(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-74710(P2021-74710A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】エアフィルター及び使用方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20210423BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D46/52 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-160865(P2020-160865)
(22)【出願日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】16/661,129
(32)【優先日】2019年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ケント, ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ポール ディー.
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA02
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC13
4D019BD01
4D019BD03
4D019CA02
4D019CB01
4D019CB02
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA14
4D058JB14
4D058JB36
4D058JB46
4D058KA01
4D058KA11
4D058KC32
4D058QA01
4D058QA11
4D058SA07
(57)【要約】
【課題】ヘリコプターで使用するための新規なエアフィルター及びエアフィルター装置、並びに使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1のメディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと、を備えるエアフィルターが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、前記第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、前記複数の開口が前記第1の表面及び前記第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、
(b)複数の第2の多孔質メディアであって、前記複数の第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記第1の表面又は前記第2の表面に取り付けられ、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記複数の開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと
を備えるエアフィルター。
【請求項2】
前記複数の開口は前記第1の多孔質メディアに所定のパターンで配置されている、請求項1に記載のエアフィルター。
【請求項3】
当該エアフィルターは総表面積を有し、前記複数の開口は、前記総表面積の約0.1%〜約15%の範囲の総穴径面積を有する、請求項1又は2に記載のエアフィルター。
【請求項4】
当該エアフィルターは、複数のプリーツを有するプリーツ型フィルターを備え、前記複数のプリーツのそれぞれは基部及び頂部を有し、前記第1の多孔質メディアにはプリーツが付けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアフィルター。
【請求項5】
前記複数の開口は、前記複数のプリーツの前記頂部よりも前記複数のプリーツの前記基部の近くに配置されている、請求項4に記載のエアフィルター。
【請求項6】
約40mm〜約175mmの範囲の距離だけ離間されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアフィルター。
【請求項7】
前記疎水性多孔質繊維メディア及び/又は前記親水性多孔質繊維メディアはポリエステルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアフィルター。
【請求項8】
前記複数の第2の多孔質メディアは前記第1の多孔質メディアの前記第1の表面に固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエアフィルター。
【請求項9】
前記複数の第2の多孔質メディアは前記第1の多孔質メディアの前記第2の表面に固定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエアフィルター。
【請求項10】
エアフィルターと、ハウジングとを備えるエアフィルター装置であって、
前記エアフィルターが
(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、前記第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、前記複数の開口が前記第1の表面及び前記第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、
(b)複数の第2の多孔質メディアであって、前記複数の第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記第1の表面又は前記第2の表面に取り付けられ、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと
を備え、
前記ハウジング内には前記エアフィルターが配置されている、
エアフィルター装置。
【請求項11】
前記第1の多孔質メディアにプリーツが付けられている、請求項10に記載のエアフィルター装置。
【請求項12】
前記エアフィルターは上側支持フレームと下側支持フレームとの間に配置されており、前記上側支持フレーム及び前記下側支持フレームは前記ハウジングに取り付けられている、請求項10又は11に記載のエアフィルター装置。
【請求項13】
ヘリコプターのエンジンに入る空気を濾過する方法であって、
(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなり第1の多孔質メディアであって、前記第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、前記複数の開口が前記第1の表面及び前記第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、
(b)複数の第2の多孔質メディアであって、前記複数の第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記第1の表面又は前記第2の表面に取り付けられ、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと
を備えるエアフィルターに、空気を通過させるステップを含む、方法。
【請求項14】
前記空気は水を含み、前記第1の多孔質メディアは、前記複数の第2の多孔質メディアが水と接触している間、空気の通過を許容することを維持する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記空気は微粒子物質を含み、前記エアフィルターは前記エアフィルターを通じた前記微粒子物質の通過を低減する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
エアフィルターを形成する方法であって、
(a)第1の多孔質メディアに開口を設けるステップと、
(b)複数の第2の多孔質メディアを取り付けるステップであって、前記複数の第2の多孔質メディアのそれぞれが親水性多孔質繊維メディアからなり、前記複数の第2の多孔質メディアが前記第1の多孔質メディアの前記開口を覆っている、ステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]エアフィルターは、汚れや埃、塩、砂、ブラウンアウト(例えば、パイロットの視野を遮る可能性がある、埃の多い環境で着陸するときにローターのアウトウォッシュで掃き上げられる砂及び/又は埃の粒子)などの望ましくない材料の悪影響からヘリコプターのエンジンを保護するために使用される。
【0002】
[0002]しかしながら、ヘリコプター用のさらに改良されたエアフィルターが必要とされている。
【0003】
[0003]本発明のこの利点及び他の利点は、以下に記載される説明から明らかになろう。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態は、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1のメディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと、を備えるエアフィルターを提供する。
【0005】
[0005]他の実施形態において、ヘリコプターのエンジンに入る空気を濾過する方法は、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと、を備えるエアフィルターに、空気を通過させるステップを含む。
【0006】
[0006]更に他の実施形態において、エアフィルターを形成する方法は、疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアに開口を設けるステップと、第1の多孔質メディアの表面に複数の第2の多孔質メディアを取り付けるステップであって、第2の多孔質メディアのそれぞれが親水性多孔質繊維メディアからなる、第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆う、ステップとを含む。
【0007】
[0007]また、本発明の実施形態は、ハウジング内に配置されるエアフィルターの一実施形態を備えるエアフィルター装置も含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】疎水性メディアが実質的に乾燥したままで空気の流通を可能にしつつ水が親水性メディアを通じて流出する、本発明の一実施形態に係るエアフィルターの概略断面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係るプリーツ型エアフィルターの単一フィルタープリーツの断面図であり、疎水性メディアに溶着された親水性メディアを示す。親水性メディアはフィルタープリーツの基部付近に配置され、親水性メディアは疎水性メディアの一方側(例えば上流側)に配置されている。
【
図2B】本発明の実施形態に係るプリーツ型エアフィルターの単一フィルタープリーツの断面図であり、親水性メディアを通じて水が流出する一方で疎水性メディアが空気の流通を可能にする、
図2Aに示されるフィルタープリーツを示す。親水性メディアはフィルタープリーツの基部付近に配置されている。
【
図2C】本発明の実施形態に係るプリーツ型エアフィルターの単一フィルタープリーツの断面図であり、疎水性メディアに接着結合される親水性メディアを示す。親水性メディアはフィルタープリーツの基部付近に配置され、親水性メディアは疎水性メディアの他方側(例えば下流側)に配置されている。
【
図2D】本発明の実施形態に係るプリーツ型エアフィルターの単一フィルタープリーツの断面図であり、親水性メディアを通じて水が流出する一方で疎水性メディアが空気の流通を可能にする、
図2Cに示されるフィルタープリーツを示す。親水性メディアはフィルタープリーツの基部付近に配置されている。
【
図3A】親水性フィルター、疎水性フィルター、及び、本発明の一実施形態に係るフィルターを使用する雨試験からの比較結果を示すグラフであり、静的雨試験(Static Rain Test)からの結果を示す。
【
図3B】親水性フィルター、疎水性フィルター、及び、本発明の一実施形態に係るフィルターを使用する雨試験からの比較結果を示すグラフであり、動的雨試験(Dynamic Rain Test)からの結果を示す。
【
図4】開口を有する疎水性メディア及び一部の開口を覆う親水性メディアを示している、広げられたプリーツ型フィルターを示す。
【
図5A】親水性メディアが疎水性メディアのプリーツの基部付近に配置される、プリーツ型フィルターの表面を示す。
【
図5B】親水性メディアが疎水性メディアの下流側表面上に配置される、プリーツ型フィルターの上流側及び下流側の表面を示すとともに、フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるプリーツ型フィルターも示す。
【
図6A】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す、上方からの斜視図である。
【
図6B】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す正面図である。
【
図6C】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す左(上面)図である。
【
図6D】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す右(下面)図である。
【
図6E】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す、
図6CのA−Aに沿う部分断面図である。
【
図6F】フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置されるフィルターパックの一実施形態を示す、
図6Eに示される実施形態のB−Bに沿う断面図である。
【
図7】ヘリコプターにおける本発明の一実施形態に係るフィルター装置の例示的な取付状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0015]本発明の一実施形態によれば、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと、を備えるエアフィルターが提供される。
【0010】
[0016]他の実施形態において、エアフィルターは、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1の多孔質メディアから複数の開口が切り出され、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆っている、複数の第2の多孔質メディアと、を備える。好ましい実施形態において、開口は、直径が約2mm〜約25mmの範囲にある。
【0011】
[0017]エアフィルターの幾つかの実施形態では、複数の開口が第1の多孔質メディアに所定のパターンで配置される。
【0012】
[0018]また、本発明の実施形態は、エアフィルター装置、並びに、エアフィルター及びエアフィルター装置を使用して空気を濾過する方法も含む。
【0013】
[0019]一実施形態のエアフィルター装置は、エアフィルターと、ハウジングとを備えるものであり、エアフィルターは、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通する、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆う、複数の第2の多孔質メディアと、を備え、ハウジング内にはエアフィルターが配置される。
【0014】
[0020]エアフィルター装置の好ましい実施形態では、第1の多孔質メディアがプリーツ付きである。幾つかの実施形態において、プリーツ付きであり得るエアフィルターは、上側支持フレームと下側支持フレームとの間に配置され、上側支持フレーム及び下側支持フレームはハウジングに取り付けられる。
【0015】
[0021]一実施形態において、ヘリコプターのエンジンに入る空気を濾過する方法は、(a)第1の表面及び第2の表面を有する疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアであって、第1の多孔質メディアには約2mm〜約35mmの範囲の直径を有する複数の開口があり、これらの開口が第1及び第2の表面を貫通している、第1の多孔質メディアと、(b)複数の第2の多孔質メディアであって、これらの第2の多孔質メディアのそれぞれが第1の表面及び第2の表面を有する親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの第1又は第2の表面に取り付けられ、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆う、複数の第2の多孔質メディアと、を備えるエアフィルターに、空気を通過させるステップを含む。
【0016】
[0022]この方法の好ましい実施形態では、空気は水を含み、第1の多孔質メディアは、第2の多孔質メディアが水と接触している間、空気の通過を許容することを維持する。
【0017】
[0023]この方法の幾つかの実施形態では、空気は微粒子物質を含み、エアフィルターはこのエアフィルターを通じた微粒子物質の通過を低減する。
【0018】
[0024]更に他の実施形態において、エアフィルターを形成する方法は、疎水性多孔質繊維メディアからなる第1の多孔質メディアに開口を設けるステップと、第1の多孔質メディアの表面に複数の第2の多孔質メディアを取り付けるステップであって、複数の第2の多孔質メディアのそれぞれが親水性多孔質繊維メディアからなり、これらの第2の多孔質メディアが第1の多孔質メディアの開口を覆う、ステップとを含む。
【0019】
[0025]好ましくは、この方法は、メディアに開口を設ける前に第1の多孔質メディアにプリーツを付けるステップを含む。
【0020】
[0026]一実施形態では、第1の多孔質メディアが疎水性表面処理を有する。第1の多孔質メディアが疎水性を与えるように処理されるこれらの実施形態では、処理がメディアに開口を設ける前であることが好ましい。
【0021】
[0027]好適には、水の存在下(例えば、突然の量の雨水、雪(特に湿った雪)、及び/又は、氷)でフィルター圧力損失が低減された効果的な濾過がもたらされる。これは、フィルター又はフィルターの一部が水平に取り付けられるときに特に有利である。
【0022】
[0028]以下、本発明の構成要素のそれぞれについて更に詳しく説明する。この場合、同様の構成要素は同様の参照数字を付する。
【0023】
[0029]
図1は、第1の多孔質メディア1(疎水性メディア)が本質的に乾燥したままで空気の流通を可能にしつつ水が複数の第2の多孔質メディア2(親水性メディア)を通じて流出する、本発明の一実施形態に係るエアフィルター100の概略断面図を示す。この概略図において、複数の親水性メディアはそれぞれ、第1の表面2A及び第2の表面2Bを有するとともに、第1の表面1A及び第2の表面1Bを有する疎水性メディアの開口10を覆う。親水性メディアは、当該技術分野において知られているように、例えば、溶着及び/又は接着によって疎水性メディアに固定され得、また、親水性メディアは、疎水性メディアのいずれかの表面に固定され得る。
【0024】
[0030]例えば、
図2A〜
図2Dに示されるエアフィルター100の実施形態では、エアフィルターがプリーツ型フィルター1000であり、プリーツ10が示されている。
図2A及び
図2Bは、疎水性メディアの第2の表面(例えば下流側表面)上に配置される(例えば、溶着によって固定される)親水性メディアを示し、また、
図2C及び
図2Dは、疎水性メディアの第1の表面(例えば上流側表面)上に配置される(例えば、接着結合によって固定される)親水性メディアを示す。
【0025】
[0031]エアフィルターは、任意の適した細孔構造、例えば、孔サイズ(例えば、泡立ち点により、又は、例えば米国特許第4,340,479号に記載されるようなK
Lにより明らかなように、或いは、毛細管凝縮流ポロメトリにより明らかなような孔サイズ)、細孔の割合、孔径(例えば、米国特許第4,925,572号に記載されるような修正OSUF2テストを使用して特性化される場合)、又は、流体が要素に通される際に1つ以上の対象材料のエアフィルター通過を減らす又は許容する除去率を有することができる。使用される細孔構造は、処理されるべき流体の組成、及び、処理された流体の所望の流出レベルに依存する。
【0026】
[0032]一般に、エアフィルターの細孔構造は、微粒子物質、例えば、以下、すなわち、汚れ、埃、塩、及び/又は、砂のうちのいずれか1つ以上などの望ましくない材料を除去する。
【0027】
[0033]本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の多孔質メディアは、約30μm〜約40μmの範囲の平均孔サイズを有する。一般に、エアフィルターにおける両メディアは、同じ平均孔サイズを有する。
【0028】
[0034]開口は、任意の所望のパターンで疎水性メディアに配置され得る。一般に、例えば
図2A、
図2C、
図5A、
図5B及び
図6Eに示されるように、エアフィルターの最終形態構成がプリーツ型フィルター1000であるこれらの実施形態において、開口は、プリーツの頂部12よりもプリーツ10の基部11に近い方に配置されるが、例えば、プリーツの折曲げ部内/折曲げ部上にあるのではなくプリーツの基部付近にある(
図4参照)。
【0029】
[0035]開口は、任意の適した穴径を有することができる。一般に、開口は、第1の(疎水性)メディアでは約2mm〜約35mmの範囲、好ましくは約4mm〜約25mmの範囲の穴径を有する。好ましくは、所定の第1のメディアにおける開口の穴径は本質的に均一である。
【0030】
[0036]開口間の距離を変えることができる。一般に、開口は、例えばプリーツの基部と平行なプリーツの長さに沿って約40mm〜約175mmの範囲、好ましくは約50mm〜約150mmの範囲の距離だけ互いから離間される。
【0031】
[0037]フィルターの開口の総穴径(total hole diameter)は、第1のメディアの総表面積の任意の所望のパーセンテージであってもよい。例えば、開口は、第1のメディアの総表面積の約0.1%〜約15%、一般に第1のメディアの総表面積の約0.1%〜約10%の範囲の総穴径面積を有する。
【0032】
[0038]多孔質メディアは任意の所望の水の通過圧力(breakthrough pressure)を有することができ、この通過圧力は、液体の水が多孔質メディアを通過して表面から出てくる圧力である。水の通過圧力を当該技術分野において知られているように決定することができる。
【0033】
[0039]一般に、第1の多孔質メディア(疎水性繊維多孔質メディア)は、約15mbar(6インチwg)以上、好ましくは約20mbar(約8インチwg)以上の水通過圧力を有する。
【0034】
[0040]一般に、第2の多孔質メディア(親水性繊維多孔質メディア)は、約3mbar(約1.2インチwg)以下、幾つかの実施形態では、約0mbar(約0インチwg)の水通過圧力を有する。
【0035】
[0041]湿式又は乾式の酸化によって、表面上にポリマーをコーティング又は堆積することによって、又は、グラフト反応によってフィルターの表面特性を(例えば、水の通過圧力に影響を与えるように、表面電荷、例えば正又は負の電荷を含むように、及び/又は、表面の極性、疎水性、又は、親水性を変えるように)改変することができる。
【0036】
[0042]フィルター及びフィルター装置は、異なる構造及び/又は機能、例えば、以下、すなわち、前濾過、支持、排水、スペーサー、及び、緩衝のうちのいずれか1つ以上のうちの少なくとも1つを有することができる更なる要素、層、又は、構成要素を含むことができる。例示的に、フィルター及びフィルター装置は、メッシュ及び/又はスクリーンなどの少なくとも1つの更なる要素も含むことができる。
図5A及び
図5Bに示される実施形態において、フィルターは、プリーツ間の間隔を維持するのに役立つ支持コーム1050を更に備える。
図6A〜
図6Dに示される実施形態において、フィルター装置は、上側及び下側の支持フレーム2050A,2050Bを更に備える。
【0037】
[0043]様々なポリマーが本発明の実施形態に係る繊維多孔質メディアを製造するのに適している。適したポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む)、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、並びに、セルロース系ポリマー(セルロースなど、例えばスルホンポリマー)が挙げられる。
【0038】
[0044]第1の多孔質繊維メディアは、当該技術分野において知られているように、最初は疎水性であってもよく、或いは、疎水性又は増大した疎水性を与えるように処理されてもよい。
【0039】
[0045]本発明の実施形態によれば、エアフィルターは、平面を含む及びプリーツ付きの様々な形態を有することができる。
【0040】
[0046]フィルターは、当該技術分野において知られている技術を使用して製造され得る。例えば、様々なプリーツ付与技術が当該技術分野において知られている。開口は、例えば、超音波切断、レーザー処理、水噴射などによって生成され得る。第2の多孔質メディアは、例えば、熱溶着又は超音波溶着によって第1の多孔質メディアに取り付けられ得る。
【0041】
[0047]一般に、エアフィルターの実施形態は、フィルター装置を形成するためにハウジング内に配置される。例えばヘリコプターの形態に応じて様々なハウジング形態及びハウジング材料が適している。例えば、ハウジングが金属であってもよい。
【0042】
[0048]
図5B及び
図6A〜
図6Fは例示的なフィルター装置2000を示し、
図6A〜
図6Dにおいて、フィルター装置は、上側及び下側の支持フレーム2050A、2050B、並びに、取付ブラケット2075も含む。
【0043】
[0049]フィルター装置は、ヘリコプターの形態に応じて、ヘリコプター内又はヘリコプター上に適するように配置され得る。
図7は1つの位置を示すが、本発明の実施形態はそのように限定されない。
【0044】
[0050]以下の実施例は、本発明を更に例示するが、勿論、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0045】
[0051]この実施例は、完全に親水性のフィルター及び完全に疎水性のフィルターの使用と比較した、静的雨試験における本発明の一実施形態に係るエアフィルターの有効性を実証する。
【0046】
[0052]静的雨試験は、最初に空気の流れがフィルターを通過していないときにフィルターが水に晒され、その後、一定期間後にフィルターを通過する空気の流れが始まる状態をシミュレートする、つまり、「フィルターを雨の中で外部に置いたままにしてからエンジンを始動する」のに相当するようにシミュレートする。
【0047】
[0053]本発明の一実施形態に係るエアフィルターの第1及び第2の多孔質繊維メディアはそれぞれ、約35μmの平均孔サイズが及び約65μmの最大孔サイズを有するポリエステル不織繊維メディアである。第1の多孔質メディアは、約30mbar(約12インチwg)の水通過圧力を与えるための疎水性表面処理を有し、第2の多孔質メディアは、約0mbar(約0インチwg)の水通過圧力を有する。
【0048】
[0054]第1の多孔質繊維メディアは、プリーツが付けられ、部分的に広げられるとともに、アンビル上全体にわたって置かれて、打ち抜かれ、また、第1の多孔質メディアの打ち抜かれた開口を覆って第2の繊維メディアを結合するために超音波ホーンが使用される。
【0049】
[0055]完全に疎水性の多孔質メディアは、35μmの平均孔サイズ、約65μm最大孔サイズ、及び、約30mbar(12インチwg)の水通過圧力を有するポリエステル不織繊維メディアである。完全に疎水性の多孔質メディアはプリーツが付けられる。
【0050】
[0056]完全に親水性の多孔質メディアは、35μmの平均孔サイズ、約65μm最大孔サイズ、及び、約0mbar(0インチwg)の水通過圧力を有するポリエステル不織繊維メディアである。完全に親水性の多孔質メディアはプリーツが付けられる。
【0051】
[0057]
図3Aに示されるように、本発明の一実施形態に係るエアフィルターのピーク差圧は、疎水性メディアにおける約41mbar及び親水性メディアにおける約67mbarと比較して、約10mbarである。
【0052】
[0058]ピーク差圧点での本発明の一実施形態に係るエアフィルターの水放出は、疎水性メディアにおける約150インチ/時及び親水性メディアにおける約8インチ/時と比較して、約4インチ/時である。
【実施例2】
【0053】
[0059]この実施例は、完全に親水性のフィルター及び完全に疎水性のフィルターの使用と比較した、動的雨試験における本発明の一実施形態に係るエアフィルターの有効性を実証する。
【0054】
[0060]動的雨試験は、空気の流れが既に乾いたフィルターを通過していて、その後に、フィルターが水に晒される状態をシミュレートする、つまり、「エンジンを乾燥した状態で運転した後に雨が降り始める」のに相当するようにシミュレートする。
【0055】
[0061]使用されるメディアは実施例1と同じである。
【0056】
[0062]
図3Bに示されるように、本発明の一実施形態に係るエアフィルターのピーク差圧は、疎水性メディアにおける約34mbar及び親水性メディアにおける約16mbarと比較して、約8mbarである。
【0057】
[0063]本明細書中に挙げられる公開公報、特許出願、及び、特許を含む全ての引用文献は、あたかもそれぞれの引用文献が参照により組み入れられるように個別に且つ具体的に示唆されてその全体が本明細書中に記載されたかのような同じ程度まで参照により本願に組み入れられる。
【0058】
[0064]発明を説明する文脈の中(特に、以下の特許請求の範囲との関連)での用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び、「少なくとも1つ」、並びに、同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。その後に1つ以上の項目のリストが続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、挙げられた項目から選択される1つの項目(A又はB)或いは挙げられた項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するように解釈されるべきである。用語「備える」、「有する」、「含む」、及び、「包含する」は、別段に言及されなければ、非制約的な用語(すなわち、「〜を含むがそれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で別段に示唆されなければ、単にその範囲内に入るそれぞれの別個の値に個別に言及する省略法としての機能を果たそうとしているにすぎず、また、それぞれの別個の値は、あたかもそれが本明細書中に個別に記載されたかのように明細書中に組み入れられる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、任意の適した順序で行なうことができる。本明細書中で与えられる任意の及び全ての例又は典型的な言葉(例えば「など」)の使用は、単に本発明をより良く解明しようとしているにすぎず、別段に特許請求の範囲に記載されなければ、本発明の範囲に限定をもたらさない。明細書中の言葉は、特許請求の範囲に記載されない任意の要素が本発明の実施に不可欠であると見なすように解釈されるべきでない。
【0059】
[0065]本発明を実施するために発明者等に知られる最良の形態を含むこの発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むと当業者に明らかになり得る。発明者等は、当業者がそのような変形を必要に応じて使用することを予期し、また、発明者等は、本明細書中に具体的に記載される方法以外の方法で本発明が実際されることを意図する。したがって、この発明は、適用可能な法律により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に挙げられる主題の全ての改変形態及び均等物を含む。また、前述の要素のその全ての想定し得る変形における任意の組み合わせは、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、本発明によって包含される。
【符号の説明】
【0060】
1…第1の多孔質メディア、1A…第1の表面、1B…第2の表面、2…第2の多孔質メディア、2A…第1の表面、2B…第2の表面、10…プリーツ、10…開口、11…基部、12…頂部、100…エアフィルター、1000…プリーツ型フィルター、1050…支持コーム、2000…フィルター装置、2050A…側支持フレーム、2050B…下側支持フレーム、2075…取付ブラケット
【外国語明細書】