【解決手段】被覆基材は、木質材料、木質材料上に設けられたバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む中間層、及び、中間層上に設けられたアルカリ金属珪酸塩層を備える。
木質材料、前記木質材料上に設けられたバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む中間層、及び、前記中間層上に設けられたアルカリ金属珪酸塩層を備える被覆基材。
前記アルカリ金属珪酸塩層に含まれる前記珪酸ナトリウムの質量に対する、前記アルカリ金属珪酸塩に含まれる前記珪酸リチウムの質量の質量比が0.01〜1.5である、請求項4に記載の被覆基材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(被覆基材)
図面を参照して本発明の実施形態に係る被覆基材について説明する。
【0016】
図1の(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る被覆基材100は、木質材料10、木質材料10上に設けられたバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む中間層20、中間層20上に設けられたアルカリ金属珪酸塩層30、及び、トップ層40を備える。
【0017】
木質材料10は、木質材料として一般的に使用されるものであれば特に制限されないが、例えば、木材製材品、丸太、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、CLT(Cross Laminated Timber)、構造用パネル(配向性ストランドボード(OSB))、パーティクルボード、ファイバーボード等を挙げることができる。
【0018】
木質材料10の厚みに特に制限は無い。例えば、3μm〜3.5mとすることができる。
【0019】
[中間層]
中間層20は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む。バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、バーサチック酸ビニルエステル及びバーサチック酸ビニルエステルと共重合が可能な他のモノマーの共重合体である。バーサチック酸ビニルエステルは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0020】
【化1】
[式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R
1及びR
2の合計の炭素数は6〜8であり、(1)式全体の合計炭素数は11〜13である。]
【0021】
式(1)中、R
1及びR
2は、独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び、ヘプチル基からなる群から選択される。R
1及びR
2は、直鎖でも、分岐でも、環式でもよいが、直鎖又は分岐が好適である。
R
1がプロピル基であることが好適である。R
1がプロピル基の場合、R
2は、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基、又は、直鎖または分岐のペンチル基であることが好適である。
【0022】
バーサチック酸ビニルエステルと共重合が可能な他のモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマー;エチレン、酢酸ビニル等が挙げられ、皺よりの発生を一層抑制し、耐水性を向上させる観点から、アクリル系モノマーであることが好ましい。
【0023】
なお、(メタ)アクリル酸エステルの例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルである。また、(メタ)アクリル酸の例は、アクリル酸及びメタクリル酸である。
【0024】
バーサチック酸ビニルエステル共重合体としては、例えば、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合体等が挙げられる。アルカリ焼け及び皺よりの発生を抑制する観点から、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体及びエチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合体であることが好ましく、皺よりの発生をより一層抑制し、耐水性を一層向上する観点から、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体、特に、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体であることがより好ましい。
【0025】
バーサチック酸ビニルエステル共重合体において、バーサチック酸ビニルエステルに由来する構造単位の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、10以上質量%であることがより好ましく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。
【0026】
バーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度Tgは、−50〜25℃であってよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
【0027】
バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、ランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0028】
中間層20に含まれるバーサチック酸ビニルエステル共重合体の含有量は、中間層20の全量に対して、皺よりの発生を抑制する観点から、50質量%以上であることが好適であり、70質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
【0029】
中間層20は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体以外に、シリカなどの成分、及び、他の樹脂などを含むことができる。
【0030】
中間層20の23℃における微小硬度計による硬度は、耐水性、塗装作業性及び室温における硬化性の向上の観点から、0.5N/mm
2以上であることが好ましく、1.0N/mm
2以上であることがより好ましく、2.0N/mm
2以上であることがさらに好ましい。中間層20の微小硬度計による硬度は、微小硬度計により測定される値を指す。微小硬度計としては、例えば、フィッシャースコープH−100(商品名、株式会社フィッシャーインスツルメンツ製)を用いることができる。
【0031】
中間層20の破断点ひずみ(破断するまでの伸長率)は、高温環境下での皺よりの発生を抑制する観点から、120〜1200%であることが好ましい。破断点ひずみは、精密万能試験機により測定される値を指す。精密万能試験機としては、例えば、オートグラフ(商品名、島津製作所)を用いることができる。中間層20の破断点ひずみは、例えば、以下のような手順により測定することができる。すなわち、ポリプロピレン樹脂等の材質からなる板の表面上に、樹脂組成物を塗布し、23℃、相対湿度50%の環境下で72時間乾燥させること、又は、60℃の環境下で2時間かけて乾燥させることで中間層20を形成する。形成された中間層20からJIS K7127で規定されたタイプ2の塗膜片(平行部の幅10mm、標準間距離50mm)を切り出す。得られた塗膜片について、精密万能試験機(島津製作所製、商品名「オートグラフ」)を用いて引っ張り試験(引っ張り速度:50mm/分)をおこない、中間層20の破断点ひずみを測定する。
【0032】
中間層20の厚みに限定は無いが、アルカリ焼け抑制の観点から15μm以上(塗布量50g/m
2以上相当)とすることが好適であり、30μm以上(塗布量100g/m
2以上相当)とすることがより好適である。また、透明性を高める観点から150μm以下(塗布量500g/m
2以下相当)、より好ましくは90μm以下(塗布量300g/m
2以下相当)とすることが好適である。
【0033】
[アルカリ金属珪酸塩層]
アルカリ金属珪酸塩層30は、アルカリ金属珪酸塩を含む。アルカリ金属珪酸塩はM
2O・nSiO
2で表される。ここで、Mは、Na、K、Li、又は、これらのうちの任意の組合せである。nは、M
2Oのモル数に対するSiO
2のモル数を示すモル比であり、Naの場合には2.0〜3.8、Liの場合には、3.5〜7.5、Kの場合には1.8(1号珪酸カリ)〜3.7(2号珪酸カリ)とすることができる。また、nは、Naの場合には好ましくは2.0〜3.3であることができる。
【0034】
なかでも、アルカリ金属珪酸塩層は、MがNaを含む、すなわち、珪酸ナトリウムを含むことが好適である。
【0035】
アルカリ金属珪酸塩層30に含まれる全アルカリ金属珪酸塩に占める珪酸ナトリウムの質量割合は、成膜性の向上及び防火性能の付与の観点から、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
【0036】
アルカリ金属珪酸塩層30は、耐水性を向上させる観点から、珪酸ナトリウムに加えて、珪酸リチウムを含むことが好ましい。
【0037】
アルカリ金属珪酸塩層30が珪酸リチウムを含む場合、珪酸ナトリウムの質量に対する、珪酸リチウムの質量の質量比は、光沢を高め耐水性を向上させる観点から、0.01〜1.5であることが好ましく、0.2〜1.4であることがより好ましく、0.3〜1.2であることが更に好ましい。
【0038】
アルカリ金属珪酸塩層30におけるM
2O・nSiO
2の濃度は30質量%を超え、40質量%以上、50質量%以上であることができる。アルカリ金属珪酸塩層は、リン酸塩、ホウ酸塩等を含んでもよい。
【0039】
アルカリ金属珪酸塩層30の厚みは、防火性能付与の観点から、30μm以上、好ましくは90μm以上、より好ましくは150μm以上とすることができる。厚みは、透明性及び施工性の観点から900μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは450μm以下とすることができる。
【0040】
アルカリ金属珪酸塩層30の単位面積あたりのアルカリ金属珪酸塩の重量は、防火性能付与の観点から、乾燥重量50g/m
2以上(水溶液塗布量100g/m
2以上に相当)、好ましくは乾燥重量150g/m
2以上(水溶液塗布量300g/m
2以上に相当)、より好ましくは乾燥重量250g/m
2以上(水溶液塗布量500g/m
2以上に相当)とすることができる。重量は、透明性及び施工性の観点から乾燥重量1500g/m
2以下(水溶液塗布量3000g/m
2以下に相当)、好ましくは乾燥重量1000g/m
2以下(水溶液塗布量2000g/m
2以下に相当)、より好ましくは乾燥重量750g/m
2以下(水溶液塗布量1500g/m
2以下に相当)とすることができる。
【0041】
[繊維]
アルカリ金属珪酸塩層30は、繊維を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。金属珪酸塩層30が繊維を含むことにより、アルカリ金属珪酸塩層30の亀裂発生が抑制され、また、木質材料10からのアルカリ金属珪酸塩層30の剥離・脱落が抑制され、さらにはアルカリ金属珪酸塩層30の厚みの保持につながることで、防火性能が向上する。
【0042】
繊維の例は、ガラス繊維;炭素繊維;アルミナ繊維、シリカ繊維等のセラミック繊維;アラミド繊維、ポリプロピレン繊維等の樹脂繊維;炭素鋼繊維、ステンレス繊維、めっき鋼繊維等の金属繊維等である。
【0043】
図1の(a)及び(b)に示すように、繊維は、アルカリ金属珪酸塩層30内に分散していることができる。分散している場合の好適な繊維の径は0.003〜1mmであり、好適な繊維の長さは0.1〜100mmである。分散している場合の繊維の量は、0.1〜20重量%であることができる。
図1の(a)では繊維fが絡み合っており、
図1の(b)では繊維fは絡み合っていない。火災時の膨張抑制による不燃性能向上の観点からは、繊維が絡み合っていることが好適である。短繊維とは50mm以下の繊維である。短繊維の長さは、15mm以下が好ましく、10mm以下とすることもできる。
【0044】
また、繊維がシートを形成しており、当該繊維のシートがアルカリ金属珪酸塩層30内に埋設されていることも好適である。繊維のシートの例は、織布(平織り等)、及び、不織布である。
図1の(c)では、アルカリ金属珪酸塩層30内の繊維のシートの1例として、織布35を図示している。織布35は、縦糸35a及び横糸35bを有する。ガラス繊維の織布(ガラスクロス)及び不織布(ガラスマット等)は、屈折率が水ガラスと近いため、アルカリ金属珪酸塩層30が乱反射を生じにくいという観点から、本実施形態において特に好適な繊維のシートである。
【0045】
繊維のシートの厚みは、0.003〜2mmとすることができる。
【0046】
繊維のシートがガラス繊維の織布又は不織布の場合、繊維のシートの単位面積あたりの重量は、1〜1000g/m
2とすることができる。
【0047】
繊維のシートは完全にアルカリ金属珪酸塩層30内に埋め込まれていることが好適であるが、一部がアルカリ金属珪酸塩層30から突出していることもできる。
【0048】
[トップ層]
アルカリ金属珪酸塩層30の上には、これを水等から保護するためのトップ層40を備えることができる。トップ層40の材料の例は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂等(水系、溶剤系を問わない)である。トップ層40は、塗液として塗布するか、予め成膜したフィルムとして粘着剤等を介して貼り合わせることで積層でき、また存在しなくてもよい。
【0049】
中間層20及びアルカリ金属珪酸塩層30の積層体は、木質材料10の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0050】
トップ層の厚みは、特に限定されないが、15〜150μmとすることができる。
【0051】
(被覆基材の製造方法)
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図2を参照して説明する。
【0052】
まず、
図2の(a)に示すように、木質材料10を用意する。続いて、木質材料10の表面にバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む樹脂組成物を塗布する。
【0053】
本実施形態では、木質材料10の表面が、水平面に対して90°傾斜している。木質材料10の表面は、水平面に対して傾斜していてもよく、傾斜していなくてもよい。
【0054】
樹脂組成物は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む。樹脂組成物は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が水に分散された水分散物、すなわち、水性エマルジョンであることが好適である。
【0055】
水性エマルジョンである場合の樹脂組成物における固形分は、20〜80質量%とすることができる。
【0056】
樹脂組成物が水性エマルジョンである場合、樹脂組成物の最低造膜温度(MFT)は、20℃以下であってよい。
【0057】
樹脂組成物は、グリコールエーテル類及びグリコールエーテルの酢酸エステル類等の成膜助剤を含んでいてもよい。
【0058】
樹脂組成物のpHは、4〜9.8であってよい。
【0059】
樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、刷毛、ローラー刷毛、スプレー等を利用できる。
【0060】
樹脂組成物の塗布量は、上述の厚み又は重量の中間層が形成できるように適宜調節できる。
【0061】
続いて、
図2の(b)に示すように、塗布した樹脂組成物を乾燥させて中間層20を形成する。樹脂組成物の乾燥方法は、特に制限されない。
【0062】
続いて、
図2の(c)に示すように、中間層20上に、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布してアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)は、上述のM
2O・nSiO
2の水溶液である。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、50g/m
2以上、150g/m
2以上、250g/m
2以上とすることができ、1500g/m
2以下、1000g/m
2以下、750g/m
2以下とすることができる。
【0063】
アルカリ金属珪酸水溶液として、JIS K1408に規定された、水ガラス1号〜3号を好適に利用できる。また、水ガラス1号から3号ではnは2.0〜3.3であるが、nが2.0〜3.8の水ガラスも好適に利用できる。
【0064】
続いて、
図2の(e)に示すように、繊維のシート(例えば織布35)の上に、さらに、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布してアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの厚みを大きくする。二回目に塗布するアルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、50g/m
2以上、150g/m
2以上、250g/m
2以上とすることができ、1500g/m
2以下、1000g/m
2以下、750g/m
2以下とすることができる。必要に応じて、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aに対する別のシート状繊維(例えば織布35)の貼り付け、及び、さらなるアルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布をさらに繰り返してもよい。
【0065】
アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの合計の塗布量は例えば、100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、1000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。
【0066】
複数回の塗布により形成されるアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの合計厚みは例えば30〜900μmとすることができる。
【0067】
その後、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させて固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、公知の方法で
図2の(f)に示すように、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0068】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る被覆基材100の製造方法について、
図3を参照して説明する。
【0069】
まず、
図3の(a)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、木質材料10を用意する。次いで、
図3の(b)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、木質材料10の表面にバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む樹脂組成物を塗布し、塗布した樹脂組成物を乾燥させて中間層20を形成する。
【0070】
続いて、
図3の(c)に示すように、中間層20上に、シート状の繊維(例えば織布35)を置き、必要に応じて仮固定する。仮固定の方法は特に限定されず、例えば、ステープル、ピン、ビス留め等による機械式固定、部分的、又は全面的に接着剤を塗布することによる固定、等とすることができる。
【0071】
続いて、
図3の(d)に示すように、中間層20上のシート状の繊維(例えば織布35)に、アルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布して、シート状の繊維(例えば織布35)を埋設した上述のアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、2000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aの厚みは例えば30〜900μmとすることができる。アルカリ金属珪酸塩水溶液としては、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0072】
その後、アルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させてシート状繊維(例えば織布35)を埋設した固体状態のアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、公知の方法で
図3の(e)に示すように、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0073】
[第三実施形態]
続いて、
図1の(a)又は(b)の繊維が分散している被覆基材100の製造方法について
図4を参照して説明する。
【0074】
まず、
図4の(a)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、木質材料10を用意する。次いで、
図4の(b)に示すように、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様にして、木質材料10の表面にバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含む樹脂組成物を塗布し、塗布した樹脂組成物を乾燥させて中間層20を形成する。次に、アルカリ金属珪酸塩水溶液内に繊維を分散させた溶液を作製する。
【0075】
続いて、
図4の(c)に示すように、中間層20上に、繊維を分散させたアルカリ金属珪酸塩水溶液(水ガラス)を塗布して分散繊維を含有するアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを形成する。アルカリ金属珪酸塩水溶液は、上述のM
2O・nSiO
2の水溶液である。アルカリ金属珪酸塩水溶液の塗布量は、100g/m
2以上、300g/m
2以上、500g/m
2以上とすることができ、3000g/m
2以下、2000g/m
2以下、1500g/m
2以下とすることができる。アルカリ金属珪酸塩水溶液としては、第一実施形態に係る被覆基材100の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0076】
その後、
図4の(d)に示すように、繊維を分散させたアルカリ金属珪酸塩水溶液層30aを乾燥させてアルカリ金属珪酸塩層30を得た後、公知の方法で
図4の(e)に示すように、アルカリ金属珪酸塩層30上にトップ層40を形成する。
【0077】
被覆基材100は、防火性能を有することができ、例えば、柱、梁、床、壁、屋根材等の建築物の構造体、天井材、内壁材、外装材、階段、建具等の建築物の仕上げ材料、その他、自動車、鉄道、船舶等の内装材料、家具の材料として利用できる。
【0078】
なお、本実施形態において、一般的な難燃剤、例えばリン系、フォスファゼン系、窒素系、臭素系、無機系(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等)の各種難燃剤を併用する事を否定しない。
【0079】
また、第三実施形態に係る被覆基材100の製造方法において、上述のアルカリ金属珪酸塩水溶液が、分散された繊維を含んでいなくても実施は可能である。
【実施例】
【0080】
(水溶液の調整)
[実施例1〜7及び比較例1〜7]
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号:n=3.1〜3.3、珪酸ナトリウム濃度:38.5〜40.0質量%)及び珪酸リチウム水溶液(商品名:リチウムシリケート45、SiO
2/Li
2Oモル比4.5、珪酸リチウム濃度:22質量%)を、珪酸ナトリウム水溶液と珪酸リチウム水溶液の質量比が珪酸ナトリウム水溶液:珪酸リチウム水溶液=2:1となるように混合し、アルカリ金属珪酸塩水溶液を得た。
【0081】
(評価:アルカリ焼け抑制)
[実施例1〜7及び比較例1〜7]
木質材料としてスギ材を用意した。表1に示す樹脂製品をスギ材の水平な表面に刷毛を用いて塗布した。塗布量は、表1に示す塗布量とした。なお、実施例1〜4及び比較例1及び2においては、樹脂製品に適宜グリコールエーテル系の成膜助剤を添加した樹脂組成物を塗布し、比較例7においては樹脂製品に硬化剤を樹脂製品100質量部に対して12質量部添加した樹脂組成物を塗布し、実施例5〜7及び比較例3〜6においては樹脂製品をそのまま塗布した。その後、温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間スギ材を乾燥させ、中間層を形成した。次いで、スギ材の中間層が形成された表面に、シート状のガラス繊維(セントラルグラスファイバー サーフェイスマット FC−30S)を置き、その上からアルカリ金属珪酸塩水溶液を1000g/m
2塗布し乾燥させ、アルカリ金属珪酸塩水溶液層を形成した。乾燥は、温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間行った。アルカリ金属珪酸塩水溶液層を乾燥させることで、アルカリ金属珪酸塩層(アルカリ金属珪酸塩の単位面積あたりの乾燥重量600g/m
2)を形成した。その後、アルカリ金属珪酸塩水溶液層が形成された基材を、該アルカリ金属珪酸塩水溶液層が形成された面が水平方向に対して水平になるように立て、アルカリ金属珪酸塩水溶液層を乾燥させた。乾燥は、温度23℃、湿度50%(相対湿度)の環境下で24時間行った。アルカリ金属珪酸塩水溶液層を乾燥させることで、アルカリ金属珪酸塩層(アルカリ金属珪酸塩の単位面積あたりの乾燥重量600g/m
2)を形成し、被覆基材を得た。
【0082】
得られた被覆基材について、下記の評価基準に基づきアルカリ焼け抑制の程度を評価した。評価は、目視で被覆基材を観察することにより行った。○を合格とした。結果を表1に示した。
<評価基準>
○:木質材料の表面に変色が観察されない
△:木質材料の表面に部分的な変色が観察される
×:木質材料の表面に著しい変色が観察される
【0083】
表1に示す樹脂製品の詳細は以下の通りである。
<樹脂製品>
・DSV.4176(商品名、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:7.5、MFT:5℃、膜のTg:10℃、膜の破断点ひずみ:900%、全固形分:45質量%、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルに由来する構造単位の含有量:26質量%、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーに由来する構造単位の含有量:74質量%、VANORA製)
・DSV.4135(商品名、バーサチック酸ビニルエステル−酢酸ビニル−アクリル系モノマー共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:5、MFT:20℃、膜のTg:21℃、膜の破断点ひずみ900%、全固形分:50質量%、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルに由来する構造単位の含有量:50質量%、バーサチック酸ビニルエステル−アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーに由来する構造単位の含有量:30質量%、VANORA製)
・スミカフレックスS951HQ(商品名、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:4−7、MFT:0℃、膜のTg:−25℃、膜の破断点ひずみ:1200%、全固形分:55質量%、住化ケムテックス製)
・スミカフレックスS950HQ(商品名、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:4−7、MFT:0℃、膜のTg:−30℃、膜の破断点ひずみ:1500%を超える、全固形分:53質量%、住化ケムテックス製)
・スミカフレックスS955HQ(商品名、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:4−7、MFT:0℃、Tg:−50℃、破断点ひずみ:1500%を超える、全固形分:53質量%、住化ケムテックス製)
・変性エポキシ樹脂No.1(変性エポキシ樹脂(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:9.5−9.8、膜のTg:70℃、全固形分:67質量%、水以外の溶剤としてのエチレングリコール−t−ブチルエーテルの含有量:17質量%)
・変性エポキシ樹脂No.2(変性エポキシ樹脂(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:9.5−9.8、膜のTg:62℃、全固形分:67質量%、水以外の溶媒としてのエチレングリコール−n−ブチルエーテルの含有量:15質量%)
・自己架橋型アクリル酸エステル−スチレン共重合体(自己架橋型アクリル酸エステル−スチレン共重合体(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:6.5−7.6、全固形分:55質量%)
・アクリル樹脂(アクリル樹脂(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:6.7、膜のTg:17℃、全固形分:40質量%)
・アクリルシリコーン樹脂No.1(アクリルシリコーン樹脂(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:8、MFT:0℃未満、全固形分:46質量%)
・シラノール基含有自己架橋ウレタン樹脂(シラノール基含有自己架橋ウレタン樹脂(樹脂成分)の水分散物、Tg:40−60℃、破断点ひずみ:750%、全固形分:30質量%)
・アクリルシリコーン樹脂No.2(アクリルシリコーン樹脂(樹脂成分)の水分散物、25℃におけるpH:8、MFT:0℃未満、全固形分:40.3質量%)
【0084】
(評価:皺より抑制)
[実施例1〜7及び比較例1〜7]
アルカリ焼け抑制の評価と同様にして、被覆基材を得た。得られた被覆基材におけるアルカリ金属珪酸塩層が設けられた表面に刷毛により塗料を塗布し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で一週間かけて乾燥し、トップ層を形成した。塗料としては、バーノックWE−306(商品名、水酸基含有アクリルポリオール、DIC株式会社製)100質量部とバーノックDNW−5000(商品名、イソシアネート硬化剤、DIC株式会社)25質量部とを混合したものを用いた。塗布量は、200g/m
2とした。
塗膜が形成された被覆基材を温度60℃の環境下で2時間放置し、次いで温度−20℃の環境下で2時間放置する操作を1サイクルとし、このサイクルを2回繰り返した。その後、被覆基材上に形成された基材上の塗膜を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示した。
○:長さが0.5mm以上の皺が観察されない
○−:長さが0.5mm以上2.0mm未満の皺が観察されるが、長さが2.0mm以上の皺は観察されない
△:長さが2.0mm以上5.0mm未満の皺が観察されるが、長さが5.0mm以上の皺は観察されない
×:長さが5.0mm以上の皺が観察される
【0085】
(評価:耐水性)
[実施例2、4〜7及び比較例1、3〜7]
アルカリ焼け抑制の評価と同様の方法で、表1に示す樹脂製品等を金属板の水平な表面に刷毛を用いて塗布した。塗布量は、表1に示す塗布量とした。その後、金属板を23℃相対湿度50%で72時間かけて乾燥させ、中間層を形成した。金属板の中間層が形成された表面に対して、0.05mlの水道水を滴下し、24時間放置後、水道水を滴下した箇所を乾布で拭き取り、当該箇所の外観変化を確認することにより耐水性を評価した。結果を表1に示した。
【0086】
(中間層の硬度の測定)
[実施例2、4〜7、及び、比較例1]
アルカリ焼け抑制の評価と同様の方法で、表1に示す樹脂製品等を金属板の水平な表面に刷毛を用いて塗布した。塗布量は、表1に示す塗布量とした。その後、金属板を23℃相対湿度50%で72時間かけて乾燥させ、中間層を形成した。形成した中間層について微小硬度計を用いて硬度(HuK値(N/mm
2))を測定した。微小硬度計として、フィッシャースコープH−100(商品名、株式会社フィッシャーインスツルメンツ製)を用いた。測定温度は、23℃とした。結果を表1に示した。
【0087】
【表1】