【実施例】
【0026】
先ず、
図3は本発明の実施形態となる金網円筒体30Aを製造する編機の斜視図、
図4は編機の作用図で、編み上げられた金網円筒体30Aの外観図、上記金網円筒体30Aは、1本または複数本の形状記憶合金の金属線1,2・・を任意の筒状編地に編込んで伸縮自在な金網円筒体30Aに切断加工される。先ず、
図5に示す製造原理の工程図から説明する。上記金網円筒体30Aは、ニッケル・チタン系形状記憶合金又は鉄系形状記憶合金他の任意適宜な形状記憶合金による金属線1,2を編み込んで形成されているものである。
【0027】
上記形状記憶合金となる金属線1,2は、公知の製造手段・製法と加工手順により、形状記憶合金の性質を引き起こす金属線1,2を製造する。具体的には、
図5〜
図7に示す如くである。先ず、
図5において、形状記憶合金となる金属線1,2の製造は太い線材1Aを熱間ロールR1,R2による圧延で圧延棒1Bとし、この圧延棒1Bを熱間フエージング加工Fにより細目の線材1Cとする。続いて、冷間伸線Kと中間焼きなましL等を繰り返し、最終的に熱処理して形状記憶合金の材料線となる金属線1,2を巻取り生成する。
【0028】
この金属線1,2により、
図5及び
図3と
図4の如く、金網円筒体30Aを編み上げ、
図7の如く、一重の金網円筒体30A又は外径を少しずつ異ならした金網円筒体31A,32A・・35Aを圧縮成型機PPで圧縮して圧縮円盤体(円盤体)30Bとする。上記圧縮円盤体(円盤体)30Bは、
図5において、熱処理即ち変態点の設定処理部X0により、外力で歪んだ形状を予め形状記憶させた任意形状「目的とする正常形状である」に復元させるべく温度処理される。上記圧縮円盤体(円盤体)30Bは、
図10の如く、その平坦にした外周表面6に砥粒G他を超砥粒電着させて、超砥粒金網砥石30Cを製造する。
即ち、各種処理した金属線材1,2により形成した金網円筒体(円盤体)30Bと、上記円盤体の外周面に超砥粒を電着(固着)Gさせた超砥粒金網砥石30Cであって、上記金属線材1,2の復元変態点の設定温度は、研削加工時に起きる砥石の超砥粒砥石の摩擦熱温度又は外部加熱器による熱源、更に研削液の加温による温度制御と成すべく、熱処理を済ませた形状記憶合金からなる超砥粒金網砥石30Cを製造する。勿論、上記以外の加熱手段も適用可能である。
【0029】
尚、上記金網円筒体30Aの生成は、例えば、
図3と
図4に示す編機(原始的な編機の構成を簡潔に説明する)Mの実施形態で作られる。その構成は、円盤8の中央位置には倣い中子9が配置され、上記円盤8の四方に起立させた4本の支柱4の頂部に丸7を備え、この周囲に各ボビン3に巻かれた金属線1,2を引出して引っ掛け、倣い中子9の頂部で各ボビンを交差させて金属線1,2を絡み合わせて編物(30A)を編みあげる。この時、
図4に示すように、倣い中子9により寸法及び形状に重ね合わせ部が無く全周囲が均一な厚みとなり、高精度の金網円筒体30Aが連続して生成される。従って、金網円筒体30Aの長さは、製編後に適宜の長さに切断される。また金網円筒体30Aは、
図7に示すように、任意な外径寸法や任意長さの金網円筒体30A・31A・32A・33A・・35Aに製編・裁断加工される。金網円筒体30A・31A・32A・33A・・35Aは、各種編機や編物組織であっても良い。
【0030】
上記金網円筒体30A〜35Aは、
図7(a)の如く、単体又は外径が僅かに異なる金 網円筒体30A〜35Aを複数重ね合わせると共に軸心方向Oに任意寸法だけプレス成形して円盤体30Bとする。
【0031】
以下、基本原理について、
図7(b)により、単体の金網円筒体30Aから円盤体30Bにプレス成形する圧縮成形装置PPとその圧縮成形方法を説明する。勿論、実際には、金網体30A・31A・32A・33A・34A・35Aを複数入れ子状に重ね合わせたものでも良い。先ず、金網円筒体30Aは、圧縮機PPのベースK6の上に載せられ、加圧体K5により加圧してプレス成形する。この後に、加圧体K5を上昇させ、円盤体30Bを取り出す。取出した円盤体30Bは多数の金属線が緻密に絡み合った強固な形状となるから、元の形状に戻らない。ここで、
図5に示すように、上記の上記金属線材1,2の復元変態点の設定温度を、例えば研削加工時に起きる砥石の摩擦熱温度と成すべく熱処理した形状記憶合金とする。この外周に、
図10の外周部5を平坦面6とし、ここに砥粒Gを超砥粒電着(固着)させた超砥粒金網砥石30Cとなる。
【0032】
上記超砥粒金網砥石30Cは、電着槽70内の電着液Jに浸けて金網砥石30A・30Bから超砥粒金網砥石30Cを生成・製造する。上記超砥粒金網砥石30Cは、研削盤の主軸Sに取付けられて研削加工される。上記円盤砥石30Cによると、従来から存在する円盤体砥石と同じ作用が得られるにとどまらず、被削材Wの外周面に対しても強制的な押付力に対して、円盤体30Bの圧縮された緻密な絡み合いによる復元力と柔軟性により押付力が緩和・低減排除され、スクラッチ傷も皆無となり研磨面の繊細で高精度な研削・ホーニングが可能となる。更に、形状記憶合金による金属線材1,2の復元変態点の設定温度により、研削加工時に起きる砥石の歪んだ砥石形状が任意形状(設定された正しい形状)に復元し、摩擦熱温度の変動に係わらず、砥石形状が任意形状が超高精度の研削加工ができる。
【0033】
続いて、超砥粒金網砥石30Cの圧縮円盤体を形成する形成装置PPとその圧縮成形方法について、より一層具体的な実施例にき、
図8と
図9で説明する。
先ず、
図8に示す圧縮成形装置PPは、ガイド孔40Aを開けた基板40に該ガイド孔を中心線Oとして連結したシリンダ状の外型となる円筒体41と、上記基板に開けたガイド孔に挿通する支持軸42の内型と、該支持軸を先端に持ち上記円筒体41内に挿入するピストン状の押圧体43とからなる。尚、上記押圧体43を進退させる駆動源は図示しないが油圧シリンダ他によって行われる。しかして、上記支持軸42には、各外径を異ならしめた金網体30A・31A・32A・33A・34A・35Aを複数入れ子状に重ね合わせ、最小外径の金網体35Aの内孔35Hを挿入支持可能となす。そして、上記多層化させた各金網円筒体の側面に対してこの外周面を円筒体41内に挿入するとともに、押圧体43の押力F0で基板40側に移動させて各金網円筒体を円盤体30Bに圧縮成形させる構成となっている。
【0034】
続いて、本発明の圧縮成形方法について、
図8に示す圧縮成形装置PPによる基本的な実施例で説明する。
▲1▼金網(金網体である)のセット工程Aでは、金網体30A・31A・32A・33 A・34A・35Aを重ね合わせ、その両端面にフランジとなる側円板36とこの両 外側に整形環37を配置し、押圧体43の支持軸42に内孔35Hを挿通してシーム レス金網体全体を支持する。
▲2▼圧縮成形工程Bにて、上記支持軸42の先端を円筒体41内に導き、基板40に開 けたガイド孔40Aに挿通し、押圧体43を円筒体41内に挿入するとともに押圧力 Fで、シームレス金網体30A・31A・32A・33A・34A・35Aを両側面 から軸心方向に縮めて所定寸法の円盤体30Bに圧縮成形する。この圧縮成形で円盤 体
▲3▼30Bの金網線は圧縮されて緻密で強固な絡み合いにより、元に復元しない。
▲4▼取出し工程Cにて、押圧体43を円筒体41から後退すると、支持軸42に内孔3 5Hを嵌めた円盤体30Bも一緒に円筒体41内から引き出される。この時、側円板 3
▲5▼6は円盤体30Bの内孔35Hの両側面に強固に付着される。この側円板36は、 圧縮時の形状に維持と、後記する
図9と
図10に図示するように、供給されるクーラ ント液CKの横漏れを防ぐ機能を発揮する。整形環37は円盤体30Bの両側面全体 を平滑に圧縮成形させるも、両側面と側円板36から分離される。
▲6▼完成工程Dにて、円盤体30Bを完成させ、この外周面に、
図10の外周部5を平 坦面6とし、ここに砥粒Gを電着させて超砥粒金網砥石30Cとする。この超砥粒金 網砥石は、
図11と
図12に示すように、センタースルー・クーラント液CKを超砥 粒金網砥石30C内に誘導する工具ホルダHに取付けられる。
【0035】
更に、上記本発明の圧縮成形方法は、
図8の圧縮成形装置PPと同一の圧縮成形装置PPにおいて、
図9に図示するように、発展的な圧縮成形方法に展開できる。その一例を具体例で説明する。AXで図示する内径フランジ型のように、各金網円筒体30A・31A・32A・33A・34A・35Aを圧縮した円盤体30Bの片端面から内孔35Cに挿入される多数の小孔hを筒部に開けた内孔用の鍔付管フランジ36Aと側円板36と整形環37を配置又は、多数の小孔hを開けた内径管36Bを内孔35Hに挿入し、両外側に側円板36と整形環37を配置させる。そして、金網円筒体30A・31A・32A・33A・34A・35Aを軸心方向Oへの圧縮時に上記円盤体30Bとなる内孔35Hに鍔付管(フランジ36Aと内径管36Bからなる)36Cと、この反対側に側円板36を圧着させ、又は、内径管36Bの両外側に側円板36を圧着させて圧縮成形した円盤体30Bとする圧縮成形方法である。
【0036】
上記金網砥石30A・31A・32A・33A・34A・35Aを円盤体30Bにした超砥粒金網砥石(平砥石とも言う)30Cにおいて、
図9に示す最適加工例で説明する。超砥粒金網砥石30Cの内孔・内径35Cの全周は、センタースルー・クーラント液CKを円盤砥石の30C内に誘導する工具ホルダHの主軸Sに取付けられる。実際には、鍔付管フランジ36Aと側円板36又は内径管36Bと両外側の側円板36からなる内孔・内径35Hが工具ホルダHの主軸Sに嵌められる。
【0037】
そして、
図11(a)では、クーラント液CKの液圧で、超砥粒金網砥石30C内にクーラント液CKが貯留するも、外周面から噴出しない。
図11(b)では、クーラント液CKの液圧P1〜P3となり、超砥粒金網砥石30Cの内孔の鍔付管フランジ36A又は内径管36Bの小孔h・・・からクーラント液CKは、超砥粒金網砥石の30C内に圧入し、回転する超砥粒金網砥石30Cの遠心力と相俟って、砥石外周面から被削材(図示なし)の表面に噴射し、研削・研磨・ホーニング時に積極的に効率良く供給される。この時、超砥粒金網砥石30Cの両側面の側円板36により、クーラント液CKの圧縮時や膨張時における砥石の変形防止(形状維持)と、クーラント液CKの横漏れを防止し、クーラント液CKを効率良く砥石外周面から被削材(図示なし)の表面に噴射する効果が得られる。従って、従来の平砥石やソフト金網砥石では得られない「研削」「研磨」「ホーニング」加工が柔軟性に優れた高能率にして、高精度(スクラッチ傷無く)が得られる。
【0038】
上記加工例のクーラント液圧と温度制御は、
図12のクーラント供給装置50によって制御される。その詳細は、クーラント供給装置50と、NC制御装置60とプログラム制御部PGにより、超砥粒金網砥石30Cと、配管の途中に設けたクーラント液温度制御部CT又はヒーター加熱器HTとを制御している。
【0039】
続いて、
図13(基本原理による砥石の膨径)と
図14(具体的手段による砥石の膨径)の態様は、先ず、超砥粒金網砥石30Cの外周面Yと被削材Wの表面とは、空隙Xに設定される。ここで、研削直前に超砥粒金網砥石30Cに供給されるクーラント液CK又は加熱空気HEを、形状記憶合金の超砥粒金網砥石に対して、供給されるクーラント液温度制御部CT又はヒーター加熱器HTからの加熱クーラント液CKは、その温度H0を金属線材1,2が持つ復元変態点の設定温度と一致すべく加熱されると、超砥粒金網砥石30Cの外周面Yは、+2α(外径)だけ膨径して超砥粒金網砥石30Cの砥石形状を、正常形状とする。これにより、研削開始となる。しかして、超砥粒金網砥石30Cの外周面Yは被削材Wの表面からX=αだけ切り込まれる。
【0040】
以上の如く、超砥粒金網砥石30Cに供給されるクーラント液温度制御部CTやヒーター加熱器HTからの加熱温度H0が、形状記憶合金の金属線の復元変態点を超えると、例え変形した砥石形状でも正常形状に復元固定され、其の復元量が切込量となり、砥石位置を被研削材Wへの「位置制御」を必要とせず「温度制御」のみで「砥石の定点加工による研削」を可能とした新規な砥石制御が行える。これにより、砥石が研削熱で変形しようとしても、その変位が形状記憶合金による復元作用で正常形状に復元固定されるから、超高精度な研削加工が行える。更に、スクラッチ傷も皆無となり研磨面の繊細で高精度な研削・研磨・ホーニングが可能となる。
【0041】
しかして、超砥粒金網砥石を加熱させて、形状記憶合金1,2の金属線の復元変態点を超えると、例え変形した砥石形状でも正しい形状に復元固定され、其の復元量が切込量となり、「砥石位置を被研削材への位置制御」を必要とせず「温度制御」のみで「砥石の定点加工による研削」を可能とした新規な砥石制御が行える。これにより、砥石が研削熱で変形しようとしても、その変位が形状記憶合金による復元作用で正しい形状に復元固定されるから、超高精度な研削加工が行える。更に、スクラッチ傷も皆無となり研磨面の繊細で高精度な研削・研磨・ホーニングが可能となる。
【0042】
上記クーラント供給装置50の詳細は、駆動源のモーターMOによりタンクT内のクーラント液CKを供給する2気筒プランジャーポンプP(単筒AC、BC)と、該プランジャーポンプPから吐出する脈動圧のクーラント液CKを多種多様に切替える逆止弁V1〜V5と切替弁V6、V7を備えている。上記逆止弁V1〜V5の切り替えで、4種類のクーラント液CKを円盤砥石30Cまで配管・供給する経路を形成している。尚、吐出されるクーラント液CKは、NC制御装置60からのNCプログラムPGの制御により、単筒ACの圧力P1、単筒BCの圧力P2、両方の合成圧力(P1+P2)P3と、該合成圧力(P1+P2)P3をアキュームレーターAQに入れて一定圧P0とする4種類に切替えられる。以上の如く、上記各脈動圧による円盤砥石30Cの膨張・縮小動作とクーラント液を高効率に研削点に供給し、従来の平砥石では得られない「研削」「研磨」「ホーニング」加工の高効果が得られる。
【0043】
以上のように、形状記憶合金からなる超砥粒金網砥石とこの超砥粒金網砥石の製造方法について、総括的にその作用・効果・効能を纏めると、形状剛性の低い金網円筒体を円盤体とするとともに、形状記憶合金から構成したから、形状維持が飛躍的に高められるとともに、砥石内でのクーラント液の貯留機能と被削材への流通供給性が非常に良く、脈動圧が高い膨張時に砥石を僅かに増径させ、脈動圧が低い時には砥石を減径させるから、既存の超砥粒砥石では、実現できない多くの新規な作用・効果が得られる。
【0044】
更に、本発明の特性や設計変更や発展的展望を列記すれば、
1、 超砥粒金網砥石の網目体は形状記憶合の線径の太い・細い・線材を鉄・非鉄他が任 意に選択可能
である他、網目の編み方も、緩く・強く・荒く・細かく他が任意に選択可能である。更 には、形状記憶合金の他バイメタル機能の金属線で網目体を形成し、研削時の温度上昇 時により正しい網目体形状としても良い。
2、網目体の空隙は切り子ポケットになるので目詰まりしない。網目線材の交点は、固着 と自由が選択でき、交点固着はハードタイプ、交点フリーはソフトタイプとなり、ソフ トタイプは交点移動するから衝撃力を吸収する弾性砥石として最適となる。
3、圧縮成形装置のオス型・メス型の形状により、任意形状の圧縮砥石が得られる。また 、プレス技術を駆使し上下方向+横方向に複合圧縮すれば、更に複雑形状が可能で、加 工面を外形・内径・平面・溝・穴・局面他に対応できる。この形状としても、従来の砥 石には無い、圧倒的な透水性の金属他製、超砥粒電着弾性砥石が得られる。
4、網目線材の加工面以外の砥石側面を板状に覆うと、クーラント液の冷却水漏れ防止対 策が容易となる。また、上記網目線材にセンサーと導線を線状に編み込めば知能砥石と なる。更に、熱溶解性の線材で金網を編み込めば、線材を熱溶解して除去すれば、任意 空間を砥石内に形成できる。
上記1〜4迄の発展的な円盤体が圧縮成形されるから、多種・多様な用途に使用可能な 研削砥石が生成できる。
【0045】
そこで、上記超砥粒金網砥石30Cの各実施例に限定されず、
図15と
図16に示す砥石にも適応できる。具体的には、軸付超砥粒金網砥石80Aや超砥粒金網平砥石80Bや超砥粒金網シート砥石80C他への展開が可能である。軸付超砥粒金網砥石80Aによると、
図16に見るように、軸付超砥粒金網砥石80によるワークWの孔H6のホーニング加工時において、
図16(a)で、孔H6内に軸付超砥粒金網砥石80Aを差し入れ、
図16(b)に示す如く、クーラント液温度制御部CTやヒーター加熱器HTからの加熱温度H0のクーラント液が供給されると、形状記憶合金の金属線1、2の復元変態点を超え、例え変形した砥石形状でも正常に復元膨径固定され、其の復元量が切込量となり、ワークWの孔H6への研削・ホーニング加工を可能となる。勿論、他の砥石超砥粒金網平砥石80Bや超砥粒金網シート砥石80C他においても、優れた作用・効果が得られる。