【解決手段】被覆基材の製造方法は、基材の表面に非晶質シリカ及びアルカリ金属珪酸塩を含む水溶液を塗布する工程と、塗布された水溶液を乾燥させてアルカリ金属珪酸塩層を形成する工程、を備える。水溶液の6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
前記アルカリ金属珪酸塩に含まれる前記珪酸ナトリウムの質量に対する、前記アルカリ金属珪酸塩に含まれる前記珪酸リチウムの質量の質量比が0.01〜1.5である、請求項5に記載の方法。
前記水溶液に含まれる前記非晶質シリカの含有量が、前記アルカリ金属珪酸塩の全量に対して、3.0〜160質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(被覆基材の製造方法)
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図1を参照して説明する。
【0019】
(基材の準備)
まず、
図1の(a)に示すように、基材本体10を用意する。基材本体10は、可燃性基材であってよく、不燃性基材であってよい。
【0020】
可燃性基材の例は、木材製材品、製材品、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、CLT(Cross Laminated Timber)、構造用パネル(配向性ストランドボード(OSB))、パーティクルボード、ファイバーボード等の木質材料である。
【0021】
可燃性基材の他の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、アクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、天然ゴム、クロロプレンゴム、EPDM、ふっ素樹脂、ポリエステル、メラミン、ポリアミド等の樹脂材料であり、これらはバルク、発泡体、その他の形態とすることができる。
【0022】
不燃性基材の例は、コンクリート、モルタル、セメント、しっくい、石、金属、ガラス、及びセラミック等である。
【0023】
基材本体10の厚みに特に制限は無い。たとえば、3μm〜3.5mとすることができる。
【0024】
続いて、
図1の(b)に示すように、基材本体10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成し、基材25を得る。
【0025】
プライマー層20は、基材本体10とアルカリ金属珪酸塩層30との密着性を向上させる層であるが、必須では無い。プライマー層20は、例えば、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの接着性樹脂であることができる。プライマー層として、シリカ、アルミナ等の無機系材料を使用することも可能である。このようなプライマー層は、プライマー層の原料を基材本体10の表面に塗布することにより形成できる。
【0026】
プライマー層20の厚みに限定は無いが、透明性を高める観点から150μm以下(塗布量500g/m
2以下相当)、より好ましくは90μm以下(塗布量300g/m
2以下相当)とすることが好適であり、密着性向上効果、目止め効果を得る観点から15μm以上(塗布量50g/m
2以上相当)とすることが好適であり、30μm以上(塗布量100g/m
2以上相当)とすることがより好適である。
【0027】
本実施形態では、基材25(基材本体10)の表面が、水平面に対して90°傾斜している。
【0028】
続いて、
図1の(c)に示すように、基材25の表面に、非晶質シリカ及びアルカリ金属珪酸塩を含む水溶液(以下、「水溶液」ともいう)を塗布し、水溶液層30aを形成する。塗布する水溶液の6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
6は、1500mPa・s以上である。
【0029】
ここで水溶液について詳しく説明する。
<アルカリ金属珪酸塩>
アルカリ金属珪酸塩は、M
2O・nSiO
2で表される。ここで、Mは、Na、K、Li、又は、これらのうちの任意の組合せである。nは、M
2Oのモル数に対するSiO
2のモル数を示すモル比であり、Naの場合には2.0〜3.8、Liの場合には、3.5〜7.5、Kの場合には1.8(1号珪酸カリ)〜3.7(2号珪酸カリ)とすることができる。また、nは、Naの場合には好ましくは2.0〜3.3であることができる。
【0030】
なかでも、アルカリ金属珪酸塩は、MがNaであるもの、すなわち、珪酸ナトリウムを含むことが好適である。
【0031】
珪酸ナトリウムとしては、珪酸ナトリウム水溶液である、JIS K1408に規定された、水ガラス1号〜3号を好適に利用できる。また、水ガラス1号から3号ではnは2.0〜3.3であるが、nが2.0〜3.8の水ガラスも好適に利用できる。
【0032】
水溶液に含まれる全アルカリ金属珪酸塩の含有量は、防火性能の付与の観点から、水溶液の全量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜70質量%であることが更に好ましい。
【0033】
全アルカリ金属珪酸塩に占める珪酸ナトリウムの質量割合は、成膜性の向上及び防火性能の付与の観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
【0034】
アルカリ金属珪酸塩は、耐水性を向上させる観点から、珪酸ナトリウムに加えて、珪酸リチウムを含むことが好ましい。
【0035】
アルカリ金属珪酸塩が珪酸リチウムを含む場合、珪酸ナトリウムの質量に対する、珪酸リチウムの質量の質量比は、光沢を高め耐水性を向上させる観点から、0.01〜1.5であることが好ましく、0.2〜1.4であることがより好ましく、0.3〜1.2であることが更に好ましい。
【0036】
<非晶質シリカ>
非晶質シリカは、溶融石英ガラスであってもよく、合成シリカガラスであってもよい。溶融石英ガラスは、電気溶融により製造されたものでも、火炎溶融により製造されたものでもよい。合成シリカガラスは、乾式シリカでもよく、湿式シリカでもよい。
【0037】
非晶質シリカの粒径は、透明性を高める観点から、1〜15μmであることが好ましい。非晶質シリカの粒径は、レーザ回折式粒度分布測定における体積基準の粒度分布のD50を指す。
【0038】
非晶質シリカの比表面積は、粘性を付与する観点から、6〜500m
2/gであってよい。
【0039】
非晶質シリカの5質量%水溶液のpHは、4〜7であってよい。
【0040】
非晶質シリカの吸油量(ISO 787−5)は、100〜500g/100gであってよい。
【0041】
水溶液に含まれる非晶質シリカの含有量は、水溶液のB型粘度μ
6が上記の要件を満たすように調節すればよい。非晶質シリカの量を増やすと水溶液のB型粘度μ
6が高くなり、非晶質シリカの量を減らすと水溶液のB型粘度μ
6が低くなる。非晶質シリカの種類によって、好適な非晶質シリカの添加量は異なるが、水溶液に含まれる非晶質シリカの含有量は、例えば、アルカリ金属珪酸塩の全量に対して、3.0〜160質量%であってよく、6.8〜90質量%であってよい。
【0042】
上述のように、水溶液の6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
6は、1500mPa・s以上であるが、垂直面等の傾斜面に塗布した場合の液だれを一層抑制する観点から、3000mPa・s以上であることが好ましく、4500mPa・s以上であることがより好ましい。水溶液の6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
6は、100000mPa・s以下であってよい。
【0043】
B型粘度は、B型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用いて測定される。測定は、JIS K7117‐1を参照して行うことができる。
【0044】
水溶液を塗布する際の水溶液の伸びをよくすべく、水溶液の60rpm、20℃の条件でのB型粘度をμ
60としたときに、μ
6/μ
60は、3以上であることが好ましく、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。μ
6/μ
60は、20以下であってよい。
【0045】
水溶液の60rpm、20℃の条件でのB型粘度をμ
60は、水溶液の水の割合等により調整できる。
【0046】
水溶液の塗布量は、適宜調整できる。例えば、100g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下とすることができる。
【0047】
続いて、
図1の(d)に示すように、乾燥前の水溶液層30a上に、織布35などのシート状の繊維を貼りつける。水溶液は高い粘度を有するので、貼りつけるだけでシート状の繊維の基材25の表面上への仮固定が可能である。
【0048】
<シート状の繊維>
シート状の繊維の例は、織布(平織りなど)、及び、不織布である。
図1では、シート状の繊維の1例として、織布35を図示している。織布35は、縦糸及び横糸を有する。
【0049】
繊維の材料の例は、ガラス繊維;炭素繊維;アルミナ繊維、シリカ繊維などのセラミック繊維;アラミド繊維、ポリプロピレン繊維等の樹脂繊維;炭素鋼繊維、ステンレス繊維、めっき鋼繊維等の金属繊維等が挙げられる。
【0050】
特に、ガラス繊維の織布(ガラスクロス)及び不織布(ガラスマットなど)は、本実施形態において特に好適なシート状の繊維である。
【0051】
シート状の繊維の厚みは、0.003〜2mmとすることができる。
【0052】
シート状の繊維がガラス繊維の織布又は不織布の場合、シート状の繊維の単位面積あたりの重量は、1〜1000g/m
2とすることができる。
【0053】
続いて、
図1の(e)に示すように、繊維のシート(たとえば織布35)の上に、さらに、上述の水溶液を塗布して水溶液層30aの厚みを大きくする。二回目に塗布する水溶液の塗布量も適宜調節でき、好適な範囲は1回目と同様である。必要に応じて、水溶液層30aに対する別のシート状の繊維(たとえば織布35)の貼り付け、及び、さらなる水溶液の塗布をさらに繰り返してもよい。
【0054】
水溶液層30aの合計の塗布量はたとえば、100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、2000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。
【0055】
複数回の塗布により形成される水溶液層30aの合計厚みはたとえば30〜900μmとすることができる。
【0056】
次に、水溶液層30aを乾燥させて固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得る。乾燥は、自然乾燥、熱風乾燥等により行うことができる。
【0057】
シート状の繊維は完全にアルカリ金属珪酸塩層30内に埋め込まれていることが好適であるが、一部がアルカリ金属珪酸塩層30から突出していることもできる。
【0058】
(アルカリ金属珪酸塩層)
得られるアルカリ金属珪酸塩層30は、シート状の繊維、アルカリ金属珪酸塩、及び、非晶質シリカを含む。
【0059】
アルカリ金属珪酸塩層30の厚みは、防火性能付与の観点から、30μm以上、好ましくは90μm以上、より好ましくは150μm以上とすることができる。厚みは、透明性及び施工性の観点から900μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは450μm以下とすることができる。
【0060】
アルカリ金属珪酸塩層30の単位面積あたりのアルカリ金属珪酸塩の重量は、防火性能付与の観点から、乾燥重量50g/m
2以上(水溶液塗布量100g/m
2以上に相当)、好ましくは乾燥重量150g/m
2以上(水溶液塗布量300g/m
2以上に相当)、より好ましくは乾燥重量250g/m
2以上(水溶液塗布量500g/m
2以上に相当)とすることができる。重量は、透明性及び施工性の観点から乾燥重量1500g/m
2以下(水溶液塗布量3000g/m
2以下に相当)、好ましくは乾燥重量1000g/m
2以下(水溶液塗布量2000g/m
2以下に相当)、より好ましくは乾燥重量750g/m
2以下(水溶液塗布量1500g/m
2以下に相当)とすることができる。
【0061】
次に、アルカリ金属珪酸塩層30の上に、公知の方法で
図1の(f)に示すように、トップ層40を形成する。
【0062】
(トップ層)
トップ層は、アルカリ金属珪酸塩層30を水等から保護するための層である。トップ層40の材料の例は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂等(水系、溶剤系を問わない)である。トップ層40は、トップ層の成膜材料を塗液として塗布するか、予め成膜したフィルムとして粘着剤等を介して貼り合わせることで積層できる。これにより、被覆基材100が完成する。なお、本実施形態は、トップ層40を形成しなくても実施できる。
【0063】
本実施形態に係る製造方法によれば、6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
6が1500mPa・s以上である水溶液を基材25上に塗布するため、基材25が水平方向に対して垂直に立てられているなど、基材の表面が傾斜する場合であっても、水溶液の液だれを抑制することができる。そのため、塗布/乾燥を何回も繰り返さずに、厚いアルカリ珪酸金属塩層を形成することができる。また、アルカリ金属珪酸塩層の厚みの均一性を高くすることができる。
【0064】
更に、形成されたアルカリ金属珪酸塩層は、透明性に優れるため、木質材料などの基材本体の表面の模様(木目など)を外部から視認できて好ましい。
【0065】
さらに、μ
6/μ
60が3以上である場合には、液だれを防ぎつつ、水溶液を塗布する際の水溶液の伸びが確保され、塗装作業性が向上する。水溶液の伸びが確保されることにより、得られる被覆基材は、表面の平滑性が優れたものとなる。
【0066】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図2を参照して説明する。
【0067】
まず、
図2の(a)及び
図2の(b)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、基材本体10を用意し、基材本体10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成し、基材25を得る。
【0068】
続いて、
図2の(c)に示すように、基材25の表面上に、シート状の繊維(たとえば織布35)を仮固定する。仮固定の方法は特に限定されず、たとえば、ステープル、ピン、ビス留め等による機械式固定、接着剤による固定等とすることができる。
【0069】
続いて、
図2の(d)に示すように、基材25上のシート状の繊維(たとえば織布35)に、上述の水溶液を塗布して、シート状の繊維(たとえば織布35)を埋設した上述の水溶液層30aを形成する。水溶液の塗布量及び厚みは第1実施形態と同様とすることができる。
【0070】
その後、水溶液層30aを乾燥させてシート状の繊維(たとえば織布35)を埋設した固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得る。アルカリ金属珪酸塩層30の厚みは第1実施形態と同様とすることができる。その後、第1実施形態と同様にして、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成することができる。
【0071】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図3を参照して説明する。
【0072】
まず、
図3の(a)及び
図3の(b)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、基材本体10を用意し、基材本体10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成し、基材25を得る。
【0073】
続いて、
図3の(c)に示すように、基材25上に、水溶液を塗布して水溶液層30aを形成する。水溶液の塗布量は、第2実施形態と同様とすることができる。本実施形態においては、シート状繊維を基材25上に配置しない。そのかわり、水溶液に対して、あらかじめ、繊維を分散させておく。
【0074】
(分散された繊維)
繊維の材料の例は、第1実施形態と同様である。好適な繊維の径は0.003〜1mmであり、好適な繊維の長さは0.1〜100mmである。水溶液における繊維の量は、水溶液の全量に対して、0.1〜20重量%であることができる。繊維としては、長繊維であってもよく、短繊維であってもよいが、水溶液の混練性を向上させる観点から、短繊維であることが好ましい。短繊維とは50mm以下の繊維である。短繊維の長さは、15mm以下が好ましく、10mm以下とすることもできる。
【0075】
その後、
図3の(d)に示すように、水溶液層30aを乾燥させてアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、公知の方法で
図3の(e)に示すように、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0076】
上述した各製造方法により得られる被覆基材100は、防火性能を有することができ、たとえば、柱、梁、床、壁、屋根材等の建築物の構造体、天井材、内壁材、外装材、階段、建具等の建築物の仕上げ材料、その他、自動車、鉄道、船舶等の内装材料、家具の材料として利用できる。
【0077】
なお、本実施形態において、水溶液に対して、一般的な難燃剤、例えばリン系、フォスファゼン系、窒素系、臭素系、無機系(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等)の各種難燃剤を添加する事を否定しない。
【0078】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様をとることが出来る。
例えば、上記製造方法では、基材25(基材本体10)の表面が、水平面に対して90°傾斜しているが、水平面に対して斜めに傾斜していてもよいし、水平面と平行であってもよい。基材25の表面が水平面に対して10〜90°傾斜していることが好適であり、25〜90°傾斜していることがより好適である。
【0079】
また、上述した製造方法では、プライマー層20を含む基材25を用いたが、プライマー層20は必須ではない。アルカリ金属珪酸塩層30は、基材25の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。上述した製造方法では、トップ層40を設けたが、トップ層40は必須ではない。
【0080】
また、第3実施形態において、上述の水溶液が、分散された繊維を含んでいなくても実施は可能である。
【実施例】
【0081】
[水溶液の調整]
(実施例1〜11及び比較例1)
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号:n=3.1〜3.3、珪酸ナトリウム濃度:38.5〜40.0質量%)及び珪酸リチウム水溶液(商品名:リチウムシリケート45、SiO
2/Li
2Oモル比4.5、珪酸ナトリウム濃度:22質量%)を、珪酸ナトリウム水溶液と珪酸リチウム水溶液の質量比が珪酸ナトリウム水溶液:珪酸リチウム水溶液=2:1となるように混合し、混合液を得た。
さらに、混合液100質量部に対して、非晶質シリカ(商品名:ACMATT TS−100、デグサAG製、乾式シリカ、比表面積250m
2/g、平均粒径9.5μm、5%水分散液のpH6.5、吸油量380g/100g)を、表1に記載の量で添加し、600〜800rpmの攪拌速度で30分間攪拌し、水溶液を調製した。水溶液における非晶質シリカの濃度を表1に示す。また、水溶液に含まれる珪酸ナトリウムの含有量は25.6質量%、珪酸リチウムの含有量は7.3質量%であった。珪酸ナトリウムの質量に対する、珪酸リチウムの質量の質量比は、0.3であった。アルカリ金属珪酸塩の全量に対する、非晶質シリカの含有量(質量%)を表1に示す。
【0082】
(実施例12及び13並びに比較例3〜5)
非晶質シリカ(商品名:ACMATT TS−100、デグサAG製)に代えて、非晶質シリカ(商品名:F−205、フミテック株式会社製、溶融シリカ、粒径5.5μm、比表面積6m
2/g、5%水分散液のpH4.0〜6.0)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水溶液を調整した。非晶質シリカの添加量、水溶液における非晶質シリカ濃度、アルカリ金属珪酸塩の全量に対する、非晶質シリカの含有量(質量%)を表1に示す。
【0083】
[粘度の測定]
B型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:BM型)を用いて、水溶液の6rpm、20℃の条件でのB型粘度μ
6と、水溶液の60rpm、20℃の条件でのB型粘度をμ
60とを測定した。結果を表1に示した。
【0084】
[被覆基材の製造]
(実施例1〜13及び比較例2〜5)
基材本体としてスギ材を用意した。スギ材の水平な表面に、バーサチック酸−ビニルエステル系樹脂を含有する塗料を塗布してプライマー層を形成し、スギ材の表面にプライマー層が形成された基材を得た。得られた基材におけるプライマー層が形成された表面に、シート状のガラス繊維(セントラルグラスファイバー サーフェイスマット FC−30S)を置き、その上からアルカリ金属珪酸塩水溶液を1000g/m
2塗布し、その後、水溶液層が形成された基材を、該水溶液層が形成された面が水平方向に対して垂直になるように立て、水溶液層を乾燥させた。乾燥は、温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間行った。アルカリ金属珪酸塩水溶液層を乾燥させることで、アルカリ金属珪酸塩層(アルカリ金属珪酸塩の単位面積あたりの乾燥重量600g/m
2)を形成し、被覆基材を得た。
【0085】
(比較例1)
アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量を700g/m
2としたこと以外は、実施例1と同様にして被覆基材を得た。
【0086】
[評価:液だれ]
被覆基材の製造において、水溶液を乾燥させる際に、該水溶液層が形成された基材表面における水溶液の液だれの有無を確認した。液だれの有無は、下記の基準に従い評価した。結果を表1に示した。
○:乾燥するまで30分経過しても液だれが発生しなかった
△:垂直に立てた直後には液だれが発生しないが、30分経過後には、垂直に立てられた基材の底部に水溶液がたまる様子が確認された
×:垂直に立てた直後にしずくとなって液だれが発生した
【0087】
[評価:平滑性(伸び)]
得られた被覆基材に対して、目視にて被覆基材におけるアルカリ金属珪酸塩層が設けられた表面の平滑性を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示した。被覆基材の表面が平滑性に優れることは、水溶液の伸びが良好であることを意味する。
○:被覆基材の表面に凹凸が観察されない
○−:被覆基材の表面に僅かに凹凸が観察される
△:被覆基材の表面に若干の凹凸が観察される
×:アルカリ金属珪酸塩水溶液の粘度が高すぎるため、アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布ができなかった
【0088】
[評価:透明性]
得られた被覆基材に対して、目視にてアルカリ金属珪酸塩層の透明性の評価を行った。結果を表1に示す。○はスギ材表面の木目がはっきり視認できたことを意味する。
【0089】
【表1】