【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開した日: 平成30年12月28日 公開した場所: 宮内庁庁舎 公開者: 株式会社ノンピ
【解決手段】加温機能付き食品容器1は、食品Fが載置されるトレー10と、トレー10に被せられ食品Fを収容する収容部23を有する蓋体20と、蓋体20の表面21aに設けられる断熱材30と、トレー10に被せられるラップ40と、水との接触により発熱する発熱剤50と、を備え、蓋体20は、その周縁部24に、裏返しの状態でトレー10を受けるトレー受け部24aを有する。蓋体20をトレー10に被せる第1の使用状態と、裏返した蓋体20を断熱材30を介して載置面Tに載置し、収容部23に水と発熱剤50とが投入された状態でトレー受け部24aによりトレー10を受け、ラップ40を蓋体20の周縁部24を含めてトレー10に被せてトレー10上の食品Fをラップ40内に封入する第2の使用状態のいずれかの状態で使用可能である。
前記蓋体は、前記断熱材を間に挟んで前記載置面に対向する天板部を有し、該天板部の表面全域に前記断熱材が設けられている請求項1または2に記載の加温機能付き食品容器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
<実施形態>
図1〜
図4は、本実施形態に係る加温機能付き食品容器(以下、食品容器と略称)1を示している。この食品容器1は、食品Fが載置されるトレー10と、蓋体20と、蓋体20の表面21aに設けられたシート状の断熱材30と、トレー10に被せられる可撓性を有するラップ40と、水との接触により発熱する発熱剤50と、を備える。
【0013】
本実施形態の食品容器1は、
図1および
図2に示すように、トレー10の上に蓋体20を被せて使用する状態(後述する第1の使用状態であって発熱剤50は使用しない)と、
図3および
図4に示すように、蓋体20の上にトレー10を被せて使用する状態(後述する第2の使用状態)のいずれかの状態で使用可能とされる。以下、まず構成について説明する。
【0014】
[トレー]
トレー10は、薄い樹脂材料により全体が楕円状に成形されたものである。
図2に示すように、トレー10は、底板部11と、底板部11の周囲全周にわたり形成された傾斜側壁部12と、傾斜側壁部12の周囲全周にわたり形成された鍔部13と、を有する。
【0015】
底板部11は、食品Fが載置される場所であって平坦な楕円状に形成されている。
【0016】
傾斜側壁部12は、底板部11に載置される食品Fをトレー10内に保持する部分である。傾斜側壁部12は、底板部11の外周縁からある程度の傾斜角度(例えば30°〜60°程度)で外側(径方向の外方)に広がりながら立ち上がる状態に形成されている。
【0017】
図5(a)は、トレー10の上に蓋体20を被せた状態、
図5(b)は、
図5(a)に示す蓋体20を裏返してその上にトレー10を被せた状態をそれぞれ示す一部断面図である。
【0018】
図5に示すように、鍔部13は、傾斜側壁部12の外周縁から外側に延在し底板部11と略平行な平板部13aと、平板部13aの外周縁から外側に延在し、外側に向かうにしたがい底板部11側に傾斜する傾斜部13bと、傾斜部13bの外周縁から屈曲して外側にわずかに延在する平板部13aと略平行な端縁部13cと、を有する。
【0019】
トレー10は、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂あるいはポリプロピレン樹脂等の樹脂材料から形成されたフィルムを真空成形するなどの手法で作製される。これら樹脂では、耐熱温度が高いポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
[蓋体]
蓋体20は、薄い透明な樹脂材料により平面視において楕円状に成形されたものである。
図1および
図2に示すように、蓋体20は、天板部21と、天板部21の周囲全周にわたり形成された側壁部22と、収容部23と、側壁部22の周囲全周にわたり形成された周縁部24と、を有する。
【0021】
天板部21は平坦であってトレー10よりもやや小さな寸法の楕円状に形成されている。
【0022】
側壁部22は、天板部21の外周縁から周縁部24に向かってわずかに広がる状態に形成されている。側壁部22は、周方向に直交する方向に延びる溝および凸条が周方向に交互に形成されることにより横断面が波状となっている。このように側壁部22が波状に形成されていることにより、側壁部22を触って蓋体20を持った際の滑り止め効果が得られるようになっている。
【0023】
収容部23は、天板部21と側壁部22とによってその内側に形成される空間である。
【0024】
図6は、天板部21が下側に配され、収容部23が上方に開口する状態の蓋体20の内面側を示す平面図である。
図7は、
図5(b)に示したように裏返した蓋体20の上にトレー10を被せた状態の食品容器1の一部断面であって、周縁部24が有するつまみ部25に対応する部分を示している。
【0025】
図5〜
図7に示すように、周縁部24は、トレー受け部24aと、係合壁部24bと、外縁部24cと、複数の係合凸条部24dと、つまみ部25と、を有する。
【0026】
図5に示すように、トレー受け部24aは、側壁部22の開口縁から外側に延在し、天板部21と略平行な鍔状に形成されている。係合壁部24bは、トレー受け部24aの外周縁から内側(径方向の内方)に向かってわずかに傾斜しながら天板部21から離れる方向に延在する状態に形成されている。外縁部24cは、係合壁部24bの下端縁から外側に向かって屈曲し、天板部21から離れる方向に傾斜しながらわずかに延在する状態に形成されている。
【0027】
図5(a)に示すように、係合凸条部24dは、係合壁部24bの外縁部24c側の端部に、内側にわずかに突出する状態に形成されている。
図6に示すように、係合凸条部24dは、周縁部24の長軸側の両端部の2か所、および短軸側の両端部の2か所の計4か所に、所定の長さをもって形成されている。なお、係合凸条部24dの形成位置や数は本実施形態には限定されず、必要に応じて適宜な箇所および数に設定される。
【0028】
図5(a)に示すように、天板部21が上側に配され収容部23が下方に開口する状態で蓋体20がトレー10に被せられると、4つの係合凸条部24dは、トレー10の端縁部13cの下方に嵌まり込んで着脱可能に係合する。また、
図5(b)に示すように、天板部21が下側に配され収容部23が上方に開口する状態(
図5(a)の状態から裏返した状態)で蓋体20がトレー10に被せられると、係合壁部24bの内面がトレー10の端縁部13cに引っ掛かり着脱可能に係合する。このとき、係合壁部24bの内面がトレー10の端縁部13cに接している。
【0029】
図6に示すように、つまみ部25は、周縁部24の長軸側の一端部近傍に形成されている。
図6および
図7に示すように、つまみ部25は、外縁部24cに連続して設けられ平面視において略三角形状に形成される。つまみ部25は、外縁部24cよりもさらに外側に突出する平板状の枠部25aと、枠部25aの内側に形成され、天板部21側に突出し、その内部に凹部25cを有する半球状の突起部25bと、を含んで構成されている。凹部25cは、収容部23が開口する方向と同じ方向(天板部21とは反対側の方向)に開口している。突起部25bは、枠部25aからトレー受け部24aの一部を切り欠く状態に形成されている。
【0030】
図7に示すように、裏返した蓋体20の上にトレー10を被せた状態では、蓋体20内の収容部23とトレー10の上方空間とが、つまみ部25の凹部25cを介して連通される。
【0031】
蓋体20は、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂あるいはポリプロピレン樹脂等の樹脂材料から形成されたフィルムを成形して作製され、トレー10と同様に耐熱温度が高いポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。また、蓋体20は、トレー10上の食品Fが透視できることが望ましいことから、上記のように透明樹脂が用いられる。
【0032】
[断熱材]
断熱材30は、断熱材料によってある程度の厚さ(例えば、5〜10mm程度)を有するシート状に形成されたものであって、蓋体20に対応して楕円状に形成されている。断熱材30は、蓋体20の天板部21の表面21aに接着等の手段で貼り付けられている。本実施形態の断熱材30は、天板部21と同等の大きさか、あるいは天板部21よりも大きく、天板部21の表面21aの全域をカバーしている。
【0033】
断熱材30を構成する材料としては、断熱性を有し、シート状に成形され、蓋体20の天板部21に貼り付けることができれば特に限定はされないが、例えば、厚紙、段ボール等の紙類や、発砲スチロール等の樹脂系材料が用いられる。
【0034】
断熱材30の裏面は、蓋体20が透明であることから、天板部21を通して透視することができる。そこで
図6に示すように、断熱材30の裏面に、S1で示す発熱剤50の載置箇所や、S2、S3で示す食品容器1の使用方法の絵や説明文等が表示されていると、使い勝手が向上して好ましい。
【0035】
[ラップ]
ラップ40は、トレー10に被せられて使用される。ラップ40は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ビニル等の可撓性樹脂で構成される食品用ラップフィルムが用いられ、この中では塩化ビニル製が耐熱性の面で好適である。
図4に示すように、本実施形態では、トレー10に被せられた状態を保持する輪ゴム41がラップ40に装着されている。
【0036】
[発熱剤]
発熱剤50は、水との接触により反応して発熱するものが用いられる。そのような発熱剤50の材料としては、例えば、生石灰粉末、特に好ましくは生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合粉末等が好適に用いられる。なお、本実施形態の発熱剤50は、不織布等の水浸透性を備えた袋に封入した状態で用いられる。
【0037】
以下、上記構成の食品容器1の使用方法を説明する。
図1および
図2に示すように、トレー10上に食品Fを載置し、ラップ40をトレー10に被せて食品Fを覆い、蓋体20をトレー10に被せてトレー10上の食品Fを蓋体20内に収容する第1の使用状態とする。ラップ40をトレー10に被せる際には、輪ゴム41をトレー10の鍔部13の裏側に配置してラップ40がトレー10の鍔部13の裏側まで覆うようにする。蓋体20をトレー10に被せる際には、蓋体20の4つの係合凸条部24dをトレー10の端縁部13cに係合させる。これにより蓋体20がトレー10から容易に外れることが抑えられる。第1の使用状態では、食品Fを食品容器1ごと持ち運ぶことができる。
【0038】
次に、トレー10上の食品Fを加温する第2の使用状態とする。それには、まず、蓋体20のつまみ部25を指先でつまみ、蓋体20を上方に引き上げてトレー10から取り外す。つまみ部25の凹部25c内に指先を引っ掛けることより、蓋体20を確実につかむことができ取り外しやすい。また、ラップ40の輪ゴム41をトレー10の鍔部13から一旦外して鍔部13の上方に移動させる。
【0039】
次いで、
図4に示すように蓋体20を裏返し、蓋体20を断熱材30を介してテーブル等の載置面Tに載置し、蓋体20の収容部23に発熱剤50を投入するとともに、適量の水Wを発熱剤50にかける。図示例では発熱剤50を2つ使用しているが、発熱剤50の使用数は、発熱剤50の容量や食品容器1の大きさ等に応じて適宜選択される。
【0040】
次いで、
図7に示すように蓋体20上にトレー10をセットし、ラップ40の輪ゴム41を蓋体20の周縁部24の下側に移動させて、ラップ40を蓋体20の周縁部24の下側からトレー10を覆う状態に被せる。トレー10を蓋体20にセットする際には、
図5(b)に示すように、蓋体20の係合壁部24bの内面にトレー10の端縁部13cを係合させる。これによりトレー10が蓋体20から容易に外れることが抑えられる。
図7に示すように、第2の使用状態では、つまみ部25の凹部25cにより、蓋体20内の収容部23とラップ40内とが連通する。
【0041】
第2の使用状態では、発熱剤50が水Wと反応して発熱し、その熱によりトレー10上の食品Fがトレー10の底板部11の下側から加温される。また、
図7の二点破線矢印で示すように、発熱剤50の発熱により発生した水蒸気がつまみ部25の凹部25cを通過してラップ40内に流れ込み、この水蒸気によっても食品Fが加温され、さらに水蒸気によって食品Fが加湿される。食品Fが適度な温度に温められる時間(例えば5〜10分間程度)が経過したら、蓋体20とラップ40をトレー10から取り外すことで、食品Fを食すことができる。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態の食品容器1は、食品Fが載置されるトレー10と、トレー10に被せられ、その内部にトレー10に載置された食品Fを収容する収容部23を有する蓋体20と、蓋体20の表面に設けられたシート状の断熱材30と、トレー10に被せられる可撓性を有するラップ40と、水との接触により発熱する発熱剤50と、を備え、蓋体20は、その周縁部24に、収容部23を上方に向けた裏返しの状態でトレー10を受けるトレー受け部24aを有し、蓋体20をトレー10に被せて食品Fを収容する第1の使用状態と、蓋体20を裏返して蓋体20を断熱材30を介して載置面Tに載置し、収容部23に水と発熱剤50とが投入された状態でトレー受け部24aによりトレー10を受け、ラップ40を蓋体20の少なくとも周縁部24を含めてトレー10に被せてトレー10上の食品Fをラップ40内に封入する第2の使用状態のいずれかの状態で使用可能である。
【0043】
これにより、第1の使用状態では、発熱剤50や水を内部に収容しないため、大型化したり重くなったりすることがなく、その結果、運搬性が損なわれることがない。また、食品Fを収容して持ち運ぶことができる最低限の構成に断熱材30を設けただけなので、簡素な構成となり、コストの上昇が抑えられる。
【0044】
また、本実施形態の蓋体20は、第1の使用状態で蓋体20をトレー10から取り外しやすくするための凹部25cを含むつまみ部25を有し、つまみ部25の凹部25cは、第2の使用状態では蓋体20内の収容部23とラップ40内とを連通させる。
【0045】
これにより、第1の使用状態では、つまみ部25を利用することにより蓋体20をトレー10から取り外しやすい。また、第2の使用状態では、収容部23内で発生した水蒸気によりトレー10上の食品Fを効果的に加温および加湿することができる。
【0046】
また、本実施形態の蓋体20は、断熱材30を間に挟んで載置面Tに対向する天板部21を有し、天板部21の表面21aの全域に断熱材30が設けられている。
【0047】
これにより、蓋体20の天板部21全体が均一に断熱され、偏って過度に加熱される部分が生じず、過熱によって天板部21の一部が変形することが抑えられる。例えば天板部21よりも一回り小さい楕円状の断熱材を天板部21の表面21aに設けた場合、天板部21の断熱材30の周囲が過熱により下方にたわむように変形し、そこに水が溜って発熱剤50に水が十分に供給されず、発熱が不十分になるおそれがある。しかし、本実施形態ではそのような不都合は生じない。
【0048】
また、本実施形態では、第1の使用状態において、ラップ40はトレー10に被せられてトレー10上の食品Fがラップ40内に封入される。
【0049】
これにより、ラップ40を第1の使用状態でも食品Fを覆うことができ、より衛生的に食品Fを持ち運ぶことができる。
【0050】
また、本実施形態において、トレー10、蓋体20および断熱材30を、樹脂系材料で構成することにより、これら3つを、樹脂系材料からなるゴミのみを廃棄すべき廃棄箇所にまとめて廃棄することができ、使用後の廃棄処理が便利となる。
【0051】
<変形例>
図8および
図9は、トレー10の変形例を示している。
図8に示すトレー10は、食品Fが載置される底板部11の表面11aに凹凸部14が形成されている。凹凸部14の形態は限定されず、例えば、複数の凸条と溝とが交互に形成された波状の形態や、複数の凹部と凸部とが点在する形態などが挙げられる。
【0052】
凹凸部14が形成されることにより、トレー10の底板部11の表面積が増大して加温効果が向上する。また、食品Fが油分を含む場合、その油分が凹部内に落ちて油切りの効果を得ることができる。
【0053】
図9は、トレー10の底板部11の表面11aに形成される凹凸部14が、渦巻き状の溝15aと、溝15aの間の渦巻き状の凸部15bとを含む例を示している。
【0054】
この変形例では、上述したように第2の使用状態で食品Fが加温される際、食品Fが封入されているラップ40内に流入した水蒸気が溝15aを一方向に流動することにより、渦巻き状の流れを生じさせることが可能となる。このように流れが生じると、ラップ40内の加温された空気は撹拌されて温度や湿度が均一化し、その結果、食品Fを均一に加温・加湿することができる。