前記アルカリ金属珪酸塩層に含まれる前記珪酸ナトリウムの質量に対する、前記アルカリ金属珪酸塩層に含まれる前記珪酸リチウムの質量の質量比が0.01〜1.5である、請求項3に記載の被覆基材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(被覆基材)
図面を参照して本発明の実施形態に係る被覆基材について説明する。
【0016】
図1の(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る被覆基材100は、基材10、基材10の表面上に設けられたプライマー層20、プライマー層20上に設けられたアルカリ金属珪酸塩層30、及び、アルカリ金属珪酸塩層30上に設けられたアクリルウレタン樹脂を含むトップ層40を備える。
【0017】
[基材]
基材10は、可燃性基材であってもよく、不燃性基材であってもよい。可燃性基材としては、可燃性材料から形成されるものであれば特に限定はない。可燃性基材の例は、木材製材品、丸太、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、CLT(Cross Laminated Timber)、構造用パネル(配向性ストランドボード(OSB))、パーティクルボード、ファイバーボード等の木質材料である。
【0018】
可燃性基材の他の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、アクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、天然ゴム、クロロプレンゴム、EPDM、ふっ素樹脂、ポリエステル、メラミン、ポリアミド等の樹脂材料であり、これらはバルク、発泡体、その他の形態とすることができる。
【0019】
不燃性基材の例は、コンクリート、モルタル、セメント、しっくい、石、金属、ガラス、及びセラミック等である。
【0020】
基材10の厚みに特に制限はない。例えば、3μm〜3.5mとすることができる。
【0021】
[プライマー層]
プライマー層20は、基材10とアルカリ金属珪酸塩層30との密着性を向上させる層であるが、必須ではない。プライマー層20は、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂などの接着性樹脂であることができる。プライマー層20として、シリカ、アルミナ等の無機系材料を使用することも可能である。
【0022】
プライマー層20の厚みに限定はないが、透明性を高める観点から150μm以下(塗布量500g/m
2以下相当)、より好ましくは90μm以下(塗布量300g/m
2以下相当)とすることが好適であり、密着性向上効果、目止め効果を得る観点から15μm以上(塗布量50g/m
2以上相当)とすることが好適であり、30μm以上(塗布量100g/m
2以上相当)とすることがより好適である。
【0023】
[アルカリ金属珪酸塩層]
アルカリ金属珪酸塩層30は、M
2O・nSiO
2(アルカリ金属珪酸塩)を主成分とする。ここで、Mは、Na、K、Li、又は、これらのうちの任意の組合せである。nは、M
2Oのモル数に対するSiO
2のモル数を示すモル比であり、Naの場合には2.0〜3.8、Liの場合には、3.5〜7.5、Kの場合には1.8〜3.7とすることができる。また、nは、Naの場合には好ましくは2.0〜3.3であることができる。
【0024】
アルカリ金属珪酸塩層30におけるM
2O・nSiO
2の濃度は30質量%を超え、40質量%以上、50質量%以上であることができる。
【0025】
なかでも、アルカリ金属珪酸塩は、MがNaを含む、すなわち、珪酸ナトリウムを含むことが好適である。
【0026】
全アルカリ金属珪酸塩に占める珪酸ナトリウムの質量割合は、成膜性の向上及び防火性能の付与の観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
【0027】
アルカリ金属珪酸塩は、耐水性を一層向上させる観点から、珪酸ナトリウムに加えて、珪酸リチウムを含むことが好ましい。
【0028】
アルカリ金属珪酸塩が珪酸リチウムを含む場合、珪酸ナトリウムの質量に対する、珪酸リチウムの質量の質量比は、光沢を高め耐水性を向上させる観点から、0.01〜1.5であることが好ましく、0.2〜1.4であることがより好ましく、0.3〜1.2であることが更に好ましい。
【0029】
アルカリ金属珪酸塩層30は、アルカリ金属珪酸塩以外に、リン酸塩、ホウ酸塩などを含んでもよい。
【0030】
アルカリ金属珪酸塩層30の厚みは、防火性能付与の観点から、30μm以上、好ましくは90μm以上、より好ましくは150μm以上とすることができる。厚みは、透明性及び施工性の観点から900μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは450μm以下とすることができる。
【0031】
アルカリ金属珪酸塩層30の単位面積あたりのアルカリ金属珪酸塩の重量は、防火性能付与の観点から、乾燥重量50g/m
2以上(水溶液塗布量100g/m
2以上に相当)、好ましくは乾燥重量150g/m
2以上(水溶液塗布量300g/m
2以上に相当)、より好ましくは乾燥重量250g/m
2以上(水溶液塗布量500g/m
2以上に相当)とすることができる。重量は、透明性及び施工性の観点から乾燥重量1500g/m
2以下(水溶液塗布量3000g/m
2以下に相当)、好ましくは乾燥重量1000g/m
2以下(水溶液塗布量2000g/m
2以下に相当)、より好ましくは乾燥重量750g/m
2以下(水溶液塗布量1500g/m
2以下に相当)とすることができる。
【0032】
[繊維]
アルカリ金属珪酸塩層30は、繊維を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。金属珪酸塩層30が繊維を含むことにより、アルカリ金属珪酸塩層30の亀裂発生が抑制され、また、基材10からのアルカリ金属珪酸塩層30の剥離・脱落が抑制され、さらにはアルカリ金属珪酸塩層30の厚みの保持につながることで、防火性能が向上する。
【0033】
繊維の例は、ガラス繊維;炭素繊維;アルミナ繊維、シリカ繊維等のセラミック繊維;アラミド繊維、ポリプロピレン繊維等の樹脂繊維;炭素鋼繊維、ステンレス繊維、めっき鋼繊維等の金属繊維等である。
【0034】
図1の(a)及び(b)に示すように、繊維は、アルカリ金属珪酸塩層30内に分散していることができる。分散している場合の好適な繊維の径は0.003〜1mmであり、好適な繊維の長さは0.1〜100mmである。分散している場合の繊維の量は、0.1〜20重量%であることができる。
図1の(a)では繊維fが絡み合っており、
図1の(b)では繊維fは絡み合っていない。火災時の膨張抑制による不燃性能向上の観点からは、繊維が絡み合っていることが好適である。短繊維とは50mm以下の繊維である。短繊維の長さは、15mm以下が好ましく、10mm以下とすることもできる。
【0035】
また、繊維がシートを形成しており、当該繊維のシートがアルカリ金属珪酸塩層30内に埋設されていることも好適である。繊維のシートの例は、織布(平織り等)、及び、不織布である。
図1の(c)では、アルカリ金属珪酸塩層30内の繊維のシートの1例として、織布35を図示している。織布35は、縦糸35a及び横糸35bを有する。ガラス繊維の織布(ガラスクロス)及び不織布(ガラスマット等)は、屈折率が水ガラスと近いため、アルカリ金属珪酸塩層30が乱反射を生じにくいという観点から、本実施形態において特に好適な繊維のシートである。
【0036】
繊維のシートの厚みは、0.003〜2mmとすることができる。
【0037】
繊維のシートがガラス繊維の織布又は不織布の場合、繊維のシートの単位面積あたりの重量は、1〜1000g/m
2とすることができる。
【0038】
繊維のシートは完全にアルカリ金属珪酸塩層30内に埋め込まれていることが好適であるが、一部がアルカリ金属珪酸塩層30から突出していることもできる。
【0039】
[トップ層]
アルカリ金属珪酸塩層30上には、アクリルウレタン樹脂を含むトップ層40が設けられている。
【0040】
アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。
【0041】
アクリルポリオールとは、分子中に2以上の水酸基を有するアクリル樹脂である。このようなアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有重合性不飽和モノマーとの重合により得られる。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリル及びアクリルの両方をまとめた呼称である。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルおよびシクロアルキルエステル類が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの各種の多価カルボン酸類のジヒドロキシアルキルエステル類のような、種々の不飽和結合含有ポリヒドロキシアルキルエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートや(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル;アリルアルコールやメタクリルアルコールなどのアルコール類などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
アクリルポリオールの水酸基価は、特に制限されないが、耐水性を一層向上させる観点から、60mgKOH/g以上であってよく、80mgKOH/g以上であることが好ましく、100mgKOH/g以上であってもよい。
【0045】
アクリルポリオールのガラス転移温度は、10〜120℃であってよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
【0046】
ポリイソシアネートとは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する有機化合物である。ポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の芳香族ポリイソシアネートである。
【0047】
ポリイソシアネートのNCO含有量は10〜25wt%であることができる。
【0048】
トップ層40におけるアクリルウレタン樹脂の含有量は、トップ層40の全量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。トップ層40におけるアクリルウレタン樹脂の含有量は、100質量%であってもよい。
【0049】
トップ層40は、アクリルウレタン樹脂以外の材料をさらに含んでいてもよい。そのような材料としては、例えば、アクリルウレタン樹脂以外の樹脂、消泡剤、湿潤剤、分散剤、顔料、難燃剤、安定剤、可塑剤、艶消し剤及び増粘剤等が挙げられる。トップ層40がアクリルウレタン樹脂以外の材料を含む場合、その含有量は、トップ層40の全量に対して0〜30質量%であってよい。
【0050】
トップ層40の厚みは、特に制限されないが、防火性能の付与の観点から、150μm以下(塗布量500g/m
2以下相当)、90μm以下(塗布量300g/m
2以下相当)とすることが好適であり、付着性及び耐水性を一層向上させる観点から、15μm以上(塗布量50g/m
2以上相当)、30μm以上(塗布量100g/m
2以上相当)とすることが好適である。
【0051】
(被覆基材の製造方法)
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図2を参照して説明する。
【0052】
まず、
図2の(a)に示すように、基材10を用意する。続いて、
図2の(b)に示すように、基材10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成する。
【0053】
本実施形態では、基材10の表面が、水平面に対して90°傾斜している。基材10の表面は、水平面に対して傾斜していてもよく、傾斜していなくてもよい。
【0054】
続いて、
図2の(c)に示すように、プライマー層20上に、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布してアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)は、上述のM
2O・nSiO
2の水溶液である。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、50g/m
2以上、150g/m
2以上、250g/m
2以上とすることができ、1500g/m
2以下、1000g/m
2以下、750g/m
2以下とすることができる。
【0055】
アルカリ金属珪酸水溶液として、JIS K1408に規定された、水ガラス1号〜3号を好適に利用できる。また、水ガラス1号から3号ではnは2.0〜3.3であるが、nが2.0〜3.8の水ガラスも好適に利用できる。
【0056】
続いて、
図2の(d)に示すように、乾燥前のアルカリ金属珪酸塩水溶液層30a上に、ガラスクロスなどのシート状繊維(たとえば織布35)を貼りつける。アルカリ金属珪酸塩水溶液は高い粘度を有するので、貼りつけるだけで織布35などの繊維のシートの基材10の表面上への仮固定が可能である。
【0057】
続いて、
図2の(e)に示すように、繊維のシート(たとえば織布35)の上に、さらに、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布してアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの厚みを大きくする。2回目に塗布するアルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、50g/m
2以上、150g/m
2以上、250g/m
2以上とすることができ、1500g/m
2以下、1000g/m
2以下、750g/m
2以下とすることができる。必要に応じて、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aに対する別のシート状繊維(たとえば織布35)の貼り付け、及び、さらなるアルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布をさらに繰り返してもよい。
【0058】
アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの合計の塗布量は例えば、100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、1000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。
【0059】
複数回の塗布により形成されるアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの合計厚みは例えば30〜900μmとすることができる。
【0060】
その後、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させて固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、アルカリ金属珪酸塩層30上にアクリルポリオール及びポリイソシアネートを含むトップ層形成用組成物を塗布し、硬化させることでトップ層40を形成する。硬化反応は、アクリルポリオールの水酸基とポリイソシアネートのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応である。
【0061】
トップ層形成用組成物は水系組成物である、すなわち主たる(最大成分)溶媒が水であることができる。この場合、アクリルポリオールとして、水性アクリルポリオール、すなわち水溶性または水分散性アクリルポリオールと水との混合物を用い、ポリイソシアネートとして分散剤により水分散性が付与されたポリイソシアネートを用いることができる。
【0062】
水性アクリルポリオールの最低造膜温度(MFT)は、5〜20℃であってよい。
【0063】
トップ層形成用組成物は、水以外の溶剤をさらに含んでいてもよい。このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メトキシプロピルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる
【0064】
トップ層形成用組成物におけるアクリルポリオール、ポリイソシアネート、水等の溶媒の濃度は適宜調節することができる。
【0065】
トップ層形成用組成物は、アクリルウレタン樹脂以外の材料をさらに含んでいてもよい。このような材料としては、上述したものが挙げられる。トップ層形成用組成物がアクリルウレタン樹脂以外の材料を含む場合、その含有量は、トップ層形成用組成物の全量に対して、0〜30質量%であってよい。
【0066】
トップ層40は、トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を1回行うことにより形成されてもよく、トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を2回繰り返すことにより形成されてもよく、トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を3回以上繰り返すことにより形成されてもよい。剥離を一層抑制し、トップ層形成後の耐水性を一層向上させ、水への接触による外観の変化を抑制する観点から、トップ層は、トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を2回繰り返すことにより形成されることが好ましい。
【0067】
トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を1回行うことによりトップ層を形成する場合、トップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制し、トップ層形成後の耐水性を一層向上させる観点から、60g/m
2以上であることが好ましく、100g/m
2以上であることがより好ましい。トップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制する観点から、400g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以下であることがより好ましい。
【0068】
トップ層形成用組成物の塗布及び硬化の操作を2回繰り返すことによりトップ層を形成する場合、1回目に塗布するトップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制し、トップ層形成後の耐水性を一層向上させる観点から、30g/m
2以上であることが好ましく、50g/m
2以上であることがより好ましい。1回目に塗布するトップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制する観点から、200g/m
2以下であることが好ましく、100g/m
2以下であることがより好ましい。2回目に塗布するトップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層の耐水性を一層向上させる観点から、30g/m
2以上であることが好ましく、50g/m
2以上であることがより好ましい。2回目に塗布するトップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制する観点から、200g/m
2以下であることが好ましく、100g/m
2以下であることがより好ましい。
【0069】
トップ層形成用組成物の合計塗布量は、トップ層形成後の耐水性を一層向上させる観点から、60g/m
2以上であることが好ましく、100g/m
2以上であることがより好ましい。トップ層形成用組成物の塗布量は、トップ層が剥がれ落ちることを一層抑制する観点から、400g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以下であることがより好ましい。
【0070】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図3を参照して説明する。
【0071】
まず、
図3の(a)及び
図3の(b)に示すように、第一実施形態に係る製造方法と同様にして、基材10を用意し、基材10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成する。
【0072】
続いて、
図3の(c)に示すように、基材10の表面のプライマー層20上に、シート状の繊維(たとえば織布35)を置き、必要に応じて仮固定する。仮固定の方法は特に限定されず、例えば、ステープル、ピン、ビス留め等による機械式固定、部分的、又は全面的に接着剤を塗布することによる固定、等とすることができる。
【0073】
続いて、
図3の(d)に示すように、プライマー層20上のシート状の繊維(たとえば織布35)に、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布して、シート状の繊維(たとえば織布35)を埋設した上述のアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、2000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの厚みは例えば30〜900μmとすることができる。
【0074】
その後、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させてシート状繊維(たとえば織布35)を埋設した固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、第一の実施形態に係る製造方法と同様にして、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0075】
[第三実施形態]
続いて、
図1の(a)又は(b)の繊維が分散している被覆基材100の製造方法について
図4を参照して説明する。
【0076】
まず、
図4の(a)及び
図4の(b)に示すように、第一の実施形態に係る被覆基材の製造方法と同様にして、基材10を用意し、基材10の表面に公知の方法でプライマー層20を形成する。次に、アルカリ金属珪酸塩水溶液内に繊維を分散させた溶液を作製する。
【0077】
続いて、
図4の(c)に示すように、プライマー層20上に、繊維を分散させたアルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布して分散繊維を含有するアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)は、上述のM
2O・nSiO
2の水溶液である。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、2000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。
【0078】
アルカリ金属珪酸水溶液として、JIS K1408に規定された、水ガラス1号〜3号を好適に利用できる。また、水ガラス1号から3号ではnは2.0〜3.3であるが、nが2.0〜3.8の水ガラスも好適に利用できる。
【0079】
その後、
図4の(d)に示すように、繊維を分散させたアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させてアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、第一の実施形態に係る製造方法と同様にしてアルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0080】
被覆基材100は、防火性能を有することができ、例えば、柱、梁、床、壁、屋根材等の建築物の構造体、天井材、内壁材、外装材、階段、建具等の建築物の仕上げ材料、その他、自動車、鉄道、船舶等の内装材料、家具の材料として利用できる。
【0081】
なお、本実施形態において、一般的な難燃剤、例えばリン系、フォスファゼン系、窒素系、臭素系、無機系(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等)の各種難燃剤を併用することを否定しない。
【0082】
また、第三実施形態に係る被覆基材100の製造方法において、上述のアルカリ金属珪酸塩水溶液が、分散された繊維を含んでいなくても実施は可能である。
【実施例】
【0083】
(トップ層形成用組成物の調整)
[実施例1〜3]
バーノックWE−306(商品名、水性アクリルポリオール、水酸基価:100mgKOH/g、最低造膜温度MFT:50℃、Tg:50℃、固形分:44.0〜46.0質量%、DIC株式会社製)100質量部及びバーノックDNW−5000(商品名、ポリイソシアネート、溶剤:ジエチレングリコールジメチルエーテル、固形分:79.0〜81.0質量%、DIC株式会社製)25質量部を混合してトップ層形成用組成物を調製した。
【0084】
[比較例1及び2]
トップ層形成用組成物としてシラノール基含自己架橋ウレタン樹脂(Tg:115℃、表1中、「シラノール基含有自己架橋ウレタン樹脂A」と称する。)の水分散物を用いた。
【0085】
[比較例3及び4]
トップ層形成用組成物としてシラノール基含自己架橋ウレタン樹脂(Tg:40−60℃、表1中、「シラノール基含有自己架橋ウレタン樹脂B」と称する。)の水分散物を用いた。
【0086】
[比較例5及び6]
トップ層形成用組成物としてシラノール基含自己架橋ウレタン樹脂(Tg:120℃、表1中、「シラノール基含有自己架橋ウレタン樹脂C」と称する。)の水分散物を用いた。
【0087】
[比較例7及び8]
トップ層形成用組成物としてバーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体の水分散物(酸価:16mgKOH/g、MFT:20℃、Tg:19℃)を用いた。
【0088】
[比較例9及び10]
自己架橋型アクリル樹脂の水分散物(酸価:11mgKOH/g、MFT:31℃、Tg:21℃)100質量部及びダワノールDPM(商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製を13.5質量部混合し、トップ層形成用組成物を調整した。
【0089】
[比較例11及び12]
オルガノポリシロキサン系樹脂の水分散物(MFT:0℃以上)15質量部及びグリシジル基含有シリコーンオリゴマー1質量部を混合し、シリコーン樹脂を含むトップ層形成用組成物として調整した。
【0090】
(アルカリ金属珪酸塩水溶液の調整)
[実施例1]
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号:n=3.1〜3.3、珪酸ナトリウム濃度:38.5〜40.0質量%)をアルカリ金属珪酸塩水溶液として用いた。
【0091】
[実施例2及び3並びに比較例1〜12]
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号:n=3.1〜3.3、珪酸ナトリウム濃度:38.5〜40.0質量%)及び珪酸リチウム水溶液(商品名:リチウムシリケート45、SiO
2/Li
2Oモル比4.5、珪酸リチウム濃度:22.0質量%)を、珪酸ナトリウム水溶液と珪酸リチウム水溶液の質量比が珪酸ナトリウム水溶液:珪酸リチウム水溶液=2:1となるように混合し、アルカリ金属珪酸塩水溶液を得た。
【0092】
(被覆基材の製造)
[実施例1及び3並びに比較例2、4、6、8、10及び12]
基材としてスギ材を用意した。スギ材の水平な表面に、刷毛を用いてDSV.4176(商品名、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体の水分散物、VANORA社製)を塗布した。塗布量は、130g/m
2とした。次いで、スギ材を温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間乾燥させ、プライマー層を形成した。次いで、プライマー層が形成された表面に、シート状のガラス繊維(セントラルグラスファイバー サーフェイスマット FC−30S)を置き、その上からアルカリ金属珪酸塩水溶液を1000g/m
2塗布し乾燥させ、アルカリ金属珪酸塩水溶液層を形成した。乾燥は、温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間行った。アルカリ金属珪酸塩水溶液層を乾燥させることで、アルカリ金属珪酸塩層(アルカリ金属珪酸塩の単位面積あたりの乾燥重量600g/m
2)を形成した。その後、該アルカリ金属珪酸塩層上に、刷毛を用いてトップ層形成用組成物を塗布した。塗布量は、100g/m
2とした。次いで、トップ層形成用組成物を温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間放置して硬化させた。その後、硬化した層の表面に、さらに刷毛を用いてトップ層形成用組成物を塗布した。塗布量は、100g/m
2とした。次いで、塗布したトップ層形成用組成物を温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で1週間放置して硬化させることにより、トップ層を形成し、被覆基材を得た。
【0093】
[実施例2並びに比較例1、3、5、7、9及び11]
基材としてスギ材を用意し、実施例1と同様にしてプライマー層及びアルカリ金属珪酸塩層を形成した。その後、該アルカリ金属珪酸塩層上に、刷毛を用いてトップ層形成用組成物を塗布した。塗布量は、100g/m
2とした。次いで、塗布したトップ層形成用組成物を温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で1週間放置して硬化させることにより、トップ層を形成し、被覆基材を得た。
【0094】
(評価:付着性)
[実施例1〜3及び比較例1〜12]
得られた被覆基材におけるトップ層が形成された面に対して、カッターナイフを用いて、11本の平行な切れ込みを形成した。切れ込みと切れ込みとの間隔は、2mmとした。上記の11本の切れ込みに対して垂直方向に、カッターナイフを用いて、11本の平行な切れ込みを新たに形成した。新たに形成した切れ込みと切れ込みとの間隔は、2mmとした。これにより、被覆基材におけるトップ層が形成された面に、碁盤目状に100個のマス目を形成した。次いで、100個のマス目が形成された面に粘着テープ(ニチバン株式会社製、セロテープLP−24(登録商標))を強く圧着させた。次いで、被覆基材の表面に対して45°の角度で粘着テープの端を一気に引き剥がした。剥離せずに残っているマス目の数、及び剥離せずに残っているマス目のうち角が欠けているマス目の有無を観察した。剥離せずに残っているマス目の数が100個であり、且つ、角が欠けているマス目が観察されないものを合格とした。結果を表1に示した。
【0095】
(評価:耐水性)
[実施例1〜3及び比較例1〜12]
得られた被覆基材におけるトップ層が形成された面に対して、温度23℃の環境下で、0.05mlの水道水を滴下し、24時間後、水道水を滴下した箇所を乾布で拭き取り、当該箇所におけるトップ層の溶解の有無を下記の基準に従い評価した。下記の評価基準において◎、○又は△のものを合格とした。結果を表1に示した。
〈評価基準〉
◎:トップ層に水滴の跡及び白化は確認されず、外観変化がない
○:トップ層に僅かに水滴の跡が確認されるが、白化は確認されない
△:トップ層に若干の白化が確認される
×:トップ層に著しい白化が確認される
【0096】
【表1】