付着した、4つの液滴連結体を得た。
【0196】
さらに、撥水性表面上で、支持部材に固定された各ファイバー担体に付着した液滴連結体を30分間、37℃でインキュベーションすることにより、当該液滴連結体をゲル化させた。
【0197】
こうして、各々が、支持部材に固定された1つのファイバー担体と、互いに離間して当該1つのファイバー担体に付着した4つの細胞含有ゲル体とを含む、4つの複合体を得た。
【0198】
その後、各ファイバー担体及び当該ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体を、撥水性表面から脱離させた。すなわち、撥水性表面上の4つの複合体を培養液中に浸漬し、ピペットチップの先端を用いて各複合体のファイバー担体及び細胞含有ゲル体を当該撥水性表面から脱離させた。
【0199】
次いで、4つの細胞含有ゲルが付着した各ファイバー担体の両端を、支持部材の切り込みに沿って上方にスライドさせることにより、当該各ファイバー担体を、当該支持部材に固定したまま、培養液中に浮いた状態で保持した。こうして、各ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体を、培養液中、浮いた状態に保持した。
【0200】
そして、支持部材に固定された各ファイバー担体に付着し、且つ、培養液(混合培地(DMEM(Sigma)+KG2+10%ウシ胎児血清+1%ペニシリン))中で浮いた状態の細胞含有ゲル体内で、間葉系細胞及び上皮系細胞を3日間培養した。
【0201】
[結果]
図7には、空気中、撥水性の基材表面上で形成した、支持部材に固定されたファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体の写真を示す。図7に示すように、支持部材には4つのファイバー担体が固定され、各ファイバー担体には、4つの細胞含有ゲル体が固定された。
【0202】
図8A及び図8Bには、それぞれ培養1日目(Day1)及び培養3日目(Day3)の時点における複合体の光学顕微鏡写真を示す。図8Aに示すように、培養1日目の各複合体は、1つのファイバー担体と、各々が分散された間葉系細胞と分散された上皮系細胞とを含み、互いに離間して当該1つのファイバー担体に付着した複数の細胞含有ゲル体と、を有していた。
【0203】
一方、図8Bに示すように、培養3日目の各複合体は、1つのファイバー担体と、各々が、互いに連結した間葉系細胞の凝集塊と上皮系細胞の凝集塊とを含み、互いに離間して当該1つのファイバー担体に付着した複数の細胞含有ゲル体と、を有していた。
【0204】
また、3日間の培養によって、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体は顕著に収縮した。すなわち、培養3日目の複合体の細胞含有ゲル体の体積は、培養開始時及び培養1日目の複合体の細胞含有ゲル体の体積に比べて顕著に減少した。
【0205】
図9A及び図9Bには、それぞれ培養開始直後(Day0)及び培養3日目(Day3)の時点における複合体の位相差顕微鏡写真を示す。図10A及び図10Bには、それぞれ培養開始直後(Day0)及び培養3日目(Day3)の時点における複合体の蛍光顕微鏡写真を示す。
【0206】
なお、図10A及び図10Bは、それぞれ図9A及び図9Bに対応している。また、図10A及び図10Bにおいて、間葉系細胞は第一の蛍光試薬(Vybrant(商標) DiI Cell-Labeling Solution、Invitrogen(商標))により染色されて赤色の蛍光として検出され、上皮系細胞は第二の蛍光試薬(Vybrant(商標) DiO Cell-Labeling Solution、Invitrogen(商標))により染色されて緑色の蛍光として検出された。
【0207】
図9A及び図10Aに示すように、培養開始直後の複合体は、1つのファイバー担体と、分散された間葉系細胞と分散された上皮系細胞とを含み、当該1つのファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体と、を有していた。
【0208】
一方、図9B及び図10Bに示すように、培養3日目の複合体は、1つのファイバー担体と、当該1つのファイバー担体に付着し、互いに連結した間葉系細胞の凝集塊と上皮系細胞の凝集塊とを含む細胞含有ゲル体と、を有していた。
【0209】
また、間葉系細胞の凝集塊及び上皮系細胞の凝集塊は、ファイバー担体の一部の外周を覆っていた。すなわち、複合体において、ファイバー担体は、間葉系細胞の凝集塊及び上皮系細胞の凝集塊を貫通するように延びていた。
【0210】
また、3日間の培養によって、ファイバー担体に付着した細胞含有ゲル体は顕著に収縮した。すなわち、培養3日目の細胞含有ゲル体の体積は、培養開始時の細胞含有ゲル体の体積に比べて顕著に減少した。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B